政策目標13 文化による心豊かな社会の実現

概要

 優れた芸術文化の振興を図るとともに、我が国固有の伝統文化を継承・発展させることにより、文化による心豊かな社会を実現する。

主管課(課長名)

 文化庁長官官房政策課(清水 明)

評価

 本年度の評価対象となった施策目標12-1及び12-4については、それぞれ総じて順調な進捗がみられた。このことにより、『文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)』において、重点的に取り組むべき事項として掲げられている「芸術文化の振興」及び「文化芸術振興のための基盤の充実」に向けた取組は想定通りに達成された。

24年度実施施策の取組状況

○(施策目標13-1)
 文化芸術が人々を引きつける魅力や社会への影響力、すなわち「文化力」が国の力であることは世界の共通認識であり、「文化力」は国民の心を豊かにするのみならず、創造的産業や観光振興等の経済活動においても新たな需要や高い付加価値を生み出す源泉でもある。「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」においても、文化芸術振興に関する6つの重点戦略として、「文化芸術活動に対する効果的な支援」「文化芸術を創造し、支える人材の充実」「子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実」等が言及されている。このように、芸術文化の振興に取り組むことは文化芸術立国を目指す我が国にとって不可欠である。
これらを踏まえ、我が国の芸術文化活動水準の向上を図るとともに、国民全体が、芸術文化活動に参加できる環境を整備する必要がある。
 そのため、各達成目標において、主に以下のような施策を行っている。

・達成目標1:「舞台芸術創造力向上・発信プラン」においてトップレベルの芸術団体等への支援を行い、「日本映画の創造・交流・発信」において映画製作活動の推進を図るなど、我が国の芸術家や芸術団体による優れた芸術文化活動を各分野にわたって支援した結果、優れた芸術文化活動が活発に行われるような環境が醸成された。

・達成目標2:「新進芸術家の海外研修」において新進芸術家に海外研修の機会を提供するなど、各分野における人材の育成、顕彰等の事業を通じて、我が国の芸術家や芸術団体による優れた芸術文化活動を支援した結果、我が国の芸術文化の将来を担う、世界に通用する優れた新進芸術家等を多く輩出している。

・達成目標3:一流の文化芸術団体の巡回公演や芸術家の派遣等を実施する「次代を担う子供の文化芸術体験事業」や、高等学校の生徒による文化部活動の発表の場の提供、顕彰等を実施する「全国高等学校総合文化祭」等を通じ、子供たちの豊かな感性や創造性の育成を着実に進めることができた。学校等における公演数や学校への芸術家派遣箇所数は増加傾向にあるなかで、子供たちの「舞台芸術への関心を高めることができた」と回答した開催校の割合は、2年度連続で97%以上という高い水準を維持している。

・達成目標4:劇場、音楽堂等への支援や、国民の文化活動への参加の推進などを通じ、地域住民が質の高い芸術文化活動に触れられる環境の形成を着実に前進させた。また、地域が主体となった文化の振興をより一層推進するため、平成24年度より新たに「地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ」事業を行ったところ、同事業を実施した地方公共団体の人口に対する事業への参加人数の割合が目標の1%を大きく上回る15%に及ぶなど、地域が主体となった文化の振興を積極的に進めることができた。この結果、地域の住民が質の高い芸術文化活動に触れられる環境の形成が進展した。

○(施策目標13-2)
モニタリングとしたため、モニタリング結果を参照。

○(施策目標13-3)
モニタリングとしたため、モニタリング結果を参照。

○(施策目標13-4)
 平成23年2月に閣議決定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」では、「文化芸術の振興に関する基本的施策」のなかで、「国語の正しい理解」「日本語教育の普及及び充実」「著作権等の保護及び利用」が文化の基盤をなすものとして位置づけられている。著作権等の保護及び利用については、「知的財産推進計画」においても新しい課題への対応が重点事項として取り上げられるなど、政府をあげて取り組むべき課題の1つとされている。宗教法人法では、憲法に定められた信教の自由と政教分離の原則を基本とし、宗教法人の「自由と自主性」「責任と公共性」の2つの面からの要請を骨子として体系が組み立てられており、その適正な運用の徹底が求められている。また、「重点施策を推進するに当たって留意すべき事項」として、「計画、実行、検証、改善(PDCA)サイクルの確立等」が掲げられている。
 これらを踏まえ、今後も、社会の変化に対応しながら文化芸術の振興を図っていくため、その基盤の充実に着実に取り組んでいく必要がある。
 そのため、各達成目標において、主に以下のような施策を行っている。

・達成目標1:第3次基本方針の重点戦略に基づく施策の着実な進行管理が行われるとともに、同基本方針に沿った施策の企画・立案を行っている。

・達成目標2:一般の国民、都道府県の著作権事務担当者、図書館職員及び教職員を対象とした各種講習会を開催している。講習会参加者に対しアンケートを実施しているが、その理解度は毎年90%以上であり、基本的な著作権知識の普及啓発活動を適切に実行できているといえる。また、講習会だけでなく著作権に関する学習ソフトをホームページを通じて広く提供している。著作物の利用実態や流通の在り方に関する調査研究等を通じ、情報化の進展に対応した著作物の円滑な流通を促進している。

・達成目標3:侵害発生国の取締機関職員を対象としたトレーニングセミナーを開催し、当該国における海賊版取締りの実効性を高めるために著作権や日本コンテンツに関する知識を提供するなど、アジア諸国等における海賊版対策を実施することにより、我が国の著作物を適切に保護するための条件整備が図られている。

・達成目標4:国語問題研究協議会や「国語に関する世論調査」を通じ、国民の国語に対する理解を深めている。また、日本語教室の実施、日本語教育を行う人材の養成・研修の実施、日本語教育のための学習教材の作成等を行う取組の支援等を行うことにより、外国人が日本社会の一員として日本語を用いて円滑に生活を送ることことに寄与している。

・達成目標5:宗教法人の事務担当者を対象とした研修会の開催等を通じ、適切な事務処理の重要性についての啓発と、具体的な処理能力の向上を図ることにより、適正な宗教法人の管理運営に寄与している。

25年度以降の政策への反映方針

○(施策目標13-1)
・達成目標1:トップレベルの舞台芸術創造事業については、平成25年度以降は、目標の達成に向けて年間事業支援型採択団体数の拡充に努める。また、トップレベルの芸術団体が行う創造発信活動への支援については、事業の成果の一層の向上を図るため、今後、助成事業の成果や課題を調査分析し、助成事業の改善につなげるため現在試行的に導入している「日本版アーツカウンシルの試行的導入」事業の成果を検証しながら事業を展開する。なお、「日本版アーツカウンシルの試行的導入」事業については、独立行政法人日本芸術文化振興会において試行が行われており、これまでも必要に応じて独立行政法人日本芸術文化振興会から文化審議会文化政策部会へ報告を行っているところであるが、今後、試行の結果を踏まえて検証を行う。

・達成目標2:新進芸術家海外研修制度については、質の高い応募者を増やし、目標の人数を派遣するため、事業の改善等を図る。具体的には、過去の派遣者等の現在の活躍状況や本制度に対する改善意見等を踏まえ、平成25年度において、現地での活動に係る制約の柔軟化、一時帰国に係る条件の緩和等を図る予定である。

・達成目標3:次代を担う子供の文化芸術体験事業については、今後とも水準の維持に努めながら、義務教育期間中に子供たちが文化芸術に触れる機会を2回提供できるよう、予算の確保とともに事業のより効率的な執行を図る。

・達成目標4:劇場・音楽堂等活性化事業については、「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」(平成24年法律第49号)及び「劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針」(平成25年文部科学省告示第60号)を踏まえ、全国のより多くの劇場、音楽堂等が積極的に実演芸術の公演等の鑑賞機会を設け、国民に対し広く実演芸術に親しむ機会を広く提供することができるよう、事業の更なる充実・改善を図る。

○(施策目標13-4)
・達成目標1:審議会における進捗状況の点検結果や委託調査研究の成果を、今後の文化行政の企画・立案等に一層取り入れていくための方策を考えていく。

・達成目標2:引き続き、対象別各種講習会を実施し、著作権制度の普及・啓発を行っていくが、参加者が満足の得られるような講習会の中身の充実に努めていく。

・達成目標3:我が国の著作物を適切に保護するための条件整備を図るため、権利者の意見も踏まえて、これまで中国・韓国等を対象としていた二国間協議について東南アジアを中心に対象国を拡大するとともに、中国を中心に実施してきたトレーニングセミナー、平成24年度から開始したグローバルな著作権侵害への対応、平成25年度からの新規事業である侵害発生国・地域における著作権普及啓発の各事業についても東南アジアを対象国としつつ、より一層効果的な侵害対策事業を実施する。

・達成目標4:引き続き、国語の改善及びその普及と外国人に対する日本語教育の充実を進めるための取組を行うとともに、平成24年度の文化審議会国語分科会の審議の結果を踏まえて、施策を着実に実施する。

・達成目標5:引き続き、宗教法人実務研修会について、受講者の理解度向上を図るため、参加者からの要望や評価企画会議での検討を生かして内容の充実を図り、一層の宗教法人実務の啓発に努めていく。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成25年12月 --