政策目標10 科学技術の戦略的重点化

●概要

国家的・社会的課題に対応する研究開発の重点化した推進と振興・融合領域への先見性、機動性をもった対応を実現する。このため、9つの施策によってその目的の達成を目指す。

●主管課(課長名)

研究振興局振興企画課(菱山 豊)、研究開発局開発企画課(田口 康)

●評価

科学技術の戦略的重点化を実現するための8つの施策全てについて、十分な進捗が得られた、または着実な進展が見られたと判断でき、各施策目標は想定どおり達成された。

●23年度実施施策の取組状況

○ライフサイエンス分野の研究開発の重点的推進及び倫理的課題等への取組(施策目標10-1)

 我が国の優位性のある研究分野や独創的手法を活かした、タンパク質の構造・機能解析、再生医療研究、次世代がん治療研究、脳科学研究及び倫理的な課題への対応等、基礎研究の実施を健康大国の実現につなげるという目標の実現に向けた関連施策が着実に実施されており、それらの効果や結果として着実にアウトカムや体制及び環境整備の進捗にも現れている。再生医療研究やがん治療研究に見られるように、これまでの我が国の知見を活かして基礎から応用まで切れ目ない目標設定のもとに実施されており、効率性が十分に見込まれる。
 施策目標の実現に向けて、これまでも関係施策が効果的かつ効率的に実施されているものと認められるが、当該分野が国際的にも競争が激しい分野であるため、オールジャパン体制で対応していくことが重要であり、基礎から実用化まで切れ目なく推進するための更なる研究資金の重点化、規制・制度改正等による体制の整備、関係府省との連携が必要不可欠であり、社会への還元や応用を常に視野に入れて、更なる一層の先端的医療実現のための研究等の推進を図るべきである。

○情報通信分野の研究開発の重点的推進(施策目標10-2)

 モニタリングとしたため、モニタリング結果を参照。

○環境分野の研究開発の重点的推進(施策目標10-3)

 運用中の衛星による観測データを活用した成果が上がっているほか、気候変動や水循環変動等の地球規模環境課題に関するデータを取得するための衛星・センサの開発も着実に実施しており、GEOSSの構築に向けた衛星による地球観測技術の確立に向けて着実に進捗している。また観測データ等を目的に応じて統合・解析し、気候変動適応に資する科学的知見として創出することとし、それに必要となるデータ蓄積許容量と、DIASを利用する研究課題を確保しつつ、環境省環境研究総合推進費(S-8)「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」をはじめ関係府省が連携して着実に事業を推進している。研究成果としては、DIASの高度化・拡張に必要なデータ蓄積許容量を5.0ペタバイトから8.4ペタバイトへ増加させたほか、地域規模の気候変動適応策に資する累計査読論文数が平成22年6本から平成23年度60本へ、気候変動予測の高度化のためにモデル開発等に関する累計査読論文数が平成18年0本から平成23年度651本となり着実に成果を創出している。
 事業に参画する研究代表機関は、外部有識者により構成される審査会を経て公正に選定されており、外部有識者による研究調整委員会において、事業の進捗管理や効果的・効率的な運営方法等について評価を受けており合理的な事業運営がなされているほか、事業資金の使途等を書面調査、現地調査も実施している。従来の研究成果を最大限に活用するとともに、参画する研究機関が協力して研究開発を進め、二酸化炭素排出削減に向けた緩和策、地球温暖化影響への適応策をあわせて気候変動予測研究と影響評価研究等の連携を深化させる仕組みを構築するなど、効率的な気候変動研究を推進している。人工衛星による地球観測は、他の観測手段と比較して広域なデータを同じ精度で取得することができることから、地球規模課題である気候変動等の観測において効率的な手段である。

○ナノテクノロジー・材料分野の研究開発の重点的推進(施策目標10-4)

 平成23年度からは、特に、産学官の連携に重点を当てており、産業界や経済産業省と連携し、産業界の課題の的確な抽出とその解決に向けた計画の見直し・強化や、一定の成果の得られた課題の民間プロジェクトへの引き継ぎなどを実施しており、着実な課題の進捗が見られる。
 本施策において実施されてきた各事業において、これまで蓄積された経験、ノウハウを効果的に活用しつつ、中間評価を踏まえた事業計画の見直しや、新規事業の企画・立案段階における外部有識者による事前検討の実施など、戦略的・効率的な事業の推進に努めている。
 平成23年度においては、特に、経済産業省との連携を進め、「成果情報・市場ニーズの共有」「産業界の課題の科学的深掘り」「研究設備の活用促進」など、研究成果の早期実用化に向けた取り組みを実施している。例えば、「元素戦略プロジェクト」の23年度終了課題については、一定の成果が得られたため、経済産業省とも検討の上、経済産業省プロジェクト又は民間企業プロジェクトにおいて実施することとするなど、研究段階に応じた投資がなされるよう努めている。
 最先端のナノテクノロジー研究設備の共用制度の定着や希少元素を用いない排ガス触媒をはじめとする革新的な新材料の創出など、ナノテクノロジー・材料科学技術に係る研究開発の重点的推進によって、我が国の研究開発及び素材産業の活性化に繋がる成果が得られている。しかし、我が国が抱える資源、エネルギーの制約等の問題を克服し、東日本大震災からの復興、再生を成し遂げるためには、イノベーションを継続的に創出していくことが必要であり、異分野融合、産学官連携の更なる強化を行い、企業が直面する技術課題や、社会的課題の解決に向け、基礎研究の成果を出口まで結びつける戦略的な仕組みを構築することが肝要である。
 特に、東日本大震災からの復興に向けては、「東北の大学や製造業が強みを有する材料開発、光、ナノテク、情報通信技術分野等における産学官の協働の推進」が、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月 東日本大震災復興対策本部決定)において指摘されていることを踏まえ、被災地域の大学、公的研究機関、産業の知見や強みを最大限活用し、産業集積、新産業の創出及び雇用創出等を促進する取組について検討が必要である。
 また、文部科学省の関連事業の成果を、速やかに実用化への展開に移行させるために、経済産業省との関連事業間の緊密な連携・協力を促進する仕組みを検討することが必要である。

○原子力分野の研究・開発・利用の推進(施策目標10-5)

 原子力の研究開発利用は、エネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上に寄与するものとして進められてきたが東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、現在、今後のエネルギー・原子力政策の見直しの議論が行われているところである。
 今後は、特に高速増殖炉サイクル技術を含む核燃料サイクル関係の事業等は、当該政策見直しの議論を踏まえ、各施策を実施していくことが必要である。一方で、東京電力福島第一原子力発電所事故からの早期の復興・再生に向けて、除染や廃炉等の取組は政府として着実に進めていく必要があり、それにあたって必要な研究開発の取組は、政府全体の計画の中で着実に推進していくことが重要である。
 また、ITER計画等については、将来においてエネルギーを長期的・安定的に確保するとともに、環境適合性や安全性等の観点で優れた特性を有しており、長期的視野に立って着実に推進することが必要である。加えて、原子力は、放射線利用の観点から国民生活の質の向上や産業の発展に貢献しているところ、J-PARCや重粒子線がん治療研究等の量子ビームテクノロジー研究開発は今後とも着実に実施していくことが有用である。
 更に、原子力に係る人材育成、国際協力、立地地域との共生のための取組、平和利用を担保するための保障措置等の取組については、これら原子力の研究開発利用の基盤と安全を支えるものであり、今後とも引き続き着実に実施していくことが必要である。
 高速増殖炉サイクル技術に関する研究開発については、平成23年度は今後のエネルギー・原子力政策見直しに対応できるよう維持管理に適切な養生・保管施策や施設の安全対策等の取組の充実を図った。また、ITER計画等に関しては、恒久的な人類のエネルギー源として有望な核融合エネルギーの早期実現を目指して、国際協力により着実に進捗している。
 J-PARCや重粒子線がん治療研究については、東日本大震災の影響を受けながらも、着実に実績を積み重ねているところであり、研究は着実に進捗している。
 原子力に係る人材育成、国際協力、立地地域との共生のための取組、平和利用を担保するための保障措置等の取組については、いずれも平成23年度も着実に実施し、特に人材育成については、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた取組を実施したところであり、今後の更なる取組と成果が望まれる。
 また、東京電力福島第一原子力発電所事故からの早期の復興・再生に向けた、除染や廃炉に必要な研究開発については、独立行政法人日本原子力研究開発機構を中心に取り組み、複数の小中学校においてプール水の除染実証試験を実施しその知見を手引きとして公開する等、現場での作業に貢献した。
 このように、平成23年度において、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を踏まえながら原子力の研究開発利用に係る取組を有効に実施し、各々について着実な成果が得られた。
 原子力研究開発に係る事業の実施にあたっては、毎年の行政事業レビューや、過去の事業仕分け等の指摘を踏まえつつ、効果的・効率的な実施に努めている。また、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、平成23年度は独立行政法人日本原子力研究開発機構の施設の復旧及び安全対策や事故対応に必要な取組を実施する観点から、可能な範囲で予算の組替えを実施し、効果的・効率的な事業の実施に努めた。

○宇宙・航空分野の研究・開発・利用の推進(施策目標10-6)

 モニタリングとしたため、モニタリング結果を参照。

○海洋分野の研究開発の推進(施策目標10-7)

 気候変動や海洋資源・エネルギー確保、食資源としての海洋生物資源確保の問題等、海洋分野の諸問題は人類の生存や社会生活と密接に関係しており、これらの諸問題を科学的に解明することは国民生活の質の向上と安全の確保に貢献するものであることから、海洋分野の施策を推進していくことが必要である。
 また、今般の東日本大震災により東北沖では海洋生態系が甚大な被害を受けたほか、養殖業や水産加工業を始め被災地の産業も大きな被害を受けており、巨大地震・津波が海洋生態系に及ぼした影響の解明と東北沖で新たな産業を創成し継続的に経済発展を図っていくことが重要である。
 平成23年度は、丸1南極地域観測事業や丸2海洋鉱物資源を探査するために必要なセンサーの開発、丸3海洋生物資源を安定的に確保するための研究開発、丸4震災によって被害を受けた東北沖の海洋生態系を解明するための調査研究と東北地方に海の資源を使った新たな産業を興すための研究開発 について重点的に推進し、各達成目標とも着実に成果が得られている。(例:南極海の氷状が厳しいなか、科学的・国際的な要請に応える高精度のデータを提供(丸1の成果の例)。各種センサーの精度向上・小型化を進め、開発したセンサーについて実海域での実証試験を行い、海底熱水活動等を新たに発見(丸2の成果の例)。)
 今後は、南極への物資輸送体制強化や海洋鉱物資源探査センサーのさらなる実証と高度化、東北沖海洋生態系調査における成果還元などの主な課題に取り組みつつ着実に研究開発を進めていくことが重要である。

○新興・融合領域の研究開発の推進(施策目標10-8)

 モニタリングとしたため、モニタリング結果を参照。

○安全・安心な社会の構築に資する科学技術の推進(施策目標10-9)

 モニタリングとしたため、モニタリング結果を参照。

●24年度以降の政策への反映方針

○ライフサイエンス分野の研究開発の重点的推進及び倫理的課題等への取組(施策目標10-1)

日本の医療関係分野を成長産業として位置づけ、これを発展させるために、革新的な医薬品・医療機器の研究、開発、実用化に係る施策等を国として一体的に推進することは重要である。そのため内閣官房に設置された医療イノベーション推進室を中心として、関係省庁、産学官が一体となったオールジャパン体制により、これらの施策が進められているところであり、文部科学省としては、引き続き、「医療イノベーション5か年戦略」(平成24年6月6日医療イノベーション会議)、「日本再生戦略」(平成24年7月31日閣議決定)等を踏まえ、関係省の緊密な連携・協力の下、産業応用及び臨床研究へと繋げるための取組を実施する。また、倫理的課題等にも引き続き取り組む。具体的には以下のとおり。

(達成目標1)

丸1 「革新的細胞解析研究プログラム(セルイノベーション)」では、細胞・生命プログラムを解明するためシーケンス拠点・データ解析拠点の整備・機能強化を着実な実施により、達成目標である医学・薬学への貢献、産業応用に向けた生命現象解明のための基盤が形成されつつあり、その基盤を活用することにより解析技術の発展や新規技術の開発が進んでいる。これらを活用することで創薬や再生医療分野への大いなる貢献が期待されるとともに、技術革新のスピードに遅れることなく取り組んでいく必要があることから、各拠点におけるさらなる基盤整備・機能強化のために適切な予算措置を行う。
「脳科学研究戦略推進プログラム」では「社会に貢献する脳科学」の実現を目指し、ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)の開発や脳ダイナミックス推定技術の開発等、脳科学研究についての研究を着実に実施しており、これらの技術は達成目標である医学・薬学への貢献や産業応用に向けて重要な位置づけであることから、引き続き適切な予算措置を行い、着実に効率的・効果的な実施に取り組む。
丸2 「革新的タンパク研究プログラム(ターゲットタンパク)」はその目標を達成したため平成23年度で事業終了したが、我が国の構造解析研究を新たな段階に押し上げた。生命科学研究において構造解析研究はますます重要となるが、この事業により整備された基盤は「創薬等支援技術基盤プラットフォーム」に引き継ぎ、アカデミア創薬の基盤として活用しつつ、支援のための要員体制の整備、人材育成の体制の仕組み等について引き続き取り組む。

(達成目標2)

丸1 「次世代がん研究戦略推進プロジェクト」については、ヘッドクォーター機関による研究課題の効率的な推進や、ゲノム解析を実施する上での倫理問題対応や創薬候補物質に対する知財戦略について引き続き取り組む。
丸2 「分子イメージング研究戦略推進プログラム」については、臨床試験フェーズに移行した研究課題もあることから、計画的な薬剤供給を含めた効率的な研究推進に引き続き取り組む。
丸3 「再生医療の実現化プロジェクト」については、再生医療のいち早い実現のため、府省横断的に長期的な研究開発支援をすることを目指す「再生医療の実現化ハイウェイ」が平成23年度から新たに開始され、フェーズに応じて適切な課題が採択されている。平成25年度までに体制幹細胞を用いた課題の臨床研究への移行、平成29年度までにはiPS/ES細胞を用いた研究の臨床研究への移行を目指すためにも、今後も適切な予算措置を行う必要がある。

(達成目標3)

 「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」については、感染症分野の国際動向を踏まえつつ、事業に参画する研究人材の数を着実に増加させ、新興・再興感染症分野における人材育成に引き続き取り組む。

(達成目標4)

 「ライフサイエンス研究開発推進費」では、ライフサイエンス分野の研究開発の推進全体に必要な経費及び、生命倫理・安全対策に関わる諸問題に対する調査検討及び法令に基づく審査等を実施しており、毎年度研究の発展・動向を踏まえて法令・指針の見直し等を適宜実施することとしている。引き続きこれまでの取組を着実に推進していく必要があるとともに、法令・指針等の見直しに当たっては、総合科学技術会議等の関係省庁の検討等を踏まえつつ、速やかに取り組んでいく必要がある。

(達成目標5)

 「東北メディカル・メガバンク」では、平成23年6月7日にとりまとめられた東北メディカル・メガバンク計画検討会の提言の内容を踏まえつつ、平成28年度までに15万人規模のバイオバンクを形成するために、東北大学等が総務省・厚生労働省の支援によって構築される医療情報ネットワークや他の先行して実施されているコホートと連携をしつつ、課題ごとのワーキンググループ等を設置して実施計画の具体化を進めると共に、文部科学省は推進本部を設置して進捗を管理し、着実かつ速やかに実行していくことが必要である。

○環境分野の研究開発の重点的推進(施策目標10-3) 

(達成目標1)

 平成23年度は、運用中の衛星によるデータ取得の継続、および取得したデータの活用による成果の創出に取り組むとともに、地球観測の精度向上に貢献する衛星の研究開発を着実に実施した。
 今後は、観測の空白期間を可能な限り短期間にとどめるため、平成23年5月に運用を停止した「だいち」の性能を向上させた後継機(ALOS-2)の開発を推進し、平成25年度の打上げを着実に実施することが必要である。

(達成目標2)

 地球観測衛星や陸域・海洋観測等によって得られる地球観測データ、気候変動予測結果、社会経済データなどを統合・解析し、水資源や農作物管理などに関わる政策決定者や研究者に対し新たな科学的知見を提供するための「データ統合・解析システム(DIAS)」を構築するため、地球環境情報統融合プログラムを実施。平成23年度はDIASの高度化・拡張に必要なデータ蓄積許容量を5.0ペタバイトから8.4ペタバイトへ増加させたほか、DIASを利用する研究を10課題実施するなど、利用促進に向けて着実に進捗した。
 今後は、関係省庁と連携して、地球観測データの統合化に向けて、多様で大量な地球観測データ等を収集、総合解析して気候変動に伴う諸課題に適応できる新たな価値を創出するシステムの強化を行う。

(達成目標3)

 地域規模の気候変動適応策立案への貢献に資するために必要となるダウンスケーリング手法、データ同化技術、気候変動適応シミュレーション技術の確立のため、気候変動適応研究推進プログラムを実施。気候変動に対応した農業生産最適化システム構築に資する要素技術を開発するなど、気候変動適応に資する科学的知見を着実に創出している。なお、研究成果として創出された累計査読論文数は、平成22年6本から平成23年度60本となり着実に成果を創出している。
 研究対象地域の自治体に特化した適応策策定に資する研究開発を行うのではなく、研究成果の汎用性を高め類似する地形・気候となるその他の都道府県等自治体にも活用できるよう、シンポジウムを開催するとともに、関係自治体にも参画いただく意見交換会等を開催し、連携を強化する。

(達成目標4)

 地球温暖化等の気候変動問題について、地球シミュレータを利用した気候変動予測実験・評価・不確実性の定量化等を実施し、信頼性の高い予測研究の成果を基礎的な科学的情報として国内外の影響評価研究機関等に広く提供した。また、2013年度頃策定されるIPCC第5次評価報告書の作成に資する有用な予測研究の成果が得られており、国際的なプレゼンスを高めるとともに、当該報告書への多大な貢献を果たすことが期待でき、当初の目標は達成したため、23年度を以て終了した。
 今後は、気候変動によって台風の強大化や干ばつの増加等が引き起こされ、自然災害等のリスクが増大することが予測されているため、自然災害リスク等を含む地球環境問題の対応策の立案等に資する確率を考慮した基盤的情報の創出が課題であり、これまでの気候変動予測研究の成果を最大限に活用しつつ、気候変動予測の研究開発をさらに推進していく必要がある。
 この評価を踏まえ、気候変動予測の信頼性を高めるとともに、気候変動リスクの特定や生起確率を評価する技術、リスクの影響を多角的に評価する技術に関する研究を達成目標5に引き継いで着実に推進する。

(達成目標5)

-(平成24年度新規のため)

(達成目標6)

-(平成24年度新規のため)

○ナノテクノロジー・材料分野の研究開発の重点的推進(施策目標10-4)

 我が国の資源制約を克服し産業競争力を強化するため、希少元素を用いない革新的な代替材料の創製を行う「元素戦略プロジェクト<研究拠点型>」を平成24年度から実施しており、引き続き推進する。なお、文部科学省の関連事業の成果を、速やかに実用化への展開に移行させるために、経済産業省との間で「ガバニングボード」を設置するなど、両省の関連事業間の緊密な連携・協力を促進する仕組みを検討している。
 ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が緊密に連携して、全国的な設備の共用体制を共同で構築するため、平成24年度から「ナノテクノロジープラットフォーム」事業を実施しており、引き続き推進する。
 「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、東北の大学や製造業が強みを有するナノテクノロジー・材料分野において、産学官の協働によるナノテクノロジー研究開発拠点を東北大学に形成し、世界最先端の技術を活用した先端材料を開発することにより、東北素材産業の発展を牽引し、東日本大震災からの復興に資することを目的とし、平成24年度から「東北発 素材技術先導プロジェクト」を実施しており、引き続き推進する。
 企業が直面する技術課題や、社会的課題の解決に向け、産学官連携研究拠点である「ナノテクノロジーを活用した環境技術開発」では、産業界の本質的な技術課題を的確に捉えるとともに、柔軟な研究テーマ設定及び民間企業の技術担当者との連携を強化し、基礎研究の成果を課題解決へ結びつける仕組みを構築しており、引き続き推進する。

○原子力分野の研究・開発・利用の推進(施策目標10-5)

(達成目標1)

 高速増殖炉サイクル技術の研究開発に関しては、今後のエネルギー・原子力政策見直しの状況を踏まえ、適切な取組を実施していく。
 ITER計画及びBA活動に関しては、引き続き各極と連携しつつ、国際的に合意されたスケジュールに沿って研究開発活動等を進める。また、コスト削減努力を行うなど効果的・効率的な事業の実施に努める。

(達成目標2)

 J-PARCについては、引き続き効果的・効率的な運営を図り、震災による研究の遅れを取り戻すと共に、更なる共用の促進に努める。
 独立行政法人放射線医学総合研究所における重粒子線がん治療研究については、より一層の効果的・効率的な運用により、治療実績の向上及び研究知見の蓄積に努める。

(達成目標3)

 原子力人材育成については、引き続き原子力安全や危機管理等に係る中長期的な課題に対応するための人材育成活動を強化するとともに、国際協力、立地地域との共生等の取組について、引き続き着実に実施していく。
 また、東京電力福島第一原子力発電所事故踏まえて重要性が増すと考えられる、放射性廃棄物対策や原子力安全確保に係る基礎基盤研究・人材育成の取組について、重点的に推進していく。

(達成目標4)

 除染や廃炉の課題解決に向けて、関係機関と連携しながら、現場のニーズに対応しつつ、政府全体の計画のもとで必要な研究開発の取組を着実に実施する。

○海洋分野の研究開発の推進(施策目標10-7)

(達成目標1)

 南極地域観測事業について、南極観測船「しらせ」が昭和基地沿岸に接岸できないことも想定した輸送体制の構築を図り、今後も引き続き観測を推進する。

(達成目標2)

 海洋鉱物資源探査技術高度化について、我が国の海洋鉱物資源の開発については、経済産業省とも連携して取り組んでおり、センサーの小型・軽量化や耐圧性向上等の技術的課題を克服するとともに、探査機等のプラットフォームに搭載し、実海域での試験に移行する。

(達成目標3)

 海洋生物資源確保技術高度化については、当初の計画通り順調に進んでおり、革新的な生産手法の開発に向け、要素技術の高度化や安定供給の技術等の開発を着実に推進する。

(達成目標4)

 東北マリンサイエンス拠点形成事業については震災で被害を受けた海洋生態系の再生は10~20年という長い時間をかけて進行していくものと考えられており、長期期的に調査していくことが必要である。また地元からの要望も強く、引き続き事業を実施していく。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成24年10月 --