施策目標12‐3 日本文化の発信及び国際文化交流の推進

 文化芸術振興、文化財保護等の分野における国際文化交流の取組を推進することにより、我が国の文化芸術活動の水準を向上し、文化を通じて国際社会に貢献し、諸外国との相互理解の推進を図る。

施策期間

 目標達成年度:平成23年度(基準年度:平成19年度)

主管課(課長名)

 文化庁長官官房国際課(大路 正浩)

関係局課(課長名)

 文化庁文化部芸術文化課(清水 明)、文化庁文化財部伝統文化課(白間 竜一郎)、同美術学芸課(栗原 祐司)、同記念物課(串田 俊巳)、同参事官(建造物担当)(大和 智)

施策の全体像

 国際文化交流の取組を通じて、我が国の文化芸術活動の水準を向上するとともに、国際社会に貢献するために、以下の2つの達成目標を設定して取り組む。

○達成目標12-3-1

 我が国の芸術家や芸術団体による海外公演や、海外の芸術団体と我が国の芸術団体とが共同制作公演などを行うことにより、文化芸術振興及び国際文化交流を推進する。実施状況については、以下の2つの指標を用いて基準の結果の平均から判断することとする。
 ・判断基準12-3-1
 イ:文化交流使の指名数・派遣地域数
 ロ:国際芸術交流支援事業申請数

○達成目標12-3-2

 損傷し、衰退し、消滅し、若しくは破壊され、又はそれらのおそれのある海外の文化遺産等に対して、我が国の高度な技術力等を生かした協力等を行うことにより、我が国の国際的地位の向上に資する。この効果を図るため、以下の2つの指標を用いて、基準の結果の平均から判断することとする。
 ・判断基準12-3-2
 イ:開催した国際シンポジウムへの参加者数
 ロ:文化遺産国際協力コンソーシアムへの参加者・参加機関数

達成状況と評価

全体評価 S

 施策目標12-3については、文化交流使の指名数は前年並みで全体的に3地域に及ぶ活動を展開、また国際芸術交流支援事業の申請数も、ほぼ前年並みであった。海外の文化遺産の保護に関しても、基本方針が策定され、着実に「文化遺産国際協力コンソーシアム」の参加者・機関数が増加していることから、平成20年度においては、順調に達成できたものといえる。このことにより、基本目標である日本文化の発信及び国際文化交流の推進は達成されたものと評価される。

○判断基準12-3-1(A)(イA、ロA)

判断基準イ 我が国の芸術家・文化人を文化交流使として海外に広く派遣している。
S=指名数が17以上で、3地域全てに派遣
A=指名数が15以上で、2地域以上に派遣
B=指名数が12以上
C=指名数が11以下

(判断基準イの指名数に関する設定根拠)
 指名数17:海外派遣型文化交流使の派遣期間を5ヶ月(実績平均)と想定した場合の最大指名可能数
 指名数15:これまでの指名実績の平均
 指名数12:指名可能な海外派遣型文化交流使数のうち、実際の指名数が半数以上であることを示す
 指名数11:指名可能な海外派遣型文化交流使数のうち、実際の指名数が半数を下回ったことを示す

判断基準ロ H20年度国際芸術交流支援事業申請数の過去5年間の申請数との比較
S=10%以上増加
A=変わらず〜10%未満の増加
B=10%未満の減少〜変わらず
C=10%以上減少

 日本文化を海外に発信し、国際文化交流を推進するためには、我が国の芸術家や芸術団体を積極的に海外に派遣し、日本文化の魅力を現地の方々に広く紹介するとともに、現地の芸術家・芸術団体と今後の国際文化交流の基盤となるネットワークを構築することが必要である。
 「文化交流使」事業において、我が国の著名な文化人・芸術家等を海外に派遣し、現地の受入機関の協力を得つつ、日本文化に関する講演、講習や実演等を行っている。平成15年度に創設して以降、各文化交流使は、現地の人々に対する日本文化の理解増進、外国の芸術家とのネットワークの形成・強化に資する活動を実施している。平成20年度の文化交流使の指名数及び活動国数は、ほぼ前年並みであったものの、これまでに派遣した実績のない4ヶ国で新たに文化交流使が活動し、活動国が拡大するとともに、3地域にまたがる活動を展開した。また、国際芸術交流支援事業の助成により海外公演を実施する団体に追加的に現地の学校等でワークショップ等をしていただく「短期指名型」を新設することで、文化交流使事業による日本文化の海外発信は一層推進された。
 また、我が国の芸術団体については、国際芸術交流支援事業において、我が国と外国との二国間における芸術交流、海外の優れた芸術団体との共同制作公演、世界で開催される有名なフェスティバル等への参加を支援しており、平成20年度申請数は、平成15年度から平成19年度の過去5年間の平均と比較して、若干上回った。
 以上により、全体としては一定の成果が上がっていると判断する。

(指標・参考指標)

  16 17 18 19 20
1.文化交流使の指名数・派遣国数・派遣地域数 指名数 10 13 19 16 15
派遣国数括弧内は累積) 7(21) 11(28) 14(35) 23(46) 19(50)
派遣地域数※ 1 3 2 3 3
  15 16 17 18 19 20
2.国際芸術交流支援事業申請数 87 123 90 147 93 111
108(平均値)

(指標に用いたデータ・資料等)
1.文化交流使指名数・派遣国数・派遣地域数(文化庁) 
 ※派遣地域数は、派遣国を下記3グループに分類し、文化交流使の活動地域の全体的バランスを示すもの。
地域イ:欧州、北米(文化交流使事業での派遣実績も多く、文化交流の基盤が整っている地域)
地域ロ:アジア、大洋州(文化交流使事業での派遣実績が比較的少なく、地理的にも文化交流の重要性が高い地域)
地域ハ:中東、中南米、アフリカ(文化交流使事業による派遣実績が著しく少ない地域)

2.国際芸術交流支援事業申請数(文化庁)

(指標の設定根拠)
 1.文化交流使の活動は、世界の人々の日本文化に対する理解の深化や、国内外の芸術家・団体との国際文化ネットワークの構築に資する活動を文化交流使一人一人が展開していることから、本事業で指名される文化交流使指名数と派遣国を指標とすることは、事業の質・量を評価する上で有効である。
 2.際芸術交流支援事業申請数(二国間交流事業を除く):国際芸術交流支援事業は、我が国の優れた舞台芸術の海外公演を支援するものであり、同等の予算規模、支援件数で行われている支援事業は他になく、海外公演等の支援を希望する主要な芸術団体のほとんどが本事業に応募するものと考えてよく、施策の推進状況を把握するのに適当である。なお、二国間交流事業については、対象国によって申請数が大きく増減するため、申請数から除外している。

○判断基準12-3-2(S)(イA、ロSS)

判断基準イ 国際シンポジウムの開催:参加者数
S=400人以上
A=300人以上
B=200人以上
C=100人以上
判断基準ロ 文化遺産国際協力コンソーシアム参加者・機関数
S=160以上
A=120以上
B=80以上
C=40以上

 海外の文化遺産の保護に関しては、平成18年6月に「海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律」が成立し、これにより、我が国の文化遺産国際協力事業は重要性を増したところである。平成19年度においては、国や研究機関、文化遺産国際協力コンソーシアム等の役割の他、重点地域をアジアとすることや経済協力との連携強化等について盛り込んだ「基本方針」を決定した。また、効率的・効果的な文化遺産国際協力を推進するため、国内各研究機関等のネットワーク構築、情報の収集・提供、調査研究等を実施する「文化遺産国際協力コンソーシアム」を活用して事業を実施した。
 コンソーシアムでは、各機関の国内連携と国際協力を円滑に進めるために設置されている運営委員会、企画分科会、東南アジア分科会、西アジア分科会、東アジア・中央アジア分科会を運営し、各機関の活動内容や方向性について情報の共有化を図っている。また、会員に対しては、メールサービスを用いて、最新の情報を速やかに伝えるほか、我が国の文化遺産国際協力に関する諸情報を格納したデータベースを提供している。
 平成20年度には、国際シンポジウム「私の文化遺産再発見」を開催し、展示されたパネルと配布された国際協力事例紹介冊子により、日本による文化遺産国際協力について広く周知できた。当該紹介冊子はWeb上にも掲載している。
 効率的・効果的な文化遺産国際協力は、当該コンソーシアムの機能が強化されることによって達成されるものと判断できる。コンソーシアムの参加者数・参加機関数は年々増加しており、前年度比で14%増加していることから、目標を達成していると判断する。

(指標・参考指標)

  16 17 18 19 20
イ国際シンポジウムの開催(単年度) 350人 520人 318人 200人 321人
ロ文化遺産国際協力コンソーシアム参加者・機関数(累積) 141 148 169

(指標に用いたデータ・資料等)
 文化遺産国際協力コンソーシアム提供資料(平成20年度末現在)

(指標の設定根拠)
 文化遺産国際協力コンソーシアムへの参加者・機関数がどの程度増減したかによって、当該コンソーシアムの連携協力の幅を計ることができ、文化遺産国際協力の効果的な連携を図る指標となるため。

必要性・有効性・効率性分析

【必要性の観点】
 日本文化の発信及び国際文化交流の推進については、それらの活動が国のイメージに大きな影響を与え、他方で世界の平和や繁栄にも貢献するという意味で、外交的側面も有するという観点や、国内の文化芸術振興という観点もあることが、平成19年2月9日の「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」の中で明記され、関係省庁と連携しつつ進めていくことが重要とされており、今後も継続して実施していく必要性は高い。

【有効性の観点】
 文化交流使事業、国際芸術交流支援事業により、我が国の芸術家・芸術団体が、独自の予算のみでは実現が困難である海外での公演や実演等を開催し、世界の人々に日本文化に触れる機会を提供するとともに現地の芸術家・芸術団体との交流を図っている。本事業の評価は派遣実績で評価されているが、目標を達成するためには、海外で活躍できる資質を持つ芸術家・芸術団体に機会を与えることが必要であり、継続的に一定数確保しながら実施することで日本文化の発信力強化、国際文化交流の推進に繋がり有効であると考えられる。
 また、海外の文化遺産保護に関しても、文化遺産国際協力コンソーシアムを活用した国際貢献事業の取組を推進し、我が国の文化遺産保存修復の高度な知識・技術・経験を移転していくことは、我が国の専門家の活躍の場を広げる効果がある。また、関係機関が連携して取り組むことによって、相乗的な効果が発揮できるため、有効であると考えられる。さらに、これらの国際協力事業を実施することによって、我が国の文化遺産及びその保護手法に対する理解が深まるため、有効であると考えられる。

【効率性の観点】
(事業インプット)
 国際文化交流の推進に必要な経費 2,694百万円(平成20年度予算額)
 ・文化交流使事業 110百万円
 ・国際芸術交流支援事業 1,514百万円
 ・文化遺産保護国際貢献事業 191百万円 等

(事業アウトプット)
 本事業の実施により、1.我が国の芸術家・芸術団体の海外公演・実演等が可能になった。(H20実績:文化交流使海外派遣型指名者数8名、現地滞在者型指名者数2名、短期指名型指名数5件、国際芸術交流支援事業採択数 89件)2.我が国の芸術家・芸術団体が海外の芸術家・芸術団体・一般の方々との交流が促進された。3.文化遺産国際協力に携わる関係機関や専門家の連携が推進され、我が国の国際協力の体制が強化された。(H20実績:文化遺産国際協力コンソーシアム参加者・機関数169件)

(事業アウトカム)
 これらの事業を実施していくことにより、日本文化の発信、国際文化交流の推進に寄与するとともに、これらの事業の継続性を確保することによって、「文化芸術立国」を標榜する我が国の存在感が高まることがその波及効果として期待される。
 以上により、事業の波及効果も認められ、効率性の観点から妥当である。

施策への反映(フォローアップ)

【予算要求への反映】
 これまでの取り組みを引き続き推進

【機構定員要求への反映】
 特になし

【具体的な反映内容について】
○達成目標12-3-1
 文化交流使事業については、芸術家・文化人等への支援の充実を図りながら事業を継続し、各分野で優れた実績を持つ指名者を一定数確保しつつ、日本文化の海外発信が一層強化されるよう努力する。平成20年度に新設された、文化交流使短期指名型制度(国際芸術交流支援事業で助成され、海外に派遣される芸術団体の渡航機会を生かして、現地の学校等で追加的にワークショップを実施していただく)により、日本文化の海外発信が一層強化されており、今後も海外派遣型を中心に派遣者数を充分確保しながら引き続き推進していくことが必要。
 国際芸術交流支援事業に関しては、政府間協定等に基づく二国間交流事業として実施される国際フェスティバル等特に海外発信効果の高いものについて重点支援するなど施策を戦略的に進める。平成21年度より、国際芸術公演を加えることにより、さらなる支援の充実を図っており、引き続き積極的に国際芸術交流を推進していく。また、我が国の芸術家・芸術団体等が継続的に、海外公演や、海外の芸術家・芸術団体と共同制作等を行い、日本文化への理解及び国際文化交流のネットワークの範囲を広げていくことが、我が国の国際文化交流の推進に資することから、引き続き事業の継続を図る。

○達成目標12-3-2
 海外の文化遺産の保護の分野については、要請に応じた国際協力を実施し、事業の継続によって実績を累積していくことが重要である。本分野については、予算上措置できる範囲は限られていることから、より効果的な事業実施が求められる。アジアに重点を置いて国際協力に取り組むことが重要であるが、文化庁単独ではなく、他の機関等といかに連携して国際協力を行っていくかが課題である。累積して多くの要請に応じた国際協力を実施することが重要であるため、引き続き事業を実施する。予算は横ばいであっても、複数(3以上)の機関において連携して国際協力を行うことによって、効果的な事業展開を図る必要がある。

関連した行政活動(主なもの)

 特になし

備考

 特になし

具体的な達成手段

 ※【22年度の予算要求への考え方】には、実績を踏まえ、より効率化に努める内容についても記入している。

【事業概要等】 【20年度の実績】 【22年度の予算要求への考え方】
文化交流使事業【開始:平成15年度 終了:‐  20年度予算額:110百万円】
諸外国における日本文化への理解及び我が国と諸外国の芸術家・文化人等の連携協力の促進に係る活動をする「文化交流使」の派遣等を行う。 〔得られた効果〕
これまで派遣実績のなかった4ヶ国(アジア3ヶ国、大洋州1ヶ国)を含めて20ヶ国で文化交流使が日本文化を紹介する活動を行った。
また、「短期指名型」を新設し、国際芸術交流支援事業に採択された団体を文化交流使に指名することにより、芸術団体の海外渡航の機会を有効に活用しつつ、特に海外の若い世代を対象として日本文化を発信する機会の増加につながった。
引き続き、十分な文化交流使を派遣できるよう、必要な予算を確保する。
また、執行実績を踏まえ文化交流使が海外で主催するワークショップ開催事業費について効率化を図る。(1ワークショップあたりの単価見直し)
現代日本文学翻訳・普及事業【開始:平成14年度 終了:‐  20年度予算額:159百万円】
我が国の優れた文学作品等を英語等に翻訳して諸外国で出版する。 〔得られた効果〕
現代日本文学翻訳作品選定委員会において選定された作品のうち5作品を翻訳、19作品を出版することにより、我が国の文化を海外に発信し対日理解の増進に資することができた。
引き続き、過去の翻訳・出版交渉等を踏まえ、より多くの選定作品が翻訳され、我が国の優れた文学作品等が海外で発信されるように。必要な予算を確保する。
国際芸術交流支援事業【開始:平成8年度 終了:‐  20年度予算額:1,514百万円】
国際芸術交流支援事業 〔得られた効果〕
我が国の芸術団体が行う海外公演や共同制作公演等を支援することにより、文化芸術振興及び国際文化交流の推進が図られた。
〔事務事業等による活動量〕
海外公演:71件、共同制作等:18件
引き続き、国際文化交流の推進のため、継続して事業をおこなう。また、実績件数を踏まえ、より効率的に支援できるよう配慮する。
文化遺産保護国際貢献事業
・緊急的文化遺産国際事業への支援
・国際シンポジウムの開催
・文化遺産国際協力コンソーシアム支援 【開始:平成19年度 終了:‐  20年度予算額:191百万円】
我が国の文化遺産保存修復の高度な知識・技術・経験を活用し、武力紛争、自然災害等により損傷、衰退、消滅、破壊の危機にある人類共通の財産である海外の文化遺産に対して、迅速で柔軟な国際貢献事業を実施し、顔の見える国際協力を行う。 緊急的な文化遺産保護協力として、中国・四川省震災復興に係る専門家派遣を行い、また、平成17年度から実施しているベトナム・タンロン遺跡の保存に関する専門家派遣・研修を行った。
国際シンポジウムは、文化遺産国際協力コンソーシアムが中心となって、「私の文化遺産再発見」を題として、文化遺産を通じた国際貢献を推進する国際シンポジウム等を開催した。
インド・アジャンタ石窟壁画、インドネシア・ボロブドゥール遺跡、タジキスタン・ソグド壁画、モンゴル、タイにおいて、日本の専門家や若手研究者を現地の拠点に派遣し、保存修復事業を通じて現地の専門家や若手研究者の人材養成を実施した。
文化遺産国際協力コンソーシアムの運営を通して、国や研究機関等が連携する体制づくりを支援した。
引き続き、海外の文化遺産の保護に係る協力を推進するため、必要な予算を確保する。また、執行実績を踏まえ、支援対象国及び支援プログラム等を厳選し、継続して事業を行う。

(参考)関連する独立行政法人の事業(なお、当該事業の評価は文部科学省独立行政法人評価委員会において行われている。評価結果については、独法評価書を参照のこと)

独法名 20年度予算額 事業概要 備考(その他関係する政策評価の番号)

官房部局の所見

 判断基準12-3-1については、今後事業実施の成果をはかるアウトカム的指標の設定を検討していくこと。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --