法科大学院の教育課程等の公表義務

法律又は政令の名称

 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案

規制の名称

 法科大学院の教育課程等の公表義務

規制の区分

 新設

担当部局

 高等教育局専門教育課専門職大学院室

評価実施時期

 平成31年2月

1 規制の目的、内容及び必要性

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)  

 法科大学院は平成16年度から制度が開始されたが、全体としての司法試験合格率の低迷等により、近年、入学者は減少し続けており、平成18年度のピーク時には5,825人であったところ、平成30年度には1,621人となり、定員充足率は70%である。また、政府の法曹養成制度改革推進会議決定(平成27年6月30日)では、司法試験に累積合格率で概ね7割以上合格できるよう充実した教育を目指すこととされているが、平成31年度以降も募集を継続する36校について見ても、法学既修者コース修了者では7割を超えている一方、法学未修者コース修了者では約5割にとどまっている。
 今般、このような状況を打開し、有為な法曹志望者の確保を推進するため、本規制の新設を含む法科大学院改革を実施するとともに、併せて司法試験制度改革を実施するが、本規制の新設を行わない場合、法科大学院における自主的かつ積極的な教育の充実の促進や法曹志望者に対する法科大学院教育に関する正確かつ十分な情報を提供の実効性が確保されず、法科大学院改革が不十分なものとなることで、法科大学院入学者の減少と修了者の司法試験合格率の低迷が、相互に関連しながら継続することが想定される。

(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)  

【課題及び課題発生の原因】
法曹志望者、特に、プロセスとしての法曹養成制度の中核として位置付けられる法科大学院への入学者が減少し、質・量ともに豊かな法曹を養成することが困難になると見込まれることを課題として認識している。法曹志望者や法科大学院への入学者の減少の原因は様々であるが、その一つとして、法科大学院全体としての司法試験合格率の低迷が指摘されている。
 当該課題への対応として、今般、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案において、法科大学院と法学部等との連携を促進する制度の創設等と併せて、法科大学院における自主的かつ積極的な教育の充実を促すとともに法曹志望者に対して法科大学院教育に関する正確かつ十分な情報を提供することを企図し、法科大学院を設置する大学に対して、当該法科大学院における教育課程や教育の実施状況等の公表を義務付ける必要がある。

【規制の内容】
法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律(平成14年法律第139号)(以下「連携法」という。)において、以下の事項について、法科大学院を設置する大学に対して公表を義務付ける。
 1 当該法科大学院の教育課程並びに当該教育課程を履修する上で求められる学識及び能力
 2 当該法科大学院における成績評価の基準及び実施状況
 3 当該法科大学院における修了の認定の基準及び実施状況
 4 当該法科大学院における司法試験の法科大学院修了見込受験資格(※1)取得のための認定の基準及び実施状況
 5 当該法科大学院の課程を修了した者の進路に関する状況
 6 その他文部科学省令で定める事項(※2)

(※1)本法案による司法試験法(昭和22年法律第140号)の改正により「法科大学院の課程に在学する者であって、法務省令で定める所定の単位を修得しており、かつ、1年以内に当該法科大学院の課程を修了する見込みがあるものと当該法科大学院を設置する大学の学長が認定したもの」に司法試験の受験資格を付与する。
(※2)法科大学院における教育の充実及び法曹志望者に対する情報の提供の観点から上記1~4以外に公表を求めるべき事項として、
 ・学費の額やその減免の仕組み、奨学金制度の概要
 ・法学未修者や社会人の入学者に占める割合及びその司法試験合格率
等を検討している。

【非規制の政策手段との比較】
行政指導により上記1~6に相当する情報を公表するよう促すことも考えられるが、6「代替案との比較」において検討するように、費用や効果を踏まえると、本規制によることが妥当であると考えられる。
 なお、学校教育法(昭和22年法律第26号)第113条において、大学はその教育研究活動の状況を公表するものとされており、情報の公表は大学本来の責務であることから、上記1~5の情報の公表に対し経済的インセンティブを付与することは適当ではないと考えられる

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

  遵守費用として、法科大学院を設置する大学において、上記1~6の公表に向けた事務負担等の遵守費用が発生する。
行政費用として、行政において、法科大学院を設置する大学が上記1~6の公表義務を履行しているかを確認し、違反が判明した場合には行政指導を実施する等の行政費用が発生する。

※学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第172条の2において、「授業科目、授業の方法及び内容並びに年間の授業の計画に関すること」「学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たっての基準に関すること」といった事項の公表が義務付けられており、上記1~6の一部と重複することから、1~6の全てについて、上記の遵守費用及び行政費用が発生するものではない。
※平成31年度における法科大学院数:53校
ただし、平成31年度以降も学生募集を継続する予定の法科大学院は36校

