85.数学・数理科学と他分野との融合の推進(新規)

平成21年度要求額:30百万円
(平成20年度要求額:−百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 我が国では、欧米主要国に比べて、純粋数学が応用数学や数理統計学に比べて支配的であることから、他分野や産業・社会経済におけるニーズと数学研究のシーズとの連携・融合が不十分であり、様々な分野の研究者と数学者が顔を突き合わせて議論する研究フォーラム等の場も存在しない。
 本事業では、数学・数理科学と他分野との融合・連携を推進する中核機関を公募により採択し、平成21年度から3年間、以下の活動を行うことにより、数学と他分野とのネットワーク作りを促進する。

  • 1 国際シンポジウムや国内シンポジウム、研究フォーラム等の開催
  • 2 インターフェース人材の確保・育成

2.指標と目標

【目標】

 数学と他分野との融合を阻害している要因である出会いの場や、コミュニケーション不足を改善するために、数学を必要とする分野の研究者と数学者が集まる場をつくり、ネットワーク作りを促進する。

【指標】

 以下のような指標を用いて、総合的に判断する。

  • シンポジウム等に参加した研究者数、技術者数とそれぞれの専門分野
  • シンポジウム等に参加した研究者、技術者の意識の変化(アンケート等)
  • インターフェースを果たし得る人材の確保・育成状況

 達成目標の効果を定量的指標のみで把握することは困難であるが、中核機関には年度報告書の提出を義務付け、シンポジウム等の開催結果(参加者数、参加者の専門分野、討論の概要等)を報告させるとともに、その一環としてシンポジウム参加者等へ意識調査(アンケート又はインタビュー)を行うことにより、異分野間のコミュニケーション促進効果を推定する。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 数学・数理科学は、諸科学の礎となる学問分野であり、他分野との連携・融合により、多くの領域においてブレークスルーをもたらすものである。また、各重点科学技術分野や産業・社会経済におけるニーズに対応した諸問題を解決するためには、複雑な自然・生命現象、社会現象等を解明することが必要であり、数理科学的手法(モデル化等)が不可欠である。このため、欧米諸国においても、数学・数理科学と他分野との融合研究を振興するプログラムや、異分野間の研究者がface-to-faceで議論する場としての融合研究拠点の構築や研究集会・研究フォーラムの開催等を行っている。
 我が国においては、数学・数理科学と他分野との連携・融合を促進するための施策としては、平成19年度の戦略目標「社会的ニーズの高い課題の解決へ向けた数学/数理科学によるブレークスルーの探索」の下で実施されている、「さきがけ(平成19年度開始)」と「CREST(平成20年度開始)」のみであり、必ずしも融合・連携が活発に行われているとは言えない。
 特に、純粋数学の比率が高い我が国では、数学者と他分野の研究者とが交流する機会は限定されており、数学(特に純粋数学)と他分野との間には共通理解の土壌(共通言語)が存在しないと言われている。また、他分野や産業・社会経済における実施の諸問題から数学の土俵に乗せられる人材や異分野間のインタープリター的役割を果たし得る人材(インターフェース人材)も不足している。
 このため、本事業において、数学・数理科学と他分野や産業分野の研究者が相互に交流し、知的触発を得られる出会いの場(シンポジウムやフォーラム等)を構築することにより、異分野の研究者・技術者間でのネットワーク作りを促進することが必要である。また、平成19年度から開始した戦略的創造研究推進事業において、具体的研究課題を推進するとともに、これに合わせて数学との融合について様々な分野の人が集まり議論する場を提供する本事業を推進することにより、双方の事業推進に相乗効果が得られることが期待される。

2.有効性の観点

 本事業では、連携・融合を推進する中核機関を公募により選定し、1国際シンポジウムや研究フォーラム等の開催、2インターフェース人材の確保・育成等を行うこととする。本事業を行う中核機関は、数学や数理科学研究の基盤及び他分野への応用におけるノウハウを有する機関を選定し、このような優位性を生かして事業を推進することとしているため、本目標の達成が見込まれる。

3.効率性の観点

アウトプット

 平成21年度には、連携・融合を推進する中核機関を公募により選定し、国際シンポジウムを1回程度、研究フォーラム等の国内シンポジウムを3〜4回程度開催し、数学・数理科学と他分野や産業分野との知的交流の場を設定する予定である。これらのシンポジウム等には、産学官から多様な専門分野の研究者・技術者が多数参加する見込みであり、これを契機に新たなネットワーク作りが促進されると考えられる。

事業スキームの効率性

 本事業では、1年当たり30百万円(かける3年間)で、年間4〜5回のシンポジウムや研究フォーラム等を開催する予定であり、数学分野はもちろんのこと、数学の導入が期待される他分野や産業界からも多数の研究者・技術者が参加する見込みである。純粋数学が主流の我が国では、数学者と他分野や産業分野の研究者・技術者が一堂に会するシンポジウム等の開催はあまりなされていないため、年数回のシンポジウム等を3年間にわたって実施することにより得られる効果は大きい。

代替手段との比較

 本事業は国の委託事業として実施するが、これを研究者や各種団体等の自主事業として実施することとした場合は、特定の分野に特化した通常のシンポジウムや研究フォーラムの開催にとどまってしまい、多様な分野への広がりが期待できない。また、本事業においては、数学者や他の数学を必要とする分野の研究者が、これまでは、大学内や個人研究者間の連携にとどまっており十分に情報交換・連携されてこなかったことを打破するべく行うものであるため、研究者や大学等が自主事業で行うことは馴染まず、また本事業の目標を実現できない。

-- 登録:平成21年以前 --