政策目標10 科学技術の戦略的重点化

  国家的・社会的課題に対応する研究開発の重点化した推進と新興・融合領域への先見性、機動性をもった対応を実現する。

主管課(課長名)

  • 研究振興局振興企画課(奈良 人司)
  • 研究開発局開発企画課(坪井 裕)

関係課(課長名)

  • 科学技術・学術政策局政策課資源室(長田 朋二)、同科学技術戦略官付(推進調整担当)安全・安心科学技術企画室(西田 亮三)、同原子力安全課(黒木 慎一)、同原子力安全課放射線規制室(中矢 隆夫)
  • 研究振興局ライフサイエンス課(菱山 豊)、同情報課(舟橋 徹)、同基礎基盤研究課(大竹 暁)、同基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室(高橋 雅之)
  • 研究開発局海洋地球課(生川 浩史)、同海洋地球課地球・環境科学技術推進室(谷 広太)、同参事官(宇宙航空政策担当)(信濃 正範)、同宇宙開発利用課(中川 健朗)、同宇宙開発利用課宇宙利用推進室(竹縄 佳二)、同原子力計画課(山野 智寛)、同開発企画課立地地域対策室(櫻井 清人)、同原子力研究開発課(板倉 康洋)、同研究開発戦略官付(千原 由幸)、同研究開発局地震・防災研究課(増子 宏)、同防災科学技術推進室(渡邉 淳)

評価の判断基準

  各施策目標の平均から判断(S=4、A=3、B=2、C=1として計算)

  • S=3.4~4.0
  • A=2.6~3.3
  • B=1.8~2.5
  • C=1.0~1.7

平成19年度の状況

  各施策目標において、科学技術の戦略的重点化のため、主に下記のような取り組みを行った。

ライフサイエンス分野の研究開発の重点的推進(10‐1)A

  「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト」、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」が最終年度を迎えた。「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト」については、これまでに蓄積した基盤技術の集大成とアドバイザリーボードで指摘されていた各拠点間の連携により、シミュレーションモデルの開発および利用可能性の検証を行い、一部においては薬・医療機材の有効性・安全性評価に使えることを示し、当初目標を概ね達成した。また、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」については、47疾患の30万症例規模のDNA等の試料及び臨床情報を収集し、当該試料について遺伝子多型(SNP)解析を行うとともに、プロジェクト終了時に累積症例数の目標値(30万症例)とほぼ同等の29.5万症例を収集した世界最大規模のバイオバンクを構築しており、当初目標を概ね達成した。
  また「橋渡し研究支援推進プログラム」、「粒子線がん治療に係る人材育成プログラム」、「ターゲットタンパク研究プログラム」を開始し、これまでの研究の蓄積を生かし、国民への成果還元を抜本的に強化していくこととしている。

情報通信分野の研究開発の重点的推進(10‐2)A

  将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発、革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発、e-Society基盤ソフトウェアの総合開発、安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発については目標を達成するとともに、研究成果の公開等を通じた成果の社会への普及を行ったことから、平成19年度で事業を終了した。また、高機能・超低消費電力コンピューティングのためのデバイス・システム基盤技術の研究開発をはじめとするその他の事業についても目標を達成しており、平成19年度は順調に進捗した。各事業の実施により先端的な情報科学技術の推進につながると判断した。
  また、従来の学術情報ネットワークSINETと、先端的学術情報基盤スーパーSINETを統合し、平成19年6月からSINET3の本格運用を開始しており、先端研究分野の多様なニーズへの対応が可能な革新的なネットワークを実現し、新たなサービスを提供する等、学術情報ネットワークの高度化を通じて、研究開発に関する情報化を推進するなど、順調に進捗した。

環境・海洋分野の研究開発の重点的推進(10‐3)A

  地球環境分野に関しては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)への貢献や全球地球観測システム(GEOSS)の推進など、国際的な協力のもと、人工衛星、船舶、ブイ等による大気・海洋・陸域の観測および地球温暖化対策に資する気候変動予測研究などを推進し、それらによる成果の情報提供を行うとともに、南極地域観測第7期計画に基づく南極の観測活動を実施したほか、地球環境観測・予測に関する基盤的研究を充実させた。
  また、巨大地震の発生域であるプレート沈み込み帯の地殻構造の解析の進展や、中深層生物の細胞培養法やそれを用いた実験法を確立するなど、海洋地球科学研究を推進したほか、自律型無人探査機の技術開発など海洋地球科学研究の基盤となる技術開発を行った。
  さらに、深海地球ドリリング計画では、地球深部探査船「ちきゅう」の掘削試験を引き続き行い、掘削に必要な技術をさらに蓄積した。
  このように、平成19年度における環境・海洋分野の研究開発は順調に進捗した。

