建築及び都市計画の国際競技に関する改正勧告

建築及び都市計画の国際競技に関する改正勧告(仮訳)

1978年11月27日 第20回ユネスコ総会採択

 国際連合教育科学文化機関の総会は、1978年10月24日から11月28日までパリにおいてその第20回会期として会合し、
 その第9回会期(1956年)において建築及び都市計画の国際競技に関する勧告を採択したことを想起し、
 同勧告に規定されている国際的諸基準及び諸原則が依然として有効であることに留意し、
 しかしながら、同勧告付属標準規則は、建築及び都市計画の国際競技に関する現在の要請をより十分に満たすため及び過去の経験を考慮に入れるため時代に即すことが必要であることを考慮し、
 その第19回会期において、同勧告の改正を進めることが適当であると考慮し、
 同勧告を改正するに当たって、改正に関する諸提案を受け、
 1978年11月27日、この改正勧告を採択する。
 総会は、加盟国がこの改正勧告に規定する原則及び基準を自国の領域内で実施するため、必要とされる立法措置又はその他の措置をとることにより、次の諸規定を適用することを勧告する。
 総会は、加盟国がこの改正勧告を建築及び都市計画の競技に関与する当局、諸機関並びに、建築家及び都市計画者の国内諸団体に周知することを勧告する。
 総会は、加盟国が、この改正勧告の実施について自国がとつた措置について総会が定める期日に及び様式で総会に報告することを勧告する。

I 定義

1 (a)この改正勧告の目的上、「国際的」の指定は1か国以上の国の建築家又は都市計画者が参加するよう招請されたあらゆる競技に適用する。
 (b)国際競技は、公開又は制限付とすることができる。すなわち(i)2又は2以上の国の専門家に対し、開放される競技は公開と称する。(ii)主催者によって招請された一定の専門家に限定される競技は制限付と称する。
 (c)国際競技には、1又は2の審査段階のものがある。

II 国際競技の組織

2 国際競技の公示には、競技種類の定義及び競技目的の明確な説明を掲げなければならない。それは、競技が公開か制限付であるか、また競技の審査段階が1段階か2段階か、を明示しなければならない。
3 国際競技の条件は、国際建築家連合と協議の上作成されねばならない。
4 国際競技の条件は、競技目的、問題の詳細な性質及び、競技者に要求される実際的資格を正確に指定しなければならない。
5 国際競技の参加資格及び諸条件は、国籍上の差別なく、すべての競技者について同一のものでなければならない。
6 公開国際競技のために行われる公示は、国際的に、かつ、公正な形でなされなければならない。

III 国際競技の審査

7 審査会は、資格ある専門家で過半数構成しなければならない。
8 審査会は、その構成員の中に競技を主催する国以外の国籍に属するものを包含しなければならない。

IV 国際競技に伴う措置

9 国際競技の条件で定められる賞金、報酬及び補償金の額は、計画の規模とその性質並びに競技者に課せられた作業に比例するものでなければならない。
10 国際競技の優勝者には、計画の実施への参加について十分な保障を与えなければならない。計画が実施されない場合にそなえ計画の規模に応じた補償金を定めておかなければならない。
11 競技者が国際競技のために提出する設計図書については、すべての競技者の著作権および所有権を保護するために適当な措置が講ぜられなければならない。
12 国際競技の結果は公開されなければならず、また、競技に提出された設計図書は、公開展示されなければならない。
13 国際競技に関連して生じるおそれのあるあらゆる紛争の解決のため国際建築家連合に対するあっせんの依頼については、予め定めておかなければならない。

V 標準規則

14 国際競技の主催者は、この改正勧告に付属書として付随する標準規則の定めるところに準拠しなければならない。

附属書 建築及び都市計画に関する国際競技の標準規則


 本標準規則は、国際競技がその基礎とし、かつ主催者が国際競技を組織する上で指針とする諸原則を示すことを目的とする。
 本標準規則は、主催者及び競技者の双方の利益のために作成された。

一般規定
第1条
 「国際的なもの」との指定は、競技への参加が建築家、都市計画者又は建築家もしくは都市計画者に引率された国籍の異なる及び異なる国に居住する専門家チームに公開され、また、これら専門家と連携して作業する他の諸専門家に公開されるあらゆる競技に適用される。あらゆる建築家、都市計画者及びこれら専門家と連携して作業する他の専門家が自由に参加できる競技は「公開」と称する。本規則は、公開競技及び制限付競技(何らかの形で制限が課せられる競技)、更に時には特別競技に適用される。
第2条
 国際競技は、「事業計画」競技又は「構想」競技とに分類される。
第3条
 国際競技は1又は2の審査段階で組織することができる。
第4条
 国際競技の諸規則及び諸条件は、すべての競技者に対して同一のものでなければならない。
第5条
 すべての競技の規則書及び条件全文は、各1部を、国際建築家連合、以下本文中UIAと呼ぶ、に保管されると同時に関係国のUIA国内支部のすべてに無料で送付される。競技者からの質問に対する回答もまたUIA及び全UIA国内支部に送付される。
第6条
 国際建築家連合の公用語(英語・フランス語・ロシア語及びスペイン語)の1つで発行されない条件には、これら公用語のうち、少なくとも1つの言語による翻訳を付さねばならない。この翻訳は、原語版と同時に発行されるものとする。競技者は2つ以上のUIA公用語による資料の提出を要求されることはない。
第7条
 すべての競技者の設計図書は無記名で提出され、審査されるものとする。
第8条
 国際競技の開催通告は、主催者又はUIA事務総局からすべての国内支部に対し公布され、関係者がしかるべき時に競技規則及び条件全文を入手しうるように、技術新聞雑誌への掲載又は他の任意の方法によりできる限り同時にその通告を公表することを要請する。この通告には、競技条件の入手場所及び入手方法が明記され、かつ競技条件はUIAの承認(第15条参照)を得た旨が明示されるものとする。

専門的助言者
第9条
 主催者は、競技条件の作成及び競技運営監督のため、できるならば建築家(但し都市計画競技の場合は、都市計画者でも可。)を専門的助言者に指名するものとする。

競技条件の作成
第10条
 国際競技条件は、1段階又は2段階であるを問わず、また公開又は制限付であるとを問わず明確に次のことを述べなければならない。
(a)競技の目的及び主催者の意図
(b)解決すべき問題の性質
(c)競技者が満すべき実際的資格のすべて
第11条
 競技条件には、本質的性格の義務的必要条件と、競技者にできるかぎり可能な広範囲で解釈の自由を与える必要条件との間に、明白な区別が設けられねばならない。すべての競技参加申込みは規則に従って提出されねばならない。
第12条
 競技者に提供される(社会的、経済的、技術的、地理的、地勢的等)必要な背後情報は明確であり、かつ誤った解釈をされる可能性のあるものであつてはならない。審査会で認められた補足的情報及び指示は、主催者から、2段階競技の第2段階に選ばれて進出する競技者へ提供することができる。
第13条
 規則には、必要とされる資料、図面又は模型の数、性質、縮尺及び寸法を明示し、その資料、図面又は模型の受諾の条件を述べなければならない。価格評価が要求される場合には、これを、規則に述べられているような標準様式で表示しなければならない。
第14条
 国際競技の主催者は、一般的にメートル法を採用するものとする。メートル法が採用されない場合においては、メートル法での換算表示を条件に追加しなければならない。

UIAの承認
第15条
 主催者は、その競技がUIAの後援のもとに行われることを公示する前に日程表、登録料及び審査会の構成委員を含む競技規定についてUIAの書面による承認を受けなければならない。

競技者の登録
第16条
 競技者は、競技の詳細を受領したときはすみやかに主催者に対して登録しなければならない。この登録は競技規則に対する競技者の受諾を意味する。
第17条
 主催者は、競技者に対し、各人の設計図書作成に必要な資料を交付するものとする。資料交付に供託金の払い込みを条件とする場合には、この供託金は、別段の規定がない限り、善意のある設計図書を提出した競技者には返還されるものとする。
第18条
 2段階競技の第2段階に選ばれて進出する競技者の名前は、競技開始前に、審査会が承認した例外的な場合にのみ公表される。

賞金、補償金及び報酬
第19条
 すべての競技の規則は、賞の数及び賞金の額を定めなければならない。これは、事業計画の規模、競技者にもたらされた作業量及び競技者に課せられた総支出費に関係しなければならない。
第20条
 都市計画競技は、工事が一般に官公庁により、かつしばしば長期体制で行われるので、その性質上、構想の競技である。したがつて主催者は、競技者が出した構想及び競技者が行つた作業に報いるために十分な賞金を配分することが特に重要である。
第21条
 主催者は、審査会の決定を受諾し、競技結果の発表があってから、1か月以内に賞金を支払うことを約する。
第22条
 招請された競技参加者の各々は賞の授与に加えて報酬を受ける。
第23条
 2段階からなる競技においては、適当な報酬が第2段階に選ばれて参加する競技者各人に支払われる。この金額は、第2段階で行われる付加的労力に対し競技者に報いることを意図するものであつて、競技規則に明記され、かつ、賞の授与に追加される。
第24条
 規則には、主催者が、優勝した設計図書を用いようとする際の正確な用途を明記しなければならない。創作者との合意による場合を除いて、設計図書は他の用に供し又は、なんらかの変更を行つてはならない。
第25条
 事業計画の競技において、設計図書に対する1等賞の授与は、主催者に対しこの設計図書の創作者に事業計画の遂行を委託することの義務を課する。もし、審査会が優勝者の作業実施能力に満足し得ない場合、審査会は、優勝者によって選ばれ、審査会及び主催者によって承認された他の建築家又は都市計画者と協力することを優勝者に要請することができる。
第26条
 事業計画の競技において、審査会の審査結果発表から24か月以内に、事業計画実施の契約が成立しない場合には、1等賞受賞者は、更に1等賞の額に相当する額を補償金として受領する旨の規定を競技規則に設けるものとする。1等賞受賞者に対しこのように補償金を支払う場合も、主催者は、創作者との共同施行以外ではその事業計画の施行権は得られない。
第27条
 構想の競技において、主催者が優勝作又は他のどのような案でも、その全部又は一部を用いようとする意図がある場合は、主催者は、可能な限り、その創作者との協力という何らかの形を考慮するものとする。協力の条件は、創作者が受諾しうるものでなければならない。

保険
第28条
 主催者は、競技者の設計図書に対し責任が発生した時から、その責任の継続する間、その設計図書に保険をかけるものとする。この保険の額は、規則に明記するものとする。

著作権及び所有権
第29条
 あらゆる設計図書の創作者は、その作品につき著作権を保持するものとする。創作者の正式同意なしには、いかなる変更も加えることができない。
第30条
 1等賞を授与された設計図書は、主催者が事業計画の実施を創作者に委託した上で、主催者に限り使用することができる。賞金を与えられたと否とを問わず、他のいかなる設計図書も創作者との合意による場合を除き、全部又は一部を主催者が使用することはできない。
第31条
 通常、設計図書に対する主催者の所有権は1回限りの施行にとどまるものとする。もつとも、競技規側は施行の繰り返しを定め、かつその条件を指定することができる。
第32条
 すべての場合において、規則に別段の定めのない限りいかなる設計図書の創作者も、複製権を保有するものとする

審査会
第33条
 審査会は、競技開始の前に設置されるものとする。審査会の委員及び予備委員の氏名は、競技規則に記載されなければならない。
第34条
 通常、審査会の委員は、UIAの承認を得た後に主催者により指名される。UIAは、審査会委員の選出に当たり主催者を援助する。
第35条
 審査会は、異なつた国籍を有する最小限少数の適度な人数により構成され、かついかなる場合でも、その人数は奇数とし、七名を超えないものとする。その大多数は自由な立場の建築家、都市計画者又は、特別な場合、建築家又は都市計画者と連携して作業する他の専門家であるものとする。
第36条
 少なくとも1名の審査会委員は、UIAにより指名されるものとし、このことは、競技規則に明記するものとする。
第37条
 審査会の投票権を有する委員及び投票権を有しない予備委員は、全員審査会の全会合を通じて出席することが不可欠である。
第38条
 投票権を有する審査会委員が最初の会合に欠席した場合、投票権を有しない委員が全審査期間に渡ってその投票権を得るものとする。たとえどんな理由にせよ、投票権を有する審査会委員が短時間欠席しなければならない場合は、投票権を有しない委員がその間その投票権を得るものとし、すべての決定は有効とする。投票権を有する審査会委員が長期間欠席し又は審査の終結前に退出した場合、その投票権は審査の残りの期間投票権を有しない委員が取得するものとする。
第39条
 審査会の各委員は、競技規則及び条件が競技者に渡される前にこれを承認するものとする。
第40条
 競技審査会のいかなる委員も直接又は間接たるとを問わずその競技に参加し、あるいは、直接又は間接たるとを問わず競技目的の実現に関する委託を受けることはできない。
第41条
 主催団体のいかなる職員も、協力者又は専従者を問わず、また競技の準備又は組織に関与するいかなる者も、競技者に対し対抗しあるいは支援する資格がない。
第42条
 審査会の決定は、提出された設計図書の各々につき個別の投票を行い、その多数決で行われる。得票数が同数である場合は、委員長が決定投票する。入賞者名簿は主催者への審査会報告書とともに、審査会の解散前に審査会のすべての委員によって署名される。また、この書類の謄本1通は、UIAに送付される。
第43条
 2段階競技においては、競技の両段階の審査は、同じ審査会が行うものとする。1段階競技としてUIAの承認を得た競技は、当初の競技において定めた賞金に更に加えて、当該競技者に対する報酬の支払いに関する条件及び準備についてUIAの承認を得た場合を除くほかいかなる場合でも第2段階競技を行うことはできない。このような第2段階の競技が行われる場合には、主催者は当初の競技のため指名された審査会を再指名しなければならない。
第44条
 規則に要求されていないすべての図面、写真、模型、あるいはその他の資料は、審査会が競技者の参加作品の審査をする前に審査会により除外される。
第45条
 審査会は、競技の義務的必要条件、通達又は規則に合致しないすべての設計図書を審査対象から除外する。
第46条
 審査会は賞の決定を行わねばならない。その決定は、最終決定であり、UIAと合意した上で競技条件に記載した年月日までに公表される。審査会は、賞の配分の際、競技条件に賞金として確保してある金額を十分活用するものとする。構想の競技においては、1等賞が授与される。
第47条
 審査会の委員の謝礼、旅費及び滞在費は、主催者により支払われるものとする。

参加作品の展示
第48条
 審査会が審査対象外とした作品も含め、すべての設計図書は審査会が署名した報告書とともに、通常、少なくとも2週間展示される。この展示は無料で一般に公開されるものとする。
第49条
 主催者は、登録競技者に対し、しかるべき時に公開展示の日時と場所及び競技の結果を通告し、また審査会報告書を一部送付する。主催者は、UIA及び各国国内支部に対し同様に通報する。入賞した設計図書の写真は、UIAが公表しうるようUIAに送付される。
第50条
 2段階からなる競技においては、第1段階の審査に提出された設計図書は、最終審査の結果が公表されるまでは引きつづき秘密とされなければならない。

設計図書の返還
第51条
 受賞したもの又は売買されたもの及び、主催者により保有されるもの以外のすべての図面及び設計図は、競技規則に別段の規定がない限りは、公開展示が終了し次第破棄されるものとする。創作者が模型を必要とする場合は、公開展示の終了後1か月以内に主催者の経費負担で創作者に返還するものとする。

 以上は、国際連合教育科学文化機関の総会が、パリで開催されて1978年11月28日に閉会を宣言されたその第20回会期において、正当に採択した勧告の真正な本文である。

 以上の証拠として、我々は、署名した。

 総会議長
 ナポレオン・ルブラン
 事務局長
 アマドゥ=マハタール・ムボウ


お問合せ先

国際統括官付