特定地域内の大学等の学生の収容定員の抑制及びその例外

法律又は政令の名称

 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律及び同法施行令

規制の名称

 特定地域内の大学等の学生の収容定員の抑制及びその例外

規制の区分

 新設

担当部局

 高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

評価実施時期

 令和6年3月

1 事前評価時の想定との比較

(1) 課題を取り巻く社会経済情勢や科学技術の変化による影響及び想定外の影響の発現の有無

 東京23区の学生数については、令和3年度において48.9万人と全国の17.9%を占め、近年の増加率も全国平均を上回っている。また東京23区への大学入学者超過数は、法制定前から大きく変わっておらず、概ね6万人で推移している。
 したがって、本規制で目指す条件の有利な東京23区の大学等の学生の収容定員増による東京一極集中の是正の必要性は事前評価後から変わっておらず、平成30年2月(地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(以下「法」という。))及び8月(同法施行令)の事前評価時点と現時点における社会経済情勢や科学技術の変化による影響及び想定外の影響の発現はない。

(2) 事前評価時におけるベースラインの検証

 規制の事前評価後、大幅な社会経済情勢等の変化による影響は見受けられない。平成31年度と比較して、法の経過措置による例外規定の適用により、法施行から5年が経過した令和5年度入学定員は約3.0万人増加している。
 東京23区の学部入学定員数の増加ペースは、平成30年以降の3年間では、それ以前の約半分の年平均1,000名弱と減少したものの、入学定員は依然として増加しており、令和3年度において12.2万人と全国の19.6%を占め、突出して多くなっている。
 したがって、今後も条件の有利な東京23区の大学等の学生の収容定員増が進み続けると、東京一極集中がますます加速しかねず、東京の大学の収容力が拡大する一方で地方の大学の中には経営悪化による撤退等が生じ、地域間で高等教育の修学機会の格差が拡大しかねないとの仮想状況に変化はなく、ベースラインは事前評価時から変わらない。

(3) 必要性の検証

 規制の事前評価後、課題を取り巻く社会経済情勢や科学技術の変化による影響及び事前評価時に想定していなかった影響の発現はない。
 本規制の必要性について、地方(本規制においては「東京23区以外の地域」と定義する。以下同じ)の18歳人口が減少する中にあっても、地方から東京23区内の大学への進学者数は横ばいであり、このことから地方の18歳人口に占める東京23区への入学者の割合の増加が見て取れることから、法制定の背景にあった、地域の若者の著しい減少に対しては、大学進学時の人口動態から歯止めはかけられていないため、当該規制を継続する必要性は引き続き認められる。
 なお、平成29年の学校教育法改正によって創設された専門職大学等の収容定員については当該規制の例外措置として位置づけられており、これまで全国で19大学3短期大学1学科が設置され、そのうち東京23区内には5大学1短期大学が設置されている。これについては、法施行後の特段の状況変更や専門職大学等を他の大学と異なる扱いとすべき特段の事由は見当たらないため、予定通り令和6年度から定員増加抑制の対象とする。

2 費用、効果(便益)及び間接的な影響の把握

(4) 「遵守費用」の把握

 大学の設置者等が特定地域内学部収容定員を増加させようとする場合に文部科学省に届出等を行う遵守費用が発生していると考えられる。そのコストについては、基本的には大学の設置者等の通常業務の中で処理されるものであるが、仮に1件当たり10時間の作業時間が発生し、単価を約 2,900 円(5,034 千円(民間給与実態統計調査(国税庁、令和元年(概要))の平均給与額(年間)))÷1,734 時間(労働統計要覧(厚生労働省)毎月勤労統計調査、令和元年における年間総労働時間(実労働時間数)事業所規模 30 人以上))と仮定すると、1事業者当たり、2,900 円×10時間=29,000 円と推計される。

(5) 「行政費用」の把握

 事前評価の際、行政においては、大学の設置者等が特定地域内学部収容定員を増加させようとする場合に例外規定や経過措置に当たるのかを確認し、違反している場合には勧告・命令を行う等の行政費用が発生すると想定されていたが、該当事案は発生していない。また、その他の行政費用も確認されていない。

(6) 効果(定量化)の把握

 上記(2)に記載の通り、本規制開始後も特定地域内の大学等への入学者数は依然として増加しており、法の目的である東京一極集中の是正や地域間における高等教育の就学機会の格差の拡大を防ぎ、地域における若者の修学及び就業の促進効果が十分に現れているとはいえない。
 これは法の経過措置による例外規定の適用による影響が大きいと推察される(平成31年以降、法の経過措置による例外規定(そのほとんどが本規制措置の導入前から「相当程度の準備が行われていた場合」に該当)に係る東京23区内の学部収容定員の増加として、文部科学省へ届出がなされたのは約2.5万名)。

(7) 便益(金銭価値化)の把握

 上記(6)に記載のとおり、現時点で本規制の効果が十分に現れているとはいえないため、便益を把握することは困難。 

(8) 「副次的な影響及び波及的な影響」の把握

 本規制による副次的な影響及び波及的な影響は確認できなかった。

 3 考察

(9) 把握した費用、効果(便益)及び間接的な影響に基づく妥当性の検証

 本規制の導入前と比較して、社会経済情勢等の変化による影響等は生じておらず、副次的な影響及び波及的な影響は見受けられなかった。また、発生した遵守費用は事務コストのみ(上記(4))で極めて軽微である一方、現状、法の経過措置による例外規定の適用により、本規制による効果が十分に現れているとはいえない。
 ただ、これまで適用を受けた例外措置のほとんどは、本規制導入前から「相当な期間の準備が行われていた場合」に該当するものであった。一般に、キャンパス移転を伴う大学の組織改編については、社会経済状況の見通し等にも鑑みると、機関決定からその実施まで4年~5年程度の期間で行われている(計画がこれ以上の長期になると不確定要素が増大するおそれがある)。そのため、本規制が導入されて5年が経過した本年度以降は大学経営上規制が所与のものとなり、今後その適用を受ける件数が逓減するのに伴い、本規制の効果が発現することが期待される。
 よって、特定地域内学部収容定員の抑制に係る規定が失効を予定している令和10年3月31日まで引き続き本規制を継続することが妥当である。

 

特定地域内の大学等の学生の収容定員の抑制及びその例外(要旨)

 法律又は政令の名称

 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律及び同法施行令

 規制の名称

 特定地域内の大学等の学生の収容定員の抑制及びその例外

 規制の区分

 新設

 担当部局

 高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

 評価実施時期

 令和6年3月

 事前評価時の
想定との比較

 課題を取り巻く
社会情勢等の
変化による
影響及び
想定外の
影響の発現

 本規制で目指す条件の有利な東京23区の大学等の学生の収容定員増による東京一極集中の是正の必要性は事前評価後から変わっておらず、平成30年2月(地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(以下「法」という。))及び8月(同法施行令)の事前評価時点と現時点における社会経済情勢や科学技術の変化による影響及び想定外の影響の発現はない。

 ベースラインの
検証

 今後も条件の有利な東京23区の大学等の学生の収容定員増が進み続けると、東京一極集中がますます加速しかねず、東京の大学の収容力が拡大する一方で地方の大学の中には経営悪化による撤退等が生じ、地域間で高等教育の修学機会の格差が拡大しかねないとの仮想状況に変化はなく、ベースラインは事前評価時から変わらない。

必要性の
検証

 法制定の背景にあった、地域の若者の著しい減少に対しては、大学進学時の人口動態から歯止めはかけられていないため、当該規制を継続する必要性は引き続き認められる。

遵守費用

 本規制については基本的には大学の設置者等の通常業務の中で処理されるものであるが、仮に1件当たり10時間の作業時間が発生し、単価を約2,900円と仮定すると、1事業者当たり、2,900 円×10時間=29,000円と推計(※)される。​

行政費用

 発生していない。

便益(金銭価値化)の把握

 現時点で本規制の効果が十分に現れているとはいえないため、便益を把握することは困難。

効果(定量化)の把握

 本規制開始後も特定地域内の大学等への入学者数は依然として増加しており、法の目的である東京一極集中の是正や地域間における高等教育の就学機会の格差の拡大を防ぎ、地域における若者の修学及び就業の促進効果が十分に現れているとはいえない。

副次的な影響及び
波及的な影響

 本規制による副次的な影響及び波及的な影響は確認できなかった。

把握した費用、効果
及び間接的な影響に基づく
妥当性

 本規制が導入されて5年が経過した本年度以降は、例外措置の適用を受ける件数の逓減が見込まれ、本規制の効果が発現することが期待される。そのため、特定地域内学部収容定員の抑制に係る規定が失効を予定している令和10年3月31日まで引き続き本規制を継続することが妥当である。

 事後評価の実施時期等

 令和10年3月

 ※ 推計の根拠:(5,034千円(民間給与実態統計調査(国税庁、令和元年(概要))の平均給与額(年間)))÷1,734時間(労働統計要覧(厚生労働省)毎月勤労統計調査、令和元年における年間総労働時間(実労働時間数)事業所規模30人以上))

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)