施策目標9‐2 研究成果の創出と産学官連携などによる社会還元のための仕組みの強化

 世界最高水準の研究成果や、新たなブレークスルーをもたらす優れた研究成果を生み出すとともに、イノベーションを通じて研究成果を社会的価値・経済的価値として発現させ、社会・国民に還元する。

施策期間

 目標達成年度:平成24年度(基準年度:平成19年度)

主管課(課長名)

 研究振興局研究環境・産業連携課(柳 孝)

関係局課(課長名)

 科学技術・学術政策局基盤政策課(川端 和明)、研究振興局基礎基盤研究課(内丸 幸喜)

施策の全体像

 本施策目標の前段である世界最高水準の研究成果や新たなブレークスルーをもたらす優れた研究成果の創出については、基礎研究の成果が必ずしも短期間のうちに目に見えるような形で現れるとは限らず、長い年月を経て予想外の発展を導くものも少なからずあることから、定量的な指標設定による評価が困難であり、様々な観点から総合的に判断することによって、達成度を判断する。
 また、本施策目標の後段である研究成果の社会還元の推進に係る目標については、社会還元の重要な手段である産学官連携・技術移転活動における代表的成果である共同研究、受託研究、特許実施、及び大学等発ベンチャーの年間設立数の実績を定量的に評価することにより、その達成度を総合評価する。

○達成目標9-2-1

 より良い成果を創出するために制度改革を進めつつ、目的基礎研究制度である戦略的創造研究推進事業を推進し、世界最高水準の研究成果や新たなブレークスルーをもたらす研究成果を生み出すことを目指す。さらに、その成果をもとに、イノベーション創出に向けて基礎研究から実用化まで一貫した研究開発の効果的な推進を図る。
 ・判断基準9-2-1:世界最高水準の研究成果や新たなブレークスルーをもたらす優れた研究成果の創出実績

○達成目標9-2-2

 大学等の「知」を円滑に社会へ還元し、社会的価値、経済的価値へつなげるため、大学等における組織的、戦略的な産学官連携活動及び知的財産活動を推進する。本達成目標を評価するにあたり、以下の指標を設定する。
 ・判断基準9-2-2イ:共同研究、受託研究、特許実施の各実績から総合的に判断
 ・判断基準9-2-2ロ:大学等発ベンチャーの年間設立実績

達成状況と評価

全体評価 A

 戦略的創造研究推進事業等により優れた研究成果が創出されるとともに、大学等における企業等との連携活動実績は増加し、大学等の研究成果の社会還元は着実に進展したと評価できるが、一方で大学等発ベンチャーの年間設立数については年々減少傾向にあり、大学等発ベンチャーを通した技術力、経営力の基盤が強固なベンチャーを継続的に創出するための体制整備に取組む必要がある。

○ 判断基準9-2-1(S)

判断基準 世界最高水準の研究成果や新たなブレークスルーをもたらす優れた研究成果の創出実績
S=優れた研究成果を生み出し、成果の展開も図られた
A=優れた研究成果を生み出した
B=優れた研究成果を生み出さなかったが、制度改革等の改善策を講じた
C=優れた研究成果を生み出さず、制度改革等の改善策も講じられなかった

 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発事業(公募分)を含む)においては、新たな研究領域の設定、間接経費の拡充のための予算を確保し、対前年度比1,700百万円増(3.5%増)となる50,326百万円を措置しており、順調に増加している。それに伴い、戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発事業(公募分)を含む)の課題数は、全体では、対前年度比37課題増(4%増)となる897課題であり、順調に増加していると言える。

 戦略的創造研究推進事業では、文部科学省は平成20年度に新たに7件の戦略目標を決定し、それに基づいて独立行政法人科学技術振興機構(JST)が設定した研究領域の下で課題の公募が行われ、研究が進められている。
〔平成20年度戦略目標〕
・細胞リプログラミングに立脚した幹細胞作製・制御による革新的医療基盤技術の創出
・最先端レーザー等の新しい光を用いた物質材料科学、生命科学など先端科学のイノベーションへの展開
・プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製
・持続可能な社会に向けた温暖化抑制に関する革新的技術の創出
・花粉症をはじめとするアレルギー性疾患・自己免疫疾患等を克服する免疫制御療法の開発
・運動・判断の脳内情報を利用するための革新的要素技術の創出
・多様で大規模な情報から『知識』を生産・活用するための基盤技術の創出 

 既存の研究領域の成果としては、例えば平成19年11月に、CREST研究領域で京都大学山中伸弥教授が「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)」の樹立に成功したことを受け、この世界的に大きなインパクトを与えた優れた研究成果を支援するため、文部科学省の方針に基づき、効果的な支援策「iPS細胞等の細胞リプログラミングによる幹細胞研究戦略事業プログラム」として、平成20年4月から「山中iPS細胞特別プロジェクト」、CREST「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作成・制御等の医療基盤技術」領域、さきがけ「iPS細胞と生命機能」領域を設け、相互に連携をとりつつiPS細胞関連研究を推進している。
 平成20年2月には、東京工業大学細野秀雄教授が、「新系統の高温超伝導物質」を発見したことを受けて、新超伝導材料技術(磁性元素超伝導体)について、既存の細野総括の研究領域の支援強化や、新たな研究課題の緊急公募、シンポジウムの開催など本研究の一層の推進を図るための措置を進めている。
 さらに、平成20年11月に自治医科大学間野博行教授が高精度の診断法と新たな治療戦略に寄与する肺がんの原因遺伝子を発見したことを受けて、「新規がん遺伝子同定プロジェクト」を発足し、研究加速を進めている。
 また、平成20年度から、研究者がライフイベント(出産・育児・介護)に際して、研究キャリアを中断することなく継続でき、また一時中断せざるを得ない場合は、可能となった時点で研究に復帰し、その後のキャリア継続が図れることを目的とした「出産・子育て等支援制度」を設けるとともに、優秀な博士課程の在学者に対して、研究に専念させる環境を整備し、優れた研究者として養成することを目的として、博士課程在学者のリサーチアシスタント(RA)としての雇用に係る経費の予算措置等の制度改革にも着実に取り組んでいる。さらに、複数年契約の導入による研究費執行の弾力化、e-Radへの完全対応、実施課題モニタリングの実施等も進めている。
 社会技術研究開発事業においては、津波災害総合シナリオ・シミュレーターを用いて防災対策活動を普及する取組の展開(徳島県牟岐町での自主防災組織や学校における資料・教材として提供)や、発達障害児の学習困難がパソコンでのひらがな入力等の教材を使った学習により改善される研究開発成果の学習支援活動としての展開(名古屋市児童福祉センターや京都大学こころの未来研究センターを拠点)など、社会問題の解決に資する技術の実現に向けて一定の成果が得られている。
 以上のことから、優れた研究成果を生み出し、さらに成果の展開も図られたと言える。

(指標)

  16 17 18 19 20
戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発事業(公募分)を含む)の事業額(百万円) 46,329 47,595 47,976 48,626 50,326

(参考指標1)

  16 17 18 19 20
論文発表(国内外) 5,999 6,256 6,152 5,874 4,426
口頭発表(国内外) 16,438 18,902 18,359 16,745 14,911

(参考指標2)

  16 17 18 19 20
「出産・子育て等支援制度」対象者数 18
RA採用数 378

(参考指標3)

  16 17 18 19 20
成果の展開* 9割 9割

※終了して1年を経過した研究領域のうち成果の展開が行われた研究領域の割合(科学技術振興機構中期計画に記載の達成すべき成果の調査結果)

○ 判断基準9-2-2(B)(イ:A、ロ:Cの平均から算出)

判断基準イ 共同研究、受託研究、特許実施の各実績から総合的に判断(指標イから判断)
S=全ての指標において対前年度以上
A=2つの指標において対前年度以上
B=1つの指標において対前年度以上
C=全ての指標において対前年度比減
判断基準ロ 大学等発ベンチャーの年間設立実績(指標ロから判断)
S=対前年度比20%以上の増加または年間設立件数が200社以上
A=対前年度比10%以上の増加または年間設立件数が170社以上
B=前年度と同程度または年間設立件数が140社以上
C=前年度以下

 平成20年度は、大学等における知的財産、産学官連携活動を支援し、研究成果の社会還元を図るため、引き続き、以下の取組を行った。
 平成15年度から19年度まで実施した「大学知的財産本部整備事業」の結果、知的財産の機関一元管理の体制や知的財産ルールの策定など知的財産に関する整備が進み、産学官連携を支える組織として知的財産本部が重要な役割を担いつつある中、大学等の特色ある産学官連携活動が持続的に展開できるよう、平成20年度からは「産学官連携戦略展開事業」を開始した。同事業の「戦略展開プログラム」において大学等の戦略的な知的財産の創造・保護・活用を図る体制の整備を支援するとともに、「コーディネートプログラム」において、研究開発マネジメントや新技術の事業化などに関する知識や実務経験を有し、企業・地域社会と大学との橋渡し役を務める専門人材である産学官連携コーディネーターによる大学等の産学官連携活動の支援を実施した。
 また、「産学共同シーズイノベーション化事業」及び「独創的シーズ展開事業」では、平成19年度に引き続き、大学等の基礎研究に基づく共同研究や特許化された研究成果の実用化に向けた研究開発を支援した。「技術移転支援センター事業」では、平成19年度に引き続き、大学等の海外特許出願や目利き人材育成を支援するとともに、研究成果を切れ目無く実用化につなぐ仕組みを構築するなど、大学等における技術移転活動の総合的支援を行った。
 これらの施策の実施に伴い、大学等における知的財産、産学官連携活動は着実に進展している。大学等と企業等との共同研究実績に着目すると、共同研究件数は前年度より約1,400件増加し、共同研究受入金額は前年度より約37億円増加した。大学等における企業等からの受託研究実績については、受託研究件数は前年より約700件増加し、受入金額は、前年度より約93億円増加している。1件当たりの受入金額については、共同研究は約1万円、受託研究は約18万円、前年度よりそれぞれ増加している。こうした状況は、個々の研究について規模が拡大してきており、企業等が大学等の研究開発力に注目してきているためと見られる。また、大学等における特許実施実績については、平成20年度における特許実施料収入額は前年度に比べて約2億円、特許実施件数は前年度に比べて約900件増加した。
 一方、大学等発ベンチャーの年間設立件数は、大学発ベンチャー1,000社計画達成に伴い、平成16年度をピークに減少しており、平成19年度は前年度から39件減少し、131件の設立であった。

(指標・参考指標)

【指標】

    16 17 18 19 20
イ大学等における企業等との連携活動実績 <1>大学等と企業等との連携活動件数(参考指標1,2,3の<1>から算出) 26,441 31,263 35,674 39,126 42,145
<2>(<1>)に係る企業等からの受入金額(千円)(参考指標1,2,3の<2>から算出) 128,145,660 159,461,685 179,679,848 201,645,259 214,829,822
<3>(<1>)に係る企業等からの受入金額(千円)(1件当たり(<2>/<1>)) 4,846 5,101 5,037 5,154 5,097
ロ大学等発ベンチャーの年間設立実績 <1>大学等発ベンチャー年間設立件数 236 201 170 131 調査中
<2>大学等発ベンチャー年間設立件数の対前年度比 1.1 0.85 0.85 0.77 調査中
<3>大学等発ベンチャー累積設立件数 1,194 1,395 1,565 1,775 調査中

※大学等には高等専門学校及び大学共同利用機関を含む。

【参考指標】

    16 17 18 19 20
1.共同研究実績 <1>大学等と企業等との共同研究件数 10,728 13,020 14,757 16,211 17,638
<2>大学等における共同研究受入金額(千円) 26,375,829 32,343,275 36,843,149 40,125,683 43,824,366
<3>大学等における共同研究受入金額(千円)(1件当たり(<2>/<1>)) 2,459 2,484 2,497 2,475 2,485
2.受託研究実績 <1>大学等における企業等からの受託研究件数 15,236 16,960 18,045 18,525 19,201
<2>大学等における企業等からの受託研究受入金額(千円) 101,227,322 126,479,747 142,035,360 160,745,129 170,019,475
<3>大学等における企業等からの受託研究受入金額(千円)(1件当たり(<2>/<1>)) 6,644 7,458 7,871 8,677 8,855
3.特許実施実績 <1>大学等における特許実施件数 477 1,283 2,872 4,390 5,306
<2>大学等における特許実施料収入(千円) 542,509 638,663 801,339 774,447 985,981
<3>大学等における特許実施料収入(1件当たり(<2>/<1>)) 1,137 498 279 176 186

(指標に用いたデータ・資料等)
 ・「産学官連携実施状況調査」文部科学省
 ・「大学等発ベンチャーの現状と課題に関する調査」科学技術政策研究所

必要性・有効性・効率性分析

【必要性の観点】
 世界がグローバル化する現代において、世界各国は国際競争力を高めるため、技術革新を原動力としたイノベーションの重要性に対する認識を高めている。資源に乏しい我が国が、人口減少下においても持続的な成長を達成し、国際競争に打ち勝つためには、民間では生まれにくい基盤技術や新たな知見を創出する「知」の拠点たる大学等において、世界最高水準の研究成果を創出し、それらを産学官連携などにより効果的に社会へ還元することで、持続的なイノベーションの創出を図る必要がある。
 そのため、戦略的創造研究推進事業については、競争的資金の拡充により競争的環境の整備を進めるとともに、透明性の高い評価の実施、間接経費の拡充という「科学技術基本計画」(平成18年3月28日閣議決定)及び「競争的研究資金制度改革について(意見)」(平成15年4月21日、総合科学技術会議)の方針を踏まえ、引き続き改革に取り組み、基礎研究において優れた研究成果が得られるよう努めることが求められている。
 また、大学等の研究成果には、長期間を経た後に実用化され、将来的に革新的な基本特許につながる可能性のあるものが含まれている。したがって、そのような発明について、付加価値を高め、卓越した競争力につながる成果を発展させ、社会的価値、経済的価値として社会に還元するためには、大学等における組織的、戦略的な産学官連携活動を促進しなければならない。さらに、これまで大学等で取り組まれてきた産学官連携活動が失速することなく、知的財産戦略などが持続的に展開されるよう、その主体的かつ多様な取組を支援することなどが求められている。

【有効性の観点】
 達成目標9-2-1については、戦略的創造研究推進事業から、ヒト人工多能性細胞(iPS細胞)の樹立や新超伝導材料技術の開発など、国際的に見ても大きな研究成果が生み出されたことを受けて、新規研究領域の発足やシンポジウムの開催等これらの重要な研究成果を加速する施策の立ち上げを迅速に行っている。
 また、1論文当たりの被引用数が、日本全体や主要国と比較して顕著であるとともに、国際的な科学賞の受賞数(72件)、招待講演数(1,857件)であることから、本事業の研究が国際的に高い水準にあると言え、実施機関である科学技術振興機構の中期計画で掲げた目標の達成が見込まれると考える。
 平成20年度に終了した研究領域の事後評価で戦略目標の達成に向けた研究成果の状況を評価し、29領域中21領域の研究領域が「戦略目標の達成に資する十分な成果が得られた」との評価結果が得られ、中期計画に掲げた目標(評価対象研究領域全体の6割以上)の達成が見込まれると考えられる。
 更に、終了して1年を経過した研究領域の成果展開調査で、9割以上(31領域28領域)の研究領域で成果の展開が行われたとの結果が得られ、中期計画で掲げた目標(対象研究領域全体の8割以上)の達成が見込まれると思料する。
 平成18年に海外の有識者を含めて開催された「基礎研究事業国際評価委員会」では、運営方法、成果、研究ポテンシャルの寄与度などの視点を要点として国際評価が行われ、本事業は「特徴ある優れた事業であり、多くの世界的レベルの科学技術の成果を生み出し、また適切に運営されている」との評価を得ている。なお、この評価における提言に従い、ERATO選考方法について、研究領域の選定や研究総括の指定方法の大幅な見直しなどの対応を行っている。
 達成目標9-2-2については、これまで以下のような施策の成果が現れている。
 例えば、「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」では、大学等における戦略的な知的財産の創造・保護・活用を図る体制の整備を図るための支援が行われたことにより、特許実施料収入は前年度より2億円増加するとともに企業等からの1件当たりの受入金額も増加していることから、知的財産の活用が進むとともにその質も高まりつつあると考えられる。また、「産学官連携戦略展開事業(コーディネートプログラム)」において、平成20年度における産学官連携コーディネーターが関与した特許実施件数は118件であり、平成15年度に比べて47件増加するなど、産学官連携コーディネーターの活動は、我が国の産学官連携の推進に大きく寄与している。さらに、JSTにおける「独創的シーズ展開事業(大学発ベンチャー創出推進型)」等の実施により、平成11年度から平成19年度までに累計で1,775社の大学発ベンチャーが創出されるなど、文部科学省が実施する産学官連携施策による成果は飛躍的に進展している。
 現在は、各大学等の主体的で多様な取組を支援するとともに、JSTにおいて、大学等の研究成果を基にした共同研究や起業化、事業展開のための研究開発を推進するなど、我が国の知的財産活動をはじめとする産学官連携活動全体の質の向上を図っている。これらの取組を実施することで、今後、我が国における産学官連携活動のさらなる進展が図られ、大学等における研究成果の円滑な社会還元が見込まれる。

【効率性の観点】
(事業インプット)
 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発事業(公募分)を含む) 50,326(百万円)
 産学官連携による新産業創出に必要な経費 2,924百万円(平成20年度予算額)
 ・産学官連携戦略展開事業 等
(事業アウトプット)

  • 平成20年度は、CRESTは27領域(313課題)、さきがけは20領域(469課題)、ERATOは24領域で研究が進められた。
  • 全国66の大学等において、国際的な産学官連携体制の整備等、戦略的な知的財産の創造・保護・活用を図る体制を整備した。
  • 大学等から産業界、地域社会に対し知識の移転、研究成果の社会還元を果たすための専門人材(産学官連携コーディネーター)により全国80程度の大学等の産学官連携活動を支援した。
  • 大学等の研究成果を基にした共同研究や技術移転に係る研究開発を推進した。
  • 大学等の海外特許出願を約1,530件支援するなど、大学等の技術移転活動を総合的に支援した。

(事業アウトカム)

  • 本施策目標の達成により、イノベーション創出に向けた目的基礎研究制度が推進され、我が国の基礎科学力向上が図られる。
  • 本施策目標の達成により、全国の大学等において産学官連携体制の整備が図られ、我が国の産学官連携活動全体の質が向上する。また、大学等において創出された世界最高水準の研究成果が効果的に社会へ還元されることで、持続的なイノベーションの創出による我が国の競争力強化が図られる。

施策への反映(フォローアップ)

【予算要求への反映】
 これまでの取組を引き続き推進

【機構定員要求への反映】
 機構定員要求に反映

【具体的な反映内容について】
 達成目標9-2-1については、社会・経済ニーズに応じた戦略目標を適切に策定し、それを受けた研究領域の下で課題を公募するとともに、既存の研究領域での研究を着実に実施する。また、「出産・子育て等支援制度」や優秀な博士課程学生のRA雇用等の制度改革も進める。
 達成目標9-2-2については、大学等における戦略的な知的財産の創造・保護・活用を図る体制整備への支援を着実に実施する。また、国として政策的な観点から積極的に促進すべき大学の活動の支援については、以下の点を拡充または新規に要求する。

  • 産学官連携拠点の形成支援については、支援対象機関を追加選定し、当該機関に対して文部科学省及び経済産業省の関連事業を優先的または追加的に実施することで、施策のさらなる充実を図る。(拡充)
  • 大学発ベンチャーは、その質が課題となっているため、大学等において技術力、経営力の基盤が強固なバイオベンチャーを継続的に創出するための体制整備に取組む大学を増加する。(拡充)
  • 大学と企業をつなぐためには独立行政法人が重要な役割を果たすと考えられるため、独法と大学との連携による知財ポートフォリオの形成を中心とした知的財産戦略を展開できる体制整備に取組む機関を増加する。(拡充)
  • 大学等においては、今後、海外企業との共同研究等が増加すると考えられるため、技術流出の防止という観点から、国際的な産学官連携活動の推進に取組んでいる大学等(16件17機関)における安全保障貿易管理に必要な体制整備の支援を拡充する。(拡充)

 なお、大学等発ベンチャーに関する問題点として、年間設立数の減少や、経営に問題を抱える多数のベンチャーの存在が各種報告書等で指摘されており、その対策として、「研究成果最適展開支援事業(A-STEP)」において、大学等発ベンチャーの創出に向けた研究開発を着実に支援するなど、その設立数の維持・増加を図る。また大学等発ベンチャーの創出においては、その数だけではなく、技術と経営の両面において質の確保が必要と認識しており、そのため、MBAやMOTなどの専門教育の充実や、若手研究者を起業家として育成する「若手研究者ベンチャー創出推進事業」の実施など、ベンチャーの起業・経営を担う質の高い人材の育成を推進する。
 さらに、大学等における産学官連携活動を支援するため、産学官連携コーディネーターよる大学等への支援を引き続き着実に実施するとともに、シニアコーディネーターによるOJT研修を通じた若手コーディネート人材の育成のための施策を新規に実施する。
 また、科学技術コモンズの構築等知的財産戦略の推進において必要となる知的財産権法その他の法律に精通した専門人材として、「知的財産戦略専門官」一名を要求する。

関連した行政活動(主なもの)

○「産学官連携拠点の形成支援」に係る検討会の実施
 産学官連携拠点の形成支援を円滑に実施するために、文部科学省、経済産業省間で検討会を設置し、現在検討継続中。

○「産学官連携戦略展開事業」推進委員会の設置(平成20年1月22日)
 産学官連携戦略展開事業の実施に関する重要事項を審議するとともに、本事業の的確な遂行を確保するため、局長の下に推進委員会を設置し、平成21年5月までに7回開催。

○「産学連携等実施状況調査(平成20年度実績)」(平成21年3月13日〜6月12日)

具体的な達成手段

 ※【22年度の予算要求への考え方】には、実績を踏まえ、より効率化に努める内容についても記入している。

【事業概要等】 【20年度の実績】 【22年度予算要求への考え方】
産学官連携戦略展開事業(開始:平成20年度 終了:平成24年度(戦略展開プログラムの一部)− 20年度予算額:2,819百万円)
「戦略展開プログラム」で国際的な産学官連携体制の強化など大学等における戦略的な知的財産の創造・保護・活用を図る体制の整備を支援するとともに、「コーディネートプログラム」で産学官連携を推進する際に必要不可欠な専門知識や実務経験を有した人材(産学官連携コーディネーター)による大学等の産学官連携活動の支援を実施する。 「戦略展開プログラム」において、55件/66機関を採択し、支援を行った。
「コーディネートプログラム」において、80名による97機関への支援を行った。
大学等における戦略的な知的財産の創造・保護・活用を図る体制の整備等、産学官連携の強化に着手したばかりであるため、体制の整備及び活動の支援を継続して着実に実施する。

(参考)関連する独立行政法人の事業(なお、当該事業の評価は文部科学省独立行政法人評価委員会において行われている。評価結果については、独法評価書を参照のこと) 

独法名 20年度予算額 事業概要 備考(その他関係する政策評価の番号)
独立行政法人科学技術振興機構による戦略的創造研究推進事業 [独立行政法人科学技術振興機構運営費交付金114,118百万円の内数] 今後のイノベーション創出につながる社会・経済ニーズに対応した新技術を創出するため、国が定めた戦略目標の達成に向けた目的志向型の基礎研究を推進する。  
独立行政法人科学技術振興機構による社会技術研究開発事業(公募型) [独立行政法人科学技術振興機構運営費交付金114,118百万円の内数] 自然科学や人文・社会科学を含む横断的・俯瞰的なアプローチにより、社会における具体的問題の解決に資する研究開発を進める。  
独立行政法人科学技術振興機構による技術移転支援センター事業 [独立行政法人科学技術振興機構運営費交付金114,118百万円の内数] 大学等の研究成果について、海外特許出願を支援するとともに、目利き人材の育成、大学見本市の開催等により大学等の技術移転活動を総合的に支援する。さらに、大学等の技術移転活動を一層推進することを通し、優れた研究成果を実用化に切れ目なくつなぐシステムの構築に寄与する。  
独立行政法人科学技術振興機構による産学共同シーズイノベーション化事業 [独立行政法人科学技術振興機構運営費交付金114,118百万円の内数] イノベーションの創出を、大学等における研究成果から実現するため、基礎研究に潜在するシーズ候補を産業界の視点から見出し、産学が共同してシーズ候補のシーズとしての可能性を検証するための「顕在化ステージ」および顕在化されたシーズの実用性を検証するための「育成ステージ」にて、産学の共同研究開発を実施する。  
独立行政法人科学技術振興機構による独創的シーズ展開事業 独立行政法人科学技術振興機構運営費交付金114,118百万円の内数 シーズの実用化に向けた展開を図るため、技術フェーズや技術移転の形態に応じた各種プログラムを設け、公募で集められた課題を対象に競争的な選別を行って、研究開発を実施し、研究成果の社会還元を図る。  

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --