第2回ESD特別分科会 議事録

1. 日時

平成27年4月21日(火曜日)14時00分~16時00分

2. 場所

文部科学省国際課応接室(12階)

3. 出席者

(委員)
見上一幸(座長)、秋永名美、阿部宏史、北村友人、後藤顕一、佐藤郡衛、重政子、清水哲也、田村学、手島利夫、羽入佐和子、林原行雄、〔敬称略〕

(事務局)
山脇良雄日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)、
籾井圭子日本ユネスコ国内委員会事務次長(文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)、その他関係官

4. 議事

【見上座長】 
 それでは、予定の時間が参りましたので、始めさせていただきたいと思います。本日は、御多用のところお集まりいただきましてありがとうございます。ただ今から、第2回、ESD特別分科会を始めたいと思います。
 まず始めに、前回の特別分科会以降、事務局の異動がございましたので、事務局から紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【野田国際統括官補佐】 
 はい、御報告申し上げます。
 4月1日付けで、国際統括官補佐、本村宏明が異動しました。後任として、私、野田昭彦が着任いたしました。また、同日付け、4月1日付けで、ユネスコ第二係長、加茂下祐子が独立行政法人日本学術振興会に異動しました。
 以上でございます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、本日の配付資料につきまして、事務局から確認をお願いいたします。

【野田国際統括官補佐】 
 はい、申し上げます。
 配付資料としまして、四点、資料1が、第1回の議事録、資料2が、阿部先生から御提供いただきました岡山地域におけるESDの取組について、資料3としまして、清水委員から御提供いただきました多摩市のESDの取組についての資料、さらには、資料4といたしまして、ESDの推進に当たっての課題の整理及び推進方策についての論点ペーパー(案)、以上四点が配付資料でございます。
 このほか、参考資料としまして、九点ほど、ESD特別分科会の設置要綱、参考資料2が、分科会の委員の先生方の名簿、参考資料3が、ESDのさらなる推進に向けた取組(検討項目案)、参考資料4が、ESDの更なる推進に向けた取組(検討項目案)の現状と課題でございます。参考資料5としまして、予算の資料でございます。参考資料6が、現行の学習指導要領のESDに関する言及箇所抜粋でございます。参考資料7としまして、「我が国における国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画、さらに、参考資料8としまして、ESDとユネスコスクールパンフレット、最後になりますが、参考資料9としまして、ユネスコ/日本ESD賞の国内公募について(報道発表資料)でございます。
 このほか、机上に配付させていただいております資料がございますので、紹介申し上げます。まず一点目が、環境資料の指導資料、幼稚園・小学校編、さらには、岡山ESDプロジェクト、岡山市京山地区ESD推進協議会の資料、それと、高等学校の学習指導要領と指導資料としての「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開」(高等学校編)、以上、都合五点が席上配付資料でございます。参考までに申し上げますけれども、席上配付資料のうち、学習指導要領と指導資料二点、総合的学習の時間の指導資料と環境教育の指導資料につきましては、会議後回収させていただきますので、机上にそのままお残しいただければと思います。
 以上でございます。過不足等あれば、事務局にお申し出ください。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 ただ今御紹介のありました資料、そろっていますでしょうか。
 それでは、議題に入りたいと思います。議題1ですが、前回は学校教育を中心に、今後のESDの推進方策について御議論いただきました。今回は、地域におけるESDの実践について御議論いただきたいと思っております。
 まず始めに、岡山地域におけるESDの取組につきまして阿部委員から、続きまして、多摩市におけるESDの取組について清水委員より御発表いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 阿部委員、お願いいたします。

【阿部委員】 
 岡山大学の阿部でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、説明の資料といたしまして、A4判の2枚とじたものと、それから、岡山で進めておりますプロジェクトのうち、一点目が岡山ESDプロジェクトという冊子、それから、二点目が、京山公民館を中心として活動しております京山ESD推進協議会の冊子、この二つを御用意しております。
 私のお話の資料としては、このA4判のメモ書きを中心に説明させていただきたいと思います。こちらの冊子の方は、その都度適宜御覧いただければ、どういう活動をしているのか、写真もたくさん入っておりますので、見やすいかなと思います。
 それで、まずA4判の「岡山地域におけるESD取組について」と書かれたものを御覧ください。御存じのように、岡山市は、昨年秋のESDに関するユネスコ世界会議で、各種ステークホルダー会議の開催地として選ばれまして、この表の下の方に書いておりますけれども、公式の会議を含めて、五つの国際会議を開催いたしました。市のまとめたところでは、97か国・地域から約3,000人が集まったという会議でございます。
 私の話の中では、この世界会議に至る約10年間の岡山地域におけるESDの取組の状況、それから、この裏の方に書いておりますけれども、岡山のESD取組にはどういう特徴があるのかといったこと、それから、2枚目の紙にまとめておりますが、現在、ユネスコ世界会議を踏まえて、「グローバル・アクション・プログラム」を考慮した新しいESDの推進ビジョンを作っております。そういった新しい動きについてもお話しできればと思います。
 まず資料の1枚目に、経緯ということで、2004年以前から現在までの動きを書いてございます。岡山のESD取組は、基本的には、国連大学が進めておりますESD推進拠点、RCEの動きとして始まったものです。2005年6月に、世界最初のRCEの7か所の一つとして認定を受け、国内では、座長の見上先生が関わっておられる仙台広域圏と併せて2か所が認定を受けたということでございます。
 なぜ認定を受ける経緯になったかということですが、この年表の一番上に書いております。岡山では、それまで市が中心となって、市民・企業の参加の下での環境パートナーシップ事業という環境活動を広範に行っておりました。それから、今日冊子をお配りしておりますけれども、京山公民館を中心とした環境活動、京山以外でも、高島公民館というところでは天然記念物のアユモドキを保護する活動がかなり活発に行われており、これは全国的にも有名なものでございます。それに加えて、地域のNGO、あるいは自治体による国際交流・国際貢献活動がございまして、こういったものを合わせて、RCEにおけるESDのプロジェクトとして開始したというものです。
 背景には、国連大学の方から、RCEという構想があって、それに岡山も手を挙げてはどうかという話があり、2005年4月に、市が事務局になり、「岡山ESD推進協議会」が設置されました。その下で、ESD推進の基本構想――これが最初の構想であります――を策定いたしまして、ESDプロジェクトを開始したということです。
 それから、市内には、先ほど申し上げた京山公民館のように、ESD、あるいは環境活動、国際理解といった活動に熱心に取り組んでおる公民館がございました。2006年2月のところに書いておりますけれども、京山公民館で第1回のESDデー・フェスティバルが初めて開催され、これは今、「京山地区ESDフェスティバル」と呼んでおりまして、毎年、年の初めに開催しております。
 京山地区では、こういった動き、それから、市の動きを受けまして、2006年7月に、「京山地区ESD推進協議会」を設立いたしました。
 その後、2007年に、私どもの岡山大学が、ユネスコから、高等教育機関に設置する拠点組織であります「ユネスコチェア」の設置認可をESDの分野で受け、我々の岡山大学、他の大学としては、岡山理科大学、ノートルダム清心女子大学なども協力して、大学がESDの活動に本格的に関わるようになったということです。
 2008年には、国連大学高等研究所が設立した「アジア太平洋地域環境大学院ネットワーク(ProSFER.Net)」にも参加しております。
 2008年12月には、ユネスコスクール支援大学間ネットワークが設立され、これは見上先生の呼びかけに応ずる形で、設立に参加させていただきました。
 岡山の動きは、2009年頃まで、地域での実践活動を中心としたESD取組が中心になっておりましたけれども、2010年頃から、ユネスコスクールが加わってまいりまして、両方合わせますと、学校教育と社会教育の間でバランスの取れたESDの活動が行われるようになってきたということです。
 2011年には、岡山大学の教育学研究科が「ESD協働推進室」を設置いたしまして、ユネスコスクール支援大学間ネットワークに参加しながら、地域のユネスコスクールの支援を展開してきたところです。
 その後、「国連ESDの10年」の最終年の会合をどの地域で開催するかという話が出てまいりまして、岡山市が開催地として手を挙げるということで、資料に書いておりますような運動がございまして、2011年9月に、最終年の会合の開催地に選定されたということです。それを受けて、市役所の中に世界会議を推進するための局を作り、ステークホルダー会議の準備を進めて、先ほど申し上げたように、昨年秋に開催されたというものです。
 現在のところ、2015年4月の機構改革により、世界会議推進局が廃止ということになり、新しく市民協働局の中にESD推進課を設けて、今、職員5名で運用しております。
 それから、世界会議の結果を受けて、2015年から2019年の期間を対象とする新しいESD基本構想を策定しておるところです。これについては、ほぼ原案の策定が終わり、今月末にはオーソライズされる予定です。
 今申し上げたように、岡山地域のESの取組は、まず地域の中での実践活動としての取組があり、その後、学校教育でのESD取組も盛んになってきたという経緯がございます。
 取組の特色ですけれども、こちらは「岡山ESDプロジェクト」と書かれた冊子の7ページを御覧下さい。世界会議に合わせて、岡山で取り組んできたESをどういう形で発信するかということで、随分議論をしました。その結果、そこに書いております「ESD岡山モデル」という呼び名で世界に発信していこうということで、特徴としては、1から5まで5項目を掲げております。
 第一は、多種多様な団体や人々にESDに関わる「場」が提供されているということです。岡山地域のESDプロジェクトには、現段階で160団体ぐらいが参加登録をしています。
 第二は、行政により主体的、継続的なESDの推進が行われているということで、これは当初から岡山市役所の中にESDを担当する部署を明確にして、市役所の中にESD推進の事務局を置いているということです。
 また、その中に専従のコーディネーターを置き、サポートが行われている。これが第3番目です。
 第4番目が一番大きな特徴と思いますけれども、公民館を拠点としてESDを推進しているということです。岡山市内には、中学校区単位で37の公民館が置かれており、公民館を拠点として、環境、国際理解、その他人権問題も含めた様々なESD活動を展開してきたということです。
 それから、中学校区単位で公民館が設置されており、中学校区内の中学校と小学校を結んだ形で、ユネスコスクールの認定を受けまして、中学校区単位で公民館と小・中学校が連携することにより、学校教育と社会教育とを結び付けているところが特徴です。
 もう一点、岡山市は公民館活動の活性化に以前から熱心に取り組んでおり、全ての公民館に市の専任職員を配置しています。
 それから、5番目として書いておりますが、地域が主役、市はサポーターということです。これまで申し上げた説明の中で、市が主導しているように聞こえたかもしれませんが、市の方はあくまで市民、あるいは、いろんな団体の活動を支えるという立場で、市が主導して引っ張っていくという形は取っていないということです。
 ユネスコスクール加盟校の状況は、平成26年12月現在で、岡山県内43校ということになっております。内訳を御覧いただきますと、小学校については、24校のうち21校が岡山市立の小学校、中学校については、10校全て、それから県立高校が5校、私立の中高一貫校も含めまして、私立の学校が4校となっております。
 実は岡山市がユネスコスクールに力を入れ始めたのは2011年頃からでありまして、世界会議が見え始めた頃から、市がトップダウンの形で、市全体でESDを学校教育も含めた形で進めていこうということで、ユネスコスクールへの加盟が進みました。それまで私自身もいろいろと教育委員会に働きかけてましたが、十分な賛同が得られなかったという経緯がございます。市の方でトップダウンの形で、総合的に進めていこうという呼びかけがあったことで、教育委員会も熱心になり、随分とユネスコスクールの加盟校が増えたということです。
 岡山市のユネスコスクールの特徴を、表の下に書いております。それまで進めてきた岡山市版コミュニティ・スクール、岡山市地域協働学校という仕組みがありました。これは中学校区単位で、地域が小学校・中学校を支えていく、地域全体が学校になるという仕組みを作っていこうということで、これとユネスコスクールとを重ね合わせる形で、中学校区単位でのユネスコスクールに申請するという形をとっているところが特徴です。
 あと一点、課題ですけれども、継続的にESDに関わっていく人材を育てていくことが大きな課題であり、若い人たちが継続的に関わっていないという問題があります。
 それから、組織的な問題として、岡山市がESD取組の中心になっており、県と市との関係という問題のために、なかなか県全体の取組には広がっていないという課題がございます。
 以上でございます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 御質問もあろうかと思いますが、まずはお二人のお話を伺ってから御議論いただきたいと思いますので、引き続きまして、清水委員から、7~8分程度でもしできましたら、よろしくお願いいたします。

【清水委員】 
 ありがとうございます。多摩市教育委員会の清水でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、御説明させていただきますが、私の方からは、学校教育を統括する教育委員会の視点ということから、ESDの取組のポイントを三点申し上げたいと思っています。今日、お手元にこういった二つの資料を用意させていただきました。多摩市の第五次総合計画というのと多摩市教育振興プラン、この二つの資料もお目通しいただきながら、御説明させていただきます。
 まず1番ですが、ESDの取組のポイントの一つ目になります。これは、持続発展教育・ESD推進を、市の総合計画と教育委員会の基本方針に位置付けたということでございます。私の勤めております多摩市は、御存じのとおり、多摩市多摩ニュータウンというのがございます。今から40年前、ちょうど昭和46年、1971年に多摩ニュータウンの第1次入居が始まったということでございます。急速な発展を遂げてきた多摩市ではあるんですが、一度に同世代の人々が入居したということで、現在では高齢化が急速なピッチで進んでおりますし、また、私たちがいまだかつて経験したことのない高齢化等もありますのと、人口減少社会という問題も抱えておりまして、これは多摩市だけではないんでしょうけれども、将来を予測することが困難ということではないかということで、子供たちを含め、市民一人一人が幸せに暮らしていく、住まうことに安心と誇りを持てる、そういう多摩市を実現していくんだということで、市長が日頃からESDを推進するべきだという話をしていただいています。
 多摩市の子供にとっては、将来をなかなか予測することが難しい中、子供たちをどう育てていくかということが一番の課題になってくるわけです。例えば、物事を多面的に捉えて課題解決を図れるような、そういう人材ですとか、地域の文化を理解して未来に継承できる、また、そういった人材をどう育てていくかということが問われているというふうに考えています。その中で、多摩市における将来を見通した人材育成ということが、教育の視点だけではなくて、今申し上げたように、市の施策としても非常に大切になってくる、それが持続発展教育・ESDと考えています。
 多摩市では、「持続発展教育・ESD」というのを、もう一つの言葉として使っています。これを市の施策の一つとして位置付けたのが、本市の取組のポイントであると思っています。
 具体的に資料でお見せすると、第五次総合計画第2期基本計画というのがございます。これは概要版で、概要版でないものというのは200ページぐらいあるんですが、この概要版は、今日お配りするので作ってきてもらいましたが、この中に、市としての、これは10年の計画です。4年ごとに、市長の任期ごとにこれは見直すということになっておりまして、27年4月に出来上がったものでございます。
 この8ページに、スマートウェルネスシティ、健幸都市・多摩の創造というのですが、その中に、こんな取組を行いますという中で、持続発展教育・ESD(2050年の大人づくり)を推進するというのが、8ページに書かれております。
 また、9ページには、多摩市が目指す2050年の大人づくりというのはどういうものかということが、市民に分かるように、ここに書かれているということでございます。
 それから、18ページには、もう少し具体的に、政策として、人と学びを未来につなぐまちづくりという中に、持続発展教育・ESDを推進していくんだということを載せてございます。
 また多摩市教育委員会は、教育委員会として、多摩市教育振興プラン、こういうものを作っております。今日は、これはお渡しできなかったので、改訂版の概要版というのを緑のプリントでお配りしていますが、教育委員会としても、基本方針の中に、持続発展教育・ESDの推進という文言を入れてございます。
 市の施策、そして、教育委員会の方針の中に、明確にこの持続発展教育・ESDというものを位置付けていこうということにいたしました。これは、例えば、ESDを推進する市長、それから、教育長も含めて、任期がありますので、当然、ESDという取組が継続されるかどうかというのは、正直申し上げて、なかなか分からないところがあるんです。ですので、このようにきちんと計画の中に位置付けるということが、正に持続発展教育を今後継続していくための一つの方策であります。
 ちなみに、私の任期はこの9月の末ですので、その後、多摩市の方でちゃんとこれから動くかどうかということを見ていただければ、その後のことは分かるのかなというふうに思っております。
 それから、ESD取組のポイントの二つ目でございますが、これは、持続発展教育・ESDを議会、それから、市民に理解してもらうことが大事だと思っています。5年前に市の施策として取り組み、教育委員会がまず始めたわけですから、ちょっと岡山さんとは逆になるかもしれませんが、市の施策に位置付けていただきました。
 そして、これを進めていくためには、市民の代表である議会に認められ、予算を付けてもらう、これが必要だと考えました。市内の公立小学校全27校がESDを推進するという目標を掲げて、全校ユネスコスクールに登録することで、組織としての取組に近付けることとしました。また、ESD推進のキャッチフレーズを、「2050年の大人づくり」というふうにして、ESD、持続可能な開発のための教育という言葉は、なかなか議会だとか市民にとって分かりにくいということで、「2050年の大人づくり」というキャッチフレーズで、理解・啓発ということを進めました。このことによって、議会の中でも学校の様々な事例、取組の例を紹介したり、市民の皆さんには発表会を通して御理解いただくというようなことで、努力をしてまいりました。今は市民の皆さんですとか議会の理解をかなり得ているのではないかなと思っていますし、全国で初めてESDの予算というのを付けていただきました。
 それから、ポイントの3番目ですが、多摩地区のESDコンソーシアム、これを構想して、3年前に立ち上げました。コンソーシアムですから、連合体ということでございます。持続発展教育・ESDというのは、持続可能な社会の担い手づくりから、最初は、子供たちの取組が中心であったわけですけれども、子供の成長を支える大人の関わりがやっぱり不可欠だということで、地域とか企業、それから各行政機関、そして大学との連携の中で、子供たちを育てていこうとする流れが自然に生まれてきたのではないかなと思っています。こうした取組が、地・産・官・学の連携というふうに多摩市では呼んでいますが、毎年行っております子供たちによるESDの発表の場、「子どもみらい会議」につながってきています。今後ESD推進の5年間の目標として、この「子どもみらい会議」を進めていくというのが、多摩市としての目標であります。
 実は、こうしたコンソーシアムの考え方は、地域のお年寄りですとかNPOが学校に入ってくるきっかけになっていたり、企業のCSRの展開をする場所になっていたり、大学と市教委が協働・連携して研究を進める、そういう場になっています。例えば、ACCUとの連携が海外との交流を盛んにしたりというようなことで、非常に効果が相乗的に表われていると思っています。
 こうしたコンソーシアム構想を立ち上げて、様々な方々と、また機関と連携することで、多くの人的・物的な支援が得られるようになりました。実は、ESDの予算は取っているんですが、特に市として予算を使っているのは、ESDの教員の研修、それから、研修会での講師派遣費用程度なんです。ですので、最初はかなり予算要望したんですが、最近は予算の要望も少なくて、財政当局からはESDは非常に好評なんです。議会では、よくESDの質問は出るんですが、多摩地区のESDコンソーシアムということを推進していくことで、多摩市の持続発展教育・ESDには金をかけないという答弁をしています。
 市民に理解を求めていくということが非常に大切で、市を挙げてESDに取り組むということは、そこにつながるんだろうなと思っていますので、これからもそういう視点で取組を進めていきたいと思っています。
 以上でございます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 今、阿部委員、清水委員のお二人から、それぞれ地域におけるESDの活動の状況につきまして報告いただきました。少し時間を取りまして、地域におけるESDの推進方策につきまして意見交換をしたいと思います。どうぞ、御質問を含めて結構ですので、御発言いただければと思います。
 やはり行政が、政策課題として具体的なものが出てきて、それを解決する一つの手法としてESDを考えるというのは、学校教育の観点からも安定している感じがし、地域のそういった意識改革にもつながるのかなという気がいたしました。
 どうぞ。

【後藤委員】 
 一つ伺います。公民館を拠点としているというのが、新しく、意義、意味を感じるのですが、どのような過程を経てこのようなことが実現できたのか。教えていただければありがたいのですが。

【阿部委員】 
 先ほども申し上げたように、岡山市のESDの取組は、当初から市の中に事務局を置いて、コーディネートしていくという形をとっています。一方で、今おっしゃった公民館については、以前から、岡山市が公民館活動の活性化に熱心に取り組んでいたという経緯がございます。
 それから、冊子としてお配りした京山公民館などでは、非常に活発なESD活動を展開しており、関係者が集まって、岡山の特徴って何だろうと話し合ったときに、公民館が一つの特徴ではないかとの意見がありました。そこで、公民館を一つのキーワードにして、これから更にESDを進めていこうということになり、それから公民館が一つの確立されたESDの特徴として挙がってきたと思います。それが2007年頃です。
 もう一つ重要な点は、公民館とアジア太平洋地域のコミュニティ・ラーニング・センター(CLC)とを結び付けて、国際的な連携にもつなげていこうという流れを起こしたということです。これは私どもの岡山大学で海外のCLCとの連携を進めていた教員がいたこと、さらには、ACCUさんの協力もありまして、公民館、CLCという形で国際的な展開もやっていこうという流れになりました。それが結実したものが、2014年秋の「ESD推進のための公民館-CLC国際会議」ということです。

【後藤委員】 
 ありがとうございました。

【見上座長】
 重委員、お願いいたします。

【重委員】 
 阿部先生にお尋ねしたいんですけれど、今おっしゃっていただいた説明の中で、私が確実に理解できていないのかもしれませんが。CLCと公民館がネットワークを組んでいくということで、去年の秋のすばらしい公民館の世界会議があって、私も参加させていただいたんですけれども、その後、このProSPER.NetだとかASPUnivNetとかというところの、それぞれの特性のある活動の主体というか、ネットワークの人たちを、岡山大学のESD協働推進室が束ねるというか、そういうことをなさっているんですか。それとも、それぞれ別々で、時たま誰かさんが声をかけて。

【阿部委員】 
 それぞれが分担しながらという形です。私はユネスコチェアの代表者ですが、分野が環境学でありますので、そちらの関係で、国連大学のProSPER.Netに関係しております。ESD協働推進室の方は、教育学の分野で、ASPUnivNet、ユネスコスクール支援の主たる組織になっております。
 大学全体としては、私が岡山大学の理事という立場にありますので、大学全体を束ねるという形です。ASPUnivNetについても、現在、事務局校を担当させていただいておりますので、その代表者という立場になっています。
 関係者でそれぞれ機能分担しながら、皆が集まってやっているという形ですね。

【重委員】 
 ここで、先ほど課題とおっしゃった、継続して次のネットワークを束ねていく人を養成するというところにも人材育成の課題をお持ちという、そういう意味ですか。

【阿部委員】
 そうですね。やはり10年間続けてきて、いつも同じような人が集まっているといいますか、そういうところがありますので、世代を超えて、どのように継続して進めていくのかが、課題としてあるという気がします。

【重委員】 
 特にESDは、いろんなクロスカッティングイシューなので、どこへ行っても、同じ人が同じような役割をしているというようなことが、時々私たちの会員でもいらっしゃるので、そこはとても大きな課題だなと思っています。

【阿部委員】
 ただ、ありがたいことに、先ほどの多摩市さんのお話と同様に、岡山市の場合も、世界会議を受けて、市長をはじめ市のトップがESDを極めて重視しております。今、私もメンバーになって新しい総合計画の策定を議論をしていますが一つの重要なテーマとしてESDを掲げようという話になっています。

【重委員】 
 ちゃんと証を、法律ではないけれど、作っておかないといけないですね。

【阿部委員】 
 そうですね。

【重委員】 
 そうすると、国も何かESD法案みたいなものを作ったりして。

【見上座長】 
 ほかにございますか。

【羽入委員】 
 先ほど御説明いただいたのかと思いますが、一点教えていただきたいのは、公民館中心というお話でしたけれども、公民館が大体中学校が中心というか、中学校の数だけあるというようなお話だったと思いますが。そのときに、小学校の教育課程とか、このESDを学校教育の中に生かしているような点がありましたら教えてくださいませ。

【阿部委員】 
 こちらの岡山ESDプロジェクト冊子の11ページ、12ページを御覧いただくと、一番先進的といいますか、活発に活動している公民館の事例があります。例えば、藤田学区では、藤田公民館、それから、藤田地区の三つの小学校、中学校、それから、ここには農業関係の高校がありまして、それらが加わって、農業地帯ですので、地域のお米作りとか、農業の活性化に関する活動を展開しています。右の方は高島学区で、先ほど申し上げた天然記念物のアユモドキの保全活動というのがございまして、エコミュージアムという形で、学校も入れた形で活動しています。

【羽入委員】 
 ありがとうございます。公民館活動と学校の活動が。

【阿部委員】 
 ええ、結び付いておるという。

【羽入委員】 
 いわば協働関係というように理解すればよろしいですか。

【阿部委員】 
 はい。

【羽入委員】 
 ありがとうございます。

【阿部委員】 
 地域全体として、こういった活動を通じて、子供たちを育てていこうという、そういう仕組みを作ってきているということです。
 もちろん、これが37の全ての公民館、中学校区で同様な形で行われているかと言いますと、温度差もあるということです。

【見上座長】 
 羽入委員の御質問に重ねて質問すると、公民館ということを考えると、社会教育活動と非常に結び付いているということなんですが、学校の子供たちから、世代を超えて、お年寄りまでというような、そんな成果というか、考え方みたいなのはございますか。

【阿部委員】 
 そうですね。各学校の父兄の方々、それから、公民館には、時間に余裕のある地域のお年寄りの方々が集まって来られますので、そういった方たちが子供たちを指導し、世代を超えた学びの場ができるようになっているということですね。

【見上座長】 
 良き理解者としてですね。
 どうぞ。

【佐藤委員】 
 岡山の取組について、阿部先生に二点ほどお伺いしたいんですけれども。
 先ほど課題というふうに挙げていただいた人材育成に関して、例えば、大学として、何かそういう取組をされておられるのか。教員養成、あるいは、公民館の現職の方々の研修等を大学として何かやっておられるのかどうかということと、もう一つは、先ほど座長もおっしゃっておられましたけれども、政策、特段、政策行政と結び付くのが大事だとおっしゃっておられたんですけれども、なぜこの15年にこういうESDという名前までくっ付けるような行政の部局を、これは多分トップもかなり強い意思だろうというふうにも思うんですけれども、その辺のところは市長の個性なのか、それとも、そんなに関係あるのか、そのことを教えていただければと。二点お願いします。

【阿部委員】 
 人材育成の面ですが、私どもの大学の中で言いますと、その時々に学生たちが参加してきて、活動をしていますが、卒業しますと、外へ出ていくということで、継続性を担保するのがなかなか難しいところがあります。
 それから、教育学部では、教員養成の場でESDについて紹介したり、あるいは、カリキュラムの中にESDを入れたりとか、そういうことはやっておりますけれども、学部全体に広がるかというと、必ずしもそうではなくて、ESDは特殊なことというような、そういう見方も残っているように聞いております。
 公民館については、市の方で、全ての公民館の職員に対してESDの研修を受けさせる仕組みも作っておりますので、公民館自体はESDに対する理解がある程度進んでいるのではないかと思います。

【佐藤委員】 
 その公民館の研修をやるときに、大学として何かサポートしたりすることはありますか。

【阿部委員】 
 私自身は行ったことはないのですが、教育学部の先生方、あるいは、私の仲間では、環境分野ですけれども、例えば、ごみの問題とか、日常的に関心の高い環境分野で、講座に出向いていったりするように聞いております。
 それから、岡山市のESD推進課ですけれども、これまでのESD取組の経緯と、世界会議が成功であったということで、現市長が感銘を受けまして、ESDは岡山市として是非続けていく必要があるということで、世界会議推進局が廃止になった後に新しい課を作ったということです。
 それから、ESD推進課が属する局の名前は市民協働局で、これも4月からの組織改革で新しくできました。やはり市民協働のまちづくりという観点から、ESDは非常に優れた仕組みではないかということで、市民協働局の中にESD推進課を設けています。
 学校教育は、教育委員会の方で、文科省のコンソーシアム事業で採択を受けて、ESDに更に力を入れていこうということで、ESD推進課と教育委員会の二つが両輪になって進んでいると御理解いただければと思います。

【見上座長】 
 北村委員、どうぞ。

【北村委員】 
 ありがとうございます。
 岡山と多摩の貴重な御経験、御教授いただきましてありがとうございます。
 地域におけるESDの発展ということで、非常にいろんな立場の方、いろんな組織がネットワーク化して広がっていく、それが正にESDだと思うんですが、僕自身もあるRCEの最初の設立の当初関わったりしたときに、もともとあるネットワークが逆にちょっと難しさも生んだ部分がありまして、そのときは環境系の市民団体の方々が、結構県の環境の担当の部署の方たちと長年ネットワークづくりをされてきたんで、そこを中心に始めようということで、ネットワークを作り出したら、ほかの領域の人たちは今度は入りにくいとか、連携しにくいような形になって、なかなか本来のESDの広がりがなくて、環境中心でがーっと引っ張られたりしたことがあって、それをどういうふうに戻すか、あるいは広げるかというんで、大分みんな苦労した記憶もあるんですけれども。それぞれの地域でESDらしく幅広い分野に取り組んでいく中で、地域の方々のネットワーク化を進めたりするところで、どんな難しさがあったのかなとか、問題、課題があったのかな、それをまた、どういうふうに乗り越えられたのかなということを御教示いただけると、すごく勉強になるなと思うんですけれども。

【見上座長】 
 どちらか、よろしいですか、両方から伺いましょうか。多摩側から。

【清水委員】 
 おっしゃるとおり、ネットワークって、いい言葉なんですが、なかなかそれを作っていくというのは難しい問題があると思います。特にNPOさんですとか地域の様々な団体の皆さんと学校が連携していくというのは、ESDだけではなくて、今までもずっと課題の部分があったんですが、ESDということで、逆に、学校に入りやすくなったというのは、一つ言えるかなという感想を聞いたことはあります。
 ただ、ESDって、さっき申し上げたように、なかなか理解していただけない。私が言っているのは、すごくスペシャルな地域の皆さんと言ったらちょっと失礼なんですけど、学校で何かやりたいんだ、だけど、ESDって聞いたら、何かよく分からなくて、手を出しにくいよねというようなことをやっぱり言われたことがあります。
 特に多摩市の場合は、さっき申し上げた高齢化しているまちというんですが、ただ、ものすごく学校で何かをしたいというお年寄りが多いんですよね。そういう方たちと一緒に何かを進めていくという中で、ESDを理解していただいて、それこそ自分たちでやっている農園に来てもらって、子供たちと一緒に作物を作りたいんだとか、そういうようなオーダーがたくさん出てきて、それを切り分けていくのはやっぱり教育委員会の指導主事の役割で、多摩市としては、教育委員会の中にESDを推進するための担当の指導主事というのを置きました。それだけ仕事していたわけじゃないんですけれども。そういうことによって、その指導主事と地域の方、指導主事とNPO、指導主事と企業、指導主事と大学が、そこで連携をしながら、ワンクッション置いて学校と、今できそうな学校ですよね。そのことができそうな学校。環境教育をやりたいというところもあれば、いや、伝統文化をやりたいんだ、国際理解をやりたいんだというところとうまくマッチングさせていくというのが大事だったので、そこではやっぱり指導主事の役割というのが非常に大きいなということは思いました。
 そんなような取組をしています。以上です。

【見上座長】 
 阿部委員。

【阿部委員】 
 岡山市の場合は、先ほどの経緯で示しましたように、最初、ESDの取組を始めたときの事務局が、環境局の環境保全課ということで、要するに、ESDというのは環境局がやっていることでしょうという認識がありまして、なかなか学校教育の分野に広がっていかなかった経緯がございます。ただ、国全体として、ユネスコスクールをESDの拠点として進めていこうという動きがあって、その中で徐々に広がってきたというのが現状ではないかと思います。
 それから、ESDという言葉に対しては、分かりにくいという反応が常に返ってくるのですが、岡山市の場合は、ESDを岡山言葉で、「えーものを子孫の代まで」と言い換えています。実は、これを岡山市のESD条例のタイトルにまでしています。文科省や国の方でも、ESDを「今日よりいいアースへの学び」というキャッチフレーズで、分かりやすく述べています。ESDの理解促進には皆さん苦労されている。これは大学の中でも同じです。

【見上座長】 
 今、それぞれ地域でESDをどう広めるかということで御議論いただいていますが、お話あったように、地域ごとに課題があっても、その地域を広げようとすると、課題が違うために、なかなかかみ合わないという経験を私もしております。先ほど阿部委員の方から御紹介ありましたが、仙台広域圏もRCEに最初に指定されましたが、3地域を大きな一つにまとめるときに、仙台市、いわゆる都市の消費の問題、消費者の集まりというところの問題と、それから、米を生産する古川の地域、それから、魚を捕る気仙沼の地域、この3地域が一緒になったんですね。そうしますと、声をかけたときに、自分たちは自分たちの問題をやっているんだから、今さら何で一緒にやらなきゃいけないんだというんで、非常に最初は互いに反発がありました。とにかくお互いに干渉しないで、情報交換だけしましょうよというので始まったのがRCEの最初の活動なんですが、そのうちに、それぞれの手法とか問題から、それであれば自分たちのところにも同じ問題があるというような形で、時間とともに共通項が出てきて、同時に、ESDって何だというのがあったんですが、あれもESD、うちもESDか、それならこっちもESDだなというような、そんな概念が生まれてきたというようなこともありました。やっぱりその辺りは話し合いながら情報交換することが大事で、そういう意味では、多摩の場合も、岡山の場合も、うまくいっているのかなというふうなことを思いました。
 それでは、地域ということから更に進みまして、きょうの後半のところの議論をお願いしたいと思いますが、前回の御議論を踏まえまして、今後のESDの推進に当たっての課題の整理、それから、検討の方向性について御議論いただきたいと思います。
 まずは、資料4につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

【籾井国際戦略企画官】 
 それでは、御説明させていただきます。
 前回、こちらの参考資料3に基づきまして、いろんな角度からESDの推進について御議論いただいたところですけれども、前回の御議論でもございましたが、これまでESDは割と抽象度が高いレベルで話がされていて、じゃ、具体的に何をやっていいかというところが理解されにくかったということもございましたので、具体的に落とし込んでいくためにはどういうことをさらに議論していただく必要があるのかというのを、前回の御議論を中心に、事務局としてまとめたのが、資料4ということになります。
 まず1ページ目でございますけれども、1ページは、主に前回頂いた御議論の中から見えてきた課題のところを幾つかピックアップさせていただいております。
 一つは、ESDの目標というのが割と抽象的であって、さらにいろんな分野を包含するものであるために、一般的に十分に理解を得られているとは言えないのではないか。
 それから、二つ目が、関連はしているんですけれども、どうしても、先ほどの御議論の中でもありましたが、新たなもの、付加的なものとして捉えられてしまって、その負担感が先行してしまって、実践されていないのではないか。
 それから、三点目が、より学校現場での実践の話になりますけれども、ESDが重要だというふうに理解をしたとしても、必ずしも体系的・継続的な形での学習がされていないというようなことがあって、ESDが本来目指すような資質・能力の育成につながっていないというようなこともあるのではないか。
 そして、一人熱心な先生がいても、やっぱり校長先生のリーダーシップが必要だというお話もございましたけれども、学校内で組織的に実施されていないということがあるのではないかというのが、学校教育の分野ではございました。
 それから、ユネスコスクールに関しては、これまで10年間培われてきた実践があるわけですけれども、そういった実践事例というのが必ずしも十分に効果的な形で共有されていないですとか、あと、ユネスコスクール、数は900校を超えておりますけれども、そういったESDの推進拠点としてのユネスコスクールの活動の更なる質の確保が必要だというような御意見がございました。
 2ページ目に参りまして、そういったことを踏まえると、学校で実践するに当たって、より具体的な学習活動のイメージが湧くような、そして、そのための準備を進められるような何らかのガイダンス、参考資料的なものが必要なのではないかというのが、前回の御議論だったかと思います。
 そうしたときに、こういった分野で先行している総合的な学習の時間ですとか、環境教育の分野といったようなことも参考にしていくことが必要なのではないか。
 そして、ユネスコスクールに関しましては、先ほどの課題と連動していますけれども、優良事例の共有、意見発信の場の構築が必要だということと、質の確保のための方策の検討が必要だというのが、大きな御議論のポイントだったかと思います。
 (2)以降が、では、それを踏まえて、具体的に何を御議論いただくかというところなんですけれども、まず、先ほど申し上げました学校において具体的な学習活動のイメージを助けるものとして、実践の手引き的なもの、名前はまた、イメージをいろいろ伴うものなので、検討の余地があるかと思いますけれども、何かこういうのが具体的なESDの活動で、それをするためにはこういう準備をするといいんだというような、学校の先生方が参考にできるような資料というのを作る必要があるのではないかということでございます。
 今日もお手元に配付しておりますけれども、事務局としてこの論点ペーパーを作成するに当たって、総合の指導資料ですとか環境教育の指導資料というのを参考に項目をピックアップさせていただきましたけれども、まずは、ESDの目指すところの明確化が必要であろうということで、例えば、資質・能力、何を目指すんだというところを、学習指導要領に今いろいろと、持続可能な社会の構築に向けてということで、参考資料6で抜粋をお配りしておりますけれども、ESDに関する言及がございます。ただし、1枚目に該当箇所が書いてあって、2枚目以降が具体の記述を抜粋してございますけれども、これを受けて、じゃ、学校で具体的にどういう資質・能力の育成を目指していくのかというようなところの説明、明確化が必要なのではないかと。
 さらに、ESDの実践について、学校が学習活動を計画していくに当たって、ESDの狙いというのを、抽象的なレベルよりは、更に学校が学習活動を作っていくに当たって参考になるような形で明確にしていく必要があるのではないか。
 あとは、学校でどういう形で、特にESDの実践の場というのは、一つの教科に限らず、いろんな教科にまたがる、総合の時間でされている場合も多いですが、例えば、理科だったり社会だったりという教科の中で実践されることもあるということを踏まえて、じゃ、学校の中でどういう形で、どういう体制で、ESD実践に向けて計画をしていくのかというようなことについての情報が必要なのではないかということでございます。
 その際に、これまでもいろんな実践がされてきていますので、そういうのを無視して一気に新しいものをというよりは、今まで行われてきたような優れた実践を踏まえて検討していく必要があるのではないかということでございます。
 2ページ目、3ページ目、4ページ目までは、今口頭で申し上げたようなことを文章で書いたものでございますけれども、4ページ目の一番下でございますけれども、学校においてESDを通じて育成したい資質・能力についてということでございますけれども、参考6にございます学習指導要領の記載も踏まえ、じゃ、ESDを通じてどういう資質・能力を育成していくのかということを御議論いただくに当たりまして、5ページ目に参考として挙げさせていただいておりますけれども、今現在ある枠組みとしては、国研で作成した枠組み、六つの概念、七つの能力・態度、それから、環境教育資料の中でも、こういった能力・態度の例示がございます。この点については、国研の方は、持続可能な社会に向けた資質・能力という形で、ESDのあらゆる分野を包含した形で作成しておりますけれども、環境教育の方は、当たり前ですけれども、環境の分野に特化したものであると。ここら辺は、具体的な分野にどこまで踏み込んでいくのかというようなことも御議論いただければと思っております。
 6ページ目に参りまして、(2)は学校教育全般ということで論点を挙げさせていただきましたけれども、(3)に移りますと、今度はユネスコスクール。これまでユネスコスクールはESDの推進拠点として位置付けられて、熱心にESDに取り組んできたわけですけれども、先ほど申し上げたように、ユネスコスクール同士の事例の共有ができていなかったり、さらに、そこから拠点として、ほかの学校なり地域なりに発信が必ずしもできていなかったということがございますので、その辺りをどういう方策をとっていくのかということを御議論いただきたいと思っております。
 この点に関しては、まだ十分に記述ができておりませんけれども、今現在、ユネスコスクールからのアンケート結果というのが返ってきておりまして、次回の御議論の際には、それも踏まえて、もう少し詳細なものを御提示できればと思っておりますけれども、現時点で御意見を頂ければ、御議論いただきたいと思っております。
 それから、(4)が、学校におけるその他の検討課題ということで、先ほどの実践の手引きというのは、まず情報を集めましょうと、一つパッケージとして用意しましょうと。その上で、やっぱり教員の指導力の向上というのが、単に情報があったとしても、それをうまく現場で実践をしていただくことが必要だと思うんですけれども、それが必須になってくると。そうしたときに、どういう研修の場が考えられるのか。例えば、文科省が全国レベルでやるのがいいのか、あるいは、もう少し地域レベルでやるのがいいのか。校内研修という形で今されているところも多いと思うんですけれども、どういう研修の場が適切なのか。そして、対象として、管理職――この前は校長先生のリーダーシップが大切だというお話もございましたけれども、一方で、一つの教科に限らず、全部の教科の先生方が理解していないと、なかなか連携をしようと思ったときに連携がうまくできないというようなお話もございましたので、どういう先生方を対象に行うのがいいのか。例えば、地域と教員が一緒になって参加するような研修の実施というのも検討する必要があるのではないかということがございました。
 あとは、学校と地域をつなぐコーディネーターについても御議論いただいたと思うんですけど、そういう方々、先生ではない方でコーディネートされる方々にどういったスキルが必要で、それをどうやって育成していくのかということも、課題として挙げられたかと思います。
 最後、2と3ですけれども、2については、地域、ユース、大学におけるESDの実践ということで、前回、それほど時間を取って御議論いただいた部分ではないんですけれども、参考6にございます課題の中でも挙げておりますけれども、こういったところも重要な分野だと思っておりまして、地域につきましては、本日頂いた御発表も含めて、更に充実していければと思っております。
 それから、ユースにつきましては、これはテーマとか分野というよりは、あらゆる側面で若い方々をどうやって参加を促していくかというところは御議論いただきたいと思っておりまして、その方策について、より具体の論点を挙げていただければと思います。
 それから、大学についても、大学自身がESDをやっていくことも必要だし、大学が学校に対してサポートを与えていくことも必要だという御意見があったかと思うんですけれども、そういった分野、より具体的な方策を検討していくためには、どういう視点から検討していく必要があるのかということを是非御議論いただければと思います。
 国際につきましては、前回頂いた御意見の中で、国際的なインディケータの開発に貢献していく必要があるということでしたので、そこは今後の課題として、どういう形で、どういう場で検討していくのかというようなことが挙げられるかと思います。
 この資料につきましては、あくまでも論点ペーパーですので、本日、またいろいろ追加なり、こんなのはおかしいという御意見を頂いた上で、また整理をして次回以降御議論いただく性質のものでございますので、これでもって方向性を示したというものではないので、是非いろんな御意見を頂戴できればと思います。
 以上です。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 事務局の方で、これまでのESDの実績を踏まえて、これからどうするかというときの問題点等をうまくまとめていただいたと思います。なお、今、御説明ありましたように、これから検討をさらに詰めなければいけない部分もありますが、どうぞ、皆様方の御発言を踏まえて、更にこれをより質の高いものに持っていきたいと思いますので、特にどこからということではないんですが、今後のESDの推進方策ということから御意見を頂ければと思います。
 手島委員、お願いします。どうぞ。

【手島委員】 
 すばらしいまとめを作っていただいて、感動しながら拝見しました。
 一つ目のところの、学校現場での取組の推進に関する課題といったときの、この学校現場が、世界会議以前は、ユネスコスクールがどうしても中心になって、ユネスコスクールの学校現場でということが私たちの主な論点でありました。今ここで出されている学校現場というのは、全国の幼稚園から大学までと言うと、約5万4,000何校になるんでしょうか、というような5万校以上の学校や園が対象になった推進施策がここで話し合われて、方向付けがされるということに対して、すごく感動的に拝見いたしました。
 それと、二つ目の話ですが、私は、ずっとESDのことを自分が一所懸命学校教育に落とし込もうとしていたときに、総合的な学習の時間というのが大変重要なんだということが後々だんだんに身に染みて分かってきたんですが、総合的な学習の時間との関係をこのように大きく取り上げていただいているということも、ありがたいことだなというふうに思います。
 それから、このESDに関する実践の手引きの話が出ているんですが、これは結局、誰が作って、誰がそれを使って指導するのかというところがとても大事なことになるのではないかと思うんですが、それが、例えば、ユネスコスクールの範囲内で配られて、使われているというような形になってしまってはもったいないだろうなというふうにも思いますし、せっかく全国的な視野が広がったところであれば、全国に、やっぱり学校の現場に届くような形で、それぞれの意識が変わっていくような使い方を工夫していただけるとありがたいなと思いました。
 もう少し言っちゃってもいいですか。

【見上座長】 
 どうぞ。

【手島委員】 
 すいません、私ばっかりで。
 前回の話の中でも、アクティブラーニングの話が出ておりました。まとめの文章を先日送っていただいていたので、それを拝見し直して、論点をもう少し絞って考えようと思いました。そうすると、ESDを進めていく場合に、二つの問題点があるなと思いました。
 一つは、資質・能力・態度の育成ということで、アクティブラーニングを推進していくと、そこにつながっていくだろうなと思われるようなことです。探求型の学習であるとか、あるいは、その結果、国研で示された7の能力・態度のようなところに行き着いてくる、その資質・能力の育成という視点が一つあると思うんです。
 だけども、それだけでESDを語っていってしまうと、もう一つ重要な、総合的な学習の総合という大事な部分が抜け落ちてしまうのではないかなという危惧を感じております。つまり、教科横断的な学習の在り方というのを総合は力強く推進しようとしているわけで、そのことを各学校がカリキュラムとして作っていくということを忘れてしまうと、あるいは、そこに視点が軽視されてしまうと、単なる能力育成のためのスキルのような形にESDがなってしまうことになるのではないかと思うんです。
 それで、大事なのは、教科・領域をつなぐ視点なんだということを感じました。その視点というのは、例えば、問題解決能力だとかコミュニケーション能力とかという、国研の七つの資質・能力というのは、そのようなものに集約されると思うんですね。生きる力の中の問題解決的な能力であるとか、子供同士のコミュニケーション能力につながっていくようなものが語られると思うんですが、むしろ教科をつないで学習をつくるときに大事なのは、その能力以上の視点が大事なんだろうと思いました。その視点というのは、ESDの視点なんだろうと思いますし、総合的な学習の時間の指導書で示されている視点なのかなというふうにも思いました。具体的に言うと、環境であるとか、国際的な理解であるとか、あるいは、人権・命の問題であるとか、文化理解であるとかという視点になってくるのかなと思います。
 そんなようなことを考えていくと、総合的な学習の時間をこれからもっともっと推進していくためには、そのESDの視点を大事にしながら教科・領域をつないでいくということを重視していくことが特に大事なことではないかなと、前回の記録をもう一回読み直したときに感じたことであります。
 以上です。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 最初の御指摘ですけど、この実践の手引きにつきましては、事務局の方のまとめとしては、まだこういうものを作ってはどうかというようなことの提案ですよね。

【籾井国際戦略企画官】 
 はい。そこから先、誰の名義で、誰にどうやってというところも含めて御議論を頂きたいと思っております。

【見上座長】 
 そういうことですね。

【籾井国際戦略企画官】 
 ただ、前回の御議論の中で、ESDそのものの推進について議論していくべきだったということですので、念頭に置いているのは、ユネスコスクールだけに配るというよりは、より幅広く、全ての学校にお配りするということを念頭に置いております。

【見上座長】 
 ちょっと私自身の経験を言いますと、大学で環境教育の授業を持ったときに、この環境教育指導資料というのが非常に助けになりました。非常にうまくまとめがされていると思いました。こういったものを指導する側がどう取るかということは、その人の考えだと思いますが、こういうのがサイドにあると、よって立つものができてくるというような気がしました。そういうものをイメージされているのかなというふうに、私は伺いました。
 それから、もう一つの後半の御指摘、アクティブラーニングで御指摘されたのは、総合学習の中で、やっぱりESDの視点とか、課題と言ってもいいでしょうか、そういうものをしっかり定めて、その活動を通じて育まれるのが資質・能力・態度だというふうに理解していいでしょうか。
【手島委員】 
 はい。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 これにつきましては、何か。

【羽入委員】 
 よろしいでしょうか、何度も。
 非常に基本的なことを御質問したいんですけれども、この議論の到達目標とスケジュールについて教えていただきたいと思います。

【見上座長】 
 大事な点ですね。

【羽入委員】 
 と言いますのは、今、教育課程部会で指導要領を議論しています。見上先生にも御報告を頂いたことがありましたし、そのときにESDのお話もありました。アクティブラーニングの話も、そのときに併せて出てきたと思うんですが、ここでの私たちの議論の位置付けをちょっと教えていただけたらと思いますが。

【見上座長】 
 事務局からは何か提案はできますでしょうか。

【籾井国際戦略企画官】  まずタイムスパンの話ですけれども、ここでの御議論は、一旦、夏辺りに方向性はまとめていただきたいと思っておりまして、そうしますと、学習指導要領の改訂の議論というのは、もう少し長期的な議論になりますので、そちらの……。インプットできないこともないんですけれども、一方で、今、実態として、学習指導要領に既に記載がされているんだけれども、全ての学校でESDがちゃんとされている状況にはないという実態もございますので、まずは、今の学習指導要領の記載を前提として、より具体的な学習活動のイメージを提示していきましょうというのが、この場での御議論の目的でいいですか。すいません。

【山脇国際統括官】 
 一つは、そうですね。今、ESDをどうやって進めていくかということなので、今の指導要領の中にも、明示的には出ていませんけれども、持続可能な社会を築くための教育をどうしていくかというのは盛り込まれているので、そこをどう進めるかというのは当然ありますが、さらに、ここらとしては、この場は、ESDを今後進めるために、学校教育、あるいは地域との連携、地域とユースとの取組、あと全体をどう進めるか、今後の方向性もできる限り盛り込んでいこうと思っていますので、そのアウトプットは当初6月と思っていますが、ちょっと延びるかもしれませんけれども、夏頃までにはこれはまとめていきたいと思っていますので、そのアウトプットは、中教審で議論していただいている学習指導要領の在り方にもある程度のインプットにはなるのではないか。将来の方向性として、こういうことがESDとしては考えられると。それが部会の中での議論にも活用していただける部分が出てくるのではないかなと思っております。
 指導要領自体の議論は、当然、中教審で御議論いただくべきなのだとは思っております。

【見上座長】 
 どうぞ。

【羽入委員】 
 ごく簡単に、すみません。
 学校教育の現場と社会とのつながりのようなことを考えますと、このESDの取組というのは、非常に具体的な提案として有効なのではないかと思ったものですから、そのスケジュールを知りたかったということがあります。抽象的な議論よりも、もしそこに盛り込むことが多少なりともできるのだと、結果的にどうなるかは別として、ここの議論がより生きるかなと思ったものですから、余計な質問をしました。

【見上座長】 
 ありがとうございます。せっかく羽入先生もおいでになるので、できるだけ、今、とにかく世の中はスピード感を持ってやらなければいけない時代です。私も進行として頑張ります。

【羽入委員】 
 そこに居ながら、何も生かせないかもしれないですが。

【見上座長】 
 いやいや、それはもちろん次の段階ですので。

【籾井国際戦略企画官】 
 今も中教審の議論の論点の中には、ESDの視点というのも入っておりますので、いずれにしても、情報としてはインプットしていくということにはなるかと思います。

【羽入委員】 
 ありがとうございます。

【見上座長】 
 どうぞ、お願いいたします。

【田村委員】 
 教育課程企画特別部会で、ESDだけを取り上げて議論するというのは難しいことではないかと思います。しかしながら、時代性を考え、この10年間、特に東北での3.11の出来事を考えれば、この発想を何らかの形で具現化しなければいけないというのは、恐らく重要なポイントなのだろうと思います。とすれば、ここで幾らか議論すること、あるいは、これまでのESDの取組での成果を何らかの形で成果物とするということは、極めて重要なことで、ある程度の段階で、精度の問題はあるかもしれませんが、成果として形にするようなことにチャレンジすることが重要ではないかなと思います。それがどのように生かせるかは、それはまた別の部会での御議論ということになるのではないかと思います。
 その際に、これまで国研がまとめたものですとか、先ほどの資料の提案があるわけですけれども、加えて、このESDというチャレンジがやはり日本から始まったということを踏まえるならば、日本の持つ日本的価値の重みが、例えば、その資質・能力の中に含まれるような議論があってもいいのではないかなと考えます。つまり、どうしてもコンピテンシーとか能力の議論になってしまうと、海外発みたいな議論が多くなりがちで、もちろん、そのことも重要なポイントだけれども、あの東北での出来事を思い起こせば、やっぱり日本的な優れた能力が垣間見えたのではないかなと思います。議論の中で、資質・能力の明確化がありましたので、そういったことも視点として入れていただけるとありがたいなと思います。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 同じ国研の立場から、後藤委員、何かございますか。

【後藤委員】 
 田村委員がおっしゃるとおりだと感じます。それから、学校教育の文脈から、先ほどの手島委員からの御意見「総合的な学習の重要性」を踏まえて発言させていただきます。私どももESDの取組における「総合的な学習の重要性」は、感じています。その上で、今回御提案いただいた「まとめ」を拝見しますと、2ページ米印で示していただいている、「ESDは特定の教科においてのみ実践されるのではなく、学校全体のカリキュラムを通じて実践されるべきものであること」というような文言があり、さらに、参考資料6を拝見させていただくと、学校生活全体、全ての教科・領域で意識すること、すなわち総合的な学習の時間で行うことも含め、教科・領域等で意識することも併せて重要であるという意識に立たないといけないと感じさせていただきました。
 国研で、学校における持続可能な、当時は発展のためのというふうに言っていましたけれども、教育のためのESDを推進したときに、やはり教科内容の中にどのようにESDを、表現がいいかどうか分かりませんが、練り込ませるかというのに、かなり各教科の内容を考えるに当たっても苦労し、そして、それが結果的にはしっかりと結び付けていけたので、教科等の中でも含めて行っていくというのをやはりアピールしながら、資料集などを作りながら、学習内容、それから、求める資質・能力、そして、アクティブラーニングを含めた学習活動にどのようにつなげていくかという、その内容と資質・能力、そして活動をどう結び付けるのかという、そういうことをアピールしていければなというふうな思いでおります。
 総合的な学習の時間、これは基盤になるところでもございますが、教科等も非常に重要な視点だということをお話しさせていただければと思います。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 前回も、たしか手島先生の方から御発言があったように、教科に入れるというのは非常に難しくて、よほど、今御指摘のように、考えてつなげることが大切だと思います。無理矢理特定の教科にくっつけると、そこで思考を深めるのではなくて、つまり先ほど御指摘の資質・能力・態度が深まるよりも、ただそういうものだという記憶するような、ワンパターンのもので落ち着いちゃうというようなことになりかねないですね。ですから、その辺りも、恐らく教師の能力というのはとても大事なんだろうと思います。
 北村委員、お願いします。

【北村委員】 
 今の御議論とも関連するのかなと思うんですが、僕自身、まだどういうふうに言えばいいのかが分からないところがあるんですけれども。
 先ほどの手引きかなにか、そういうものを作るって、すごくいいことだと思うんですね。というのは、例えば、この学習指導要領の言及箇所というので、例えば、5/7ページ、中学校の理科や家庭なんていうところを見ますと、持続可能な社会の構築とかというのが、いろんなことと並列で出てくるわけですね。例えば、技術・家庭で、第1章総説で、持続可能な社会の構築や勤労観・職業観の育成とか、その下ですと、持続可能な社会の構築やものづくりを支えるとか、少子高齢化、食育、持続可能な社会。実は、こうやって見ると、持続可能な社会の構築だけ何だかよく分からなくて、勤労観とか、職業観とか、食育とか、少子高齢化とか、ほかはみんな具体があるのに、持続可能な社会は、具体を伴わずに、とにかくいろんなところに入っているわけですね。ただ、これは仕方がなかったのかなと思いますし、ここまで入っているというのは、国際的に見ても、こんなカリキュラムはなかなかないわけですから、すばらしいことでもあるんですが、やはりこれは学校現場で実践しようというときに、なかなか具体を伴って来ないわけですよね。
 ですので、先ほどの、例えば、手引きがそういうものにあたるのかもしれませんが、ここをもっと具体化することが必要ですし、資質だとか、あるいは教授法だとかというのは、その具体があるから、じゃ、そこでどんな資質を育む必要があるかとか、どういう教授法が必要かという、より具体の目標というところが、とりあえず、我々、持続社会を構築するために、何をここで、例えば、家庭科でもっと教えようとしているのかとかという、そういう議論が、これは恐らくいろんな立場の方、指導要領に関わる方、指導主事の方々とか、教科書を作る方々、それから、学校現場の先生方はもちろんですが、いろんな異なる立場の方々が、もっと具体化する、そういう議論を促せるような場づくりみたいなことが、手引きを単に作るだけではなくて、その手引きを利用しながら、もうちょっとこの教科のここの部分、何をここで具体的に、じゃ、勤労観・職業観と並ぶ持続可能な社会の構築は何を意味しようとしていたんだろうかとか、少子高齢、食育で持続社会の構築って、何をここで言おうとしているんだろうかという、そういうことを促していく必要があるのではないかなというのを、ちょっとすいません、まだ僕自身ももっとどうしたらいいのかというのがないんですけれども、これを見ていて、全てが具体性が乏しいというところが、やっぱりずっと難しさなのかなと。ただ、ここまで入っているというところは、本当にまず第一歩だったんだろうなという気はしております。
 すいません、まとめのないコメントになってしまいまして。

【見上座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【秋永委員】 
 今のに関連して、少しお話しさせていただきたいんですけれども。まず、これはコーディネーターという、こちらの7ページにあるコーディネーターに求められる資質ともすごく関連してくることかと思います。ここにまとめていただいたような具体的な学校の単元で、理科や社会や家庭科のどこで言及されているかという、学校側のニーズ、教えるべきニーズを把握することと、一方で、地域の課題であったり、一緒に取り組もうとしているNPOや企業や大学のシーズをブリッジしてあげることというのが、コーディネーターに求められるかなと思いました。
 その上で、今、先生がおっしゃったように、手引きになるのか分からないんですけれども、具体的な授業案に落とし込んで、どんな実験や体験や観察ができるのかというところまで、その単元により具体的に近付けてあげるということができるかなと思います。
 ちょっと稚拙ではあるんですけれども、最近、農学と食の小学生向けの授業案をつくって、授業をつくっておりまして、例えば、パンというものを題材に取り上げたときに、実験ではパン作りをするんですけれども、例えば、小麦という植物がどのように生きていて、どのように光を浴びて栄養を取り込んで育つのかという理科の単元をはじめ、それが、例えば、地域の農業であったり、経済であったり、人々の健康にどのように関わるのかというふうに、社会に広げたりということができます。そういうふうに話を広げるところと、具体的な実験としては、小麦を育ててみたり、パンを作ってみたりという、具体的な実験や観察を加える工夫を今しているんですけれども、そのようにできれば、授業案ということで、学校の先生も授業に取り組みやすいものになるのかなと思いました。
 ありがとうございます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 実際に手を動かし、体験するということは、とても大事ですね。一方では、いろんなインターネットとか本の情報というのも大事ですけど。だから、その辺りの授業のつくり方というのは、本当に先生方にとっては悩ましいところであり、また、能力を発揮するところだろうと思います。
 お二人から挙がりましたが、じゃ、佐藤委員、お願いします。

【佐藤委員】 
 多分、資質・能力というのが、どうもやはり学習論やカリキュラム論と結び付いていないところに問題がありそうな気がするんですね。こういう資質・能力、国研も出していただいていますけれども、じゃ、これが具体的にどういうふうにして、どういうカリキュラムの下で、どういう学習をすれば、正に今の体験と関わってくるんだろうと思うんですね。
 その意味で言うと、私、手引きというのはあんまり信用していないんですね。というのは、文部科学省で私も随分手引きを作らせていただいたんですけれども、どの実践の場に行っても、「校長室にあります」「教育委員会にあります」「見たことありません」と言われることがかなり多くて、実は随分ショックを受けておりまして。多分、何がいいのかという、つまり、最初の問題と関わってくるんですけれども、実はちょっと話がそれるかもしれません。
 ある私立大学の集まりの中で、中途退学者を減少させようという議論になりまして、今、大体平均15%ぐらいあるんですけれども、20%から12~13%の中退率を7~8%まで落とすんだったらすぐできると。しかしながら、それ以下になると、やっぱり非常に難しい。そうすると、最初にESDをいろんな科目に浸透させるのは、実はかなり難しさもある。ユネスコのユネスコスクールも段階がいろいろあるんだろうと思うんですけれども、名前ばっかりのユネスコスクールも、多分、900校の中にはあるんだろうと思います。
 そうすると、そういう、何を狙って、この手引きというものを、あるいはこういう資料集を作っていくのかというところを、少し戦略的に練っていかないとものすごく難しいのではないか。そうすると、具体的に資質・能力と学習論とカリキュラム論みたいなものをどういう形で作り込んでいくのかというところも、多分、その辺を視野に入れながら作っていかないと、こういうような資質・能力があります、そして、こういうようなことをやります、そして、こういう実践事例がありますという、そういうものの実践事例だけ集めても、なかなか難しいのではないのかなという感じがしておりますので、その辺の工夫をまた議論ができればなと思っているところでございます。
 以上でございます。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【田村委員】 
 この手引きの話に議論が集まっているのですが、それは2ページのところの真ん中の四角の丸の三つのことだと思うんです。先ほどの羽入先生がおっしゃった教育課程部会と関係するのは、どちらかというと上の丸二つのようなところで、かなり大きな話題で、このことはおよそある程度早目に何らかの議論があっていいだろうと考えます。3番目の丸のところは、どちらかというと具体的に各学校で形にするためのものが載っかっていると考えます。
 そう考えたときに、この3個目の丸のところが、先ほどの羽入先生の話のスケジュール感との関係が微妙ではないかと思います。上の二つは、早めに何らかの形で成果を示せば、それが議論にはまってくるものの、そのことによって学習指導要領が変わることが考えられるとするならば、3個目のところをあまり先んじてやっても、学習指導要領がその後変化するとなると、微妙なずれが生じてくる可能性があるということが考えられます。だとすると、この3個目の丸のところに現時点で深入りをし過ぎて壮大なものを作るというよりも、3個目のところは、もう少しダイジェストというか、エッセンスというか、うまく整理したようなコンパクトなものの方が、どうも現時点では有効ではないのかなと考えました。
 そうしたときに、作る際の視点として、どうしてもESDというのは、いろんな教科を横断したり関連付けたりするわけですので、三つぐらい視点がまずはあるかなと思います。一つは、ESDを自覚化することによって質が上がるということのメッセージ、二つ目は、ESDということが入って連動することによって効率化するというメッセージ、三つ目が、ESDで焦点化することによって成果が出るというメッセージが示せれば意味があって、そのところが強調されるようなものとし、あまり全部に網を張ることよりも、力点の掛け方を考えてはどうかと思います。
 ついては、授業レベルとカリキュラムレベルが学校としては必要になるので、カリキュラムレベルと授業レベルで、よりESD的にするにはどういうことが重要なのかという整理がなされるとよいのではないか。例えば、カリキュラムレベルであるならば、資質や能力、内容の関連付けと、もう一方では、体系化をすることが重要であるという視点を置く。あるいは、授業レベルで言うならば、今まで以上にプロセスを重視するとか、より対話を重視するとか、より参画を大事にするとかというような視点を持つ。そのようなことに重きを見出し、実践するように方向付けてはどうか。スケジュールとの関係が大きいと思うので、もし作るなら、そんなアイデアがあるのではないかなと考えました。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 もし羽入先生の方から、それについて何かコメントがありましたら。

【羽入委員】 
 スケジュールのことを考えると、やはり少し早めに何らかの方向性のようなものがあるとよいかなと思っております。

【見上座長】 
 そうですね。分かります。

【羽入委員】 
 多分、秋ぐらいには全体的な方向性はつくっていくと思うので。今、教育課程企画特別部会で議論されている社会と教育現場の関係とか、それから、教師がどのようにして質を高めるかとか、そういうようなことのきっかけになるキーワードのような気もするんです。ですので、もしここの場での議論が何らかの形でまとまっていくと、我々にとってもこの議論が有効なように思いますが、どうでしょうか。

【見上座長】 
 そうですね。せっかく議論していただけるのであれば、これをとにかく実施に移せるような方向に向けられれば一番いいと思います。なるべく早く進められるものは進めたいと思います。ありがとうございました。
 ほかに、どうぞ。じゃ、まずは秋永委員からお願いします。

【秋永委員】 
 ユースについて、2番のところで言及していただいているので、昨年になりますが、ユース・カンファレンスの方で、そちらに私、出させていただきましたので、その結果を踏まえてお話ししたいと思います。
 昨年、2014年2月に、五井平和財団さんの運営の下、日本でのユース・カンファレンスが開かれたんですけれども、そこには約50名の方が集まりまして、学校の先生、自治体の方、企業、そしてNPO、若しくは大学で学生団体を通してESDをやっている方々まで、幅広く多くの方が集まりました。そのとき、すごく価値だと思いましたのは、そういう多様なESDに関わる同世代の人が集まったということと、互いに、例えば、学びのつくり方であったり、ESDを推進するに当たっての悩みや課題の共有ができたということが非常に大きかったと思っています。
 特に学校の先生からは、課題としましては、社会の先生なんですけれども、ほかの分野との連携を図ろうとすると、上司の先生にとがめられてしまうといった、本当に現場での悩みであったり、若しくは、例えば、企業やNPOの方を講師に呼んだ授業をつくっても、学校の先生の任期によって、そういった貴重なネットワークが引き継がれないといった、本当に現場での課題をお聞きすることができました。
 そこから思うのは、そういった場は非常に求められているということで、継続した開催を私たちは非常に求めているんですけれども、一方で、全国規模での開催を継続するのは確かにハードルが高いと思うので、地域での分科会といいますか、地方大会のようなものができたらいいなというふうには思っています。それによって、その会の後に、実際につながった人を教育現場に呼んだり、ESDをつくるところに協力してもらったりといった、その後のアクションに必ずつながると思っています。
 一つアイデアなのは、これを、今回、世界会議につながる選出も兼ねて開いていただいたんですが、地域で地方大会を開いた後に、全国大会に行くようなつながりをつくるというところと、そのときに呼び掛けとして、先ほど多摩市の先生からESDの新しい呼び名を教えていただいたんですけれども、「2050年の大人づくり」という言葉が非常にいいなと思いまして、ESDのカンファレンスをやりますではなく、例えば、2050年の大人をつくる、そのリーダーを募集しますといった何か別の呼び方を付け加えることで、これまでESDだと思わずにその活動をしてきた人も幅広く集められるのではないかなと感じました。
 以上です。

【見上座長】
 ありがとうございました。非常に貴重な意見だと思います。本当に若い方がもっともっとコミットしていただきたいと思います。
 子供たちにとっても、やっぱり年齢が近いということは、非常に親しみやすいですかね。
 どうぞ。

【北村委員】 
 そのユースフォーラムで、僕、今、どういうふうになっているのかあれなんですけれども、例えば、ユネスコクラブが、あれもユースフォーラムを毎年持ち回りで、どこかの県が主催になってユースフォーラムをやったりとかしていると記憶しているんですけれども、同じようなユースフォーラム、いろいろほかにもあると思うんですね。そこで、ESDを愛して、また別のものとして立て続けるのか、あるいは、もう少しいろんなユースフォーラムがあるものを、みんなが更に集まるような場づくりを考えるのか、どちらの方向性もあるんだと思うんですが。今、ユースフォーラム、いろんなユースの集まりですね。どんなものがあるかというのが必ずしも分からないんで、今、こうした方がいいんじゃないかとは言えないんですが、現状を踏まえた上で、方向性も一度見直すことも大事かなという気がするんですね。いろんなところで乱立していたりするんで、ESDもワンオブゼムみたいになってしまうよりは、せっかくESDはいろんな視点をつなげるという概念ですので、そんなことも一つ考えられないかなと思います。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 林原委員、どうぞ。

【林原委員】 
 前回も申し上げたように、私だけ教育問題に素人なので、とんちんかんの御意見を申し上げるかもしれませんがお許しください。
 今いろいろ伺うと、ESDというものを分かりやすく説明しないと、現場の教育の先生は何をしていいのかということが困っちゃうんじゃないかなというように素人目には映ります。恐らく、皆さんも十分認識されているのでいろいろ御意見が出ているのだと思います。要するに、ESDについて、今まで見識がない先生でも、こういうふうにやればいいんだなというような指針となる指導要領が必要のように思います。
 ESDのテーマはピンポイントで来るわけで、それは社会とか理科という個々の学科に振り分けられてきます。理科の先生でも、社会科の先生でも、学科に関わる知識は十分持っておりますが、ESDという見地からどうしたらいいのかということが具体的に分かるようにしないと、ESDの効果が上がりにくいのではないかなというのを前回から感じています。ESDの個々のテーマはかなり細分化されたものになるけれども、やっぱりESDだから、エデュケーションであり、サステイナビリティがなければだめなんですよ、かつデベロップメントがなければだめなんですよ、ということから始まって、ESDで求められていることを共通の基軸にして、個々のテーマについて教育をするというような指導要領みたいなものが必要なのではないかなということを感じます。
 皆様のお話を伺いますと、中学校、高校における教育や指導はものすごく大変だということを強く感じておりまして、是非、先生方が迷わないような指針を作っていただければいいのではないかなと思います。

【見上座長】 
 いえいえ、ありがとうございました。足元をしっかり、もう一度見直すということで、重要な御指摘を頂いたと思います。
 県の中には、ほとんどユネスコスクールが入っていないところも何県かまだありますし、そういう意味でも、やっぱり温度差があります。ここにお集まりの人たちは、知っている人が集まっていろいろ議論しているからなんですけど、まずその辺りももう一度見直しながら進めなければいけないんだろうと思います。

【重委員】 
 国立の教育研究所が作ってくださった枠組みというところ、初めて私たち民間の者たちに頂いたときに、失礼しちゃう、こんなことを決めないでちょうだいよというのが、まず意見としてありました。これは自分たちで持続可能な社会をつくっていくためにはどうあったらいいのかというのを、もっともっと自分で自発的に議論ができる人をつくっていかないと、国が定めて、これでやりなさいというのはESDじゃないよというのが、ESDの私たちのメンバーから意見がたくさん出てきたんですね。
 でも、こういう、何も分からない人たちは、参考資料としてはいいよねと。ESDの10年が始まるときに、ESDって何だろうということで、散々みんなで、地域で、全国で議論のミーティングを、地域ミーティングをしたんですね。それで、持続可能な社会をつくっていくには何が必要で、どんな力が必要で、それがどんな方法でやったらいいのかというのを、ずっと私たちなりにやってきた。それが国内の実施計画の中にも随分反映されていただき、この中にも、もちろん、持続可能な社会をつくっていくということでは、当然、同じような文言になって出てくるんですけれども、自分で考える力を付ける場をつくらないと、幾ら手引きを作ったり、教材を作ったりしても、それは今までの教育と全然変わらないんだろうというふうに。
 私は林原先生以上に教育に関しては疎い素人ですけれども、民間で10年間これをやってきたときに、本当に自ら考えて、これが必要ねと言った人たちが、10年の今も推進、次の2015年どうしようというふうに残っている人たちなんですね。ですから、先生方にも、全員の先生方がこれにいちいち関わって、じゃ、教材をどうするというわけにいかないと思いますけれども、キーになる大学の教員課程の中では、せめてそういう時間をたくさんつくって、学生のうちに持続可能な社会をつくっていく、そこの中で自分が教師としてどういう先生になっていくかというところも、練習をたくさんした人たちで教員になっていただくという、そういうプロセスをつくっていただく。そこで初めて形になるんだと思うんです。
 先ほど実践の手引きのお話がありましたけれども、確かに手引きに関わった人は、すごく勉強になります。私もいろんな事例集を集め作ったり、それから、例えば、こういうものを事例として集めたらどうということで、企画をしたりなんかしてきましたけれども、それに関わった人が、一番ESD的な視点を学習できた、会得した人たちなんですね。ですから、この実践の手引きという、これは仮題ですから、手引きというよりも、参考資料というようなものではないかなというふうにちょっと思います。
 ですから、さっきのコーディネーターの育成というところが、一番キーワードではないかと思います。学校の教材、どうしてもしなければならない教材と、それから、地域の抱えている課題解決のための問題点を見つけていくという、そういうコーディネーターという人は、とても大事な役割です。

【見上座長】 
 後藤委員、どうぞ。

【後藤委員】 
 おっしゃるとおりです。そして、国研プロジェクトでESDに係る枠組みを作ったときに感じたことですが、作成している時は、一から議論を重ね、ボトムアップ的に作成して行ったのですが、いざ枠組みができてしまうと何となくトップダウン的に見えてしまって、あたかもこれを用いてやらなければいけないというように見えないかということを危惧していました。そこで、それぞれの項目の最後に「など」と示させていただきました。この「など」に、ボトムアップ的に、主体的に作っていただきたいという、せめてもの思いを込めました。しかし、何もないとことから全てを創っていくことが理想と言いつつ、参考にするものなどが何もないと、結局、何もできない可能性もあるし、ESDの考え方は多岐にわたるので、一から作ろうとしても難しく、一体ESDって何だろうということで終わってしまう可能性もありますので、参考にしていただく具体的なものとして、一つのモデルを提示しなければならないと考えました。あくまで、これは一つの例であって、取り組まれる皆さん方が新たな能力や態度を見いだして、作っていっていただきたいという思いを持っております。我々もESDを進めていくために見いだすための視点としてどんな概念があるだろうか、また、どんな能力・態度を育成すべきかといった課題に向けて、世界から日本からESDの先行研究、ESDに係る工夫された様々な実践を踏まえながら、まとめていきました。正に今おっしゃられたような過程を私たちも踏ませていただき、ここにある枠組みを作成していきました。

【重委員】 
 ありがとうございます。

【見上座長】 
 ありがとうございます。

【重委員】 
 どうしても、この「など」が抜けちゃうんですね。

【後藤委員】 
 そうですね。おっしゃるとおりです。

【見上座長】 
 私もちょっと脱線になってしまいますが、日本のお茶だとか武道など、まず型を大事にされますよね。型から始め、それを修めてから型を破り、さらに型から離れることに進む、型を基本にいろんなことに発展するというように聞いています。なかなか教育の現場を見ていると、ある程度の、型とは言わないまでも、何か押さえなければいけないことあって、それはある程度やむを得ないのかなという気もしないでもないですね。その次に、そこから離れて、いろんな発展があるのかなという気はいたします。
 この5ページの指標についても、なかなか評価が難しいということで、いろいろ悩んでいたところですが、具体的にこういった項目を作っていただくと、大いに助けになります。これに当てはめてやってみたら、ある部分については、ちょっとこの中身だと言い尽くせないけれど、この点ははっきり言えるとか、少し見えてくるように思います。その辺りをわきまえながら活用する、正に「など」のところを大事にしながら活用するのがいいのかなと思います。
 ほかに、どうぞ。

【林原委員】 
 私が本当に申し上げたかったことは、ESDというのは、今までの教育課程、例えば、いろんな科目の中に新たな横串を入れるようなものと感じます。その横串について、現場の先生に理解してもらえるような、指導要綱、カリキュラム、手引きというものが必要ではないかなということです。横串を入れるというのは、前回はホリゾンタルという言葉を使いましたけれど、そういったガイダンスを作った方がいいんじゃないかと思います。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 田村さん。

【田村委員】 
 今のお話が、大臣から昨年11月に示された大臣諮問の中に出てきている、カリキュラムマネジメントという話のとおりだと思うんですね。ですから、正に次の学習指導要領の議論の中で、個別の教科のみならず、各教科をいかに横断するか。そのときに、このESD的な視点を入れることが、そこに極めて接近しやすいものだということにつながるような、手引きなのか、参考資料なのかは分かりませんが、そういったものが用意されれば、非常に大きな力を発揮する可能性があると考えます。
 先ほど、資料だけ作っても有効ではないのではないかというお話もあり、過去においてそういうこともあったのではないかと私も思うのですが、それをケアするには、作った資料を、どの場面で、誰が、どのように使うのかというところまでをパッケージとして整理をして作るかどうかということが、非常に大きいのではないかと思うのです。ただ作って渡しただけなら、それはなかなか使われないけれども、その作った資料は、それぞれの指導主事が、こういった研修会の場で、こういうワークショップとセットにして使うんだというものまで用意がされていて、その場が提供されれば、かなりの割合で広がっていく可能性があると思うのですね。とすると、そういったことまで視野に入れたようなものとして、先ほどの皆さんのお考えになったものが用意されれば、少し不安な部分が払拭されるのではないかなとは思います。

【見上座長】
 ありがとうございます。
 北村委員。

【北村委員】 
 今のお話も関連すると思うんですけれども、これで一つ抜けているのかなというのが、7ページ、8ページ、どちらに入るのか分からないんですが、教員養成の段階ですね。これは教員のなった後の研修の話は出ているんですけれども、教員養成の段階で、ですから、先ほどの手引きも、教員養成の段階で使うものもあれば、中堅教員のために使うものもあるでしょうし、そういったものを考えると、7ページの方に入れるのがいいのか、あるいは、8ページの大学のところで言及すべきなのか、どちらで言及すべきかは分からないんですが、教員養成の段階からというところが徹底される必要があるかなという気がします。
 もう一つ、大学ということでは、サステイナビリティ・サイエンスの成果ということで、僕も東大のIR3Sの方も兼担したりしていまして、このサステイナビリティ・サイエンスの方の研究にも関わっているんですけれども。恐らく、このサステイナビリティ・サイエンスに関わっている人たちというのは、非常にコアになる少数の人と、いろんな学部に所属している人が――僕も正にそうなんですが――兼担してサステイナビリティ・サイエンスに関わっているんですね。ですから、この大学でのサステイナビリティ・サイエンスそのものというのが、非常につながり広がるという、ESDでやっているようなことを本当は目指しているんですけれども、十分にそこの成果が、自戒も含めてですが、サステイナビリティ・サイエンスとしての成果というのがあまり大学から発信されてないんじゃないのかなという気がしますので、ここのてこ入れは多分これからしていかないと、サステイナビリティ・サイエンスそのものがちょっと縮小していって、今後、フューチャー・アースとのつながりとか、大きな国際的な話もあるんですけれども、必ずしもその方向で発展していくようにも思えないように思いますので、ここは、例えば、国連大学との連携も含めたりとかしながら、サステイナビリティ・サイエンスがやっぱりきちんと強くなっていくというのは、ESDを積み上げていって、じゃ、大学の段階でどういう成果があるのか。一つは、大学の今の既存の教育の中にESDの視点を取り込むというのが、多分、この一点目ですけれども、そのESDの視点を踏まえて、更なる研究、社会貢献での成果を上げていくということも、実は大事なことだと思いますので、これは今までの学校教育の話とはちょっと違う話ですけれども、やっぱりここでもう少しサステイナビリティ・サイエンスを、もし本当に皆さんがこれは大事な学問領域だという合意があるならば、その発展もきちんと担保していくというか、国連大学、ユネスコ等との連携、あるいは、国際的な学術ネットワークとの連携とか、少しここで言っておくと、現場で関わっている僕らも、もう少しやる気になるかなと思います。

【阿部委員】 
 一言発言させていただいても。

【見上座長】 
 はい。

【阿部委員】 
 私も、この8ページの大学のところで、北村先生がおっしゃったとおり、教員養成が、グローバル・アクション・プログラムの中でも述べられていながら、この中で十分に触れられていないという気がしたので、もう少し書く必要があるということです。それと、大学教育の中で、持続可能社会とかESDの取扱いは極めて曖昧なところがあり、ここの最初の書き方が、専門分野に横串を刺したような形でESDのアプローチとなっているのですが、これでは多分だめではないかなと思います。というのは、大学は、かなり専門化された、細分化された分野の中でやっていますから、そこに横串を刺すのは、並大抵の努力ではない。むしろ、持続可能社会とかサステイナビリティ・サイエンスを大学教育の基盤に持ってくるような、つまり、大学の専門に入る前の教養、大学人としての教養、そういった考え方で持っていった方が良い。持続可能社会の考え方、あるいは、ESDの必要性を理解した上で専門に入っていく、そういう手順が必要なのではないかと思いました。そういう意味で、少しこの記述はどうなのかなと思いましたね。

【見上座長】 
 どうぞ。

【羽入委員】 
 先ほど私が申し上げたことが、私自身、誤解していたのではないかと思います。事務局でまとめていただいたのは、大きく二つに分かれていて、学校教育におけるものと、それから、地域、あるいは社会、大学というのがあって、指導要領に関することは、1に関してだけであって、2については、例えば、研究とかも含めて、研究や社会活動とかだと思います。ESDそのものは大きな概念なので、指導要領に反映できる部分はほんの一部分ではないかということを、皆様のお話を伺って思い返しました。そのことだけ申し上げておかなければと思いまして。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 この2については、事務局から、お伝えするべきことはございますか。

【籾井国際戦略企画官】 
 2については、分量の差からも分かるとおり、まだ十分に整理ができていないところで、今日の御意見も踏まえて整理し直したいとは思うんですけれども。地域のことを考えるにしても、やっぱり学校とのつながりというのが重要であるというのが、今日、一つ御議論の中で出てきたポイントなのかなと思いますので、そういう意味では、別枠ではありつつも、1とも少し連動してくる部分もあるのかなというふうに、きょうの御議論を伺って感じました。そういう視点から、もう一度整理をさせていただきたいと思います。
 大学についても、今の阿部先生の御指摘も踏まえ、ちょっと修正したいと思うんですけれども、大学については、今までユネスコスクールを中心に推進してきて、主に学校でのESDというのを中心に、ここの場だけではなく、過去の議論もされてきていたので、正直、あんまり今まで具体の議論をしてきていなかったところですので、もう少し次回以降も御意見を頂ければなと思っております。

【見上座長】 
 それでは、いろいろ、まだ言い足りないかと思いますが、時間が参りました。御意見ありがとうございました。
 事務局において、今日の御議論いただいた内容を踏まえまして、また、今お話がありましたように、課題や方向性について改めて整理していただいて、次回の分科会で引き続き御議論いただきたいと思います。今御指摘いただいたように、教員養成の問題とか、大学の関わりとしては、国連大学、HESDもありますし、ProSFER.Netもあります。そういった大学との関わり、グローバル化の問題ですとか、それから、グローバル・アクション・プログラムそのものについても、まだ特に議論しておりませんので、そういった様々な点も含めて、次回以降よろしくお願いしたいと思います。
 今日、後で気が付かれたような点につきましては、5月8日金曜日までに事務局まで御連絡いただければと思います。
 それでは、議題2、その他といたしまして、何かありますでしょうか。よろしくお願いします。

【野田国際統括官補佐】 
 事務局からの御案内でございます。
 参考資料9となりますけれども、現在、ユネスコ/日本ESD賞、ユネスコが国際公募している国際的な賞なんですけれども、私ども日本政府の支援によりまして立ち上がった賞でございますが、これが現在国際公募されております。それを踏まえまして、文部科学省におきましても、国内の推薦案件3件を推薦するために、国内公募も始めました。関係する皆様方、是非積極的に御周知いただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 以上です。

【見上座長】 
 ユネスコ/日本ESD賞、どうぞよろしくお願いいたします。
 次回ですが、5月18日月曜日10時から12時まで開催したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日はありがとうございました。

── 了 ──

 

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国際統括官付