施策目標13-2 国際協力の推進

(基準年度:13年度・達成年度:27年度)

  国際協力の推進を図るため、我が国の大学等における知的リソースを整理・活用して開発途上国へ情報提供等の知的貢献を行う。また、国際機関へ事業委託等を行い国際的な取組にも貢献する。

主管課(課長名)

  • 大臣官房国際課(芝田 政之)

関係課(課長名)

  • 大臣官房国際課国際協力政策室(浅井 孝司)、国際統括官付(渡辺 その子)

評価の判断基準

  • S=3.4~4.0
  • A=2.6~3.3
  • B=1.8~2.5
  • C=1.0~1.7

平成19年度の状況と総合評価結果

達成目標13‐2‐1 A

  平成19年度は、大学等が有する我が国の知を収集・整理・蓄積し、開発途上国で活用するモデルの形成やその成果を普及啓発する各種広報啓発用イベントの開催を通じて、我が国の国際協力活動の促進及び効率的実施に取り組んだ。全体として概ね期待通りの実績をあげている。

達成目標13‐2‐2 A

  ユネスコへは、「万人のための教育(EFA)」信託基金への、コミュニティー学習センター(CLC)の強化、生涯学習の推進、識字率調査方法の開発、幼児教育事業実施のための政策及び戦略プログラムの推進等の事業を通じて、「ダカール行動の枠組」で示された目標に向けた取組に貢献し、また、「国連持続可能な開発のための教育の10年(ESD)」信託基金において、出版物の作成、生涯教育や職業教育に関する取組等を通じて、ESDの普及促進に貢献した。
  さらに国連大学を通じアフリカへの教育支援の充実を図っているところである。
  以上により本目標は順調に進捗していると評価した。

  評価結果:A

必要性・有効性・効率性分析

必要性の観点

  大学の知を活用した取組については、財政的な制約もあり、日本が国際協力をする際には日本の特性や比較優位性のある知見を生かした効率的・効果的な支援が求められている。教育・研究機関である大学等には数多くの有益な知見が存在することから、これらを国際協力の場で有効に活用する方法が求められていることから必要と判断。
  国際機関等を通じた教育協力については、国際的な取組に貢献し、共通の経済・社会基盤を有する先進諸国との連携・協力が求められていることから、必要と判断。また、国連ミレニアム開発目標、及び万人のための教育について「ダカール行動枠組み」で示された目標に貢献すべく、アフリカに対する教育支援の充実策を推進することが必要と考える。

有効性の観点

  大学の知を活用した取組については、「国際協力イニシアティブ」は、大学等に散在する数多くの知見を収集し、その中から国際協力に活用できる知見を抽出するとともに、気候風土・経済情勢・社会情勢・宗教等が日本と異なる開発途上国に適用できる方法の調査研究を行い、これらの成果をまとめて援助関係者が活用しやすいモデルとして提示することで大学の知の活用を促進する取組であることから有効と判断。
  国際機関等を通じた教育協力については、国際社会における情報交換・議論を通じ、各国の政策に影響を与えるような成果を発信していくことが有効である。また、アフリカに対する教育支援の充実策を推進するため、アフリカの教育と開発に関する処方箋を国際社会に対する報告書として取りまとめ、勧告することが有効と考える。

効率性の観点

事業インプット

  • 国際協力の推進に必要な経費 1,542百万円 (平成19年度予算額)
  • 国際協力イニシアティブ 183百万円
  • 「万人のための教育(EFA)信託基金」 97百万円
  • 「持続可能な開発のための教育(ESD)信託基金」 201百万円
  • 「日本・国連大学共同研究事業拠出金」アフリカ支援プロジェクト 10百万円
  • 日本・OECD事業協力信託基金拠出金 131百万円 等

事業アウトプット

  大学の知を活用した取組については、研究課題を公募し、申請95件中22課題を採択した。また、事業及びその成果を広く発信するため、国内報告回を2回開催し、119人が参加した。
  ユネスコの信託基金により、アジア太平洋地域において、CLCを456カ所設置した。

事業アウトカム

  大学の知を活用した取組については、これまで、個別に実施してきた取組を「日本の大学等の知の活用」というコンセプトの下に整理・統合して実施することで事務作業の効率化が図られるとともに、限られた経費と労力を集中的に活用できることから効率的と判断。
  国際機関等を通じた教育協力の取組については、国際的に教育に関する事項を扱うユネスコの主要な課題として挙げられているEFA及びESDに対して、ユネスコを通じて2つの主要課題に集中して取り組むことは効率性が高い。また、「世界最大のシンクタンク」と呼ばれるOECDの教育事業に参加するほか、国連大学における既存のネットワークを活用し、アフリカに対する積極的な働きかけやサポートを行うことが効率的であると考える。

今後の課題及び政策への反映方針

予算要求への反映

  これまでの取組を引き続き推進

機構定員要求への反映

  定員要求に反映

具体的な反映内容について

  達成目標13‐2‐1については、平成20年度は、新たな課題に基づいた新規モデルの形成と並行して、平成19年度に実施した取組のうち、「推進委員会」(第三者委員会)から高評価を得た取組について引き続き採択し、取組内容の充実と定着を図る。

  達成目標13‐2‐2については、ユネスコが世界の全ての子供達の義務教育へのアクセスの確保、成人識字の改善等を内容とするEFAの達成を最優先に掲げ、世界教育フォーラム(平成12年、ダカール)で採択された「ダカール行動枠組み」では、成人(特に女性)識字率を2015年(平成27年)までに50パーセント改善すること等を目標としている。最新の統計によれば、現在の傾向では2015年までの目標達成は難しいとされており、さらなる取組の充実が不可欠であり、EFAへの支援を継続する。また、ESDについて、平成19年度がESDの10年の3年目であったが、国内外への普及促進が未だ不十分である。引き続きESDの普及をさらに加速する必要があることから、平成20年度はESDの普及促進に重点を置いて事業を行うほか、特に初等中等教育へのESDの理念の普及のために、学校間のネットワークであるユネスコ・スクール(ASP)を通じたESDの普及促進、我が国でESDに関する国際会議の開催を予定している。さらに、国際的な教育協力に貢献する上で今後も継続して事業に参加していくことが必要と考えられることから、引き続き事業に参加するための経費としてOECDへの拠出を続けることとする。また、国連大学等を通じた取組の中では、国連大学においては事業の活性化のために積極的な働きかけやサポートが望まれるため、引き続き支援を継続することとする。

  ESDの更なる推進等のための体制整備を図るべく、ESD推進等ユネスコ活動推進体制の強化に資する専門的な調査・分析を行う専門職を要求。

関係する施策方針演説等内閣の重要施策(主なもの)

G8環境大臣会合 議長総括(平成20年5月26日)

気候変動 長期目標の達成に向けた低炭素社会への移行

人材育成・持続可能な開発のための教育(ESD)

12.持続可能な社会を担う人材育成を進めるため、国連ESDの10年が重要であり、ドイツにおける来年3月のESDの世界会議開催が歓迎された。ESDの一層推進のため、関係主体間の協働による取組事例等の各国の優良事例の共有や、途上国と先進国間での高等教育機関及び国際機関等のネットワークによる途上国の人材育成支援が有用と考えられる。

北海道洞爺湖サミット 議長総括(平成20年7月9日)及び首脳宣言(平成20年7月8日)

議長総括

2.環境・気候変動

  我々はまた、森林、生物多様性、3R及び持続可能な開発のための教育(ESD)といった環境問題に取りくむことの重要性を認識した。

首脳宣言

環境・気候変動

  持続可能な開発のための教育
39.我々は、より持続可能な低炭素社会の実現につながるような国民の行動を奨励するため、持続可能な開発のための教育(ESD)の分野におけるユネスコ及びその他の機関への支援及び、大学を含む関連機関間の知のネットワークを通じて、ESDを促進する

TICAD 4 横浜行動計画(平成20年5月30日)

TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置

3.持続的な開発のための教育(ESD)

   より持続可能な社会の実現のため、ESDを政策や生活習慣へ統合させることにより、ESDを促進する。

経済財政改革の基本方針2008(平成20年6月27日 閣議決定)

第3章 低炭素社会の構築

2.持続可能なライフスタイル
  • 低炭素社会や持続可能な社会について教え、学ぶ仕組みを取り入れる

低炭素社会作り行動計画(平成20年7月29日 閣議決定)

3 低炭素社会や持続可能な社会について学ぶ仕組み

  「21世紀環境教育プラン」により、環境問題に取り組む団体、人材とも連携し、「持続可能な開発のための教育(ESD)」の機会の充実を図り、学校や地域で排出削減に役立つ教育を進めることで、生涯を通してあらゆるレベル、あらゆる場面の教育において、低炭素社会や持続可能な社会について教え、学ぶ仕組みを取り入れていく。

教育再生懇談会 第一次報告(平成20年5月26日 教育再生懇談会)

5 実践的な環境教育を展開する

   (2)「持続可能な開発のための教育(ESD)」に、日本が先頭に立って取り組む。学校もCO2(二酸化炭素)排削減に取り組む

  • 生活科、総合的な学習の時間、理科、社会科などを活用し、環境教育の中核として、「持続可能な開発のための教育(ESD)」の観点を教育内容に積極的に取り入れ、日本が先頭に立って取り組む

関連達成目標

  なし

政策評価担当部局の所見

  達成目標13‐2‐2について、文部科学省の施策の貢献度合いを踏まえた評価指標の設定について検討すべき。

達成目標13‐2‐1

  「国際協力イニシアティブ」の実現を通じて我が国の国際協力活動の一層の促進及び効率的実現を図る。

(基準年度:19年度・達成年度:24年度)

1.評価の判断基準

判断基準 指標から算出される割合の平均値
  • S=120%以上
  • A=100%以上~120%未満
  • B=80%以上~100%未満
  • C=80%未満

2.平成19年度の状況

  これまで、「拠点システム構築事業」、「サポート・センターの整備」等として実施してきた関連事業を整理・統合し、「国際協力イニシアティブ」(委託事業)を開始した。本事業では、主として大学が有する我が国の知を収集・整理・蓄積し、これを活用した開発協力モデルの策定・普及啓発等を通じて我が国の国際協力活動の一層の促進及び効率的実現に取り組む。
  今年度実施した主な取組及びその実績については以下「指標・参考指標」及び5.のとおり。

  • 大学の教員、研究関係者が有する我が国の知見を整理・蓄積し、援助機関やNGO等の援助関係者が現地で活動する際に役立つ活動モデルや参考教材を作成
  • 青年海外協力隊に参加している現職教員に対して、現地で使用可能な教材の作成、提供、派遣中の活動に対する教育上の助言、帰国後に行う国際理解教育活動への協力
  • 本件事業及びその成果を広く情報発信するために国内報告会、Japan Education Forumを開催

指標・参考指標

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
1.大学の有する「知」の整理・蓄積等の成果の電子アーカイブスへの新規登録数(新規登録数/目標数)
(79/−)
79

(509/−)
588

(290/−)
878
143%
(190/132)
1,068
123%
(171/138)
1,239
2.セミナー参加者によるアンケートのうち「役にたった」、「参考になった」と回答した数の割合(「役に立った」等という回答数/アンケート回答者数)(最大120%として)       110%
(264/287)
112%
(368/393)
3.目標人数に対する現職教員の青年海外協力隊「特別参加制度」への参加人数の割合(参加者数/目標人数) 56%
(56/100)
64%
(64/100)
83%
(83/100)
87%
(87/100)
84%
(84/100)
4.帰国報告会等参加者によるアンケート回答のうち「非常に役だった」を4とする4段階評価で3及び4の評価回答数の割合(3,4の回答数/総回答数)(最大120%として) 112%
(76/81)
119%
(93/94)
114%
(62/65)

指標の設定根拠

  1. 1課題受託者(平成19年度課題受託者数:計23名)が成果物3点(報告書、マニュアル、教材等)を(23×3=69)を作成するとして算出した数値69に対し、実際にアーカイブスへ登録する際、容量等の制約により1成果物を平均2つにわけて登録する必要があることから、69の成果物に2を乗じた数値の138を目標数とする。
  2. 全回答が「役に立った」以上であった場合を120パーセントとする。国際協力イニシアティブセミナー及びJapan Education Forumのアンケートの回答から算出
  3. JICA(ジャイカ)における受け入れ可能人数100名を目標人数とする。
  4. 全回答が「役に立った」以上であった場合を120パーセントとする。

3.評価結果

  A

判断理由

  青年海外協力隊の現職教員派遣制度による参加者数の伸び悩み等今後の課題もあるとはいえ、全体としては当初期待通りの滑り出しと言えることから、概ね順調に進捗しているものと判断し、「A」評価とした。

4.今後の課題及び政策への反映方針

    大学の有する知を活用したモデルの策定について、多様かつ質の高い知を収集・蓄積するため、課題(個別事業)の採択・実施・評価を統括する「推進委員会」(第三者委員会)を設置した。すべての課題は年度末には推進委員会の評価を受け、この結果を参考として次年度の採択・不採択を決定する。今後ともこうした課題の管理体制の整備をすすめ、個別課題の質の向上に努める。

