第42回日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会人間と生物圏(MAB)計画分科会 議事録

1.日時

平成31年2月6日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省12階 国際課応接室

3.出席者

(委員)
 礒田博子(主査)、大野希一(国内委員)、岩熊敏夫、田中信行、松田裕之、宮内泰介、吉田謙太郎【敬称略】


(関係省庁)
 水産庁、環境省、林野庁、国土交通省


(文部科学省(日本ユネスコ国内委員会事務局))
 大山国際統括官、小林国際戦略企画官、秦国際統括官補佐、その他関係官

4. オブザーバー

(ユネスコエコパーク(BR)関係者)
綾BR、白山BR、みなかみBR、祖母・傾・大崩BR、大台ケ原・大峯山・大杉谷BR

5. 議事録

【礒田主査】  本日は御多忙のところ御出席いただきありがとうございます。定刻になりましたので、事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】  本日は、御出席の委員が7名で、委員の過半数ですので、定足数を満たしております。
 また、本日は国内のユネスコエコパーク活動に関する御発表をいただくため、日本自然保護協会エコシステムマネジメント室の朱宮丈晴様、それから、信州大学教育学部附属志賀自然教育研究施設・助教の水谷瑞希様にも御参加いただいております。
 また、事務局に人事異動がございまして、御紹介させていただきます。
 昨年10月に文部科学省国際統括官、また、日本ユネスコ国内委員会事務総長として大山真未が着任しています。
【大山国際統括官】  ただいま御紹介いただきました大山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日もユネスコエコパークの関係で、今後の進め方、在り方等について御議論いただくと承知しております。どうぞ忌憚のない御意見を頂戴できればと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまから第42回MAB計画分科会を開催します。
 本分科会は、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続第1項に基づき公開することとします。 また、本会議の御発言は議事録としてそのままホームページ等で公開されますので、御承知おきください。
 また、本日は関係省庁の担当者並びに幾つかのユネスコエコパークの関係者が傍聴登録されて御出席されていますので、申し添えます。
 本日は大きく2つの議題がありますが、一つ目は前回分科会後の関連活動の報告、2つ目は今後の日本のユネスコエコパークの推進に向けての意見交換です。
 議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いします。
【秦国際統括官補佐】  お手元にお配りしている資料を簡単に確認させていただきます。
 まず、座席表、委員名簿等もありますけれども、議事次第に配付資料の一覧がございます。資料1から資料3まで、枝番もありますけれども、8種類の配付資料をお配りしてます。それから、基礎的な資料、参考資料として、参考1、参考2で、設置要綱とこの会議の公開手続、それから、参考として、当日配付資料と書いたものが後ろに4つ、それから、何も書いていないユーラシア地域をまたぐユネスコエコパーク大学教育プログラムの共同開発といった資料をお配りしております。
一つ資料1ですけれども、前回の議事要録(案)をお配りしております。お手数ですが御確認いただきまして、何か修正等の御意見がありましたら2月13日まで事務局の方にお知らせいただきたいと思います。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 今ありましたように、議事要録については御確認の上、御意見ある場合は事務局まで御連絡いただけますようお願いいたします。
 それでは、議題1、日本ユネスコ国内委員会MAB計画分科会関係活動報告に入ります。
 前回分科会以降の主なMAB計画関連の動きについて、事務局から報告お願いします。
【秦国際統括官補佐】  それでは、お手数ですが、まず資料2-1を御覧いただきたいと思います。
 前回の分科会においては、7月開催の第30回MAB国際調整理事会について御意見いただいたところですけれども、簡単にその御報告を申し上げます。
 MAB国際調整理事会は、ユネスコのMABの制度そのもの、新規登録から拡張登録、質の向上といったようなことがらにつきまして、最終的に議論する最終決定機関という形になっております。
 日本はここのところ理事国になっていますので、参加しているという形になっておりまして、磯田主査と私の方で出席してまいりました。
 次のページ、3ページ目から簡単な報告をつけております。細かい御報告は省かせていただきますけれども、簡単にハイライトの部分だけ御説明申し上げます。
 冒頭議長選等ありまして、インドネシアの議長が新しく着任されました。
 次のページ、4ページ目ですけれども、2番でMAB事務局の方から、この1年間どういった活動がありましたという全般的な話が行われています。
 5ページにMAB事務局が整理した今後の課題ということで、4点話がありました。やはり今実際にやっているMAB戦略とリマ行動計画の適切な実行というのが挙がってきています。
 議題の4番のリマ行動計画の実施というところで、前回の分科会でもちょっと話題にさせていただきました、各国でどう取組んでいるか、各BRでどのような取組をしているか、BRを支える関係者がどういうふうに見ているかというような、オンラインアンケートを実施したその結果報告の説明がありました。
 6ページ目のところで、この分科会でも話があったと思うんですが、やはりその成功ストーリーや得られた教訓の共有については重要だねという話が各国からも出ておりまして、ただ、このアンケートでは設問7のところにありますけれども、76件のそういった提出があったという報告のみで、具体の内容につきましては公開されていないので、今後そういった教訓だとか、成功例とか、そういうものをきちんと共有できる場を作ってほしいという要望がMAB事務局に対してされておりました。
 5番目にあります。MABユースフォーラムの簡単な報告がありました。これにつきましては、参考資料の配付資料の一番後ろの方に、ユース宣言の、まだ作業版ですけれども、仮訳をつけておりますので、こちらも併せてまた御参考にしていただきたいと思います。
 新規登録が行われたほか、このエコパーク登録制度そのものの質の向上ということで、引き続き議論がされています。
 今回はこれまで出口戦略といった形で話が行われてきましたが、これを名前を卓越性プロセスというふうに1年前の理事会で変わっていますけれども、この卓越性プロセスというのは2020年までとなっております。その後にも引き続きどのようにBRの活動、取組等を向上させていくかということについて、もう少し中長期的な話で、BRをサポート、バックアップしていくような何か補足的なガイドラインをつくるべきだという意見がありまして、ここの場でアドホックワーキングを立ち上げるという形になりました。
 あと、9番目、MABコミュニケーション戦略と行動計画という議題ですけれども、ユネスコエコパークというものが世界に対してどういうものかというのを簡単にわかるような仕組みが必要だねということで、コミュニケーション戦略ツールが開発されています。それが後ろの方に、9ページ以降についている英文の資料になりますけれども、こういったものが採択されましたという御報告です。
 調整理事会の状況はそのような形でございました。
 一番最初の1ページにちょっと戻っていただきまして、あとは夏に毎回やっている子供霞が関見学デーにJBRNのブースを出展していただいたという活動がありましたという御報告、秋にかけてESDの方の全国系の大会、あと、エコプロ、こういった大きな催しに対しまして、エコパークをテーマにしたセッションや、JBRNからもブース出展するというような活動を行っております。
 また、12月ですけれども、先ほど申し上げました新しくMAB国際調整理事会の議長になられましたインドネシアの議長が来日する機会がありまして、国内委員会事務局を訪ねられて、少し意見交換をしたところです。
 また、EABRNの方でトレーニングコースをこれまで少しやってきていますが、やり方を少し変えたいという提案がユネスコの北京事務所からございました。他国のBRと相互交流をする形式のトレーニングの検討を今現在しておりまして、メンバーである全てのBRに、どういった強みをあなたたちは持っていますか、もしくは、他のBRにどういうことを教えたいですか、逆に、教えてほしいことは何ですかというような、そんなようなアンケートが実施されたところです。
 最後に、ユネスコエコパークフェアですけれども、こちらはイオン環境財団さんとJBRNの方が提携を結んでいますけれども、その一つの活動として、イオンモールで全国何カ所かでエコパークフェアを始めているという報告を財団の方から頂いています。
 資料2-1の33ページのところには、このJBRNさんの方で御発表をいただいている学校教育の取組事例のポスターの1枚ものをお配りしています。最後のページにはインドネシアの国際調整理事会の議長さんが京都大学のユネスコチェアで講演したチラシをお配りさせていただいています。
 また、資料2-2でございますけれども、年度末にかけて、来年度にエコパークが活用できるような関係省庁の事業予算等につきまして取りまとめましたので、御参考までに御覧いただきたいと思います。
 以上でございます。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 御質問、あるいは、追加の御報告がありましたらお願いいたします。
 それでは、議題2、日本のユネスコエコパークの活動についてに入ります。
 MAB計画分科会では、平成29年度からリマ行動計画の実施状況調査など、国内のユネスコエコパークの状況を把握する試みを続けているところです。そして、前回の分科会において、調査状況について簡単な報告をしているところです。今後MAB計画分科会において、これらの情報を更に整理し、日本のユネスコエコパークの活動の実態を把握するとともに、国内のユネスコエコパークの活動の方向性など、今後の展望についてまとめたいと考えています。
 本日はこの議論の端緒とするため、国内のユネスコエコパーク活動に関わる3人の先生方に発表いただき、その後意見交換を行いたいと考えています。
 発表に入る前に、まずは導入として、事務局より背景説明をお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】  お手元の資料3-1をまず御覧いただけますでしょうか。
 主査から御説明のありましたとおり、今後のユネスコエコパークの推進に向けた意見交換ということで、1枚ものの資料をお配りしています。日本のユネスコエコパークは9つになったところでございまして、既存の今登録されているBRをどういうふうにバックアップしていった方がいいか、あるいは、今後申請が出てくるときにどういった点に気をつけて見ていったらいいとか、また、定期報告について分科会でも見た上でユネスコに提出するというステップが今後見込まれることから、この機会に日本のBRの特徴だとか、強みだとかいうものに関しまして、この分科会で確認し、今後どういう点に注力を置いていって、推進していったらいいのかなどにつきまして、御意見をいただいて、それをまとめていきたいというのがこの案になっております。
 今回は2月の分科会でございますけれども、本日3名の方から少しインプットをしていただきまして、自由な討議をいただきたいと思います。
 次回は、去年実施しましたBRの活動状況に関する調査がありますけれども、中間報告を前回の分科会でさせていただきました。実際リマ行動計画に応じるような取組をどれぐらいできているかというような調査でございますが、今現在東京大学の田中先生に書面調査だけではなくて、それに係る背景だとか、あるいは、もう少しどんなことに困っているだとかといった点につきましてBRにヒアリング調査をしていただいています。その結果報告を次回の分科会で御発表いただいて、それをもとにまた意見交換していただければというふうに考えております。
 また、最後に、次年度にかかりますけれども、次のその次の分科会でもう少し自由な議論をした上である程度の方向性がまとまればというふうに考えている次第です。
 今日お三方の諸先生方からの御発表いただく前に、おさらい程度なんですが、エコパークの制度がどういうふうにできていて、現在の日本の体制は簡単にどうなっているかというところの導入の説明をさせていただきます。
 もう皆さんよく御存じだと思うんですけれども、71年にこのMABの計画というのがユネスコで採択されて始まったと。同じ時期ぐらいにラムサール条約というのもできています。72年には、ユネスコの関係でいくと、世界遺産条約というのも始まった年になると。76年にこのMAB計画の一環として、この生物圏保存地域、ユネスコエコパークの世界ネットワークが発足して、いわゆるこれが登録制度になっています。
 日本では、この分科会で2010年にユネスコエコパークと通称で呼びましょうということにしておりまして、制度的には10年に1回ユネスコへ定期報告を出さなければならないというような状況になっています。
 御案内のとおり、Biosphere Reservesと英語で言うところのBRはその3つの機能を備えていなきゃいけない。3つのゾーニングがされていなきゃいけないというような、そういった状況になっています。
 今日はこの保存機能、経済と社会の発展、学術的研究支援、それぞれの機能でどういうことをやっているのかという視点も含めて、御発表していただくようお願いしております。
 その後ですけれども、この世界のネットワークの大会としては、これまで4回開催されてきています。それを契機にというか、その同じ時期にそれぞれMABの国際調整理事会で約10年スパンぐらいで戦略と行動計画というものを出してきています。現在2016年に出されたリマ行動計画に基づいて頑張りましょうというような形になっております。
 制度は基本的に、もともとは環境の保全とか自然の保全というようなところに重点が置かれていたんですが、持続可能な発展ということで、人との共生ということがもともとの趣旨ではあるんですけれども、SDGsだとか、いろいろ今世の中の動きの中で、持続可能な発展というところが更にもっともっと強調されるようになってきているというように思われます。
 特にこの数年でユネスコの状況を見ていますと、ユネスコのSDGsに対する貢献が重要であると言われておりまして、まさにユネスコの自然科学局の中では、このエコパークの制度自体がSDGsのモデルサイトとして発信できるのだから、国連、世の中に対してもっとこれをきちんとアピールしたいというようなことがうたわれています。
 また、SDGsだからという背景もありますけれども、エコパークにおいては、多様なステークホルダーが参画して、いろいろなところと連携してやって、その目標に対して対応していくということが不可欠ということが今言われています。
 これは参考ですけれども、ユネスコの関連の制度の比較で、登録数を見ていただければわかると思うんですけれども、やはりエコパークが、歴史が長いということもあって、一番多くの数が登録されています。自然遺産の方は、条約なので若干性格が違いますけれども、エコパークとジオパークについてはユネスコの公式プログラムという形でやっています。
 これは御案内のとおり、今9カ所あるということで、国内的には一定の法律等によって環境保全が措置されているという、取組が措置されているということがこの制度には求められるので、大きく言って、日本の場合は、国立国定公園、国有林というようなところのゾーニングが今されているというところです。
 体制なんですけれども、今この緑の左下の方にありますところがこの分科会になります。ここでユネスコに対してどういったものを出していくかというところの選定審査を行っているわけですけれども、ユネスコ側から見たときに、ユネスコのMAB事業で、各国にはMABナショナル・コミッティーというものがあることが望ましいということになっていますので、日本の場合はこの分科会がナショナル・コミッティーであるとの位置付けになっています。
 このほか、国内法とゾーニングとの関係などの検討もありますので、関係省庁の方との連携、それから、ユネスコエコパーク地域に対しては民間セクター、学術界というのが、個別に適した形で支援しているという形になっています。
 日本の中では9つのBRがありますけれども、この連絡機能というか、ネットワーク機能をJBRNという形で組織されています。これは自発的に各ユネスコエコパークがJBRNとして活動されているということです。
 最後に、この一番左のところに日本MAB計画委員会がありますが、これは学術的サポートという位置付けになろうかと思いますけれども、詳しくは後で松田先生の方から御発表があると思いますが、長年日本ではこういった学術的なグループでユネスコエコパークを支えてきたという長い歴史があります。
 最後にお配りはしていないんですけれども、幾つか、今年BRから出してもらった事例で、こんなものがありましたという、ハイライト的に御紹介します。例えば、自治体のレベルで野生動植物を保護するような条例とかを定めつつユネスコエコパークを考えていくという取組、エコパークに関する住民意識調査など実施されているBRがあります。
 それから、綾など自然生態系農業を推進してますが、ブランド化された産品をふるさと納税でやっているだとか、そういった取組も出てきています。
 あとは、この伝承産品等の認定という形で、今ユネスコエコパークに関してはユネスコでもかなり前からエコラベルの導入について議論がされているところですけれども、各BRでこういった認定事業を開始されているというような取組があります。
 ガイドボランティアの養成、大学での授業科目にエコパークを入れたり、今日も後で発表がありますけれども、ユネスコスクールの小・中・高のレベルでユネスコエコパークの理念を広めていこうというような連携した活動がされているところもあります。
 以上でございます。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 それでは、各先生からの発表をお願いいたします。
 まず、松田委員より、日本のBRの全体的特徴とこれを支える仕組みに触れつつ、日本のMAB計画の課題と展望について御発表お願いいたします。
【松田委員】  15分でしたか。
【礒田主査】  はい、15分です。
【松田委員】  でやりたいと思います。
 今お話ありましたように、この国内委員会MAB分科会のほかに、日本には計画委員会という組織ができてしまっておりまして、これ、今日のほかの朱宮さんと水谷さんもその委員をお願いしております。
 先ほどのお話にありますように、やはりユネスコエコパークと比較されるものとして、世界遺産、自然遺産とジオパークがございます。この世界遺産に関して、この吉田正人さんなんですけれども、筑波の吉田正人さん、実はIUCNの方で世界自然遺産を判定、審査するのですが、過去にその十数人の委員の1人を務めていた方なんですが、彼が『世界遺産を問い直す』という本を最近出しまして、世界遺産が危機に瀕していると。何で危機に瀕しているかというと、もともと世界自然遺産そのものも人と自然の相互関係というのはちゃんと入っていたと。それが今は文化的景観という文化遺産の方の基準に行ってしまって、どうも自然遺産として人と自然の相互関係ちょっと議論できなくなっている、これは危機なんであるという形で彼はこの本で書いています。これには非常に私は勇気づけられました。むしろMAB計画のやり方を彼らは世界遺産の方でも本当は求めているんではないかというふうに思ったわけです。これはジオパークも同じだと、既にやられている。
 そのMAB計画なんですが、日本においてはちょっと活動が事実上休止していたと。ここに書いてあるように、2005年ぐらいからは国内委員会が開催されないで、委員が任期切れというような状態もありました。これ英語と混ぜてあるのは、実は去年来たマーティン・プライスさんの前でもこれをしゃべったという経緯がございますが、かつては国際調整理事会の理事国を今当然務めていらっしゃいまして、その後ずっとやられていたんですが、先ほど言った10年に一度の生物圏保存地域の定期報告、ここにあるような、研究者が科研費などをとってカタログとして4自治体の調査をやって、4サイトの調査をやって報告すると。これが事実上の定期報告だというような事態になっている。10年に一遍にぴったりはなっておりません。というようなことがありました。
 この数字がちょこちょこと書いてあるのは、これは『Japan info MAB』という、彼らが、研究者が出していたミニコミ誌があります。これがこれのナンバーですけれども、これにそのようなことが書かれているという状態にあります。
 先ほど世界遺産、ジオパークとの比較というのがありましたけれども、基準を見ても、やはり人間が明示的に入っているという意味では生物圏保存地域と世界自然遺産は、自然遺産のクライテリアとしては違ってきていると。今日は図をお見せしていませんけれども、端的にあるのは、実は世界遺産はどんなところがありますかと、写真をばーっと並べた地図が、世界遺産、MAB、ジオパークもあります。ですが、そこに人間がかなりの頻度で出てくるのは、Biosphere Reserveです。それから、自然遺産の方は、風景とか、建物とかばかりで、ほとんど人間は出てきていないというふうな比較ができると思います。
 エコパークの特徴としては、このゾーニング、コアがあって、その周りをバッファで囲んで、更に移行地域と持続可能な利用を図る地域があると、このゾーニングにあるわけですが、世界で唯一だと思いますが、今でも、世界自然遺産、ユネスコグローバルジオパークとエコパークの三重登録地域がこの「済州島」ですけれども、これを見ると、いわゆる世界遺産の登録地とBRの核心地域がほぼ一致していると。そのほかにちょっと火山のところが世界遺産では伸びておりますが、こういう典型的な同心円状というのがあります。
 ただ、本当にこれがいいのかなと最近僕は思い出しまして、例えば、「屋久島」の二重登録、世界遺産とエコパークの二重ですね、これを見ると、国立公園制度との関係もありまして、ほとんど世界遺産地域とエコパークのコア(核心地域)が「屋久島」においては一致しているということになります。それと、国立公園の特別保護地区と第一種特別地域などが一緒になる。それから、原生自然とか、そういうのが国内制度が相まってやっているというところは変わりません。
 それから、ここにありますように、森林生態系保護地域も、ここに載せておりますが、大体重なっているというところになっています。
 「只見」を見ますと、先ほどの同心円と大分違うんですね。これ見ますと、赤いところはコア(核心地域)なんですが、この白いところですね。白いところが、これが移行地域です。移行地域も何か緩衝地域に囲まれているように見える。
 でも、これ日本の山にある場所を見たら、それは当たり前じゃないかなという気がするわけですね。つまり、もともと国立自然公園制度というのは、どんどん開発が進む中で、米国のイエローストーンみたいな、限られたところを残そうみたいな発想でやっていたので、何か島のように原生自然を残そうという発想があったのかもしれませんが、普通にやれば、自然に多く囲まれたところで少し人間が住むというのはそんなに不思議なことでは、少なくとも中山間地ではないだろうと思います。
 もっと典型的なのは「みなかみ」ですね。「みなかみ」に行きますと、コア(核心地域)がこの緑色で、黄色の部分、これももうすっぽり水色に囲まれているように見えるわけです。私はこれでいいんではないかなというふうに最近は思い出しました。
 今日本のMAB計画の課題という話をしましたけれども、実はこの課題を議論する中で、私はJICA(国際協力機構)という存在が結構重要である。つまり、彼らが日本の我々のエコパークだけでなく、ジオパークもですが、そういう活動を学んで、それと交流して、それをもとに世界中で、例えば、このクロッカーレンジ(マレーシアのユネスコエコパーク)であったら、エコパークの設計を事実上JICAがサポートしてやっているというのがわかります。
 このいわゆるボルネオ島の、マレーシア側ですが、あの絵でいくと緑色の上の方はこれピナバル山という世界遺産地域ですね。そのちょっと離れてこのクロッカーレンジがあるわけですが、ここ先住民がじわーっと住んでいたんですね。コア(核心地域)のところにも先住民が住んでいいのかみたいな話になって、さすがに先住民のところはコア(核心地域)に囲まれた中にありますが、バッファ(緩衝地域)にしています。ここコミュニティユースゾーンという概念をつくって、これを先住民がそこにいながらにしてゾーニングをちゃんとすると、それを世界に認めてもらっていると、こういうかなり重要なことをやっています。これ多分日本のある研究者がこの意見を出したんじゃないかと僕は思います。
 日本は大きな貢献が過去にあったということは、例えば、前のユネスコMAB事務局のヘッドのハン・チュンリさんとかも言っていただいておりまして、その中心はエコトーン※1とかやって、東南アジアのネットワークであるというところでありました。
 復活した契機は、長くなるんであまり話ししませんが、やはりマドリード行動計画によってちゃんと移行地域を作らなきゃいけないよと言われたのが大きかったというのがありますし、生物多様性の締約国会議が2010年にあって、これを契機に、MAB計画のことを日本のCOP10の中でもやるというようなときにやっていただいたというのが結構大きかった。それと同時に、「綾」が自主的に登録しようというようなことを目指していただいた。これはすごく大きかったと思います。それに呼応して、我々研究者も生態学会でシンポジウムをやるとか、そういうことを続けてきてございました。
 そのときに、やはり日本語で議論する場が必要だということで、まずメーリングリストとして、登録地だけじゃなくて、関係地域も合わせて声をかけましたけれども、まずメールで交換する機会を設けたいと。そうすると、やはり直に会って話ししたいということになって、それで、実は2013年に只見、このとき実はまだBR推薦地、登録されていないんですけれども、「只見」が率先してこのネットワーク会議をちゃんと顔が見える形でやっていただいたというのが発端で、回り持ちでこういうネットワーク会議が持たれるようになりました。
 実はこのJBRNのウエブサイトというのがあります。これ御覧になったことある方いますか。あれ、JBRNの方は御覧になっていますよね。これ、例えば、去年「綾」でやるのを急遽台風で中止したとか、そういう新着情報を書いてあります。ただ、活動内容とかこの辺の枠はほとんどまだ使われておりません。これちょっと計画委員会のサイトとペアでつくって、計画委員会のサイトと同じ枠をばーっと我々がつくってしまったのがちょっといけなかったのかなというふうに思うこともありますが、多分こういうところ、少しずつネットワークとしての活動が進んでいくだろうと思います。シンポジウムを組んだり、いろいろこういうふうに「只見」はだんだんだんだん人数が多くなって集まっていると。
 ネットワークは、さっきはメールリストで入会金も何もなしで、計画委員会が認めた人だけメールに入れるというような話だったのが、自治体単位といいますか、登録地単位で10万円という会費制にすると。この辺はジオパークネットワークなども参考にさせていただきながらいろいろやっていると。正会員だけじゃなくて、準会員という名前は誤解を招くので、研究会員という名前でほかのまだ登録されていないところにも加わっていただくというような形でやって、それで、その組織改編のときにEABRN(東アジアBRネットワーク)と合同のセッションを持つことができた。これも非常に大きかったと思いますし、逆にこれをやったからEABRN、あるいは、ユネスコ本部の方でかなり日本ではすごいことが行われているらしいと思っていただいているという側面もあるんじゃないかと思います。
 最後に、このイオン環境財団との連携はものすごく大きい、これなるべく大事にしたいというふうに思っているところですが、これどういうふうに、今そういうエコパーク関係のフェアをイオンでやっているという話がありましたけれども、あと、植樹とか、いろいろな活動、各地で御支援いただいているんですけれども、これをもっと大きく生かしていきたいというところがこれからのものではないかと。
 後で出てくると思いますが、ここを見ますと、日本の9つのBRは複数自治体型と単独自治体型がある。単独自治体、単独というのは主に単独という意味ですが、この場合、多様なその自治体の中の関係者を含む関連自治体が協議会をつくっている。この場合、もう元からある程度やっていたところがBRに途中で登録されるという意味で通過点。ところが、複数自治体型の場合は、全部が一堂に会するのがなかなか行われていなかったことがある。そういう意味では、出発点という言い方ができるのではないかと。この場合は、やはり自治体の担当者だけが集まってくるという側面がやはり免れない。こういうふうにロゴがつくられていた。実はロゴがないのは「屋久島」だけですね。実は「屋久島」は世界遺産のロゴもないですね。というところがありますが、こういうロゴなどを使って、これからいろいろな活動が行われるんじゃないかと。
 最後に、世界のネットワークに、例えば、「屋久島」だと島嶼BRネットワークというのが世界にありまして、もう最初から呼ばれています。でも、最初は私が行ったようなところがあって、何とかして自治体の方がそういうところに参加できるというような仕組みをこれからつくっていきたい。2回目は、一番左の人、屋久島市民活動家が参加するというようなことがありました。
 以上です。どうもありがとうございました。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 今の御発表に関して、御質問があればお願いいたします。
【宮内委員】  1点だけね、核心地域をどう設けるのかみたいの、私もずっと疑問というか、持っているんですけれども、これこのものが出ていたときにいろいろばーっと勉強したときの感じだと、MABの考え方そのものも90年代に結構変わってきて、だけれども、核心地域、緩衝地域、移行地域というのは変わらなかったという。そこはどうなの、これ事務局に聞いたらいいのか、そこはまだずっと堅持しているという感じなのか、それとも、そこも結構緩くなっているという話なのか。
【松田委員】  この移行地域が真ん中にぼんとあっていいという発想はほとんどまだ外国にはないと思います。ただ、トランジションエリア(移行地域)という言い方そのものはおかしいんじゃないかという話は幾つかしていますけれども、これもやはり伝統があって、なかなか変えられない。一時期、Biosphere ReservesのReserveというのがやはり保護的なので、Biosphere Regionに変えようという決議、動議が出されたことがあるんですが、これ歴史が長いので、やはり合意は得られなかったというような段階です。
【宮内委員】  でも、議論は続いているという。
【松田委員】  移行地域に関してはつながると思います。
【宮内委員】  わかりました。
【礒田主査】  そのほかございますか。
 松田委員、ありがとうございました。
【松田委員】  どうもありがとうございました。
【礒田主査】  続いて、日本自然保護協会エコシステムマネジメント室、室長の朱宮丈晴さんから、保全機能と社会発展に関する日本のBRの特徴等について触れつつ、今後の展望について御発表お願いします。
【朱宮氏】  ありがとうございます。ただいま御紹介に預かりました日本自然保護協会の朱宮といいます。本日はこのような機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。
 今日の発表ですけれども、保全機能と社会発展ということで、秦さんの方から一応お題をいただきましたけれども、副題にちょっと安定的で持続可能な体制づくりに向けてということで、この前の松田先生のお話や、秦さんの方の御紹介にもありましたけれども、かなりこのネットワークに入ることによっていろいろな可能性が出てきており、私の方で、今9地域BRがありますけれども、幾つかの地域を回らせていただいて、感じているところを今日は御紹介をしていきたいと思っております。特に推進体制や、今後のアクションに関して提案をさせていただければと考えております。
 保護地域管理の変遷の中でのBRの位置付けということで、これは私の方でかなり解釈している部分もありますが、自然保護上、初期の段階で開発や過剰利用に対して保護地域を設定して、国立公園や保護林が設定されてきましたけれども、その後2000年代に入って、協働管理ということで、例えば、国とか県、行政とNGOが協働して管理をしていくというような体制が出てきました。例えば、群馬県の「赤谷プロジェクト」や、「綾の照葉樹林プロジェクト」がこれに相当しますし、国立公園の方も、協議会をつくって、民間と協働しながら管理運営していく形が出てきました。
 その中で、このBRですけれども、日本の自然保護上は、自治体による管理ができるようになったということが非常に大きいと思っております。これまでは保護地域の管理を国や県が中心になって行われていたところを、自治体が管理できるようになってきた。
 去年、生物多様性条約締約国会議がエジプトでありましたが、更に発展して、今OECMという考え方が出てきていています。これはOther Effective Conservation Measureといいますが、民間が結果として保護しているようなエリアも保護地域として考えていくような考え方が今出てきております。
 だから、先ほどからお話があるように、人とその自然がいかに共存していくのかということを更に発展させて、世界の中では保護地域管理の中にもそのような議論が既に行われているということになるので、日本におけるこのBRというのは非常に大きな意味合いがあるのかなというふうに思っております。
 先ほど松田先生の方からもお話がありましたけれども、日本のBRというのは、単独自治体型のBRと、それから、複数自治体型のBRが4地域ある中で、私の方で直接的に関わらせていただいた「綾」、」「只見」、「みなかみ」、「志賀高原」、「白山」、それから、「南アルプス」について御紹介をしていきたいと思います。
 単独自治体型の実際の管理運営体制ですが、これは「綾」のBRの推進体制の事例になります。実は「綾」のBRの方は、以前に既に核心地域、エリア図を出せばよかったんですけれども、「綾の照葉樹林プロジェクト」というのが進んでおりまして、これは国有林管理において官民の協働体制をつくりながら、主に国有林を管理していく体制になります。これが既にBRが発足する前に活動をしておりました。BR登録後に、一つは役場内に運営会議というのをつくって、ここの既存のいろいろな課からなっていますが、横断的に調整していく体制を新たにつくっております。
 それから、諮問機関ですが、それぞれの専門的な知見を吸収していく、あるいは、アドバイザリーとして受けていくための、外部の諮問機関を幾つか設けております。
 それから、最近では包括連携協定ということで、大学との連携も推進しているところです。既存の枠組みと、それから、新しくつくられた役場の中での体制をつなげるものとして、地域連携協議会をつくっているというのが一つ、これは単独自治体型の推進体制の事例になります。
 それから、一方、複数自治体型の推進体制の例ですけれども、これは「南アルプス」のBRの例です。先ほど松田先生からのお話にもあったように、「南アルプス」の場合には10市町村プラス3県が関わっておりますので、全体としてまずはそれぞれの自治体間をつなぐ連携組織というのがあって、その下に、それを補助する形で科学委員会や実務を担当する幹事会、それから、南アルプスの場合には非常に熱心に活動されていて、2か月に一度地域連絡会議というのを開いて、緊密に調整を行っているます。それから、このようにたくさんのワーキングを設けて、専門的な知見を吸収していくというような体制になっています。
 複数自治体型の場合には、推進体制図が出てくることが多いんですけれども、先ほどの単独自治体型と比べて、実はこの下にそれぞれの、例えば、南アルプス市の中に先ほどの単独自治体型の内部の調整機関があり、実際には複数自治体型の推進体制はかなり複雑な構造を持っているということになるかと思います。
 もう先にタイトルを出していますが、自治体が管理運営をしていくのは、先ほど言ったように、自然保護上は非常に先進的な取組であると思いますが、自治体が主幹を持つからこそ、いろいろな課題があり、最も大きな一つがこの人事異動に関するものです。
 幾つか具体的に見ていきますけれども、「綾」の方は、先ほどの「綾の照葉樹林プロジェクト」というのが2005年から始まっていますが、そのときからの状況を見ていきますと、実は当時企画財政課が綾町の方の担当としてあったんですけれども、皆さん御存じのように、通常2年から3年で担当者は異動していきます。なので、発足当時は綾も協働のメンバーに入っていましたが、すぐに担当者がかわってしまって、なかなか積極的に綾が関与してくることは実はなかったんですね。ところが、2012年にBR登録されて、その後エコパーク推進室ができますが、1人、いわゆるプロパーの担当職員に、河野さんですけれども、担当職員がついて、現在も河野さんが引き続き1人担当職員としてついています。
 それから、その「綾の照葉樹林プロジェクト」が発足してすぐに、同じ河野さんですけれども、レジデント型研究者といわれる専門監が1人ついていました。それに途中から地域おこし協力隊の方が2人ついていますので、プロパーが1人、専門監が1人、それから、地域おこし協力隊が2人という体制をとっていて、当時「綾プロ」が始まった当初にはなかなか積極的に関与してくれませんでしたが、担当が安定してきたという変化がありました。
 「只見」も、実は登録後、登録前からですけれども、1人専門の職員の方がついていて、レジデント型の専門監が1人つき、ブナセンターがサポートをするというような体制をとっています。
 「みなかみ」の場合には、今登録されて間もないですけれども、特にプロパーの職員が、担当監が2人から3人になったことで、強化をしております。ただし、今レジデント型やアシスタントがいないような状況になっています。
 一方、複数型ですが、「志賀高原」の例で見ていきますが、最初登録前は2人いましたが、登録後に1人になってしまい、その後も異動が続いていきました。内部にレジデント型の方はいない状況になっております。ただし、1人地域おこしの方がいますが、これも実は何回か交代していて、ちょっと安定していないというような状況になっております。また、外部としてレジデント型の方(水谷氏)が関わっています。
 「南アルプス」の方は廣瀬さんという方がずっと1人でプロパーを担っており、レジデント型の方が1人いらっしゃいます。
 「白山」の方もやはりプロパーの方は異動が続いていて、ただし、レジデント型の方が一定程度ずっと担っていましたが、最近代わってしまった状況になっています。
 こういった担当職員の異動もさることながら、当然ですけれども、市長が交代していくというようなこともあって、エコパークを安定的に運営していくということに関して、引き継ぎが難しいというような状況が見てとれます。
 そこで、いろいろな制度を見ていく中で、このレジデント型の研究者が役場の中に配置される状況がつくれるといいのではないか。今国内委員会やJBRN、それから国際交流も積極的に進めていきたいですが、このレジデント型の人すなわち、専門職員がいないような状況で、プロパーの職員だけで全てのことを回していくことは難しい。当然担当職員はユネスコエコパークのことだけではなく、場合によっては行政の通常の業務も抱えながら、兼業でやっていく状況になっており、うまく協働しながらやっていく状況ができないので、例えば、専門監を置くことで、その部分を担っていく体制を作ってはどうか。
 それから、ここにレジデントが300万円か500万円かと書きましたが、単に事務職員を雇えばいいということではなく、きちんとお金を払って専門的な知識を持つ方を配置してもらいたいというのが希望で、そうすると、地域のNPOであったり、それから、外部の研究機関、私もそうですけれども、ビジター型
の研究者が来たときに対応ができると、あるいは、国際交流も進む可能性があると考えております。
 それから、もう一つ今回お話ししたいのは、現場での議論と評価の場をを作れないかという提案です。この図は、左側が「綾BR」で右側が「みなかみBR」ですが、実はその面積は、「綾」が1万5,000ヘクタールぐらいで、「みなかみ」の方は7万ヘクタールぐらいあります。なので、大きさは6分の1となります。面積6分の1のスケールですが、例えば、体制が同じでいいのかということも出てくると思いますし、現場によって個性がありますので、どのような体制が一番うまく回るのかというのは、それぞれ実際のところは現場を見てみないとわからないということがあるかと思っております。
 現在、日本ユネスコエコパークネットワーク(JBRN)と、国内委員会と、日本MAB計画委員会という3者で協働しながら進めていくといいながら、メーリングリストはありますが、まだ相互交流の場や、共通に作業をしていく場面、それから、現場で確認をする場面が少ないのかなと思っています。
 今は、審査の流れとして、10月に申請書を受理して、12月に審査がされ、9月上旬に推薦が行われる流れになっていますが、地方自治体の方から申請が上がって、この日本MAB計画分科会の方で審査をし、決定をし、ユネスコ本部に上げていく審査の流れがありますが、基本的に書類審査ということになるので、なかなか現場での管理運営体制を確認する場面がないと思いますし、専門家として関わっている計画委員会が、この審査の流れの中に関与していく場面が少ないと思っております。
 申請手続の流れですけれども、申請を希望するサイト(地域)が、あった時に、二、三年はJBRNの研究会員として入って、いろいろ情報交換をし、スキルアップしたり、あるいは、その情報を入手し改善していく流れになっており、計画委員会もそこに関与することもできるのかもしれませんが、通常はその申請サイト(地域)が登録推進協議会を作り、それから、専門委員会を作って、そこに計画委員会が入っていく中で、コメントをしていきながら改善していくということが行われるていますが、申請が出てしまうと、コメントはできるが、撤退しろとまでは言えないこともあると思いますので、申請が事前に行われる前、JBRNの研究会の段階や、現地視察
を伴い、事前に登録を考えているサイト(地域)に審査(場面)ができないかというようなことが提案としてあります。
 例えば、そのような場面があれば、計画委員会だけではなくて、既に9地域のBRサイトがありますので、既存サイト(地域)の方も参加しながら一緒に考えていくこともできると思います。
 それから、もう一つ、登録された後ですが、10年後に定期報告を控えていますが、この10年は短いようで長いので、例えば、その中間のところで中間評価が、先ほどのようなメンバーですることができれば、もう少しサイト(地域)の方の運営上何か課題があったときに改善できる可能性もあると思っております。
 これはBRの審査基準、現在の状況ですが、これまでも何回も改定していただいて、非常にブラッシュアップされてきていると考えておりますが、この中で、特に先ほど少しお話をしてきましたが、この規約の中の組織体制に、例えば、専従専門員の配置を推奨するというような文言が入れられないか、それから、先ほど言いました中間評価への対応、それから、既にもうJBRNができていますので、JBRNへの参加の推奨が少し書き込めないかというのが一つ提案です。
 最後ですけれども、将来的な日本のBRということで、これは「甲武信BR」の候補地ですが、保全活用委員会というものが作られており、私もその委員のメンバーになっていいます。面積は先ほどの「みなかみBR」の更に2倍あります。それから、現在の市町村も10市町村からなります。このような広い地域を保全管理していくことは非常に困難であると想像しますが、今後のBRを考えていく上で、この図は、日本の保護地域の分布図を示しており、ここに挙げたもの全てを重ねたものです。それから、赤い部分は、例えば、国立公園の特別保護地区や、森林生態系保護地域のように、厳正に保護されている、いわゆる今のMABの審査基準で核心地域と言われているところを示しています。
 黄色い丸が現在のBRの場所を示しており、これを見ると、やはり今後自主的にBRになりたいサイトが、今の審査基準だとどうしてもこのような脊梁山地の周辺のコア(核心)地域を抱えたところにしか設定できないと考えられるわけです。
 それは、保護地域の分布を標高別に見たときにもいえます。実は保護地域のギャップとして、低地部や、ここには示しませんでしたが、日本は海洋国家でありながら、海の保護地域が少ないこともあります。MABの性格上、人と自然との共生を考えていく意味でも、例えば、低地部の里山であったり、それから、沿岸域の人の活動と非常に近しいところのBRを考えていきたいのですが、今の審査基準だと難しいので、これは少し議論をすべきなのではないかと思っているところです。
 最後、ちょっと松田先生の方にもありましたけれども、イオン環境財団との連携を今後積極的に考えていく必要があるかなと思っています。
 ありがとうございました。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 今の御発表に関連して、御質問等あればお願いいたします。
 大野委員。
【大野委員】  すごく言いたいことがたくさんあるんですけれども、少しだけ。専門員や専門的な知識を持つ人を組織の中に入れていくということの重要さは、とにかくその地域にある価値があるものが、まず価値があるということを認識してもらう、それを広めていくことの、そういうキーパーソンになるわけですね。そういった人たちが常にその組織の中にいなければ、地域の、特に住民の方とか、子供たちが自分たちのふるさとにすばらしいものがあるということがいつまでたっても認識されない。行政は人が代わってしまうので、その人が代わってしまったら、熱意がある人がそういう思いで伝えていけばいいんでしょうけれども、そうじゃない人であればそこでもうバトンリレーが終わってしまうと。ですから、定常的に専門知識を持つ人を組織の中に置いて、その価値を自分で学び、更に発信していく。ジオパークはそれがないと認定されないという状況まで来ていますので、是非BRの中にもそういう人たちが率先して組織の中に入っていくような仕組みを是非作ってほしいと思っています。
 ただ、この推進体制、ジオパークもBRもよく似た形で進めているんですけれども、なかなかその温度差とか、何でそんな人を雇わなきゃいけないのと、自治体上財政的に非常に厳しいところが多いので、なぜあえてそういう専門的な人を雇わなければいけないのかということに対する理解を得るまではなかなか道のりは遠いとは思います。
 ですから、逆に言うと、ジオパークという仕組みの中ではもう既にそういう位置付けがあって、一定の効果があるというのであれば、同じような目的でBRで進めていくときにもそういう知識がある人が必要なんだ、それでジオパークはある程度道のりが示されているよという交渉の仕方で、BRの中にもそういう専門知識を持った人を組織の中に位置付けていくということはできると思います。
【礒田主査】  ほかございますか。
【松田委員】  今のお話ですけれども、専門監を外部から呼ぶというか、本当の何か学歴とか何とかではなくて、1人張りついていただくだけでも大分違うと僕は思います。
 それから、もう1点、中間評価ですよね、これ是非本当は、やはり10年はちょっと長過ぎますし、逆に言えば、前のときに指摘事項があるわけですから、5年後ぐらいにどうなっていると聞くだけでも、これ大分違うなと、これは是非国内の制度としてやっていただけたらいいなと思います。
 以上です。
【礒田主査】  後ほどまた議論の時間がございますので、朱宮さん、ありがとうございました。
 続きまして、信州大学教育学部附属自然教育研究施設助教の水谷瑞希さんから、日本のBRの教育・研修活動について事例紹介いただき、日本のBRの展望について御発表をお願いします。15分程度でお願いいたします。
【水谷氏】  ただいま御紹介に預かりました、信州大学志賀施設の水谷と申します。本日はこのような機会を与えていただきありがとうございます。失礼します。座って説明させていただきます。
 私の方からは、今回特に「志賀高原BR」でのESDの実践事例を中心に皆さんに情報提供させていただきたいと思います。
 このESD、これ自体このユネスコの国内委員会、教育小委員会が主に担当している事業ですけれども、これについてまず簡単に振り返ります。そして、志賀高原の事例が中心になりますが、ほかの地域での事例についても若干述べた上で、ESDとBRとの関係について若干意見を述べさせていただきたいと思います。
 さて、このESD、一言で言うと、Education for Sustainable Development、持続可能な開発のための教育ということで、これは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育と言うことができます。
 この定義はいろいろありますが、ユネスコ国内委員会の定義によりますと、現在ある様々な地球規模の課題、これら現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そして、それによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動、このように言うことができます。
 ESDでは環境学習のほか、エネルギーや防災、こういった様々な教育に取り組みます。こういった従来言われてきた何々教育というものを持続可能な社会の構築という観点でつなげて、総合的に取り組む教育です。
 また、最初の方にも出てきましたけれども、SDGs、ESDはこの中でもSDG4、教育の分野であると同時に、このSDGs全てに対して人づくりという観点で貢献するということが期待されています。
 これまでのESDの経緯について振り返ってみますと、このESD、もともとどこから始まったということは、実は明確ではありません。ただ、80年代以降、特に地球サミット、アジェンダ21を契機に国連が始めた人づくりがこのESDの始まりでないかというふうに言われています。
 これが明確に意識されたのは、2002年のヨハネスブルグ・サミットのときです。このときに日本が国連持続可能な開発のための教育の10年、DESDというものを提唱しました。この点において、日本はESDの先進国であると言うことができます。
 国連では、これを受けて、ユネスコを指導機関として指名をしました。ここからユネスコがESDに関わるということになってくるわけです。ここからBRとESD、いずれもユネスコの事業になってきたわけです。
 このDESD、2015年で終了しますけれども、この後継のプログラム、グローバル・アクション・プログラムというものが現在走っております。国内ではこれに基づく国内実施計画といったものが策定されています。
 ここまでESDについて触れてきましたけれども、もともとBRで取り組まれるものとしては環境教育の方が、皆さんなじみが深いかもしれません。この環境教育とESD、実は目的や方法論が非常に似通っているんですね。環境教育を学生の皆さんにお伝えするときによく用いるのが、トビリシ勧告というものです。この中では環境教育の目標であるとか、目的といったものが明確に示されています。
 その中では、例えば、目標では全ての人が対象である。そして、環境保全に必要な知識や価値観や技能、こういったものを享受する。そして、行動や意識の変革を、教育を通じて促すということ。そして、目的としてこういったようなスキルを身につけてもらうことということが定められています。
 実は、ESDで目指すことといった内容でも大体これと対応するようなことが入っているんですね。つまり、ESDの目標や学び方、教え方は環境教育と非常に類似しており、それを価値観と行動の変革につなげていくことを目指していると言えます。
 つまりESDと環境教育は、ESDは環境教育を含むより広いテーマを扱う一方で、その目標や学び方、教え方といったものは従来の環境教育の延長線上にあると言う事もできるわけです。
 次に、学校教育の場面について考えてみますと、実は学校教育でも既にESDというのは必須の概念になっています。今般改正されました学習指導要領の中では、持続可能な社会のつくり手としてESDの理念が意識された記述がされています。従来からありました総則や各教科教育の中で、そういったものが意識されているだけではなく、今回から入ってきた前文、この中でも持続可能な社会のつくり手となることができるようにする、こういったような教育の目標、目指す姿が掲げられています。
 それでは、ここから志賀高原のお話に移ります。
 「志賀高原BR」は、志賀高原地域を中心として、長野県と群馬県の2県5町村にまたがる地域に設定されているBRです。「志賀高原BR」は1980年に登録された日本の第1陣の4つのBRの中の一つです。そして、やはりほかのBRと同様、かつてはBRであることを標榜した活動は停滞していた状況がありました。しかしマドリッド行動計画、これを契機とした働きかけを受けて、拡張登録、特に移行地域を設定するというようなことが検討されまして、長野県側、山ノ内町と高山村に移行地域が設定されているという状況です。これが2014年の動きです。
 「志賀高原BR」の中心は志賀高原です。ここは火山活動によってできた火山台地、そして、その上に広がっている亜高山帯針葉樹林、ここには非常にまとまった面積の原生林もありますし、また、池沼群や湿地群もあります。そして、この湿地群の中にはラムサール登録をされた芳ヶ平湿地群も含まれています。
 ここから「志賀高原」でのESDの動きについて事例を紹介していきたいと思います。
 まず、一番最初から動き出していたのが、志賀高原観光協会やガイド組合による環境学習プログラムです。これは主に各種学校を対象として提供されているものです。これは2013年から開催されています。拡張登録が先ほど2014年というふうに申し上げましたが、それよりも前から始まっているということですね。これは志賀高原では従来から林間学校などを対象とした校外学習のガイドが行われていたんですけれども、ここの中では特に野外学習の前と後、前学習、それから、事後の振り返り、こういったものを入れていきながら、「志賀高原BR」を題材に、自然と人間社会との共生について考えていくといったような内容になっています。
 こちらが観光協会からいただいた参加人数です。2013年に始まったときには400人に満たない規模だったんですけれども、2017年には1,400人に近い人数になっています。2018年は、これはまだ集計途中の数字だったので、これよりも更に数字は積み増されています。
 この中には、それまで志賀高原を利用していなかった学校の利用もありますので、このこと自体がグリーンシーズンの誘客の一助にもなっているということができます。
 これが子供たちにどのような影響を及ぼしたか、これについて、ある中学校の生徒が事後に書いたレポートの中から見てみます。ある生徒はこのように書いています。「森は風景だけではなく、私たちの暮らしに役立つ多くのことに関わっている。私たちは多様性に富んだ場所に住んでいるから、このことを常に意識して過ごしていきたい」。また、ある人は、「ユネスコエコパークで話を聞いたり、自分の目で見たりしていくうちに、人間と自然が共存することのできる社会づくりも環境を守ることにつながっているのではないかと感じることができました」。 こういうような感想を持つことができました。これはやはり、単発の授業ということになってしまいますけれども、それでもこのような思いを子供たちが持つことができたということです。
 現在、例えば、学校側の求めに応じて事前学習、出前授業を行うであるとか、そういったようなことはできるんですけれども、実際にそれを学校の学習の中でどういうふうに位置付けるかというのは、各学校に任されています。ですので、学校によっては事前の調べ学習をしっかりやっていく、あるいは、この志賀高原で更に探究的な学習活動を行うといった事例もあります。
 それから、2番目はユネスコスクールです。「志賀高原BR」では移行地域の全ての小・中学校がユネスコスクールに加盟し、ESDの視点を持った学びに取り組んでいます。
 ここでユネスコスクールというものが出てきました。これもまたユネスコの事業です。これはユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を学校現場で実践するネットワークとしてできている制度です。現在世界182カ国で1万1,500校以上の学校が参加していて、その1割は日本です。このユネスコスクールにおいても日本は一番進んでいる国と言うことができます。
 長野県内では現在16校が加盟していますが、この中の3分の1が志賀高原BRの関連校です。
 このユネスコスクールの活動内容は、非常にESDと親和性が高く、日本ではESDの推進拠点として位置付けられています。
 各学校の取組について御紹介をしていきます。
 まず、山ノ内東小学校です。この東小学校では志賀高原で遠足を行っています。このような核心地域や緩衝地域での遠足は、実はここの学校だけではなく、山ノ内町の全ての小・中学校が実施しています。地域資源を知ったり、体験するといったことは、このユネスコエコパークへの理解を深める第一歩と言うことができます。
 また、志賀高原ではスキー場の跡地に植林して森林を回復するABMORIという活動が行われています。この小学校はかなり早い段階からこのABMORIで苗づくりなどの活動で参加をしています。
 それから山ノ内西小学校、こちらは地域の特産品であるリンゴの栽培を中心とした取組を行っています。ところが、この中でただ単にリンゴを栽培するだけではなくて、できたリンゴをどうしたいかということを子供たちに問いかけたんですね。そうしたら、ここ、隣にね、地獄谷野猿公苑という非常に有名なスポットがあるんです。そこに現在たくさんインバウンドのお客さんがいらっしゃるんですね。その外国の方に売りたいというふうに子供たちが言ったんです。それで先生たちが頑張って、地獄谷野猿公苑に行く最寄駅、その前のところに子供たちがお店を開けるようにしました。それで、子供たちが外国人の観光客に販売する、そのために子供たちが、ALTの先生に相談しながら、こういったPOPをつくったり、あるいは呼びかけの言葉を考えたり、こういったようなことをしていきます。
 このように、学習者である子供たちが主体的に学びの内容に参画していく、一緒に考えていく、これはESDの一つの特徴でもあります。
 それから、山ノ内南小学校、ここでは国語の単元で「すがたをかえる大豆」というのがあるんです。これを端緒として、いろいろな大豆をめぐる活動に取り組みました。例えば、さっきも出てきましたけれども、栽培ですね。それから、小学校だと社会科でスーパーマーケット探検というのがあるんです。ここで実は先ほどから出てきたイオン環境財団さんがちょっと関わってきまして、イオンさんと連絡をとりまして、子供たちにいろいろな働きかけができるような調整をしてもらいました。ここで子供たち、大豆がすごくいろいろな物に使われているということや、国内自給率が実はすごく低いということを学びました。
 それから、こちら、何の写真かというと、この南小学校の校区の中、かつては水が非常に不足していて、そこに志賀高原から水を引いてきたというような農地開拓の歴史があります。それに携わった方なんですね。こういったような地域の歴史についても学びました。
 それから、ここの学校、コミュニティスクール、地域の方が学校に関わることが非常に盛んなんですけれども、地域の方の協力でみそづくりを体験してみよう、更に、そのできたみそを家に持って帰って、冬休みの間にみそでいろいろな料理をつくってみよう、こういうことをやっていきました。
 このように、教科教育の中の一つの単元を発端としながらも、地域資源をうまく活用しながら、有機的に結びつけて、様々な体験学習の取組を行っていった、こういったようなことも行われています。
 ESDというと、何かと生活科であるとか、総合の時間、こういったところで行われがちですけれども、このように教科教育と結びつけていくのは、ESDの中でも非常に模範的な取組ということができます。
 今度は山ノ内中学校になりますが、ここでは3年間を通じて持続可能な地域づくりのために主体的に考え行動していけるような生徒の育成に取り組んでいます。
 それから、高山村でも、やはりいろいろな活動が行われています。例えば、高山小学校では、生活科、総合の学習を中心として、高山の時間というのが設定されています。その中では、志賀高原に行ったり、あるいは、リンゴの栽培もあるんですけれども、ここではエコファーマーと一緒に志賀高原のブランディングをしたようなリンゴについても取り上げています。
 それから、高山中学校、こちらではやはり山ノ内中学校と同じように地域の学習を行っています。それで、地域の学びと合わせて、他地域と比較を行う、これは山ノ内中学校でも行われているんですけれども、その学びの成果を中学生議会で政策提案します。ここのすごいところは、更にそれを村が実現する、こういったところまで行っています。
 それから今度は高校の方になりますけれども、中野西高校、こちらではESDクラブを中心に志賀高原での自然環境保全活動に取り組んでいます。この中では、行政が主体となっているもの、あるいは、地域の住民団体が主体となっているものなどがありますが、こういったような多様な主体との関わり、その中での学びが行われています。
 それから私が所属しております信州大学、こちらでは、志賀高原で半世紀にわたって教員を目指す学生を対象とした自然教育に取り組んでいます。この実習、実は1963年から始まっているものなんですね。このような実習というのは、全国の教員養成課程の中でも非常にまれな特色ある授業なんですけれども、信州大学では必修になっています。必修にしているので、長野県内どの学校にもこの志賀高原で自然教育を学んだ教員がいる,このことは大きな強みにもなっています。
 それから、ここまでは学校、教員養成でしたけれども、更に一般の方向けの取組としては、ユネスコエコパークセミナーを山ノ内町と協働して行っています。これはBRの制度や地域の自然、文化、歴史、それから、地域振興についての講演や、地域資源探索のフィールドワークやワークショップを行っています。まだ動き出してはいないんですけれども、この中から地域資源を生かして、それをガイディングしていくようなことに新たに取り組みたい、こういったような動きも始まっています。
 山ノ内町では、住民意識アンケートを行っています。その中で、「エコパークにどんな期待をしていますか」というようなことをお伺いしています。その中では、地域の活性化に関わる様々な効果に対して高い期待、大体7割から8割が「非常に期待する」とか「期待する」と回答しており、大きな期待が寄せられているところです。
 それから、ESDについても聞いています。ESDの認知度については4割程度なんですけれども、それを積極的に進めていく、あるいは、それをより進めていくということについては8割以上の方が肯定的に受けとめている、という結果も得られています。
 以上のことについて、簡単にまとめていきたいと思います。
 まず、ESDの地域資源としては、志賀高原BRには世界級の自然資源のほかにも、フィールドワークの中で見出されたような歴史や文化に関わる様々な地域資源がある、あるいは、それに係る多様な主体があるといったことが見えてきました。このような点において、BRは豊かなESDの地域資源を持っているということができます。これをより磨き上げていくためには、多様な主体間でBRの理念を共有したり、あるいは、それに即した取り組みをより強化していく必要があると思います。
 それから多様な人材育成という観点では、何よりも学校教育での次世代育成、それから、社会教育や生涯教育の取り組みもあります。そして、教員養成といったことも行われています。
 この志賀高原BRの学びで特に注目すべき点は、全員がESDの学びを経験した世代が存在するということです。小学校と中学校の9年間、BRを舞台としてESDに取り組んでいる子供たちが育っている。これはつまりBRの理念を理解して、更にその地域、持続可能な地域をつくっていくために必要な資質や能力を備えた子供たちが育まれているということです。この世代が実際に地域で様々な取組を行う、更に、最終的に地域の担い手になったときには、これは非常に大きな力になることが期待できると思います。
 それから、こういった志賀高原BRでのESDの振興、この中では信州大学教育学部が中心となって設立した信州ESDコンソーシアムの支援が、大きな役割を果たしてきました。例えば、ESD全国大会や、ほかの地域で開催される研修会などに地域の先生方を派遣するであるとか、あるいは、各学校に出向いて全ての教員を対象にESDの研修会を実施する、こういったことを行っています。また、海外からの視察の受け入れの仲介や、学校現場だけではなく、ガイドの方へのESD研修会なども行ってきました。
 そして、昨年の10月にはBRでのESDをテーマとした研修会を「志賀高原」で開催しております。ここでは他地域のBRの方にも御参集いただきました。
 それから、ESDコンソーシアムでは、子供たちが日ごろの学びの成果を発表し、交流を深める成果発表交流会を開催しています。先の日曜日に開催したところでは、大体300名くらいの方がいらっしゃいました。ここでも志賀高原の子供たちが取組について発表を行っています。
 今信州ESDコンソーシアムについて御紹介しましたけれども、現在先に説明しましたグローバル・アクション・プログラムに基づいて、国内では様々なESDの支援体制が構築されています。文部科学省と環境省が連携して、ESDの全国支援センター、それから、地方の支援センター、こういったものを組織し、それと連携する形で各地での地域ESD活動支援拠点が活動を行っているところです。
 今までは「志賀高原」のお話が中心でしたが、ほかのBRでもそれぞれにESDとして捉え得る既存の取組があり、また、ESD自体の普及や実践も進みつつあります。
 例えば、「只見BR」では全ての学校が既にユネスコスクールに加盟しています。また、ここではユネスコエコパークだけではなく、防災教育やコミュニティスクールなど、様々な文脈でESDが実践されています。
 それから、「みなかみBR」、ここでは自然や地域に関する学習の取組が行われており、ここもちょうど先の日曜日にその学習発表会が行われたところです。それから、ここも全校が現在ユネスコスクールの登録を目指しているところです。
 「白山BR」では、金沢工業大学や金沢大学などと地域との協働による域学連携による地域づくりの取組が行われています。
 さて、ここでエコパークの機能についてもう1回振り返ってみますと、保全機能、それから、経済と社会の発展、学術的研究支援、そのいずれにも持続可能という概念が入っています。その意味において、その持続可能を追求していくESDは、全てに関わってくる部分であるということができます。
 エコパークでの取組を行っていく際には、一番最初に地域の方に地域の資源の価値に対して気づいていただく、そのために協力やツーリズムを行っていくというようなことがよく行われています。これは、例えば、地域創生の場面でもよく行われているところで、そういった場面でもESDはよく出てきます。
 それをSDGsというところに落とし込んでいくと、例えば、主に行われているところではこういったようなところが入ってくるのかなと思います。もちろんこのほかにも、気候変動であることとか、パートナーシップ、こういったところも入ってきます。こういったことを含めて、ESDは全てに関わってくる部分であると言うことができます。
 最初の方にSDGsの全てに対してESDが貢献してくると、現在整理されているということをお話ししましたが,これを“ESD for SDGs”とも言います。まさしくBRにおいても、ESDはユネスコエコパークに期待されている機能を実現する手段であり、また、その推進力、エンジンであると言うことができます。これは“ESD for BR”と言えるのではないかと思います。
 最後に全体に関わることについて幾つか整理して提案をさせていただきたいと思います。
 まず、ESDは何よりも日本の強みであるということが言えると思います。ESDは現在主要な課題である持続可能性に関わる様々な課題を統合するキーワードであります。また、これはBRの活動と非常に親和性が高く、世界のモデルにもなり得る取組であると言うことができます。これを進めていくことは、一つは世界に対してBRのモデルを発信するという意味で貢献することにもなりますし、これを示していくことは観光コンテンツにもなっていくと考えます。
 また、これを発信していく上では、引き続き普及、推進をすることと併せて、それをどういうふうに評価していくのか、ベンチマークを開発していくということも必要になってくるのかなと思います。
 また、このBRでのESD、ESD for BRを普及、深化していく上での課題や鍵としては、このようなことが指摘できるかと思います。
 まず、「つなぐ」コーディネーター、これは必ず必要になってきます。最初に候補に上がるのが恐らくBR協議会だと思うんですけれども、私たちの経験からすると、特にその本丸である学校にアプローチする際には、そことつながりやすい関係主体が関わることが必要であると考えます。
 次に学校での実践、これについては、ネットワークを通じての交流、グットプラクティスを共有すること、そして、発信や実践機会を提供すること、こういったことを通して、学校がこういったことを実践していくことがやりやすくなるということがわかってきました。 ESDを実践していこうとするとき、現場の先生は様々な情報を必要としています。そのときにネットワークを通じての交流が非常にその推進力になるということがわかってきました。
 では、こういったことを進めていく上ではどういったところと連携することが望ましいのか。そこでは、BRの文脈だけではなくて、ESDの文脈の中からESD支援組織、既存のESDの支援組織と連携していくということが一つ鍵になるのではないかと考えています。その中で、私たちのようなコンソーシアムを含む地域ESD拠点、こういったところがその候補になるのではないかと考えています。
 今まではBR単位のどちらかというと縦の部分だったんですけれども、今度横のつながり、BR間の連携というところでも重要かと思います。例えば、ジオパークネットワークでは教育ワーキンググループの中でESDの推進ということを考えておられます。それから、世界遺産の方では学習連絡協議会といったものが組織されています。エコパークの分野でもこのような連携組織といったものがつくられるとよいのではないかなと思います。また、学校教育だけではなくて、社会教育や生涯教育、あるいは、観光や農業など、多様なセクターとの連携も重要になってくると思います。そして、交流や発信を促進していく、その中で世界への発信というところも入ってくるのではないかと思います。
 ただ、これもあまりこれを前のめりに進めるのではなくて、やはり地域や学校の歩みに寄り添いながら、順次進めていくことが必要なのではないかと思います。
 以上のような取組を進めていくことで、日本の強みであるところのESD、そして、ESD for BRを深化させていくことがこれからのBRに非常に大きく貢献していくのではないかと思います。
 以上です。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 今の御発表に関連して御質問があればお願いいたします。
 大野委員。
【大野委員】  済みません、手短に、ESDを続けた人が社会に出始めていったというお話が山ノ内町であったとありましたけれども、それによって何か実質的な変化というのはあったりしたんですか。
【水谷氏】  まだこれからというところだと思うんです。というのが、ユネスコスクールの取組というのが始まったのもここ五、六年ではあるんですね。ただ、例えば、そこから高校に進学した生徒さん、高校もユネスコスクールだったので、また先日の発表会にも来ていたんですけれども、将来地元に帰って貢献したいので、地元に貢献することができるようなことが勉強できるような大学に進学することにしましたというふうに言ってくれているんですね。こういった子供たちが今度また地域に帰ってきて、地域で活動する、こういったことがね、進んでいくことによってその成果というのが見えてくるんじゃないかなと思います。
【大野委員】  ありがとうございます。
【礒田主査】  いかがでしょうか。
【松田委員】  SDGsが大きく言われるようになって、ESDのやっている中身は少し変わったんでしょうか。
【水谷氏】  そうですね、中身が変わったというよりも、より整理されて、理解が進んだというふうに捉えています。よくESDがSDGsに置き換わったんですか、という議論があるんですけれども、そうではなくて、先ほどから出てきているSDGsを達成するためのESD、そのような文脈になってきています。
【礒田主査】  水谷さん、ありがとうございました。
 続きまして、教育関係の活動に関連して、金沢大学においてユネスコエコパーク大学教育に関するアンケート調査が実施されております。本日このアンケート調査を実施された飯田さん、アイーダさんが本分科会にいらしていますので、簡単に御説明いただければと思います。
 飯田さん、アイーダさん、お願いいたします。
【飯田氏】  皆さん、こんにちは。飯田義彦と申します。
 ちょっと立って御紹介させていただきますけれども、お手元に「ユーラシア地域をまたぐユネスコエコパーク大学教育プログラムの共同開発」ということで、事業報告書を添付させていただいています。私自身、今金沢大学の連携研究員という立場なんですけれども、昨年までは国連大学の金沢オフィスで研究者をしておりまして、一貫して4年半「白山BR」と連携していまして、現在も協議会の事務局アドバイザーとして管理運営計画の策定などに携わらせていただいています。
 そうしたこともあって、この場で普及しておきたいのが、BRの活動は科学プログラムであると同時に国際プログラムであって、今686のサイトがあるということで、やはり国際的な視点から日本のBR活動を見ていくというのが一つ重要なポイントになるのかなと思います。
 今回ユネスコ国内委員会さんからお金をいただいて、そうした国際ネットワークから日本の教育活動を見るとどういう強みがあるかとか、どういう課題があるかという、そういったことをこの事業で明らかにしたくて、この1年間実施してまいりました。
 最初に、私の方からこの資料をもとに事業の報告概要をさせていただいて、あとは金沢大学のアイーダ・ママドーヴァさんから金沢大学の今の新しい動きについて紹介した後、私の方から1点だけちょっとコメントをさせていただきたいと思います。
 ページをめくっていただいて、目次と、あと、今回連携した交流事業ということなので、国外のBR、日本MAB計画委員会とも連携しています。図1-1に地図が載っていますけれども、ベラルーシという、これは東ヨーロッパに位置する国と、ロシア、日本という、3カ国で連携した事業になります。
 1ページ目をちょっとめくっていただいて、もう全部は読めないんですけれども、一つ。今までMAB戦略2015-2025などが策定されています。この中で非常に重要な目標が記載されています。下の方に地域教育(B.1.2)ということで明記されているんですけれども、「大学のコースを含む研修プログラムが確立され」ということで、そうした数についても数値目標として報告するようにMAB戦略で位置付けられています。
 プラス、このBR活動自体がユネスコ中期戦略の中にも非常に重要なフィールドとして位置付けられていまして、このBRで教育活動を充実させていくというのは、ひいてはこのMAB戦略、リマ行動計画、更にそれらの上位戦略であるユネスコ中期戦略でも非常に貢献できるという位置付けになるかと思われます。
 2ページに入りますと、そうした中で、金沢大学のアイーダ・ママドーヴァさんが2015年度から国際機構留学生センターというところに所属していまして、国外から来る留学生を「白山BR」の中の白山市白峰という、石川県にある人口4800人ほどの集落があるんですけれども、そこで地域の地元の方と連携しながら、地域学習プラス国際的な視点から地域を捉えるような取組をされてきています。
 COC事業であるとか、そういった外部資金を得ながら実施しているんですけれども、2017年度にSDGsの文脈から留学生が地域を見るとどういった位置付けができるかということ、SDGsの観点で見ると、地域を、BRを見ると非常にわかりやすいということが理解されてきました。そうした地域とBR、大学との連携を踏まえてきて、今回の事業が確立されてきたところがあります。
 3ページ目の方に移動していただいて、金沢大学は文部科学省による世界展開力の事業を、今ロシアを起点として実施していまして、そうしたロシアとのネットワークが既にあるというのと、アイーダさんの方が一昨年、2017年のMABユースフォーラムに参加されて、そこでベラルーシのMAB委員会の方と交流する接点を持って、ベラルーシ国立大学でこのBRに関する修士課程、修士号を出すプログラムをされているということで、そうしたら、ロシアとベラルーシ、日本の相互の教育活動を比較することで次のステップが見えてくるんじゃないかということで、目的設定をしています。
 4ページ目の方に、具体的に何を実施してきたかということで、1から5を挙げていますけれども、これについては今から少し説明したいと思います。
 まず、SDGsへの貢献がこの事業の一つの目的ですので、ゴールの4、15、17を見据えて実施してきました。
 5ページ目に入って、このベラルーシとロシアと日本でBRと教育がどういうふうに連携しているかというのをまとめた事例集というのを発刊しました。この中で、今日いらっしゃる松田さんにも執筆いただいて、水谷さんにも「志賀高原」の事例などを紹介していただきました。一応現物を持ってきているんですけれども、こうした冊子媒体として取りまとめていまして、右ページにあるように、こちらのQRコードからダウンロードできますので、是非御確認いただけたらと思います。内容構成としては、この表の3-1に書いているようなものになって、ロシアのMAB国内委員会の副委員長のバレリー・ネローノフさんらの記事も載せています。
 7ページでそれらの事例集というものを各国の関係者に配布しています。
 そうした事例集をもとに、日本、ベラルーシ、ロシアの関係者をお招きして、国際フォーラムというのを7月に実施、開催しました。詳細についてはこの8ページから見ていただければいいんですけれども、この中で非常に重要なディスカッションのポイントとして、11ページに少し載せているんですけれども、ロシア、ベラルーシというのは科学プログラム、生態系のモニタリングというのは非常に重視しています。
 一方で、日本の場合は、先ほど御発表もありましたけれども、教育活動であるとか、地域づくり、特に基礎自治体さんが関わっているということもあって、そうした地域の視点というのは非常に重要なんですけれども、国際的な比較から捉えると、結構日本の状況というのはある意味ちょっと特殊なところも見えてきたかなと思います。
 ただ、大事なのは、そこのギャップを埋めるとかではなくて、どうつなげていくか、そこに教育活動を入れることでこのギャップをうまく生かせるんではないかという、そういった議論が行われていました。現地研修では、JBRNの皆さんと各国の参加者との交流も図られました。
 では、実際ロシア、ベラルーシの現状を見てこようということで、12ページのところであるんですけれども、ここで非常に重要な点は、ちょっと少し概要については飛ばして、15ページを見ていただきたいんですけれども、ここに山口隆さんという方と、あと、16ページに高崎英里佳さんという、これは「白山BR」に直接関わる方ですけれども、山口さんという方は白山BRの協議会の初代事務局長をやられていた方で、今、白山市白峰で地域活動をされています。高崎さんは現役のBRの協議会の職員で、こうした方が実際海外の事例を見て学ぶ、日本と海外の違いを知るというのは非常に重要だったかなと思います。
 具体的に言いますと、ロシアのGVKBRは、所長が地元のカザン大学の生物学科の教授を兼ねていまして、そうした教育と研究が非常に密接にやられています。職員も数十人規模います。ベラルーシのベレジンスキーBRでは職員数が数百人という規模で関わっています。日本の場合は、特に白山国立公園の場合、自然保護官は1名しかいませんし、アクティブレンジャーは2名で自然保護行政をやっているということで、そもそもそうした自然保護の仕組みの違いがあるというのがわかったということが非常に重要かなと思います。
 高崎さんは特に管理運営計画の作成の主担当をやられていますので、そういう方がこうした知見を得られたのは大きいかなと思います。
 その中身についてはちょっとまた確認いただければと思うんですけれども、じゃあ、日本全体として、先ほど水谷さんのお話もありましたけれども、教育とBR活動をどういうふうに連携しているかというのを20ページのところでアンケート調査をさせていただきました。今回の話題提供のメーンはここになるんですけれども、一つ重要な情報は1-1ですね、教育機関の連携ということで、小・中学校と大学との連携は非常によくされているなということがわかりました。9BR中7BRからの回答なんですけれども、特に大学との連携というのは100%やっていまして、JBRNの一つの強みはやはり大学連携というのがあると思います。一方で、高等学校とかとのギャップがあるということがわかってきました。
 ちょっと幾つか飛ばして、23ページの2-5なんですけれども、大学と今後連携してみたいプログラムというところで、皆さんここに御列席の方も大学関係者がほとんどなんですけれども、研究から教育まで非常に多岐にわたっています。地域にも積極的に関わってほしいということで、そういったことがわかってきました。
 一方で、職員に関する学習会というのはあまりやられていないということがわかってきています。
 その日本のBRの中で、実際どういうふうに取組をされているかというところで、24、25ページで綾BRのところに行ってまいりました。非常に大学連携が盛んなんですけれども、教育活動にどういうふうに生かしていくかというのは一つの課題になっているかなと考えています。
 今こうした事業を受けまして、一つの成果が生まれてきているんですけれども、済みません、ちょっと14ページに戻っていただいて、下のところにベラルーシ国立大学と金沢大学の連携協定が結ばれているんですけれども、その中にBRを活用した教育プログラムをやっていこうという覚書がありまして、そこの活動が今後発展されていくかなと思います。
 最後に、アイーダさんの方から、今新たな金沢大学の動きについて御紹介いただきたいと思います。
【アイーダ氏】  金沢大学のアイーダ・ママドーヴァと申します。ちょっと簡単になりますけれども、2015年からずっと白山白峰地域で、移行地域になるんですけれども、留学生の教育をしていまして、SDGsとBiosphere Reserveとジオパーク全部合わせて教育活動をやっていまして、今のところ200人ぐらい留学生が白峰に来て滞在していたんですけれども、もう一つ、その金沢大学の方から50名の日本人の学生、去年ロシアの3つのBRに派遣しておりまして、全部で1か月ぐらい、大変なコースでしたけれども、ロシアを1周回って行ってまいりました。
 そういう連携がありましたので、金沢大学の方からも働きが、動きがありまして、2月27日、ほぼ決定ですけれども、白峰の私たちがいつも使っている古民家を金沢大学のSDGs、Biosphere Reserve、ジオパーク研究センターとして設立していただくことになりました。その中で、今までの活動をそのまま続けることを期待しております。また、ベラルーシの事例もその中に入ると思います。
 以上です。
【飯田氏】  ありがとうございます。国際プログラムの中で日本の活動を見ていくということで、一方でポストMAB戦略を見据えて、もう少し教育のプライオリティーを日本側から上げていく、そういったような発信の仕方もあるかなと思われます。
 以上、お時間頂戴いただきありがとうございました。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 今の御説明について御質問ございますでしょうか。
【岩熊委員】  飯田さんに一つだけお伺いしたいんですけれども、日本は特殊であるというようなことを発言されて、今ロシア、ベラルーシ、それから、日本という形ですが、他国と比較しても、やはり教育の方に重きを置いているというところは少し特殊なのか、どういうところで特殊だとお感じになっているかを、短くて結構なので、言っていただけると助かります。
【飯田氏】  一つ、大学との連携という意味では、ロシア、今回見てきた1地域でしかないんですけれども、学生がその地域に入って学ぶとか、そういったもの、取組、発想がそもそもないというところです。日本は今回の事例集の中でも紹介しているんですけれども、やはり地域社会と、特に基礎自治体さんと連携しながら、大学がプログラムをつくったり、インターンシップをしたりとか、学生の活動をされているということで、そうしたところのそもそもの教育に対する考え方とか、自然保護に対する考え方がちょっとそういった差を生んでいるのかなということで、むしろSDGsの文脈を考えると、コミュニティーと大学が連携してやっている日本の取組というのは、今後非常に世界にアピールしていけるものなのかなという解釈です。
【岩熊委員】  わかりました。ありがとうございます。
【礒田主査】  それでは、次、意見交換に入りますので、飯田さん、アイーダさん、ありがとうございました。
 それでは、意見交換に移りたいと思います。本日の御発表、御説明を受けて、日本のBRの展望など、御意見伺えますでしょうか。
 なお、本日は関係省庁の担当者並びに傍聴者として自治体のPR担当者も多数お見えになっています。各地の実態など、必要に応じて各御担当者から伺えると幸いです。
 もしよろしければ論点として、次の3つをちょっと御提案したいと思いますけれども、一つが日本のBRの特徴、強みについてということ。それから、2つ目が、日本のBRの可能性、重要性についてということ。それから、3つ目が、日本のBRにおいて推進していくことが望まれる事柄についてということで、この3つの観点を中心に御意見を伺えると幸いです。
 分科会の委員の方々やBRの担当者の方からもよろしくお願いいたします。どうでしょうか。
【秦国際統括官補佐】  BRは、「白山」、「大台ケ原・大峯山・大杉谷」、「綾」、「みなかみ」、「祖母・傾・大崩」、この5つの関係者がいらっしゃっています。
【礒田主査】  そうしたら、順番に「白山」の方からよろしければいかがでしょうか。
【白山BR】  「白山BR」の山下と申します。何といいましても、今白峰という地域のお言葉が出ましたけれども、伝統的に非常にBR活動が盛んで、日本ジオパークもユネスコエコパークも中心になっている集落がございます。そこを十分に活用できたということと、今説明がありました、アイーダ先生を筆頭に、いろいろな人材がそれとうまくかみ合ったといったようなことで、今「白山BR」、ジオパークも含めてですけれども、モデル的な地域が形成できているかなというような感じを持っています。
 以上です。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 「大台ケ原・大峯山・大杉谷」はいかがでしょうか。
【大台ケ原・大峯山・大杉谷BR】  先ほどの朱宮さんのお話は大変耳の痛い話でして、人材の安定的なBRの担い手というのは非常に大きな課題かなというふうに自負しておりますが、また、広域であることから、連携のとりづらさはかつてからお話しさせていただいておるとおりですが、温度差のギャップを埋めるということに非常に苦慮しております。
 今後注力を置いて推進すべき要素というのが、こちら水谷さんがおっしゃいますとおり、ESDというのは、やはり人材教育というのは不可欠かな。後に続く方をいかにしてそういうふうに自然との共生、持続的な地域を意識して暮らしていってもらえるかというのが、これはBRに限らず、自治体としても大きな課題だと認識しております。ですので、教育分野とより密な連携を図れたらなというふうに現在考えております。
 ありがとうございます。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 「綾」の方から、河野様、いかがでしょうか。
【綾BR】  綾町役場の河野と申します。今JBRNの事務局もさせていただいておりますけれども、「綾」は、先ほども朱宮さんの方から紹介もありましたとおり、ユネスコエコパークセンターというのを、今年度4月にできまして、新たな体制で臨んでいるところではあるんですけれども、やはり人材があまりにも人が不足していると。やる内容に対して人が限られておりまして、まだ「綾」の方は専門監とか、レジデント・リサーチャーの方がいることはいるんですけれども、それでもやはり活動には限界があり、やはり地元の地に足のついた取組をできるところから少しずつやっていっているというのが実情でございます。
 その活動の取組の中身は、特に地元の町民の方々、そして、地元の小・中学校、地元の方々向けに取り組むことをまず綾としては優先的に行っておるところでございまして、その中でも、やはり外部からの、大学との連携ということをここ一、二年間特に注意をして取り組んできたところでございます。
 ですので、これからもやれるところから少しずつやっていきたいとは思っておりますけれども、やはりいきなりすぐに大きなことは、小さな自治体ですから、大きなところまでの取組はまだまだ時間がかかると思いますけれども、地元の取組をしっかりとこれからも続けていきたいと思っております。
 綾町からは以上です。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 「みなかみ」の方からお願いいたします。タカダさん。
【みなかみBR】  お世話になります。水上町役場の髙田と申します。
 「みなかみBR」は一番最後にできた日本でも新しいBRなんですけれども、単独スタイルという形でみなかみ町全域プラス新潟なんですけれども、単独であることのメリット、動きやすさというのも感じながら、一方で、今日朱宮さんからもお話ありました、人事異動リスクというところ、非常に今後に向けての危惧を今しています。エコパーク推進課という課の体制をとったことで非常に力を入れているというふうに外部の方から評価していただく場面も多いんですけれども、かといって、自治体の職員ですから、未来永劫ずっとそれに関わることができるかという部分での知見やノウハウや人脈の継続性という意味では非常に今後に向けた課題となります。
 自治体の中で取り組むべきことは、当然日本の場合は基礎自治体が中心となってBRの取組を進めるといういい部分があるわけですから、それを生かしながらも、専門的な部分ですとか、松田先生がおっしゃったように、誰か1人張りつくだけでも全然違うという部分が非常に大きいと思っていて、そうですね、BRプロパーと言っていいんですかね、ずっと携わることのできる立場の人というのを置きながら、町の行政と両輪になって取り組むような、ちょっと行政とは一種独立した組織みたいな体制づくりというのが今後必要だなということで、町の中でもそういう議論はしていますが、なかなか全体の理解を得ていくというのは、大野先生がおっしゃたように、いろいろ予算のことも含めて、理解を得ていくのは大変なことだと思いますけれども、今日ジオパークではもう既にそういうことが当然必要だと認められているんだよということは、一つ大きなアピールをさせてもらいながらやっていきたいなと考えています。
 国際的な対応とかもこれから本当に大事で、SDGsとか、貢献していこうといったときに、英語のできる事務局員とか、もう挙げればきりがないほど必要なこと、やりたいことはいっぱいあるんですけれども、まだまだ一つ一つクリアしていかなければならないというような状況です。
 以上です。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 「祖母・傾・大崩」の方からいかがでしょうか。
【祖母・傾・大崩BR】  今日はどうもありがとうございます。私は大分県庁で自然保護推進室の室長をしております橋本といいます。
 実は今「祖母・傾・大崩」というのは2県、宮崎県と大分県、2県6市町で構成しております。先ほどの議論にもありました複数構成のBRでございます。今大分県の当番、当番というか、事務局で私が今事務局長という役を仰せつかっております。
 実は今日の話の中で、ちょっとふと思ったのが、先月なんですけれども、宮崎県の高千穂町で、実は宮崎県は高千穂と日之影町というのが世界農業遺産と重なっているエリアなんですね。世界農業遺産とBRの協働ということで、中学生サミットというのをやっていまして、私はそれに参加して話をいろいろ、若い人材というんですかね、若い中学生のいろいろな活動、先ほどから話が出ている、やはり郷里、これ非常に大事だな、重要なことだなということで、改めて思ったんですけれども、実は私は県庁生活の中で地域振興という仕事をいろいろやっていまして、地域振興というのはやはり人づくりだというふうに言われております。やはりこのBRの活動も、その郷里という視点を重ねて考えると、やはり地域振興、人づくり、BRもやはりそういった郷里という部分が非常に重要だなと。しかも、やはり郷里というのは時間がかかるので、何かものをつくってそれが売れればいい、観光資源として人が来ればいいという話じゃなくて、やはり息の長い活動としてしっかりやっていかないといけないなというのを今まさに今日の話で痛感をいたしました。
 それと、ついでにもう一つ、複数市町村で構成している、自治体が構成しているBRということで、非常に話も出ましたけれども、運営体制に苦労しております。うちの方も2か月に1回2県6市町の自治体会議というのをずっとやっているんですけれども、やはり一つのことを決める、あるいは、予算を決める、なかなか複数の市町村の合意形成といいますか、そういったことに時間を要する、あるいは、エネルギーを使うなということで、今うちは登録されて2年目なんで、まだまだ試行錯誤しながら、本当に機動的といいますか、やりやすい運営体制というものをまだ今試行錯誤でいろいろ議論していますので、またいろいろ皆さん方からアドバイスを頂けたらと思います。
 今日はどうもありがとうございます。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 各BRの代表の方から御意見いただきましたけれども、それも含めて分科会の委員の方から何か御意見ございますでしょうか。
【吉田委員】  よろしいでしょうか。
【礒田主査】  お願いします。
【吉田委員】  今大分県庁の方がおっしゃられたことはまさにそのとおりだなと。今週の月曜日にちょっと鹿児島に出かけて、生物多様性の認知度の話をしていたんですけれども、やはり世代間によって全然違うだろうと。生物多様性といっても、子供たちの教科書には出てくるけれども、我々世代のころには出てこなかったので、もう認知度というのは自然に上がっていくと。BRにしろ、ジオパークにしろ、いろいろなものが、認知度というのはやはり子供のところで、教育のところであると、その次の世代にはもう当たり前のことになっていく、違う価値観が生まれていくんだなということを非常に強く認識しました。今日の報告、一連のものを見ていて、やはり教育は時間がかかるので、短期的な成果を求め過ぎないということは非常に重要だなということを感じました。感想ですけれども。
【礒田主査】  ありがとうございます。
 ほかはございますか。
【大野委員】  済みません、これもコメントなんですけれども、教育をしていくうちに、していく中で、やはり自治体の関わりというのは必要不可欠だと思っています。なぜかというと、いろいろなステークホルダーが一緒に連携して一つの組織を使って、一つの目的達成に向けて頑張りましょう、それが大変大事なんですけれども、大変難しいということも実感としてあります。教育が大事といったときに、どう公教育の中にそれを落し込んでいくかというところがキーになってくると思うんですけれども、BRの場合ですと、大学連携というのはうまくできるんですけれども、小・中学校のところがどうしても手薄になるというお話が今日出てきたんで、となると、各自治体の教育委員会に対して、その活動に対する理解を頂き、総合学習の中に自然環境学習をやっていくとか、地域のことをより深く学ぶ中にBRやジオパークの考え方を入れていくということの協力を得ないと、やはり実現が難しいと思っています。
 ですから、今日水谷先生からお話をいただきましたが、じゃあ、ほかの自治体ではやっているのかという話になると、またちょっと話が変わってきますので、自治体を含めた連携と理解ですね。ですから、目的は教育をすることによって将来地域でどうしていくかというところに関する共通理解や、もうちょっと理念みたいなものは、みんなで合意していれば、それに向けて私たちは何ができるだろうかという捉え方になっていくんです。美しい話ではあるんですけれども、それを自分としてこの部分は頑張るという役割分担が見えてくれば、異なるステークホルダーも一つの目標に向けてみんなで協力し合って活動できていく、そういう何か共通のスローガンみたいなものとか、あとは、理念みたいなものを共有していくというのが大事かなというふうには思いました。
【礒田主査】  ありがとうございました。
 それでは、ちょっと時間も押しましたので、これで意見交換を終わりたいと思います。貴重な御意見ありがとうございました。
 それでは、本日頂いた御意見につきまして、次回分科会に向けて事務局でまとめてもらうようお願いいたします。
 本日用意をしております議題は以上ですが、このほか特に報告、議論すべき案件はございますでしょうか。
 それでは、今後のMAB分科会の予定について事務局から説明お願いいたします。
【秦国際統括官補佐】  次回の分科会、先ほど議題の中でもちょっと申し上げましたけれども、3月20日の水曜日午後3時からの2時間で、場所はここの同じ会場の予定をしておりますので、よろしくお願いいたします。
【礒田主査】  それでは、本日はこれで閉会いたします。御多忙の中、御出席いただき、ありがとうございました。


<注釈>
1.エコトーン(ECOTONE)は、沿岸域及び陸水域のエコトーン(生態移行帯)の管理に関するセミナーを指す。文部省信託基金により1992年に開始されたMAB事業のひとつ。沿岸域及び陸水域のエコトーンの管理に関する知識、研究成果の交換、及びエコトーンの修復を目的とした事業で、2001年まで10回、東・東南アジア地域セミナーとして開催された。


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