特定地域内の大学等の学生の収容定員増抑制の例外等

法律又は政令の名称

 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律施行令案 

規制の名称

 特定地域内の大学等の学生の収容定員増抑制の例外等

規制の区分

 新設

担当部局

 高等教育局高等教育企画課

評価実施時期

 平成30年8月

1 規制の目的、内容及び必要性

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)  

 本年5月に成立した「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(以下「法」という。)」において大学等の設置者又は大学等を設置しようとする者(以下「大学の設置者等」という。)は、特定地域内学部収容定員(特定地域内に校舎が所在する大学の学部の学生の収容定員のうち、当該校舎で授業を受ける学生に係るものとして政令で定めるところにより算出した収容定員をいう。以下同じ。)を増加させてはならないとされたところ。
 他方、必要以上に大学の自治や高等教育の質の確保等の他の公益を害することや、学生や大学の設置者等の権益を損なうことのないよう、法において例外規定や経過措置が定められており、その具体的内容については政令に委任されている。

※ なお、特定地域とは「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律第五条第三項の特定地域を定める政令(平成30年政令第177号)」において東京都特別区としている

(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)  

【課題及びその発生原因】
 上記のとおり、必要以上に他の公益を害することや、学生や大学の設置者等の権益を損なうことのないよう、法において例外規定や経過措置が定められており、その具体的内容については、政令に委任されている。

【規制の内容】
(1)特定地域内学部収容定員の総数の範囲内でのスクラップアンドビルドによる新たな学部等の設置(法第13条第1号及び第2号)
 法第13条第1号及び第2号では、特定地域内に所在する学部・学科の学生の収容定員の総数の増加を伴わない範囲内で学部・学科の改編等を行う場合は、特定地域への若者の流入が拡大することにはつながらないため例外としており、本施行令案では、特定地域内学部収容定員の増加の方法について、特定地域内学部収容定員の減少を行う前に届け出ることを規定する。
 また、法第13条第1号及び第2号においてスクラップアンドビルドによる特定地域内学部収容定員の増加の範囲について「政令で定めるところにより算定した数の範囲内で特定地域内学部収容定員を増加させる場合」としており、本施行令案で算定方法を具体的に規定する。

(2)特定地域内学部収容定員を増加させることが特定地域以外の地域における若者の著しい減少を助長するおそれが少ないものとして政令で定める場合(法第13条第3号)
 法第13条第3号において、「特定地域以外の地域における若者の著しい減少を助長するおそれが少ないもの」と考えられる場合には、法の趣旨に照らして特定地域内における収容定員増抑制の対象外とされている。
 本施行令案では、法で例示されている外国人留学生、就業者である学生、教育研究の質的向上を図る場合としての修業年限の延長に限定して収容定員を増加させる場合は収容定員増抑制の例外とする。また、それらに準ずる場合について内閣府令・文部科学省令で規定することとしている。

(3)平成31年3月31日までに特定地域内における大学の学部の設置その他の政令で定める事項について認可を受けた場合
 平成31年度における大学・学部等の設置や収容定員の増加等の平成30年度内に認可がなされるべき事項については、平成30年6月までに大学の設置者等から申請がなされている。仮にまだ認可がなされていない状況で法第13条の規制措置を適用すると、認可することができない案件が生じることになり、申請者にとって不測の事態が生じることから、法附則第3条第1号で平成31年3月31日までに認可を受けたものについては適用除外としている。 本施行令案では、法附則第3条第1号に基づき、適用除外の対象とすべき特定地域内学部収容定員の増加を伴いうる事項を規定しており、具体的には、1大学の設置、2学位の種類及び分野の変更を伴う学部の設置、3学位の種類及び分野の変更を伴う私立大学の学部の学科の設置、4総収容定員の増を伴う私立大学の収容定員に係る学則の変更を列記する。

(4)平成36年3月31日までに専門職大学等の設置その他の政令で定める事項について認可を受けた場合
 専門職大学等は、実践的な職業教育を行い、社会人等多様な学生を受け入れる新たな学校種であることから、法附則第3条第2号おいて平成36年3月31日までに認可を受けた場合については適用除外とする。
 本施行令案では、法附則第3条第1号の場合と同様に1大学の設置、2学位の種類及び分野の変更を伴う学部の設置、3学位の種類及び分野の変更を伴う私立大学の学部の学科の設置、4総収容定員の増を伴う私立大学の収容定員に係る学則の変更を列記する。

(5)法の施行の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日までに、特定地域外から特定地域内への大学の学部の移転その他の政令で定める事項について届出を行った場合
 平成31年4月から実施される事項に係る届出は、平成30年4月から平成30年12月までに届け出ることとされており、特定地域内における収容定員増等を既に準備していた大学の設置者等に不測の事態が生じるおそれがあることから、法附則第3条第3号において適用除外としている。
本施行令案において、届出に係る事項が平成31年12月31日までに行われるものについて、平成30年12月31日までに届け出たものに限定して適用除外とすることとする。また、該当する届出事項として、1特定地域内における公立大学又は私立大学の学部の設置、2特定地域内における公立大学又は私立大学の学部の学科の設置(私立大学については、学位の種類及び分野の変更を伴う場合を除く。)3特定地域内学部収容定員の増加を伴う公立大学又は私立大学の学部の収容定員に係る学則の変更(私立大学については、総収容定員の増加を伴う場合を除く。)4その他内閣府令・文部科学省令で定める事項を列記している。

(6)法の施行の際、現に特定地域内における大学の学部の設置その他の方法により特定地域内学部収容定員を増加させるために必要な校舎その他の施設又は設備の設置又は整備に関し政令で定める相当程度の準備が行われている場合 
 平成31年度の学部等の開設や収容定員の増加について経過措置が定められているが、大規模な準備が必要なもので平成31年度よりも後に学部等の開設や収容定員の増加を行うものについて、収容定員増抑制の規定の施行日以後を抑制の対象とすると準備を進めてきた大学の設置者等にとって大きな支障となるため、法附則第3条第4号において、収容定員増抑制の規定の施行日において「必要な校舎その他の施設又は設備の設置又は整備に関し政令で定める相当程度の準備が行われている場合」には、適用除外としている。 
 本施行令では、「相当程度の準備」について定め、具体的には1組織的な意思決定、2当該意思決定の公表、3校舎等に関する必要な投資がなされていることを要件とする。

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

 大学の設置者等※が、特定地域内学部収容定員を増加させようとする場合に文部科学省に届出等を行う遵守費用が発生し得る。
 行政においては、大学の設置者等が特定地域内学部収容定員を増加させようとする場合に例外規定や経過措置に当たるのかを確認し、違反している場合には勧告・命令を行う等の行政費用が発生する。

 ※文部科学大臣所管学校法人数は、平成30年2月現在で665法人

(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 (規制の新設のため該当せず)   

3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

 法において特定地域内学部収容定員を増加させてはならないとされているところ、本施行令案において例外規定や経過措置を具体的に規定することで、必要以上に大学の自治や高等教育の質の確保等の他の公益を害することや、学生や大学の設置者等の権益を損なうおそれを軽減し、法の目的である東京一極集中の是正や地域間における高等教育の就学機会の格差の拡大を防ぎ、地域における若者の修学及び就業が促進される。

(6) 可能であれば便益(金銭価値化)を把握  

 -

(7) 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

 (規制の新設のため該当せず)

4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(8) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 当該規制による副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。

5 費用と効果(便益)の関係

(9) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 文部科学省への届出等に係る遵守費用や規定に違反等している場合の勧告・命令に係る行政費用が一定程度発生し得るが、法において特定地域内学部収容定員を増加させてはならないとされているところ、本施行令案において例外規定や経過措置を具体的に規定することで、必要以上に大学の自治や高等教育の質の確保等の他の公益を害することや、学生や大学の設置者等の権益を損なうおそれを軽減し、法の目的である東京一極集中の是正や地域間における高等教育の就学機会の格差の拡大を防ぎ、地域における若者の修学及び就業が促進される。

6 代替案との比較

(10) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

 今回の規制は、本年5月に成立した「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」において特定地域内学部収容定員を増加させてはならないとされたところ、一律に規制を行うと必要以上に他の公益を害することや、学生や大学の設置者等の権益を損なうおそれがある。
 そこで、法においては例外規定や経過措置が設けられており、本施行令案において具体的に規定している。このことは法の委任に基づき委任の範囲内で定められるものであり、法の委任を受けた政令でなければ当該政策目的は達成できず、代替案は想定できない

7 その他の関連事項

(11) 評価の活用状況等の明記

 本規制案については、「まち・ひと・しごと創生会議」や、まち・ひと・しごと創生担当大臣の下に置かれていた「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」での議論等を踏まえ、取りまとめられた。

○平成28年12月14日 第11回まち・ひと・しごと創生会議
「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)(案)」について審議
(参考)「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)」(平成28年12月22日閣議決定)抜粋
  地方を担う多様な人材を育成・確保し、東京一極集中の是正に資するよう、地方大学の振興、地方における雇用創出と若者の就業支援、東京における大学の新増設の抑制や地方移転の促進などについての緊急かつ抜本的な対策を、教育政策の観点も含め総合的に検討し、2017年夏を目途に方向性を取りまとめる。

○平成29年2月~5月 「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」において計6回会合を開催し、平成29年5月22日に中間報告を取りまとめ。

○平成29年5月29日 第12回まち・ひと・しごと創生会議
「まち・ひと・しごと創生基本方針2017(案)」について審議
(参考)「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」(平成29年6月9日閣議決定)抜粋
  今後、18歳人口が大幅に減少する中、学生の過度の東京への集中により、地方大学の経営悪化や東京圏周縁で大学が撤退した地域の衰退が懸念されることから、東京23区の大学の学部・学科の新増設を抑制することとし、具体的には、大学生の集中が進み続ける東京23区においては、大学の定員増は認めないことを原則とする。その際、総定員の範囲内で対応するのであれば、既存の学部等の改廃等により、社会のニーズに応じて新たな学部・学科を新設することを認められるものとするなど、スクラップ・アンド・ビルドを徹底する。これらについての具体的な制度や仕組みについて検討し、年内に成案を得る。また、本年度から、直ちに、こうした趣旨を踏まえた対応を行う。

○平成29年7月~平成29年12月 「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」において計8回会合を開催し、平成29年12月8日に最終報告を取りまとめ。
(参考)「地方における若者の修学・就業の促進に向けて-地方創生に資する大学改革-」(平成29年12月8日 地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議 最終報告)抜粋
(スクラップ・アンド・ビルド)
  東京23区内に所在する学部・学科の収容定員の総数の増加を伴わない学部・学科の改編等(スクラップ・アンド・ビルド)は東京23区の学生の増加・集中にはつながらないことから、抑制の例外とすべきである。ヒアリングにおいて、他学部の定員削減により、大学全体の定員を増やさず、教員の配置転換も積極的に進めて新設された滋賀大学のデータサイエンス学部や宇都宮大学の地域デザイン科学部のような事例がある一方で、上智大学の総合グローバル学部の新設時は、教員の配置等の関係から他学部の定員を同時に減少することは困難であるとの意見もあった。
  これらのことを踏まえ、新たな学部・学科を新設することに伴い、旧来の学部・学科を廃止する移行期間については、一時的に収容定員の総数が増加することを認めることも考えられる。
  短期大学から4年制大学に転換する場合や、専門学校が専門職大学・専門職短期大学を設置する場合、大学全体や一部を統合等する場合など、東京23区に所在する高等教育機関がその収容定員を活用して、東京23区に他の高等教育機関を設置する場合は、上記のスクラップ・アンド・ビルドと同様の趣旨で、抑制の例外とすべきである。
  ただし、専門学校の定員の管理は大学等の定員管理とその仕組みが異なっているため、制度設計には留意が必要である。
 一方で、スクラップ・アンド・ビルドの徹底に当たっては、以下の点に留意が必要である。
・単に既存大学の総定員の枠を温存することにならないよう、新学部・学科の設置等に当たっては、その必要性や教育の質が担保されるような仕組みを設けること
・定員削減を行う場合や、学生や社会のニーズを踏まえた学部・学科の見直しを行わない場合の両面から、交付金等の配分の検討を行うこと
・現在は認可事項となっていない学内の学部・学科間の収容定員の振替、学部・学科の収容定員増を伴わないキャンパス移転等による東京23区の定員増も含めて抑制の対象とするべきであること
(抑制の例外)
  留学生については、東京が国際都市として発展していくためには、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(平成29年6月閣議決定)や「留学生30万人計画」(平成20年7月)において言及されているように留学生の受入れ促進が重要であること、また、地方から東京への若者流入にはつながらないことから、抑制の例外とするべきである。
  ただし、留学生を抑制の例外とするに当たっては、その定員管理を適切に行う必要があるとともに、教育の質の確保にも配慮することが必要である。
  社会人については、個々の社会人の資質・能力の向上が必要であり、「経済財政運営と改革の基本方針2017」や「未来投資戦略2017」(平成29年6月閣議決定)において言及されているリカレント教育等の充実が不可欠であること、また、リカレント教育の推進のためには、職場に近い大都市部にその学びのための場所が必要であるが、職場近くでの学び直しは東京への若者流入にはつながらないことから、抑制の例外とするべきである。
  なお、通信教育については、学生が東京23区に居住する必要がなく、夜間学部についても、同趣旨の考えから、抑制の例外とするべきである。
校舎等の施設又は設備の整備を行うなど必要な投資を行う場合で、既に収容定員増について機関決定を行い、公表している場合は、規制前における大学経営の自主性・主体性を尊重することが必要であることから、抑制の例外とするべきである。
  一都三県外に所在する大学の学部・学科が東京23区にキャンパスを新増設・拡充して、一部の学修を東京23区において実施する場合は、例えば、1・2年生時は東京で履修し、3・4年生時は地方で履修するような場合は、地方の若者の東京圏への転入増加につながるものとは言えないことから、抑制の対象外とするべきである。
  なお、東京23区に所在する大学の学部・学科が一都三県外にサテライトキャンパスを新増設・拡充し、学部・学科全体としては収容定員が増加する場合(一部の学修を地方において実施する場合)は、地方キャンパスで一部の学生が履修することにより、東京23区で履修する学生数が増加せず、また地方での就学機会の増加に資するものであることから、抑制の例外とするべきである。

○平成29年11月17日 第13回まち・ひと・しごと創生会議 東京23区の大学の定員抑制を含む「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」の基本的方向(案)について審議

○平成29年12月18日 第14回まち・ひと・しごと創生会議 「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」について審議
(参考)「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」(平成29年12月22日閣議決定)抜粋
  東京の大学進学者の収容力は200%と突出している上に、近年、東京23区の大学生は増加傾向にある。とりわけ、東京圏への転入超過数の約12万人(2016年)のうち、大学進学時の転入超過は約7万人程度であり、特に東京23区には全国の学生の18%が集中している。
今後18歳人口が大幅に減少する中、他の地域と比べて優位性の高い東京23区の定員増が進み続けると、更に地域間の大学の偏在が進むとともに、地方大学の中には経営悪化による撤退等が生じ、高等教育の就学機会の格差が拡大していくことになりかねない。また、大学進学時の東京都への転入者は、就職時においても東京都への残留率が高いことから、20代の若者の東京圏への転入超過を助長しかねない。
  以上から、近年学生数の増加が著しい東京23区においては、学部・学科の所在地の移転等も含めて、原則として大学の定員増を認めないこととする。

8 事後評価の実施時期等

(12) 事後評価の実施時期の明記

  平成36年3月31日までの間に専門職大学等の設置の状況その他法の施行の状況について検討することとするとともに、平成40年3月31日までの間に、地域における若者の修学及び就業の状況その他法の施行の状況について検討を行うこととしている。
  なお、特定地域内学部収容定員の抑制に係る規定は平成41年3月31日に失効することとしている。

(13) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 事後評価に向け、東京圏への転入超過数、東京23区の学生数等により効果等を把握する必要があると考える。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課

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