27.青少年体験活動総合プラン(拡充)

平成21年度要求額:540百万円
(平成20年度予算額:264百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 次代を担う自立した青少年の育成を図るため、小学校における長期自然体験活動の指導者養成等必要な支援に取り組むとともに、青少年の様々な課題に対応した体験活動を充実するため、都道府県・政令指定都市教育委員会や民間団体に企画公募を行い、採択された機関・団体に委託し、地域における経験豊かな人材や施設の協力を得て事業の実施体制を整備し、自然体験や生活体験等体験活動の機会を提供する事業を実施する。

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

1 自然体験活動指導者養成事業

 小学校が実施する1週間の自然体験活動を支援するため、全体指導者と補助指導者の養成に緊急に取り組む。対象は、受入れ地域の関係者や団塊世代の退職予定者、民間の指導者、学生等を想定している。(5年間で全体指導者2万人、補助指導者8万人を養成)

2 小学校自然体験活動プログラム開発事業

 小学校が実施する1週間の自然体験活動の充実のため、青少年教育施設や青少年団体、民間自然学校が行う特色あるプログラム開発を推進する。
 主な活動フィールド6つ(山岳、森林、河川・湖畔、海岸・海洋、農地、牧場)、小中大の3つの学校規模、6学年を組み合わせるだけでも、108パターンとなる。これに教育課題・課題解決手法・実施時期等を組み合わせると数百以上のパターンが考えられる。中には重複するもの、実効性の低いもの等があると考えられることから、当面は約100プログラムの開発を目指しながら、毎年度評価し、必要なプログラム数を検証することとする。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

 様々な困難を抱える青少年の自立支援、青少年の社会性や意欲の向上、体験活動の機会と場の開拓など、青少年の課題に対応した体験活動を推進するため、以下のような取組を例として、これらを実施する取組を総合的に支援し、社会全体での取組を推進する。

  1.  自立に支援を要する青少年の体験活動(ひきこもり、ニート、不登校など)
  2.  自律性・社会性を育む交流体験(異世代間交流、異文化交流など)
  3.  青少年の発達段階に応じた体験活動(幼少期の自然体験、サマーキャンプ、青年リーダー体験など)
  4.  環境教育の推進に資する青少年の体験活動
  5.  地域のリソースを活用した青少年の体験活動(都市と農山漁村の交流、廃校を活用した生活体験など)
  6.  関係省庁の連携による地域ネットワーク型の体験活動
  7.  今後必要とされる指導者の在り方に関する調査研究 等

 青少年の喫緊の課題は、時代とともに変化していくことから年度ごとに必要な事業を検討し実施する。21年度は、上記拡充の背景の通り、社会的ニーズが多いこと、社会全体での取組を推進するため、また社会から孤立する青少年の増加等新たな課題に対応するために、「社会性を育む交流体験を追加」し、全体で50件(平成20年度は20件[30件増加])実施する。

2.指標と目標

【指標】

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
1 自然体験活動指導者養成事業
  •  養成した指導者が活動した割合
2 小学校自然体験活動プログラム開発事業
  •  開発したプログラムが参考にされる割合
(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
  •  青少年の課題に対応した体験活動の取組を実施した都道府県数
  •  体験活動の機会を得た青少年の割合
  •  (参考指標)委託事業の実施により得られた効果

【目標】

 青少年の豊かな人間性を育むため、青少年が多様な体験活動を経験できる体制を整備し、体験活動の機会を増加させる。

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
1 自然体験活動指導者養成事業
  •  養成した指導者が活動した割合を毎年度増加させていく。
2 小学校自然体験活動プログラム開発事業
  •  開発したプログラムが参考にされる割合を毎年度増加させていく。
(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
  •  青少年の課題に対応した体験活動の取組を実施した都道府県数を毎年度増加させていく。
  •  体験活動の機会を得た青少年の割合を毎年度増加させていく。
  •  委託事業に参加した青少年の豊かな人間性を育む。

【効果の把握方法】

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
1 自然体験活動指導者養成事業
  •  登録した指導者に対する追跡調査を行い検証する。
2 小学校自然体験活動プログラム開発事業
  •  国立青少年教育施設での開発したプログラムの活用実績を調査し、検証する。
(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
  •  都道府県・政令指定都市に体制整備について調査し、検証する。
  •  国立青少年教育振興機構の調査により把握する。
  •  委託事業実施団体の調査により把握する。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 直接体験の不足(体を動かす体験、自然体験)、生活習慣の乱れ(夜更かし、朝食欠食)、希薄な対人関係(保護者の関与が少ない、地域の大人の関与が少ない、仲間との接触が少ない)等の理由により、ニート等自立の意欲に欠ける青少年が増加している。青少年の意欲を高め、心と体相伴った成長を促すために、すべての青少年の生活に体験活動を根付かせ、体験を通じた試行錯誤切磋琢磨を見守り支えることが重視されている。(「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」平成19年1月中央教育審議会答申)
 また、「教育再生懇談会−第一次報告−」において、すべての子どもに体験活動の機会を提供すると提言されている。
 さらに、「経済財政改革の基本方針2008」において「2.未来を切り拓く教育」の中で体験活動の機会の提供に積極的に取り組むとしている。

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

 「教育振興基本計画」において、「関係府庁が連携して、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるよう目指すとともに、そのために必要な体験活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する。」としている。また、「教育再生懇談会−第一次報告−」において、全ての子供への自然体験・農山漁村体験(小学校で1週間)の機会の提供を目指し、関係府省が連携して支援すると提言していることから、小学校における長期自然体験活動の指導者養成やプログラム開発に取り組む。
 この取組を実施することにより、教育振興基本計画において、小学校で全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるように目指している自然体験・集団宿泊体験が効果的に安全に実施され、推進される。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

 「教育振興基本計画」において、「教育をめぐる課題として、子どもの学ぶ意欲や学力・体力の低下、問題行動など多くの面で課題が指摘されている。」「社会が急速な変化を遂げる中にあって、個人には、自立して、また自らを律し、他と協調しながら、その生涯を切り拓いていく力が一層求められるようになる。」「子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する観点からも、放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくりを推進する。」としている。
 最近では、秋葉原事件など青少年による凶悪犯罪が増加しており、犯罪対策閣僚会議においても、犯罪対策が議論されているが、このような犯罪の背景の1つとして、社会から孤立する青少年の増加が指摘されている。
 このようなことから、青少年の課題に対応した体験活動を推進する。この取組を実施することにより、青少年の課題に対応した体験活動を実施するための重要な知見が得られるとともに、青少年の行動の原動力である意欲や、職業的自立の礎となる社会性等が育まれる。また、青少年の体験活動の機会や場が開拓される。本取組の成果を全国に普及することを通じて、各自治体において青少年の課題に対応した体験活動の支援体制の整備が推進されることが期待できる。
 これらの取組により、豊かな人間性を育むために必要な体験活動の機会が増加し、我が国の青少年が自立した人間として成長することが期待されることから、本事業の拡充が不可欠である。

2.有効性の観点

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

1 自然体験活動指導者養成事業

 上記のとおり、約2万の小学校が効果的に自然体験活動を実施するためには、 10万人の指導者が必要である。平成20年度については、上記のとおり6,000人(全体指導者2,000人、補助指導者4,000人)の指導者を養成する予定であり、今後計画的に養成していく必要がある。また、小学校の長期自然体験活動が実施されるにあたり、教員の負担は増えていくことから、外部の指導者が支援することにより、教員の負担が増えるのを軽減できる。また、支援体制についても学校教育における自然体験活動の位置づけや、教科教育との関連などについて理解した上で、自然体験活動について一定程度の知識と指導力を有する全体指導者と実際の活動場面で児童の活動を補助したり、安全確保に配慮できる補助指導者が支援することにより、効果的にまた安全に実施できる。このことから、小学校の長期自然体験活動には、指導者が必要であり、活用されると考えられることから、養成した指導者が活動した割合を毎年度増加させていくという目標を達成することができると見込まれる。

2 小学校自然体験活動プログラム開発事業

 プログラム開発については、活動フィールド・学校規模・学年・教育課題・課題解決手法・実施時期毎に多様なプログラムが考えられるが、小学校の長期自然体験活動の多様なプログラム開発はなされていない現状にある。平成20年度に24プログラムを開発する予定であり、毎年度評価し、必要なプログラム数を検証しながら、開発していく必要がある。小学校が実施する1週間のプログラムを学習指導要領との関連、地域資源の活用、具体的な指導体制や教材等も含めて開発することで、教員や外部指導者は実施する際に参考になるため、活用されると考えられることから、開発したプログラムが参考にされる割合を毎年度増加させていくという目標を達成することができると見込まれる。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

 平成17〜19年度に実施した青少年の自立支援事業により、自立に支援を要する青少年として、ひきこもり青年、不登校児童・生徒、ニート等を対象とした事業を実施した平成19年度の都道府県数は、平成17年度からは9道府県増加(29パーセント)し、概ね順調に増加した。事業数については、42事業増加(44パーセント)し、それぞれの内訳についても、ひきこもり青年(10から15)、不登校児童・生徒(29から35)、ニート(4から15)と概ね順調に増加しており、この施策については、順調に進捗した。このことから、国が先導的に青少年の課題に対応した取組を実施し、成果や課題を普及することにより、各自治体が青少年の課題に対応した体験活動を実施できる体制を整備することができ、各自治体において青少年の課題に対応した体験活動の支援体制の整備を推進するという目標を達成することができると見込まれる。

3.効率性の観点

アウトプット

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
1自然体験活動指導者養成事業

 21年度は、23,500人の養成(全体指導者養成 4,500人、補助指導者養成 19,000人)を予定している。21〜24年度に、毎年23,500人の養成し、5年間で、全体指導者2万人、補助指導者10万人を養成することにより、効果的に安全に小学校の長期自然体験活動が実施される。

  • 5年間の計画
    • (全体指導者:20,000人イコール2,000人[20年度]たす4,500人かける4年)
    • (補助指導者:80,000人イコール4,000人[20年度]たす19,000人かける4年)
2小学校自然体験活動プログラム開発事業

 21年度は、24プログラムの開発を予定している。
 毎年度検証しながら、必要なプログラムを開発していくことにより、効果的に安全に小学校の長期自然体験活動が実施される。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

 21年度は、青少年の課題に対応した体験活動50件の実施を予定している。
 青少年の課題は、時代とともに変化していくことから年度ごとに必要な事業を検討し実施する。
 国が先導的に青少年の課題に対応した取組を50件実施し、成果や課題を普及することにより、各自治体が青少年の課題に対応した体験活動を実施できる体制を整備することができる。

事業スキームの効率性

 本事業の予算規模(540百万円)に対して、アウトプットとして、23,500人の指導者、24プログラムの開発、50件の課題に対応した取組を実施することを通し、1小学校の長期自然体験活動の効果的・安全な実施、2青少年の課題に対応した体験活動が実施できる体制の整備、が見込まれ、これらを通して、豊かな人間性を育むために必要な体験活動の機会が増加し、我が国の青少年が自立した人間として成長することが期待されることから、インプットとアウトプットの関係は適切と判断する。

代替手段との比較

 地方自治体の事業として実施することとした場合には、指導者養成やプログラム開発に地域格差が生じる可能性がある。また、課題に対応した取組については、参考となる事例も少なく、県域を越えた波及効果が十分に期待できないことから、国の委託事業として実施していく必要がある。

-- 登録:平成21年以前 --