法律又は政令の名称 |
原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案 |
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規制の名称 |
損害賠償実施方針の作成及び公表義務 |
規制の区分 |
新設 |
担当部局 |
研究開発局原子力損害賠償対策室 |
評価実施時期 |
平成30年8月 |
東京電力福島原子力発電所事故(以下「東電福島原発事故」という。)やJOC臨界事故においては、原子力損害が発生した後、短期間に避難費用、精神的損害、就労不能損害、財物損害等様々な内容の多数の請求に対応するため、東京電力は、賠償請求の手続や被害者窓口の整備等を至急に行うことが必要となった。
これを踏まえ、万が一の原子力事故の発生の際、損害賠償の迅速かつ適切な実施を図るための備えとして、全ての原子力事業者に対し、あらかじめ、損害賠償の実施のための方針を作成し、公表することを義務付ける規定を、原子力損害の賠償に関する法律において整備するものである。
本規制の新設を行わない場合には、将来万が一原子力事故が生じた場合に、原子力事業者による損害賠償の実施に向けた事前の備えが十全になされなかったことにより、被害者に対して迅速かつ適切な賠償が実施されないおそれが高まるものと考えられる。
【課題及びその発生原因】
上記のとおり、本規制の新設に当たっては、将来万が一原子力事故が生じた場合に、原子力事業者による損害賠償の実施に向けた事前の備えが十全になされなかったことにより、被害者に対して迅速かつ適切な賠償が実施されないおそれがあることを課題として認識している。
【規制の内容】
事業者が事業開始前から原子力損害の賠償に関し必要な事項の検討を行い、これを損害賠償実施方針として作成することを義務化することで、万が一の原子力事故の発生の際に、原子力損害の賠償を迅速かつ適切に実施するための事前の準備に資するものである。また、その公表を義務付けることにより、各事業者における他の事業者の方針を参考にした自主的な検討を促すとともに、内容の適切性を確保することを意図するものである。
原子力事業者は、損害賠償実施方針において、原子力損害の賠償に係る事務の実施方法や紛争の解決を図るための方策等、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施に関し必要な事項を記載することとする。また、上記の具体的な内容については、文部科学省令において規定することとする。
なお、万が一事故が発生した際の規模や様態は様々であり、一律の基準や要件を定め、当該基準に基づき、全ての事業者の対応を求めることは困難であることから、届出ではなく、公表義務としている。
【非規制の政策手段との比較】
東電福島原発事故の経験に鑑み、万が一の原子力事故の発生の際、原子力損害の賠償には、1被害者の置かれた心理的又は経済的な状況等に対応して迅速に救済を図る必要があること、2短期間において膨大な数の請求事案が生じ、これらを同時に解決していく必要があること、等の特殊性があることを踏まえれば、事業者の事前の備えとしての方針の作成を確実なものとするため、行政指導のような非規制的な手段よりも、事前の備えとしての方針の作成に係る義務を法的に措置することが妥当であると考えられる。
各原子力事業者においては、損害賠償実施方針の作成に向けた検討を行うための事務費用や、原子力損害の発生に関し当該方針に記載した事項についての事前の備えに係る費用等が遵守費用として発生する。また、行政においては、各原子力事業者が損害賠償実施方針の作成・公表義務を履行しているかを確認し、違反が判明した場合には行政指導や罰則の適用手続を行う等の行政費用が発生する。
※ 平成30年4月現在、本規制の対象として29の原子力事業者が存在。
該当なし
本規制の新設は、事業者が事業開始前から原子力損害の賠償に関し必要な事項の検討を行い、これを損害賠償実施方針として作成することを義務化することで、万が一の原子力事故の発生の際に、原子力損害の賠償を迅速かつ適切に実施するための事前の準備に資するものである。また、その公表を義務付けることにより、各事業者における他の事業者の方針を参考にした自主的な検討を促すとともに、内容の適切性を確保することを意図するものである。
将来万が一原子力損害が発生した場合には、発災事業者は、短期間に避難費用、精神的損害、就労不能損害、財物損害等様々な内容の多数の損害賠償請求に対応するため、至急に賠償請求の手続や被害者窓口の整備等を行うことが必要となることが想定されるが、当該規制の導入により、数万人の規模で発生する可能性のある被害者に対し、原子力損害の賠償が迅速かつ適切に実施されることが期待される。
具体的には、万が一の原子力事故に際しての原子力損害の賠償につき、賠償のより迅速な実施による被害者の早期救済並びに賠償に関する紛争の減少及びより迅速かつ円滑な解決等の便益が期待される。
(参考)東電福島原発事故における避難者数:346¸987人(平成24年6月現在)
1.避難者数の推移(所在都道府県別)(※PDF 外部のウェブサイトへリンク)
金銭価値化した便益の把握は困難。
該当なし
当該規制による特段の副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。
各原子力事業者においては、損害賠償実施方針の作成に向けた検討を行うための事務費用や、原子力損害の発生に関し当該方針に記載した事項についての事前の備えに係る費用等が遵守費用として発生する。また、行政においては、各原子力事業者が損害賠償実施方針の作成・公表義務を履行しているかを確認し、違反が判明した場合には行政指導や罰則の適用手続を行う等の行政費用が発生する。一方、将来万が一原子力損害が発生した場合には、発災事業者は、短期間に避難費用、精神的損害、就労不能損害、財物損害等様々な内容の多数の損害賠償請求に対応するため、至急に被害者窓口の整備や賠償請求の管理体制の整備等を行うことが必要となることが想定されるが、当該規制の導入により、数万人の規模で発生する可能性のある被害者に対し、原子力損害の賠償が迅速かつ適切に実施されることが期待される。
これらの費用と便益を比べると、便益が費用を上回ることから、当該規制を導入することが妥当である。
上記2のとおり、今般の法改正の目的を実現するために採用可能な規制の代替案は想定されない。
該当なし
原子力損害の賠償に関する法律第20条において同法第10条第1項及び第16条第1項の適用期限が定められており、10年を目途として同法の定期的な改正が実施されてきたところ。 これを踏まえ、本規制については、適用期限を踏まえた次期改正のタイミングにおいて、その適切性について事後評価を行うこととする。
損害賠償実施方針を作成・公表している事業者の割合及び義務違反が判明した場合の罰則の適用状況等を事後評価の指標として設定することが考えられる。
研究開発局原子力損害賠償対策室