  蓄積された知見が広く知られ、活用されるよう、今年度実施した国内報告会、文部科学省セミナー、Japan Education Forum等の形に加え、他組織が実施するイベント等の機会も捉えて状況に応じた形での積極的な普及啓発に努める。

  既述のとおり、「現職教員特別参加制度」による青年海外協力隊への参加者数が想定数を下回った。同隊への参加者総数自体が減少傾向にあることから、本制度を通じた参加者数のみが増加することは考え難いものの、「国際協力イニシアティブ」を通じた現職教員への派遣前・中・後の支援や同制度の存在・内容の普及啓発を一層充実させることなどを通じて、参加者数の減少傾向に歯止めを掛けるべく努める。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度の予算要求への考え方
国際協力イニシアティブ
(183百万円)
大学の教員、研究関係者が有する我が国の知見を整理・蓄積し、援助機関やNGO等の援助関係者が現地で活動する際に役立つ活動モデルや参考教材を作成 [公募申請/採択件数]
  • 研究課題を公募:申請95件中22課題採択
[推進委員会評価結果]
  • S評価:2
  • A評価:9
  • B評価:7
  • C評価:4
関係組織・事業等との連携を維持しつつ、本件取組を引き続き実施。
青年海外協力隊参加中の現職教員に対して、現地で使用可能な教材の作成・提供、派遣中の活動に対する教育上の助言、帰国後に行う国際理解教育活動への協力
本件事業及びその成果を広く発信するために国内報告会、Japan Education Forumを開催 [実施件数/参加者数]
  • 国内報告会開催。
      2回開催、2大学、119人が参加
青年海外協力隊現職教員特別参加制度の普及啓発活動
  • ※ 主たる予算はJICA(ジャイカ)負担
派遣予定教員や帰国教員等を対象に国際協力イニシアティブ課題実施者による発表を行い、隊員の活動内容の質的向上を図る。 [参加者等]
  • 派遣前研修の参加者139人が隊員として有用な情報と知見を得た。
  • 帰国報告会に163人が参加し、帰国教員の活動経験の共有の場となった。
  • パンフレット98,000万部を作成・配付。
  • 広報のため、120箇所の教育委員会、大学に対して参加を呼びかけた。
  • アンケートによれば、10都道府県市の教育委員会が帰国教員による教育現場への還元の取組を行った。
「国際協力イニシアティブ」と連携して現職教員参加制度の利活用を促進するため本事業を継続する。
  • ※ 主たる予算はJICA(ジャイカ)負担
当該制度に係るパンフレットをJICA(ジャイカ)と協力して作成し、全国の国公立幼・小・中・高等学校及び各都道府県・政令指定都市教育委員会に配付し、教員及び各自治体への広報活動を実施。

達成目標13‐2‐2

  国際機関及び関係機関等を通じ、国際的な取組に貢献する。

(基準年度:18年度・達成年度:26年度)

1.評価の判断基準

判断基準 事業実施状況により判断
  • S=当初の計画以上に進捗していると認められる。
  • A=当初の計画通りに順調に進捗していると認められる。
  • B=当初の計画に比べ、遅延等が認められる。
  • C=当初の計画に比べ、進捗が全く認められない。

2.平成19年度の状況

ユネスコを通じた取組

  我が国は、「万人のための教育(EFA)」をユネスコ・バンコク事務所に拠出し、アジア・太平洋地域の万人のための教育に関する活動を支援している。本信託基金で実施する事業は、ユネスコ・バンコク事務所が事業計画を作成し、我が国がその内容を確認・承認することとしている。
  平成19年度は、「万人のための教育(EFA)」信託基金に、コミュニティー学習センター(CLC)の強化、生涯学習の推進、識字率調査方法の開発、幼児教育事業実施のための政策及び戦略プログラムの推進等の事業を通じて、開発途上国における就学率の向上、識字率の向上、教育のすべての局面における質の改善など、「ダカール行動の枠組」で示された目標に向けた取組に貢献した。
  また、ESDについても「ESD信託基金」をユネスコ本部に拠出し、ESDの普及・推進を支援しているところである。2007年(平成19年)は、国連持続可能な開発のための教育の10年の3年目であり、ESD関連書籍の出版、各地域の取組の推進(アジア・太平洋、アフリカ、ラテン・アメリカ)など引き続きESDの普及促進を進める事業を実施。本事業は、ユネスコと我が国との間で事業の執行に関するガイドラインを定めた上、ガイドラインにそった事業をユネスコが提案、我が国が承認を行っている。2007年度(平成19年度)も、ガイドラインに沿った事業提案がなされたほか、概ね提案された事業を計画通りに実施したことから、ESDの推進が図ることができたため「当初の計画通りにESDの推進が図られた」と判断。また、ユネスコ本部のESDウェブサイトのアクセス数も増加していることから、ESDの普及も進んでいると判断。
  なお、平成19年度の実施事業については、ユネスコが作成する実績評価報告書を元に、平成20年度にESD信託基金レビュー会合を実施し、基金が効果的に運用されていること、事業が着実に遂行されていることを確認する。本年のレビュー会合は9月を予定。

国連大学を通じた取組

  2年間のパイロットフェーズの2年目である平成19年度には、プロジェクトの核となる調査研究に進展が見られた。第1回技術会合が8月に開催され、アフリカでのネットワークの基点となるリソースセンターとして選出された4つの大学及び教員訓練機関により、4点の主要課題について背景となる研究文書が発表された。会合ではこれら研究文書に基づき、初等・中等・高等教育機関の現職教師の技能向上を目指す具体的な方法について議論がなされ、研究成果の普及に向けた成果が得られた。
  以上により、平成19年度においては調査研究、報告書の作成が進められ、本事業の目的である関係者への勧告・普及に向けて、当初の予定通り順調に進捗していると認められる。

<本プロジェクトの計画>
  • 2006~2007年(パイロットフェーズ) 準備期間(事業案の分析、パートナー大学の選定、専門家会合の開催、カンファレンスの開催等)
  • 2008~2011年(第1フェーズ) 4つの大学若しくは教員訓練機関は現地のリソースセンターとして、議論を行い、資料を作成する。それらの資料は第1回イノベーション会合に提出されたのち報告書として出版される。
  • 2012~2015年(第2フェーズ) 事業の拡大(センター数を更に4つ増やす)及び第1フェーズのものについては研究の深化を行い、第2回イノベーション会合において資料の提出、報告書の出版が行われる。

指標

  平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度
1.ユネスコによるCLC数(アジア太平洋地域) 136 145 456    
2.CLC設置数(アジア太平洋地域) 82,336 91,324 98,968    
3.ACCUアジア太平洋ESD事業支援団体数 15 15    
4.ESD国内実施計画策定国(アジア・太平洋地域) 2 3 14    
5.ESDウェブサイトのアクセス数 92,414 143,110 157,920    

指標に用いたデータ・資料等

  • 1、2 ユネスコ・バンコク事務所調べ
  • 3~5 ユネスコ本部調べ

参考指標

  平成12年度 平成13年度 平成14〜15年度 平成16年度  
1.初等教育就学率(アジア太平洋地域) 83.4 88.9 88.2 90.7  
  平成12年度 平成12~16年度      
2.識字率(アジア太平洋地域) 76.0 83.3      

指標に用いたデータ・資料等

  • 1、2 EFA Monitoring Report 2003/24, 2005, 2006, 2007

指標の設定根拠

  ユネスコ信託基金で実施する事業の主要な柱の1つであるCLCのへの支援によりCLCが設立されることや、ウェブサイトのアクセス数が増加することは、ESD普及を示す指標であるため。

3.評価結果

  A

判断理由

  国際機関及び関係機関等を通じた取組については、ユネスコにおけるコミュニティ学習センター(CLC)の設置数の増加、ESDウェブサイトのアクセス数増加や、国連大学における4つのリソースセンターによる議論や研究文書の発表等がなされており、当該年度における事業が順調に実施されたことから、当初の予定通り順調に進捗していると認められる。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  ユネスコに関しては、ユネスコが世界の全ての子供達の義務教育へのアクセスの確保、成人識字の改善等を内容とするEFAの達成を最優先に掲げ、世界教育フォーラム(2000年(平成12年)、ダカール)で採択された「ダカール行動枠組み」では、成人(特に女性)識字率を2015年(平成27年)までに50パーセント改善すること等を目標としている。我が国の貢献は、アジア・太平洋地域であるが、特に南・西アジアのいくつかの国々では、引き続き成人識字率が50パーセント以下にとどまっており、さらなる取組の充実が不可欠であり、EFAの支援を継続していく。
  ESDについては、ESDの10年の3年目であったが、ESDに関する取組が十分とはいえないことから、ESDの普及に重点が置かれた。
  平成20年も引き続きESDの普及に重点を置くが、特に初等中等教育の各段階でESDの概念の理解が十分図られることが求められること、ESDを効率的に普及させるためにも優先的に実施する事業を定める必要がある。そこで、平成20年はユネスコの学校間ネットワークであるユネスコ・スクールを活用したESD普及事業の展開と、我が国におけるESD国際フォーラムを開催する。
  さらに、平成21年はDESD(ESDの10年)の中間年であることから、この5年間の取組のモニタリング評価を行い、今後5年間の活動の方針を再確認することとする。
  国連大学を通じた取組については、本年は主要課題についての研究文書がまとめられ、研究成果の普及に向けた取組が動き出したところである。また、リソースセンターとなる4つのアフリカ高等教育機関は連携を始めて間もないといえる。4つの研究文書の周知及びアフリカのプロジェクト研究者同士の強力なネットワーク作りを可能にすることは、プロジェクトの成功にとって重要であり、国連大学においては事業の活性化のために積極的な働きかけやサポートが望まれる。本プロジェクトの経費の9割近くが当省の拠出金から成っていることも鑑み、今後も引き続き支援を継続することとしたい。
  OECDを通じた取組については、現在我が国が参加している事業には国際的に大きな影響力があると認められる。またOECDの教育分野の事業内容は国際的な調査・研究及び比較分析であり、継続してデータを提供することが求められる性質を有している。右2点により、国際的な教育協力に貢献する上で今後も継続して事業に参加していくことが必要と考えられることから、引き続き事業に参加するための経費として拠出を続けることとしたい。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度の予算要求への考え方
「万人のための教育(EFA)信託基金」
(97百万円)
世界教育フォーラムで採択された「ダカール行動枠組み」の就学率・識字率の向上等の目標達成を目指すユネスコを支援するため、万人のための教育信託基金をユネスコに拠出し、アジア太平洋地域諸国における識字教材の開発、教育関係者への研修、コミュニティー学習センターの設置、国家計画作成、学校教育の普及・充実、女性教育、健康教育、国際的なネットワーク構築の形成を支援した。 〔得られた効果〕
識字や基礎教育に係る途上国の人材育成に貢献した。
〔活動量〕
アジア太平洋地域ではユネスコによるCLCの推進のほか、CLCを活用したLife Skill教育の推進の支援、マイノリティーに対する母語教育の推進等を実施。
アジア・太平洋地域の教育課題に包括的に対応できるよう見直し
「持続可能な開発のための教育(ESD)信託基金」
(201百万円)
ヨハネスブルグサミットでわが国が提唱した「国連持続可能な開発のための教育の10年」の取組を主導するユネスコを支援するため、ESD信託基金をユネスコに拠出し、国際会議の開催、各国のESD国内実施計画策定等を支援することにより、ESDの国際レベルでの普及・啓蒙に協力した。 〔得られた効果〕
様々な分野のステークホルダー(関係者)へのESDの概念の普及に貢献した。
〔活動量〕
ESDに関する様々な会議が開催されたほか、各地域のESDの普及、促進に関する事業を多数展開。
継続
「日本・国連大学共同研究事業拠出金」アフリカ支援プロジェクト
(10百万円)
2005年7月に開催されたグレンイーグルズ・サミットにおいて合意された、アフリカに対する教育支援の充実策として推進する。特に、アフリカの貧困の根源的な克服のため、教育システムの在り方について、総合的・学術的な調査分析を行い、21世紀のアフリカ支援の処方箋を勧告するために必要な経費として、国連大学本部へ拠出する。 [得られた効果]
  • 調査研究の成果をまとめた研究文書の発表
  • 第1回技術会合の開催による今後のプロジェクト案の具体化
継続
日本・OECD事業協力信託基金拠出金
(131百万円)
共通の経済・社会的基盤を有する先進諸国の連携・協力により、国際的な調査・研究及び比較分析を行うとともに、これを広く公表し、各国における教育改革の推進及び教育水準の向上に寄与することを目的としたOECDの教育分野の事業活動に参加するため、OECDに拠出する。 [得られた効果]
教育分野における各種OECD事業への参加
継続

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --