29.子どもの読書応援プロジェクト(拡充)

平成21年度要求額:488百万円
(平成20年度予算額:152百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

1「子ども読書応援団推進事業」(拡充)

 子どもの読書離れが指摘されている中で、「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」に基づき、子ども読書活動の推進体制を整備し、子どもの読書活動の推進するための社会的気運の醸成を図るため、特に、読書ボランティアの質的、量的な充実及び中高生に対する読書意欲の喚起を課題として、「子ども読書応援団」の派遣等をはじめとして、以下の5つの事業を委託する。
 具体的な委託方法については、5つの事業メニューについて各都道府県等の教育委員会を中心とした実行委員会からの事業の企画提案を受けて、有識者等からなる事業企画評価委員会で審査し、その結果を踏まえ、各実行委員会は地域と連携して本事業を実施する。

・「ブックスタート」の推進(新規64箇所)

 ブックスタートアドバイザーを各地に派遣し、ブックスタートを始める体制づくり及びブックスタートにおける課題の解決等のための研修等の実施等を通じて、ブックスタートを推進する。

・「子ども読書応援団」の派遣(10箇所)

 読書ボランティアを中心とした「子ども読書応援団」を地域に派遣し、本の読み聞かせやブックトーク等を実施し、子どもが読書に慣れ親しむ環境をつくるとともに、子どもの読書活動の活性化を図る。

・子ども読書ボランティアリーダーの育成(7箇所から64箇所)

 地域で子どもの読書活動を推進する読書ボランティア等の中心的存在となるような指導者を育成するための研修会等を実施し、子どもの読書活動の推進体制の整備を図る。

・青少年のためのオーサー・ビジット事業(30箇所)

 著名な作家等を招聘し、青少年に直接語りかけてもらうこと等を通じて、子どもの読書意欲の向上を図る。

・発達段階に応じて読書活動への理解を深める取組の調査研究(10箇所)
《調査研究メニュー》
  1. 親子で取り組む読書活動の推進に関する調査研究
  2. 子どもの読書体験の効果的手法に関する調査研究
  3. 中高生の読書活動の推進に関する調査研究

2「子ども読書地域スクラム事業」(新規)

 平成20年3月に新たな「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定され、その中では「地域における取組の差が解消されていない」という課題や、国は、市町村における「子ども読書活動推進計画」を本計画期間中に50パーセント以上の市町村において策定されるよう促していくこととしているが、現状では平成18年度末において本計画の策定率が24パーセントにとどまっているという課題もある。
 同計画の策定率が24パーセントとなっている原因としては、市町村における同計画を策定する担当部署等において専門的な人材が不足していること、また、同計画が未策定である地域の行政・図書館・公民館・学校・PTA・企業等の連携が不十分であり、同計画の策定を行うだけの体制の整備が図られていないこと等が考えられる。そこで、地域の行政の関係部局間の連携や、地域の関係機関等との協力体制を促進するべく、地域の行政・図書館・公民館・学校・PTA・企業等のネットワークを形成し、それぞれの地域に応じ必要な取組を展開することで、子どもの読書活動の推進体制を整備し、同計画の策定を促す。

  • 子ども読書地域スクラム事業(47箇所)

3「子ども読書情報ステーション事業」(拡充)

 「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」に基づき、家庭や地域等に対して、子どもの読書活動を推進するための情報等の提供を目的として、全国的な情報サイトの運営や啓発ポスターの配付等を通じて、子どもの読書活動の効果的な普及・啓発を展開し、子ども読書活動の推進の社会的気運の醸成を図る。
 具体的には、読書関係の全国的な団体又は青少年の健全な育成の観点から子どもの読書活動に取り組める全国的な団体を対象として、一般競争入札(総合落札方式)を実施し、事業の企画提案を受けて、有識者等からなる事業企画評価委員会で審査し、その結果を踏まえ、委託決定された団体が創意工夫して全国的な情報サイトの運営等を行う。

4「子ども読書推進に関する評価・分析事業」(新規)

 平成20年3月に新たな「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定され、市町村における「子ども読書活動推進計画」を本計画期間中に50パーセント以上の市町村において策定されることや図書館に登録している読書ボランティアの数を平成17年度の約7万人から、本計画期間中に約10万人に増やすこと等を目標としている。
 市町村における「子ども読書活動推進計画」の策定率は平成18年度末現在において24パーセントにとどまっているが、その原因についての究明を行うための十分なデータが蓄積されていない状況にある。また、これらの目標が達成されているかについての統計等は、毎年の蓄積がなく、単発的に行われているので、これらを使うことでの子どもの読書活動に関する事業の評価・分析を行うことが難しい。さらに、子どもの読書活動が促進されているかについて、より総合的に判断するためには、さらなる指標の設定を行う必要がある。
 そこで、子ども読書推進に関する体制整備が図られているか等についての評価・分析を、評価・分析を専門とする民間団体等に委託することにより、子どもの読書活動に関する事業の評価・分析を行う統計データの集積及び新たな指標作りを行うものである。

  • 子ども読書推進に関する評価・分析事業(1箇所)

2.指標と目標

【指標】

  • 平成21年度末時点における「市町村子ども読書活動推進計画」の策定状況の伸び率を平成19年度と比べて30パーセント以上とするよう努める。
  • 「子ども読書応援プロジェクト」各事業において、参加者数を前年度以上とするよう努める。

【参考指標】

  • 「1日当たりの読書時間(読書を全くしない児童・生徒の割合)」〔「全国学力・学習状況調査」(文部科学省調べ)〕の改善を目指す。

【目標】

  • 「子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」期間中に「市町村子ども読書活動推進計画」の策定率を50パーセント以上とするよう努める。(「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」における目標(平成18年度:24パーセント))
  • 「子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」期間中に読書ボランティア団体の図書館への登録数を10万人へ増加させるよう努める。(「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」における目標(平成17年度:7万人))

【効果の把握手法】

  • 本事業を実施した都道府県等の教育委員会を中心として組織された実行委員会(任意団体)に対して、参加者数等の実績を事業報告させるとともに、参加者等にアンケートを実施するなどして、子どもの読書活動の推進についての本事業に関する効果・課題等を広く聴取し、検証する。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことのできないものである。また、子どもたちが、社会を構成する一員として、主体的に社会の形成に参画していくために必要な知識や教養を身につけるとともに、真理を求める態度を養う礎となるものであり、社会全体でその推進を図っていくことは極めて重要である。
 平成13年に成立した「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づき、平成14年8月の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」閣議決定から5年が経過し、新たに平成20年3月に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定された。その中では、学校段階が進むにつれて子どもたちが読書をしなくなる傾向にあること、地方公共団体の取組状況に大きな差が見られること、平成19年に公表された「OECD生徒の学習到達度調査」により、我が国の子どもたちの読解力の向上が課題であることなどの課題が明らかとなった。
 このような課題等を踏まえて、今後は乳幼児期から発達段階に応じて読書に親しめるように配慮すべく、読書活動への理解や関心を深めるために指導・助言できる人材の養成・育成を全国に広く行うために、読書ボランティア質的及び量的拡充のための各事業を、それぞれ都道府県を単位として47箇所に展開することを目指す。また、子ども読書地域研究会事業については、平成20年3月に閣議決定された「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の中で、子どもの読書活動の推進については地域によって取組に格差が見られることから、全国を6ブロックに分けたうちの1ブロック毎に2箇所の計12箇所において事業の展開を目指すこととする。さらに、本事業において開設した、子どもの読書活動を応援する全国的な情報サイトの運営及び新規コンテンツの追加によって、子どもの読書活動の推進に関する情報の提供等を通じて、子どもの読書活動の普及・啓発を図る。また、発達段階に応じた読書に親しむための本の普及等により家庭・地域における読書活動の推進体制を整備する。

2.有効性の観点

 読書ボランティアについての図書館への登録数については、平成17年度において約7万人となっているが、平成19年度「子ども読書応援プロジェクト」事業において、参加数のうち、ボランティア関係者が69,674人であり、他に「発達段階に応じて読書活動への理解を深める取組の調査研究」の参加者が23,526人、前年度の子ども読書地域フロンティア事業における読書フェスティバル参加者数が12,800人となっているため、本事業によって、子どもの読書活動に興味及び関心のある人が読書ボランティアの活動をするための支援を行うことにより、平成23年度までに読書ボランティアについての図書館への登録数を10万以上にすることは可能と思われる。
 「子どもの読書活動の推進に関する法律」第9条では、都道府県及び市町村は、それぞれ「子ども読書活動推進計画」を策定するよう努めなければならないとされており、平成18年度末時点で、47都道府県(平成18年度において全ての都道府県で策定済)、市町村においては昨年度より136市町村増えて567市町村で策定され、前年度と比較して伸び率は約32パーセントとなっている。本事業によって、子ども読書応援団推進事業で各地域における子どもの読書活動推進体制の下地をつくり、子ども読書地域スクラム事業によって、「市町村子ども読書活動推進計画」の策定率の進捗を図り、子ども読書情報ステーション事業によって子どもの読書活動の情報を各都道府県及び市町村に提供すること等を通じて、この伸び率を維持していきたい。

3.効率性の観点

アウトプット

 本事業では、ブックスタートの推進(64箇所)、子ども読書応援団の派遣(10箇所)、子ども読書ボランティアリーダーの育成(64箇所)、子ども読書地域スクラム事業(47箇所)、子ども読書情報ステーション事業、子どもの読書推進に関する評価・分析等を行うことにより、地域における子どもの読書活動の推進体制の整備、や子どもの自主的な読書活動を推進する社会的気運の醸成を図られることを考えると本事業は、効果的・効率的に実施されると判断される。

事業スキームの効率性

 本事業の予算規模(488百万円)に対するアウトプットとして、都道府県等の教育委員会を中心として組織された実行委員会等に委託することを通じて、1読書ボランティアの質及び量の充実、2中・高生への読書意欲の喚起、3子どもの読書活動を発達段階に応じて効率的に推進、4地域における子どもの読書活動推進体制の整備及び子どもの読書活動の推進の社会的気運の醸成、5家庭をはじめとした各方面への子どもの読書活動等の情報発信及び普及・啓発等が行われることを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。

代替手段との比較

 各地域における読書ボランティア等が単独で事業を行った場合には、個別に小規模で行われるために、子どもの読書活動に関する社会的気運の醸成を図り、地域における子どもの読書活動推進体制の整備を推進することに十分な効果を期待できない。
 本事業を国が行うことで、様々な具体的施策を連携して行う手法をとることにより、子どもの読書活動に関する社会的気運の醸成を図るとともに、地域における子どもの読書活動推進体制の整備を推進する効率的な施策となっていると考えられる。

-- 登録:平成21年以前 --