平成22年までにオリンピック競技大会におけるメダル獲得率3.5%を実現する。
目標達成年度:平成22年度(基準年度:平成13年度)
スポーツ・青少年局競技スポーツ課(芦立 訓)
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スポーツ振興基本計画(H12.9)では、オリンピック競技大会におけるメダル獲得率(以下「獲得率」という。)3.5%の達成を目標に掲げている。アテネオリンピック競技大会(H16.8)の獲得率3.98%に比べて、北京オリンピック競技大会(H20.8)の獲得率は2.61%に低下している。さらに、過去2回の冬季オリンピック競技大会の獲得率が0.85%(H14ソルトレークシティ)、0.40%(H18トリノ)であることを踏まえると、基本計画の終期である平成22年度までの上記目標達成は困難な状況にある。そこで、平成24年度のロンドンオリンピック競技大会以降、可能な限り早期での上記目標の達成を目指すため、以下の3つの達成目標を設定して、支援に取り組む。
オリンピック等の国際競技大会において、優れた成績を上げるためには、各競技団体における基盤的な強化活動(専任コーチの配置、強化合宿等)に加え、メダル獲得が有望なトップレベル競技者に対し、情報収集、スポーツ医・科学、栄養学、心理学等を活用した多方面からの高度な支援(マルチ・サポート)を戦略的・重点的に行う必要がある。このため、トップレベルの選手に対する高度な支援の実施について、以下の指標を設定する。
・判断基準11‐3‐1イ:トップレベルの選手に対するマルチ・サポートシステムの構築
・判断基準11‐3‐1ロ:トップレベルの選手に対するマルチ・サポートの実施状況
トップレベルの選手の強化に当たっては、選手が同一の活動拠点で集中的・継続的にトレーニングを行う必要があることから、平成21年1月に供用を開始したナショナルトレーニングセンター(NTC)の利用を促進する。このため、以下の指標を設定し、NTCの利用状況を判断する。
・判断基準11‐3‐2:ナショナルトレーニングセンター(NTC)(東京都北区)の利用状況
スポーツ振興基本計画においては「指導者の養成・確保」に関する具体的な施策展開として「優れた素質を有する競技者への指導を担う高度な専門的能力を有する指導者の養成・確保と指導者の専任化」等が掲げられているところであり、高度な専門的能力を有する指導者等の養成に関する指標及び指導者の専任化に関する指標として、以下の指標を設定する。
・判断基準11‐3‐3イ:専任コーチ設置団体数
・判断基準11‐3‐3ロ:競技者各人の特性に応じた専門的な技術指導を行うことができる指導者(コーチ、スポーツドクター、アスレティックトレーナー)の養成数
全体評価 A
平成18年2月のトリノ冬季オリンピック競技大会(メダル獲得率0.40%(金1))及び平成20年8月の北京オリンピック競技大会(メダル獲得率2.61%(金9、銀6、銅10))を合わせたメダル獲得率は、2.15%にとどまっているが、北京オリンピック競技大会では、過去5回の大会の中で前回のアテネ大会に次ぐメダルを獲得するとともに、入賞種目数ではアテネ大会と同数であるなど、一定の成果も見られる。
判断基準イ | トップレベルの選手に対するマルチ・サポート・システムの構築 |
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S=当初の予定どおり実施された。 A=概ね当初の予定どおり実施された。 B=当初の予定どおり実施されなかった。 C=実施されなかった。 |
判断基準ロ | トップレベルの選手に対するマルチ・サポートの実施状況 |
---|---|
S=大幅に図られた。 A=着実に図られた。 B=十分には図られなかった。 C=図られなかった。 |
トップレベルの選手に対するマルチ・サポートを実施するには、まずは、サポート・システムの構築が必要である。平成20年度においては、「チーム『ニッポン』マルチ・サポート事業」により、各国におけるサポート戦略の調査を行い、その分析結果も踏まえた上で、我が国におけるマルチ・サポート・システムの構築(対象競技種目等の選定、支援方法の決定等)を図った。
さらに、平成24年のロンドンオリンピックにおいてメダル獲得率を向上させるには、早急なサポート開始が必要であることから、試行的に、競泳や体操における国際大会又は日本選手権での映像撮影・分析、データによるフィードバックなどの支援を実施した。
なお、本格的な支援は、平成21年度以降に実施することとしている。
(指標)
20 | |
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トップレベルの選手への支援活動に携わるスタッフの延人数(人日) | 42 |
※3大会において、1〜2名のスタッフにより計11日の支援を実施。
判断基準 | ナショナルトレーニングセンター(NTC)(東京都北区)の利用状況 |
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S=大幅に利用された。 A=着実に利用された。 B=十分には利用されなかった。 C=利用されなかった。 |
ナショナルトレーニングセンター(NTC)(東京都北区)については、平成20年1月より全面的に供用が開始されたため、今後は、各競技団体における利用を促進することが重要となっている。平成20年度においては、オリンピック競技団体が実施する国内外の強化合宿のうち、約4割がNTCにおいて行われており、NTCが強化活動の拠点として、着実に利用されているものと考える。
なお、平成20年度においては、NTCを含めた全体の合宿実施回数そのものも増加しており、NTCの供用開始が強化活動の改善につながっていると評価できる。
(指標・参考指標)
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
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補助事業等による合宿実施回数(平成14年度:269回) | 526 | 580 | 561 | 465 | 541 | 718 |
うちNTCにおける合宿実施回数 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | 42 (8%) |
273 (38%) |
(指標に用いたデータ・資料等)
・オリンピック競技団体が国庫補助事業(JOC補助)及び独立行政法人日本スポーツ振興センター事業を活用して実施した国内外合宿回数(文部科学省調べ)
判断基準イ | 専任コーチ設置団体数 |
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S=専任コーチ設置団体数が平成14年度より非常に多い(30団体以上) A=専任コーチ設置団体数が平成14年度より多い(27〜29団体) B=専任コーチ設置団体数が平成14年度と同じである(26団体) C=専任コーチ設置団体数が平成14年度より少ない(25団体以下) |
判断基準ロ | 競技者各人の特性に応じた専門的な技術指導を行うことができる指導者(コーチ、スポーツドクター、アスレティックトレーナー)を平成20年度までに新たに5千人養成する。 |
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S=増加人数が5,251人以上(=想定以上に増加している。) A=増加人数が4,751人〜5,250人(=ほぼ想定どおりに増加している。) B=増加人数が4,251人〜4,750人(=前年より増加しているが、想定には満たない。) C=増加人数は4,250人以下(=前年からほとんど増加していない。) |
【判断基準イについて】
平成20年度においては、オリンピック競技34競技団体全てにおいて専任コーチが配置され、専任コーチ数も平成14年度の約2.7倍である102人に増加しているが、一方で、専任コーチの処遇について、1.雇用契約が結ばれておらず、労働対価の支払も謝金となっているなど、身分保障が十分でないこと、2.このため、専任コーチのうち、88%が企業・大学等との兼職となっており、競技団体における勤務は常勤となっていないこと等の課題がある。
【判断基準ロについて】
平成20年度末での指導者登録者数は20,555人で、平成14年度より5,219人の増(達成目標5,000人の104%)となっていることから、6年経過後の達成度合い(5,000人)にかんがみ、概ね想定どおりに進捗したと判断。
(指標・参考指標)
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
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1.専任コーチ配置競技団体数(平成14年度:26) | 27 | 29 | 28 | 29 | 34 | 34 |
2.専任コーチを複数配置した団体数(平成14年度:3) | 10 | 9 | 10 | 10 | 16 | 16 |
3.専任コーチ数(平成14年度:38) | 48 | 56 | 53 | 58 | 87 | 102 |
(指標)
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
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コーチ、アスレティックトレーナー、スポーツドクター資格登録者数(平成14年度:15,336) | 16,104 (768) |
16,521 (1,185) |
17,409 (2,073) |
18,526 (3,190) |
19,344 (4,008) |
20,555 (5,219) |
達成度合いの想定(増加人数) | 833 | 1,667 | 2,500 | 3,333 | 4,167 | 5,000 |
※ 上段は登録者総数。下段の括弧書きは、平成14年度からの増加人数。
【必要性の観点】
スポーツ活動は、本来、各個人が自主的に行うことが基本であるが、オリンピック競技大会をはじめとした国際競技大会等に出場するトップレベル競技者については、1.オリンピック競技大会をはじめとした国際大会の多くは、国別に競い合うという色彩が強いこと、2.出場者は、地方又は企業等の代表としてではなく、国を代表として出場するという色彩が強いことから、特にトップレベル競技者の育成・強化については、国として支援する必要性が高い。また、実際に多くの国民が、オリンピック等における我が国のトップレベル競技者の活躍を見て感動を覚えており、我が国の国際競技力の向上は、明るく活力ある社会の形成にも寄与すると考えられる。
【有効性の観点】
トップレベル競技者の競技力向上のためのトレーニング環境の確保(指導者の養成・配置、ナショナルトレーニングセンターの整備・活用等)は、国際競技力を維持・向上させるための基盤として不可欠であり、諸外国においても、国による支援が行われている。
一方で、メダル獲得率が上位に位置する国においては、それにとどまらず、メダル獲得が有望な競技種目・競技者に重点を置いた高度かつ多面的な支援(マルチ・サポート)を行っており、今後、我が国がメダル獲得率の向上を目指すに当たっては、マルチ・サポートを戦略的・重点的に進めることが重要である。この点については、平成13年10月に業務を開始した国立スポーツ科学センターの医・科学サポートが、アテネオリンピックにおける日本人選手の活躍につながったとの評価がなされていることからも実証されている。このため、我が国の国際競技力の向上を図るために、基盤的なトレーニング環境の確保に加え、多方面からの戦略的・重点的な支援を実施することが有効かつ効果的であると判断できる。
【効率性の観点】
(事業インプット)
○国際競技力の向上に必要な経費 5,157百万円
・チーム「ニッポン」マルチ・サポート事業 204百万円
・日本オリンピック委員会補助(選手強化事業) 2,612百万円
・日本体育協会補助(スポーツ指導者養成事業) 191百万円
・日本スポーツ振興センター運営費交付金 7,071百万円 等
※このほか、租税特別措置法に基づく税制上の特例措置として、オリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして財団法人日本オリンピック委員会より交付される金品については、所得税を課さないこととしている。
(事業アウトプット)
(事業アウトカム)
【予算要求への反映】
これまでの取組を引き続き推進
【機構定員要求への反映】
特になし
【具体的な反映内容について】
北京オリンピック競技大会における成績を踏まえると、平成20年度時点においては、各種施策により一定の成果が得られているものと判断される。しかし一方で、特に冬季オリンピック競技大会におけるメダル獲得率が依然として低い水準に留まっていること(施策目標11‐3)については今後の課題であり、引き続き、ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点の指定・高機能化などの施策を推進していく必要がある。また、メダル獲得率3.5パーセントについては未だ達成されていないことから、今後は、より一層、メダルを獲得するための支援方策を講じていく必要がある。
今後の方向性としては、日本オリンピック委員会補助をはじめとした基盤的な強化経費については、引き続き維持しつつ、メダル獲得が有望な競技種目に対する資源の重点配分を組み合わせることにより、効率的・効果的に施策目標の達成を図る。
特になし
特になし
※ 【22年度の予算要求への考え方】には、実績を踏まえ、より効率化に努める内容についても記入している。
【事業概要等】 | 【20年度の実績】 | 【22年度の予算要求への考え方】 |
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チーム「ニッポン」マルチ・サポート事業 (開始:平成20年度 終了:平成24年度 20年度予算額:204百万円) | ||
・海外のトップアスリートに対する支援体制等に関する調査研究・特別支援チームによる支援、用具、トレーニング機器 ・方法等の研究開発に関するトライアル(試行)の実施。 |
1.北京オリンピック競技大会における調査 大会開催中及び大会前合宿中における、諸外国のサポートについて、30競技余りを調査した。 2.海外事例調査 7か国に調査員を派遣し、海外の競技者サポート体制について調査した。 3.サポートシステムの構築(ロンドンオリンピックに向けたサポート体制の整備) 海外のサポート事情調査及び、競技者・競技団体からの聞き取り調査等をもとに、サポートシステムのモデルを6項目について開発した。 |
平成21年度より、本事業は、ナショナルコーチの配置事業と併せて「競技力向上ナショナルプロジェクト」として実施している。メダル獲得数の増加を図るためには、戦略的・重点的な支援が必要であるため、当該事業は来年度以降も必要性が高く、来年度以降も継続する。 |
ナショナルトレーニングセンターの整備推進 (開始:平成16年度 終了:− 年度 20年度予算額:4,812百万円) ※20年度予算のうち4,301百万円は 独立行政法人 日本スポーツ振興センターへの施設整備費補助金及び運営費交付金。 |
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ナショナルトレーニングセンター(NTC東京都北区西が丘地区)及びNTC競技別強化拠点の整備等を進める。 | 屋内トレーニング施設、宿泊施設等が平成19年12月に完成し、平成20年1月より全面的に供用を開始。 | NTCは既に完成しているが、1.宿泊施設の増築(21〜22年度)、2.競技別強化拠点の活用等を実施することから、当該事業は、来年度以降も継続する。 |
日本オリンピック委員会補助:選手強化事業:専任コーチ設置 (開始:平成2年度 終了:−年度 20年度予算額:759百万円) | ||
専門的な技術指導を行う専任コーチを競技団体に配置する。 | オリンピック競技団体34団体全てが、平成20年度に専任コーチを配置した。専任コーチの合計人数は、102名となった。 | トップレベル競技者の育成・強化のためには、選任コーチの配置が必要不可欠であることから、当該事業は来年度以降も継続する。 |
日本体育協会補助:スポーツ指導者養成事業 (開始:昭和32年度 終了:−年度 20年度予算額:191百万円) | ||
国民の多様化・高度化したスポーツ・ニーズに対応した指導を行うことができる質の高い優れた指導者の養成を行う。 | 平成20年度においては、コーチ、アスレティックトレーナー、スポーツドクターの登録者数が1,211人増加した。 | 当該事業は質の高い指導者を確保する観点から来年度以降も必要性が高いため、来年度以降も継続する |
日本オリンピック委員会補助:選手強化事業:強化合宿事業 (開始:平成2年度 終了:−年度 20年度予算額:1,119百万円) | ||
オリンピック実施競技団体がオリンピック強化指定選手及びナショナルチームを対象に、国内外での強化合宿を行う。 | 平成20年1月よりNTCの供用が開始したことを受け、平成20年度においては、昨年度までの実績を大幅に上回る718回の強化合宿が実施された。 | トップレベル競技者の育成・強化のためには、国内外における強化合宿の充実が必要不可欠であることから、当該事業は来年度以降も継続する。 |
(参考)関連する独立行政法人の事業(なお、当該事業の評価は文部科学省独立行政法人評価委員会において行われている。評価結果については、独法評価書を参照のこと)
独法名 | 20年度予算額 | 事業概要 | 備考(その他関係する政策評価の番号) |
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日本スポーツ振興センター(重点競技強化事業) | 371百万円 | メダル獲得の期待の高い競技について重点的な選手強化を図る。 | |
日本スポーツ振興センター(国立スポーツ科学センターに係る経費を含む。) | 7,071百万円 | 我が国の国際競技力向上のため、スポーツ科学・医学・情報の拠点として、トップレベル競技者を支援。 |
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成21年以前 --