資料31-6 第26回IHPトレーニングコースの報告

2017年3月14日
名古屋大学宇宙地球環境研究所 副所長・教授 石坂 丞二


 第26回IHPトレーニングコース「Coastal Vulnerability and Freshwater Discharge(沿岸の虚弱性と淡水供給)」を開催した。本トレーニングコースは、ユネスコ国際水文学計画(IHP)への協力として、主にアジア・太平洋地域の若手研究者・技術者を対象として、最近は名古屋大学宇宙地球環境研究所(旧・地球水循環研究センター)と京都大学防災研究所とで交互に毎年開催している。今年度は、名古屋大学において、11月27日(日曜日)から12月10日(土曜日)の間、沿岸海洋学をテーマとして開催した。今回は、UNESCO日本政府信託基金による事業資金に加え、宇宙地球環境研究所の所長リーダシップ経費、北太平洋海洋科学機構(PICES)、日本海洋学会青い海助成、京都大学防災研究所、UNEP特殊モニタリング・沿岸環境評価地域活動センター(CEARAC)からの支援を受けた。
 参加者に関しては、今回ユネスコジャカルタ事務所から援助がなく、宇宙地球環境研究所で主に東南アジアの5名(インドネシア、ベトナム、シンガポール、タイ、ロシア)、北太平洋海洋科学機構と宇宙地球環境研究所で北太平洋周辺国から5名(韓国、カナダ、中国、ロシア、日本)を招聘したほか、京都大学防災研究所5名(インドネシア2名、中国、アメリカ、ブルガリア)、名古屋大学環境学研究科7名(中国3名、日本2名、モザンビーク、タイ)の計22名の研修生が参加した。基調講演として国際エメックスセンターの柳哲雄九州大学名誉教授、台湾中山大学のArthur C.T. Chen教授の2名を招聘した。また、講師としては、宇宙地球環境研究所から3名の他、総合地球環境学研究所2名、北海道大学大学院水産科学研究院、京都大学防災研究所、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科、名古屋大学大学院環境学研究科、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部の研究者を招聘し、CEARACからも実習の講師として参加してもらった。
 基調講演である「里海の概念」と「温暖化によるチベット氷河の融解がアジア沿岸域に与える影響」の他、河川、海底湧水、沿岸水の循環、栄養塩動態、プランクトン生態系、さらに水産への影響、津波と防災、干潟の保全など、基礎から応用を含んだ多岐にわたった講義で、「沿岸の虚弱性と淡水供給」に関して学ぶ機会を設けた。また、2日間にわたり三重大学練習船勢水丸による伊勢湾・三河湾の観測を体験し、さらに伊勢神宮で日本の自然と人間の関係に関する歴史・文化に触れた。また、衛星・海洋観測・モデルのデータを利用する実習を行うことで、実際に科学的なデータを解析する機会を設けた。さらに、4班に分かれて、衛星・海洋観測・モデルのデータやブレインストーミングの手法を利用しながら、自分たちの考えをまとめ最終的にプレゼンテーションを行うことによって、学んだことを実質的に利用していく機会を設けることで、充実したトレーニングとすることにできた。学生からの感想も、満足したといった内容のものが多かった。

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