教育統計の国際的標準化に関する改正勧告

教育統計の国際的標準化に関する改正勧告(仮訳)

1978年11月27日 第20回ユネスコ総会採択

 国際連合教育科学文化機関の総会は、1978年10月24日から11月28日までパリにおいてその第20回会期として会合し、
 この機関の憲章第8条が、「加盟各国は、総会が決定する様式で、教育、科学及び文化の機関及び活動に関する法令、規則及び統計についての定期報告を提出する」旨規定していることを考慮し、
 教育に関する統計資料を編集し報告することに責任を負う国内当局が、その資料の国際的な比較可能性を改善するため、定義、分類及び作表方法についての一定の基準に従うことが極めて望ましいことを確信し、
 この目的のため、その第10回会期において、教育統計の国際的標準化に関する勧告を採択し、
 国際教育会議第35回会期(ジュネーヴ、1975年8月27日~9月4日)において採択された国際標準教育分類(ISCED)が、国内教育制度の国際的基盤における調和のための基準を設定し、教育統計の比較可能性を増大することを可能にしたことを認識し、
 その第19回会期において、1958年の勧告が改正されるべきことを決定して、1978年11月27日にこの改正勧告を採択する。
 総会は、加盟国が国際的統計報告を行う目的のため、この改正勧告に規定する原則及び基準を自国の領域内において実施するため、必要とされる立法措置又はその他の措置をとることにより、教育に関する統計の定義、分類及び作表方法に関する次の諸規定を適用することを勧告する。
 総会は、加盟国がこの改正勧告を教育統計の編集及び報告の任に当る当局及び諸機関に周知することを勧告する。
 総会は、加盟国が、この改正勧告の実施について自国がとつた措置について、総会が定める期日に及び様式で総会に報告することを勧告する。

I 非識字に関する統計

定義
1 次の定義は統計の目的で使用される。
(a)日常生活に関する簡単かつ短い文章を理解しながら読みかつ書くことの両方ができる者は、読み書き能力者とする。
(b)日常生活に関する簡単かつ短い文章を理解しながら読みかつ書くことの両方ができない者は、非識字者とする。
(c)その者が属する集団及び社会が効果的に機能するため並びに自己の及び自己の属する社会の開発のために読み書き及び計算をしつづけることができるために読み書き能力が必要とされるすべての活動に従事することができる者は、機能上の読み書き能力者とする。
(d)その者が属する集団及び社会が効果的に機能するため並びに自己の及び自己の属する社会の開発のために読み書き及び計算をしつづけることができるために読み書き能力が必要とされるすべての活動に従事することができない者は、機能上の非識字者とする。

測定の方法
2 読み書き能力者(又は機能上の読み書き能力者)及び非識字者(機能上の非識字者)の数を決定するために次の方法のいずれかが、使用されうる。
(a)国民の全体的国勢調査又は部分的抽出調査において前記定義に関連する1つ又は数個の質問を行う。
(b)特別調査の場合は、読み書き能力(又は機能上の読み書き能力)標準試験による。この方法は、他の方法で得られた資料の正確性を確認し、又は系統的誤謬を矯正するために使用される。
(c)以上のいずれもが可能でない場合は、次の推定によって行う。
 (i)在籍者数に基づく特別調査又は抽出調査
 (ii)人口統計学上の資料と関連する定期的な学校統計
 (iii)国民の教育水準に関する資料

分類
3 まず、10歳以上の国民を2つの群、即ち、読み書き能力者及び非識字者に分類する。適当な場合には、機能上の非識字者も区別する。
4 これら各々の群は、性別に分類し、及び年齢別に次の群に分類される。
  10~14、15~19、20~24、25~34、35~44、45~54、55~64、65歳以上。
5 適当な場合には、次の細分をさらに行う。
(a)都市人口及び村落人口
(b)統計上、国内で常時識別されている人種層
(c)社会層

II 国民の教育水準に関する統計

定義
6  次の定義は統計目的に使用される。個人の教育水準は、自国又は他国の普通、特殊及び成人教育の教育制度で、本人によって修了された最高学年又は本人によって達成又は修了された最高の教育水準である。

測定の方法
7 国民の教育水準を測定するには次の方法が使用される。
(a)国民の全体的国勢調査又は部分的抽出調査において前記の定義に関連する1つ又は数個の質問を行う。
(b)これが不可能な場合は、次の推定によって行う。
 (i)前回の国勢調査又は調査結果
 (ii)学校在籍者、試験、修了証書及び授与された学位又は卒業証書に関する数年間の記録

分類
8 まず、15歳以上の国民は、できうれば、修了した最高学年により、但し、少なくとも達成又は修了した教育程度で表示される教育水準により分類される。可能な場合は、各段階ごとの学習の分野についても区分する。
9 これらの分類群の各々は、性別及び次のとおりの年齢別に分類される。即ち、15~19、20~24、25~34、35~44、45~54、55~64、65歳以上。
10 適当である場合は、次の細分が行われる。
(a)都市人口及び村落人口
(b)統計上、国内で常時識別されている人種層
(c)社会層

III 在籍者、教員及び教育施設の統計

定義
11 収集する教育資料の基礎的統計単位は、教育課程とする。教育課程は次のとおり定義する。即ち、教育課程とは、通常教授要目から選択された1つ又はそれ以上の課程の選択又は諸課程の組み合わせをいう。そのような教育課程は、特殊な分野での1つ又はいくつかの課程からなり、あるいは、より一般的には、多くは特殊な分野に、いくつかは他の分野に分類されうる課程群からなる。各課程は、更に進んだ学習のための資格、1つの職業又は一連の職業のための資格、あるいは単に知識や理解を深めるためといつた、はつきりした、あるいは暗黙の目的を持つ。
12 国際標準教育分類(ISCED)に含まれている定義に加えて、次の定義が統計目的のために使用される。即ち、
(a)生徒(学生)とは、教育課程に在籍し、又は登録されている者をいう。
(b)教員とは、非常勤又は無報酬であつても、知識、技術等を伝えるために雇用されたすべての者をいう。
 (i)常勤教員とは、各国において、特定の教育段階で通常常勤とみなされる時間数を教授することに従事するものをいう。
 (ii)非常勤教員とは、常勤教員でないものをいう。
(c)学年とは、通常1学年度の課程で教える教育の段階をいう。
(d)学級とは、1人又は数人の教員により、通常、一緒に教えられる生徒(学生)の集団をいう。
(e)学校(教育施設)とは、1人の教員により一定の種類及び程度の教育あるいは、施設の長の直接的監督のもとに、2人以上の教員により種々の種類又は程度の教育を受けるために組織された1つ又はそれ以上の学年の生徒(学生)の集団をいう。(学校又は教育施設は、しばしば統計資料を入手しうる単位となる。)
 (i)公立学校とは、財源の出所如何にかかわらず、(国、連邦、州又は県若しくは地方の)公共機関によって運営されている学校をいう。
 (ii)私立学校とは、公共機関から財政援助を受けていると否とにかかわらず、公共機関によって運営されていない学校をいう。私立学校は、公共機関からの財政援助を受けているか否かによって、それぞれ、補助学校及び非補助学校に分類される。
(f)義務教育年齢人口とは、全日制義務教育の年齢範囲内に入る全人口をいう。

分類
13 教育は、次の主要部門に分類される。
(a)普通教育
(b)成人教育
14 普通教育及び成人教育は、更に普通特殊教育と成人特殊教育とを区別するべく細分類される。
15 教育は、可能な限り、国際標準教育分類(ISCED)の段階分類及び学習分野によって分類する。
16 可能な限り、成人教育は更にISCED教育課程によって細分類する。

作表
17 普通教育
  ISCED 段階分類0、1、2、3、5、6及び7並びにISCED学習分野による作表は、適当な場合次に対して行う。即ち、
(a)公立私立別学校数及び学級数
(b)適当な場合には、常勤又は非常勤教員に分類した性別及び資格(各国の慣習に従う)別教員数
(c)適当な場合には、全日制又は定時制生徒に分類した年齢別、性別、学年別生徒数
(d)当該年度中に、その段階及び学期の教育を修了したことに伴い修了証書を取得した性別生徒数
(e)性別及び出身国別外国人学生数(ISCED段階5、6及び7)
18 成人教育
  ISCED段階分類、学習分野及び教育課程による作表は、適当な場合次に対して行う。
(a)教育課程の態様及び期間並びに正規又は非正規の別
(b)性別及び可能な範囲で、年齢別に登録された参加者数
(c)性別教員数
19 特殊教育
  ISCED段階分類0、1、2、3、5及び9、普通・成人並びに適当な場合、ISCED学習分野による作表は、次に対して行う。
(a)学校(教育施設)数
(b)性別及び資格(各国の慣習に従う)別教員数
(c)性別、障害の形態別及び可能な限り年齢別生徒(学生)数
20 人口資料
  2歳~24歳の人口は、最近の国勢調査及び現在の概算によって年齢別、性別に作表される。もし、それが可能でないならば、国勢調査結果及び現在の概算は、少なくとも2~4、5~9、10~14、15~19及び20~24歳の年齢群毎に並びに別に義務教育年齢人口で報告される。

IV 教育財政に関する統計

定義
21 次の定義は統計目的のために使用される。
(a)収入とは、予算、補助金、授業料、寄付として受けた財産の現金価格等を含め、学校が受領し又はその用に供する現金をいう。
(b)支出とは、物品又は役務に対して学校により又は学校の代りに負う財政上の義務をいう。
(c)経常支出とは、資本支出及び債務償還を除くすべての支出を含む。
(d)資本支出とは、土地、建物及び備品等に関する支出をいう。
(e)債務処理とは、借り入れ金の利息支払及び元金償還をいう。

分類
22 一定の会計年度の教育財政に関する統計資料は、できる限り、次のとおり分類される。即ち、
(a)収入
 (i)中央政府又は連邦政府、州、県又は類似の政府、郡、市、区又は他の地方当局のごとき公共機関からのもの。
 (ii)その他の源泉からのもの(授業料、保護者からのその他の収入、寄付等を含む)。
(b)支出
 (i)経常支出(利息支払いを含まず)
   管理又は一般的統制のための費用並びに、可能な場合には次のとおり分類された教授費。すなわち、教員及びその他直接的補佐役の専門職員に対する給与、その他の教授費。その他すべての経常支出。
 (ii)資本支出(債務償還を含まず)
   教育支出、非教育支出(寄宿舎、学生食堂、書店等)
 (iii)債務処理

作表
23 表は、源泉別収入及び用途別支出から作成され、この勧告の13から15項まで及び22項に規定する分類にできる限り符合する細分類に依拠するが、各国の行政的及び財政的慣例に即したものとする。できうれば、公立学校と私立学校の支出との間に、教授費とその他の勘定との間に、及び第3段階の教育のための支出とその他の段階の教育のための支出との間に区別を設ける。

 以上は、国際連合教育科学文化機関の総会が、パリで開催されて1978年11月28日に閉会を宣言されたその第20回会期において、正当に採択した勧告の真正な本文である。

 以上の証拠として、我々は、署名した。

 総会議長
 ナポレオン・ルブラン
 事務局長
 アマドゥ=マハタール・ムボウ

お問合せ先

国際統括官付