第1回持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会 議事録

1.日時

平成28年8月23日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 3F3 特別会議室

3.出席者(敬称略)

[委員]
濵口道成(委員長)、秋永名美、安達仁美、植松光夫、小川愛、萱島信子、古賀信行、佐藤禎一、角南篤、吉見俊哉

[オブザーバー]
猪口邦子、今みどり、西園寺裕夫、重政子、髙尾初江、寺本充、見上一幸

[事務局]
森本国際統括官、匂坂国際課長、福田国際戦略企画官、本岡ユネスコ協力官、その他関係官

4.議事

【本岡ユネスコ協力官】  では、定刻となりましたので、会議を始めさせていただきます。本日は御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまより持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会を始めさせていただきます。
ただいま出席の委員が9名で、委員16名の過半数9名以上となっておりますので、定足数を満たしております。
委員長の選出までの間、事務局で進行をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は第1回ということで、まずは委員の皆様の御紹介をさせていただきます。
秋永委員でいらっしゃいます。


【秋永委員】  よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  安達委員でいらっしゃいます。
【安達委員】  よろしくお願いします。
【本岡ユネスコ協力官】  植松委員でいらっしゃいます。
【植松委員】  植松です。よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  小川委員でいらっしゃいます。
【小川委員】  よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  萱島委員でいらっしゃいます。
【萱島委員】  よろしくお願いします。
【本岡ユネスコ協力官】  古賀委員でいらっしゃいます。
【古賀委員】  古賀信行です。よろしくお願いします。
【本岡ユネスコ協力官】  佐藤委員でいらっしゃいます。
【佐藤委員】  佐藤です。よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  角南委員でいらっしゃいます。
【角南委員】  よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  濱口委員でいらっしゃいます。
【濱口委員】  濱口です。よろしくお願いします。


【本岡ユネスコ協力官】  このほか、本日は、本分科会の委員に加えまして、日本ユネスコ国内委員会委員にも御出席いただいておりますので、御紹介申し上げます。
今委員でいらっしゃいます。


【今国内委員会委員】  今と申します。よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  西園寺委員でいらっしゃいます。
【西園寺国内委員会委員】  よろしくお願いします。
【本岡ユネスコ協力官】  寺本委員でいらっしゃいます。
【寺本国内委員会委員】  よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  髙尾委員でいらっしゃいます。
【髙尾国内委員会委員】  よろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】  見上委員でいらっしゃいます。
【見上国内委員会委員】  よろしくお願いいたします。


【本岡ユネスコ協力官】  なお、猪口委員は20分ほど遅れての御出席になると伺っております。
では、続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第にございますとおり、配付資料の1から9、加えまして基礎資料集が一つ、あと「我が国のユネスコ活動について」という報告書、パンフレットがそれぞれ一つ、追加で委員の皆様には席上配付資料がございます。不足等お気付きの際は、会議中でも結構ですので、事務局までお知らせいただければと思います。
それでは、議題1に移らせていただきます。議題1は人事案件の審議となりますので、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開規則に基づき、非公開とさせていただきます。非公開部分を除いては、御発言は議事録としてそのままホームページ等で公開されますので、御承知おきくださいませ。
それでは、傍聴者の方は、恐れ入りますが、一時御退室をお願いいたします。


(傍聴者退室)


------ 非公開 ------


(傍聴者入室)


【濱口委員長】  まず、森本さんから御発言をいただきたいと思います。統括官、すみません、一言お願いします。日本ユネスコ国内委員会事務総長を務めておられます。開催趣旨も含めて一言ごあいさつをお願いいたします。


【森本国際統括官】  ただいま御紹介いただきました国際統括官の森本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、お忙しい中にもかかわらず、たくさんの委員の方に御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。今回は第1回の特別分科会ということで、先日開催されましたユネスコ国内委員会におきまして御承認をいただきまして、持続可能な開発目標への対応をどうするかということを御議論いただく場としてこの分科会が開催されるということになりました。
それで、この目標は、御承知のとおり2030年という長期をにらんだ開発目標でございまして、昨年9月の国連の総会におきまして合意されて、各国が今、それに向けていろんな活動を活発化させていると、こういうことでございます。
日本政府といたしましても、今年の5月に、持続可能な開発目標推進本部を官邸に設置いたしまして、関係省庁が協力してこういう地球規模の課題に対応していこうと動きを始めているところでございます。
それに当たりまして、文部科学省といたしましても、ユネスコ活動を通じて様々な教育、それから科学、文化、いろんな課題が含まれているわけでございますが、これを省庁横断で取り組んでいくにはどうしたらいいかということで、是非皆様方のお知恵をいただきたいということでこの特別分科会を設置させていただいたところでございます。
ユネスコが主に扱うのは教育でございまして、ゴール4といわれているものでございますが、それ以外の開発目標につきましてもどのように取り扱ったらいいか、是非御議論いただきまして、全体として我が国の顔が見える対応というのが図られると有り難いなと思っておりまして、是非お知恵をいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございました。
それでは、ここから議題2、SDGsの推進についてお諮りしたいと思います。
まず、事務局より説明をお願いいたします。


【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。それでは、配付資料に沿って御説明差し上げたいと思います。
まず、資料3-1をごらんいただきたいと思います。横の紙の表題が青い色で表示されている資料3-1でございます。
まず、このSDGsの採択に至る経緯ということでございます。このSDGsには、前身として、ミレニアム開発目標、いわゆるMDGsというものがございました。これが2000年から2015年までを期限として目標というものを設けて、その達成に向けて取組というのが図られてきたというものでございます。真ん中にあるとおり、一定の成果を達成したものの、一方で未達成の課題も残されたと。具体的にはここにあるような課題ということでございます。また、2015年に至るまでの間に様々な新たな課題ですとか、あるいは国際的な環境も変化したということを踏まえ、これも2015年の前から議論がなされてきたわけでございますが、それを踏まえ、昨年の9月の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標として全会一致でこれが採択されたというものでございます。
このMDGsとの大きな違いとしては、この上のところにやや黄土色で書いてありますけれども、MDGsは開発途上国向けの開発目標という色合いが非常に濃かったというものでございますが、このSDGsについてはそうではなく、先進国を含む国際社会全体の開発目標として、そして新たに2030年を期限とする包括的な17の目標を設定したというものでございます。この点がMDGsとの一番の違いとされております。
17の目標の具体的な内容につきましては、1枚お開きいただいた2枚目に17の目標が列記されております。この中で、先ほどあった目標4には教育でございますが、それ以外にも、例えば科学技術の関係でございますとか、あるいはエネルギーの関係ですとか、あるいは平和の構築ですとか、様々な目標が書かれているというものでございます。
これは、17の目標のさらに詳細ということで169のターゲットというものがあるわけでございます。具体的な目標につきましては、次の資料3-2でございますけれども、これが2030の原文というものでございますけれども、この中で14ページをお開きいただきたいと思います。14ページ以降に個別具体の目標について書かれているというものでございます。目標1であれば、その下に1.1から1.5、1.a、1.bというように目標が細分化されているというものでございます。詳細については割愛させていただきたいというように思っております。
次に、資料4でございます。こういったSDGsの策定というものを踏まえまして、先ほど統括官よりあいさつの中で触れられたとおり、このSDGsの推進本部というものが我が国の中で設置されたというものでございます。本部長は内閣総理大臣、そして副本部長には官房長官、外務大臣、そして本部員には文部科学大臣を含むほかのすべての国務大臣が指名されているというものでございます。この中で具体的に日本政府としてどのようにSDGsに対応していくかということが今後検討されていくというものでございます。
当面、こういった策定あるいは本部の設置というものを踏まえてどのような取組がされているかという部分について、いくつか御紹介差し上げたいと思います。
まず、資料5-1でございます。
これは国際条裡における当面の動きということでございまして、昨月の7月にハイレベル政治フォーラム(HLPF)というものがニューヨークで開催されたというものでございます。これはこれまでも何回か開催されているものでございますけれども、この SDGsの実施あるいはモニタリングというものを、全体を取りまとめていくというような性格のフォーラムであるということでございます。日本政府としてはこれに濱地外務大臣政務官が参加をされておられるというものでございまして、次の資料5-2の方に、その際の濱地政務官のステートメントを配付させていただいております。この中で、日本としてSDGsにどのように取り組んでいくか、そしてまた、それに関連して様々な取組を日本としてもやっているわけでございますけれども、そういったものの紹介をされているというものでございます。例えば、今度アフリカでございますTICADでありますとか、あるいは科学技術を通じたSDGsへの貢献ですとか、そういったものについて紹介がされているというものでございます。
次に、ユネスコにおける取組ということでございますけれども、現在、ユネスコの中においてどのようにこれを取り組んでいくかということについて、いろいろな整理がされておられるというものでございますけれども、その詳細につきましてはまだ検討が進んでいるということでございまして、次は本年の秋にユネスコの執行委員会が開催されます。そこに向けて何らかのユネスコとしての取組、計画案というものが今後示されるということになっております。
そういったことも踏まえまして、資料6でございますけれども、ユネスコにおいては、来年から新たな事業と予算、つまり2018年から2021年の事業予算を決定するということになっております。そして、そこにおいて、どのような分野に重点を置いていくべきかと。特にSDGsの実施に関連してということでございますけれども、日本を含む各加盟国に対してのアンケートというのが行われたところでございます。その結果というものが配付されておりますので、これを参考に配付しているというものでございます。
このことにつきましては先日の国内委員会総会などでも議論がありましたけれども、例えば教育分野における取組として、ESDですとか、あるいはそのほかに様々な取組がございますけれども、しっかりと日本としても打ち出していく必要があるのではないかということでございますが、例えば、この資料6の1ページのところにございますけれども、ユネスコが取り組んでいくべき分野としては、やはりSDGsの4、これを最も重要であるというように回答する国が多かったというものが1ページ目にございます。
それから、2ページ目、3ページ目以降には、特にどういった分野に重点を置いていくかということでございますけれども、例えばESD、これは持続可能な開発のための教育という、我が国が積極的に取り組んできたものでございますけれども、こういったものが重要であるというような意見というのはかなり多いという結果が出ております。また、4でそれ以外の様々な取組についても重視するというふうな意見もあるというものでございます。
3ページ目のところから、グラフではなくて回答数と書かれておりますけれども、重点を置いていくということは、すなわちある程度取組を集中していくべきであるということでございまして、例えばこういった分野は活動を停止すべきというようなものについても回答というのがなされているというものでございます。これについても参考に記載をさせていただいております。
こういった各国の意向も踏まえ、今後、ユネスコにおいてどのような事業・予算というのをSDGsの実現という観点から取り組んでいくべきかということに関しまして、是非この委員会におかれても御意見というのをまとめていただき、そして、私ども政府としてもそれをユネスコの方にインプットしていきたいというように考えております。
次に、資料7でございます。資料7は、せんだって、この特別分科会が設置されるに当たりまして、国内委員会の運営小委員会及び総会における主な意見というものを取りまとめたものでございます。個々の意見につきましては御紹介は割愛させていただきます。こういった意見も参考に、またこの後、意見交換をいただければというように考えております。
次に、資料8でございます。資料8は、本日、意見交換を行っていただくに当たっての議論のポイントということで、いくつか例として示させていただいたものでございます。もちろんこれにとらわれる必要はございませんが、一つの視点というものでございますけれども、まず、我が国として、ユネスコに対し、SDGsの達成に向け、どのように取り組んでいくべきか、あるいは、特に重視すべき分野あるいはアプローチというのはどのようなものが考えられるかということ。それから2つ目でございますけれども、その達成の観点から、これまで取り組んできたユネスコ活動をどのように進めていくべきか。その際、ユネスコ以外の様々な国際機関ですとか、あるいはマルチ(国際機関)以外のバイ(二国間)のプロジェクトですとか、あるいは文部科学省以外の様々な省庁における取組、こういったものとどのように連携を図っていくべきかということ。次に3つ目として、その達成に向けたモニタリングということでございますけれども、これは、目標は非常に詳細に決められているわけでございますけれども、これをどのようにモニタリングしていくかというところはまだ不確定な要素がございます。そういった中で、我が国あるいはユネスコが有する強み、これをどのように生かしていくべきか。また、そのモニタリングというものは、当然、技術的な問題だけではなくて、様々な現場でSDGsの目標の達成のために取り組んでおられる方々がいらっしゃるわけでございますけれども、そういった現場の状況をいかに把握して、そしてその改善に直接つながるような取組を展開していくべきかといったようなこと。そして最後に、特にこれは国内においてSDGsの考え方あるいは取組を普及・啓発していくという観点から、ユネスコ活動に取り組んでおられる様々な主体がどのような役割を果たしていくべきかと。こういったことなどが当面の議論のポイントとして考えられるのではないかということでまとめさせていただいております。
このほか、本日配付させていただいた資料といたしまして、先ほど資料6で御紹介させていただいたアンケートにつきましては、その詳細なもの、これは当然、教育以外についてもアンケートの結果が出ておりますので、それを席上配付資料として配付させていただいております。
また、そのさらに下でございますけれども、本日の推進特別分科会の基礎資料というものがあるかと思います。非常に分厚い資料でございます。この中で、例えば先ほど冒頭申し上げたミレニアム開発目標の主な達成状況でありますとか、あるいは、そもそも日本はMDGs(ミレニアム開発目標)をどのぐらい達成できたのかといったようなこと。そして、このSDGsと関連して、我が国において、例えばG7ですとか、そういった場でどのようなことが決められてきたかといったようなこと。さらには、教育、科学技術など個々の分野においてどのような取組が行われているか。また、特に文部科学省としてはどういった事業などを展開しているかということにつきまして、この基礎資料の中で簡単に取りまとめさせていただいております。
非常に資料が多くて大変恐縮でございますけれども、こういった様々な動きが国連あるいは関連する国際機関、ユネスコを含めた国際機関、そして我が国においても取組が開始されているというような状況を踏まえ、今後どのような形で進めていけばいいかということにつきまして、意見交換をいただければ幸いというように思っております。
事務局からは以上でございます。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。
それでは、続きまして、萱島委員より資料9について御説明をお願いいたします。


【萱島委員】  ありがとうございます。JICAの萱島と申します。よろしくお願いいたします。
お手元に委員提出資料としてJICAのポジションペーパーを入れさせていただいております。御存じのとおり、JICAは日本政府の二国間援助を担当する実施機関でございまして、教育分野も重要な領域としてかねてより協力をしてきております。JICAの協力の方針として、ちょうどSDGsが成立いたしました昨年の秋にJICAとしての教育協力の方針についてまとめております。それがこのポジションペーパーでございます。
最後のページにBOX記事がございまして、JICAのこれまでの協力の主な取組というのを簡単にまとめてございますので、方針について触れます前に、そもそもJICAが教育分野で何をしてきたのかというのを、見ていただければと思います。15ページになります。
JICAのこれまでの教育協力ですけれども、基礎教育から高等教育まで比較的バランスよく協力をしてまいりました。
基礎協力につきましては、例えば小中学校の校舎建設、理数科分野の教員の研修、それから学校の運営の支援というようなことが主な協力内容でございました。
職業訓練や技術教育については、例えば訓練校や訓練施設の建設ですとか運営の支援、それから、かつては、どちらかというと産業に直接つながるような産業人材の育成のための訓練が主だったんですけれども、特に2000年頃以降は、社会弱者と言われるような女性ですとか障害者ですとか除隊兵士ですとか、そういった人たちの生計向上のための職業訓練も随分と増えてまいりました。これが2つ目の領域。
学の教育活動や研究活動の改善のための技術支援を行ってきております。かつてはリーディング・ユニバーシティーと言われるような各国の中核大学に対する個別の支援が主だったんですけれども、最近は大学の間をつなぐ、つまり大学間の留学を促進するですとか、共同研究を促進するといったような大学の国際化を視野に置いた、モビリティーを高めていくような教育協力というのも随分増えております。併せて、途上国の大学も随分成長してきたこともあり、日本の大学と途上国の大学との間での共同研究を行う科学技術協力(SATREPS)を、科学技術振興機構と共同で実施しております。留学事業も、国費留学生とは別に、個々の協力プロジェクトの中で相当な規模で行われております。
このように、基礎教育と高等教育と職業訓練、大きく3つの領域で支援を行ってきているんですけれども、技術協力で毎年大体150億円ぐらい、無償資金協力で150億円ぐらいが支出されております。有償資金協力は年ごとにプロジェクトがあったりなかったりなので、あると例えば1件500億円ぐらいで実施されますが、実施件数は少ない状況でございます。資金の配分でいきますと、基礎教育・高等教育・職業技術教育と分けますと、5・3・2若しくは5・4・1ぐらいというような割合でございます。
これがもともとJICAがやってきた協力事業でございまして、SDGs成立以降もこのような活動を中心に協力しています。SDGsが成立して新たなJICAの教育協力のビジョンを6ページに示しています。このポジションペーパーでは、Learning Continuityという言葉を一つのキャッチフレーズとして打ち出しております。何がつながっている(Continuity)かと申しますと、6ページの図に同心円が3つあるんですけれども、一つは教育の中のサブセクターの間をつなぐ。例えば就学前教育から初等教育、中等教育、高等教育若しくはノンフォーマル教育といったような教育の間の異なるサブセクターの間を切れ目なくつないでいこうというのが1つ目のContinuity。
1つ目の丸がサブセクター間のつながりでございます。2つ目の丸が開発支援と紛争後の支援若しくは紛争中の支援への間をつなぐContinuity。冷戦以降も紛争国や紛争地域は大変増えておりまして、紛争後の復興を支援していく事業も増えています。そういった復興支援から、通常の開発事業というのも実はその間に乖離があるんじゃないかということがよく言われてきておりますが、例えば難民地域に対する支援からどのような通常の教育のところに持っていくかといったような、そういうつながりについてのContinuityが2つ目でございます。3つ目は教育分野を超えた他セクターとのつながりということで、例えば保健分野とのつながり、経済分野とのつながりといったようなところについても、切れ目なくつなげていこうというのがこの新しいビジョンでございます。
最後に、新しいポジションペーパーで何を重点にしているかについて、お手元の資料の8ページから、「JICAは何に取り組んでいくのか――重点分野」というのを入れてございます。重点分野として4つ領域を掲げております。
1つ目が、8ページの下の方にございます3.1、「学びの改善に向けた質の高い教育」です。MDGsの期間に就学率は随分上がりまして、途上国でも平均すると就学率は9割を超えるような状況になっております。就学率を上げる量的な改善から質的な改善を図っていくことに、基礎教育の重点がやや移りつつあります。高等教育はまだまだ量の拡大も必要ですが、同時に、例えばイノベーションにつながるような高等教育を行うためにはやはり教育の質が重要、また、教育の互換性を担保するためにも質が重要です。そのため、今、教育の質に対する関心が大変高まっておりますので、質の高い教育というのを1つ目のJICAの重点に掲げてございます。主には、例えば今までもやってきましたような理数科教育の改善といったようなことを継続していく。さらに、高等教育においても質保証についての支援などが、規模はやや小さいんですが、始まっておりまして、そういったものもこの1つ目の重点分野の中では含めてございます。
2つ目の重点領域が、11ページの真ん中辺りに、3.2として「公正で持続的な成長を支える教育」と掲げてございます。MDGsでは社会セクターを中心に、教育や保健、貧困というものを中心に協力が行われてまいりましたけれども、それだけでは十分ではなく、貧困の削減につながるような成長をどういうふうに促していくかというのがSDGsでの新たな視点でもございました。開発協力大綱の中でも、質の高い成長という言葉が一つのキーワードにもなっています。ということで、成長につながるような教育というのを2つ目のJICAの重点にしております。具体的な活動としては、今までも行ってまいりました職業訓練や職業教育、それから高等教育を中心にした産業人材の育成といったものをこの中に入れてございます。
12ページの下半分のところに、3.3といたしまして「知識共創社会づくりのための教育」が書いてあります。知識基盤社会は、今、途上国でもキーワードになっており、どのようにしてイノベーションを生み出す高等教育を普及するかが、比較的貧しい国でも大変関心の高い事項になってございます。JICAも、特にアジアを中心として高等教育支援、中核的な大学づくりを支援してきたんですけれども、恐らく知識基盤社会というのは高等教育だけで実現するわけではなくて、初中等段階からの例えば理数科教育、STEM教育と言われるような分野も重要であろうということで、これまでJICAが行ってきました初中等分野の理数科教育から高等教育の工学教育までをつなげて、知識共創社会を作り上げていくための教育というのを3つ目の重点にしております。さらには、今、科学技術の分野での共同研究に協力事業の中で取り組んでいますので、そういったイノベーションにつながるような研究活動も知識共創社会づくりのための教育としては重要だと考えております。
最後の4つ目が、13ページの下のところに、3.4として書いてある「インクルーシブで平和な社会づくりを支える教育」です。SDGsのキャッチフレーズがno one left behindということで、格差が広がる世界の中で、どのように残された人々に手の届くような協力を行っていくかというのがSDGsの中でも随分と議論され、目標の中にも入っております。インクルーシブで平和な社会をどう作るかということで、3.4は残されていく人々に対する支援を教育の中でどのように行っていくか、例えば貧困層、女子、障害のある人々、少数民族といったような不利な立場に置かれた人たちに対する配慮を伴った教育、若しくはノンフォーマル教育など、さらには、紛争や災害で影響を受けている人に対する教育をどういうふうに行っていくかというようなところを4つ目の領域として掲げております。
JICAの技術協力はJICAのスタッフだけでやっているわけではなくて、国内のいろいろな専門的な方々の御協力をいただいて行っておりますので、急にいわばハンドルを切れるわけではなく、やはり今までやってきたことの上に積み重ねていく必要がございますので、今までやってきた協力の経験ですとか、協力してくださる方々の支援をベースにしながら、SDGsの中でうたわれている理念や今新たに課題となっていることも十分視野に置きながら、このような形でJICAとしても協力を考えていったらどうかというのがこのペーパーの趣旨でございます。
ちょっと長くなりました。失礼しました。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、事務局より、黒田委員及び杉村委員の提出資料について説明をお願いします。


【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。先ほどの資料9の萱島委員の資料の後、16ページ以降でございます。本日御欠席の黒田委員、それから杉村委員、いずれも教育の御専門でいらっしゃいますけれども、資料をいただいておりますので、添付させていただいております。簡単にポイントのみ説明させていただきます。
まず、16ページの黒田委員でいらっしゃいますけれども、この16ページのところにございますとおり、目標の4(教育)と併せて目標の16(平和)、これを重視して取り組んでいくべきではないかということ。それから16ページの下として、具体的な当面の進め方として、政策立案ですとか、あるいは政策評価、そういった様々なポイントでSDGsを位置付けるようなシステムというのを考えるべきではないかということ。それから、17ページの方では、ESDと併せてGCED(グローバル・シチズンシップ教育)、これを共に促進できるような進め方というのを考えていくべきではないかということ。そして最後のところでは、学校教育やノンフォーマルな教育機会、様々な教育機会においてこのSDGsの普及・啓発を進めていくべきではないかというコメントをいただいております。
次に、18ページの杉村委員のコメントでございます。杉村委員のコメント、まず冒頭のところでは、よりよい人間社会の実現に向けた概念を複合的にとらえる分野というものを、個々の目標だけを見るのではなく、全体を焦点化していくことが重要ではないかということ。そして、具体の取組としては、これまで行われてきたユネスコ活動とSDGsとの関連性、これを再評価し、今後重視すべきもの、あるいは従来なかった活動を提案するために、ユネスコの取組、そして我が国が培ってきた実践や経験を精査する必要があるのではないかということ。そして、19ページの方では、ESD(持続可能な開発のための教育)として展開されてきた実践活動の蓄積は、SDGsの個々の目標と関連性を持つものが多くあると。そして、その活動を整理するとともに、SDGsについて学び、考えることが必要ではないかということ。そして、最後のところでは、このSDGsを展開するプラットフォームとしての役割を我が国は担うことで国際社会におけるリーダーシップをとることが有意義ではないかということ。そして、教育に関しましては、先ほど萱島委員からも御指摘ございましたけれども、量的に就学者数が増加したことだけをもって評価するという量の側面から、質、公正な質の高い教育、これをどのような観点から見きわめていくのかということが重要ではないかというような御指摘をいただいております。
以上でございます。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。
本日は第1回目の会合ですので、この配付資料8の議論のポイント例を参考にしつつ、自由な意見交換という形で議論を進めさせていただければと思います。ただいまの説明の御質問も含め、今後、本分科会をどのように進めていくかについて御意見をいただくようお願いしたいと思います。いかがでしょうか。御自由に発言していただければと思いますが、なかなか包括的なお話で意見を出しにくいかもしれませんが、いかがでしょうか。佐藤委員、お願いいたします。


【佐藤委員】  こういう会議の最初に発言をしておくと発言をする機会が失われずに済みますので、すみません、2点お話をしていきたいと思います。
一つは、これ、2030年に向かって具体的なターゲットをどうしていくかということについては、現実的なターゲットをきちんと提示して達成するようにしなければいけないのではないかと思うんですね。MDGsの場合には、8つの目標をいずれも失敗したわけで、例えばeradicate povertyと書いて、eradicateはできないわけで、さっきの資料にもありましたように、貧困率が下がったと、こういって威張っていますが、要するに達成できなかったわけで、そういう非常に反論しにくいといいますか、立派な目標で、それはそこまでいかんでもええやないかと言いにくいですけれども、でも、現実に達成できる目標というものを作って努力をするというような姿勢が必要ではないかと思っております。
その観点でもう一つ、杉村先生のコメントにもありましたけれども、教育の観点ですと、今までのequalityからequityという概念が出てきているんですけど、その取扱いというのは現実的な取扱いとの調和というのは難しいこともあると思いますので、その辺は現実的に実現できるきちんとした目標というものを設定すべきだろうと思っています。
2つ目の意見は中身の話ですが、それは2つありまして、1つは、今のSDGsで私の最大の不満は、文化について何も書いてない。文化は1966年の人権規約、A規約では、また題名から文化権というのが出てきて、世界の人々に文化権が保障されていなければいけないはずなんですけれど、どこにも出てこないですね。これは私、直接ユネスコの事務局長ボコヴァさんにも進言をしたんですけれど、結局入っていません。それはどこかの形で文化にかかわる達成目標みたいなものが入ってくるとうれしいなと、こう思っております。
それからもう一つは、サステイナビリティ・サイエンスというのは日本が言い出して、そこまで持ち込んで、現在、ユネスコの一つの目標にもなっていますけれど、ただ、これは概念として非常に理解があいまいなところがあって、いま一つ、それによって何をするのかというのが明確ではないところがありますので、その点をきちんとしてくれるとうれしいなと思います。
以上でございます。


【濱口委員長】  ありがとうございます。貴重な御意見、3点いただきました。
いかがでしょうか。御意見をまずいろいろ今日は出していただければと思いますが。御発言なければ、指名させていただいて。角南先生、いかがですか。


【角南委員】  先日も外務省の科学技術顧問の下でいろいろ、我々、SDGsについて議論をし、提言を岸田大臣にお渡しし、TICADに持っていっていただくということで議論をしておりましたけれども、今回、SDGsの中で科学技術が果たす役割がかなり期待されているのではないかということで、私もかつては、前に何回か、ユネスコの関係でいいますと、インドとかベトナム等というところでユネスコ主催の科学技術人材の育成についてのシンポジウムということで何回か呼ばれて、行ったことがございます。やはりそこでも感じていたんですが、日本の教育、STEM教育というのは、今あちこちでSTEMと呼ばれています。それはアメリカでもSTEMと言われているし、ヨーロッパもSTEMと言われている。科学技術外交、僕らがやっているところでも、みんなSTEM、STEMって言うんですけれども、日本のやる理数系教育の中身、質というのはどういうところに強みがあって、その辺のところをどういうふうに出していくのかというところがすごく重要になってくるのかなと思っています。
ですから、SDGsのUNの中で、先般も科学技術を使ってどうやってSDGsを大成するかということでSTSフォーラムというのが開かれて、私の大学からも一人、有本さんという人が出席をしましたが、やっぱりその中でSTEMとかって言うんですけど、その中で日本らしく積み上げてきたことということは何かうまく出せていけるものが必要かなと感じています。ですから、この辺については少し別途国内でももう一度きちっと議論をして、我々も一言で日本の特徴のあるSTEM教育って何なのかなって言いづらいんですけど、ああいう国際会議に行くと、インドとかベトナムとかからは我々に対する目が、日本から来ているんだから、日本で成功しているんだろうと。それは何だということをよく聞かれるものですから。あと、イノベーション人材とか、やっぱり結構日本って一つの特徴があることをやっているんじゃないかと言われるものですから、なかなかそのところをうまく出せないので、そういうことをここで別途きちんと検討した上でアピールしていくというか、出していくというのが必要かもしれないなと。


【濱口委員長】  我々が客観化できてないですね。


【角南委員】  そうなんですね。


【濱口委員長】  余りにも普通の空気みたいなところがあって、STEMなんですね。


【角南委員】  ええ。本当そうです。


【濱口委員長】  今、現実的なターゲット、文化、サステイナビリティ・サイエンスからSTEM教育のお話までありましたが、もう少し御意見をいただければと。女性の御意見をいただきたいんですが、秋永委員、いかがですか。


【秋永委員】  はい、分かりました。秋永名美と申します。現在、株式会社リバネス国際開発事業部にいるんですけれども、もともとユネスコのESDの世界会議ですね、日本のユース・コンファレンスを経て代表として参加させていただいた経緯があります。このたびはどうぞよろしくお願いいたします。
まず、先に、今の角南先生のお話に続けて申し上げるとすると、私も実はSTEM教育というものに少し、それをそのままうのみにしてはいけないなということを感じております。日本のESDの特徴と、今、先生がおっしゃったんですけれども、かなり日本の自然ですとか、若しくは津波を含む自然災害からどう地域の課題を乗り越えていくかというところに、現在、国内のESDの活動のよさであるとか強みがあるのではないかと感じております。ですので、実は私どももある意味、NEST教育という新しい言葉を最近使っておりまして、まずはネイチャーの自然から学び、その先にどうそこから生まれる工夫・技術を組み合わせたり、物を作ってエンジニアリングしていくというような、何か自然から積み上げていく教育というのは日本のESDのよさではないかということをまずはお伝えしたいなと思います。
それ以外には、教育から先に、どのようにそこで育てた人材をほかの目標とつなげていくかという意味では、例えば目標4の教育と目標9のインフラや産業化、イノベーションというところをどう橋渡しをしていくかと。例えば科学技術にせよ、国内の環境にせよ、それを学んだ子供たちがどう、目標の中にもありましたが、例えば研究開発の人材となり、それを具体的に地域の産業や創業につなげるような人材になっていくかというところで、本当に教育から産業化まで一貫した取組というのも作っていく必要があると感じております。そういった意味で、是非この分科会では、SDGsの目標の中には「あらゆる」とかかなり大きな言葉があるんですけれども、この場ではより具体的に、どういった組織とかどういった世代が、例えば5年ごとに具体的に数値目標ですよね、何人とか何件とか何%のといった具体的な国内の目標を設置できるような、そんな議論をしていけたらと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。NEST教育ですね、つなぐ、今日もさっきスリランカの大統領顧問がJSTに来られて、STSフォーラムの話をちょっとさっきまでしていまして、やっぱりSTI、サイエンス・テクノロジーが仕事と産業にどうつなげられるか、特に開発途上国というのはかなり大きな、今のつなぐというお話は本当に重要な課題だという議論をずっとしておりました。
安達委員、いかがですか。


【安達委員】  よろしくお願いします。安達と申します。所属は、今は信州大学の教育学部で教育方法学の専門として働いてはいるんですけれども、ずっと10代の頃から民間ユネスコ活動を続けてきた関係で、今は長野ユネスコ協会に所属しています。なので、私の立場としていつも考えてしまうのが、民間のユネスコ協会で裾野で活動している方たちにどうSDGsを伝えていくのかだったりとか、あとは、ユネスコスクールも、今、世界で日本は一番たくさん数があるということで、ユネスコスクールの子供たちや先生方にどう伝えていくのかというところの視点で考えてしまうんですけれども、なので、最近ようやくESDについて理解が深まってきたところで、またSDGsとかGAPとか、あとまた、今回、グローバル・シチズンシップ教育というところが入ってくると、もう頭の中で混乱してしまうわけですよね。なので、まず分かりやすくそれらの出てきているものを整理していくことが必要だなということをすごく感じています。恐らくすごく重なるところも多いと思うので。という意味でも、例えばSDGsの中でも、教育目標の中の4.7のところにESDという言葉が入ってくるということを考えると、ずっとユネスコが先導的に進めてきているESDという観点でどう実現できるのかということを考えていくというところも一つ、分かりやすく伝えていく筋なのかなということも思ったりもします。
今日の議論のポイント例で4点挙がっていますけれども、特に4点目のこれから国内においてどう普及・啓発していくのかというところ、正に裾野で活動されている方たちにどう伝えていくのかとか、分かりやすい形でどう実践に結び付けていくのかという観点で考えていくというところが必要なのかなというところで思うことだと、今、実際にもう動いているESDに関連するような活動をSDGsの視点で位置づけていったりとかいうようなところも必要なのかなと思うところがあります。
例えばなんですけれども、ずっと民間のユネスコ協会で活動してきている身としては、今日の参考資料として基礎資料として配られているかと思うんですが、85ページに日本ユネスコ協会連盟によるSDGsの取組事例というところでいくつか挙げられていますが、その一番頭の世界寺子屋運動は、1989年からずっと続けられている活動です。途上国の読み書きできない子供や大人の方たちに学ぶ機会を作っていくというところで識字クラスを支援していくという活動なんですけど、例えばこの運動でSDGsの中の目標4の中に重なるところ、分かりやすさというところがあると思いますし、あと、例えばこれは寺子屋運動だけではなくて、そこから付随して、ここのプロジェクト地に行くスタディツアーというものもあったりします。毎年、高校生がスタディツアーで行ったりとか、ユネスコ協会のメンバーがスタディツアーでそこに学びに行く。で、学んだところからまた地域に広がっていくという活動があったりとか、あとは、ユネスコスクールの子供たちがこの寺子屋運動について学びながらリーフレットを作って、それが次の活動につながっていくという活動とか、いろんな活動がここから付随して行われてきているというところがありますので、例えばGAPで示されている優先行動の中のユースという部分とも重なるかなと思いますし、あとは、2014年の3月に出された「多様化の時代におけるユネスコ活動の活性化についての提言」の中でも、若者とかユネスコスクールというところがポイントとして出てきていますので、それが2019年までに達成するというような目標で今進められているところがあります。なので、SDGsは2030年ですけれども、まず2019年を目標にしているGAPとか寺子屋の活性化等の提言といったような、そういうようなところと併せながら、今、実際に動いているものを位置付けていくという考え方もできるのかなということをちょっと思いながら考えているところです。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。今動いているものを位置付けるということですね。それから、やっぱり17の項目の下に169の項目があって、ほとんど記憶するのも、私なんかアルツハイマーのちょっと手前のところ、読んだ瞬間から忘れていきますので、もう少しこれを、本当、御指摘のとおり整理しなきゃいけないなというような気はしています。この前のJICAのセッション、田中さんにもお会いした、6項目ぐらいにこれは整理できるという御意見がありましたですね。ちょっとそういう整理も要るかなという感じはしています。
いかがでしょうか。御自由に発言していただいた方がいいと思うんですけれど。吉見さんを見てしまう。いかがですか。


【吉見委員】  吉見でございます。先ほど黒田委員のペーパー、それから杉村委員のペーパーにもございましたけれども、やはりグローバル・シチズンシップ教育というものに対する取組というのを日本政府ももう少し強化すべきであると思います。いろいろな複数の目標に対して戦略的に取り組んでいくということをしていかないと、フレキシビリティーが失われてくると思います。黒田委員の書かれているものの中では、韓国の方がやっているからというふうに対抗をもって推進するのではなく、ちゃんと国際連携をしながらGCEですか、グローバル・シチズンシップをやっていくべきであるということが出ています。
それから、杉村委員のコメントの中にも、インクルーシブな教育というもの、これがグローバル・シチズンシップ教育との関係で取り上げられていくべきであるという話になっているかと思うんです。私もこれは同感でございます。と申しますのは、現下の状況を見ましても、紛争国の増大、それから難民の劇的な増大、それから世界的に見てやはり格差、国内的にも諸外国においても格差が非常に広がっていて、また、その中でヘイトスピーチに代表されるような形での差別意識といいますか、それはかつてより大きくなってきていると思います。他方で社会運動等について国境を越えてネットワーク化が進んでいるという、そういうすべてのいろいろな動きを考えますと、この中核にグローバル・シチズンシップという概念がやはりあると思うわけで、そうしますと、そのグローバル・シチズンシップ教育とESDとをどうつなげていくかということがとても中核的なテーマになってくるのではないかと思います。
また、先ほど佐藤先生の方からお話がございましたけれども、カルチャーといいますか、文化権という話も、これは市民権の話と文化権の話というのは非常に近いところにありまして、個々の地域の文化的な主体をどうやってきちんと維持し、立ち上げていくのかという話とつながっておりますので、やはり新たなる日本の取組として、グローバル・シチズンシップというものを今までやってこられたことの延長線上にどう位置付けていくのかというのが諸々ある中で、私は一番中核的な課題としてあるのではないかと思っております。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。複数のことをちょっとやっていかなきゃいけない……。
はい、どうぞ、小川さん。


【小川委員】  すみません、日本アイ・ビー・エムから来ております小川と申します。よろしくお願いいたします。
初回なので、ちょっと自己紹介を兼ねてなんですけれども、日本アイ・ビー・エムでは10年ぐらい、先のお話からだと安易には言えないんですけど、IT企業によるSTEM教育ですとか、あとグローバル人材育成、外資系企業なのでそのような教育の支援、キャリア教育、あと環境教育についての支援を行ってきております。そのようなきっかけで私が東京都の生涯学習審議会の委員をさせていただいたり、経団連の教育問題委員会や企画部会に出させていただいているのが多分御縁でこちらの方に今回参加をさせていただいていると思いますので、企業側からの視点を御紹介できていければなと思っていますが、何分、この分野、まだまだ勉強不足なところもありますので、勉強しながら貢献できればと思っております。
そのように、日々、あんまりSDGsのことですとか触れてない者、また企業の者にとりまして、やはり今課題なのは、まだまだ日本の国内でSDGsとか、あと教育の分野でしたらESDの認知ですとか関心が低いのではないかなと思っております。2030年までの達成目標なので、かなり長いスパンで人材育成を考えていかなくてはいけないと思うのですけれども、教育の中でもESDというのがまだまだ認識されていないと思います。東京都の方でも、今年の1月に発表された2020年に向けての東京都オリンピック・パラリンピック教育の実施計画の中で初めて積極的にESDに触れられたというように聞いておりまして、その中身を見てみたら、まだまだ環境だけに狭まれているんですね。オリンピック・パラリンピックは環境だけではなくて、例えば先ほどのインクルーシブの話ですとかジェンダーの話ですとか、いろいろな目標に関連した中身に触れることができると思うので、もっと広げた形での展開を考えていけるのではないかな、そのようないいチャンスではないかなというふうに思っているので、教育界の人たちももっと目を広げられるのではないかなと思っています。
また、先ほど言いました、企業も教育現場に出前授業をしているんですけれども、その企業側も理解がなくて、弊社のように環境教育を提供していますと言っても、その文脈でちゃんとお話をしているのか、かかわるボランティアや社員の人たちがそこまで理解をして話をしているかというと、そうでもないと思いますので、やはり産業界の方でももっともっと理解を進めていかなくてはいけない。そのためにどこかのきっかけでこれを知った者がちゃんと連携をしていって、その知識というものを共有していくような仕組みというのを作っていかなくてはいけないと思っています。
あと、先ほどございましたけれども、ではどこまで達成できたのか、何をしなきゃいけないのかというのを共有していくためにも、きちんと指標を設けて、今はやりのエビデンスではないですけれども、何をもって何を示していくのかというものもきちんと立てて、共有をしていく仕組みづくりというのも大切なのではないかと思っております。


【濱口委員長】  そのとき問題になる例えば達成度は、国内を視野に入れて考えるのか、国際的なレベルで考えるのかってかなり難しいですよね。それから、国際というと、我々がまずリーチできない部分がかなり広い中で、どういう目標を立てるべきなのか、ちょっと私もここら辺は見えないなと思いながら今日も来ているんですけど、いかがですか。


【小川委員】  どうなんでしょう、169の中のそれぞれに目標値を立てるということではないと思うんですけれども、どこかにフォーカスをしてという話があったなと思うので、その中で選択をして、この選択は、これは国内での基準として達成率を目指しますと。ただ、ここに関してはもっとリーチができるので、じゃあもっと国際的な二国間なり、もっと広いところでのリーチをしますというように、選択と集中をしていって、それぞれによっての目標値を掲げていくというのも一つではないかなと思います。


【濱口委員長】  やっぱりそういう意味では、まずこの17、この下の169に関して一つ一つよく見てみるということは大事なプロセスですね。


【小川委員】  見ずには選択を行えませんので、やはりちゃんと分かった上で選択と集中をしていくべきだとは思います。


【濱口委員長】  見てちょっとするともう忘れているんですよ。17あって、貧困ぐらいは覚えているんですけどね。


【小川委員】  ようやく17覚えましたといった方も世の中には多いと思います。


【濱口委員長】  大変です。
いかがでしょう。はい、どうぞ。


【古賀委員】  この分科会のミッションは、設置要綱に記載のとおり、国連が提示した持続可能な開発目標の実現に向けた推進方策を検討することだと思います。持続可能な開発目標に関しては政府も推進本部を設置して取り組んでいること、また、この分科会がユネスコの国内委員会の下に設置されていることを鑑みますと、この分科会では既存のユネスコ活動を何らかの形で生かすという点を踏まえて議論すると良いと思います。
議論が少々散漫になりがちですが、政府の推進本部や各官庁など本分科会以外での取組状況を知らずに議論していることが、その要因の一つではないでしょうか。関係する状況もある程度つまびらかにしなければ、議論を集約できないと思われます。
また、この分科会は始まったばかりでありますから、今後の取組について様々なアプローチが考えられます。例えば、ユネスコとの関連性が高いと考えられる目標4の教育などは小項目について、国内で議論や取組が現在でも必要な状況かどうか、仮に必要な状況であるとすれば、どのようにして課題を解決するのか、といった議論をすべきではないでしょうか。また、国内では大きな課題でないとしても、他の国において課題が残されている場合、日本の経験を生かすための議論をしなければ、この分科会のミッションである「持続可能な開発目標の推進方策を検討する」ことは難しいと思われます。いずれにせよ、議論を前進させるためには、事務局にご尽力いただき基礎的な整理を行っていただくことが良いのではと考えております。


【濱口委員長】  ありがとうございます。事務局、いかがですか。


【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。古賀委員の御指摘、まさしくそのとおりというところでございます。今、現状を申し上げますと、この目標というのが国連総会で決められてから間もなく1年たつわけでございますけれども、他方で、では、今、委員御指摘のようなきちんとした現状の整理、そしてそれに基づいてどのように進めていくかというような整理がきちんとできているかというと、まだなかなかそのような状況ではないというのが正直なところでございます。
それだけ時間が掛かってしまうのはなぜかといいますと、これだけの目標もあるというのもさることながら、それをどのように進めていくかというところに関して、かなり分権化というんでしょうか、つまり、教育であればユネスコですとか、あるいはほかの分野であればほかの国際機関ですとか、あるいは、その国際機関だけではなくて各国の政府あるいは民間、民間というのは企業もあれば、NGOもあれば、様々なところが様々な取組をやっていくというような、そういう任意の取組が奨励されていると。それは大変すばらしいことではあるんですけれども、他方で、それを全体を統合して、きちんと現状を整理・分析していくというところがなかなか追い付いていかないというのが正直現状というところでございます。したがいまして、今はとにかく一人でも多くの方にSDGsというのについて何らかの形で知っていただいて、ありていに言えば、どのような形でもいいので、まずは取組を広げていきましょうよというようなところでとどまっているというふうなところがございます。
今、日本政府としても本部というのを設定して、そして日本政府としてどのように取り組んでいくか、当然それは国内における取組、それから世界全体での達成に向けての国際貢献の観点、いずれにしても、それぞれの観点で教育ですとか保健ですとか、それをまとめていこうというふうなことで関係省庁で整理というものが進んでいるところでございますけれども、ただ、まだそれもきちんとした形で対外的に出せるようなところまでは至っていないというふうな状況でございます。本日いただいた御指摘なども踏まえて私ども事務局の方でもよく関係省庁とも調整させていただきながら、また当然、日本政府全体の取組にも呼応する形で進めていく必要があろうと思っております。


【濱口委員長】  これ、関係省庁というとどれぐらい含まれてくるんですかね。


【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。現在、すべての省庁に、このSDGsについてどのように対応していくかというようなものが打診をされている状況でございます。一義的に言えば、ある役所は全く関係ないというふうに言い切れるところがあるかといえば、なかなかそういうものではないんだろうと。それぞれの観点から何らかの貢献というのはあるのであろうと。例えば平和の構築ですとか、いろいろな観点がございますので。ただ、それがどの程度深掘りのある形で対応していくべきものであるのかというところについては、各省庁それぞれまだ検討段階であるというところでございまして、一部、例えば環境に関しましては環境省がございますけれども、そういったステークホルダーなどとのミーティングというのを開始したりというような取組が始まっているということは承知しておりますけれども、ただ、すべての役所でそういった議論というのはこういった公の場で進んでいるかというと、まだそこまでは至っていないようでございます。


【濱口委員長】  はい、どうぞ、古賀委員。


【古賀委員】  各省庁の状況は推察されますが、この分科会がこうして始まったので、169の項目のうちユネスコが主体的に取り組むべきものを見定める必要があるのではないでしょうか。日本全体の取組に関しては政府にしっかりと責任を負っていただくとして、ユネスコと関係が深く、私たちが積極的に議論すべき項目を選別することはできると思います。例えば、先程申し上げた目標4の教育に関する取組は、ほかの組織も議論するかもしれませんが、中心となるのはユネスコであると思います。一方で、インフラの構築や産業化の促進といった項目は、この分科会で議論をせずとも国土交通省などより適切な方々が取組を進めることができると思われます。したがって、まずはユネスコと関連性が高い項目に絞ることで、この分科会で議論すべき項目が明確になってくると考えます。


【濱口委員長】  3、4、5辺りは重要かなというふうにも感じますけれども。
はい、どうぞ、植松さん。


【植松委員】  植松といいます。資料6に、ユネスコが支援すべき目標というところで、何に一番関心があるかというのがアンケートで出ているわけですよね。その中に教育、もちろんこれは一番割合が高い。気候変動、陸上資源、ジェンダー、海洋資源というのが50%以上あるということで、かなりこれでユネスコ関係の的が絞られているんじゃないかというふうに理解しています。特に私、これを見て非常に心安らかになったのは海洋資源というところで、ユネスコというのはほとんど教育、人材育成というのがメインというふうに考えられているわけですけれども、世界遺産もありますが、その中にIOC(Intergovernmental Oceanographic Commission:政府間海洋学委員会)、オリンピックじゃないんですが、そういう委員会があって、これも日本は非常に大きな活動をしています。その中でSDGsの17、ここの14に海洋資源があって、じゃあこれだけがIOCのやることかというと、決してそうじゃないんですよね。目標の13(気候変動)もそうですし、目標16の平和、これ、海ということに対しては非常にセンシティブに今なっていますし、目標6の水、それから目標2の飢餓、これも水産資源ということで食料危機を救う一つのものだというふうに考えてくると、なかなか、この17それぞれを誰かが担当するじゃなしに、もっと大きなくくりとして絡み合っているんじゃないか。その中でじゃあ日本は何をやるんだ。日本国内ということと、それからリージョナル、要するにアジア地域全体で日本が何かをリーディングするのか、それからグローバルな視点で対応をしていくのかと。国際的にというのは広うございますということになると思うんですが、やっぱり国際社会全体をまとめて話をするということと、近隣諸国のリージョナルな問題。それは国内の中でどういうふうにそういう問題意識を高めて、日本は、自分たちで何ができるんだというところではこれらの項目すべてにかかわってくると思うんです。そういう意味では、本当に古賀委員の言われた、もうちょっと絞るんだけれども、何かうまくひっつけて的が絞れる、何を具体的にやるかというような話ができるんじゃないかなと思いました。
ただ、じゃあ、目標14(海洋資源)だからといって、これはこの委員会の皆さんと海洋資源について議論できるかというと、それはそれぞれの専門の分野というのがあると思いますが、そういう中でやっぱり皆さんに分かってもらえるように、いろんな項目をどういうふうにつなげて持っていくかという議論というか、理解、それをこの場でできればいいんじゃないかなと思いました。


【濱口委員長】  ありがとうございます。一定関連付けながらよく見るということでございますね。
ほか、いかがですか。猪口先生。


【猪口国内委員会委員】  大変遅参しましてすみませんでした。ちょっと議論を踏まえないで発言することをお許しいただきたいんですけれども、やはり重要なテーマなので発言させていただきます。
まず、この17の目標を見ていると、日本が既によくやっていることがたくさんあるんですね。それで、MDGsとSDGsとの違いは、MDGsというのは主として途上国で、私たちが多分もう達成したと思うようなことを達成してない地域に対してどう手を貸すかという発想が強かった。全部ではないけど、そういう部分が8割。ところが、SDGsとなると、これは自らも相当改善しないとならないと。つまり、先進国と途上国のここにおけるそれぞれが自己改革の課題が目標設定されているということだと思います。
じゃあ日本はと考えますと、本当に努力してきておりますので、ただ、その努力してきている内容が、これが国連の開発目標準拠であったということを初めて発見するということだと思うんですね。例えば、私たちは、レジリエントで強靱な国土形成とか、都市空間の安全であるとか、そういう努力をそれこそ省庁横断的に国交省も努力してやってきたと思うんですけれども、まさかこれが国連基準準拠国家を構成していたとは誰も考えていなかったし、そういう意味では自然に私たちは立派な国連準拠国家を作ってきたと。
SDGsについて先ほど御発言のあった中で、人は知らないということなんですよ。私も自分の生まれた千葉県の市川のユネスコの活動をやっているんだけれども、まずもってSDGsをみんな知らなくて、どうしたらいいのかなと思うと、今後、極端に言えば、例えばインフラを作ったら、こういうことをすることを国連が求めている、強靱な国家あるいは防災型のものを作るということは国連が求めていることだということをもっと言ってもらったらいいかなと。我々が暮らしている中で国連の言葉が出ることはまずない。地域の自治体に行くと、日本はある時代に、非常に横断的に世界の価値観について各自治体が非常に熱心に取り入れたんです。それは平和・反核宣言都市です。これは必ず市庁舎の前に大きなモニュメントでそういう自治体であるということを徹底しているんですね。やはりある時代、そういう努力が横断的になされたんだなと思うんですけれども、今後は、これから15年間、どの国も国連準拠国家であるように内実を充実させていって、日本もそういう努力をしているさなかであって、実はこのやっている一つ一つが国連準拠の努力であるということを、やっている人たちが全く理解し、認識したこともないし、思い付いたこともないと思うので、そう言ってあげたらみんなも勇気が出るし、やりがいもあるし、自分の親のやっていることは国連準拠国家を作る一つの役割を果たしているんだと思えば、およそここに書いてある17の分野のどの分野でも、やっている仕事は非常に重要だというふうに理解できて、SDGsという概念が国民に浸透することがより期待できるだろうと思うんですね。ですから、広報活動、広報機能の抜本強化。そのために、ユネスコはもとより、国連という概念ですね、これをもっと日常の国家として、あるいは自治体として推進している事業について、国連がこういうことを国内において各国が努力することを求めていて、日本も一生懸命やっているけど、十分でない国については協力しなきゃいけなんだということを伝えていったらどうかと、そういうふうに思いました。
それから、ユネスコについては、私、一つの願いがあって、やっぱり日本の子供たち、もっと国際コミュニケーション能力をユネスコ活動を通じてできるようになったらいいかなと。それは各国共通の目標じゃないんだけど、ユネスコ活動あるいはSDGsにひっかけて、日本が抱えている重大課題である英語によるコミュニケーション能力を、続く世代には世界に負けない水準で身に付ける、その一つのきっかけをユネスコ活動が与えることができたらいいかなと。英語でのコミュニケーション能力というのはどこにも書いてないんだけれども、しかし、こういう教育の中であるとか、協調していくというときに必要な課題であるから、そんなふうに思いますね。コミュニケーション能力の強化ということです。
あとは、ユネスコスクールとか、本当に熱心に現場でやっているんですよ。だけど、中核になる人たちはちょっと高齢化しつつあって、他方でユネスコスクールというのがあるから、ちょっとそこのギャップを埋める努力を。あと、各自治体でも、ユネスコ活動をやっている人たちとそれ以外の部局との横の連携がもっと協調的・協力的にとれると、ユネスコ活動も非常にやりやすいし、もっと主流化していくんじゃないかなと。本来、日本においてはユネスコとか国連準拠社会発展を遂げるということは非常に主流化した概念たり得るので、そういう努力をしたらどうかと思います。


【濱口委員長】  ありがとうございます。先生のお話は、先ほど出ていたグローバル・シチズンシップとSDGsを結ぶ話になってくるような感じがします。ありがとうございます。
どうぞ。


【萱島委員】  先生の後に発言は若干しにくいところがあるんですが……。


【猪口国内委員会委員】  そんなことないですよ。


【萱島委員】  申し訳ありません、直後に発言。


【猪口国内委員会委員】  恐れ入ります。


【萱島委員】  どういうように議論を進めるかというお話が先ほどいくつかあったと思うんですけど、確かにSDGsの範囲は大変広い一方で、ユネスコが対応する範囲もありますし、国連が対応する範囲もあります、国内の活動として考えるべき範囲もあるので、どういうふうに議論を進めるかというのはちょっと整理をした上で進めないと話が行きつ戻りつするんだろうなというのは、私も何となく感じております。
そのときにいろんな切り方があるんだと思うんですけれども、国際社会がSDGsをどういうふうに進めるべきかという全体の話と、それをここで議論した結果がどういう形で誰がどこにどういうふうに持っていくかというところも理解した上での議論が必要だと思うんですが、そういう領域が一つ。それから、今回は、ユネスコをいわば一つの切り口としての会合だと思いますので、議論のポイントの一つにもありますように、ユネスコに対してどういうふうに日本政府なり日本が働き掛けていくべきかという、国際社会全体がではなくて、ユネスコの役割としてどうするのかという点が2つ目。3つ目は、日本自身が日本の問題としてどうするのかというのが3つ目かと思います。1つ目と2つ目は、どちらかというと世界の開発課題の主要な部分を占める途上国に焦点が当たると思うんですけれども、3つ目のところは日本の問題、日本国内の問題ですので、大分性質も変わってくるところはあるかと思います。
実は私は援助の現場にかかわっているんですけれども、たまに「大学に来て話をしてほしい」と言われるようなことがありまして、若い方たちに写真なんかを見せながら途上国の状況をお伝えすることがあります。その際に、学生さんの反応で驚くのは、やはり途上国のことが知られていないというのが一つ。実は、知られていないんですけれども、私が今、大変強く感じるのが、例えばアフリカのわらぶき屋根の小学校の姿を見せると、学生さんは非常に納得感があるんですね。そうだろうと思ったと。大変だなと。かわいそうだなと。でも、ケニアの大学ではすべて英語での授業でみんながラップトップで授業している姿を見ると、やはり学生さんは大変驚くんです。アフリカにもそういう高等教育の姿があったのかと。知らなかったと。多くのアフリカの国が英語での教育を行っていますので、軽々と国境を越えていく割合とかを見せると、むしろ学生さんの驚きはそちらにあって、「この授業で何が面白かったですか、知らなかったですか」と言うと、みんな高等教育のことを書いてくるんですね。
そういうのを思うと、途上国がどんなに遅れていて、どんなに貧しくて、どんなに大変で、どんなに支援をしなきゃいけないかということも伝える必要はあると思うんですけれども、それだけでは途上国は何か自分たちとは違う世界、どうしてもやはり共感をやや持ちにくいところがあって、そうではなくて、途上国の中の成長している国、成長している姿、もう今や競争と協力が紙一重になっているというところも、若い人たちには是非知ってほしい。そのような状況の中で、国の間でも国のなかでも成長している部分と遅れている部分の間に格差が生まれてくる構造があるんだということも理解していただきたいと思います。先ほど述べた3つ目のところ、日本国内をどうするかというところについては、先ほどのグローバル・シチズンシップの話とも関係するんですけれども、是非途上国のややステレオタイプといいますか、貧しくて遅れただけでない姿を知ることによって、もっと身近に感じてもらい、そういう変わっていく世界とどういうふうに交わるかということをまず共感を持って実感することが、SDGsの一人一人のレベルでの出発点かなと思います。そういう意味では3つ分けて考える必要があるんじゃないかなと言ったんですが、分けながらも、そこの間は行ったり来たりするところがあって、そこをどういうふうにつなぐかというところが大事かなと思っている次第です。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。
いかがでしょうか。どうぞ、西園寺さん。


【西園寺国内委員会委員】  このSDGsが成功するかどうかというのは、私はひとえに、いかに多くの人がこれを理解して、その必要性を理解して、そういう意識を持つかということにかかっていると思うんですね。その前提の中で、では具体的に何をすべきかという話になっていくわけで、さっき猪口先生が広報活動ということをおっしゃいましたが、正に正しい理解を特に若い人たちに持ってもらうための取組が非常に大事になってまいります。それがある意味じゃESD教育の基本であり、また、グローバル・シチズンシップ・エデュケーションの基本でもあると思うんです。そこのところの、つまりSDGsがなぜ必要なのか、MDGsが何で出てきたのか、それはこのまま放っておいたら持続不可能な社会になるんですよと。だから、それを持続可能な社会にするために何が必要なのか、まずはそこの基本のところをより多くの人が理解をすることが根本だと思います。ですから、その意識改革をいかにしていくかということが、私はSDGsが成功するか、しないかの非常に大きなポイントじゃないかなと思います。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。広報活動、意識改革ですね。
ほか、いかがでしょう。


【西園寺国内委員会委員】  補足させていただくとそれは日本国内に限った話ではなくて、ユネスコ本部自体が、国連もそうなんですけど、MDGsやSDGsが出てきた背景というものを多くの人に正しく伝えていくことが大事で、極端な話人類70億の意識が変わらなければ、技術的・物理的なことだけでは本当の意味でのサステイナブルな社会というのは私はできないと思います。だから、そこのところが広い意味での教育という分野の中でユネスコの担当すべき一番大きなミッションじゃないかなというふうに思っています。


【濱口委員長】  どうぞ。


【見上国内委員会委員】  今、私自身もESDにかかわってきたということもございまして、西園寺委員の御発言、とても理解できます。それで、今回、SDGsが出てきて、その目標が17あります。第4番目の教育がユネスコの方の担当だとして、これらをばらばらに見てしまうと本当に訳が分からない状況になります。それぞれ自分の国で問題なところを深掘りすればいいというような、そういう感じのとり方を私も一旦したのですが、最初見たときそうだったんですが、教育という観点で見ると、要するにサステイナブルな社会の構築という観点で見ると、4以外の項目全部、場合によったら4を含めて、全部サステイナブルな社会の構築に向けての入り口なんですね。あるいはプロセスなんですね。それで、結果として、そのゴールであるサステイナブルな社会の構築というふうにたどり着くんだと思います。例えば先ほどちょっと出た目標の14(海洋資源)についても、専門家の皆様方がいろいろ問題解決されて、いろんな成果が出る。これをうまく教育に活用しながら、サステイナブルな社会を教育の面から実現するというのが目標4の役割かなと。皆様方の御意見を今、そんなふうに思いながら拝聴しました。


【濱口委員長】  ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。


【吉見委員】  今の御発言とかなり重なるお話なんですけれども、資料6の……。


【濱口委員長】  アンケート結果ですね。


【吉見委員】  アンケート結果の資料6ですね。この資料6の2ページ目の上段の表を見ますと、これは17の目標の中のいくつかをピックアップした、アジェンダと重なっているわけですけれども、持続可能な開発のための教育が一番数値的には高くなっているんですが、ただ、普通に考えますと、気候変動とか生物多様性とか持続可能な都市とか、この辺、全部ここに含まれている、教育という点ではかなり含まれていることではないかと思います。同時に、持続可能な開発というよりも、持続可能な地球というか、地球の持続可能性ということで考えれば、ここのほかの暴力過激主義の防止を含むグローバル・シチズンシップ教育だとか、平和構築の問題もそこにかかわってくるので、恐らく2ページの上に掲げられている8つぐらいの項目に関して言えば、この8つを包摂するような考え方として、地球の持続可能性のための教育というか、持続可能性の教育ということを挙げていくことは可能なのではないかという気もします。逆に言えば、ESD等をやってこられた延長線上にこの8つぐらいの項目を包摂していくという、そうした方向性といいますか、このグラフはなかなか興味深いんですが、いろんな読み方ができますけれども、持続可能な開発のための教育が一番高くなっているというのも、ここが一番インクルーシブというか、ここのところが一番ほかのを含んでいるようなところがあるのでここが高くなっているということもあるのではないかという気がしますので、そういう構図を描いていくことができるのではないかという気が、今の御発言をお聞きしながら思いました。


【濱口委員長】  ESDからの延長ということですね。
御発言いただいていない方、いかがですか。どうぞ、髙尾さん。


【髙尾国内委員会委員】  私は、開倫ユネスコ協会という民間のユネスコで活動しています。ESDを普及する時に、ESDを理解してもらうということがとても大変な時期がありました。「新たなものを企画するのは大変だ」という話が出ました。本来、今やっているものを深化・発展させていけば、これがESDにつながることだということがなかなか理解してもらえませんでした。これがまた、「SDGsという達成目標があります」と言ってもなかなか難しいのではないかと思います。ですから目標や評価の部分も含めて、だれが見ても分かりやすく、図や絵も交えて広報をして欲しいと思います。国連も絵や図のようなデザインを提示していた様に思います。


【濱口委員長】  国連のサイトを見ると絵が出てきますですね、スタンプが。


【髙尾国内委員会委員】  はい、絵がですね。大変分かりやすいと思います。


【濱口委員長】  いかがでしょうか。はい、どうぞ。


【寺本国内委員会委員】  先ほど髙尾委員からお話があったとおり、ESDのときにも私は前に発言したことがあったんですが、実際に自分たちがやっていることがESDに関係しているんですよという、全く遠い存在ではなくて身近なものなんですよというところからスタートして、理解をしてもらいながら進めていったというところが、実際、学校でも地域でもあるんですね。今回のSDGsにしてもそうですけれども、やっぱり今との結び付きをまずしっかりと理解をしてもらうところからスタートしていかないと、また新たに別のものだという観点で入ってしまうと、せっかくの長い目で見た活動や目標ということに実態が伴っていかないというところにあると思うものですから、是非、今はここまでできていますよ、今ここまでできているんだから、あともう少しやると目標達成に向かいますよというような、もう少し分かりやすい、かみ砕いた形でお示しいただくような結論が出ていくと有り難いなと思っています。


【濱口委員長】  事務局、いかがでしょうかね。そういうお話、ある程度整理ができますでしょうか。17項目でもある程度クラスター化できるような形をするのと、それから、ESDとのつなぎを見せるような作業というのが少し要るような気がしますね。


【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。まさしく御指摘のとおりでございまして、今、日本政府としてもどのようにこれを進めていくかというときに、当然この17の169について1個1個それぞれにこうするというのを示すことというのは、困難でもありますし、余り意味がないと。なので、ある程度の柱を作って、日本としての特に重視する、あるいは全体を達成するためにはこういうところに注視していくと、それがほかにも波及効果をもたらすんだというような整理というのをする方向で検討が進んでいると承知をしております。したがいまして、そういった取組とともに、また、特に何人かの委員からございました一般の方にも分かりやすくそれを周知するというのは、それはいわゆる行政用語ではなくて、もっと子供たちも含めて周知・啓発できるようなツールというんでしょうか、そういったものの開発というものも求められると思っておりますので、そういったものも関係する役所あるいはいろいろな団体のものとも連携しながら考えていきたいというように思っております。また、この委員会における議論におきましても、御意見を踏まえまして、次回以降、どういうような筋道で議論をしていけばいいのかというところは、より分かりやすいような形で私どもとしても考えていきたいと思っております。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。
まだ御発言いただいてない今……。


【今国内委員会委員】  私ですね。


【濱口委員長】  ラストワンかもしれません。


【今国内委員会委員】  実は今日、オブザーバーとしまして、一体どのような話合いがなされるのか、まずは聞かせていただかなくてはと思って参加させていただきました。 といいますのは、私は髙尾さんと同じ地方で草の根のユネスコ活動をしている者ですが、一体国内委員会とはどういう場なのかということを、昨年の12月にこの任を受けましてから総会などに出させていただいて理解しようとしてきました。そして、これは民間レベルの地方で若い世代の人たちを対象に、最近ですとESDを何とか広めたいなと思いかかわっている活動とはちょっと縁のないような印象を受けてきました。日本の国がユネスコ活動をどのように展開し成果を上げているかということを世界に向けて発信する、その情報の取りまとめをするのが国内委員なのかなというふうに感じたわけです。その特別分科会では、私どもにしてみれば突然のようにまた難題として降り掛かってきたSDGsに……。


【濱口委員長】  お察し申し上げます。


【今国内委員会委員】  はい。関する話し合いということで、何かに絞って話し合われるとしたら、それはどんなターゲットなのかということを興味の対象としてお聞きしていましたが、何となく分からないままで終わってしまいそうだなと、もどかしさで何も発言せずに、できずにおりました。そこで、これは質問になりますが、ここでの話合いは、日本がこんなことしていますよというのをとりまとめることなのか、それとも、MDGsと違ってSDGsは先進国を含む国際社会全体の開発目標ですから、日本も開発途上国に対して何かを支援してあげるという立場ではなくて、自分の国自体をもう少し高めていくためのゴールを示し推進することなのか。仮に後者だとした場合、狭い視野での話題になるかもしれませんが、地方でユネスコ活動をしていたり、私個人的には教員などを長年していた中で感じることは、先ほど猪口先生がおっしゃったように、本当に日本の若者にはコミュニケーション能力が不足しているということです。例えば本当に日本の国の何か教育的なことでレベルを上げるとすると、まずはコミュニケーション能力を上げることなんかはその一つの中に入るのではないかと切実に感じますが、それはここで話し合われている中の一体どの部分になるんだろうということを探りながらお聞きしていました。すみません、ちょっと取り留めもないんですけれども、一体何をこの特別分科会でまとめるのか。いろいろな専門分野の御意見も出ましたし、ちょっとターゲットを絞るというとても示唆のある御発言もありましたけれど、どっちの方向に行くのだろうと思って、興味本位に私は参加させていただいて、オブザーバーの立場で本当に申し訳ない発言になりますが……。


【濱口委員長】  いえいえ、ありがとうございます。


【今国内委員会委員】  今、正直な気持ちがそんな具合です。


【濱口委員長】  今日は本当にフラットなコミュニケーションをまずやることで、この委員会がどういう方向へ動いていったらいいのかというのを率直に意思交換、意見交換する最初の1回ですので、本当にありがとうございます、そう言っていただいて……。
猪口さん。


【猪口国内委員会委員】  いいですか、最後、すみませんね。二度の発言、ちょっとお許しいただきまして、私も今さんと同じ考えを漠然と持っていたんですけど、ここに座っている1時間弱の時間の中で大分自分の考えを深めることができたと思うので、やはり意見交換というのはすごく有意義だと思うんですね。
その中でちょっと私が考えたことを申し述べたいんですけれど、まず、国連、特にユネスコというのは、国家間が戦争しないということを目指して作られた国際機関であると。まずこれが大前提としてあると。そして、国家の中というのはちょっとブラックボックス的で、その中がどうであろうと国同士で戦争しないでくれというのが長い間の考え方だったけれども、結局、国民国家形成というのでそれぞれの国民国家が作られ、新国民・国家形成運動みたいのをして国連なりに国家の内実にちょっとかかわりたいという意識が、このSDGsには私はあると思うんですね。これを参考にして自分の国民国家のあり方というのをもう一回作り直してみてくださいと。だけど、この場合、戦争しないんだぞという国際法的な考え方だけだったら、国連憲章に基づく強制力のあることとか何かそういうことも不可能ではないんですけれども、今度、国家の中を格差が出ないようにとか極端な排除がないようにとか、そういうことも含めてちゃんとケアしなさいよというときには、外から強制力ってないと、自発的に内部から活動主体が生まれて推進しなきゃならないと。だからそういう運動を各国でやってもらいたい。だからガイドラインみたいなものしか出てないんだけど、これだけ詳細なガイドラインを国家形成について出しているというのは、やっぱり私は国連の側にすごい決意があると思うんですね。これからの国際社会で国家間の戦争を防ぐには、各国のある種の内実について国連は関与せざるを得ないと。で、これを自発的にちゃんとやってみたらどうですかということだから、すべての国が突き付けられている課題であるということですね。
先ほど私が申し上げた、実は日本は当然先進国だからかなりもうやり終わっているわけだけど、やっている中でもう一歩、ほかの国がこれを参考にするのであれば、例えばベストプラクティスのように参考にするのであれば、どういうことを言葉として付け加えてあげようか。すべてこの国がやることについてそのマインドの最後の仕上げを持ったらいいと。そうすれば特に、私はさっき英語でちゃんと発信できるようになったらいいと言いまして、その気持ちは変わらないけど、でも、内実がなくて発信しても余り意味がないので、既にやっている内実がある。ただ、プラスアルファで、例えばここに橋を架けたと。自分の仕事はそこまでだと、今までだったら「そうじゃない?」と思っていたのを、この橋を架けるということがどういうふうに交通や物流や就学の機会を増やして豊かにするかとか、そういうことも付け加えて説明をするというような仕上げのところのポリシーを、平静にこういう仕事をする人たちは考えてもらいたいと。それ自体が広報活動にもなるし、もう既にそうやろうと思ったときに、その土木の技術を持っているその人の中にSDGsの意識とかマインドとか日本の国民国家を超えたところの人たちへのちょっとした思いというのがあって、もう既にそこにグローバル・シチズンシップが芽生えているというふうに思うんですよ。
それで、日本だって、これをやるときに、これは国連基準で私たちはやっているというふうに言えることはたくさんあって、例えば16ページの3番で3.6というところに、「2020年までに、世界の道路交通事故による死者を半減させる」というわけですよ。これはどの国も半減させるんだから、今の日本の交通事故死者が何千人いるのか分からないですけれども、交通戦争と言われた時代からは大分少なくなっていますが、それをあともうちょっとで半減させるんだから、それは通学路に徹底的に歩行空間を作るとか、あるいは暫定2車線の高速道路をどんどん造っている日本の仕事のやり方というのはどうなのかとか、どんどん自分のものとして交通事故を半減させるわけです。じゃあ暫定2車線やめてちゃんとした高規格の高速道路にしましょうと工事をしているのは、国連基準国家を作っているというふうにみんなが思ったらいいわけですよ。そういうふうに発信するんだと、いつの日か。そんなマインドをみんなが持つ。そういうことをその職場のリーダーは発信してくれていいのよね、職員の人たちに。だから、職場のリーダーがこれを理解することが大事であって、国民国家形成の仕事のもう一つの大きなうねりがここに示されていて、そういう意味では、ユネスコと、この委員会がSDGsを真正面から受け止めてここでがんばろうとしているのはすごく野心的なことであり、大きなことであり、国民国家、そして国家運営をしている行政各部、すべてこれについて自分の目標と関係があるところについては理解されたしというようなことを言っているのに等しいわけですよ。だから、そこは政府ががんばってやってくれないと、もう国連……でもね、これ、総理大臣が議長の、この間もちょっと別の委員会で言ったんだけど、ナショナル・マシナリーができているわけだから、そこから横断的にやっていることは、普通に日本の予算の中で公共事業としてやっていることとか、厚労の仕事としてやっていることとか、教育のこととしてやっていることとか、みんなそういうふうにしか理解してないだろうけど、実は我らは新国連基準国家を今建設中であるというふうな意識さえも持ったらいいと思うんですね。
そして、最後にグローバル・シチズンシップについてなんですけど、シチズンシップのまず概念というのは、『想像の共同体』というちょっと古い本なんですけど、政治学の名著があって、ベネディクト・アンダーソンという人の。要するに、国家とは何か、国民国家とは何かというときに、想像の共同体だと。つまり、例えば九州で豪雨があって犠牲者が出たと。その人と会ったこともない、その地域へ行ったこともない、実はその村の名前を聞いたこともないという場合に、どうしてそこに感情移入ができるのかと。ああ、大変だと。何か寄附しなきゃとか、ボランティアへ行くんだったら応援したいとか、それは認識としてそこまでの国民国家としての認識を持っているからだと。それを今度超えるわけですよね。じゃあ今度、インドネシアで何かがあって、アフリカで何かがあったというときに、そこまでの認識の強さというのを私たちが持てるかというのが、シチズンシップ教育じゃなくてグローバル・シチズンシップ教育になるから、このSDGsの先ほど申し上げたような新国民国家形成のコンテンツを、ここ、実に書き出してくれている。で、そのほとんどはもう日本は既にやっている、やりつつある。でも、やっていることが実は国連基準で、非常に尊い仕事なんですよということを言うことによって、先ほど冒頭で申し上げたように、やっている人がもう一言、では、ほかの国がこれを参考にするんだったら、どういう言葉を付け加えてこの工事の終了の報告書を書くかなというぐらいのマインドを持ってくれると、実にここはやはり昭和とは違う、ものすごい発展をした平成の時代のそれぞれの職業人の姿かたちなのかなと思うんですよ。そういう運動を始めるのがこの国内小委員会と私は理解しました。


【濱口委員長】  ありがとうございます。何か結論が出たような気が……。広報ですね。一つは、このSDGsをよく理解するということと、それを国内の我々の日常活動の中にこの視点で見たときどうなのかという認識を共有できるようにする。先生が言っておった交通事故の問題でいきますと、アジアへ行くと、実はカンボジアとかミャンマーだとか、実は国民の死亡率の1位が、最近、交通事故。2番目が何かというと、エイズと結核の重感染。これ、ジェンダー問題なんです。そのバックグラウンドに飢餓があるんです。そのバックグラウンドに農村に貧困があるんです。だから、国によっては、これ全部ざっと一つの塊で見えるようなところもありますが、日本の場合、かなりいろんなところで結構達成してきているので、むしろ関連が見えなくなっているように思うんですけど、実はこれ、今日最後、時間がちょっとあるから聞きたいんです。今日、女性の方が多いから。ジェンダーどう思います? 5番。これ、日本、まだ遅れているようにも思うんですけど、かなり最近改善されてきて、この数年改善はされているけど、日本としての課題というのはないんでしょうかね。いかがですか。


【秋永委員】  そうですね、ここ10年、20年の中で企業や自治体の中で女性の雇用というのはどんどん増えてきているとは思うんですけれども、依然としてまだそのような文化がなされていない組織もあるなというのは感じております。
あとは、ジェンダーという意味では、必ずしも女性と男性だけではなくて、それ以外にもほかにも様々なマイノリティの方がいらっしゃるというところを、差別ではなく、それ自体が多様性であるという見方ができなければならないなと感じております。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。ちょっと突っ込んだお話を聞こうかと思って。小川委員、何か御意見ありますか。
【小川委員】  同じなんですけれども、企業みたいなので働いていると、かなり企業努力というのも入ってきていて、出てきているところもあるんですけれども、まだまだ女性が働き切れないというところで例の待機児童の問題ですとかいろんな問題があるので、必ずしもないというのがあるんですけど、一方で、文科省さんがやっている「トビタテ!留学JAPAN」のような高校生の面接をやっていると、かなり男性危ないぞというのは思っていて……。


【濱口委員長】  同感です。


【小川委員】  今の若い高校生たちが私たちの年代になる頃になると、男性についてどうしようかという議論が出てくるのではないかなと本当に思ってしまうぐらいのものがあるので、いつの時点か逆転してくるんじゃないかなという懸念もちょっとありました。


【濱口委員長】  ありますよね。


【小川委員】  もう一つ、先ほどおっしゃっていたLGBTの問題もあるので、ジェンダーというときに、例えば女性、男性だけではなくて、もっと広い意味でとらえて、弱者の人とか本当に鬱屈を抱えている人たちに対しての開かれるような社会というのが必要かと思っています。
【濱口委員長】  本当、男性危ないですね。大学の学生に「海外へ行きなさい」って、うちの大学、多い学部でも4割、少ないところは本当に1割ぐらいしか女性はいない、1割もいないんですけど、「行きなさい」と言うと、7割、8割は女性なんですよ。帰って来て「報告会をやってください」と言うと、全部リーダーは女性なんです。男はこちょこちょこちょとパワポを作っとるんだ。で、優秀学生の表彰をやると、女の子は農学部の子なんかケロッとした顔して、「私はシンガポール行ってきました」とか「アメリカ行ってきました」とか「カンボジアの農村でこんなことやってきました」とか平気で言うんですけど、男は物すごいこもりぎみなんです。ひょろっと出てきて、工学部だって、工学部で物づくりできるかなと。ものすごい今、危ないなと思いながら。

安達委員、どうですか。不意打ち食らわして。


【安達委員】  今のお話を伺っていて、確かに、何か募集をかけたりとかしても、女性の応募が多いなということは感じています。


【濱口委員長】  どうしてだと思います?


【安達委員】  どうしてなんですかね。ちょっとすぐに出てこないですけれども。


【濱口委員長】  女性の方がひょっとすると、キャリアパスがはっきりしてない分、勇気が出るのかなと。結局、M字カーブでこっちで回復したといっても、みんなパートですね、ほとんど、実は実態は。もう一つ達成感がないんですよ、みんな、見ていて。フラストレーション抱えている。だから、その前にもっと大胆に動きたいという気持ちが出るのかなと思ったりするんですけど、違いますか。


【安達委員】  ちょっとすぐに出てきませんが、この間、環境教育学会という学会に参加したんですけれども、そこで高校生たちが自分たちが勉強してきたことをポスターにして発表していたんですね。その中にSDGsも入っていたりとか、あとスタディツアーの経験について語っている発表もあったんですけれども、男性もいたんですが、多くが女子生徒がやっぱり中心となって話していたようなというふうな印象はあります。


【濱口委員長】  片方で、例えば日本では目標1の貧困だとか目標2の飢餓はあんまり関係ないように見えますけど、それはここに見える先生方の生活の中ではあんまり関係ないんですけど、日本人の平均給与は実はこの10年で100万円減っているんですね。500万切って400万台になった。いわゆるシングルマザーの子持ちの方々は最貧困層と言われますけど、これは収入100万台ですね。それがかなり今広がっている現実があって、それはなぜかといったら、地方で仕事にありつける女性がいない。ジェンダーはあるんですよ、現代の日本。だけど、そこ、ちょっとまだ目が向いてないように思うんですね。
大分ちゃらけてしまいましたけど、今日は、委員の皆様方の御意見をいただいて、どういう実感を持っておられるかちょっと量らせていただいたと思います。この後、事務局で少し意見をまとめていただいて、もう少し整理をした形で、達成目標とか絞り込む点、あるいはこの中でどう連関ができるか、クラスター化ができるかとか、日本としてどうするのか、実はその日本としてどうするかを広報をしっかりやれば、世界としてこうやるべきであるということが猪口先生のお考えにも出てきていると思いますけど、模範国家的なものをどう作るかという話にもなってくると思いますし、いろんな切り口ができると思いますので、事務局とちょっと相談させていただきながら次の準備をさせていただきたいと思います。
大分時間も来ましたので、今日はこれまでにして、事務局において次回の会議の準備を……。


【安達委員】  すみません、最後の最後に申し訳ありません。


【濱口委員長】  はい、どうぞ。


【安達委員】  さっきのお話を伺っていて思ったところで、さっき古賀委員がおっしゃった、ユネスコとしてこのSDGsにどう取り組むのかという視点はとても大事だなと思ったところと、あと、ESDを先導的にユネスコが進めてきたということを考えると、ESDが今回、SDGsの4.7のところに名前として入っているところだったりとか、あとは次の新しい学習指導要領の中でもESDの視点が入ってくるということを考えると、やっぱりESDってとても大事だなということを今感じています。そのときに、今日の資料の中に入ってなかったんですけど、ESDに関する関係省庁連絡会議で3月10日にまとめられているESD国内実施計画というものが出されているんですけれども、これも一つ大事かなと感じました。


【濱口委員長】  あ、そうですね。


【安達委員】  ESDをどう進めていくのかというときに、国内でじゃあどういうふうにこれから進めていこうかということについて考えられているものとかもベースにしながら、これから見ていけたらいいのかなということを思ったところです。すみません、最後に。


【濱口委員長】  ありがとうございました。大変有用な御意見です。福田さん、それ、ちょっとそろえておいて……。


【福田国際戦略企画官】  はい、かしこまりました。


【佐藤委員】  30秒。


【濱口委員長】  はい、どうぞ。


【佐藤委員】  最初に発言して、最後にまた申し訳ありません。猪口先生の話を聞いて、ポジティブな御意見で元気が出ましたが、クリティカルに見るべきところもあって、例えば貧困は1.25ドルって誰が決めたたんだと。経済成長はGDPで測るって誰が決めたのか。それはクリティカルであるべきところがあって、それは多分モニタリングのときに、モニタリングで、どういう指標でモニターを出していくのかがメッセージになっていくと思うので、それについて我々が何か物が言えるものがあれば考えていきたいと思います。


【濱口委員長】  はい、ありがとうございます。やっぱり指標化をどう計画するかですね。
ほか、言い残した方ございますか。角南先生、いいですか。


【角南委員】  ちょっと確認なんですけど、これ、ユネスコに対するインプットというか、我々の活動はユネスコに対してということなのか、もう一つ、文部科学省全体の中でSDGsということをどう考えるかという、この両方あると考えていいわけですよね。ですから、例えば私がお手伝いしているスーパーグローバルハイスクールの中の、これからSDGsの中で出てきているグローバル・シチズンシップだとか、それともっと宣伝していくとか、海洋なんかも、これ、つくばのお手伝いをしたときに、「つくばコミュニケ」で海の未来は、入れたときにSDGsという言葉はJAMSTECとかいろんな日本の研究者の方から提言があって、G7のほかの国の人の方が意外と知らなかったというか、これ、日本提案で入りましたよね。ですから、そういうところでもっとSDGsを日本がやっている、海の日でSDGsを使ったかどうか分かりませんけど、例えばそういうところに文部科学省が持っている施策の中にSDGsマークを一杯付けていくということをここでみんな応援するというか、そういうこともやるということでもいいんですかね。


【濱口委員長】  広報の一環なんですよね。


【角南委員】  ええ。それ、結構ここの持っている施策だけでも相当……。


【濱口委員長】  相当いけますよね。


【角南委員】  いけるんだとは思うんですが。


【植松委員】  今年はユネスコ活動を紹介するイベントでさかなクンが出るトークショーが行われ、一応、ユネスコも海洋は絡んでいるという実績があります。


【濱口委員長】  ありがとうございました。
どうぞ。


【髙尾国内委員会委員】  最後になりますが、私は栃木の女子刑務所で、教育のプログラムを教育官と一緒に作成して、受刑者教育をしてきました。日本の識字率はとても高いですが、一部まだ目を向けるところがあると思います。法務省の規定が改正されて、民間が教育をできるように変わってきました。教育の大切さをひしひしと感じます。このような場で、話をお聞きできたり、勉強することができるのは、とても有り難いことだと思っています。


【濱口委員長】  本当そうですね。一皮剥くと実は貧困の連鎖が起きるような構造は日本の中にあるように思うんですね。それも含めてちょっとよく勉強したいと思います。ありがとうございます。
それでは、事務局にお返しいたしたいと思いますが。


【本岡ユネスコ協力官】  では、最後に事務局から御連絡させていただきます。次回の日程は、また後日、事務局より御連絡差し上げます。
本日の配付資料のうち席上配付資料とあります資料につきましては、会議終了後、回収いたしますので、机の上に置いたままとしていただければ幸いです。
なお、本日配付しましたその他の資料につきましては、郵送を御希望の方は、封筒にお名前を記載の上、机の上に置いてお帰りいただきましたら、後日、事務局よりお勤め先もしくは御自宅の方に郵送させていただきます。
以上でございます。


【濱口委員長】  どうも今日はありがとうございました。


―― 了 ――

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国際統括官付