施策目標2‐11 一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進

 障害のある全ての幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育を推進する。

施策期間

 目標達成年度:平成22年度(基準年度:平成19年度)

主管課(課長名)

 初等中等教育局特別支援教育課(斎藤 尚樹)

関係局課(課長名)

 ‐

施策の全体像

 障害のある全ての幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、一人一人がその持てる力を高め、主体的に生活や学習上の困難を改善又は克服することができるよう、達成目標2-11-1を設定してこれらの幼児児童生徒に対する支援体制整備を推進するとともに、一層の適切な指導及び支援が可能となるよう、達成目標2-11-2を設定して教員の専門性向上や、指導内容・方法等の改善に取り組む。

○達成目標2-11-1

 幼稚園から高等学校までを通じて、発達障害を含む障害のある子ども一人一人の教育的ニーズを把握し適切な支援を行うため、体制整備等を推進する。この効果を計るため、以下の指標を設定し、体制整備等の推進について判断する。
 ・判断基準2-11-1イ:公立小・中学校における個別の指導計画作成率の対前年度比変化
 ・判断基準2-11-1ロ:公立小・中学校における個別の教育支援計画作成率の対前年度比変化

○達成目標2-11-2

 特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した適切な指導や必要な支援を行うため、教員の専門性の向上や、指導内容・方法等の改善を図る。この効果を計るため、以下の指標を設定し、教員の専門性向上や指導内容・方法等の改善について判断する。
 ・判断基準2-11-2イ:講習会参加者に対する事後アンケート評価
 ・判断基準2-11-2ロ:特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有状況
 ・判断基準2-11-2ハ:事業委託地域における就職状況

達成状況と評価

全体結果:S

 以下のことから、一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進のための取組みは、全体として、想定した以上に順調に進捗したと判断した。

○判断基準2-11-1イ、ロ(イS、ロS)

判断基準イ 公立小・中学校における個別の指導計画作成率の対前年度比変化
S=上昇率3ポイント以上
A=上昇率3ポイント未満
B=下落率3ポイント未満
C=下落率3ポイント以上
判断基準ロ 公立小・中学校における個別の教育支援計画作成率の対前年度比変化
S=上昇率3ポイント以上
A=上昇率3ポイント未満
B=下落率3ポイント未満
C=下落率3ポイント以上

 いずれの指標においても平成20年度は、前年度比で3ポイント以上の上昇を見せており、特別支援教育体制の整備は進んでいるものと判断した。

 平成20年度においては、「特別支援教育体制整備事業」を継続・拡充し、発達障害を含め障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに応じて、各地域や学校における乳幼児期から就労に至るまでの一貫した計画的な支援体制の充実を関係機関と連携しつつ図る「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」を47都道府県に委嘱して実施した。本事業等により、校内委員会や専門家チームの設置、特別支援教育コーディネーターの指名、巡回相談の実施などの体制整備の充実を図った結果、全国の公立小中学校において、校内における全体的な支援体制を整備するための校内委員会の設置率が99.7%となった。また校内の関係者や関係機関との連携調整、保護者の連絡窓口等の役割を果たす特別支援教育コーディネーターの指名率が99.8%となった。さらに、一人一人のニーズに応じた指導目標や指導内容・方法を盛り込んだ「個別の指導計画」や、関係機関との連携の元に乳幼児期から学校卒業後までを見通した支援の目標や内容を盛り込んだ「個別の教育支援計画」の作成率については、「個別の指導計画」が公立小中学校で80.9%(H19:63.8%)、「個別の教育支援計画」が公立小中学校で52.3%(H19:35.8%)となるなど、特別支援教育の体制整備が想定通り進んだ。

 また、「発達障害者支援法」(平成17年4月1日施行)に明記された発達障害のある幼児への早期発見・早期支援に取り組むため、教育、医療、保健、福祉等の関係機関が連携し、発達障害の早期発見の方策並びに発達障害のある幼児及びその保護者に対する教育相談、研修会の実施、学校等への円滑な移行方法の工夫等について実践研究を行う「発達障害早期総合支援モデル事業」を平成19年度より新たに実施している。平成20年度においては、関係機関の連携により従来の乳幼児健診以外の早期発見方法の検討や保護者の発達障害に対する理解啓発のための教育相談会の充実等、地域における基本的な特別支援教育体制が整いつつあり、さらにきめ細やかな支援を行うために必要なツールである個別の教育支援計画の作成・活用について、試行がはじまる等の成果が見られた。

 さらに、平成19年度から、高等学校をモデル校として指定し、在籍する発達障害のある生徒に対して、専門家を活用したソーシャルスキルの指導や授業方法・教育課程上の工夫、就労支援等について実践的な研究を行う「高等学校における発達障害支援モデル事業」を実施している。平成20年度は25校をモデル校として指定し、実践的な研究を行った。これらモデル校の報告によれば、校内の支援体制の整備が進んだ、教員の発達障害に対する理解が向上し授業改善について様々な工夫が行われた、ハローワーク等の労働関係機関との連携により夏季休業期間に効果的に職場体験を実施することができた等の成果が見られた。

(指標・参考指標)

  16 17 18 19 20
1.公立小・中学校における個別の指導計画作成率(%) 18.4 28.9 38.5 63.8 80.9
2.公立小・中学校における個別の教育支援計画作成率(%) 8.7 13.4 19.9 35.8 52.3

(指標に用いたデータ・資料等)
 ・文部科学省「特別支援教育体制整備状況調査」による
(指標の設定根拠)
 「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」は、障害のある子ども一人一人のニーズに応じた支援の質を高めるために重要なものである。そのため、上記2つの指標を当該達成目標の指標として採用した。

○判断基準2-11-2イ、ロ(イS、ロA、ハA)

判断基準イ 講習会参加者に対する事後アンケート評価
S=国による講習会の参加者に対する事後アンケートにおいて大いに肯定的な評価(85%以上)が得られた。
A=国による講習会の参加者に対する事後アンケートにおいておおむね肯定的な評価(75%以上)が得られた。
B=国による講習会の参加者に対する事後アンケートにおいて否定的な評価(50%以上)が見られた。
C=国による講習会の参加者に対する事後アンケートにおいて大いに否定的な評価(75%以上)が見られた。
判断基準ロ 特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有状況
S=大幅に増加
A=増加
B=変化なし
C=減少
判断基準ハ 事業委託地域における就職状況
S=全地域において、全国平均の就職率上昇を上回る。
A=半数を超える地域において、全国平均の就職率上昇を上回る。
B=全国平均の就職率上昇を上回る地域が半数以下。
C=全地域において、全国平均の就職率上昇を下回る。

 特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した適切な指導や必要な支援を行うための教員の専門性の向上や指導内容・方法等の改善について、平成20年度においては、国による専門性向上研究協議会の事後アンケートにおいて、全回答者のうち約98.7%から講習全体に関して肯定的な回答を得ることができた。また、特別支援学校教諭等免許状保有状況については、保有率が前年度比0.7ポイントの増加となる一方で、免許状保有者数の増加が教諭数全体の増加数を上回るなど、全体として、特別支援学校教員の専門性の向上や、それによる指導方法・内容の改善が図られたと判断した。

 特別支援学校教員の専門性を向上する「特別支援学校教員専門性向上事業」において、平成20年度は、児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に適切に対応するため、「特別支援学校教員専門性向上研究協議会」により、幅広い障害に係る基礎的な知識・技能についての講義や研究協議を行う講習会を実施した。当該講習会は、各都道府県における専門性の向上を目的とした講習会の指導者となる教員や指導主事等を対象とし、国立特別支援教育総合研究所との共催により、参加の便を考え、夏季休業期間に開催した。講習会には、86名の参加があり、事後に行った講習内容についてのアンケートにおいて、講習内容が「とても役立った」「役立った」との回答を行った者が全回答者のうち約98.7%に達した。
 また、同事業において、特別支援学校の現職教員の専門性を向上させるための研修を、教員養成課程を持つ大学に委託して実施した。当該研修では、全国11の大学において、専門性の向上を目指した講習が合計48講座768時間開催され、2,507人の受講者を得た。
 さらに、平成19年12月25日には障害者基本計画に基づく「重点施策実施5か年計画」を策定し、その中に「特別支援学校教諭免許状保有率の向上」を目標として記載したところであり、各種会議を通じてその趣旨の普及を図り、各都道府県における免許状保有率向上に対する積極的な取組を促したところである。
 これらを受けて、都道府県・指定都市においては、免許状非保有者に対する認定講習が全国で開催され、のべ4,508時間の講習、27,057名の受講者があり、受講者は1,284人の増加となったことから、現職教員の専門性の向上に寄与したと評価できる。
 また、免許状保有者の割合は全体で前年度比0.7ポイント増の69.0%となり、保有者数の増加が、教諭数全体の増加を上回っていること等を勘案すると、免許状保有状況についても相応の成果が上がっているものと判断した。

 特別支援学校高等部に在籍する生徒の就労を促進するための実践研究を行う「職業自立を推進するための実践研究事業」については、平成20年度には9道府県24地域において研究を実施した。
 事業の実施地域においては、就労促進を目指した関係機関や企業関連団体との連携構築や、ジョブコーチ、就労サポーター等の専門家の適切な活用、リーフレット等の配布を通じた企業への理解啓発、卒業生に対する就労後の職場定着支援、就労支援に関する取組をまとめたマニュアルの作成などの取組により、以下に例示されるような就労支援の充実が図られた。
<調査研究地域A>
 一般企業への就職を希望する生徒の88%が就職を実現した。障害のある生徒の雇用に対するアンケート調査において、66%の企業が、特別支援学校において職業能力を高める取組が行われていることを知っていると回答した。
<調査研究地域B>
 障害のある生徒の就労に係る取組についての説明会に地元企業等228社が参加。うち100事業所以上が障害者雇用や現場実習の受け入れに理解を示した。就労を希望する生徒のうち9割以上が一般就労を達成した。
<調査研究地域C>
 ハローワークとの連携や、企業関係者を招いた説明会などの開催により、106社の新規現場実習先を確保。対前年度比10名増の32名の就職内定を獲得。

 PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)等の外部専門家を活用して、特別支援学校在籍児童生徒等の障害の重度・重複化に対応した適切な指導を行う「PT,OT,ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業」については、平成20年度には12県市において研究を実施した。
 事業の実施地域においては、教員と外部専門家が協力した指導の実施、外部専門家による児童生徒への直接指導、医学的な見地からの指導助言、実態把握の手法などに関する研修などの取組により、以下に示されるような指導内容・方法の改善が図られた。
<調査研究地域A>
 外部専門家からの助言を実践したことで、児童生徒の姿勢保持やコミュニケーションの能力が向上したほか、教員が児童生徒の実態把握の重要性を認識し、医学的見地からの教材・教具の活用法についての知識を得ることで、より積極的な教材・教具の開発・工夫に取り組むようになった。
<調査研究地域B>
 外部専門家からの助言により、課題が明確になることで、教員が設定する指導内容に自信をもつことができ、授業が充実した。また、外部専門家の直接指導により、児童生徒の身体機能が向上し、日常生活動作が容易になり、自ら進んで行動するようになった。
<調査研究地域C>
 外部専門家の専門的な視点を参考に、実態把握→指導内容の選択→実践→評価のPDCAサイクルを盛り込んだ計画を作成し、これを各教員が工夫して活用することで、学校全体の教員の専門性向上に結び付いた。

(指標・参考指標)

    16 17 18 19 20
1.特別支援学校教員専門性向上研究協議会アンケートにおいて「とても役立った」「役立った」と回答した参加者の割合   92.4% 95.9% 98.7%
2.特別支援学校教員専門性向上事業による大学での講習会の受講者数   2,431 2,507
3.特別支援学校教諭免許状非保有者の認定講習会受講者数     25,543 28,276 29,560 27,057
4.特別支援学校教諭等免許状保有者の割合
※平成16年度〜18年度の数値は、在籍校種の免許状保有者の割合。平成19年度以降は、担当学級の障害種と自立教科等の免許状保有率を合わせたもの。
  55.6% 58.3% 61.1% 68.3% 69.0%
5.特別支援学校高等部卒業者の就職率
※各年度末卒業者
全国 23.1% 24.4% (集計中) 
北海道 19.0% 16.7%
宮城 33.4% 34.7%
千葉 28.3% 29.8%
神奈川 25.9% 25.6%
福井 20.2% 18.0%
京都 27.9% 33.7%
和歌山 13.5% 18.8%
鳥取 15.9% 16.9%
山口 25.5% 28.9%

(指標に用いたデータ・資料等)
1.、2.は、文部科学省調べ。(各事業者からの報告書による)
3.、4.は、文部科学省「特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有状況等調査」による。
5.は、学校基本調査による。(平成20年度については、学校基本調査集計中のためデータなし。)
(指標の設定根拠)
 国や大学による講習会の受講者が、講習内容を十分理解し、その内容について適切に普及していくことは、各都道府県における特別支援学校教員の専門性を向上するための有効な手段である。また、特別支援学校教諭免許状の取得は、特別支援学校教員の専門性を測る指標の一つとなりうる。
 また、就職率の上昇は、職業教育にかかる指導内容・方法の改善や、関係機関との連携、地元企業や保護者への理解啓発など、都道府県における就労支援の総合的な結果の表れであり、障害のある生徒の自立と社会参加を図るための指導の効果を測る指標の一つとなりうる。
 以上のことから、上記3つの指標を当該達成目標の指標として採用した。

必要性・有効性・効率性分析

【必要性の観点】
 近年、児童生徒等の障害の重複化や多様化に伴い、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育の実施や、学校と福祉、医療、労働等の関係機関との連携がこれまで以上に求められているという状況に鑑み、平成19年度より改正学校教育法が施行され、児童生徒等の個々のニーズに柔軟に対応し、適切な指導及び支援を行う観点から、複数の障害種別に対応した教育を実施することができる特別支援学校の制度を創設するとともに、小中学校等における特別支援教育を推進すること等により、障害のある児童生徒等の教育の一層の充実を図ることが法律上も明確に規定された。
 このような状況において、教育支援体制整備状況調査(調査基準日:平成19年9月1日)では、公立小・中学校における校内委員会の設置率や特別支援教育コーディネーターの指名率が99%を超えており、小・中学校における教育支援体制整備に関し、一定の成果が上がっている。一方で、幼稚園・高等学校においては、進みつつあるもののまだ整備が遅れている状況である。また、幼・小・中・高の学校段階を問わず、個別の教育支援計画の作成や専門家チームの活用に関しては、達成割合が低く、支援の質の向上が望まれる。
 教員の専門性の向上や指導内容・方法等の改善については、特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有率が依然十分とは言えない水準にある。児童生徒の障害の重度・重複化、多様化に対応した教育を行うためには、幅広い障害に対する知識と技術を有する教員の確保が不可欠である。このため、各都道府県教育委員会等において免許状を保有していない教員の免許取得等の措置を積極的に講じていくとともに、免許状保有者についても、障害に対する幅広い知識とともに、通常の学級における発達障害を含めた障害のある生徒への指導など、新たな課題に対応した一層の専門性の向上を図ることが必要である。このため、障害に関する最新の研究成果や先進的な指導を行っている学校の事例の共有など、専門性向上のための継続した取組が必要となる。
 また、職業教育や外部専門家を活用した指導については、事業の成果により、知見は得られているものの、これを受けた全国での実践を更に進めていく必要がある。さらに、障害者基本計画の後期重点施策実施5か年計画においては、「特別支援学校教諭免許保有率の向上」や「障害に関する外部専門家の学校における活用」、「社会的及び職業的自立の促進」等を政府目標として掲げており、目標達成に向けた取組を推進していく必要がある。

【有効性の観点】
 本施策は、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという観点に立ち、子ども一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行うため、教員の専門性向上や、外部専門家の活用を含めた特別支援教育の体制整備を総合的に推進するものである。
 本施策を継続することにより、特別支援教育の推進に向け、幼稚園から高等学校までの各段階における支援体制整備の一層の推進、教員の専門性の向上や指導内容・方法等の改善等の目指す効果が達成できると判断した。

【効率性の観点】
(事業インプット)
 ・特別支援教育の推進に必要な経費 7,635百万円(平成20年度予算額、以下同)
 発達障害等・特別支援教育総合推進事業 503百万円
 発達障害早期総合支援モデル事業 123百万円
 高等学校における発達障害支援モデル事業 51百万円
 障害のある子どもへの対応におけるNPO等を活用した実践研究事業 9百万円
 特別支援学校教員専門性向上事業 8百万円
 職業自立を推進するための実践研究事業 48百万円
 PT.OT.ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業 43百万円
 特別支援教育就学奨励費負担等 6,850百万円
(事業アウトプット)
 本施策の実施により、幼稚園から高等学校までの各段階における支援体制整備の一層の推進、教員の専門性の向上や指導内容・方法等の改善等、外部専門家の活用を含めた特別支援教育の体制整備が総合的に推進される。
(事業アウトカム)
 特別支援教育の推進により、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に大きく貢献することが期待される。
 以上より、事業の波及効果も認められ、効率性の観点から妥当である。

施策への反映(フォローアップ)

【予算要求への反映】
 これまでの取組を引き続き推進

【機構定員要求への反映】
 機構定員要求に反映

【具体的な反映内容について】
 小・中学校における特別支援教育の校内体制整備では一定の成果が得られている。一方で、幼稚園・高等学校では進みつつあるもののまだ整備が遅れている状況であり、幼稚園・高等学校も含めた学校全体では引き続き体制整備等を推進する必要がある。
 また、特別支援学校教諭免許状保有率が若干増加したとはいえ、依然十分とは言えない水準にある。このような状況に対し、各都道府県教育委員会等において教員の免許取得等の措置を積極的に講じていくとともに、免許保有者についても障害に対する幅広い知識と共に一層の専門性の向上や指導内容・方法等の改善を図ることが必要である。
 加えて、来年度は発達障害の実態把握に関する調査研究、早期からの発達障害支援に関する研究、高等学校段階の指導や支援の在り方に関する研究など発達障害支援に関する業務の増が見込まれており、発達障害教育の振興に関する企画及び立案を行うため、課長補佐及び係長を要求しているところである。
 これらのことから、特別支援教育の推進に係る事業につき更なる充実を図る。

関連した行政活動(主なもの)

  • 特別支援教育の推進について(通知)(初等教育中等教育局長:平成19年4月1日)
  • 障害者福祉施策、特別支援教育施策及び障害者雇用施策の一層の連携の強化について(通知)(初等中等教育局長:平成19年4月2日)
  • 特別支援学校の就職未内定者に対する障害者職業能力開発校等への入校促進に向けた取組について(通知)(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課長、厚生労働省職業能力開発局能力開発課長:平成21年2月20日)

備考

 特になし

具体的な達成手段

 ※【22年度の予算要求への考え方】には、実績を踏まえ、より効率化に努める内容についても記入している。

【事業概要等】 【20年度の実績】 【22年度の予算要求への考え方】
 発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業 (開始:平成20年度 終了:− 20年度予算額:503百万円)
 平成15〜19年度に実施した「特別支援教育体制推進事業」を拡充・発展し、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の支援のため、各学校種教員研修、大学教員や医師等の外部専門家の巡回・派遣、厚生労働省との連携による乳幼児期から就労までの一貫した支援を行うモデル地域の指定等を実施することにより、学校の特別支援教育体制を総合的に推進する。
○47都道府県に委嘱
 平成20年度特別支援教育体制整備状況調査結果から、校内支援体制の整備が着実に図られていることが読み取れる。平成15年度以降、毎年着実に体制整備の進展がみられるところであり、「特別支援教育体制推進事業」及び「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」の実施により特別支援教育体制整備の推進が図られているものと考える。  小・中学校は基礎的な体制は整備されつつあり、一人一人のニーズに応じた支援についても進捗が見られるが、一層の充実が求められる。また、幼稚園・高等学校においては、まだ体制整備が遅れている状況であり、引き続き体制整備を進める必要がある。
 平成22年度概算要求に当たり、これまでの本事業の有用性に鑑み、支援体制の推進に係る事業について引き続き予算要求を検討する。
 発達障害早期総合支援モデル事業 (開始:平成19年度 終了:平成21年度 20年度予算額:123百万円)
 発達障害のある幼児に対し、早期発見・早期支援を行う効果的な方策についての実践研究を実施する。  平成20年度は、27地域をモデル地域に指定し、実践的研究を行った。平成20年度においては、関係機関の連携により従来の乳幼児健診以外の早期発見方法の検討や、保護者の発達障害に対する理解啓発のための教育相談会の充実等、地域における基本的な特別支援教育体制が整いつつあり、さらにきめ細かな支援を行うために必要なツールである個別の教育支援計画の作成・活用について、試行がはじまる等の成果が見られた。  平成21年度は継続地域として10地域をモデル地域として事業を実施。幼稚園における発達障害への支援体制は遅れているが、関係機関が連携し、きめ細かな支援を行うツールである個別の教育支援計画の策定方法等の試行が始まる等、一定の成果が認められたことから、本事業は21年度をもって終了し、今後は本事業の中で新たに浮上した課題について、重点的に研究する等の検討が必要である。
 高等学校における発達障害支援モデル事業 (開始:平成19年度 終了:−年度 20年度予算額:51百万円)
 高等学校における発達障害のある生徒を支援するため、専門家を活用したソーシャルスキルの指導や授業方法・教育課程上の工夫、就労支援等について実践的な研究を実施する。  平成20年度は、25校をモデル校に指定し、実践的研究を行った。各モデル校からの報告においては、各モデル校の支援体制の整備が進む、教員の発達障害に対する理解が向上し授業改善が行われた、ハローワーク等の労働関係機関等との連携により夏季休業期間に職場体験を実施した等の成果が見られた。  平成21年度においても新たに14校をモデル校として指定したところ。まだまだ高等学校における発達障害への支援体制は遅れており、平成19年度モデル校の成果を全国に広め、平成20年度指定校が継続して研究を実践し、また、新たにモデル校を指定するために平成22年度も引き続き予算要求を検討する。
 障害のある子どもへの対応におけるNPO等を活用した実践研究事業
(開始:平成18年度 終了:平成20年度額 20年度予算:9百万円)【平成20年度達成年度到来事業】
 民間活力を活用するという観点から、障害のある子どもの教育に先導的な取組を行っているNPO等に対し研究を委嘱し、その研究成果をもって、今後の一人一人のニーズに応じた適切な支援の在り方等の検討に資する。  当該事業は平成18年度より実施しており、研究期間は1事業2か年と定めている。平成18年度は7団体、H19年度及び平成20年度は6団体に研究を委託し、平成20年度においては、学習支援員の効果的な配置、特別支援学校における言語聴覚士の有効活用事例、障害のある幼児児童生徒の成長に有効な体験プログラムの検討等、効果的な研究が実践された。3年間を通じ、各NPO団体等の先導的な取組による研究成果をもって、地域の関係機関と連携し、乳幼児期から就労までを見据えた支援の在り方に関して、今後の検討に資する実践的な研究成果が得られた。  事業実施後3カ年で一定の成果が認められたことから、本事業は20年度をもって終了し、今後は本事業の中で新たに浮上した課題について、重点的に研究する等の検討が必要である。
 特別支援学校教員専門性向上事業 (開始:平成18年度 終了:‐ 20年度予算額:8百万円)
 特別支援学校に在籍する児童生徒等の障害の重度・重複化、多様化等に対応した適切な指導や必要な支援を行うため、特別支援学校教員の専門性の向上を図る。  当該事業により、特別支援学校教諭免許状等保有者の割合が増加し、また、都道府県等において指導的立場にある指導主事等の専門性の一層の向上が図られた。  特別支援学校教諭免許状保有状況について一定の成果が見られたものの、依然として十分な水準とは言えないことから、平成22年度については、障害種や講習内容に極端な偏りが生じないよう、委託先及び委託内容の精査を行った上、引き続き予算要求を検討する。
 職業自立を推進するための実践研究事業 (開始:平成19年度 終了:平成20年度 20年度予算額:48百万円)
【平成20年度達成年度到来事業】
 学校・教育委員会、労働関係機関、企業等の緊密な連携・協力の下、地域の企業関係者と協力した職業教育の改善、新たな職域の開拓や現場実習の充実、地域の企業に対する特別支援学校の生徒及び職業教育についての理解啓発など、障害のある生徒の就労を促進するための実践研究事業を行う。  9道府県24地域において実践研究を行い、当該事業の実施により、各都道府県において、就労促進を目指した関係機関の連携構築や、ジョブコーチ、就労サポーター等の専門家の適切な活用、就労支援に関する取組をまとめたマニュアルの作成など、障害のある生徒の就労を促進するための着実な研究成果が得られた。
 2箇年の事業の結果、委託先のうち半数以上の県において、全国平均を上回る就職率の上昇を果たしたほか、すべての委託先において、就職に結び付けるための新規現場実習先の確保や、ハローワーク等労働関係機関との連携構築がなされた。今後は、当事業において得られた成果を全国に普及し、各地域や学校の実態に応じた就労支援が更に進むよう、促していく必要がある。
 本事業は2箇年の実施により、一定の成果が認められたことから、平成20年度をもって終了とする。今後は、本事業で得られた知見の全国への普及や、本事業において明らかになった新たな課題について重点的に研究するなどの更なる検討が必要である。
 PT,OT,ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業 (開始:平成20年度 終了:平成21年度 20年度予算額:43百万円)
 特別支援学校在籍児童生徒等の障害の重度・重複化に対応した適切な指導を行うため、特別支援学校におけるPT,OT,ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善等について、モデル的に実践研究を行い、その成果の普及を図る。  12県市において実践研究を実施し、外部専門家による授業への助言や教員研修などを実施し、授業内容の改善が図られた。  平成20年度は着実な成果が見られたものの、委託先ごとに、進捗や取組の充実度にばらつきが見られたことから、平成21年度においてはこれらの反省を踏まえた着実な実施がなされるよう、指導・助言を行う。2箇年で一定の成果が見込まれることから、本事業は今年度をもって終了とするが、本事業で明らかになった新たな課題等について、更なる検討が必要である。
 特別支援教育就学奨励費負担金等(開始:昭和29年度 終了:‐ 20年度予算額:6,850百万円)
 教育の機会均等の趣旨にのっとり、かつ特別支援学校及び特別支援学級への就学の特殊事情に鑑み、これらの学校等に就学する幼児児童生徒の保護者等の経済的負担を軽減するために必要な援助を行い、もってこれらの学校への就学を奨励するとともに特別支援教育の振興を図る。  保護者等の経済的負担能力に応じて就学に係る経費を支給することができ、家庭の貧困等の経済的理由による未就学者、長期欠席者等が減少しているほか、障害の状況に応じ、教育を受けるための就学意欲を高め、高等部への就学率アップなど特別支援教育の振興に寄与している。  近年、特別支援学校等の在籍児童生徒数が増加していることや、障害の重度重複化により、平成20年度においてはおよそ6,000万円の不足が生じたところ。平成22年度においては、平成20年度の実績等を踏まえ予算要求を検討する。

(参考)関連する独立行政法人の事業(なお、当該事業の評価は文部科学省独立行政法人評価委員会において行われている。評価結果については、独法評価書を参照のこと) 

独法名 20年度予算額 事業概要 備考(その他関係する政策評価の番号)
国立特別支援教育総合研究所 1,176百万円(運得費交付金)  我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして、国や地方公共団体等と連携・協力しつつ、国の政策的課題や教育現場の課題に柔軟かつ迅速に対応する業務運営を行い、障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献する。

官房部局の所見

・達成目標2-11-1について、過去の実績も考慮し、判断基準を設定することについて検討すること。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --