87.活断層調査の総合的推進(拡充)

平成21年度要求額:813百万円
(平成20年度予算額:478百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 陸域活断層調査及び沿岸海域活断層調査を総合的に実施し、「活断層基本図(仮称)」の作成や、「全国を概観した地震動予測地図」の高度化等、新総合基本施策に掲げられた基本目標を達成する。
 陸域活断層調査については、平成17年8月に地震本部が策定した「今後の重点的調査観測について」で調査観測対象とした活断層や、これまで調査対象に位置づけられていない短い活断層等を対象とした調査観測・研究を実施し、活断層の位置形状の把握、震源断層の三次元的な位置・形状の把握、断層活動時期認定の精度向上等を図る。また、補完調査については継続して実施する。平成21年度は、平成17年度より実施している糸魚川−静岡構造線断層帯の調査研究成果をとりまとめるとともに、新たに複数の活断層を対象とした調査研究を実施する。なお、新たに開始する活断層調査については、3ヵ年で長期評価及び強震動評価に必要となる情報を得る。また、補完調査については、活断層数を見直した上で、一年単位の調査として、毎年度継続実施する。
 沿岸海域活断層調査については、平成21年度より新たに開始する調査研究であり、既存調査結果を整理した上で、沿岸海域の長大な活断層を中心に海底地形・地質調査等を単年度で実施し、地震本部が長期評価を行うために必要となる活断層の位置形状や活動度、活動履歴等を把握する。
 なお、本事業は地震本部が策定する新総合基本施策を推進するための根幹となる事業であることから、地震本部が今後策定する観測計画等を踏まえて、適宜見直しを図ることとする。

2.指標と目標

 効果把握のための指標には、事業の進捗状況を用いることとする。また、調査観測を実施した活断層数についても、活動実績として参考指標に用いる。
 達成年度までに、新総合基本施策で基本目標として掲げた、「発生確率が高いあるいは発生した際に社会的影響が大きい活断層等が分布する地域を対象とした長期評価及び強震動評価の高度化」「沿岸海域の活断層及びひずみ集中帯を中心とした未調査活断層の評価の高度化」、「短い活断層や地表面に現れていない断層で発生する地震の評価の高度化」、さらには「活断層基本図(仮称)の作成」、「全国を概観した地震動予測地図の高度化」等実現することを目標とする。なお、新総合基本施策は平成30年度までの10年計画であるが、陸域の重点的調査観測については概ね3年、陸域の補完調査、及び沿岸海域の活断層調査については概ね1年で地震本部が長期評価及び強震動評価を行うために必要となる成果を得る。
 効果の把握手法としては、委託成果報告書等の内容を用いて、地震本部で策定した各種報告書の内容や、地震本部における議論等を踏まえた上で、事業の進捗を把握する。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 新総合基本施策においては、これまでの10年の地震調査研究を省みた上で、「近年、調査観測・研究が殆ど行われていない沿岸海域を震源とする被害地震が多発している」、「現行の評価で用いられている活断層図の精度は必ずしも十分ではない」等、多くの課題が抽出されている。これを受けて、当面10年間に取り組むべき地震調査研究に関する基本目標として、「活断層等に関連する情報の体系的収集及び評価の高度化」等が掲げられており、これら基本目標を達成するため、活断層についての調査観測・研究を総合的に実施する本事業については、上述の事業開始に至る経緯も勘案した上で、必要性が極めて高いと判断できる。
 なお、地震本部政策委員会や、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会防災分野の研究開発に関する委員会においても、本事業の評価を行い、必要性を確認する。

2.有効性の観点

 地震本部の設立以降、全国稠密な基盤観測網の整備、基礎研究の推進による知見の獲得、全国を概観した地震動予測地図の作成、緊急地震速報の開始等、多くの成果が上がっている。また、これまで「地震調査研究推進」として実施してきた重点的調査観測や、追加・補完調査の成果については、地震調査委員会の長期評価等に確実に活用されてきている。このような我が国のこれまでの地震調査研究に関する研究開発の実績と経験、さらには他の事業の進捗状況等を考慮すると、得ようとする効果は確実に達成されるものと見込まれる。
 なお、地震本部政策委員会や、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会防災分野の研究開発に関する委員会においても、本事業の評価を行い、有効性を確認する。

3.効率性の観点

アウトプット

 重点的観測の調査対象とした活断層や、主要な沿岸海域活断層等を対象とした総合的調査を行うことで、活断層の位置形状や活動度、活動履歴等の詳細情報が取得でき、調査対象地域の強震動予測の精度向上、地震発生時期・規模の予測精度向上等が可能になる。これにより、「全国を概観した地震動予測地図」を高度化するとともに、活断層の詳細位置図に各種調査及び評価結果を記した「活断層基本図(仮称)」を作成する。

事業スキームの効率性

 本事業のアウトプットは、地方公共団体や民間企業、さらには国民一般の地震防災対策の強化に大きく寄与し、地震による国民の生命・財産への甚大な被害を軽減する上で、その効果は計り知れない。このため、事業スキームの効率性は妥当であるといえる。

代替手段との比較

 本事業は、陸域及び沿岸海域における地殻構造調査や地形調査等を総合的に実施するものであり、各調査手法について最先端の技術や知見を持つ大学、独立行政法人、民間企業等の中から、最もポテンシャルの高い機関が実施するべきであることから、独立行政法人の運営費交付金等による自主事業ではなく、国の委託費として公募選定した上で実施する必要がある。

-- 登録:平成21年以前 --