第37回ユネスコ総会 コミュニケーション・情報委員会(11月12~13日)主な議論の概要報告

1.2014-2017年事業・予算(37C/5)
○主要事業(MP)、戦略的目標(SO)、主要活動ライン(MLA)、期待される成果(ER)の関係について事務局から下記のとおり説明。

 ◆主要事業5(コミュニケーション・情報)

◎戦略目標9:表現の自由、メディア開発及び情報・知識への普遍的なアクセスの促進

MLA1:表現の自由、報道の自由及びジャーナリストの安全を確保できる環境の推進、多元主

義及びメディアへの参画の促進、持続可能かつ独立したメディア組織の支援

MLA2:ユニバーサルアクセス及び情報・知識の保存の確保

   <プログラムの再配置>

   以下のプログラムは、主要事業5へ再配置された。

(1)ユネスコ記憶遺産(MoW)事業

(2)教育・科学・文化のICT

(3)公開教育リソース(OER)事業

(4)グローバル・オープン・アクセス事業

○これに対し、各国からの主な発言及び事務局からの回答は以下のとおり。
・我が国からは、知識基盤社会の形成に当たり、コミュニケーション・情報の役割は極めて重要であり、ADGの強いリーダーシップの下、他局との緊密な連携を図りながら事業を実施していく必要性、特に教育のICT活用における教育局との連携や、文化多様性への対応といった観点からのMoW事業の推進について発言。事務局からは、ICT教育については教育局と合同ワーキング・グループを設置して取り組んできており、引き続き連携を図っていく旨回答。
・各国からは、表現・メディアの自由、ジャーナリストの安全、知識へのアクセスに関する取組、IPDC、IFAP、MoW事業、ICT事業の重要性について指摘される一方、表現の自由やジャーナリストの安全等に関する事業への低い予算配分に対する懸念について表明。

2.世界情報社会サミット(WSIS)実施に関するDG報告
○各国より、WSIS+10(世界情報社会サミット)レビューイベントにおけるファイナルステートメント「万人のための情報と知識:拡大ビジョンと新たなコミットメント」を支持する発言が多くなされた。我が国からは、ユネスコの得意分野を生かした取組により、知識基盤社会の形成に貢献していくことを期待する等の発言を行った。そのほか、各国からの主な発言として、多言語主義、サイバースペースガバナンスの問題、ICTの活用の促進等が今後の問題(仏)、ポスト2015年開発アジェンダに位置付けていくべき(仏、デンマーク、スウェーデン、ポルトガル、独、露、コロンビア)、WSISのフォローアップにおいては、サイバースペースの安全や国際的なガバナンスの問題に取り組んでいくべき(中)、情報格差の解消に向けた取組を更に進めるべき(チュニジア、コロンビア)などの発言があった。

4.文書遺産の保護及びアクセスに関する規範設定文書の必要性に係る技術的、財政的及び法的側面に関する予備研究
○記憶遺産事業の強化のための法規範設定の必要性について、執行委員会等での、新たな法規範設定の必要性の有無や、勧告という形での設定の可能性等についての議論を踏まえ、本総会において審議が行われた。
○我が国からは、記憶遺産事業の重要性は理解しつつ、一方で、事業実施に当たっての国際協力の促進や候補申請システムの改善方法、規範設定文書作成の意義及び緊急性、財政面への影響について質問し、事務局からは、3年以上かけた専門家による検討において規範設定文書の作成が必要との結論に達したことや、緊急的な保護措置を取らなければ、重要な価値を持つ多くの記憶遺産が消滅する危険があると考えているとの回答があった。各国の主な発言としては、文書遺産保護のために強い規範設定が必要(チリ、カンボジア)、財政的な制約などの観点からも規範設定は勧告の形式が適当であり、実行に移す時期に来ている(ポーランド、韓、独、英、キューバなど15か国)、文書遺産のコピーの問題への対応が必要(スイス)などの発言があった。
○議論の結果、文書遺産の保護及びアクセスに係る勧告案を第38回総会にかけるように事務局長に勧める決議案は採択された。

5.インターネット関連問題:情報社会の情報・知識へのアクセス、表現の自由、プライバシー及び倫理等
○第192回執行委員会(平成25年10月)において、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、キューバ、インド、ペルー、ロシア及びベネズエラの提案により、「サイバースペースにおける倫理とプライバシー」が追加議題となり、第37回総会においてサイバースペースにおける倫理及びプライバシーに関するマルチステークホルダー・イベントの日程、宣言・憲章等の規範設定手続の適否に関する報告及び実施計画の提出など、ユネスコのマンデートの範囲内でインターネット・ガバナンスに対するユネスコの支援を要請する提案について議論が行われたが、総会への事務局からの資料の提出については、規範設定の適否を示す文書の提出は困難とされ、本件に係るこれまでの議論をまとめた文書を総会に提出することとなった。執行委員会での議論を受け、総会においては、決議案の共同提案国や途上国を中心に、ユネスコが規範や政策の策定を積極的に主導することを期待する趣旨の発言がある一方、欧米諸国を中心に、規範設定に関する早急な審議は避けるべきであり、より慎重な議論や研究が必要との指摘や、他の国際機関でのインターネット・ガバナンスに関する審議との整合性が重要との指摘があった。
○決議案については、作業部会が設置され、同部会でのコンセンサスを得た決議案が採択され、ユネスコのマンデートにおけるインターネット関連についての包括的調査の準備を求めること、また進捗状況について第196回執行員会において報告すること等が決定された。

お問合せ先

国際統括官付