政策目標3 個性が輝く高等教育の推進と私学の振興

「知識基盤社会」において、我が国が活力ある発展を続けていくために、高等教育を時代の牽引役として社会の負託に十分応えるものへと変革する一方、社会の側がこれを積極的に支援するという双方向の関係を構築する。

施策目標3‐1 大学などにおける教育研究の質の向上

(各高等教育機関の個性・特色の明確化に向けた改革の取組みなどを積極的に支援することや、事前・事後の評価の適切な役割分担と強調を確保すること等により、大学などにおける教育研究の質の向上を図る。)
【主管課:高等教育局高等教育企画課】
【関係課:高等教育局大学振興課、同専門教育課、同医学教育課、同学生支援課、同国立大学法人支援課、同私学部私学行政課】

評価結果の概要  大学等の特色や個性に即した各種プログラムを継続的に実施している。(「特色ある大学教育支援プログラム」(48件 前年比1件増)、「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(565件 前年度比56件増)、「『魅力ある大学院教育』イニシアティブ」(46件 前年度比51件減)、「大学教育の国際化推進プログラム」(393件 前年度比277件増)、「資質の高い教員養成推進プログラム」(24件 前年度比10件減)、「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」(22件 前年度比2件増))各大学等は検討過程等で教育改革に意欲的に取り組むと共に、フォーラム等への積極的参加等、各大学等において積極的・意欲的な教育改革の取組が実施されている。支援期間終了プログラムを対象としたアンケート調査によると、7割以上の大学等から高い評価を得ている。また、ほぼ全ての大学等が支援終了後も高等教育の活性化に向けて各大学等が自主性・自律性に基づき特色ある取組を展開している。このほか、「派遣型高度人材育成協同プラン」(10件 前年度比10件減)、「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」(6件 18年度開始)の実施により、質の高いインターンシップ等の普及・定着を促し、各大学における産学連携による高度専門人材育成及び教育研究機能の推進を図っている。このように各種プログラムの定着、豊富化を行ったことにより、意欲的な取組が全国の大学等に広がっている。
 FD(ファカルティ・ディベロップメント)を行う大学は前年度比53校、厳格な成績評価(GPA)を行う大学は前年度比46校、それぞれ増加し、大学において授業の質を高めるための取組も普及しつつある。このように各種プログラムの定着、豊富化を行ったことにより、意欲的な取組が全国の大学等に広がっている。また各大学等における日常的な教育内容・方法の改善も進捗している。
 専門職大学院の70パーセント以上が、高度専門職業人の養成を目的としたプログラムによる支援を受け、教育内容・方法の開発・充実等を図る取組を実施している。
 21世紀COEプログラム採択拠点に対し継続的支援を行っている。中間評価では約96パーセントの拠点が「当初目的の達成が可能」との評価を受けており、着実な拠点形成が進んでいる。また申請を通じ、学長によるマネジメント体制の下、全学的視野に立った戦略的な研究教育体制の構築に取り組むなど、大学間の競争的環境の醸成によって、世界最高水準の大学づくりが着実に進展している。
 大学の教員組織の見直し等に関する「学校教育法の一部を改正する法律」の公布と、大学設置基準等の見直しにより、各大学においては、教員組織の見直しが行われた。また、任期制を採る大学が増加傾向にあり、教員組織の活性化が進んでいる。
 大学院教育に関して、中央教育審議会答申「新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-(平成17年9月5日)」の提言を踏まえ、平成18年3月30日に「大学院教育振興施策要綱」を策定し、今後の大学院教育改革の方向性として、各大学院における教育の実質化の取組を支援し、学位の国際的な通用性、信頼性の向上を図るとともに、世界的な教育研究拠点の形成を進めることにより、国際的に魅力ある大学院教育の構築を図るとした。その具体的な取組施策の一つである国際競争力のある卓越した教育研究拠点の形成に向け、「グローバルCOEプログラム(ポスト「21世紀COEプログラム」)」の制度設計を行った。
 国立大学法人については、外部資金比率の平均額は法人化以来上昇しており、各大学の努力により自主性・自律性を確保している。また学長裁量の予算・定員を設定する法人が増加しており、各法人の特色に応じた戦略的な資源配分が行われている。公立大学法人の数は年々増加しており、法人化を契機として教育研究の高度化や個性豊かな大学づくりに向けた取組が行われている。私立大学については、改正私立学校法が施行され、理事・監事・評議員会の制度について、それぞれの権限や役割分担の明確化によって、学校法人における管理運営制度の改善を図っている。また法施行後も、各学校法人の自主的な改善努力を促している。このように、法令改正等を契機に、国公私立大学等のマネジメント面における自主性・自立性の向上に向けた取組が進んでいる。
大学設置認可の弾力化が進められたことで、大学設置認可の弾力化による大学等の参入や組織改編は、届出制導入以前よりも増加している。認証評価制度については、実施校数が順調に増加しており、制度開始から3年で全体の約2割の大学・短大・高専が認証評価を受けた。また認証評価機関の整備も一層の充実が図られている。大学設置認可の弾力化と大学評価システムが一体となって順調に機能し、各大学等の継続的な教育研究の質の向上に資している。
 以上のように各高等教育機関の個性・特色の明確化に向けた改革の取組み支援が積極的に行われ、事前・事後の評価制度が確実に機能している。施策目標3−1下の各達成目標は順調に達成され評価結果は全てAであり、大学などにおける教育研究の質は向上されつつあると判断できるため、想定どおり順調に進捗と評価した。
評価結果の政策への反映状況
(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 国公私立大学を通じた競争的環境の下で、各大学等の優れた大学教育改革の取組を支援する経費を概算要求に盛り込んだ。
 教育の質向上に向けた様々な取組を支援する「質の高い大学教育推進プログラム」を実施すべく、17,310百万円を盛り込んだ。(「特色ある大学教育支援プログラム」と「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」を発展的に統合して創設した。
(平成20年度予算案額:8,582百万円)
 各大学等における教育研究資源を活用し、社会人の学び直しニーズに対応した教育プログラムを展開する優れた取組を支援する「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」を実施すべく、5,400百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,960百万円)
 新たな社会的ニーズに対応した優れた学生支援の取組を支援する「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」を実施すべく、3,090百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,620百万円)
 大学等が行う教職員や学生の海外派遣の取組や海外の大学との積極的な連携等を行う優れた取組を支援する「大学教育の国際化加速プログラム」を実施すべく、6,561百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,966百万円)
 社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材養成のため、大学院における優れた組織的・体系的な教育の取組を支援する「大学院教育改革支援プログラム」を実施すべく、8,597百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:5,070百万円)
 国公私の複数の大学による多様で特色ある大学間の戦略的な連携の取組を支援する「戦略的大学連携支援事業」を実施すべく、5,000百万円を盛り込んだ。(新規)
(平成20年度予算案額:3,000百万円)
 複数の大学病院が緊密に連携・協力して、それぞれの得意分野の相互補完を図り、循環しながら質の高い専門医や臨床研究者を養成する取組を支援する「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」を実施すべく、1,500百万円を計上した。(新規)
(平成20年度予算案額:1,500百万円)
 がん医療の担い手となる高度な知識・技術を持つがん専門医師等、がんに特化した医療人養成の取組を支援する「がんプロフェッショナル養成プラン」を実施すべく、2,800百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,900百万円)
 社会のニーズに適切に対応できる質の高い医療人養成の取組を支援する「社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」を実施すべく、855百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:855百万円)
 実践型人材の育成を目指し、大学等において、産学連携による新たな教育プログラムの開発を実施する「産学連携による実践型人材育成事業」を実施すべく、909百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:733百万円)
 世界最高水準のIT人材として求められる専門的スキルを有し、企業等において先導的役割を担う人材の育成拠点形成を支援する「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」を実施すべく、948百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:828百万円)
 21世紀COEプログラムの成果を踏まえ、国際的に卓越した教育研究拠点形成をより重点的に支援する「グローバルCOEプログラム」を実施すべく、46,958百万円を盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:33,986百万円)
【制度改正】
 大学における教育内容・方法等の改善を図るため、ファカルティ・ディベロップメント(FD)実施の促進や成績評価基準の明確化を図るため、大学設置基準等の一部を改正した。(大学設置基準等の一部を改正する省令(平成19年文部科学省令第22号))
 国立大学法人の教育研究体制の整備・充実を図るため、国立大学法人大阪外国語大学を国立大学法人大阪大学に統合した。(国立大学法人法の一部を改正する法律(平成19年法律第89号))
 国立大学法人等の業務上の余裕金の運用について、各国立大学法人等の自助努力を促し、経営基盤の強化を図る観点から、国立大学法人法第35条において準用する独立行政法人通則法第47条第1号の「主務大臣の指定する有価証券」について新たに指定した。(平成20年文部科学省告示第32号)

施策目標3‐2 大学などにおける教育研究基盤の整備

(国立大学等施設を重点的・計画的に整備し、大学などにおける教育研究基盤の整備を図る。)
【主管課:大臣官房文教施設企画部計画課】
【関係課:高等教育局国立大学法人支援課、同専門教育課、同医学教育課、研究振興局学術機関課】

評価結果の概要  国立大学等施設を重点的・計画的に整備するために「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月閣議決定)を受け、平成18年4月に「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(以下「第2次5か年計画」という。)を策定した。
 実施に当たっては、国による支援を基本としつつ、国立大学等による弾力的・流動的に使用可能なスペースの確保などの施設マネジメントや、寄附・自己収入による整備などの自助努力による新たな整備手法での整備などのシステム改革を推進することとした。
 平成18年度は、第2次5か年計画(計画期間:18年度〜22年度までの5年間)の初年度であり、施設整備に関しては、整備目標のうち「老朽再生整備」、「狭隘解消整備」については、想定どおり達成できなかったが、「大学附属病院の再生」については、想定どおりに達成したことから、おおむね順調に進捗しているが一部については進捗にやや遅れが見られると評価とした。
 また、教育研究施設における共同利用スペースは、141万平方メートル確保し、新たな整備手法による整備については、509件実施され、これらについては想定どおり順調に進捗したことから、それぞれ想定どおり順調に進捗したと評価とした。
評価結果の政策への反映状況
(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 国立大学等の施設整備を着実に実施するため、140,170百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:92,133百万円)

施策目標3‐3 意欲ある学生への支援体制の整備

(学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べるよう、奨学金制度による意欲・能力のある個人に対する支援を一層推進する。)
【主管課:高等教育局学生支援課】

評価結果の概要  奨学金事業について、対前年度比5.2万人の貸与人員の増員を行った結果、達成目標については、「学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べるよう、基準適格申請者に対する貸与率を高めるなど日本学生支援機構による奨学金の充実を図る。」という観点から想定どおりに達成できている。
 達成目標を達成することで、近年では、貸与基準を満たす申請者については、年度内にほぼ全員を採用しており、意欲ある学生への支援体制の整備という点で、学ぶ意欲と能力のある学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べる環境の整備に資したと考える。
評価結果の政策への反映状況
(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 学ぶ意欲と能力のある学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べるよう、独立行政法人日本学生支援機構の奨学金事業を着実に実施するため、一般会計負担額1,440億円(事業費総額9,513億円(貸与人員123万人))を、概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,309億円(事業費総額9,305億円))

施策目標3‐4 特色ある教育研究を展開する私立学校の振興

(私立学校の振興に向け、教育研究条件を高めるとともに経営の健全性の維持向上を図る。)
【主管課:高等教育局私学部私学行政課】
【関係課:高等教育局私学部私学助成課、同参事官】

評価結果の概要  私立大学、私立高等学校等に対する経常費補助等の充実については、平成18年度予算において増加しており、成果が上がっているが、経常的経費に対する補助割合については、私立大学等全体の経常的経費の増加もあり、平成17年度に減少している。
 一方、私立高等学校等における、経常的経費に対する補助の割合は、大幅ではないものの、平成16年度に増加している。
 学校法人の収入構成に占める外部資金の割合については、平成16年度の25.7パーセントから平成17年度の26.6パーセントに増加しており、額で見ても増額となっている。厳しい経済・財政状況のなか、各法人の努力により、想定したとおり達成された。
 平成18年度に財務情報等を一般に公開している文部科学大臣所轄学校法人の割合については、平成17年度の85.3パーセントから、平成18年度には、86.3パーセントとなっており、着実に増加している。
 各学校法人の自主的な経営改善努力を促す取組については、「大学法人の総負債比率」が、平成16年度の15.9パーセントから、平成17年度の15.5パーセントに減少し、一定の成果が上がっているが、「帰属収入で消費支出を賄えない文部科学大臣所轄学校法人の割合」が平成16年度の27.5パーセントから平成17年度の29.0パーセント現状レベルの維持に留まっており、想定したとおりに達成しているとは言えない。
 これらの達成目標の中には、数値上横ばいとなっているものもあり、一部については想定どおり達成できなかったものもあるが、厳しい経済・財政状況の中にあってもなお、現状を維持できているものと分析でき、教育研究条件を支える経営基盤の安定という面で、一定の成果が上がっているものと考えられる。
 財務状況の公開については、説明責任を果たすことの重要性が各学校法人に認識され、管理運営面の透明性が高まった。
評価結果の政策への反映状況
(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 平成20年度概算要求においては、私立大学等経常費補助については、対前年度50億円増の3,362億5,000万円
(平成20年度予算案額:3,248億6,800万円)
 私立高等学校等経常費助成費等補助については、対前年度30億円増の1,068億5千万円を計上した。
(平成20年度予算案額:1,038億5,000万円)
 近年の少子化の影響による私立大学等の厳しい経営環境を踏まえ、平成20年度概算要求において、私立大学等経営人材養成に必要なプログラム等を開発するための調査研究に関する委託費2,000万円)を新規計上した。
(平成20年度予算案額:1,380万円)
【税制要望】
 寄付金税制については、平成19年度税制改正において、個人が寄付した場合における寄付金控除の控除限度額を引き上げ(総所得の30パーセントから40パーセント)、当該税制改正の趣旨について、各種会議等を通じて周知し、その活用を促進した。
 また、平成20年度税制改正において、個人が大学等に寄付した場合における寄付金控除の控除限度額のさらなる引き上げ(総所得の40パーセントから50パーセント)と控除限度額を超える寄付の「繰越控除」の制度化、また、企業等が寄付した場合における新たな税額控除制度の創設を要望した。
(税制措置なし)
【各種会議等】
 昨年度に引き続き、学校法人の運営等に関する協議会、学校法人監事研修会、学校法人経理事務担当者研修会等の各種会議や学校法人運営調査等を通じ、学校法人自らによる経営改善のための取組や各学校法人の実情に応じた積極的な財務情報の公開の取組を促進した。

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大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --