第37回ユネスコ総会について(結果概要)

平成25年11月29日
文部科学省
国際統括官付

第37回ユネスコ総会について(結果概要)


 平成25年11月5~20日にパリのユネスコ本部において、第37回ユネスコ総会(隔年開催)が開催され、我が国からは、上野文部科学大臣政務官が政府代表として出席し、各国からは元首級5名・閣僚級140名以上を含む3,000名以上の出席があった。
 国内委員会からは、田村会長、佐藤副会長、金澤副会長が出席し、下記のそれぞれの議題の審議において積極的に発言した。


【主要ポイント】

◆一般政策演説
 上野政務官から、持続可能な開発のための教育(ESD)の一層の推進を強調するとともに、「ESDに関するユネスコ世界会議」への各国閣僚級の出席の呼びかけ等を述べた。

◆持続可能な開発のための教育(ESD)
 次期中期戦略案及び事業・予算の中で明確に位置付けられた。「国連ESDの10年」の後継プログラムが採択された。ESD関連議題の決議及び閣僚級朝食会等を通じて、各国閣僚級の世界会議出席を要請。

◆サステイナビリティ・サイエンス
 次期事業・予算の中で明確に位置付けられたほか、多数の国から重要性に対する発言があった。サイドイベントを通じて、重要性について理解促進が図られた。

◆ボコバ・ユネスコ事務局長の2期目再任
 ボコバ事務局長が、次期事務局長として再任された(任期4年)。

1.今次総会の概要

1.一般政策演説

 我が国からは、上野政務官が政府代表として一般政策演説を行い、2015年以降の教育アジェンダでリーダーシップをとるよう要請したほか、持続可能な開発のための教育(ESD)の一層の推進について述べ、来年11月に愛知県名古屋市と岡山市で開催する「ESDに関するユネスコ世界会議」への各国閣僚級の出席の呼びかけを行うとともに、サステイナビリティ・サイエンスの推進の必要性等について述べた。

2.2014-2021年中期戦略/2014-2017年事業・予算

 来年からの8か年の中期戦略案と4か年の事業・予算案が審議された。事業・予算について、来年からの2か年の予算は、現行予算と同額の653百万米ドルとされたが、米国の資金拠出が再開されない場合を想定した507百万米ドルの収支計画もあわせて採択された。また、中期戦略については、科学分野の事業の具体的な内容は、来年春の第194回執行委員会にて修正案を審議、必要に応じて第38回総会において修正されることとなった。

3.持続可能な開発のための教育(ESD)

(1)次期中期戦略案及び事業・予算の中で明確に位置付けられたほか、「国連ESDの10年」(2005-2014年)の後継プログラムとして、「グローバルアクションプログラム」が採択され、来年の第69回国連総会へ提出されることとなった。
(2)来年のESD世界会議への各国閣僚級の出席を要請するという我が国の提案が決議案に追加され、採択された。
(3)総会期間中に、ESD世界会議に関する閣僚級朝食会をユネスコと共催し(22か国から閣僚級12名を含む50名以上が参加)、上野政務官より我が国のESDの取組を紹介するとともに、各国からの積極的な参加を呼びかけた。ESD世界会議の啓発を目的として、大村愛知県知事及び大森岡山市長の出席も得て展示イベントを開催したほか、両自治体によるレセプションを開催した。

4.ポスト2015年教育アジェンダ

 我が国より、ポスト2015年開発アジェンダに教育を積極的に位置付けるというユネスコの姿勢を評価するとともに、必要な場合にポスト2015年教育アジェンダの中にダカール行動目標に相当する教育固有の枠組みを作成すること、第194回執行委員会で本教育委員会での議論のフォローアップと進捗状況を報告することを求めた。その結果、2015年までの各執行委員会に進捗状況をユネスコ事務局が報告する旨決議に盛り込まれた。事務局からは、引き続き国連で議論されているポスト2015年開発アジェンダへの教育の位置付けに注力し、ダカール行動枠組みのようなものを作るかどうかは今後検討する旨説明があった。

5.高等教育に関するグローバル条約の策定
ノルウェーを始めほとんどの国が、グローバル条約の策定を支持したが、我が国とドイツは各国・地域における高等教育制度の相違や、資格の承認に係る制度の発展の差が大きい現状を鑑み、本規範文書は勧告等法的拘束力を伴わない形式が適当であると決議案の修正を主張。その後、日、独、米、ノルウェーで構成される小グループがまとめた「条約策定を目指したプロセスを開始する」旨の決議案が採択された。今後、事務局で検討の上、条約を策定するかどうかは、2年後の次期総会で決定される予定。

6.サステイナビリティ・サイエンス

(1)次期事業・予算の中で明確に位置付けられた。
(2)自然科学及び人文・社会科学の各委員会において、我が国を含め多数の国からサステイナビリティ・サイエンスの重要性に対する発言があり、全体会合における各議長の口頭報告においても報告された。
(3)総会期間中に、ユネスコ事務局、ドイツ代表団、インドネシア代表団、チュニジア代表団等とサステイナビリティ・サイエンスの今後の推進についての意見交換を行った。特に、ユネスコ事務局、ドイツ代表団とは具体的作業手順について協議した。
(4)サステイナビリティ・サイエンスに関するサイドイベントを、11月18日にユネスコ事務局と国連大学が開催し、ボコバ事務局長の挨拶、9月のシンポジウム結果報告等を通じて、サステイナビリティ・サイエンスの重要性についての理解促進が図られた。

7.国内委員会会議

 ポスト2015年開発アジェンダへの国内委員会の貢献、若者に焦点を置いた国内委員会活動を課題に議論されたが、我が国からは、ユネスコがポスト2015年アジェンダにおける教育のあり方について明確なビジョンを示すこと、その中でESDを明確に位置付けることなどを発言した。

8.第8回ユネスコ・ユースフォーラム

(1)総会に先立ち10月29-31日に、「ユースと社会的包摂:市民参加、対話、能力開発」をテーマとしてユネスコ本部で開催され、初めての取組として、政策形成へのユースの参画、ユースの雇用に重点を置いた能力開発、市民の民主的参加等に関する総会に対する10の勧告と15のユース主導プロジェクトが採択され、総会の各委員会において報告が行われた。なお、我が国からは、代表1名とオブザーバー2名を派遣した。
(2)ユースフォーラム期間中に、我が国の五井平和財団が、「Cultural Evening:
Drumming for Youth Civic Engagement」と題して、和太鼓をフィーチャーした文化交流イベントを開催し、社会起業に関するユースの事例紹介及びコンペティションのキックオフ等を行った。

9.ボコバ・ユネスコ事務局長の2期目再任

 ボコバ事務局長が、次期事務局長として再任された(任期4年)。

10.米国のユネスコ総会投票権の喪失

 ユネスコ総会における米国の投票権の喪失が決定された。2011年のパレスチナのユネスコ加盟をきっかけとして、米国の国内法によりユネスコへの資金拠出が停止されていることによるものであるが、米国は、引き続きユネスコ加盟資格は有し、会議への出席・議論参加はできるほか、執行委員会においては、執行委員国(現行任期:2015年の総会まで)としての投票権も有する。

2.今次総会に対する評価と今後の対応 

1.ボコバ事務局長が再任されたことにより、事務局長がこの4年間に取り組んできたユネスコ改革の一層の進展が期待される点は評価できる。一方、厳しい財政事情は継続しており、総会においても各国から事業への悪影響を懸念する発言が多く寄せられた。また、事務局長の所信表明においては、財政事情は厳しいが、教育・科学・文化を通じてユネスコの果たす役割は大きく、引き続き努力をしていく旨の発言があった。我が国としても、引き続き事務局長のイニシアティブを支援していく。

2.来年のESD世界会議の啓発活動を成功裏に実施できたほか、ESDが次期中期戦略案及び次期事業・予算の中で明確に位置付けられたこと、2015年以降の枠組みが方向付けられたことは評価できる。我が国としては、来年のESD世界会議を成功裏に開催し、ポスト2015年開発アジェンダへの反映及び「グローバルアクションプログラム」を通じて、2015年以降もESDのより一層の推進を支援し、ユネスコと共にESDを国際的に主導していく。

3.サステイナビリティ・サイエンスが次期事業・予算の中で明確に位置付けられたことは評価できる。我が国としては、来春の第194回執行委員会で決定される中期戦略にサステイナビリティ・サイエンスを明確に位置付けるとともに、今後ユネスコが、サステイナビリティ・サイエンスのアプローチによる具体的な取組を実施し、地球規模課題に対してより効果的に対応できるよう引き続き主導・支援していく。

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