吉野彰さん(旭化成・名誉フェロー)からのメッセージ

 2019年、「リチウムイオン電池の開発」によりノーベル化学賞を受賞された吉野彰さん(旭化成株式会社名誉フェロー)から、新型コロナウイルス感染禍におけるメッセージを文部科学省にお寄せいただきました。メッセージは、主に学生の皆さまなどこれから社会に出られる若い方々に向けて発信されたものであり、強いモチベーションで現下の困難を乗り切ろうと呼びかけるものです。

ノーベル賞受賞者の吉野彰先生のメッセージ

ノーベル賞受賞者の吉野彰先生のメッセージ(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
 

吉野彰さんからのメッセージテキスト版

 皆様こんにちは。吉野です。新型コロナウイルスの問題で困難な日々を過ごされていると思います。
 今回の新型ウイルスの問題は教育現場、研究現場にも大きな影響を及ぼしております。一部では授業、講義が再開されているとはいえ、園児・児童の皆さん、生徒さん、学生さん、大学院生の方々および保護者の皆様はこれから先のことに非常に不安を感じておられると思います。少しでもその不安を和らげることができればということで私の思いをお伝えしたいと思います。
 まだ今回の出来事を総括する時期ではありませんが、一つ確実に言えるのはまだまだ人類は無力な面をたくさん残しているということです。これは文系、理系を問わず人類が解決しなければならない課題が山積していることを再認識させられたということかと思います。これらの課題を実際に解決していくのはこれからです。そして、その原動力になるのは若い皆さん方だと思います。
 学習、勉強、研究の遅れなどで不安に思われているかも知れませんが、逆に天から大きな使命を与えられたと捉えてください。それをモチベーションにして頑張っていただきたいと思います。力強いモチベーションがあれば、どんな困難も乗り越えることができます。
 私のリチウムイオン電池での経験を一つご紹介しましょう。苦労して何とかリチウムイオン電池を世の中に出したのは1990年の初めでした。でもしばらくは全く売れずに先が一向に見えなくなりました。しかし、小型軽量な二次電池が人類にとって必要とされる時代が必ず到来すると信じ、それをモチベーションとすることでさらなる小型化・効率化に向けた研究を続けていたところ、ある日突然の如く売れ出したのです。IT革命が始まり、リチウムイオン電池は一躍、携帯電話を始めとしたさまざまな機器に不可欠な存在となりました。1995年のことでした。
 もう一度繰り返します。力強いモチベーションがあれば、どんな困難も乗り越えることができます。
 これが私からのメッセージです。

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