平成24年度要求・要望額:10,053百万円
(平成23年度予算額:8,125百万円)
研究振興局基礎研究振興課(内丸 幸喜)
なし
本事業は、大学等を対象とし、世界トップレベル研究拠点形成を目指す構想に集中的な支援を行い、システム改革の導入等の取組を促すことにより、優れた研究環境と高い研究水準を誇る目に見える拠点の形成を目指す事業である。
世界最高レベルの基礎研究水準、複数の分野に跨る融合領域の創出、英語を公用語とするなど国際水準の運営と環境の実現、拠点長の強力なリーダーシップ確保など研究組織の改革について、それらの同時達成を求める意欲的な事業であり、5年ごとの評価を経た上で1拠点当たり年間約14億円の支援を10年間(特に優れた拠点については15年間)行う。また、特定の研究プロジェクト費を提供するプログラムではなく、国からの予算措置と同等以上の研究費等のリソースを拠点側が別途確保することを求める機関補助事業である。(拠点のイメージは、世界トップレベルの主任研究者10~20人以上、総勢200人以上、研究者のうち常に3割以上は外国人。)
平成24年度からは、東日本大震災や世界的な知の大競争の激化等を踏まえ、新たな戦略的展開として、国際的に先鋭な領域に焦点を絞った研究拠点の形成(1拠点当たり原則年間約7億円の支援)を開始する。
平成19年度の事業開始より5年目を迎え、これまで、丁寧な進捗把握とフォローアップにより、着実な目標達成と毎年の改善につなげることに成功してきている(既存拠点は、平成19年度採択の東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)、東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)、京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)、大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)、物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)及び、平成22年度の採択の九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)の6拠点)。
各拠点は、外国人比率が30パーセントを超え、英語使用が名実ともに「当たり前」となり、異分野融合の取組も活発になっている。すなわち、日本にいながら海外トップ拠点と同様の研究環境を実現しており、若手研究者にとっては、異文化の中で競争し切磋琢磨できる「国内武者修行」としてグローバル人材育成の場となっている。
東日本大震災を受け、優秀な外国人の日本離れや研究環境としての日本への信頼低下が懸念されるところ、平成24年度は、既存の6拠点の強固な発展を確保するとともに、新たな戦略的展開として国際的に先鋭な領域に焦点を絞った取組を加え、「国際基準で世界と戦う、世界に見える部分」を倍増させる。これにより、グローバル人材の育成に資するとともに、世界に開かれた復興、日本ブランドの再構築に貢献する。
近年、中国の急成長をはじめとする世界の知の大競争が激しくなっており、世界的な頭脳循環を巡っては、優秀な研究者が知的刺激と国際基準の研究環境を求めて集まる場を構築することが国家的競争となっている。加えて、東日本大震災を受け、我が国の活力となるべき優秀な外国人の日本離れが懸念されており、外国人研究者の離日、研究環境としての日本への信頼低下を克服する最前線として、国際認知度が高く世界の人材市場と直接繋がっている「国際基準で世界と戦う、世界に見える」研究拠点の重要性が増大している。
大規模かつ長年をかけて評価を確立してきた世界のトップ拠点を巡る競争とは別途、海外では、先鋭な領域に焦点を絞った研究拠点を形成する動向が認められ(例、米カーネギーメロン大学Robotics
Institute)、当該競争に新規参入することで我が国のトップレベル拠点形成を強化することが必要である。
各WPI拠点は、国による支援と毎年の丁寧なフォローアップを受け、システム改革を含めた拠点形成を着実に進めていると認められる。また、先般閣議決定された第4期科学技術基本計画においても、優れた研究環境と高い研究水準を維持する世界トップレベルの研究拠点の形成を促進することが引き続き掲げられているところである。さらに、優秀な研究者を内外から集めることにより、さらに優秀な研究者を引き寄せるという正の好循環を成り立たせる研究拠点形成を実現するには、このような国としての安定的な方針及び支援が不可欠である。
本事業では、著名な有識者委員会及びプログラム・ディレクター(PD)・プログラム・オフィサー(PO)のチームエフォートにより、丁寧な進捗把握と専門的助言・指導を通じて、毎年拠点の取組状況の評価・フォローアップを行っている(本年度は先行5拠点の中間評価を実施中)。具体的には、外国人を半数程度含む6~8人の作業部会及びPD・POによって、毎年度サイトビジットを行い、自己点検評価報告書を基にヒアリング等を実施し、その結果を基にプログラム委員会(委員長:井村裕夫元京都大学総長、外国人3割以上を含む16人で構成)が厳格な評価を行うというきめ細やかなフォローアップを実施している。外国人による忌憚のないコメントを含むフォローアップ結果(助言及び指導等)は書面で拠点に伝達されるとともに、PD・POは日常的に拠点と意思疎通を図っている。
各拠点では、本フォローアップによる助言及び指導等に真摯に対応し、これら専門家がフォローすることにより、毎年の改善に着実に繋げることに成功し、効果的に「目に見える拠点」形成に向けた取組を促す体制となっており、本事業の有効性は高いと評価される。
WPI補助金: 9,898百万円
(1)既存
1,383百万円×6拠点
(2)新規展開
350百万円(半年分)×2拠点程度 ※新規採択予定
225百万円(半年分)×4拠点程度 ※既存施策とのマッチングによる支援予定
事務委託費: 137百万円
内局事務費: 4百万円
本事業の直接的な目的は、基礎研究における世界トップレベル研究拠点を形成することであり、高い研究水準、融合領域の創出、国際的な研究環境、組織改革の同時達成を目指している。毎年約14億円の支援は人件費及び活動費に充てられており、これにより既存拠点は総勢200人以上の規模の拠点を実現している。新規展開においては原則約7億円の支援により総勢70~100人以上の規模の拠点が形成される。
世界トップレベル研究拠点を有することは、すなわち、その国の科学技術水準を向上させることとなり、諸外国から注目される国としての存在感を生み出す政策効果がある。さらに、グローバルな人材獲得競争に勝ち、我が国で優れた研究活動がなされることを確保することになるため、我が国において、優れた科学的成果(例えばノーベル賞といった著名な賞受賞者輩出)やイノベーションの源泉を創出することとなり、波及的効果も高い。
このような我が国の取組(既存6拠点の形成)は既に諸外国からも注目されており、その拠点を倍増させるということは、東日本大震災を受けて、我が国が内向きに陥らず、むしろ諸外国に対して開かれ、優秀な人材を歓迎し、世界とともに科学技術の発展に貢献するとの国際的メッセージを発することになる。
さらに、グローバル人材の育成との観点からは、既存6拠点において現在、平均約15人の博士課程大学院生がリサーチアシスタント(RA)として参画しているところ、本事業によりそれを倍増させ、さらに新規展開6拠点においても同様の取組が想定される(単純試算では約90人から約270人に)。WPI拠点は、国際的に通用する研究キャリア上のステップアップの場となっており、毎年約270人の若者がグローバル人材として活躍すべく、第一線級の「国内武者修行」を行う効果が見込まれる。
世界トップレベルの水準を明らかにしつつ、第3者による評価を通じてきちんと目標を達成していくことが必要。
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成23年10月 --