(基準年度:15年度・達成年度:24年度)
「生命現象の統合的全体像の理解」を目指した研究を推進するとともに「研究成果の実用化のための橋渡し」を特に重視し、国民への成果還元を抜本的に強化する。
各達成目標の結果の平均から判断(S=4、A=3、B=2、C=1として計算)。
平成19年度においては、ヒトiPS細胞の樹立成功という研究成果を受け、iPS細胞に関する日本全体での研究体制の構築、研究費の投入、知的財産権の確保等を含めた「iPS細胞等の研究加速に向けた総合戦略」を策定し、さらに、本戦略に基づく緊急支援の実施状況を確認するとともに、今後の効率的・効果的な研究推進体制の具体化を図るため、「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略の具体化について」を策定した。このような方策をはじめとして、ライフサイエンス分野の研究開発を戦略的に推進したところである。
個々の施策においては、「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト」、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」が最終年度を迎えた。「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト」については、これまでに蓄積した基盤技術の集大成とアドバイザリーボードで指摘されていた各拠点間の連携により、シミュレーションモデルの開発および利用可能性の検証を行い、一部においては薬・医療機材の有効性・安全性評価に使えることを示し、当初目標を概ね達成した。また、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」については、47疾患の30万症例規模のDNA等の試料及び臨床情報を収集し、当該試料について遺伝子多型(SNP)解析を行うとともに、プロジェクト終了時に累積症例数の目標値(30万症例)とほぼ同等の29.5万症例を収集した世界最大規模のバイオバンクの構築しており、当初目標を概ね達成した。
また「橋渡し研究支援推進プログラム」、「粒子線がん治療に係る人材育成プログラム」、「ターゲットタンパク研究プログラム」を開始し、これまでの研究の蓄積を生かし、国民への成果還元を抜本的に強化していくこととしている。
各目標に関しては、
となっており、施策目標10‐1は概ね順調に進捗している。
評価結果:A
第3期科学技術基本計画において、ライフサイエンス分野は重点推進4分野の1つに位置づけられており、また総合科学技術会議の策定した「分野別推進戦略」においても、ライフサイエンス研究の研究開発力・産業競争力の国際比較と重要度を踏まえると、知的資産の増大、経済的効果、社会的効果、国際競争力確保の観点から、これまで国が推進してきた領域について、ひきつづき重点的な投資を行う必要があるとされている。
平成19年度に最終年度を迎えた2事業については、前述の通り概ね目標を達成しており、現行の各事業においても、事業終了年度までに各達成目標において示した研究開発の成果を見込んでいる。各事業の実施にあたっては、推進委員会・評価委員会を組織し、採択課題および機関における役割分担を明確にするほか、今後の課題および推進方策について検討し、効率的な事業の実施を図っている。
本施策の実施により、1医学・薬学への貢献や産業応用に向けた生命現象が解明される、2先端的医療の実現に資する知見が蓄積される、3社会の安全・安心の確保に必要な知見の蓄積および人材が養成される、4研究支援のための基盤が整備される、5国家的・社会的要請の高い研究分野が推進される、といった効果が見込まれる。
ライフサイエンス分野の研究開発を着実に推進することにより、国民の健康長寿や安全の確保の実現、食料自給率向上や産業競争力強化および新産業創出に大きく貢献することが期待される。
以上より、施策の波及効果も認められ、効率性の観点から妥当である。
評価対象政策の改善・見直し
機構・定員要求に反映
3.戦略重点科学技術
(2)戦略重点科学技術の選定
1.成長力加速プログラム
3 成長可能性拡大戦略‐イノベーション等
(1)政策イノベーション
(7)医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化
2.技術革新戦略ロードマップ
(2)分野別の戦略的な研究開発の推進
(1)医薬品・医療機器開発につながる予算への重点化・拡充等
(3)「橋渡し研究拠点」の充実
3.メタボリックシンドローム対策の一層の推進(メタボリックシンドローム克服力)
(1)メタボリックシンドローム対策・糖尿病予防の重点的推進
(2)糖尿病から脳卒中、心筋梗塞、腎不全等の合併症への移行の阻止
4.がん対策の一層の推進(がん克服力)
(1)がんの早期発見の推進
(2)がん医療の提供体制の充実
5.こころの健康づくり(こころの健康力)
【認知症対策の一層の推進】
(1)認知症発症の早期発見、症状の進行の防止
【うつ対策の一層の推進】
(1)うつの早期発見・早期治療の推進
2.人間の活動領域の拡張に向けた取り組み(人間活動領域拡張力)
(専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成)
第三節 研究の推進等
1 放射線療法及び化学療法の推進並びにこれらを専門的に行う医師等の育成
3 分野別施策及びその成果や達成度を計るための個別目標
なし
蓄積された知見、技術を活用し、医学・薬学への貢献、産業応用に向けて生命現象のさらなる解明を図る。
(基準年度:15年度・達成年度:24年度)
各判断基準の結果の平均から判断する(S=4、A=3、B=2、C=1と換算する。)
判断基準1 | 学術研究や産業振興において重要なターゲットとなるタンパク質の構造・機能解析研究の進捗状況 |
---|---|
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判断基準2 | 発生・分化等の生命科学に関する基本的問題の解明の基盤を構築するための、試料の整備・基盤データの提供の計画値(遺伝子発現情報量:2,000、転写開始点情報量:約1,000万)と比べての進捗状況 |
---|---|
|
判断基準3 | 医療薬・医療機材のスクリーニング・評価に利用しうる研究体制の基盤整備や基盤技術の成熟達成度と、シミュレーションプログラムの開発の計画・目標達成度について |
---|---|
|
判断基準1については、「ターゲットタンパク研究プログラム(平成19年度~平成23年度)」において、大型放射光施設(SPring-8、フォトンファクトリー)における新規ビームライン建設など、タンパク質の構造・機能解析のための基盤整備や、個別にターゲットとするタンパク質についての研究を進めた。さらに、研究成果を体系化して公開する情報プラットフォームの構築を進めるなど、全体として順調に進捗している。
判断基準2については、「ゲノムネットワークプロジェクト(平成16年度~平成20年度)」において、ゲノム機能情報の集中的解析に関し、転写制御ネットワークの要素技術を確立し、細胞の働きに対する遺伝子の発現情報の解析や、細胞の働きを制御するプロモーターの配置を予測するための転写開始点の情報等の基盤データについて、既に計画値を超えて提供(実績数:遺伝子発現情報=約2,315、転写開始点情報=約4,300万)している。さらに、得られた情報を体系化して提供するプラットフォームよりデータの一般公開を開始し、一般に研究成果の還元を行うなど、順調に進捗している。
判断基準3については、「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト(平成15年度~平成19年度)」において、これまでに蓄積した基盤技術の集大成とアドバイザリーボードで指摘されていた各拠点間の連携によって、各拠点において、血液・血管機能モデル、心臓機能モデル、糖尿病モデル、循環・呼吸器疾患モデルを開発した。各モデルともに、利用可能性の検証を行い、一部においては薬・医療機材の有効性・安全性評価に使えることを示し、当初目標を概ね達成した。
平成15年度 | 平成16年度 | 平成17年度 | 平成18年度 | 平成19年度 | |
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1.転写開始点情報(累積) 【目標:事業終了時1,000万】 |
約1,000万 | 約1,800万 | 約4,300万 | 約4,300万 | |
2.遺伝子発現情報(累積) 【目標:事業終了時2,000】 |
約1,600 | 約1,911 | 約2,315 | 約2,315 |
「ゲノムネットワークプロジェクト」では、生命現象を解明する基盤を構築することを目指している。このため、基盤を構成するための情報となる遺伝子の解析成果を計る指標として、遺伝子がタンパク質に転写される際の開始点情報および発現情報を設定している。
A
各判断基準を基に、上記の評価結果とした。
ライフサイエンス分野の今後の研究戦略について、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会ライフサイエンス委員会(平成20年7月)において検討を行った結果、「ゲノムネットワークプロジェクト」によって、遺伝子情報の流れが明らかになりつつあるなか、生命の理解を目指すライフサイエンスが次に焦点をあてるべき階層は「細胞」であり、今後は、従来の細胞生物学を超え、オミックスやネットワークなどの統合的理解の対象として「細胞」を取り上げ、様々な研究を集約することの必要性が提言された。そのため分子レベルに注目した既存の「ターゲットタンパク研究プログラム」を平成20年度限りで廃止し、遺伝子、RNA、タンパク質などの基本要素が互いに相互作用しながら機能する「場(空間)」である「細胞」を対象としたオミックスやネットワークなどの統合的解析と、タンパク質の機能・構造解析とを統合した新たなプロジェクトを立ち上げることとする。これにより、より効率的・効果的な生物の階層性の全体理解へとつながるものと考えられる。
「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト」においては、事業終了にともない、事後評価委員会を開催し、得られた研究成果やプロジェクト推進にあたっての教訓等を振り返り、今後のシミュレーション型プロジェクトの方向性や拠点型研究のあり方等を検討した。
政策手段の名称 [19年度予算額(百万円)] |
概要 | 19年度の実績 | 21年度の予算要求への考え方 |
---|---|---|---|
ターゲットタンパク研究プログラム (5,527百万円) |
過去の施策等で得られた成果や基盤(機器・設備、人材、構造データ等)を活用しつつ、学術研究や産業振興に重要なタンパク質をターゲットとし、それらの構造・機能解析に必要な技術開発と研究を行う。 | 大型放射光施設(SPring-8、フォトンファクトリー)における新規ビームライン建設などの基盤整備を進めた。 個別のタンパク質について、タンパク質の発現や結晶化などの構造・機能研究を進めた。 研究成果を体系化して公開する情報プラットフォームの構築を進めた。 |
オミックスやネットワークなどの統合的解析と、タンパク質の機能・構造解析とを統合した新たなプロジェクトを立ち上げる。 |
ゲノム機能解析等の推進 (2,301百万円) (平成20年度達成年度到来事業) |
転写調節領域を中心としたゲノム機能、遺伝子やタンパク質の相互作用等の集中的解析を行なうとともに、これらのデータの活用により、各種疾患、生命現象のシステムを解明し、革新的な治療法、創薬等の実現を目指す。 | 【基準年度:平成16年度】 転写制御ネットワークの要素測定技術を確立し、獲得した転写因子の発現情報や転写開始点情報等の基盤データについて、既に計画値を超えて提供(実績数:遺伝子発現情報=約2,315、転写開始点情報=約4,300万)。 [事業期間全体の総括] ヒトcDNAクローン等研究用リソースの収集については、概ね収集予定のクローンを整備できたほか、プラットフォームよりデータの一般公開を開始し、一般に研究成果の還元を行っており、事業の目標は想定通り達成されるものと判断。 |
当該事業は平成20年度で終了 |
細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト (542百万円) |
実際の生体や細胞を用いて実施している薬剤応答解析・動物試験等を、生命情報技術・先端イメージング技術によってシミュレーションするプログラムを開発する。 | これまでに整備されたインフラ及び要員を十分に活用して得られた基盤技術をもとに、血液・血管機能モデル、心臓機能モデル、糖尿病モデル、循環・呼吸器疾患モデルなどに代表される医療現場で利用可能なシミュレーターの開発と検証を終えた。 [事業の最終的な成果] 研究成果であるシミュレーションモデルが医療薬・医療機材のスクリーニング・評価に利用でき、研究開発のスピードアップに貢献できることを示した。 |
終了 |
革新的がん医療技術や臨床研究・臨床への橋渡し研究などを通じ、先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、またそれに必要な環境の整備を図る。
(基準年度:15年度・達成年度:24年度)
各判断基準の結果の平均から判断する(S=4、A=3、B=2、C=1と換算する。)
判断基準1 | 橋渡し研究支援機関の整備状況と各支援拠点における研究進捗状況 |
---|---|
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判断基準2 | 患者臨床データベース等の整備と、疾患関連遺伝子解明のためのSNP解析による成果について |
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判断基準3 | ヒト幹細胞研究の基盤整備と、再生医療関連技術開発の進捗状況と臨床応用について |
---|---|
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判断基準4 | 専門支援機関による支援のもとでの、臨床試験実施計画書の作成状況について |
---|---|
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判断基準5 | 粒子線がん治療に係る人材育成事業の進捗について |
---|---|
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判断基準6 | 研究体制の整備の進捗度合いと、分子イメージング研究・専門人材育成の達成度について |
---|---|
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判断基準1については、「橋渡し研究支援推進プログラム(平成19年度~平成23年度)」において、医療としての実用化が見込まれる有望な基礎研究の成果を開発している大学等を対象に、シーズの開発戦略策定、薬事法に基づく試験物の製造のような橋渡し研究の支援を行なう機関を拠点的に整備することにより、有望な基礎研究の成果を着実に実用化させ、国民へ医療として定着させることを目指すものであり、平成19年度は公募を実施し、6提案(8機関)を採択し、各拠点において必要な人材の確保等、支援機関としての体制整備が進められている。また、既に各拠点において、10件程度のシーズに対し橋渡し研究支援が進められており、順調に進捗している。
判断基準2については、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト(平成15年度~平成19年度)」において、生活習慣病等の47疾患を対象として、30万症例規模のDNA等の試料及び臨床情報を収集するともに、当該試料について、遺伝子多型(SNP)解析を行うことで、個人個人に最適な予防・治療を提供することを可能とする医療の実現に資することを目指すものであり、平成19年度における疾患症例数の取得は約4.4万件で目標(4.9万件)をやや下回っているものの、累積症例数については、プロジェクト終了時の目標値(30万症例)とほぼ同等の29.5万症例を収集しており、世界最大規模のバイオバンクを構築し、目標を概ね達成した。
判断基準3については、「再生医療の実現化プロジェクト」第1期(平成15年度~平成19年度)により整備した研究用幹細胞バンクにおいて、研究用臍帯血の提供を開始(平成18年度からは民間企業にも提供を開始)しており、第2期(平成20年度~24年度)においても引続き提供を行うこととしている(平成19年11月時点:17機関523件)。また、同プロジェクトにおいては、ヒトiPS細胞樹立に向けた技術開発の促進、幹細胞の分離・効率的な培養技術確立やヒトES細胞から神経系の細胞を分化する技術を確立するなど操作技術等の研究開発を進めるとともに、細胞移植技術の開発等、幹細胞を用いた治療法の多面的な検討を行ってきており、また、脊髄損傷治療技術開発では動物において有効性の知見を得る等するなど、第2期においても強力に推進することとしている。
判断基準4については、「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進(平成16年度~平成20年度)」プロジェクトにおいて、がん免疫療法・分子標的療法等に係る基礎研究の優れた成果を次世代の革新的な診断・治療法の開発につなげるための橋渡し研究を推進し、新薬等の開発につながる成果を創出するものであり、平成19年度は、専門支援機関による支援の下、実施している6課題すべてについて前臨床試験を終了し、そのうち、5課題については臨床試験実施計画書を作成した上で、人に投与する臨床試験(治験)を実施している。残り1課題についても、臨床試験実施計画書の作成に取りかかっており、想定以上に進捗している。
判断基準5については、「粒子線がん治療に係る人材育成プログラム(平成19年度~23年度)」において、既存粒子線治療施設(6施設)を活用したOJTによる研修を実施することにより、今後全国的な普及が期待される粒子線がん治療施設において必要とされる、粒子線がん治療に特化した固有の知識・技術を有する放射線腫瘍医、医学物理士、診療放射線技師等を養成するものであり、平成19年度は、放射線腫瘍医等の人材育成カリキュラムを策定したところであり、計画通り順調に進捗している。
判断基準6については、「分子イメージング研究プログラム(平成17年度~平成21年度)」において、RIで標識化された化合物である分子プローブを作製し、これをPETで見る技術を高効率化、高度化することによって創薬プロセスの短縮・コストの削減、革新的な診断の実現を可能にするものであり、平成19年度は、PET疾患診断研究拠点において、当初の計画(30種類)以上である42種類の分子プローブの製造法を確立するとともに、その内6種類については、臨床評価を実施している。また、現在世界最高レベルの分子プローブの超高比放射能化(少ない結合部位でも高感度な検出が可能)について引き続き研究開発に取り組んでおり、その有用性が確認され、論文等で報告されている。創薬候補物質探索拠点においては、引き続き高速C‐メチル化反応の開発を進めるとともに、一度の撮影で多くの情報を得ることでより正確な診断を可能とするため、異なるガンマ線エネルギーを持つ複数の放射性同位元素(RI)の分布を同時計測する複数分子同時イメージング法を開発した。さらに、両拠点と連携する個別研究開発課題を実施し、大学・民間等の外部機関と共同研究を開始するとともに、「分子イメージング教育コース」等を開設することにより、分子イメージング専門人材の育成を図っており、予定通り進捗している。
平成15年度 | 平成16年度 | 平成17年度 | 平成18年度 | 平成19年度 | |
---|---|---|---|---|---|
1.疾患症例数(単年度)【目標:事業終了時30万症例】 | 約6万 | 約7.1万 | 約6.6万 | 約5.4万 | 約4.4万 |
2.分子プローブの製造法の開発・実用化数(累積)【目標:毎年プローブを10個開発】 | 8 | 24 | 42 |
1.「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」は、個人個人に最適な予防・治療を提供することを可能とする医療の実現に資するため、30万症例の血液サンプルや臨床情報を収集し、その遺伝子解析を実施することとしており、本プロジェクトの目標である疾患症例の取得数を指標として取り上げている。
2.「分子イメージング研究プログラム」は、創薬プロセスの短縮・コストの削減、革新的な診断の実現を目指し、分子プローブの作成や高比放射能化の研究、高速11Cメチル化法等の合成法の開発、薬物動態評価等を実施することとしており、このうち定量的に事業の進捗状況を把握することが可能な分子プローブでの製造法の開発・実用化数について、参考指標として取り上げた。
なお、上記指標については各政策手段のうち、定量化が可能な部分について指標化を行っているが、その他定性的な評価を含め、判断基準に基づき各政策手段の評価を判断している。
A
各判断基準を基に、上記の評価結果とした。
「橋渡し研究支援推進プログラム」については、初年度として拠点の採択、整備等が着実に進捗しているところだが、総合科学技術会議の科学技術関係施策の優先度判定等において「各拠点に対して橋渡し研究を支援する機能の格段の拡充を図り、国際競争を勝ち抜く体制整備を行うことが喫緊の課題」との指摘を受けており、各拠点の機能を一層拡充・強化する必要がある。
「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」においては、これまで順調に進捗していることを踏まえ、平成20年度より「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト(第2期)」を開始しており、個人個人に最適な予防・治療を提供することを可能とする医療の実現に向け、世界最大規模の約30万症例の血液サンプルや臨床情報等を活用し、疾患関連遺伝子研究を実施する。
「再生医療の実現化プロジェクト」においては、平成17年度に実施されたライフサイエンス委員会における中間評価並びに平成19年4月26日に策定された「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」、平成19年12月22日に策定された「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略」及び平成20年3月18日に策定された「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略の具体化」を踏まえ、引き続き研究用幹細胞バンク事業を着実に推進して広く研究者のニーズにあわせた幹細胞を提供し、研究の機会を提供するとともに、iPS細胞関連技術等の世界をリードする細胞操作技術、脊髄損傷をはじめとした治療法を臨床につなげるための研究開発等を着実に進める。
「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」については、達成年度到来事業として想定以上に進捗しており、これまでの同制度における経験等を踏まえ、がんだけではなく医療としての実用化が見込まれる有望な基礎研究の成果を積極的に予防・診断・治療へ応用する橋渡し研究を推進し、医療への普及・定着や企業へのライセンスアウトを目指すため、「橋渡し研究支援推進プログラム」における研究拠点を利用した研究を支援する研究費として拡充を検討する必要がある。
「粒子線がん治療に係る人材育成プログラム」については、初年度順調に進捗しており、引き続き既存粒子線治療施設における研修設備の整備を行うとともに、OJTによる人材育成を実施していく。
分子イメージング研究プログラムについては、平成18年度の中間評価を踏まえ、引き続き日本をリードする研究拠点としての強化を図るとともに、分子イメージング研究分野におけるオールジャパン体制を構築する必要がある。
政策手段の名称 [19年度予算額(百万円)] |
概要 | 19年度の実績 | 21年度の予算要求への考え方 |
---|---|---|---|
橋渡し研究支援推進プログラム (1,500百万円) |
医療としての実用化が見込まれる有望な基礎研究の成果を開発している大学等を対象に、開発戦略策定、薬事法を目指した試験物の製造のような橋渡し研究の支援を行なう機関を拠点的に整備することにより、有望な基礎研究の成果を着実に実用化させ、国民へ医療として定着させることを目指す。 | 平成19年度は公募を実施し、6提案(8機関)を採択し、拠点整備を進めた。 | 継続(総合科学技術会議等の指摘を踏まえ、
|
個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト (2,568百万円) |
遺伝情報を基にした個人個人にあった予防・治療を可能とする医療を実現するため、対象とする疾患について30万人規模のサンプル及び臨床情報の収集によるバイオバンクの整備、SNP(一塩基多型)の解析を実施し、SNP情報や臨床情報についてのデータベースを構築する。 | 平成19年度における疾患症例数の取得は、約4.4万件(目標4.9万件)、プロジェクト終了時の累積疾患症例数は29.5万症例(目標約30万症例)であり、世界最大規模のバイオバンクを構築した。 | 継続(平成20年度より、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト(第2期)」を実施) |
再生医療の実現化プロジェクト (970百万円) |
細胞移植・細胞治療等によってこれまでの医療を根本的に変革する可能性を有する再生医療について、必要な幹細胞利用技術等を世界に先駆け確立し、その実用化を目指す。具体的には、研究用幹細胞バンク整備領域、幹細胞操作技術開発領域及び幹細胞治療開発領域の3領域を設定し、各領域間で連携した研究開発を推進する。 | 研究用幹細胞バンクにおいて、研究用臍帯血の提供を開始(平成18年度からは民間企業にも提供を開始)(平成19年11月時点:17機関523件) ヒトiPS細胞樹立に向けた技術開発の促進、幹細胞の分離・培養技術確立や細胞を分化する技術を確立するなど操作技術等の研究開発を進めるとともに、細胞移植技術の開発等、幹細胞を用いた治療法の多面的な検討を行ってきており、脊髄損傷治療技術開発では動物において有効性の知見を得る等している。 事業の総括として、ヒト幹細胞研究の基盤整備、再生医療関連技術の開発について、順調に進捗している。 |
継続 |
革新的ながん治療法の開発にむけた研究の推進 (675百万円) (平成20年度達成年度到来事業) |
平成15年7月に策定した「第3次対がん10か年総合戦略」(文部科学省、厚生労働省)に基づき、これまでに得られたがんに関する基礎研究の成果を基に、新規の免疫療法など次世代のがん治療法の開発につなげる研究(トランスレーショナルリサーチ)を推進する。 | 【基準年度:平成16年度】 実施している6課題すべてについて、前臨床試験を終了した。そのうち、5課題については、臨床試験実施計画書を作成した上で、人に投与する臨床試験(治験)を実施している。残り1課題についても、臨床試験実施計画書の作成に取りかかっている。 [事業期間全体の総括] 本事業について、平成19年度末時点において、1課題を除き当初目標である臨床試験のフェーズに入っており、残り1課題についても臨床試験実施計画書の作成に取りかかっていることから、事業の目標は想定通り達成されるものと判断。 |
廃止 (本プロジェクトで得られた経験等は、橋渡し研究支援推進プログラムに反映し、発展的解消) |
分子イメージング研究プログラム (1,355百万円) |
分子イメージング技術を発展させることにより、革新的疾患診断技術の開発、創薬プロセスの短縮、創薬コストの低減、複雑な生命の統合的理解の実現を目指す。さらに、融合領域の人材(分子イメージング専門人材)を育成し、分子イメージング研究の長期的な発展を目指す。 | 平成19年度は、PET疾患診断研究拠点においては今まで当初の計画(30種類)以上である42種類の分子プローブの製造法を確立するとともに、その内6種類については、臨床評価を実施している。また、世界最高レベルの超高比放射能化(少ない結合部位でも高感度な検出が可能)についても引き続き研究開発に取り組んでおり、その有用性が確認された。 創薬候補物質探索拠点では高速C−メチル化反応の開発を進めるとともに、一度の撮影で多くの情報を得ることでより正確な診断を可能とするため、異なるガンマ線エネルギーを持つ複数の放射性同位元素(RI)の分布を同時計測する複数分子同時イメージング法を開発した。 さらに、両拠点と連携する個別研究課題を公募し、大学・民間等の外部機関と共同研究を開始。 |
継続 |
粒子線がん治療に係る人材育成プログラム (40百万円) |
平成19年度より粒子線がん治療に特化した固有の知識・技術を有する放射線腫瘍医、医学物理士、診療放射線技師等を養成するための人材育成カリキュラムを策定するとともに、既存粒子線治療施設(6施設)を活用したOJTによる研修を実施し、5年間で40名の中核的な役割を果たす専門人材を育成する。 | 平成19年度は粒子線がん治療に特化した固有の知識・技術を有する放射線腫瘍医、医学物理士、診療放射線技師等を養成するための人材育成カリキュラムを策定した。 | 継続 |
新興・再興感染症克服技術など、社会の安全・安心の確保に必要な知見の蓄積、人材の養成等を図る。
(基準年度:17年度・達成年度:21年度)
判断基準 | 研究体制の整備の進捗度合いと、それらを利用した研究の達成度について |
---|---|
|
「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム(平成17年度~平成21年度)」は、アジアを中心とした新興・再興感染症の発生国あるいは発生が想定される国に海外研究拠点を設置するとともに、国内の体制を整備し、感染症対策を支える基礎研究を集中的・継続的に進め、知見の集積・人材育成等を図るものである。
平成19年度においては、これまでに設置した新興・再興感染症の研究拠点(中国(東京大学)、ベトナム(長崎大学)、タイ(大阪大学))について、引き続き拠点基盤を強化するとともに、平成19年度に新規に海外拠点を3件(インドネシア(神戸大学)、インド(岡山大学)、ザンビア(北海道大学))採択し、合計6拠点において共同研究を進めることで、基礎的知見の蓄積と人材育成を図っている。さらに、本プログラムの研究内容を情報発信することで広く一般に周知し、また研究者同士の意見交換を目的として、「新興・再興感染症に関するアジアリサーチフォーラム‐2008」を開催した。これらの取組みによって、社会の安全・安心の確保に必要な知見の蓄積、人材の養成を目指した新興・再興感染症に関する国内外の研究体制の確立は概ね順調に進捗している。
A
上述の通り、新規に海外拠点を3箇所設置し共同研究を順調に進めており、評価結果をAと判断。
平成18年度までの中間評価を踏まえ、拠点の形成を進めており順調に進捗しているが、今後は、各拠点間の連携、人材育成の面での取組を更に進めていく必要があり、平成21年度も引き続き事業を推進していく
政策手段の名称 [19年度予算額(百万円)] |
概要 | 19年度の実績 | 21年度の予算要求への考え方 |
---|---|---|---|
新興・再興感染症拠点形成プログラム (2,750百万円) |
国内外に新興・感染症研究拠点を設置し、新興・再興感染症に対する基礎的知見の集積を図る。併せて、これらの国内外の研究拠点における感染症研究の推進を通じ、人材の確保・養成を行う。 | 平成17年度より開始した「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」に基づき設置した新興・再興感染症の研究拠点において、各研究機関により研究を進め、人材養成に取り組んでいる。 研究ネットワークの拡充を図るため、新たに3カ国において拠点を形成した。 本プログラムの研究内容を情報発信することで広く一般に周知し、また研究者同士の意見交換を目的として、「新興・再興感染症に関するアジアリサーチフォーラム−2008」を国内で開催した。 |
継続 |
ライフサイエンス研究を支える世界最高水準の基盤を整備する。
(基準年度:18年度・達成年度:23年度)
各判断基準の結果の平均から判断する(S=4、A=3、B=2、C=1と換算する。)
判断基準1 | ライフサイエンス関係データベースの整備、基盤構築と統合データベース公開サービスの提供についての計画・目標達成度について |
---|---|
|
判断基準2 | プロジェクト毎に設置した評価委員会による評価結果(S,A,B,C,D)の内S,A,Bが占める割合 |
---|---|
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判断基準1については「統合データベースプロジェクト」(平成18年度~平成22年度)において、平成19年度に公募採択された中核機関(代表機関:情報・システム研究機構)、分担機関(京大、東京医科歯科大、東大)、及び年度途中に採択された補完課題実施機関(理研、産総研、国立遺伝研、九州工大)の体制が整い、本格的にプロジェクトの活動が開始した状況である。平成19年10月には、中核機関により、生命化学系データベースのカタログ公開や、生命科学データベース横断検索サービスの試行など、サービスの提供も始まっており、計画は順調である。
判断基準2については「ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)(第1期:平成14年度~平成18年度)評価委員会において、全25リソース中S評価が6件、A評価が11件、B評価が6件、C評価が2件であり、S、A、Bが全体に占める割合が92パーセントであった。この評価を踏まえ、NBRP(第2期:平成19年度~平成23年度)において引き続き生物遺伝資源の収集・保存・提供を着実に実施した。
バイオリソースの系統保存数 (理化学研究所バイオリソースセンター保有リソース数) (すべて累積数) |
平成15年度 | 平成16年度 | 平成17年度 | 平成18年度 | 平成19年度 |
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実験動物(マウス)(系統数) | 1,065 | 1,668 | 2,075 | 2,859 | 3,261 |
実験植物(シロイヌナズナ)(株数) | 242,851 | 264,662 | 366,153 | 390,185 | 544,235 |
遺伝子材料(動物、微生物)(株数) | 101,273 | 764,968 | 785,062 | 914,148 | 1,605,396 |
細胞材料(動物、がん等、及びヒト細胞)(株数) | 2,118 | 2,521 | 5,806 | 6,872 | 8,167 |
文部科学省調べ
NBRPでは、ライフサイエンス研究の基礎・基盤となる世界最高水準のバイオリソースの整備を目指している。この整備状況を計る指標として、各リソースの系統保存数を設定している。
A
「統合データベースプロジェクト」においては、第3期科学技術基本計画に挙げられている「2010年までに世界最高水準の知的基盤の整備・活用」を目指し、研究開発の進展や経済的・社会的ニーズ、国際情勢に対応した取り組みに応じるべく、量的観点のみならず、質的観点も重視して、データベース事業及びリソース事業の永続的な運営体制の構築に向けた整備を遂行する。具体的には、統合データベースプロジェクトについては、中核機関を中心として整備された推進体制により、国内のライフサイエンス関係データベースの統合化を進める。
NBRPにおいては、第3期科学技術基本計画に挙げられている「2010年までに世界最高水準の知的基盤の整備・活用」を目指し、研究開発の進展や経済的・社会的ニーズ、国際情勢に対応した取り組みに応じるべく、量的観点のみならず、質的観点をより重視するとともに、バイオリソース事業の永続的な運営体制の構築に向けて、引き続きバイオリソースの収集、保存、提供体制の整備、保存技術を始めとする開発事業、ゲノム関連情報を付加した情報の整備を進める。
政策手段の名称 [19年度予算額(百万円)] |
概要 | 19年度の実績 | 21年度の予算要求への考え方 |
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統合データベースプロジェクト (1,600百万円) |
我が国のライフサイエンス関係のデータベース(以下DB)の利便性の向上を図るため、DB整備戦略の立案・評価支援、統合化及び利活用のための基盤技術開発、人材育成等を行い、ライフサイエンス関係DBの統合的活用システムを構築・運用する。 | 中核機関のライフサイエンス統合データベースセンターを中心として、戦略立案(研究運営委員会、作業部会)・統合DB開発・DB受入れ支援等を実施し、国内DB約450、海外DB約50を横断検索等ができる試行サービスを公開した。 分担機関は化合物・医薬品、臨床・疾患等の医療に関わるDBの統合化を担い、医薬品DBの公開を行った。 また各種DBの受入れを促進するための補完課題を公募採択し、推進体制を整備した。 |
継続 |
ナショナルバイオリソースリソースプロジェクト (3,236百万円)
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実験動植物(マウス等)や、各種細胞、各種生物の遺伝子材料等のバイオリソースのうち、国として戦略的に整備する必要があるものについて体系的に収集、保存し、提供するための体制の整備並びにバイオリソースの更なる品質向上のための開発を推進する。 | プロジェクト実施機関における体制の整備も進み、生物遺伝資源の収集は着実に実施されている。例えば、平成19年度には、マウスが2,859系統から3,261系統、シロイヌナズナが390,185系統から544,235系統と着実に保存系統数を増やしており、順調に進捗。 | 継続 |
国家的・社会的要請の高い脳、ゲノム、タンパク、遺伝子多型、植物、免疫・アレルギー、がん治療やバイオインフォマティクス等の研究分野において、基礎的・先導的な研究を推進する。
(基準年度:15年度・達成年度:19年度)
判断基準 | 独立行政法人評価委員会による評価結果(S,A,B,F)のうちS,Aが占める割合 |
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S
各判断基準を基に、上記の評価結果とした。
引き続き、各独立行政法人におけるライフサイエンス分野の研究において、既存施策の研究方策を鑑みて、相補的な関係となる成果の創出を目指し、基礎的・先導的な研究開発を推進する。
政策手段の名称 [19年度予算額(百万円)] |
概要 | 19年度の実績 | 21年度の予算要求への考え方 |
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独立行政法人理化学研究所、独立行政法人放射線医学総合研究所、独立行政法人科学技術振興機構による事業 (各法人の運営費交付金中の内数) |
独立行政法人理化学研究所
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各独立行政法人において研究開発を推進。 | 継続 (一部組織を改 |
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成21年以前 --