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日本ユネスコ国内委員会

大阪府立北淀高等学校

1 活動実施状況
   本校の国際理解教育は、生徒が自尊感情を回復し、かけがえのない存在である自己を成長させる意欲を育てることを基本としている。さらに、社会に共生するひとりの人間としての自己に気付き、社会における当事者としての自己を育てることをめざしている。
 本校には、さまざまな理由によって学習から「疎外」され、自らの可能性と向かい合う機会を失ってきた生徒も層として存在する。そのような生徒たちが、「自己理解」と「他者理解」の学習を通じて、自己を肯定し、価値ある存在としての自分に自信をもって社会と関わることができるように、さまざまな学習機会を提供してきた。本校では、国際理解教育はその学習機会の重要な一つに位置づけられている。
 上記のような目標を達成するため、他者との交流を通じて学ぶ機会が重要であると考えている。そこで、本校の国際理解教育においては、学校外の団体や個人と連携して学習を進めることを大切にして、学習の計画が立てられる。日本で学ぶ留学生や研修員、特にアジア諸国の人々、また国際協力の場で活躍した人たちなどと出会い、対話や参加型学習を通した交流を通じて、多様な文化・環境の中で生きる人々への共感的理解を深める。このような出会い、ふれあい、関わった人たちに向き合って、自分はどのような存在であるか、自分には何ができるかを考えて、生徒たちは自らの行動へと結び付けていく。このように、学習の過程を重視するところに本校の国際理解教育の特色がある。
 ユネスコ協同学校への加盟(2004年)を契機として、ユネスコ「国際教育」を本校の国際理解教育の柱として再確認し、また、ASPネットワークを通して生徒たちの学習の機会が広がり、学習の動機付けの場をより多く提供できるようになった。『人権』の尊重と『共生』の態度の育成を大切にしてきた本校の歴史と現状をふまえ、異文化への理解を深め、世界的な問題を学ぶ中でさらに人権意識を高め、「新しい自分」「世界の中の自分」を発見できるように学習を進めている。

2 平成17年度実施事業
 
【1】 プロジェクトFC「秋の国際理解学習 Part1」―青年海外協力隊体験者による講演(第2学年)
 
1. 実施期間: 2005年10月3日(事前学習)、6日
2. 実施形態: プロジェクトFC(総合的な学習の時間)
3. 目的・目標
 
1 国際協力の場で活躍する人々との交流を通して、自分と他者とのつながりや、社会で生きる自己の役割や価値について考えさせる。
2 世界の文化や社会事情について学び、世界とつながる自分を自覚させる。
3 多くの発展途上国にある困難、解決すべき問題について学び、自らがそれに積極的にかかわる姿勢を養う。
4 交流の企画や準備を通して、能動的、積極的な態度を身につけさせる。また、本学習を通して、将来の仕事や目標を前向きに考えるように働きかける。
4. 他機関等との連携
  国際協力機構(JICA(ジャイカ))、社団法人青年海外協力協会(JOCA)
5. 概要
 
(1) 対象: 第2学年(7クラス・約250名)
(2) 学習過程と内容
 
1 事前学習: 青年海外協力隊について。協力隊経験者の訪問した国について。
2 「青年海外協力隊帰国隊員(7名)による講演」
音楽、柔道、日本語教師、青少年活動等を指導してきた講師による講演(各クラス1名の講師)。
(3) 成果及び評価
   クラスによって多少の差はあったが、いずれのクラスも2時間の講演を比較的熱心に聞いていた。実体験に基づく話なので、生徒もよく関心を示し、発展途上国の状況や青年海外協力隊の仕事に興味を持った者も多かった。

【2】 プロジェクトFC「秋の国際理解学習 Part2」―留学生との交流(第2学年)
 
1. 実施期間: 2005年10月20日(事前学習)、26日
2. 実施形態: 総合的な学習の時間
3. 目的・目標
  事業【1】と同様
4. 他機関等との連携
  大阪大学留学生センター、大阪国際大学国際交流センター
5. 概要
 
(1) 対象: 第2学年(7クラス・約250名)
(2) 学習過程と内容
 
1 事前学習: 「留学生への質問」を考え、班ごとにまとめる。名刺、ポスターづくり等準備。
2 交流: 1クラス3班にわけ、各班に一人ずつ留学生に入ってもらう。
   
カルタづくり… カードに描いてある絵を見て、留学生の各国言語での言い方を教えてもらい、生徒はその単語を覚える。
カルタ遊び… 作ったカルタを使って遊ぶ。留学生が読み札を各国言語で読み、生徒が取る。
座談会… お互い名刺交換した後、班ごとに考えた「留学生への質問」を順番に聞き、その返答をきっかけに会話をする。「留学生への質問」とその返答は、模造紙にまとめ、班ごとに発表する。
(3) 成果及び評価
 
1年生での留学生、JICA(ジャイカ)研修生との交流や、3週間前の青年海外協力隊経験者による講演がベースとなって、交流に対する「構え」が少なく、無理なく進めることができた。
留学生との交流に関しては、交流相手の留学生の指導力によるところも大きかった。生徒と日常会話が支障なくできる日本語の達者な方をお願いしたが、生徒たちを会話の中でうまく引きつけてくれた。
カルタ取りを通して、生徒も相手の国の言葉に興味を持つことができ、カルタの絵以外にも言葉を教えてもらう場面も多く見られた。
年齢が近いということもあり、共通の話題は多く、生徒にとっては留学生や外国のことが身近に感じられたようだ。生徒の中には、メールアドレスを交換しあい、交流後もメール交換をしたり、一緒に会って話したりした者がいたことも大きな成果である。今後も生徒と交流相手(留学生)双方にとって、プラスになるような方向で続けていきたい。

【3】 プロジェクトFC「体験講座」における『地球生活体験講座』(第1学年)
 
1. 実施期間: 2005年10月3日~12月1日
2. 実施形態: プロジェクトFC(総合的な学習の時間)での全13講座の一つとして実施
3. 目的・目標
 
1 広く世界に興味・関心を持ち、自分とは異なった生活文化があることを知る。
2 参加型学習を通して発展途上国の生活を実感するとともに、自分たちの生活を見直し、世界とつながる自分を自覚する。
3 多くの発展途上国にある困難、解決すべき問題を学び、自らがそれに積極的に関わる姿勢を養う。
4 国際協力の場で活躍される方々との交流や学習を通して、社会における自己の役割、価値について考える。
4. 他機関等との連携
  国際協力機構(JICA(ジャイカ))、社団法人青年海外協力協会(JOCA)
5. 概要
 
(1) 対象: 1学年『地球生活体験』講座選択者(15名)
(2) 学習過程と内容
 
1 体験講座1 「自分たちの生活を見直そう」(1時間)
2 体験講座2 「欲しいもの必要なもの」・JICA(ジャイカ)研修員との交流に向けての準備(2時間)
3 体験講座3 「交流から学ぶ」…JICA(ジャイカ)研修員9名との交流(2時間)
4 体験講座4 「途上国での困難な問題」…青年海外協力隊経験者の講演(1時間)
5 体験講座事後学習: JICA(ジャイカ)研修員の方々へのメッセージ
  実習講座事前学習: 「人と水との関係を知ろう」(1時間)
6 実習講座: 「草の根技術協力の体験」(4時間)
協力隊員が発案し、発展途上国で実際使われている浄水装置やコンロを手作りし、自分たちの生活を見直し、世界とのつながりを考える。
7 実習講座事後学習: 講師への礼状(1時間)
8 FC文化発表会準備(2時間)
9 FC文化発表会(1日)
10 体験・実習講座事後学習:全般の振り返り(1時間)
(3) 成果及び評価
   本講座は少人数・班単位の参加学習型学習であったため、普段の授業では見られない生徒の自主的・積極的な態度をたくさん見ることができた。
 この体験講座を、一連の流れとしてしっかり関連付けて理解し、「将来の職業選択や、社会における自分の役割まで考えられるようになった」という生徒の声は残念ながら聞けなかった。この点における理解は、「いろいろな国がある」「日本では簡単にできることを、手間ひまかけてやらないといけない国もある」ということを、こちらからインプットすることが中心となり、深く考察させたり十分討議させたりすることはできなかった。しかし、生徒の感想を見ると、「意外と楽しかった」「交流できてよかった」「いろいろな体験ができてよかった」といった前向きなものが多かった。実に内容が充実しており、テーマも大きなものであったので、もう少しじっくり時間をかけて、アウトプットまで促すことができたらよかったと思う。
 いろいろな角度から、世界の生活について学び、体験できたことは、生徒にとってはとても新鮮で、かつ良い刺激になったと思う。今後の国際理解へとつながる大事な第一歩となった。

【4】 音楽の授業におけるイタリアオペラ文化交流使節団との交流(第2学年)
 
1. 実施期間: 2005年11月2日(9月~10月の音楽2の授業時に事前学習を行う)
2. 実施形態: 芸術科音楽
3. 目的・目標
 
1 事前学習や交流を通してイタリアの音楽文化について理解を深める。
2 交流準備や交流を通して日本の音楽文化について理解を深める。
3 交流の企画、準備等を通して、能動的、積極的な態度を身につけさせる。
4 音楽を通して交流をはかり、初対面の人や、異文化を背景とする人たちとのコミュニケーションスキルを身につけさせる。
4. 他機関等との連携
  OSAKA IN THE WORLD実行委員会
(イタリア文化交流団・パルマ音楽学院学生・卒業生、チェントロ・ダンツァ・コレッジョ)
5. 概要
 
(1) 対象: 2年生音楽選択者全員 2講座約70名
(2) 学習過程と内容
 
第1次(事前学習)
  1 沖縄の民俗楽器「三線」の制作(キットでの制作)、演奏の練習。日本の歌の練習。
2 イタリア民謡やイタリアオペラについて学習し、鑑賞する。
3 交流準備 歌詞ポスターや名刺の作成など。
第2次(交流)A:2-1,2,3組 B:2-4,7組
  A: 挨拶、班ごとに名刺交換。三線の演奏披露。一緒に三線を体験(喜納昌吉《花》を練習)。
イタリア民謡を歌う《フニクリ・フニクラ》。
B: 挨拶、班ごとに名刺交換。歓迎の歌《さくら》、《島人ぬ宝》(三線つき)披露。
班対抗歌合戦(班ごとにイタリア語(日本語)の歌を教えてもらい(教え)、発表する。)
イタリア民謡を歌う《サンタ・ルチア》。
(3) 成果及び評価
 
当日、オペラ歌手の方々が体調不良で来校されず、学生のダンサーの方々が中心の交流となった。事前学習ではオペラや民謡を学習し、歌を中心にした交流内容で企画していたので、事前学習と実際の交流の間にズレが生じてしまった。それにもかからず、イタリア文化交流団の方々も生徒たちも臨機応変に対応し、交流を楽しむことができた。
来られたダンサーの方々は、ほとんど本校の生徒と同じ年齢であり、生徒たちは非常に親しみをもち、積極的に話しかけることができた。
イタリアの音楽文化は普段身近に感じられず、授業では取り上げにくいが、この交流を通してオペラやイタリア民謡について扱い、より多様な音楽を学習するきっかけとなった。
1,2年の総合的な学習の時間での交流経験がベースにあったので、生徒が自発的に準備に関わり当日も積極的に交流しようとすることができたと思う。
交流は、年齢の近いこともあって、比較的個人対個人の交流ができていたと思われる。また、イタリア民謡を歌う際、「サンタ・ルチア」「フニクリ・フニクラ」等、日本でよく知られている民謡の多くがナポリ地方の民謡であることをイタリア文化交流団の団長が説明される場面があった。交流を通してイタリアイコールスパゲッティ、ナポリターナといったイタリアに対する紋切り型のイメージが少し変化したことが、生徒の感想に見られる。
イタリア文化交流団の方々が明るく和やかな雰囲気をつくってくださったので、交流は盛り上がり多くの生徒が満足感を得られたようだ。

【5】 来校留学生との交流行事(主催:ユネスコクラブ)
 
1. 実施期間: 2005年7月~10月26日
2. 実施形態: 課外活動
3. 目的・目標
 
1 日本で学ぶ留学生に伝統文化を披露し、日本文化及び本校の学校文化を紹介する。また、留学生との交流を通して、異文化への共感的な理解を深め、生徒の社会参加意欲を高める。
2 生徒の主体的活動を喚起し、彼らが自己への自信を深め、参加・達成感が実感できる体験とする。
4. 他機関等との連携
  大阪大学留学生センター、大阪国際大学国際交流センター
5. 概要
 
(1) 対象: 有志生徒(ユネスコクラブ、生徒会執行部、および一部のクラブ部員など)
(2) 学習過程と内容
 
1 交流行事の企画
   2年生FC(総合学習)での交流のため来校する留学生を歓迎する行事を企画する。昨年度も上記2大学の留学生との交流を行ったが、今年は交流のレベルを少し高めることを目標に、生徒が主体となって歓迎イベントを実施することにした。ユネスコクラブが広く2年生に呼びかけ、何名かの生徒が有志参加するようになり、当日の放課後に歓迎セレモニーを実施することを企画した。
2 歓迎セレモニーの準備
   当日のプログラム作り、クラブ部員への参加の依頼、また掲示物作成や、全生徒への参加呼びかけを行った。
3 歓迎セレモニーの実施
   本校生徒の活動を披露することで、歓迎の意を表するとともに日本文化を紹介した。
 
  (1)挨拶・紹介(学校長)・歓迎の言葉(生徒)(2)柔道演技(柔道部)(3)太鼓演奏(和太鼓部)(4)留学生による太鼓演奏体験(5)お別れの言葉(留学生・生徒代表)
(3) 成果及び評価
 
生徒たちは自分たちが中心となって行う行事であることを自覚し、準備や練習にそれぞれよく励み、歓迎の気持ちを十分に伝えられる行事となった。
参加してくれた留学生達にも満足してもらえる行事となったようだ。彼らから後日、「北淀は行く価値がある」との感想をもらった。
今回の企画、準備も含めた一連の活動を通して、自主活動に参加しようとする生徒の態度が見られた。また、活動に参加することで連帯感も深まり、この活動後にユネスコクラブに入部した生徒も数名おり、彼らはその後の文化発表会や、校内での寺子屋キャンペーンにも意欲的に取り組んだ。
今回の行事に直接関わった生徒は少数であるが、彼らは「自分たちが作った」という達成感を確実に感じている。

【6】 障害を持つ生徒との交流活動(ボランティア部等)
 
1. 実施期間: 毎週月曜日・水曜日・金曜日放課後・休業期間中(ボランティア部)
各学期に数回(総合学習・体育・美術)
9月(体育祭)
2. 実施形態: 課外活動、授業
3. 目的・目標
 
1 違うことも個性としてお互いの立場を尊重し、共に学んでいくことのできる学校づくり
2 障害のある者もない者も、地域で共に生きていくことのできる社会の構築
4. 他機関等との連携
  大阪市立思斉養護学校、地域の障害者作業所
5. 概要
 
(1) 対象: ボランティア部員、1年FCの体験講座の一つ『福祉』選択者、3年体育・2年美術受講者、その他全校生
(2) 学習過程と内容
   本校と知的障害を持つ生徒との交流は、大阪市立思斉養護学校との学校間交流を軸に組み立てられている。日常的な交流活動を部活動が担い、カリキュラム内の授業における交流と相互学習を両校で工夫し、両校の交流が全体に見える形として体育祭等の行事を位置づけている。活動形態の違いはあるが、それぞれ、同じ空間を共有することからスタートし、共に生きる社会を構成していくことをねらったものである。
(3) 成果及び評価
   交流に取り組んで4年になり、部活動・授業・行事というシステムで活動が整理され、共に活動していく中で、お互いに学び合っていこうという理解が進んだ。力で物事を解決しようとせず、「違いを大切にする」ことで、共に認め合い、支え合うという本校の教育理念がさらに鮮明となり、目に見える形で教育活動が行われているという感触を持っている。

3 諸課題・今後の展望
   「総合的な学習の時間」(本校では『プロジェクトFC』の名称で実施している)のプログラムのひとつとして国際理解教育を実施して4年になるが、これが本校での国際理解の取り組みの中心となる部分であり、これをより充実・発展させることが大きな課題である。この形態での実施は本校においてかなり定着してきたように思われるが、具体的な内容の企画・準備・実施や外部団体との連携等にはかなりの労力が必要である。プロジェクトFCの実施にあたっては、FC委員会(各学年の教員団より選出)が中心となるが、その中の国際理解のプログラムについては、ASP事務局(6~7名の選出及び有志教員で構成)がサポートする形となりつつある。来年度以降、取り組みに関わる資料や外部団体との連携体制についてはASP事務局が取りまとめ、具体的なプログラムについても、FC委員会にできるだけ多くのものを提案できるような体制作りをする。ASP事務局で検証を重ねていくことで、より能率よく、より充実したものを作ることができ、国際理解学習を継続的発展的に実施していくことにもつながるのではないかと考えている。
 ユネスコ協同学校への加盟と同時に、本校ではユネスコクラブを同好会として立ち上げ、来年度からは部として活動していく。プロジェクトFCの国際理解学習を通してこの分野に特に興味を持った生徒を中心に活動を始めたが、現在は校内での『寺子屋運動』のキャンペーンに継続的に取り組み、文化発表会では世界遺産の研究成果などを発表した。また、事業【5】で報告したような交流活動の中心となって活躍し、今後もFCでの学習をさらに一歩進めて何かの行動につなげて行きたいという生徒を中心に、ユネスコクラブとしての活動の幅を広げ、意欲ある生徒の学びの場、また、本校の交流活動の中心的な存在としていきたい。また将来的には、ボランティア部との協働で、「共に生きる」社会を形成する一員としての自覚を高め、全校的な活動を提案できればと考えている。
 本校生徒が海外において国際交流をする機会を作るにはかなり困難な状況があるが、Web会議システムを使うことで、直接顔の見える交流を行い、授業、部活動等多様な場面で国際交流を実施できることを期待して、今年度、「Web会議システムを活用したユネスコ協同学校ネットワーク推進事業」計画を校内で進めた。この事業を実施するため、情報担当者の協力のもと、現在準備をすすめているが、技術的な問題、交流相手校の問題等、実施までには解決すべき問題は多々ある。しかし、次年度も継続してこの計画に取り組み、何らかの形で実現できるようにしていきたい。