学校法人の役員の職務及び情報公開等に関する規定の整備

法律又は政令の名称

 学校教育法等の一部を改正する法律案

規制の名称

 学校法人の役員の職務及び情報公開等に関する規定の整備

規制の区分

 新設

担当部局

 高等教育局私学部私学行政課

評価実施時期

 平成31年1月

1 規制の目的、内容及び必要性

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)  

 学校法人制度は、財団法人制度を沿革としつつ、学校教育という高い公共性を有する公教育を担う機関として、税制優遇をはじめとする公的支援を受けているところ、公教育を行う機関としてふさわしいガバナンスに向けた改革を継続して行うことが重要である旨「学校法人制度の改善方策について」(平成31年1月7日、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改善検討小委員会)において指摘されている。
 さらに、同様に公的支援を受ける社会福祉法人等が社会の変化に対応して制度改革が行われてきたことを踏まえると、学校法人制度についても社会の変化に対応したガバナンス改革が必要である。
 今般の改正が行われなかった場合、学校法人の経営組織が十分に強化されないため、適切な事業運営が行われない可能性があり、その結果として、私立学校の教育研究の質の低下を招くおそれがある。

(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)  

【課題及び課題発生の原因】
(1)のとおり、学校法人制度は他法人制度と比較して、ガバナンスの改善が進んでいない状況にある。
 一方で、すべての学校法人において、適切な事業運営を担保するために、学校法人のガバナンスを強化する必要があるという課題が指摘されており、この課題を解決することが求められている。

【規制以外の政策手段の内容】
 今回の規制を置くことなく、行政指導を実施することも考えられるが、法律上の義務でないためその適切かつ確実な実行が担保されず、学校法人の経営組織が十分に強化されないため、適切な事業運営が行われない可能性があり、その結果として、私立学校の教育研究の質の低下を招くおそれがあることから、規制を置くこととした。

【規制の内容】
(1)特別の利益供与の禁止(第26条の2)
 学校法人は、その事業を行うに当たり、その理事、監事、評議員、職員等の学校法人の関係者に対し特別の利益を与えてはならないことを規定する。

(2)寄附行為の備置き及び閲覧(第33条の2)
 学校法人は、寄附行為を各事務所に備えて置き、請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないことを規定する。

(3)学校法人と役員との関係(第35条の2)
 学校法人の役員が民法第644条又は第656条に規定による善管注意義務を負うことを明確化する。

(4)特別の利害関係を有する理事の議決権(第36条第7項)
 理事会の議事について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができないことを規定する。

(5)理事の業務執行の状況の監査等(第37条第3項)
 監事の職務として、学校法人の業務または財産の状況の監査に加え、理事の業務執行の状況を監査の対象とすること等を規定する。

(6)損害賠償責任を一部免除する場合の議決の特例(第41条第9項)
 役員の損害賠償の一部免除に係る評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならないことを規定する。

(7)特別の利害関係を有する評議員の議決権(第41条第10項)
 評議員会の決議について特別の利害関係を有する評議員は、議決に加わることができないことを規定する。

(8)評議員会の意見聴取事項(第42条)
 理事長において、あらかじめ、評議員会の意見を聞かなければならない事項として、中期的な計画及び役員の報酬等の支給の基準を追加する。

(9)役員の学校法人に対する損害賠償責任(第44条の2第1項)
 役員は、その任務を怠ったときは、学校法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うことを規定する。

(10)役員の第三者に対する損害賠償責任(第44条の3第1項、第2項)
 役員がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員はこれによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うことを規定する。
 理事又は監事が財務書類や監査報告書に記載すべき重要事項についての虚偽の記載等をしたときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うことを規定する。

(11)役員の連帯責任(第44条の4)
 複数の役員が学校法人又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合は、これらの者は連帯債務者となることを規定する。

(12)予算、事業計画及び中期的な計画(第45条の2第1項、第2項、第3項)
 学校法人は、毎会計年度、予算及び事業計画を作成しなければならないことを規定するとともに、文部科学大臣が所轄庁である学校法人は、事業に関する中期的な計画を作成しなければならないことを規定する。
 文部科学大臣が所轄庁である学校法人は、事業計画及び事業に関する中期的な計画の作成に当たっては、認証評価の結果を踏まえて作成することを規定する。

(13)財産目録等の備付け及び閲覧(第47条第1項、第2項)
 学校法人は、毎会計年度終了後2月以内に文部科学省令で定めるところにより、財産目録等の財務書類を作成しなければならないこととなっているが役員等名簿についても同様に作成しなければならないことを規定する。
 学校法人は、これらの書類及び第37条第3項第4号の監査報告書を各事務所に備えて置き、請求があった場合に、利害関係人に対し正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないこととされていたが、役員等名簿及び役員の報酬等の支給に関する基準についてもその対象とし、作成の日から5年間という期間の定めを置くとともに、利害関係人に限定されていた閲覧開示対象を一般の者(都道府県知事が所轄庁である学校法人の財産目録等(役員等名簿を除く。)にあっては当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の利害関係人から請求があった場合に限る。)に拡大する。

(14)報酬等(第48条第1項、第2項)
 学校法人は、役員に対する報酬等について、文部科学省令で定めるところにより、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該学校法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めなければならないことを規定する。
 学校法人は、これにより定められた報酬等の支給の基準に従って、その役員に対する報酬等を支給しなければならないことを規定する。

(15)情報の公表(第63条の2)
文部科学大臣が所轄庁である学校法人は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、遅滞なく、文部科学省令で定めるところにより、当該各号に定める事項を公表しなければならない。
1 第30条第1項若しくは第45条第1項の認可を受けたとき、又は同条第2項の規定による届出をしたとき 寄附行為の内容
2 第37条第3項第4号の監査報告書を作成したとき 当該監査報告書の内容
3 第47条第1項の書類を作成したとき 同項の書類のうち文部科学省令で定める書類の内容
4 第48条第1項の役員に対する報酬等の支給の基準を定めたとき 当該報酬等の支給の基準

(16)罰則(第66条)
以下の場合について、学校法人の理事、監事又は清算人は、20万円以下の過料に処する対象に追加する。
1 第33条の2の規定による寄附行為の備付けを怠り、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしたとき。
2 第33条の2の規定に違反して、正当な理由がないのに、寄附行為の閲覧を拒んだとき。
3 第47条第2項の規定に違反して、正当な理由がないのに、財産目録等の閲覧を拒んだとき。

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)


 寄附行為及び財産目録等の閲覧開示を行う場合、ホームページ等を通じて情報の公表を行う場合に遵守費用が発生し得る(対象となる学校法人(準学校法人を含む)は文科大臣所轄法人663法人、都道府県知事所轄法人7,312法人(それぞれ平成30年4月、平成30年5月時点))。
 今回の新設する規制については、行政に対する義務や届出等に関するものは存在しないため、新たな費用は発生しない。

(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 (該当せず。)   

3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

 学校法人に対し、内部統治に関する義務付けを行うとともに情報公開の義務付けを行うため、確実に学校法人の経営管理体制が強化されるとともに、透明性の確保が図られ、学校法人の適切な事業運営が期待される。

(6) 可能であれば便益(金銭価値化)を把握  

 -

(7) 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

 (該当せず。)

4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(8) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 当該規制による副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。

5 費用と効果(便益)の関係

(9) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 遵守費用が発生し得るものではあるが、改正案においては学校法人の経営管理体制が強化されるとともに、透明性の確保が図られ、学校法人の適切な事業運営が期待されるという便益が得られ、社会的な支援や信頼を得ていくことが可能となる。

6 代替案との比較

(10) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

 今回新設する規定の多くは、すでに作成が義務付けられている書類の閲覧開示、公表もしくは現在でも多くの学校法人で作成されている書類の作成、閲覧開示、公表等を定めるものであることから、多くの学校法人において対応できているものであり、目的を達成するための最低限の規制となっている。

7 その他の関連事項

(11) 評価の活用状況等の明記

 (該当せず。)

8 事後評価の実施時期等

(12) 事後評価の実施時期の明記

  本法案の附則において、この法律の公布後5年を目途として、この法律による改正後の各法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする検討規定を設けており、当該規定に基づき、検討を行う。

(13) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 今回新たに義務付ける事業計画及び事業に関する中期的な計画に関する策定の状況や情報公開の実施状況等を事後評価の指標として設定することが考えられる。

お問合せ先

高等教育局私学部私学行政課

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(高等教育局私学部私学行政課)