(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 ―   

3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

 行政において、法科大学院を設置する大学が上記1~6の公表義務を履行しているかを確認し、違反が判明した場合には行政指導を実施する等の行政費用が発生する。
 1の公表により、教育課程について学部から適切な評価を受けながら教育水準の向上が図られるとともに、法科大学院に入学しようとする者又は在学中の者にとって、入学前又は各年次の終了段階で身に付けるべき学識及び能力が明らかになることで、見通しを持った学修が可能となる。
 2356の公表により、連携法第2条第1号において法科大学院に求められる「厳格な成績評価及び修了の認定」の実効性を確保するとともに、法曹志望者が、各法科大学院における標準修業年限での修了率など、進路選択に当たり重要な情報を入手することが可能となる。
 4は、本法案の改正事項の一つである司法試験の修了見込受験資格に関するものである。同受験資格は、法曹資格取得までの時間的・経済的負担が法曹志望者、特に法科大学院入学者の減少の一因となっているとの指摘を踏まえ、本法案に基づく法科大学院改革を前提として導入されるものであるが、時間的・経済的負担の軽減を志向する法曹志望者にとって、各法科大学院における同受験資格の認定要件や実際の認定状況は進路選択に当たり極めて重要な情報であり、当該情報の公表により、その着実な提供が行われる。

 ※平成30年度法科大学院入学者の入学者選抜における受験者数:7,258人(延べ人数)

(6) 可能であれば便益(金銭価値化)を把握  

 金銭価値化した便益の把握は困難。

(7) 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

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4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(8) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 本規制による副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。

5 費用と効果(便益)の関係

(9) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 上記2において検討したとおり、本規制により、遵守費用として、法科大学院を設置する大学において、上記1~6の公表に向けた事務負担等の遵守費用が発生する。また、行政費用として、行政において、法科大学院を設置する大学が上記1~6の公表義務を履行しているかを確認し、違反が判明した場合には行政指導を実施する等の行政費用が発生する。ただし、本規制は既存の規制と重複する部分もあり、これらの費用の全てが新たに発生するものではなく、加えて、平成31年度以降も募集を継続する法科大学院は36校であり、対象も極めて限定されている。
 一方、上記3において検討したとおり、本規制により、多数の法曹志望者の進路選択及び在学中の者の学修に資する情報が着実に提供されることとなり、本規制と併せて本法案に盛り込まれている法科大学院改革に係る措置と相まって、質・量ともに豊かな法曹の養成に繋がるという効果が期待される。
 上記の費用と便益を比べると、便益が費用を上回ることから、当該規制を導入することは妥当である。

6 代替案との比較

(10) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

【代替案の内容】
 法科大学院を設置する大学に対し、上記1~6に相当する事項を公表するよう行政指導を実施する。

【費用】
 遵守費用として、行政指導に従うか否かを検討する等の遵守費用が発生する。また、行政指導に従う場合において、上記1~6の公表に向けた事務負担等の遵守費用が発生する。
 また、上記の行政指導に係る行政費用が発生する。

【効果(便益)】
 大学が要請に従う限りにおいて、本規制と同様の効果が得られることが見込まれる。
 ただし、大学の任意の対応となるため、実効性は限定的である。

【代替案と本規制との比較】
 代替案においても、本規制と同様に一定程度の遵守費用や行政費用が発生するとともに、大学が行政指導に従う限りにおいて、本規制と同様の効果が得られることが見込まれるが、大学の任意の対応となるため、実効性は限定的である。
規制案においては、法律上の義務として法科大学院の教育課程等の公表を位置付けるため、より実効性を担保することが可能である。
  このため、代替案と比較して本規制の方が優れていると考えられる。

7 その他の関連事項

(11) 評価の活用状況等の明記

 1の公表については、平成31年1月28日に開催された中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会において大筋了承された「『法曹コース』に関する考え方について」において示したところ。

8 事後評価の実施時期等

(12) 事後評価の実施時期の明記

  本法案には見直し条項が設けられていないことから、規制改革実施計画(平成26年6月24日閣議決定)を踏まえ、本規制に係る連携法の改正規定の施行の日から5年以内に事後評価を実施することとする。

(13) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 上記1~6の公表義務の履行状況及び義務違反が判明した場合の行政指導の実施状況等を事後評価の指標として設定することが考えられる。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室

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(高等教育局専門教育課専門職大学院室)