ナノテクノロジー・材料分野の研究開発の重点的推進(10‐4)A

  ナノテクノロジー・材料分野の研究開発に関しては、総合的かつ戦略的な研究開発を進め、技術革新につながる成果を創出し、概ね順調に進捗した。具体的には、ナノテクノロジー・ネットワークについては、平成19年度には1,200件を超える支援を実施し、また1,500件以上の関連論文・研究発表を生み出しており、概ね順調に進捗した。また、キーテクノロジー研究開発の推進やリーディング・プロジェクト等の各プロジェクトについては、種々の論文を発表するなど、研究開発に着手したものは概ね計画通りに進捗した。さらに、独立行政法人物質・材料研究機構による研究開発については、平成19年度は第2期中期目標・計画期間の2年目に相当するが、この計画を着実に実施しており、概ね計画通りに進捗した。

原子力分野の研究・開発・利用の推進(10‐5)A

  高速増殖炉(FBR)サイクル技術については、研究開発体制が整備され、高速増殖原型炉「もんじゅ」についてもプラント確認試験を進めるなど順調に進捗している。核融合技術については、幅広いアプローチ協定、ITER(イーター)協定が発効し、実施体制の整備や機器の調達活動等が進められている。大強度陽子加速器についても着実な進捗が見られ、平成20年12月には供用を開始できる見込みとなっている。RIビームファクトリー、重粒子線がん治療研究についても順調に進捗している。原子力分野の人材育成については、「原子力人材育成プログラム」が創設され、人材育成取組に対する支援を行った。原子力分野の国際協力については、第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)等により国際協力を進めた。
  電源立地対策については、補助金・交付金の交付等や初等中等段階からの理解促進を図った。

宇宙・航空分野の研究・開発・利用の推進(10‐6)A

  宇宙開発利用分野においては、平成19年度は、月周回衛星「かぐや」(SELENE)及び超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)が打ち上げられた。また、国際宇宙ステーション計画については、我が国が開発している日本実験棟「きぼう」(JEM)の船内保管室が打ち上げられた。既に打ち上げられた、人工衛星等の運用及び将来打上げ予定の人工衛星等の開発が概ね計画通り行われた。航空科学技術分野においては、国産旅客機の開発に関して、社会が求めている燃費・騒音面での先端技術の確立によって民間企業の事業化判断に貢献した。

新興・融合領域の研究開発の推進(10‐7)A

  光技術を融合した生体機能計測技術の研究開発、未踏光学(テラヘルツ光学)開発・創生プロジェクトの研究を実施した結果、各大学のポテンシャルを結集した要素技術開発の推進に伴い、一部の技術が企業により製品化されるなど、幅広い応用可能性を有する新興・融合領域における研究開発が進展したことから、概ね順調に進捗したと判断した。

安全・安心な社会の構築に資する科学技術の推進(10‐8)A

  「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」、「地震調査研究推進」、「東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究」、「地震・津波観測監視システム」、「高度即時的地震情報伝達網実用化プロジェクト」等のプロジェクトや、独立行政法人防災科学技術研究所における防災科学技術に関する基礎基盤研究について、概ね順調に進捗した。また、「安全・安心科学技術プロジェクト」において、関係省庁や空港等の現場と連携して危険物検知装置の開発が進んでいるなど、成果の社会実装に向けて、ニーズに立脚した研究開発等が順調に進捗した。

  政策目標の評価は(3+3+3+3+3+3+3+3)÷8=3であった。

評価結果

  A

20年度以降の政策への反映方針

  今後も第3期科学技術基本計画や総合科学技術会議が策定した「分野別推進戦略」のもと、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料、原子力、宇宙・航空、地震・防災、南極・海洋、新興融合等の各分野の研究開発については、安全・安心の確保など社会・国民のニーズの高いものや、国際競争力の強化や国際社会への貢献に資するものなど、選択と集中を図りながら戦略的に推進する。
  また、宇宙輸送システム、高速増殖サイクル炉技術、X線自由電子レーザー等の国家基幹技術の研究開発についても、着実に推進する。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --