「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」の告示について(平成23年12月20日 23文科生第660号 各都道府県教育委員会教育長あて 文部科学省生涯学習政策局長通知)

 このたび、別添のとおり、平成23年12月20日付けをもって、博物館法(昭和26年法律第285号)第8条に基づく「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」(文部科学省告示第165号)が告示され、同日から施行されました。
 本告示は、1平成20年の博物館法改正、2利用者のニーズの多様化・高度化、3博物館の運営環境の変化などを踏まえ、従来の「公立博物館の設置及び運営に関する基準」(平成15年6月6日文部科学省告示第113号)の全部を改正したものです。
  主な改正条文の概要及び留意事項は別紙のとおりですので、貴教育委員会におかれては、域内の市町村教育委員会及び公私立博物館に対して本基準について周知を図るとともに、適切な指導と取組をお願いします。
 なお、この基準は博物館法第2条第1項に規定する博物館に係るものですが、博物館相当施設等に対する指導又は助言に当たっても、必要に応じて参考とされるようお願いします。

(別紙)「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」について

第一 改正条文の概要

1 第1条関係 (趣旨)

 本基準について、公立博物館に加え、私立博物館も新たに対象としたこと。また、本基準は、博物館法第8条の規定に基づき、博物館の健全な発達を図るために、その設置及び運営上の望ましい基準として定めたものであり、博物館は、この基準に基づき、それぞれの博物館の水準の維持、向上を図り、もって教育、学術及び文化の発展並びに地域の活性化に貢献するよう努めるものとしたこと。

2 第2条関係 (博物館の設置等)

(1)博物館法第2条第3項の規定を踏まえ、博物館が扱う資料に「電磁的記録」が含まれることを明確化したこと。
(2)博物館の設置者が、地方自治法第244条の2第3項の規定に基づく指定管理者に当該博物館の管理を行わせる場合その他当該博物館の管理を他の者に行わせる場合には、これらの設置者及び管理者は相互の緊密な連携の下に、当該博物館の事業の継続的かつ安定的な実施の確保、事業の水準の維持及び向上を図りながら、この基準に定められた事項の実施に努めるものとしたこと。

3 第3条関係 (基本的運営方針及び事業計画)

(1)博物館は、その設置の目的を踏まえ、資料の収集・保管・展示、調査研究、教育普及活動等の実施に関する基本的な運営の方針(以下「基本的運営方針」という。)を策定し、公表するよう努めるものとしたこと。
(2)博物館は、基本的運営方針を踏まえ、事業年度ごとに、その事業年度の事業計画を策定し、公表するよう努めるものとしたこと。
(3)博物館は、基本的運営方針及び事業計画の策定に当たっては、利用者及び地域住民の要望並びに社会の要請に十分留意するものとしたこと。

4 第4条関係 (運営の状況に関する点検及び評価等)

(1)博物館は、基本的運営方針に基づいた運営がなされることを確保し、その事業の水準の向上を図るため、各年度の事業計画の達成状況その他の運営の状況について、自ら点検及び評価を行うよう努めるものとしたこと。
(2)博物館は、(1)の点検及び評価のほか、当該博物館の運営体制の整備の状況に応じ、博物館協議会の活用その他の方法により、学校教育又は社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者、当該博物館の事業に関して学識経験のある者、当該博物館の利用者、地域住民その他の者による評価を行うよう努めるものとしたこと。
(3)博物館は、これらの点検及び評価の結果に基づき、当該博物館の運営の改善を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとしたこと。
(4)博物館は、点検及び評価の結果並びに当該結果に基づく措置の内容について、インターネット等を活用すること等により、積極的に公表するよう努めるものとしたこと。

5 第5条関係 (資料の収集、保管、展示等)

(1)博物館は、実物、標本、文献、図表、フィルム、レコード等の資料(以下「実物等資料」という。)について、その所在等の調査研究を行い、当該実物等資料に係る学術研究の状況、地域における当該実物等資料の所在状況及び当該実物等資料の展示上の効果等を考慮して、基本的運営方針に基づき、必要な数を体系的に収集し、保管し、及び展示するものとしたこと。
(2)博物館は、実物等資料について、その収集若しくは保管が困難な場合、その展示のために教育的配慮が必要な場合又はその館外への貸出し若しくは持出しが困難な場合には、必要に応じて、実物等資料を複製、模造若しくは模写した資料又は実物等資料に係る模型(以下「複製等資料」という。)を収集し、又は製作し、当該博物館の内外で活用するものとしたこと。その際、著作権法その他の法令に規定する権利を侵害することのないよう留意するものとしたこと。
(3)博物館は、実物等資料及び複製等資料(以下「博物館資料」という。)に関する図書、文献、調査資料その他必要な資料(以下「図書等」という。)の収集、保管及び活用に努めるものとしたこと。
(4)博物館は、当該博物館の適切な管理及び運営のため、その所蔵する博物館資料及び図書等に関する情報の体系的な整理に努めるものとしたこと。
(5)博物館は、当該博物館が休止又は廃止となる場合には、その所蔵する博物館資料及び図書等を他の博物館に譲渡すること等により、当該博物館資料及び図書等が適切に保管、活用されるよう努めるものとしたこと。

6 第6条関係 (展示方法等)

(1)博物館は、基本的運営方針に基づき、その所蔵する博物館資料による常設的な展示を行い、又は特定の主題に基づき、その所蔵する博物館資料若しくは臨時に他の博物館等から借り受けた博物館資料による特別の展示を行うものとしたこと。
(2)博物館は、博物館資料を展示するに当たっては、当該博物館の実施する事業及び関連する学術研究等に対する利用者の関心を深め、当該博物館資料に関する知識の啓発に資するため、1確実な情報及び研究に基づく正確な資料を用いること、2展示の効果を上げるため、博物館資料の特性に応じた展示方法を工夫し、図書等又は音声、映像等を活用すること、3常設的な展示について、必要に応じて、計画的な展示の更新を行うこと、に留意するものとしたこと。

7 第7条関係 (調査研究)

 博物館は、博物館資料の収集、保管及び展示等の活動を効果的に行うため、単独で又は他の博物館、研究機関等と共同すること等により、基本的運営方針に基づき、博物館資料に関する専門的、技術的な調査研究並びに博物館資料の保管及び展示等の方法に関する技術的研究その他の調査研究を行うよう努めるものとしたこと。

8 第8条関係 (学習機会の提供等)

(1)利用者の調査研究に資することを、博物館が学習機会を提供する目的として追加したこと。
(2)学習機会の提供に係る業務として、利用者からの求めに応じ、博物館資料に係る説明又は助言を行う業務を追加したこと。

9 第9条関係 (情報の提供等)

(1)博物館は、当該博物館の利用の便宜若しくは利用機会の拡大又は第7条の調査研究の成果の普及を図るため、1実施する事業の内容又は博物館資料に関する案内書、パンフレット、目録、図録等を作成するとともに、これらを閲覧に供し、頒布する業務、2博物館資料に関する解説書、年報、調査研究の報告書等を作成するとともに、これらを閲覧に供し、頒布する業務を実施するものとしたこと。
(2)当該業務を実施するに当たっては、インターネット等を積極的に活用するよう努めるものとしたこと。

10 第10条関係 (利用者に対応したサービスの提供)

(1)博物館は、事業を実施するに当たっては、高齢者、障害者、乳幼児の保護者、外国人その他特に配慮を必要とする者が当該事業を円滑に利用できるよう、介助を行う者の配置による支援、館内におけるベビーカーの貸与、外国語による解説資料等の作成及び頒布その他のサービスの提供に努めるものとしたこと。
(2)博物館は、当該博物館の特性を踏まえつつ、当該博物館の実施する事業及び関連する学術研究等に対する青少年の関心と理解を深めるため、青少年向けの解説資料等の作成及び頒布その他のサービスの提供に努めるものとしたこと。

11 第11条関係 (学校、家庭及び地域社会との連携等)

(1)博物館は、事業を実施するに当たっては、学校、当該博物館と異なる種類の博物館資料を所蔵する博物館等の他の博物館、公民館、図書館等の社会教育施設その他これらに類する施設、社会教育関係団体、関係行政機関、社会教育に関する事業を行う法人、民間事業者等との緊密な連携、協力に努めるものとしたこと。
(2)博物館は、その実施する事業において、利用者及び地域住民等の学習の成果に基づく知識及び技能を生かすことができるよう、これらの者に対し、展示資料の解説、講演会等に係る企画又は実施業務の補助、博物館資料の調査又は整理その他の活動の機会の提供に努めるものとしたこと。

12 第13条関係 (職員)

 博物館は、基本的運営方針に基づきその事業を効率的かつ効果的に実施するため、博物館資料の収集、保管又は展示に係る業務、調査研究に係る業務、学習機会の提供に係る業務その他の業務を担当する各職員の専門的な能力が適切に培われ又は専門的な能力を有する職員が適切に各業務を担当する者として配置されるよう、各業務の分担の在り方、専任の職員の配置の在り方、効果的な複数の業務の兼務の在り方等について適宜、適切な見直しを行い、その運営体制の整備に努めるものとしたこと。

13 第14条関係 (職員の研修)

 博物館は、その職員を、都道府県教育委員会が主催する研修その他必要な研修に参加させるよう努めるものとしたこと。

14 第15条関係 (施設及び設備)

 博物館は、1耐火、耐震、防虫害、防水、防塵、防音、温度及び湿度の調節、日光の遮断又は調節、通風の調節並びに汚損、破壊及び盗難の防止その他のその所蔵する博物館資料を適切に保管するために必要な施設及び設備、2青少年向けの音声による解説を行うことができる機器、傾斜路、点字及び外国語による表示、授乳施設その他の青少年、高齢者、障害者、乳幼児の保護者、外国人等の円滑な利用に資するために必要な施設及び設備、3休憩施設その他の利用者が快適に観覧できるよう、利用環境を整備するために必要な施設及び設備など、当該博物館の目的を達成するために必要な施設及び設備を備えるよう努めるものとしたこと。

15 第16条関係 (危機管理等)

(1)博物館は、事故、災害その他非常の事態(動物の伝染性疾病の発生を含む。)による被害を防止するため、当該博物館の特性を考慮しつつ、想定される事態に係る危機管理に関する手引書の作成、関係機関と連携した危機管理に関する訓練の定期的な実施その他の十分な措置を講じるものとしたこと。
(2)博物館は、利用者の安全の確保のため、防災上及び衛生上必要な設備を備えるとともに、事故や災害等が発生した場合等には、必要に応じて、入場制限、立入禁止等の措置をとるものとしたこと。

第二 留意事項

1 第1条関係 (趣旨)

(1)博物館法第2条第1項に規定する博物館の4割近くを私立博物館が占めている現状を踏まえれば、設置主体を問わず博物館を充実することが国民の利益につながると考えられることから、本基準の対象に私立博物館も含むものとしたところであり、各博物館においては、地域や館の特色を活かした運営を行いつつ、本基準に定められた事項の実施に努めることが望ましいこと。
 その際、私立博物館については、その性格に照らし、設置者の自主性や独自性を十分に活かした運営が行われることが重要であること。
(2)本基準は、博物館の登録に当たって審査すべき要件とは別に、望ましい博物館の姿として博物館が目指すことが適当と考えられる、より水準の高い内容を示したものであること。

2 第2条関係 (博物館の設置等)

 指定管理者制度を導入する場合その他博物館の管理を他の者に行わせる場合には、経費削減効果のみに着目するのではなく、博物館の適切かつ安定的な運営を考慮した指定期間の設定、良質な学芸員の確保とその資質の向上、事業の継続的・安定的な実施の確保にも十分留意し、事業の水準の維持向上に努めること。

3 第3条関係 (基本的運営方針及び事業計画)

 博物館が果たすべき役割を含め、博物館の事業に関する基本的な運営の方針を明らかにするとともに、毎事業年度の事業計画を策定・公表することにより、事業の計画的な遂行を図るとともに、広く博物館への関心を高め、理解を得るよう努めること。

4 第4条関係 (運営の状況に関する点検及び評価等)

 博物館の運営の状況に関する点検及び評価を行うに当たっては、「博物館評価制度等の構築に関する調査研究報告書」(平成21年3月文部科学省委託)(※国立国会図書館ホームページへリンク)別ウィンドウで開きますも参考にしつつ、当該博物館における多様な活動が多面的に評価されるよう努めること。

5 第5条関係 (資料の収集、保管、展示等)

(1)博物館の事業の水準の維持向上のためには博物館資料及び図書等の充実が重要であることから、必要な資料について継続的・体系的な収集に努めること。
(2)所蔵する博物館資料及び図書等について適切な保管に努めるとともに、展示されている資料の管理についても十分な注意を払うよう努めること。
(3)第1項の資料の種類については、博物館法第3条第1項第1号を踏まえて例示しているが、改正前の条文において規定していた「現象に関する資料」についても、引き続き本規定の対象として扱われるべきものであること。
(4)博物館が所蔵する資料等は、広く公開され、活用されるとともに、長く保存、伝承されるべきものであることにかんがみ、博物館が休止又は廃止となる場合には、所蔵する博物館資料や図書等が散逸して失われることがないよう、あらかじめ他の博物館への譲渡等の十分な措置を講じ、博物館資料等の適切な継承に努めること。

6 第7条 (調査研究)

 博物館における調査研究は、資料の収集、保管、展示等の各事業の基礎となるものであり、当該博物館が対象とする分野やその関連分野に係る基礎的な研究、教育普及活動や博物館管理運営など博物館の活動に関する研究を含め、その充実に努めること。

7 第8条 (学習機会の提供等)

 博物館に対する利用者のニーズの多様化・高度化に対応できるよう、各種の講演会、研究会、説明会等の開催や館外巡回展示などにより、各博物館の特性や地域の実情に応じた魅力ある学習機会の提供に努めること。

8 第10条 (利用者に対応したサービスの提供)

 青少年、高齢者、障害者、乳幼児の保護者、外国人等の観覧を支援するため、本基準に例示された内容のほか、必要に応じ、参加体験型の事業や託児サービスを実施するなど、これらの者に対するきめ細かいサービスの実施に努めること。

9 第11条 (学校、家庭及び地域社会との連携)

(1)博物館の事業をより効果的に行うとともに、学校教育や社会教育、家庭教育等の充実に資する観点から、異なる館種の博物館との連携を含め、学校、図書館・公民館等の社会教育施設、文書館、社会教育関係団体をはじめとする他の機関・団体等との積極的な連携に努めること。
 その際、小学校においては本年度から、中学校においては来年度から全面実施される新学習指導要領においても、社会科、理科、総合的な学習の時間などにおける博物館等の活用が記載されていることを踏まえ、学校教育との一層の連携を図ることが望ましいこと。
(2)利用者や地域住民等に対して博物館におけるボランティア活動の機会を提供する場合には、これらの者に対して必要な研修を実施し、事業の水準の向上に努めること。

10 第14条 (職員の研修)

(1)平成20年の博物館法改正により、都道府県教育委員会が学芸員及び学芸員補に対し、その資質の向上のために必要な研修を行うことが努力義務化されたことを踏まえ、都道府県教育委員会は、これらの者等に対する研修を実施するよう努めること。
(2)都道府県教育委員会及び市町村教育委員会は、域内の博物館に対して研修に関する情報提供を行うとともに、当該教育委員会が設置する博物館の職員に研修の機会を与えるよう努めること。
(3)博物館は、都道府県教育委員会が主催する研修、国や学会等が主催する研修に所属職員を参加させるとともに、自ら職員に対する研修の実施に努めるなど、職員の資質向上に努めること。

11 第15条 (施設及び設備)

(1)青少年、高齢者、障害者、乳幼児の保護者、外国人等の観覧を支援するため、本基準に例示された内容のほか、必要に応じ、体験型の展示施設やエレベーターを設置するなど、これらの者の利用に資する施設・設備の設置に努めること。
(2)利用者が快適に観覧できるよう、休憩施設、飲食施設、売店等の施設の設置に努めること。

12 第16条 (危機管理等)

 東日本大震災においては、博物館も多くの施設が被災したところであり、各博物館においては、「博物館における施設管理・リスクマネージメントに関する調査研究報告書」(平成19~21年度文部科学省委託)(※国立国会図書館ホームページへリンク)別ウィンドウで開きますも参考にしつつ、手引書の作成や定期的な訓練の実施など非常の事態に備えた十分な措置を講じるとともに、他の博物館等との相互扶助のネットワークを日頃から構築するよう努めること。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --