聖徳学園高等学校

産学連携国際協力プロジェクト ~学びから実践 高校生だからできる国際協力~

開発途上国の問題解決を目指すPBL型学習

 本授業は、高校2年生の総合的な学習の時間にて実施しているPBL型学習である。各クラスが異なる開発途上国を担当し、その国の問題の発見、問題解決の提案、そして解決案の実行までを通年カリキュラムとして展開している。2018年度の担当国は1組ルワンダ、2組ミクロネシア、3組スーダン、4組インドネシア、5組タイ、6組モザンビークであった。
 5月に実施される元青年海外協力隊員(JOCV)による出張授業から本プロジェクトは開始された。生徒はその授業により得られた知見を元に、インターネットや文献検索を重ねながら担当国に対する理解を深め、その国が抱える問題について学んだ。この学習の最中にSDGsに関する説明も行われ、生徒はSDGsに対する理解を深めた。解決案はクラス内で検討し、最終的に各クラス6つ程度の解決プロジェクトに絞り込まれた。これらの過程において、JOCVや近隣大学の学生も生徒の創造力を広げるための支援を行った。
 2学期に入ると、各プロジェクト実行班に分かれ、10月下旬に実施する中間報告会に向けた準備を始めた。ここでは情報学習の時間と連携し、プレゼンテーションスライドと口頭発表の質を高める工夫を行った。例えば、スライド作成に必要なPCスキルと視聴覚に訴えかけるデジタル効果技術について、情報科教員による専門的な指導が行われた。また、総合的な学習の時間においては、国語科教員を中心にプレゼンテーション原稿の書き方に関する指導が行われた。中間報告会では国際関係を専門とする大学教授を始めとした外部有識者やJICA職員を招いて、自身の活動について発表し、専門家から新たな知見を得る機会とした。また、ソーシャルビジネスを展開している企業家も招き、実社会での創造性の運用という観点からのコメントも得ることができた。
 中間報告会後は、生徒自身が企画した内容を実行に移した。企画を実行に移す段階で生徒は今まで気付くことの無かった様々な問題に直面することとなった。その時、生徒はグループ内で話し合い、解決方法を模索しながら企画実現への道を探っていくこととなった。この時も近隣大学の学生が支援に入り、グループ内でファシリテーターの役割を担い、問題解決のための助言等を行った。
 生徒の制作した貢献成果物はNPO等を通じて現地に届けられることもあった。過去の具体例としては、1.日本人に自分の担当国を知ってもらうことを目的とした紹介動画を作成し、それをYou Tubeに投稿するとともにSNSを活用して拡散させた。2.当該担当国の衛生環境改善を目的に、子供たちが手洗いを自然に行えるよう、3Dプリンターを使い作成した自作の人形を石鹸の中に入れ、開発途上国へ送付する、といった活動を展開した。これらの活動は国の教育機関で取り上げられ、例えばインドネシア・インドラマユ市で行われた教員研修会にて紹介されたり、スーダン共和国では現地NPOを通じて、生徒が本プロジェクトで収集し、送付した運動靴と文房具が地域の子供たちに配布されたりすることになった。2018年度はルワンダ共和国での国際研修旅行を実施し、生徒が製作した作品、世界を知り、英語を学ぶ動機付けとすることを目的とした「世界カルタ」を現地高校にて共に遊ぶという貴重な体験も実施することができた。
 3学期に入ると、1年間の取組を次年度対象学年に伝える準備を始める。3月には外部有識者に加え、次年度担当学年である高校1年生も参加した成果報告会を実施した。そこでは、1年間の活動をまとめたポスタープレゼンテーションを中心に発表した。ここでも情報科の授業と連携し、より視覚的に訴えるポスター制作方法について専門的な指導が行われた。総合的な学習の時間では、1年間の活動をまとめる報告書の執筆を行い、作文能力の向上のみならず次世代へと自身の活動記録を残すことを目的とした授業を展開した。記録はe‐portfolioを意識し、Apple社製iBooks Authorを活用してまとめられ、学内での活用が推奨されているGoogle Driveを通じてすべての生徒、保護者、教職員、外部関係者と共有された。

期待される成果

 本授業で期待される成果は以下の通りである。

  1. ICT機器や人材を活用しながら見知らぬ他者に思いを馳せ、そこに住む人々が抱える問題の積極的な解決方法を提案する力とそれを実行する行動力を養う。
  2. SDGsを達成するためには、多くの人間のアイデアと協力が必要なことを理解し、一人一人が主体的に関わることの必要性とその方法について経験を通じて学ぶ。
  3. STEAMに代表されるように、個々の教科で学んだ知識を統合し、創造的問題解決能力の育成を目指す。

今後の課題

 本授業の課題は以下の通りである。

  1. 正解の形が存在しない本授業では、プロジェクトの成否は参加する一人一人の熱意に大きく依存している。そのため各グループを取りまとめるリーダーの負担が大きく、もしもグループ内で授業に対する熱意の差が表出した場合、クラス内の人間関係にも影響を及ぼす可能性がある。
  2. STEAM教育の要素を活用した、SDGs達成を目指す本授業であるが、特にArtの部分の重要性、そして、SDGsを達成することの重要性に対する生徒の理解を一層促していく必要がある。
  3. 貢献成果物の作成・送付に係るコストが発生し、時に期待される成果以上のコストがかかる場合もある。授業当初からより現実的なコスト計算を生徒に課す必要性があるだろう。2018年度はクラウドファンディングを活用した班があったが、成立には至らなかった。しかし、このようなチャレンジは学校教育と実社会を結びつけることを最大の目標としている本授業においては有益なことであった。
販売・展示を行った映画上映会場入り口

JOCVによる出張授業

活動風景

活動風景

担当国への成果物の送付

担当国への成果物の送付

成果報告会

成果報告会

「世界カルタ」で遊んでいる様子1

「世界カルタ」で遊んでいる様子1

「世界カルタ」で遊んでいる様子2

「世界カルタ」で遊んでいる様子2


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文部科学省国際統括官付