第2回持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会 議事録

日時

平成28年11月24日(木曜日)14時00分~16時00分

場所

文部科学省 3階 3F3特別会議室

出席者(敬称略)

[委員]
濵口道成(委員長)、秋永名美、萱島信子、北村友人、黒田一雄、古賀信行、佐藤禎一、杉村美紀、角南篤、武内和彦、吉見俊哉

[オブザーバー]
猪口邦子、今みどり、西園寺裕夫、重政子、髙尾初江、那谷屋正義、横山恵里子

[事務局]
樋口大臣政務官、森本国際統括官、福田国際戦略企画官、その他関係官

議事

持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会(第2回)


平成28年11月24日


【濵口委員長】  お時間になりましたので、第2回持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会を開始させていただきます。本日は御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございます。また、あいにくの天気の中、どうもありがとうございます。定刻となりましたので、まず、定足数の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。本日は出席の委員が11名で、委員の過半数9名以上ですので、定足数を満たしています。

【濵口委員長】  ありがとうございました。
それでは、ただいまから第2回持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会を開催します。御発言は、議事録としてそのままホームページで公開されますので、御承知おきをお願いいたします。
本日は、樋口政務官に御臨席いただいておりますので、初めに御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【樋口大臣政務官】  皆様、こんにちは。今日は、11月観測史上初めてという積雪の中でお集まりいただいておりますことに、感謝を申し上げたいと思います。SDGsにつきましては、17の目標、169のターゲットからなる国際的な、合意形成された開発目標であると同時に、私ども日本が国連の中でずっと訴えてきました人間の安全保障、すなわち、国家の安全だけでなく、恐怖と欠乏から個人を守ることで平和を築いていくという理念を実現するものだと認識しております。
本分科会におかれましては、皆様方、日本ユネスコ国内委員会として、教育、科学、そして文化などのユネスコを通じた貢献が期待される分野について、様々な委員の先生方から、今日も幅広く忌憚のない御意見を頂戴したいと思っておりますので、どうぞ最後までよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。

【濵口委員長】  どうもありがとうございます。(拍手)
それでは、続きまして、事務局から、配布資料の確認をお願いいたします。

【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。配布資料でございます。資料の1から7、そして参考資料として1から4、そして、番号は特に振っておりませんけれども、前回の分科会で配布いたしました、SDGsについてというもの、それから、本分科会の委員名簿を配布させていただいております。大部にわたりますので、逐一確認はいたしませんけれども、過不足等ございましたら、事務局の方にお申し付けいただければと思っております。
なお、資料1の、前回の議事録でございますけれども、こちらにつきましては、各委員の御確認を既にいただいておりますので、本日、配布させていただいております。
以上でございます。

【濵口委員長】  ありがとうございます。
それでは、早速、議題の1に入ります。まず、事務局から、SDGsに関する国内外の取組について、説明をお願いいたします。

【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。それでは、SDGsに関する国内外の取組ということで、この配布資料に基づきまして、説明をさせていただきます。
まず、前回の分科会で、なかなかこのSDGsに関する全容、そして、これからどのように進んでいくのかというのが見えてきていないという御指摘を多々頂いたところでございますが、そのあたりに関する状況が、少しずつ進展しているということを御説明させていただければと思います。
まず、資料の2-1及び2-2を御覧いただきたいと思います。資料の2でございますけれども、持続可能な開発目標推進円卓会議というものが、政府の方で設置されております。ここには、各省庁、それから、関係委員の方々にお集まりいただいて、日本政府として、SDGsをどのように進めていくのかということに関する指針を取りまとめていくということで、検討が進んでいるものでございます。
なお、この円卓会議の設置要綱及び構成員の名簿につきましては、参考の2として配布させていただいております。内容につきましては、細部にわたっては説明いたしませんけれども、1点だけ取り上げさせていただければ、この2-1の中で、4ページをお開きいただきたいと思います。その中で、5つのPに関する記述が出ているかと思います。SDGsは、17の目標、169のターゲットということで、非常に細分化されているわけでございますけれども、日本政府としては、こういった8つの柱に沿って取組を進めていくと良いのではないかということで、提示されているということでございます。
次のページ以降にわたりまして、主要な原則ですとか、体制づくり、ステークホルダーとの連携、また、広報、啓発などについて記載されております。これに基づいて、文部科学省を含め各省庁でどのような取組を進めていくかということに関しましては、資料の2-2の方で、具体的な施策として、今現在の案がまとめられております。
なお、この内容につきましては、まだ調整中でございますので、今後、変更の可能性があることにつき、御承知おきいただければと思っております。
これが日本政府の取組ということで、資料の2に関する御説明でございます。
引き続きまして、資料の3を御覧いただきたいと思います。資料の3は、ユネスコにおけるSDGsに関する取組でございます。ユネスコの取組につきまして、前回の分科会でも、ユネスコとしていくつかのSDGsのゴールに取り組んでいく方向になっているというようなことを御説明差し上げましたけれども、ただ、まだ具体的な状況というのが、あまりわからないという状況であったかと思います。そのことにつきまして、本年10月にユネスコ執行委員会がパリで開催されましたけれども、その中で、ユネスコとしてSDGsにどう取り組んでいくのかということにつきまして、文書の形で、一定の整理が示されているというものでございます。
まず、この1ページの中の四角囲みのところにございますけれども、ここにある、9つのゴールに、特に中心的に取り組んでいくということで、ゴール4の教育、それから、ジェンダー、水、イノベーション、あるいは都市。この中には文化に関するものも含まれるということでございますけれども。それから、気候変動、海洋、生物多様性、平和な社会といったようなものが取り上げられているというものでございます。ただし、このページにも書いておりますけれども、このリストは現時点のものであり、今後、状況の変化等に応じて変更があり得るということでございます。
次に、駆け足で恐縮でございますが、2ページ目、1枚めくっていただいて、横書きのマップをご覧いただきたいと思います。御承知のとおり、ユネスコというのは、セクターがいくつかに分かれております。教育ですとか、科学、あるいは文化、コミュニケーションといった、セクター別に分かれているわけでございますが、セクターごとに、SDGsの17の目標にどう貢献するのかということに関する、ある種のマトリックスが記載されているというものでございます。
もちろん、これだけではまだ、それぞれのユネスコの取組が、どう具体的に関連があるのかというのが分からないというところがございますので、この次の紙、A3の紙を折った形でひとまとめにしているものがございますけれども、こちらに、主だった目標に関して、ユネスコの役割及びいろいろなユネスコの取組がございまして、それらがどういった形で今後貢献していくかということに関するやや詳細な記載がなされています。こういった内容に沿って、ユネスコとしては、これまで進めてきた取組をこのSDGsの推進というところに収れんしていくようにしたいということでございます。
執行委員会におきましては、概ねこういった方向性は好ましいではないかということで、日本を含む各国の賛同というのは得られたと。そして、これをさらに具体化していき、また今後の事業ですとか、予算ですとか、そういったことに反映されていくというようなことで、引き続き検討が進められていくということでございます。
次に、最後でございますけれども、この分科会として、どういったことを議論としてまとめていくべきかということについて、1つの参考として、たたき台のようなものを作成させていただきました。資料4、5、6の、先生方のプレゼンテーションの後、資料の7がございます。資料の7に、特別分科会としての考え方を記させていただいたところでございます。もちろん、これは、あくまで私ども事務局としてのたたき台でございますので、また御議論いただければというように思っているところでございますけれども、簡単に中身について御説明させていただければ、まず、冒頭申し上げた、こういった政府における取組というものは、基本的には評価出来るのではないか。また、重要ではないか。他方で、その中で、ロールモデルとなるように、このユネスコ活動であるとかのフォローアップをしっかりとやっていくことが必要であるということ。また、ユネスコの、他の国際機関にない特質として、昨今の地球規模の環境問題ですとか、あるいは移民・難民の増大、その他のいろいろな問題がある中で、このユネスコ憲章において、平和のとりで、こういったことをうたう国際機関として、多様性を包含する社会的包摂に配慮しつつ、しなやかなレジリエンスの機能を備えた、自助・共助に基づく持続可能な共生の考え方を、様々な対話を通じて世界に誇示し、推し進めていくことが重要であると。例えば、こういった考え方というのがあり得るのではないかということでございます。
次に、2枚目でございますけれども、ユネスコにおいて、一番コアになる事業として、まず出てくるのが教育でございますけれども、ゴール4の教育にユネスコが取り組んでいくのは、当然重要であるわけでございますけれども、単に、ゴール4の実現を目指すだけではなくて、他のゴールへの波及効果、人材の育成ですとか、あるいは課題・対応策に関する普及・啓発等の役割を果たすという観点から、総合的な取組が必要であるということ。そして、それに関連して、前回も御議論いただきましたけれども、ESDに関しても、新たな取組として、SDGsについて知り、そして、課題あるいはその解決に向けて、自ら行動出来るような知識、態度、技能を身に付けていく、そういったことを学校教育のみならず、様々な形で奨励していくということが重要ではないか。そして、当然、それ以外の様々な教育に関する取組、これも同様に重要ではないかというようなこと。そして、このページの一番下に書かせていただきましたけれども、前回も御議論ございましたけれども、この普及啓発に取り組む際に、単に、SDGsという字面について取り上げるだけではなくて、3枚目にわたりますけれども、それぞれの人々、あらゆる人々の日常的な生活行動、あるいは、お仕事だとか、そういったことがいろいろな形でSDGsにインパクトを与えていると、あるいは、解決に貢献しているという認識を持ってもらえるような工夫が必要ではないかというようなことを記載させていただいております。
次に、科学でございますけれども、これは、政府の方の指針案におきましても、例えば感染症ですとか、海洋、環境エネルギー、こういった分野での取組というものなどが記載されているところでございます。科学分野は、ゴール9のイノベーションというのが、最も直結すると考えられますけれども、それ以外にも、様々なゴールに貢献し得ると。ただし、科学の場合の特質として、それぞれが非常に多様で広範な要素を含むというようなこともございますし、また、ユネスコだけが取り組むべき機関ということではなくて、他にも様々な関連する国際機関というものの取組があると。ここが、教育と異なる側面ではないかと。したがって、そういった関係する国際機関や研究機関とも連携を図った上で、取組を進めていくべきではないかということ。
合わせて、特にSDGsの達成において、アフリカというのが1つのキーになるかと思われますけれども、日本といたしましても、本年、TICAD VIがナイロビで開催されたところであり、そこでもこのイノベーションの重要性がうたわれていると。ユネスコにおきましても、先ほど御説明した、教育や科学といったセクター、それを縦軸としますと、横軸として、どのようなセクターにおいても、アフリカ支援とジェンダーというものが重要であるという、そういう横軸としての扱いというのを、アフリカは、ユネスコの中で占めているというところがございます。したがって、我が国の取組と、ユネスコの取組の連携というものも考えられるのではないか。また、科学分野においては、学際的な取組が奨励されるような連携を進めていく。あるいは、自然科学と人文・社会科学との融合も重要ではないかということについても触れさせていただいております。
最後、4ページでございます。文化については、前回も議論の中で、あまりSDGsの中で、位置付けがしっかりとされていないのではないかというような御指摘を頂いたところでございます。この点は、既にSDGsと個々の目標自体がもうセットされているものではございますけれども、ただ、その個々の目標というのは別にしても、文化というのは、例えば様々な文明間の対話を進める、そういった上でも重要な要素であると。そして、冒頭、ユネスコの特質としても申し上げました、相互理解、あるいは社会的な包摂、こういったものに最もつながっていくのが文化ではないかと。そういった観点から、SDGsの達成に貢献出来るのだというようなことを、文化における主導機関としてのユネスコが、さらに取り組んでいくように働きかけていくべきではないかということで、記載させていただいているというところでございます。
以上が、このメインの資料における、それぞれの取組、また、この分科会としての、当面の考え方に関するたたき台ということでございます。
最後に、参考資料について一言御説明させていただきます。前回、御議論の中で、このESDに関して、国内実施計画というものがまとめられていると。この旨を是非紹介すべきではないかということで、参考の1として配布させていただいております。詳細は割愛させていただきますけれども、こちらも文部科学省だけの取組ではございませんで、関係省庁連絡会議ということで、様々な省庁がそれぞれの立場からESDを進めていくというようなことが、この中でまとめられているということでございます。
それから、最後に、参考の4、この冊子になっておりますけれども、を、お開きいただければと思います。英語の資料で大変恐縮ではあるのですけれども、これは先日も若干報道がございましたけれども、各国のSDGsにおける取組に関して、ランキングを作ったというものでございます。具体的には、この中で、ちょっと英語の資料でページがないので大変恐縮ではあるのですけれども、しばらくいったところで、このTable 1ということで、SDGsのIndexという表がございます。その中で日本は18位と記載されております。これは、表紙のところにございますけれども、ベルツマン財団という、政府機関とは異なる組織が取りまとめたものでございますので、政府としての各国のお墨付きを得たものではございませんけれども、SDGsに関する達成状況というのをフォローしていこうという、様々な取組がなされているということの一例として、本日配布させていただいているものでございます。
雑駁ではございますが、資料については以上でございます。

【濵口委員長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について、御質問等ありましたらお願いいたします。SDGsの17ゴールを見ていると、意外と主観的には日本は高いのではないかと。もう解決した問題が並んでいるのではないかと思いがちでありますが、実は、OECD各国の中では、真ん中ぐらい。決して褒められた状況ではないということが、このIndexで見えるかと思うのですね。もう1回、よく洗って、本当に国内問題をしっかり議論しながら、どこに日本は今、問題点、課題があるかを議論しながら、国際的な連携を考えていくということが必要だと思います。今日は、お三人の方にいろいろ発表していただけるので、大分、そこの議論が深まるかと期待しております。いかがでしょうか。福田さんの説明に、何か御意見等ございますか。よろしいでしょうか。
最初の方の、あれにも出ていましたですね。資料2-1のところの2ページ目、見ていただくと、現状の評価で、日本が、課題がある部分として、下から、これは8行目ぐらいですけれども。2ページ目の。貧困、ジェンダー、エネルギー、気候変動、海洋資源、陸上資源、実施手段、この辺が問題だというふうになっています。特に今、ジェンダー問題は、かなり低いですね。これは。世界でも最下層になっています。
はい、どうぞ。

【猪口国内委員会委員】  どうもありがとうございます。福田さんの説明を伺いまして、また、このIndexを拝見しまして、でも18位でちゃんと推移しているという感じではありますけれども。他方で、このIndexの構成要素ですね。もちろん、SDGsのみんな内容が入っているということは分かるのですけれども、これを算出する数値でスコアが出てきていますので、根拠があるでしょうと思うので。方程式ではなくて、是非、口頭で、こういう要素が主たるものであって、我が国が5位以内に入っていない理由ですね。それは、こういうことによるであろうという推測も含めて、お話しいただければ有り難いと思います。
それから、もう1つ、ついでになのですけれども、11月の第3木曜日というのは、我が国ではボージョレ・ヌーボーの解禁日として有名なのですけれども。これは、この間、髙尾委員と一緒に活動したのですが、ユネスコ世界哲学の日というものでありまして、国連活動に哲学というものがあって、記念日も決まっていて、そしてユネスコ世界哲学の日ということ。そういう会議体も、余り国内ではほかに見当たらなかったのですけれども、今後は、全ての政策の背後には、それを先導するものとして、理念があって、哲学があって、そこをきちっと踏まえると、きっとこの10年も、少し改善されるのではないかと。政策課題をたくさん思い付くことは可能なのですけれども、そこの定理をきちっと作っている哲学の流れ、考え方、方向性、ここを間違うと、個々の政策で頑張っても、いまひとつ、努力不足ということになりかねないので。このことを、もう少し、ユネスコとして、広く広めてもらってもいいのではないかなと。哲学をするということを、この段階でしっかり考えていただいたらいいかなと。その会合には、福田さんが、とてもすばらしい貢献をされましたので、ちょっとあえて、今ここで取り上げさせていただきました。

【濵口委員長】  ありがとうございます。御指摘いただきまして。検討させていただくと。よろしいでしょうか。18位の根拠。よろしくお願いします。

【福田国際戦略企画官】  ごく簡単に。すみません。この参考の4で、ページを振っていなくて大変失礼いたしましたけれども、後ろの方のTable 3のところで、このIndex、どういう根拠に基づいて算出したかというものが記載がされております。要は、この財団において、いくつか主要な指標をピックアップして、それに基づいてこのスコアをたたき出したということでございますけれども、1点、実はこの指標というのをどのように扱うかというところは、まだ、かなり議論は続いているという状況がございます。このページの中で、真ん中あたりに、アルファベットで恐縮ですが、IAEG-SDGsという項目があって、黒い丸があったり、白い丸があったりという欄があるかと思います。IAEGというところは、実際に国連の中でどのような指標をSDGsのフォローアップに用いていくかということを議論している専門機関。基本的には、統計の専門家の機関でございます。その中で採用することになっているところに、印が付いていると。その印が付いていないところは、逆にそういった指標ではないというようなことでございまして、実際、どの指標をどう用いていくのか、あるいは用いていかないのかということも、かなり議論が続いているようでございます。このあたりは、それぞれの役所の方でもそれぞれの立場がございまして、こういった指標はこう使うべきではないのだとかいうような議論もあるということでございまして、そのあたりも含めた分析は、また検討させていただきたいと思っております。

【濵口委員長】  ありがとうございました。

【猪口国内委員会委員】  ちょっと追加の質問でいいですか。

【濵口委員長】  どうぞ。

【猪口国内委員会委員】  であれば、我が国として、この指標の選び方。ぱっと見たところ、非常に適切な選び方がされていると思いました。こういう指標の選び方について、日本の立場がより強く反映されるような、そういうインプットもなすべきだと思うのですね。これ、民間機関であったとしても。ですから、今後、やはりルールメーキングとか、基準メーキングにですね。日本が高く評価されたいというのではなくて、日本が達成した文明社会の姿、これが正当に理解されて、また参考になることも必要だと思うのですね。私の直感では、ジェンダークオリティが全然低くて、これが足を引っ張っているに違いないと。だけど、わが国は、この全ての国の中で一番長生きを、男女ともにするという、本当に洋の東西問わず、人類見果てぬ夢をある程度実現しているわけだから、それが可能になっているいろいろなシステムの基準というのもあるかもしれないので、そういうことについて、世界に発信出来れば、彼らもまたそれを達成するきっかけを得るだろうと思うので、今後は、是非、このユネスコをハンドルしている日本の政府機関が、このような民間機関にも働きかけて、我が国の経験というものをインプットしていってもらいたいと思いますので、是非、どうかしてよろしくお願いします。
また、政務官がいらっしゃいますので、是非よろしくお願いします。

【樋口大臣政務官】  ありがとうございました。

【濵口委員長】  では、もう1人。黒田さん。

【黒田委員】  申し訳ありません。ありがとうございます。まさに、指標を設定するところに、日本がどう貢献していけるかというところが、非常に重要だと私も思っております。特に、教育の指標のゴール4の中で、幾つもあるわけですけれども、特に4.7と言われている、ESDであったり、グローバル・シチズンシップについては、今、ユネスコは暫定的な手法を置いていますけれども、まだまだこれから議論が必要なところで、そこに対して、やはり日本もESDを推進した国として貢献していくということが重要なのではないかと、私も思います。

【濵口委員長】  ありがとうございます。
それでは、ほかに御質問ないようでしたら、これからプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
まず、SDGsをめぐる国内外の状況について、教育分野からは杉村委員、科学技術分野からは角南委員、武内委員にプレゼンテーションをお願いしております。まず初めに、杉村委員から発表をお願いいたします。

【杉村委員】  それでは、大変僭越ではございますが、教育分野について、今日御指名いただきましたので、先輩の先生方、また、教育の専門家もたくさんおられる中で、大変厚かましゅうございますが、ただいまから発表させていただきます。
私は、上智大学で現在、学術交流担当の副学長職を務めております。また、総合人間科学部の教育学科で比較教育学、国際教育学というのを担当しております杉村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、ちょっと座って失礼いたします。
本日は、ただいま詳細に冒頭、御説明いただきましたとおり、このSDGsの中で、特に1つの要と言っていただいている教育分野についての、現状、どんなポイントがあるかというところを、管見の限りでございますが、発表させていただきます。
まず、もう既に先ほど、資料7で、たたき台の中にも出てきたのですけれども、このSDGsに至る教育分野の目標ということで、やはり最初に私どもが立ち返って常に考えるべきだと思われるのは、ユネスコ憲章の前文にあります、戦争は人の心の中で生まれるものであり、心の中に平和のとりでを築かなければならないという、高らかな前文、そこから発する様々な取組であるかと思います。ここ20年ぐらいの直近の取組では、いわゆる教育開発の分野で、万人のための教育、ダカール・フレームワーク、ミレニアム開発目標といった中で、教育分野、特に基礎教育の重要性や、先ほどからも出ておりますジェンダーを中心とする女子教育への支援等々の目標が、幾つも設定されてきました。
そして、目標達成の年とされていた、昨年2015年に、韓国のソウルで開かれましたインチョン宣言におきましては、国際機関も集まりまして、検証を行ったわけですけれども、このインチョン宣言の中で、やはりまだまだ達成できていない目標があるということが指摘され、同時に、今、この画面にありますとおり、Towards inclusive and equitable quality education and lifelong learning for allと言って、inclusion、包括性のある、しかもequity、包摂性のある、質の高い教育を、生涯にわたってきちっと確保していかなくてはいけないということが、教育に関しては特に重視されました。そのことが、合わせてSDGsのこの目標の中にある包括性であるとか、あるいは公正性であるといったことにも反映されましたし、これも、たびたび、もう昨年から繰り返されていることですが、誰1人として取り残すことなく、個人にも焦点を当てたSustainable Development Goalsを、特に「ターゲット4:教育」の中で実現していくということが、このEducation 2030、2030年までの目標としてうたわれております。
このことは、先ほどの資料7の方とも合わせて見ていただければよろしいかと思うのですが、今日、もう1つお配りいただいている資料2-2に、現在の日本の具体的施策として、ターゲット4にどんなものがあるかということがあり、私の方で、ピックアップしてまいりました。まだ一部検討中のところもあるということですが、幼児教育の充実から始まり、初等・中等教育の充実、子供の貧困対策、高等教育の充実、それから、少し目を広く見据えて、キャリア教育・職業教育の充実、障がい者の職業訓練、特別なニーズに対応した教育の推進や男女共同参画を推進する教育・学習の機会の提供。それから、国際的な面では、外国人留学生の受け入れ、ESD・環境教育の推進、平和と成長のための学びの戦略、さらに、官民協働プラットフォームを活用した日本型教育の海外展開といったあたりが、これもお手元に先ほどあります資料2の、現在の具体的施策の中に盛り込まれております。
これを見て考えますところは、就学前教育から生涯教育に至るまで、このSDGsで扱う教育というのは、決して学校教育だけではなくて、フォーマル教育、あるいはノンフォーマル教育と呼ばれる分野にもわたっていることが分かりますし、日本の施策として、そうした幅広い視野で展開していく必要があるということを痛感した次第です。
本来でしたら、就学前から全て、今日網羅させていただくべきなのですが、私が少しだけ存じ上げている範囲で、ただいまから、初等・中等教育の部分と、ESD、それから高等教育の部分に分けてお話しし、さらに、今現在、注目されているジェンダーとともに、インクルーシブ教育という部分をお話ししていきたいと思います。
まず、このSDGsとグローバル・シチズンシップ教育という観点ですが、先ほど黒田先生の方からもご発言がありましたとおり、ゴール4.7の中に、グローバル・シチズンシップ教育というのがうたわれており、それをもっと推進していくべきだという考え方がございます。子供たちが参加型民主主義を理解・実践するために必要な知識・スキル・価値観を身に付け、行動的な市民となること。これだけが定義ではないのですけれども、1つこれを例に取りますと、こういったことが出てきた背景には、もともと教育は各国政府にとって大変大きな国家戦略の柱でもあり、いわゆる国民教育、公教育と呼ばれる部分が、国家の人材の育成の根本になってきたわけですが、昨今のように、人の国際移動が活発化し、国籍を持っていない人たちの教育、例えば、日本においても、外国につながる子供たちと呼ばれるような、外国人の子弟の教育などを含めてまいりますと、国民教育という言葉だけではなくて、こうしたグローバル・シチズンをどう考えるかという観点がでてまいります。
あるいは、日本の子供たちも、将来にわたって、日本で仕事をするだけではなくて、いろいろな国を渡り歩きながら、あるいは多国籍企業で仕事をするようになってきたときに、実践課題、3つのキーワードにあるようなリテラシーといったものが、やはり求められてくるのかなと考えます。
こうしたことが、グローバル・シチズンシップ教育という言葉で、インチョン宣言の中でもうたわれていますし、また、国連のSDGs、目標の中にも、GCEDという標語で出てまいりますけれども、これらを支える理念的な部分として、今日、教育学が議論していることの1つとして、グローバル・コンピテンシーとか、あるいは21世紀型スキルといったものがございます。この中身についても非常に精査が必要な部分で、何をもって21世紀型スキルと呼ぶのかということはありますが、しかしながら、これまでの知識偏重型の教育から、創造力とイノベーションであるとか、あるいはクリティカル・シンキングと言った、批判的思考や、問題解決、意思決定ができるような、どちらかと言うと、メタ認知や、あるいはリテラシーを付けていくような、応用性の効く力というのをどういうふうに付けるかといったあたりが、今、議論されています。これについては、現在、検討が進んでいると伺っております日本の学習指導要領の中でも、今後また、改定の中に反映されたり、あるいは考慮をいただいている部分ではないかと、ちょっと私もそこの部分の詳細は存じ上げませんけれども、拝察するところでございます。合わせて、人生のキャリア設計であるとか、あるいは、個人、地域、国際社会、その中での市民性。これはまさに、先ほどのグローバル・シチズンシップ教育ですけれども、こういった観点が、学校教育においては非常に大事になってくるということが、教育学の中では議論されています。
こうしたことを、全くこれまでしていなかったかと言うと、それはそうではなくて、日本が率先して推進してきた、このESDの実践の中でも、既にこれまで様々な形で取り上げられてきました。国連ESDの10年における日本のESDの特徴としては、個々人が地球的視野で考え、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み、いわゆるThink globally, Act locallyと言われるような、持続可能な社会づくりの担い手を推進するということが高らかにうたわれているわけですけれども、学校教育のみならず、社会教育や、あるいは地域における取組、それから、昨今では企業のCSRなども、この部門に特に注目されていて、環境問題と結び付いたような形での取組というものも行われています。折しも、2011年の東日本大震災の後に起きた様々な社会変革に対応するようなESDという点においても、日本では幾つもの実践が積み重ねられていて、国際的な枠組み構築への貢献という意味では成果を上げてきたと思います。
たまたま、先日、ユネスコの方がESDの日本での取組について視察された際の会議に、大変、光栄なことに参加させていただく機会がありまして、実際にESDに取り組んでおられる地域の、公共団体の方や、あるいは大学の有識者の方と席を同じくさせていただきました。そのときにも、ユネスコの方々が、日本のESDが、特に地域の小学校や学校レベルでどんなふうにやってきたかといったことを、随分、熱心に耳を傾けてくださっていたのが印象的でした。今日、ちょっとそのときに配られた、文科省で作成された資料をここにもってまいりましたが、こんなふうにESDの10年のジャパンレポートというのもよくまとまっていて、こういったことを、先ほどの指標作りの中なんかに反映できるような、そのようなことも大きなポイントなのでは、と思います。
次に、このゴール4に関わって、インクルージョンということを是非提案させていただきたいと思います。このESDの、あるいはSDGsの目標4には、全ての人々への包括的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進するという項目があるわけですけれども、先ほども申し上げましたとおり、このSDGsの最大の特徴は、これまでのEFA、全ての人に教育をという目標や、あるいは2000年に定められたMDGs目標が、どちらかと言うと、途上国の教育普及や基礎教育の、あるいは教育の機会均等をできるだけ多くの国に普及するといった視点に立っていたのに対して、このSDGsは完全に、日本のような先進国の、しかしながら、そこで抱えている問題や、そこで置き去りにされがちな子供たちにも目を向ける、個人にも焦点を当てて、1人1人に焦点を当てた国づくりを、あるいは教育づくりをするというところが大きなポイントなのではないかと、これは私の考えなのですけれども、思っております。もうちょっと言い換えますと、こうして多文化社会、あるいは多様性がたくさん問題にされていく中で、多文化共生ということを、どのように実現するかと言ったときに、いわゆる、先ほども申し上げたような、違う文化を持って入ってきた人々、それにはもしかしたら、海外からの外国人だけではなくて、今、画面の下の方にありますとおり、障がい者であるとか、ジェンダー、カースト、少数民族、移民、難民といった、それぞれの社会がいろいろな形で抱えている多様性を、どのように、その1人1人の平等性と、しかも公正に質的に実現するかということが問われているかと思います。
今、ここに出している写真は、今日こちらにもいらっしゃる黒田先生や北村先生と一緒に、この何年間か勉強させていただいてきた「障がいと教育」というテーマのインクルージョン教育に関する調査でネパールに行ったときの写真なのですけれども、例えば、ネパールのある学校では、こうやって、耳の聞こえない生徒さんと健常者の生徒さんが手話で会話をしている場面ですが、まさにインクルーシブ教育で、同じ教室で学んでいます。ネパールというと、まだ教育普及も十分ではない国なのですが、しかしながら、こうした多様性を尊重する考え方が、やはりSDGsとかESDとともに根付いていて、少しずつ始まっているような、そんな場面を見て取ることができます。
次に、インクルージョンとともに、先ほど、たたき台の御提案の中にもありましたけれども、レジリエンスということもキーワードとして挙げたいと思います。これは、いわゆる、日本ですと、震災後の復旧・復興に大きく関わりますけれども、日本以外の国で、例えば紛争後社会の平和構築と教育といったテーマにも通じる部分で、民族の融和であるとか、あるいは社会の持続可能な安定を目指すといったことでは、様々な国が、今、このレジリエンスを意識した教育と、そして人材育成を以下に展開するかということが、大きな課題になっているように思います。このときに、やはり重要な要になるのは、コミュニティの持つ人々の絆であるとか、あるいはネットワーク、これがいかに打たれ強いレジリエンスを演出できるかというところは、教育だけではないですけれども、いろいろな分野での共通の理念であり、あるいは規範となるべきポイントなのではないかと思います。
これらを集約したのが、先ほど冒頭のお話にもありましたけれども、人間の安全保障と言う考え方で、国家を軸とした安全保障だけではなく、市民生活の安心保障や、あるいは個人の安全保障も包括するような、もうちょっと言い換えますと、教育で言えば、人間開発と、人間の尊厳の尊重を最大限に実現できる、そんな社会の構築に寄与できる目標を考えていく必要があるかと思います。
次に、初等・中等教育だけではなく、高等教育の大きな変化についても触れさせていただきたく思います。
SDGsの中で出てくるのは、どうしてもやはり基礎教育の部分が中心にはなりますが、しかしながら、現在、高等教育で起きている国際化の流れ、あるいはトランスナショナル高等教育と呼ばれる部分に目を向けますと、今度は国づくりを、国境を越えて行う様々な新しい教育の取組があることにも注目でき、このことは、いわゆる、教育を1つの国だけで閉じたものとして考えるのではなくて、各国が協力して、あるいは地域で協力して、地域内連携や地域間連携として展開していく、そんなつながりにもなっていくのかなと考えます。
実は、昨今、日本の大学での様々なカリキュラムの取組を見ておりますと、私が所属している上智大学もそうなのですが、これまでの、いわゆる縦割り的な、それぞれの専門領域だけを大事に育てるという研究育成ももちろん大事なのですが、それと同時に、例えば環境問題の取組であれば、学融合型の学びをどのように確立するかとか、あるいは、小中学校が今、たいへん、アクティブラーニング、主体性を育てるという意味で、そういう教育を取り入れていますので、それを大学がどう考えるか、それから、開発教育や環境教育といったものを、産学連携でどう考えるか、さらには、社会人教育やICT等を利用した学びの機会の広がりというものが見られます。
大学の中には、既にインターネットのテレビ授業を海外と展開し始めている授業もございまして、先日も、実は日本学術振興会JSPSのサンフランシスコ研究連絡センターに行った折に、現地に事務所を置いてらっしゃる大学の遠隔授業を拝見する機会がありました。海を越えて、アメリカのカリフォルニア大学の先生が、日本の大学の教養学部の授業に、リアルタイムで授業を配信する。もちろん、時差はありますので、その辺は工夫が必要ですけれども、そんな学びもできる中で、いろいろな取組が今、可能になってきているのかなと思います。
これもまた、黒田先生、北村先生と一緒にさせていただいている研究の一環なのですが、実は今、このアジアを見るだけでも、日本政府が主導して行っておられる、キャンパスアジアと言われるような、中国や韓国との連携の取組であるとか、あるいはASEAN各国が取り組んでいるような大学連合というのがいっぱい出てきていて、これらはバイラテラルで行われる、2国間2大学で行われる連携とは違い、多国間でくみ上げられているプログラムです。
こうしたプログラムをまとめてみますと、日本人学生が留学生とともに学ぶような様々な取組が日本や海外で行われていたり、先ほどから申し上げているとおり、いわゆる教養教育プログラムの充実といったことも、今日、日本のみならず、いろいろな国で問題になっていて、学融合型の人間開発プログラムを通じ、先ほど述べましたグローバル・シチズンシップをどう育てるかといったことを実現できる芽が少しずつ出ているのではないかと思われます。サービス・ラーニングとかボランティアとか、今、大学では様々な取組がありまして、こうした取組は、どちらかと言うと初等・中等教育での取組という見られがちなのですけれども、大学でも今こうした取組があるということを述べさせていただきました。
手前みそなのですが、本学がたまたまSDGsに関連して近年行いました取組が、少しだけおもしろかったものですから、御紹介させていただきます。10月に、上智大学ではいつも国連ウイークと言いまして、国連に関するいろいろな取組を企画してやっているのですが、今回、国連広報センターの御協力を得て、「私が見た、持続可能な開発目標学生フォトコンテスト」というのを実施いたしました。そうしましたところ、50か国から6,000人以上の応募がありまして、その中から今般、日本政府がバックアップしてくださり、表彰がありました。画面左下が優勝したペルーのモンテベルデ・ブスタマンさんという方で、ペルーの海岸で拾った1つのタイヤを写真に収めて、それを押して歩いているボランティアの人の写真が表彰されました。こうした写真展などを通しても、社会とのつながりを持って草の根的に取組を広げていくというのは意義があるのかなと思いました。幸い、国連広報センターで、これを海外に展開される計画を持っておられ、国内外のほかの大学でも、写真展を是非展開したいということで輪が広がりつつあります。
最後になりますが、教育分野からもしあえてキーワードをとおっしゃっていただけるようでしたら、繰り返しになりますが、人間発達と人間の尊厳のための教育というのを挙げたいと思います。国家や社会にとっての教育は、それぞれの社会の経済発展、社会統合になくてはならないものですけれども、個々人にとっての教育へのアクセス、あるいはエンパワーメントというものもとても大きなもので、連携や協働をしながらネットワークを作って、このSDGsが展開できればと思います。
写真に写っている左側にいる緑の服を着た女の子は、ネパールの19歳の女の子です。水頭症と言って、頭が大きくなる病気を抱えていて、ネパール郊外の、小さな自分の家の小さな2階の部屋から1歩も外に出ることができません。しかしながら、私が行ったときに、このお嬢さんが英語で、「あなたはどこから来たのと、名前は何と言いますか」と話しかけてくれて、それがすごく印象的でした。と申しますのは、ネパールですから、当然ネパール語なのですけれども、そのお嬢さんが私に言ったのは、「私はどこにも自分の力では行けなくて、歩けなくて、学校にも行けないけれども、週に1回だけ、こうやって来てくれるボランティアの人から、英語と算数とネパール語を習っています。勉強していてよかった。こうやって、今日、日本から来たあなたと英語で話ができたから。」と言ってくれたときに、本当に、人が生きることと学ぶこととは何なのかを深く考えさせられました。このお嬢さんが社会にインクルージョンされているかどうかは、これには判断はいろいろあると思いますが、私は、十分にこのお嬢さんは社会とつながっていて、学びを通して得た自分の見る目を通じ、どこかにいつか響くかもしれないという希望をもって考えてくれている、そんな場面を経験することができました。私にとっても、教育の原点を見る思いでしたので、今回の発表の最後に厚かましいけれども、入れさせていただきました。こうしたお嬢さんに届くようなSDGsが世界で実現できれば、どんなにかすばらしいかと思います。
大変拙い発表ではございましたが、御清聴ありがとうございました。失礼いたします。(拍手)

【濵口委員長】  どうも、先生、ありがとうございました。御質問、また後でまとめて受け付けることにいたしますので、続きまして、角南先生から発表をお願いしたいと思います。

【角南委員】  政策研究大学院大学の角南でございます。科学技術の観点からということではございますけれども、直接、科学技術とSDGsの関係については、武内先生が多分お話しになるということで、私からは、先ほど冒頭、事務局の方からお話があった、TICAD VIに向けて、我が国としても科学技術というのをもっと使って貢献すべきではないかという話がありましたけれども、そのときに、今回、外務省の方に、岸田外務大臣の下に、科学技術顧問というポストを作っていただいて、その下で、TICAD VIに向けた議論を、特に科学技術をどうやって外交に使っていくのかという観点から、議論をさせていただきました。私どもの方から考えると、TICAD VIに、ああいう形で入っていったということは、非常に有り難いというふうに思っておりまして、今日はその背景について、少しお時間を頂いて説明しようというようなお題だったものですから、ちょっとそれについて簡単にお話をさせていただきたいと思います。
もう、電気をつけていただいていいかもしれません。手元の資料5を使って、簡単に流れを説明させていただきたいと思います。
我が国において、科学技術をもっと国際協力、あるいは我が国の外交に生かすというような議論は、結構前から始まっておりまして、特に、ページをずっとめくっていただいて、後ろから数枚目、ちょっとワードのファイルなものですから、資料が縦になるのですけれども。我が国の科学技術外交の系譜という、簡単な図がございます。平成19年4月24日というところから始まるのですが、総合科学技術会議、内閣府ですね、主導による科学技術外交というところから、公式には政府内で議論されたというのが最初ではないかなと思っております。このときに、総合科学技術会議の議員でありました薬師寺泰蔵先生が主査になられて、この議論を始められたというのが正式なあれだと思っています。今、本学の方にいらしていただいておりまして。
その後、SATREPSとか、いろいろな形の施策につながっていくというようなことになるのですけれども、このときに、やはり我が国の強みである科学技術というものを、もう少し外交に直接関わらせるということによって、もっと国際的な、我が国のプレゼンスというものを高めるだけではなくて、国際的な共通課題に対して、我が国がもっと積極的に貢献出来るのではないかと。そういうことが背景にあったということで、そういうふうにこれから書かれておりまして。
ですから、最初の平成19年のときには、世界のイノベーションへの貢献を目指すということで、世界諸課題に積極的かつ継続的に取り組むことということをうたっておりまして、そこからその後ずっと総合科学技術会議においては、次のメンバー、直接薬師寺先生を引き継いだというわけではないのですが、現在、これも本学の学長をしております白石隆が、総合科学技術会議の議員となったときに、再びこの科学技術外交についての在り方ということで、ワーキングチームを立ち上げております。それで、タスクフォースという形で、そこから議論を進めていまして、この経緯の中で、私もずっとそのワーキンググループに、メンバーとして入っておりまして、その中で感じたことは、内閣府においてこうした議論を詰めていくことは重要なのだということはあるのですけれども、やはり直接、外務省の中で、科学技術の、うまくどうやってこれを活用していくのかというのを、直接議論した方がいいのではないかということを感じておりまして、ちょうど、岸田外務大臣が外務大臣になられたということで、当時、前回のTICADのときは、横浜で一度ホストをしたときは、岸田外務大臣が科学技術担当大臣としてこれを受けたということもあって、直接、岸田外務大臣の下に、この科学技術外交を外務省においてどう推進するのかというようなタスクフォースを設けていただきました。それが結果で、1年ほど前に、我が国に、と言っては多分初めてとなります、科学技術顧問を、外務省、外務大臣の下に置くという経緯を、そこに書かせていただきました。
そもそも科学技術外交って何をするのだということで、非常に多岐にわたる、もちろん、うれしいほど期待も高まったのでございますが、非常にたくさんのことが科学技術外交に関わるということで、どういうふうに、どれから整理をしてやろうかということで、一番最初の資料に、科学技術外交の類型という形でちょっと整理をさせていただきました。
一般的に、科学技術外交と言ったときに、外交の中の科学、科学のための外交、外交のための科学と、3つ、一応、パターンというか類型化をして議論するというのが、我々よくするのでございますが、実際には、非常にこれらが多岐にわたり、多層にわたって関わっておりまして、こんなにきれいに実は整理を出来るわけではございません。
ちょっと余談になるのですけれども、猪口先生がいらっしゃらなくなったので、あれですが。実は、私もこの科学技術外交をきちっと学術的に整理しようと、御主人の猪口孝先生に言われまして、今ちょうどこれをやっているところでございます。なかなか、概念的にきれいには整理が出来ないので、次をめくっていただきますと、済みません。英語で、外で議論しているものですから、なるのですけれども。実際に、我が国における科学技術顧問の役割というか働き方として、大きく2つに整理しようと。最初は、まずは外務省内において、外交を企画立案する際において、科学技術ということの知見をもっと入れていこうということで、これから始めるということを考えております。最初に、科学技術顧問が実際には部屋を頂いて外務省におりますので、誰でも、外務省内の方が、科学技術に関して分からないことがあれば、訪ねてきてくださいというような形と、それから、定期的に、最初に、言い忘れたのですけれども、最初に科学技術顧問として岸東大名誉教授が就任しておりまして、岸先生が、何人か科学技術の専門家の方に声をかけて、例えば、月に1回、省内で勉強会をするというようなこともしております。先日も、WBIの話を、省内で、たくさんの100名近い方がいらして、ブラックホールの謎とかいろいろな話を聞いていかれたということで、外務省の中におけるリテラシー、科学技術リテラシーを高めるということをやる。それから、在外公館にscience attacheということで、科学技術を担当する方々がおりますので、こうした在外公館の科学技術attacheのネットワークを作って、より、かつ現場において、科学技術の施策の実施、外交の実施に過程できちんと連携していけるようにということで、今、それを始めるようなことを考えております。
それから、科学技術のための外交、あるいは外交のための科学技術ということについては、幾つかの重要な課題について、整理をしようと。その中の1つがSDGsということで、これがこれから外務省内の科学技術外交の場においても、本格的に議論を始めようというようなことを考えております。
そういったことで、各テーマを作って、テーマごとにやると。科学のための外交というところに関しましては、例えば、先ほどから出ておりますルール標準化というような、国際的なルールメーキングにもしっかりと関わっていくというようなことも、科学のための外交として議論をよくされておりますし、外交のための科学という面においては、例えば、我が国にとって外交的に重要な国・地域において、科学技術をもっと活用することによって、そこの外交との関係を有利に、あるいは資するというようなことで言われていまして。これらが幾つか一体化する形で、各テーマにあるのかなと思っています。
したがいまして、TICADについて言いますと、まさにアフリカ開発という場において、我々が外交的に非常に重要な地域であるという前提の下に、では科学技術がどのように我々のアフリカ開発においてのスタンス、あるいは活動を非常に高めていけることになるのかという、そういうことを議論したというのが、我々のこの場においてのTICAD VIへの議論だったわけでございます。
めくっていただいて、今、科学技術顧問の下に、科学技術外交推進会議というものが出来ております。岸科学技術顧問1人ですと、大変な作業がかかってきますし、いろいろな、科学技術には専門分野が、御案内のとおりありますので、出来るだけ幅広く、各専門分野の方々の専門家の方に関わっていただこうということで、この会議が出来ておりまして、その委員のリストは、一番最後のところにくっ付けさせていただきましたので、また御参照いただければと思いますが。この推進会議を定期的に開くことによって、実際には、科学技術外交の提言を、外務省内で、特に、最終的には岸田外務大臣に個々に、その都度やるということになっています。
実際に、次のところをめくっていただいたら、ここ1年ぐらい、どんなことがあったかということで、御案内のとおり、G7サミットがありましたと。それから、実際には、G7の外務大臣会合、それから、G7の科学技術担当大臣会合という、それぞれのところにおきまして、科学技術がG7の首脳の、あるいはそれぞれの宣言の中に、その重要性が入ったということで、これも実際に、今回、外務省内でこの科学技術外交を議論した成果として挙げられるのではないかなと思っております。
TICAD VIもその中の1つでございまして、実際に、まためくっていただきますと、これが、この科学技術外交推進会議の方から、岸田外務大臣に提言書として、TICAD VIの前に手渡したものでございます。
内容は、簡単に言いますと、そこの中に、提言1と提言2というふうに分かれておりますが、提言1がまさに人材育成を通じたアフリカの科学技術水準の向上ということでありまして、そこには、日本とアフリカの研究者の交流ネットワークを強化すべきであるとか、それから、産業発展を支える科学技術分野の人材育成と、御案内のとおり、アフリカ、ずっと鉱物資源等の国際価格の下落ということで、非常に構造的な経済構造の問題を抱えているということで、それを脱するためにも、新しい産業というものに転換していく必要があって、そうした意味でも科学技術分野の人材の育成が重要だろうと。それから、そういったようなことがここに盛り込まれておりまして、提言2の方では、実際に研究開発の成果を、社会全体へ還元すべきだということで、1つ目に、共同研究の一層の推進と、成果の活用と。それから、科学技術活用の重点分野における協力を強化しましょうと。特に、農業というようなところと、それから防災、あるいはレジリエンスというようなところも、具体的に議論をいたしました。それから、女性起業家、女性研究者の育成支援ということで、これもジェンダーの話、今日出ておりましたけれども、科学技術の分野でも言えるのだろうと。で、ICT人材の育成と国際機関との連携ということで、まさにここがユネスコ等々の、多分、連携ということも視野に入っているのではないかと思います。
こうしたことを提言をした結果、我々、TICAD VIに向けて、ああいった形に最終的な制定にはなっていたというように思っております。
この提言書につきましては、機関の代表として、濵口委員長にも御出席いただいて、議論に参加していただいておりますので、もし、また後で何か補足していただけることがあれば、是非お願いしたいと思います。
以上で、簡単に今回のTICAD VIに向けて、どういった形で提言が出てきたかということを説明させていただきました。ありがとうございました。

【濵口委員長】  どうも、先生、ありがとうございました。(拍手)
それでは、続きまして、武内委員から発表をお願いいたします。

【武内委員】  東京大学の武内でございます。今日は、私が今、担当しております、サステイナビリティ学と、それからこのSDGsの関係について話をするようにということでございましたので、もう1つ、今、私どもの組織で取り組んでいるFuture Earthの取組も合わせて、お話をさせていただきたいと思います。
サステイナビリティ学というのは、御存知の方もおられると思いますけれども、非常に若い学問でございまして、本格的に世界各地で展開が始まったというのは今世紀に入ってからでございます。しかし今、急速に広がっておりまして、私は今年、ガーナ大学と、それからインドネシアのパジャジャラン大学というところに行きましたけれども、そういう途上国の大学で、サステイナビリティ・サイエンスのプログラムが、具体的には修士が中心ですけれども、始まっているということで、そういう際にも、私の方でお話をさせていただく機会があって。我々、割と初期に始めたにも関わらず、何か我々の方がちょっと取り残されて、レフト・ビハインドになっているのではないかというような気もするような状況になってきております。
東京大学は、随分以前から始めておりまして、1996年でございますが、当時、吉川先生が中心になって、吉川総長が中心になって、MIT(マサチューセッツ工科大学)、それからETH(チューリッヒ工科大学)、スイス連邦工科大学、この3大学で、Alliance for Global Sustainabilityというのを始めました。これが、東大におけるサステイナビリティ研究の一番最初、本格的にですね。これは学部、それから研究科をまたがって、地球的課題に挑戦するということで。最近まで細々とやっておりましたが、最近はちょっとMITなんかも、自らの戦略の中で、余りそういうものに重視をしないというようなこともございまして、この3大学連合は、今、活動を停止しましたけれども。2005年に、当時の小宮山総長が中心になって、スーパーCOEを申請しまして、それで認められまして、東大だけでやるなというふうな総合科学技術会議の御指示もございまして、他の大学も入れながら、オールジャパンの研究組織を作ったというのが、サステイナビリティ学連携研究機構という、今、私が機構長をやっている組織でございます。この育成機関、5年で終わったものですから、今、その大学連合の方は、一般社団法人という形で運営をしておりまして、今、私どもの機構は、東大の内部組織ということになっております。
いろいろな取組をしておりますが、割と世界の中で、皆さんによく見ていただいているという点で言うと、『サステイナビリティ・サイエンス』という雑誌を刊行いたしました。もう、ちょうど10年たちまして、それなりにインパクトも付いてきて、当初は日本の研究者の方の受け皿だったのですが、今、日本人が投稿してもなかなか通らないというような、そういう状況になっております。
それから、サステイナビリティ学国際会議というのを定期的に開催をいたしております。昨年は、南アフリカの方で、ステレンボッシュ大学、ケープタウン大学と共同で開催をさせていただきましたし、来年はスウェーデンのストックホルム大学を中心に協力していただいて、今日話題になっていますレジリエンスを議論する国際的な組織がございます。いわゆるレジリエンスに関する国際会議という。それと、バック・トゥ・バックでサステイナビリティの国際会議をやろうと思っていまして、うまくレジリエンスとサステイナビリティの相互関係を見出していくことが出来ればいいなと思っております。
それから、もう1つは、ユネスコといろいろな意味でサステイナビリティ・サイエンスというのを協働しております。私は、この6月まで8年間、国連大学の副学長をやっておりまして、非常にユネスコとは近しい関係でございまして、ユネスコで国際会議をやって、一緒にレコメンデーションを出すというようなこともやっております。そういう中で、1つ、教育ということも、今日出た中では、大変大事なキーワードですが、もう1つは、私ども、サイエンス・ポリシー・ソサエティー・インターフェースの強化ということを、ユネスコの場で議論させていただきました。今現在は、日本政府が拠出をしたお金を使って、サステイナビリティ・サイエンスについての議論が始まっておりまして、私もそのメンバーに入れていただいておりまして、この12月には、クアラルンプールで、そのことについての会議が始まるということになっています。本来は、ボコヴァ事務局長が、ユネスコの組織改革に、つまり、自然科学と社会科学、人文科学の統合というふうなものに、サステイナビリティ・サイエンスという概念が使えないかというふうに考えておられたようですけれども、残念ながら、そちらの方は、必ずしもそっちの方に行かないという、組織の縦割りが、なかなかそれぞれ、これを克服するのは難しいという状況です。
それから、国際的な動向にも関わっておりまして、IPCCや、最近、生物再生分野というのが出来ました、IPBSというようなものにも関わっておりますし、それから、リオ+20で、まさにこのSDGsの議論がされた場におりました。また、最近では、ハビタット3というのが、20年に一遍の会議でございまして、今まだ3回目で、次回は出席出来るかどうか分からないというのが、皆さんの中でのジョークなのですけれども、私もそのジョークを使って発表いたしてまいりましたけれども。これなんかも、やはり都市というものが対象ですけれども、持続可能な開発というものを非常に関わりが深い議論がされております。
それから、TICADでは、私ども、これは国連大学の方でありますけれども、アフリカ開発銀行からのお金を頂くことが出来まして、アフリカで教育を中心に、これから活動を続けていくということになっておりまして、3つありまして、都市開発と貧困削減、2つ目が農業開発と持続可能な生計の確保、3つ目が、持続可能な鉱物資源の利用ということで、それぞれ担当の大学を決めて、日本の大学ともネットワークを形成しながらやるということで、それのローンチングの会合、TICADで開催いたしまして、そのときには、アフリカ開発銀行の総裁にも来ていただきました。濵口先生とは、ばったりと会場でお会いいたしました。
それがサステイナビリティ・サイエンスですが、もう1つ、Future Earthというのは、これも御存知の方、多いと思いますけれども、これまで、地球環境研究というのは、ばらばらなグループでされてきたのですね。気候をやる人は気候だけしかやらない。生物多様性をやる人は生物多様性しかやらない。それから、人文社会的側面というふうなことをやる人はそれだけしかやらないというような。それは、やはりその地球規模の課題が複合であるというのに対して、そういうばらばらの体制は、余りにもまずいでしょうということで、最近、このFuture Earthという取組が始まりました。これは、今までの組織を統合すると同時に、新しい課題に挑戦するということなのですが、その際に、SDGsというのが非常に重要な研究の対象になるということでございます。
当初は、どこかの国が国際事務局を引き受けるということで、立候補を募りました。日本は、大西会長が非常に熱心で、学術会議を立候補するということでやったのですが、最終的には、非常に珍しい試みですけれども、立候補した5つの国が、それぞれ役割分担をしながら国際事務局を運営していきましょうということで、アメリカ、カナダ、スウェーデン、それからフランス、日本と。日本は学術会議が窓口ですけれども、実質の事務局は、私のIR3S、サステイナビリティ学連携研究機構にございまして、前学術会議副会長の春日先生に、日本ハブの事務のディレクターをお願いをしております。
私は、サステイナビリティ・サイエンスというのは、そのFuture Earthに対して、かなり学的な基盤を提供していると。そして、この2つが、さらには持続可能な開発目標をサポートしていくという、こういう位置付けで考えていくのが重要なのではないかと思っています。1つの大きな特徴は、いわゆる俯瞰的な学際性、それから、社会との共同作業、これは、コデザイン、コプロダクション、コデリバリーというふうに言っていますが、こういうことが重要だということで、先ほどのサイエンス・ポリシー・ソサエティー・プラットフォームも同じような趣旨ですけれども、ただ学術の中で融合するのではなくて、学術と社会が、学術の初期の段階から連携していくということが重要だということで。そして、テーマとしては、ダイナミックな地球の理解、これは、最近、プラネタリー・バウンダリーというような言葉が出されておりますけれども、私の親しいヨハン・ロックストロームという、ストックホルム・レジリエンス・センターの所長なんかが中心に提唱しているものですけれども、地球の容量の限界を知ろうと。そういう中で、2番目としては、途上国だけではなくて、先進国も一緒になって、持続可能な開発を考えていこうと。それから、3つ目が、そういう社会に向けたトランスフォーメーション、これを科学が推進していくのだという。この辺は、イノベーションの議論とも関連してくるわけですけれども。そういうふうな大きな3つのテーマが掲げられております。
また、一緒に研究を推進していくために、ナレッジ・アクション・ネットワークというものを、幾つか推進しております。この中にも、当然ですが、持続可能な開発目標というのがあると同時に、例えば水エネルギー、食料のNexusだとか、健康だとか、都市だとか、自然資産とか、いろいろなものが入っています。ですから、そういうものと、またSDGsとの間の関連性も考えていかなければいけないということですね。
もう1つは、マルチステークホルダーが参加するということが、どうしても重要だということですね。Future Earthでも、マルチステークホルダーの参加というのは、うたわれてはいるのですけれども、例えば学術会議で、マルチステークホルダーの参加について議論をしたときに、マルチステークホルダー、ほとんどいなくて、学者ばかりが集まって、コデザインは何かということを議論するというような、そういう極めて不都合な状況が生じておりまして、そこらを、本当にマルチステークホルダーでやっていくにはどうしたらいいかということを、これ、きっちり考えていかなければいけないと思います。
SDGsの初期の議論、私、リオ+20で見ておりましたけれども、国連の議論としては、初めて、加盟国の議論よりも、外でやっているマルチステークホルダーの議論の方が、影響力を持ったという、これは極めて珍しいもので、その勢いで、オープン・ワーキング・グループというのがニューヨークで形成されて、今の目標と、それから各169のターゲットになったということで。これは、いろいろな人が、こんなに数たくさんあって困るじゃないかということを言う人が多いのですけれども、私は、これは、オープンなプロセスでやってしまった以上、どこかを抜くということは出来ないと。つまり、クローズドなところで、国連の高官が、えいやっと決めるのだったら、それは増えたり減ったりというのは簡単に出来るけれども、一旦オープンな場にして、これを削れというのは難しかったので、これはそういうオープンなプロセスをした社会的費用だというふうに見るべきだというふうに、私は思っております。
そして、その代わりに、サステイナビリティ・サイエンスが貢献するというのは、やはりそういうものの間の関連性に対して、マッピングをしていくというような。今日もマッピングがいいのかどうかというような議論もありましたけれども、私は一定程度、ある側面から見たマッピングというのをやっていくことが必要なのではないかというふうに思っておりまして、これ、今、私どもが、それの全体の、東大の中での組織的な対応として、どういうふうにしていくのかということを決めたわけですけれども、まだ、これで少し組織的に体制を強化していきたいなというふうに思っておりまして、今、五神総長と一緒に、このことについて議論しているのですが。やはり、1つには、いろいろなまとめ方あって、さっきのPを中心にしたまとめ方というのはあると思いますけれども、私どもが今、一番重視しているのは、いわゆる人工資本ですね。produced capitalだけで、経済的な発展が評価されてきたのに対して、人的資本、これは教育もそうですし、それから健康もそうです。そして、何よりも、自然資本、こういうものを生かした社会づくりをしていこうということで、実は、このアイデアそのものは、私どもの非常に親しいパーサ・ダスグプタというケンブリッジ大学の名誉教授が、inclusive wealthという概念として、ちょうどリオ+20で公表しているのですけれども。それをむしろローカライズしていくような方向で考えていったらどうかということを、今、考えております。
そういうふうなものの1つとして、自然共生社会という概念がございまして、これは実は、日本が提案した概念で、国際社会に認められたものです。いつかと言うと、2010年に、生物再生条約の第10回締約国会議が名古屋で開催されました。そのときに、2020年までの目標というのが、これは愛知目標ということで定められたわけですけれども、同時に、2050年までに達成すべき目標として、自然と共生する世界の実現というのが正式に採択されました。これを、学術的に、私どもとしては支えたいというふうに思っております。基本は、人間自然関係、そのダイナミックな共存関係を維持することが、生物の保全というものと、それから人間の持続的な発展というものの共存につながるのだということで、今、こういう考え方は、必ずしも、私たちだけが今、目指しているのではなくて、今、FAO(国連食糧農業機関)なんかも、昔は大量生産で、そして化学肥料というような方向でやっていたのですが、もう少し持続可能性を考えようということで、今、FAOのキーコンセプトが、サステイナビリティというようになっています。そういうことで、私なんかも、今、FAOの中で、いかに伝統的知識を生かしながら、新しい近代的な科学技術を導入しながら、持続可能な農業生産システムを構築出来るのかということを言っていますけれども、そういうようなことにつながるような話として、特にこの自然共生というのは、人は自然の一部であるという、極めて東洋的なものの考え方に立脚しているものですから、幾つかの西洋諸国からは反対もあったのですが、結構、アフリカの人たちは、日本の言っていること、よく分かるということで、非常にサポートしてくれまして、採択されたというものがございます。
こういう中で、SDGsをどう使っていくかというのは、生物多様性というのは、確かに14番とか15番にあるのですけれども、それだけではなくて、それが気候変動とどうつながるのか、食料とどうつながるのか、あるいは水とどうつながるのか、それから、持続可能な生産と消費とどうつながるのかと。こういうふうに考えていくと、関わるものが、メジャーなもので、もういっぱいあるわけですね。だから、余り決め打ちしないで、そういうものを、少し構造化して、SDGsのゴールとターゲットとの関係で、これを全体として見ていく。そして、それが持続可能な社会の形成と、SDGsの実現というふうなものとして絡んでくるというような、そういうことになるといいのではないかというふうにして、こういうことでこれから研究をしようかなというふうに思っております。
環境・健康とSDGsということも、やはり我々は重要だというふうに思っております。これはもちろん、東南アジアでもそうですし、アフリカ諸国でもそうですけれども。従来は、環境の問題というのと、健康の問題というのは、違うセクターで議論がされてくることが多かったと思うのですが、最近、Future Earthの議論の中では、これはICSUという国際科学会議が、今、一生懸命言っているのですが、planetary boundaryを引用して、planetary healthという考え方を出しています。つまり、地球環境の健康性を維持するということと、個々の人々の健康性を維持し向上させるということは、相互に関係を持つのだという、そういう概念の下に、環境と健康の関係を考えていくと。そうなりますと、やはりここでも環境と健康のダイナミックな関係を中心に、SDGsのゴール、ターゲットが、どういうふうにしてつながっていくのかということを考えていくことが出来るというふうになるのではないかなというふうに思っております。
そんなことを今、考えて、これを具体化するというようなことに、今、しようとしております。
日本学術会議では、SDGsは余り議論されてこなかったですね。ずっと、Future Earthは、皆さん議論してこられたのですけれども、これは議論されてこなくて、私は是非議論してほしいということで、皆さんのお手元にお配りしておりますけれども、SDGsを正面から捉えて、それで、会議をやるということで立てておりますので、これちょっと、参考までにということで申し上げるのですが。いろいろなステークホルダーを入れたいということで、ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)の事務局長、この人は、SDGsの作成に、非常に深く関わった方ですけれども、それからSDGsを国際的に展開している企業として、フィリップスの担当の方、それから、国際協力の現場で、これも先ほどのTICADの話とも関係ありますけれども、やはり、JICAなんかが、これからSDGsを使って、JICAの行動指針にしていくというようなことを今、考えておられるようで。そういう点で、田中前JICA理事長にも、そういう観点からお話しいただこうということになっております。
あとは、マルチステークホルダーということで、JSTも、本当は濵口先生に来ていただけるともっとよかったのですが、それから、若者とか、それから報道で、ニュースキャスターの国谷さんとかですね。いろいろな方を呼んで、とりあえず日本学術会議で、少なくとも発表者はマルチステークホルダーにしたいと思っておりまして、出来れば参加者もマルチステークホルダーになるといいなということで、今日も実は、私、これ終わったら、NGOがやっているSDGs市民社会ネットワークというところで、今、同じ時間にやっているのですけれども、私、懇親会だけ出て、また皆さんとの連携を議論したいなというふうに思っております。そういうようなことで、本当に、私が最初にSDGsは重要だと言ったときは、余り皆さん、反応がよくなかったのですが、最近は、まさに私以上に皆さんのところの中で、SDGsがこんなに広く語られるようになって、大変いいことだなというふうに思っております。
以上です。どうもありがとうございました。

【濵口委員長】  どうもありがとうございました。(拍手)
お三人の方に、教育、それから外交、それから科学的な展開のお話をしていただきましたが。ここからは自由な意見交換の形で議論を進めたいと思います。ただいまの発表への御質問も含め、事務局からの説明、それから、委員の方々のプレゼンテーションを踏まえ、御意見を頂ければ幸いです。御自由に発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
はい。北村委員、お願いします。

【北村委員】  よろしいですか。ありがとうございます。
東京大学の北村です。前回、お休みして、申し訳ございませんでした。非常に、先生方のプレゼンテーションで、今、刺激を受けて、勉強にもなりました。
ちょっと4点ほど、簡単なコメントということで、させていただきたいと思うのですけれども。まず、最後の方で武内先生が、伝統的な知識と近代的な知識というような話もございましたけれども、SDGsで非常に大事になっていることが、大きな国際目標をいかにトランスレートして、ローカライズしていくか。国際目標はあくまで国際目標であって、そこを地域、国内、コミュニティのそれぞれに適切なものに、ある種、書き換えていく作業ということが非常に大事だと思うのですけれども。そのためにも、やはり、自分たちが持っている伝統的な知というものと、近代的な知を、いかにバランスを持たせていくのか。このあたり、本来、ユネスコが非常に得意としているはずの領域でもありますし、日本がまた多くの経験を、知見を持っているところでもありますので、積極的に日本がそういったことをメッセージとして出していくことが必要ではないかなと思います。
例えば、そういった伝統的知とは違うのですけれども、そういったローカライズするというときに、例えば、日本で、先ほど濵口先生も、まだまだ日本には問題が多いということをおっしゃっていましたが、特別支援学級などでも、きちんとした資格を持った教員の数が、では今、足りているのかと言うと、まだまだ足りていない現状ですとか、実は、まだまだ、そのインクルーシブ教育を実現する中で、出来ていないことがたくさんあったりしますので、そういったものを、日本なりのSDGsということで、もっと発信していくことも大事ではないかなということが1点目です。
2点目ですが、そういったものを発信していくに当たりまして、やはり先ほどもお話に出ていたような指標、モニタリングをして、評価していくための指標作りが大事ですけれども、今までの多くの、SDGsの今の時点での仕様の多くは、インプット、プロセス多少ありますが、アウトプットまではあるのですが、その先のアウトカムとか、社会的インパクトのようなものというのは、なかなか指標化されていませんで。何をしたからこうなったぐらいのところはあるのですが、それによって、何が変わったのかとか、そういったところまで見るような指標の議論はされていないと思いますので、そこまでも見た指標作りで。これは、最後にこれも武内先生、それぞれのステークホルダーがというお話をされていましたが、JICAであったり、あるいは企業さんであったり、様々な方がSDGsに貢献する中で、そのインパクトというのをきちんと見ていくことが大事ではないかなというふうに考えております。
3点目ですが、最初の教育の杉村先生のお話で、非常に、最後の写真も本当にそうですけれども、やはり、このSDGsというのは、何を学んだかということを非常に大事にしていまして、これも実はこのインパクトというところとつながるところがあるのですが、learning outcomes、学習成果という言葉がたくさん使われているわけですね。そこをきちんと、やはり見ていくという意味では、数字化出来ないものもたくさんあるのですが、やはり学習の成果というものを、きちんと見ていく、それがインパクトの評価にもつながるのではないかと思いますので。ここも、ユネスコ、いろいろな議論を今、ユネスコもしているところですが、OECD等と協力しながら、ユネスコも今、いろいろ考えているところではあると思うのですけれども、日本からも、もっとメッセージを発信すべきではないかなというふうに感じます。
最後、4点目は、角南先生の科学技術外交のお話のなかで、これは杉村先生のお話との連携もあるのですが、高等教育の国際連携のお話をされていましたけれども、やはり科学技術外交を進める中で、自分たちの国だけ、あるいは1つの個別の機関だけではなく、やはり高等教育の国際連携をしていく、そのときに、Future Earthのような枠組みももう既にありますが、もう既に、それ以外にも政府間でも様々なものがあったりしますので。ただ、これが今、結構ばらばらに進んでいますので、いかに戦略的に、例えば、日本もこれには随分、キャンパスアジアだとか、多くの機会を使って投資をしているわけですけれども、そこをもう少しきちんと整理をして、SDGsへの貢献として、これだけのことを、高等教育の国際連携を進めて、それが科学技術外交にも成果を及ぼしているのだということを、きちんと示すことが大事かなということで。
申し訳ありません。コメントだけなのですけれども、4点、コメントさせていただきました。

【濵口委員長】  ありがとうございます。ほか、いかがですか。御自由に発言いただければと思いますが。
どうぞ。お願いいたします。

【佐藤委員】  私もコメントだけで恐縮ですが。3つあります。
1つは、細かいことですみません。レジリエンスというのは、片仮名でそのまま歩く日本語として定着しているという感じがしないので、関係者の間では、当然共有されている言葉でしょうけれども、何かまとめるときには、必要な日本語に変えるか、あるいは括弧書きで概念を書かないと、恐らくそこで読むのをやめてしまう恐れがあると思いますので、ちょっと工夫をしていただきたいと思います。
2つ目はスコープなのですけれども、我々は国内委員会、ユネスコ国内委員会ですし、ユネスコ活動を中心にやっているわけですが、SDGsというと、それは貧困の話もあれば、公衆衛生の話もあって。それが大事でないというわけではないし、もちろん、アウトリーチしていくのは良いのですけれども、ユネスコ活動から見て、中心に見て、いろいろ言っているということを明らかにしていった方がいいのではないかと思います。
3つ目は、日本がこれまで比較的、ユネスコ活動の中で、リードをしてきた特筆すべきものが2つあって、ESDとサステイナビリティ・サイエンスなのですね。これは、お二方の先生から詳しく話も出まして、非常に心強く思ったところでありますけれども、ESDに至っては、10年間、2005年から信託基金を付けましたが、私が大使の頃は、会議で発言しても誰も反応しなかった。場外で、それ日本案件だって言った人もいました。ちょっと、かっとしてというような場面もあったぐらいだったのですが、2009年のドイツ会合以来、市民権を随分得て、非常に盛り上がってきたわけです。しかし、日本がずっとリードしてきたので、この案件はやはり、きちっとどこかでうまくプレイアップをしていった方が良い。サステイナビリティ・サイエンスも、これは前の金澤先生が言い出して、国内委員会としても決議をして、この案を持ち出し、ユネスコの中期戦略目標の中にも書かれているわけですので、この辺は、うまい形で、ちょっと強調しておいていただきたい。何か、何となく、全ての活動の中に埋もれないのがうれしいなというコメントであります。

【濵口委員長】  ありがとうございます。

【武内委員】  今の、最初のお話、よろしいですか。

【濵口委員長】  はい。

【武内委員】  先生おっしゃるとおりで、レジリエンスというのは日本語にしようと、いろいろ皆、努力をするのですね。まず、復元力とか回復力というふうに言うのですけれども、それはレジリエンスの概念を狭めてしまうのです。なぜかと言うと、レジリエンスというのは、例えば気候変動で、システムが脆弱なものを、より気候変動に対して、適応し得るような、そういうシステムに変革していくということもレジリエンスということになっているのですね。概念の中で。つまり、トランスフォーメーションがレジリエンスという概念の中に入っているので、回復・復元だったら元に戻るだけだという、これはだめだということなのですね。
それで、もう1つは、強靭性ということもあるのですね。この強靭性というのがなぜ問題かと言うと、要するに、もう何がかんでも、自然災害を食い止めてみせる、みたいな概念で、国土強靭化計画というの、まさにそうなのですけれども。我々は、生態系を生かしてソフトに自然を使いながら、減災・防災をやろうというのが、Eco-DRRという、Ecosystem-based Disaster Risk Reductionというので、この前の仙台の会議なんかでも、それを強調したのですけれども、そういうものが、何か誤解されてしまうというので、何となく、しようがないなというので、しなやかな強靭性とかですね。まあ、そんなぐらいならいいかなというような感じでやっておりますが。
先生、先生の博識で、そういう日本語を。昔の人というのは、漢学の素養があったから。

【佐藤委員】  まさに中身が多義的なので。それを恐れているのでしょうね。

【武内委員】  難しいのですよね。いや、もう、私の能力の限界で。ただ、状況だけはお話をして、御理解いただこうと思いまして。大変難しいです。

【濵口委員長】  ありがとうございます。ほか、いかがですか。

【今国内委員会委員】  今です。オブザーバーの立場ですが、機会を頂きましてありがとうございます。
先ほど、北村先生のローカライズという言葉にちょっと勇気をもらいまして。ローカルの立場での話になりますけれども。私は、地域でユネスコ協会の活動をしている者ですが、そういう意味では、ここにいらっしゃる委員さんの中で、一番、一国民、普通の国民に近い立場かと思います。そんな立場からの意見だと思ってお聞きいただきたいと思います。第1回目のこの特別分科会以降、今日のお話も聞いていた中でも感じたことがありますので、まず2つお話しさせていただきます。
まず、1つ目は、SDGsとESDの関係なのですが、あくまでも私の感じていたことなのですけれども。ESDというのは全ての社会問題を解決につながるように、新たな価値観や行動などの変容をもたらすような、そういった教育をするのがESDだというふうに理解しておりましたので、SDGsというのが出てきて、17目標があって、その中のESDといいますか、教育問題はその1つ。そして、その中でも、ESDは教育の中でのまた1つという、そういう位置付けがされているのだということが分かって、ちょっと頭が混乱してしまいました。ただ、ESDを本当に丁寧に進めていく、そういった教育が行われれば、17の目標の分野を、甘い考えかもしれませんけれども、カバーできるのではないかとも思っています。
2つ目、気付いたことが、ちょっと語弊があるかもしれませんが、ユネスコ活動を推進していくには、大きな世界と小さな世界があるなというふうに感じたわけです。大きな世界というのは、国レベルで、国、あるいは文科省の方などが中心になったり、そして学術界の方が研究・調査をして、いろいろなアドバイスをしたりとか、あるいは大きなNGOの方が関わったりと、予算でいえば、億単位の活動、語弊があるかもしれませんが、大きな世界のユネスコの活動の世界だというふうに言わせてください。
それに対して、私どものような地域のユネスコ協会ですとか、小さなNGOは、本当にローカルなところに根をおろした形で、日々、私の場合ですと大垣市民に、あるいは大垣市内の小学校・中学校・高校に、頻繁に足を通わせながら、ESDの進展状況はどうですか、などというような感じでお尋ねしたりとか、それに関連する行事を行いながら、少しでも、ユネスコというのは何なのかということを皆さんに知らせようという、そういった活動をしているわけです。予算の単位で言えば、万単位、10万単位、せいぜい100万単位の世界なのですね。あえて小さな世界と言わせてください。
ただ、ユネスコの精神を広めていくには、この大きな世界と小さな世界が、車の両輪のようになって進めていくことが必要ではないかというふうに思いました。
それで、次に、この特別分科会は、17の目標の中で、どれに絞って活動を展開していくかというようなことを話し合う場であるというふうに理解していましたので、私見ですが、ちょっと早いうちに言わせていただきたいと思いますけれども、私はやはり、先ほど佐藤先生もおっしゃいましたように、ユネスコ活動の中で、ESDというのはとても多くの意味を持っているものだと思います。それで、昨年、ESD特別分科会というのが設置されて、5回にわたって話し合いが行われたようです。その、いわゆる成果として、ESDの手引きが発行されました。手引きが発行されたということは、裏を返せば、それほど、手引きがなければ、まだESDを理解している人が少ないということにもつながるわけで、この手引きができたということが、ある意味ではESDを推進する第2段階に入ったのではないかなというふうに思うわけです。
ユネスコスクールが幾つできたかということも、意味のあることではありますけれども、それ以上に、このESDの手引きを使って、教育に携わる人たちに、より理解を深めていただいて、さらには、日々の学校の教育の中で、ESDを広める。もう少し具体的に言うならば、日々の授業の中で、もっと言うならば教科の中で、ESD的な授業を本当に進めているだろうかということを、常にチェックし、それが達成されたときに初めてESDが行き渡ったということになるのではないかと思うのですね。学校教育で言えば、そのような授業を受けた生徒たちが15年後には日本の大きな力になる二十歳代の若者になっているわけですから、少し大げさな言い方になるかもしれませんが、開発途上国向けだけではなく、私たち、自分自身の、この日本の国力を高めるためにも、ESDを若い人たちに、是非しっかりと浸透させたいという気がいたします。
一、普通の国民に近い立場で発言をし、この場の雰囲気をがーんと下げてしまったかもしれませんが、良い機会でしたので、意見を述べさせていただきました。以上です。

【濵口委員長】  ありがとうございました。貴重な視点であると思います。グローバルな課題をローカルにどう立ち上げるか。
特に、やはり、この間、ニュージーランドの科学技術顧問とも議論をしていたのですけれども、SDGs、彼がやっているものですから。彼の主張は、やはり、国内問題をきちっと解決することが、まずもって国際的なSDGsにとって大事なことであるということを言っておられたですね。問題は、ずっと17項目見ていると、例えば貧困だとか、教育だとか、割と日本は解決しているかのように思うのですが、実はそれ、すごくsuperficial、表層的なことでして。ジェンダーの問題は、かなりこれは深い問題があるのですけれども。この17項目が、実はかなりリンクしているのですね。
私、もともと、医学の出身ですので、実は大変危惧をしていることがあるのですが、今、日本の若い女性の栄養状態は、戦後間もなくのすさまじい飢餓状態の時期を同じぐらいになっていると。これは、バックグラウンドに文化の問題があるし、教育の問題があるのですけれども、とにかく痩せたい願望が非常に激しい。何が起きているかと言うと、新生児の出生児の平均体重が3キロを切っていっていると聞いていますね。どんどん今、下がっているのですが、これがまだ、そのニュージーランドの方とも話していて、はっきりとした科学的な証明がないのですけれども、出生後の、その非常に、多動性の障がいとか、今、増えている問題と、ひょっとしてリンクしているのではないかと。アメリカとかニュージーランドは、かなりこの研究が進んでいるのですけれども、日本はやはり、そこはちょっと、腰が引けているのですね。現場としては。いろいろな保障の問題とかが、どうしてもリンクしてくるというので、議論が避けられている問題があるのですが。
例えば、それを見ますと、文化の問題と教育の問題と、貧困の問題と、その貧困が貧困を生み出す、負の連鎖を生み出す問題と。科学的に見ると、これがepigeneticと言って、遺伝子に支配されない形で起きるのですけれども、胎生期のときに栄養がしっかり行かないために、生まれてから幾ら栄養を積んでも、発達が遅れたりすることがあって、それが貧困の連鎖で、2代、3代と拡大されるという状況が生まれているのではないかというような意見もあるのです。まだ実証されていないから、科学的な議論ではないのですけれども。
それにしても、そういう問題1つを見てみても、教育、貧困、食料。全てが実はリンクして、今の日本社会を生み出していて。日本社会の、ここにお見えの方は、割と豊かなところに、多分、今、位置していると思うのですけれども。階層の下の方になると、かなり厳しい状況が、今、どんどん進んでいるような。それを、やはりもう少し直視しながら、もう1回しっかり議論をしていただくということも含めて、私たちがどんな指標を立てるべきなのか。その指標を立てて、批評をするだけではなくて、では、日々の実践で、どこまでそれに、それぞれの立場で迫れる問題として考えられるかということが、特に今の時点では大変大事な議論になるかなとは、個人的には思ってはいるのですけれども。
ちょっとしゃべり過ぎました。どうぞ。黒田さん。

【黒田委員】  ありがとうございます。
まさに、濵口先生のお話を受けて、教育の部分のゴール4についても、確かにsuperficialと先生がおっしゃられた部分では、かなり日本は達成度が高いのだろうと思うのですけれども。その2つの点、1つは杉村先生から御指摘のあったインクルーシブというところについては、日本はCRPD、障害者権利条約の批准は2014年ですので、まだ最近ですし、その中で、インクルーシブ教育の在り方というのを進めてはいますけれども、まだまだ、主要な先進国に比べて、進んでいるという状況ではないようです。
それから、先ほど申し上げた4.7のところに、ESDはあるわけですけれども、この4.7の中には様々な教育の内容・目的に関する記述があります。特に、グローバル・シチズンシップ教育であるとか、ノンバイオレンス、カルチャー・オブ・ピース等、いろいろな記述があるわけですけれども、それらのような、ユニバーサルのゴールとして設定されている方向性に、日本の教育政策がどのぐらい、そこにアラインしているのかというところについては、まだまだ見ていかなくてはいけないところなのだろうというふうに思います。そういう意味では、未だ教育というところだけで見てみても、これから努力する部分があると思います。ただ、それを、国内的なことだけで努力するのかというと、そうではなくて、佐藤先生がおっしゃられたように、やはり日本がこれまでESDと、それからサステイナビリティ・サイエンスに関しては、グローバル・ガバナンスの形成に対して、大きな貢献をしてきたことは、間違いないと思います。これらに加えて、より深めていくというところと、それから、日本が努力しなければいけない部分について、グローバル・シチズンシップや、インクルーシブについても、新たに日本からの発信ということが、日本も努力しながらやっていくということが必要なのではないかなというふうに思います。
そのときに、例えば、インディケーターのことは、もちろんそうですし、僕は、グローバル・ガバナンスについては、governance by ideasとgovernance by numbersがあって、アイデアのところで、例えばESDやサステイナビリティ・サイエンスというような形で、そのアイデアを国際社会に提唱したということでは、日本の大きな貢献があるわけですけれども、ナンバーズというところで、インディケーター作り、スタンダード作りというところで、やはり貢献していくときに、先ほど、北村先生から、アウトカムのところについての、例えばPISAはまさにそうなわけなのですけれども、若しくは、東南アジア教育大臣機構が中心になって、東南アジアが1つの枠組みで、リージョナルなアセスメントを作ろうとしていたりと、その中にはグローバル・シチズンシップが、科目としてといいますか、1つのアセスメントの分野として位置付けられたりしているわけですけれども。そういった、リージョナルやグローバルな公共財を作っていくというところに、日本が、例えばODAなどを通じて協力していくということが、これから求められるのではないかなというふうに考えた次第です。
ただ、アウトカムだけではなくて、実は、プロセスのところも、まだなかなか見られていなくて、例えばインクルーシブネスとか、若しくはカリキュラムの話を見ていこうとすると、どうしてもアウトカムのところだけでは見きれないので、プロセスのところを見なくてはいけないのですけれども、それが今の国連、若しくはユネスコのインディケーター作りの中には、実はなかなかうまくいっていない部分でして。そこについても、プロセスをどのようにカテゴリカルなインディケーターにしていくかというようなことも含めて、ここにはかなりフィロソフィカルな議論が必要になってくるのですけれども、それも含めて、日本で検討して、国際社会に発信していくことが必要なのではないかというふうに考えます。

【濵口委員長】  どうぞ。

【吉見委員】  よろしいですか。
ちょうど私は一昨日、パリのユネスコ本部で今、まさに話題に出たグローバル・シチズンシップについての国際会議に参加しておりました。そこには各国の方たちがいらっしゃっていまして、アメリカの代表団も一部来ていて、ユネスコ本部の事務局の方とも話をしましたけれども、ESDとGCEDが車の両輪であることを強調されていました。GCEDを熱心に推進しているいろいろな国々の方々のお話を聞いて、理念的にもそうですが、実際の教育プログラムについても相当いろいろな面白い実験をしているところがあって、世界が随分そちらに向かって進んでいるということを実感してまいりました。
このSDGsの話についても、パリのユネスコ本部の事務の方と話をしていたときに、彼女は2030年の目標をかなり意識していましたね。ですから、国連のアジェンダ2030とSDGs、そしてGCEDやESDは一体の関係にある。私は、大くくりに言って、2030年の地球社会のなかで地球市民と地球環境、それらの教育の推進は車の両輪です。それから、2030年は、2015年から15年後ですから、もうすぐ来てしまうのですけれども、そのときに2030年だけを考えるのではなくて、その15年先を考えると、2045年。2045年の地球社会を見据えることももうできる地点に来ています。そうすると、2045年の地球社会を考えたときに、ESDもありますが、グローバル・シチズンシップ、GCEDの価値が組み合わされていくはずです。その中で、日本はどういう位置を占めるのかということが大切ですね。30年後ぐらいのビジョンを見ながら、現在の政策を設計していくべきです。
ですから、私たちとしては、何であれ1つの価値に集中していることのリスクがやはりあるわけです。むしろ、日本全体の戦略を考えるときには、ESDとGCED、地球環境と地球市民の両輪を、つまり複数の価値を組み合わせながら戦略を立てていく必要がある。この複眼的なフォーメーションが、とても重要な意味を持ってくると思います。

【濵口委員長】  ありがとうございます。
1点だけ、ちょっと、深堀りしたいというか、御意見頂きたい点があったのですけれども。古賀委員、帰ってしまったのですけれども、ちょっと時間が限られていますので、御意見頂きたいのですけれども。
持続可能な社会ということを議論したとき、当然これは経済的に成立しなければいけないわけですよね。JSTでも、少し内部で議論しているのですけれども、SDGsが経済活動として見られないと、これは空証文になってしまうのではないかと。経済活動としてどう評価するかというような議論も必要なのではないかと思うのですよね。かなり難しい部分なのですが。御意見頂ける方、あれば。

【角南委員】  よろしいですか。

【濵口委員長】  はい、どうぞ。

【角南委員】  ちょっと、昨日、今日と、うちの、私と、それから国連大学のマローン教授と一緒に、TPPのプロジェクトをやっていまして、今朝から国際会議で。日本のチャプター、私と、もう1人、マクロ経済学者と一緒に、彼はGTAPモデルを回して、どれだけTPPをやると経済効果があるかという議論をするのですけれども、まさにその話に、実は、今朝、なったのですね。それは、今、濵口先生がおっしゃったみたいに、SDGsを経済がどう評価するかという話があって。これは、経済で言われていることを、SDGsから見て、どうそれを評価するか。つまり、TPPは、我が国にとっては、当然、マクロ経済的なインパクトが、プラスのインパクトがありますという説明をしたと。ところが、ほかの国のメンバーから、特にチリとかアルゼンチンとか、あるいはフィジーとか、いろいろあるのですけれども、富の分配ですね。それ、TPPをやることによって、SDGsの幾つかの目標がどうなるのですかと。そこについては、日本としての議論というのはどの辺にあるのだろうかということなのですね。
さっき、武内先生の、このサステイナビリティ学で、経済学、ここすごく重要だなと思っていて。通常の経済学では答え出ないですよね。我々、そういうことを想定していなかったものだから。確かに、何でアメリカがだめになったのか。先生。で、みんな議論になったときに、まさにその答えが、こんなにいいことなのに、と言ったのだけれども。実は、その後ろにそういう議論が実はあって、むしろ、経済的な。これから例えば貿易政策とか、グローバリゼーションで、経済の方の議論というのは、どんどん政策の中で進むのですけれども、それをSDGsの観点からちゃんと評価出来る。こういうアプローチの方が、結構、大変で重要で。だから、そのときに、サステイナビリティ学の経済学者に来てもらっていればよかったなと思うのですけれども。そういう指標を出していかないと、今はマクロ経済のインパクトしか……。

【濵口委員長】  それを出さないと、結局、これ、また南北問題の再現になってしまうだけなので……。

【角南委員】  ええ。ですから、例えば、TPPのメンバー国の中で、先進国の方がより利益が高いのではないかと。では、それをどうするのだという話とか。国内の中で、誰がこれを得して、誰が損するのか。それは、マクロでインパクトがある話は、我々は用意してプレゼンしたのですけれども、逆に、そういうことについての答えがなくて、非常に僕は愕然とした。ちょうど今日、お昼それがあったものですから。まさに今、委員長のおっしゃったところは、これから、サステイナビリティ学で是非、貢献していただけないと、まずいかなと思ったのです。

【濵口委員長】  はい。

【黒田委員】  申し訳ありません。経済学の話が出たものですから。
このEFAとか、それからSDGsの中の教育の部分というのは、もともとhuman right approachや、もしくはequityに対するところから出てきたように見えるのですけれども、実際には、世界銀行等の国際開発金融機関がEFAを推進するためには、かなり経済学的な実証がされて、初等教育のインベストメントが社会的収益率が高いであるとか、このSDGsに、この15年間で出てきた知見というのは、例えば教育の質が、どれだけ経済成長に大きな貢献をするかであるとか、若しくは、early childhood、幼児教育に大きな利益が、経済収益があるというような教育経済学の発見が基となって、このSDGsの教育の部分というのは出来ているのです。4.7ですら、cognitiveよりもnon-cognitive skillが、これからの経済活動に重要だというところから出来てきているということを考えると、経済学的な説明というのは、ある程度はなされて、この4番目のゴールは出来ているのだなというふうに思っています。

【濵口委員長】  そこをうまく体系的に提示出来ないと、恐らく世の中の大半の方は、自分の生活とは違うものだなというふうに、こう見てしまうと思うのですね。どう……。

【北村委員】  先ほど武内先生が言及されたinclusive wealth、新国富なんていうふうに訳したりしていますけれども。inclusive wealthが1つ、手がかりですよね。それが全てを示してはいないですけれども、国連でもその議論をしていますし。
あと、実は経済活動を見るときに、企業の役割を見るときに、value chain全体で見ないと評価出来ないという難しさですね。例えば、僕はある医療メーカーのCSRのアドバイザーをしているのですけれども、Tシャツを1枚作るのに、100リットルの水を使うのですね。それは、最初に原料を作るところからリサイクルするところまで考えると、実はTシャツ1枚で100リットルの水がかかっている。使われている。それはvalue chain全体を通しての話ですから。SDGsというのは、そういうふうなものの見方をしましょうと。この、例えば500円で売っているTシャツが、500円の物としてだけ見るのではなくて、全部をつながって見たときに、環境にも人権にもどういうふうに影響しているのかというのを見ると。そこにビジネスの問題と、CSRとで、企業は両方の側面から責任を持ちましょうというのがSDGsだと思うのです。

【武内委員】  今、私、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの理事をやっているのですけれども。あれで、今、最大のネットワークのテーマが、SDGsをいかに企業活動の中に取り込んでいくかという、そのときのポイントは、従来のように、企業活動はそのままあって、いわば社会奉仕的に、非常に狭い意味でのCSRとして、植林活動をしたりとかって、それではだめで。企業の活動の本体に、SDGsが組み込まれて、それを達成することが、企業の持続性につながるのだと。
こういうことを、残念ながら、いろいろ議論してみたのですけれども、日本の企業はまずそこまで行っていないのですよ。あえて名を伏す大手自動車会社でも、そういうふうにいっていないのですね。実は。
世界を見ると、ユニリーバだとか、今度、私がお願いしたフィリップスだとか、そういう企業が本気でやっているのに対して、日本はそっちの本気度がちょっと足りない。という、今、大きな問題があるということに気が付きました。
ですから、これ、せっかくこの議論を、日本の中の戦略として生かすということだったら、是非、私は、経済学者に聞いてみるのもいいと思いますけれども、むしろ積極的に企業を巻き込んで。そのときに、最大の問題は、中小企業がSDGs出来るかということですよ。大手は、やったふりは、最低、しなくてはいけないというぐらいは、もう分かっているわけ。うまく行くと、ちゃんと使えると思っているわけ。だけど、中小企業はどうかと言うと、いや、それは、そんなの私のところでは、って。

【濵口委員長】  入らないですね。

【武内委員】  ええ。そんな高尚な、って。こうなっている、そのギャップをどう埋めるかというのは、これは極めて重要な課題だと思いますね。

【濵口委員長】  はい、どうぞ。

【杉村委員】  武内先生の今のご意見に全く同感でございます。
上智大学も、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに入って、企業の方と議論させていただく場がございます。企業の方は、どうしても利益ということがある。でも、SDGsもCSRで大事だと言ったときに、今、武内先生や北村先生がおっしゃったとおり、まさにそのバランスをどうとって考えるかということがあると思います。
この間、実はこの写真コンテストと別にもう1つ大学で行った企画に「この商品が皆さんの手に届くまで」というものがあり、グローバル・ネットワーク・ジャパンの方が大学に来て、学生や市民の方と議論をする場がありました。やはり、そのときに、さっきおっしゃった、Tシャツが100リットルの水を使ってできるというような、そんな議論にみんなが参加できる場を作っていくようなことが大事であると感じました。産学連携ということは、今、言葉ではよく言われるのですけれども、なかなかできない部分もあるのですけれども、こうした議論を企業の方と共に考えることが重要だと考えました。

【濵口委員長】  大学の改革も、アントレプレナーの養成も、全てが、これ、深くつながっている問題なのですよね。その中で、日本、どう変わっていくのかと。
どうぞ。

【髙尾国内委員会委員】  今日の発表は、本当にすばらしい実践活動をしていることがよく分かり、とても勉強になりました。ありがとうございます。国や県などからの戦略的な対応と、市や地域からのボトムアップも出来る流れがあると良いのではないでしょうか。というのは、一企業や中小企業がどの程度のものが出来るかという話にもなりますが、例えば教育の部分であれば、教育の貧困にからみ、社会貢献も含めて、刑務所の教育であるとか、児童養護施設、それから母子の支援施設などの教育についても、企業というのは、ある程度、支援が出来るような体制は持っていると思います。ただ、それを発信していく場や行政の支援体制があると、もっと企業を巻き込めることが可能になるのではないでしょうか。

【濵口委員長】  それを、例えば、ユネスコと相談をして、そういう認証をするようなシステムがあれば……。

【髙尾国内委員会委員】  あると、いいですね。

【濵口委員長】  すごく活動が盛り上がるのですけれどもね。

【髙尾国内委員会委員】  はい。地域ユネスコ協会としての活動をしていますけれども、企業や学校や行政等を巻き込むことが出来ると、大きな輪に広がっていくと思います。

【濵口委員長】  出来ると、いいですね。
済みません。どうぞ。お二人。

【萱島委員】  時間がないので、要領よくお伝えしたいと思います。
先ほど、日本の企業にも是非途上国に関心を持ってもらいたいという話がありましたが、今、JICAでは官民連携の事業が非常に拡大しております。教育関係でも、例えば、公文がバングラデシュのブラックの小学校に協力して教育改善活動をしたり、リコーが教育機器をつかってインドの学校の授業改善に取り組んだりしており、それらにJICAが幾らかの支援をしています。日本企業からJICAへの支援の要望は非常に多く、商業活動としてどこまで成功しているかという意味ではまだ完全に自立的になっていないところもありますが、日本の民間企業の途上国への関心は大変高いと思いますし、これから増えていくのかなと思っています。
MDGsからSDGsへの変化というのは、基礎教育から高等教育まで含めた包括的な教育全体。途上国だけではなく先進国も含めた地球全体の問題として開発を捉える変化であり、総合性や包括性、若しくは相互依存性がSDGsの特徴だと思います。そういう意味でいいますと、実は日本の行政の活動として、途上国への援助と国内問題というのが十分リンクしていたかというのは、自分自身も援助に関わってきた立場で、必ずしも十分ではなかったかもしれないと感じています。高等教育は、先ほどの科学技術のお話の中でも出ておりましたように、大学の国際化が重要な課題となっているので、割と大学の先生がODA事業に参加する機会が増えています。特にASEANなどの大学支援や、科学技術分野のSATREPS事業などでは、日本の大学が重要な役割を果たしています。ですが、一方で、初等教育支援は、実は、余り日本の初等教育や中等教育との大規模な連携というのは必ずしもなかった。JICAも、開発教育支援を行っていたり、青年海外協力隊の現職教員参加制度を作ったりしていますが、必ずしもすごく大きなスケールではない。
先ほど、国内にもまだ多くの問題があるので、国内問題にある程度フォーカスすべきではないかという御意見もあったのですけれども、教育の関心が途上国を含む世界を見ないで日本国内に留まってしまっても、今の時代、日本の子供たちにとって望ましい姿ではないと思います。やはり、途上国のことも知りながら、日本の国内の問題を考える姿勢が大事だと思うので、例えば、途上国に対する援助と、日本国内の教育をつなげていくべきだと思います。大きくなったときに、世界の人々と一緒になっていろいろな活動をしなければいけないかもしれない日本の子供たちに、途上国を含めた世界の国々の姿を知ってもらうということは、すごく大事かなと思うものですから。是非、そういう途上国支援と国内の教育行政とをどうつなぐかというのが、多分これから非常に大事になってくるかなと思っています。

【濵口委員長】  秋永先生。

【秋永委員】  ありがとうございます。お時間頂きます。プレゼンテーションありがとうございました。
私自身のユースという立場と、それから、武内先生もイニシアチブを取られている、東大のサステイナビリティ教育プログラムの修了生としても、そういった立場から2点申し上げたいと思います。
先ほど、指標をどう決めるかというお話もありましたが、日本が推し進めているにも関わらずまだ指標に入っていなくて、プロセスの評価が必要であり、また企業も含めての支援が必要な2点になります。
1つが、教育と科学技術をベースとした研究活動の橋渡しです。現在、我々は、全国、国内外で四、五百のテーマが集まる中高生の学会、研究活動の支援と学会の運営をしています。その中で、スーパーサイエンスハイスクールや、スーパーグローバルハイスクールに認定されていなくても、身近な地域の課題、地球規模課題をテーマとした研究活動に取り組んでいる学校が増えてきていることを実感しています。が、そこにやはり、資金が足りなかったり、設備がうまく整えられないことを理由に、その活動が継続できないと。その課題というのは、将来的に、イノベーションのカテゴリーにもあるように、研究開発に従事する人口の増加というところに向けてハードルになってくると思っています。
ですので、例えば、企業の単純なCSR活動ではなくて、民間主導で、教育界向けの研究基金を設置して、そういったユースの段階から、イノベーションの人材を育成するということが、まず1つ挙げられると思います。
2点目には、高等教育における横串の仕組みというのが重要だと思っておりまして。これも、サステイナビリティ・サイエンスの分野で、人文社会科学と自然科学というのは、同じ学内ですら、研究者同士の連携がうまく生かされていないということを、自分の周りでも、よく見てまいりました。例えば、焼畑とか、エビの生産というものを課題に挙げたときに、アンケートやシミュレーションだけで終わらせるのではなくて、まずはマルチステークホルダーとか、学外や国際連携の、まず基礎となるのは、同じ学内の中の研究者や、知識・技術を持った人が、いかにその研究課題に……。

【濵口委員長】  実践する。

【秋永委員】  そうですね。一緒に社会実装出来るかというところ。そして、そこからの創業支援というのも、施策に盛り込めたらというふうに思っております。
すみません。長くなりました。

【濵口委員長】  すみません。議長の不手際で、随分時間を超過してしまいまして。議論が尻切れとんぼになっておりますが。今日、かなり大事なポイント、幾つか頂いたように思います。特に、指標をどういうふうに解釈していくか、それが、特に、日本が18位になっているところの分析も必要ではないかというところ、これ、大事でありますし。それから、後半のところでは、TPPとか、この経済とどう考えていくか。この辺ももう少し議論を深めながら、経済活動として成立するSDGsを、日本国内、国外に設計していかなければいけないのではないかなというのが、大体、大まかな今日の結論かと思います。
事務局にお返ししますので、あとお願いします。

【福田国際戦略企画官】  失礼します。次回の日程につきましては、また御連絡差し上げます。また、資料につきましては、封筒にお名前を記載いただければ、お送りいたしますので、そのようにしていただければと思います。
ありがとうございました。

【濵口委員長】  どうも今日は、長時間ありがとうございました。

―― 了 ――


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