文化財の修理に係る税制(新設)

(対象税目:所得税)

●制度の概要等

1.制度概要

 重要文化財(建造物)を所有する個人が重要文化財の修理を行った場合には、修理に要した費用の一定割合を税額控除する。

2.指標と目標

【指標】

個人が所有する重要文化財(建造物)の修理割合

(19年度個人所有の重要文化財国庫補助事業数16件、所有者自主修理数(推定)48件(注))

  • (注)
    アンケートによる自主修理実施数(19年度)
    34件
    アンケート回答数
    161件、20年7月現在の個人所有指定件数227件
    34わる161かける227イコール47.9

かっこ16たす48かっことじわる227イコール28.2

【目標】

 貴重な国民共有の財産である重要文化財建造物について、所有者の個人負担を軽減することにより、当該建造物の適切な保存・維持のために必要な修理を促進し、重要文化財としての価値を損なうことなく後世に継承していくことを目的とする

【効果の把握方法】

 税制改正の結果、修理の割合がどの程度増大したか等について確認する。

●制度の事前評価結果

1.必要性の観点

 我が国の多くの重要文化財建造物は木や紙など脆弱な材料を用いて作られているものが常に風雨に曝されていることから、その価値を大きく減ずることのないように適切な周期で大規模な修理(維持修理は平均30年周期、解体・半解体修理は平均150年周期)を行うとともに、当該建造物の価値を維持していくために必要な小規模な修理を定期的に行っている。
 大規模な修理については、必要に応じて国庫から補助を行っているが、その費用が多額であるため、個人の所有者にとっては自己負担分が重荷となっている。また、国庫補助の対象とならない小規模な修理については、その費用の全額が所有者の負担となる。
 このような状況を踏まえ、国民共有の財産である重要文化財建造物を適切に保存・維持していくためには、所有者の修理費用の自己負担を軽減するための税制上の優遇措置が必要である。また、文化財保護法において、文化財の保護は国や地方公共団体の任務であるとともに、所有者の責務とされており、国や地方公共団体による補助に加えて、税制措置によって所有者自らの取組を後押しすることが必要である。

2.有効性の観点

減税見込み

国庫補助事業
19年度個人所有の重要文化財事業数16件かける個人負担平均約120万円イコール1,920万円
所有者自主修理
修理が行われた数(推定)48件かける修理費用の平均約50万円イコール2,400万円

計 4,320万円

減税見込額(10パーセントの税額控除の場合) 4,320万円かける0.1イコール432万円

3.効率性の観点(代替手段との比較)

 現在、主に大規模な修理について、国庫補助により支援を行っており、国庫補助事業は文化財の保護のため不可欠なものである。
 他方、国庫補助事業では、予算上の制約から、文化財修理の全てには対応できるものではなく、所有者の自主的な修理が促進される必要がある。また、国庫補助による支援を待つことなく、所有者自ら継続的に行われるべき修理を実施することが必要である。
 継続的な修理・保存措置が、所有者自らによって行われることによって、国庫補助事業による大規模修理事業の周期を長期化させ、事業費を抑制し、結果として、公費負担を抑制することにつながるものと考えられる。

-- 登録:平成21年以前 --