日本ユネスコ国内委員会 文化活動小委員会(第122回)・コミュニケーション小委員会懇談会 議事録

日時 

平成25年7月19日(金曜日)10時00分~12時00分

場所

文部科学省 (中央合同庁舎第7号館) 東館15階会議室

出席者

(委員)
今井義典、岡田保良、川井郁子、河野俊行、西園寺裕夫、佐藤禎一、林梓、吉見俊哉、林原行雄〔敬称略〕

(関係省庁)
外務省:長嶋外務報道官・広報文化組織国際文化協力室長
文化庁:中野長官官房国際課国際文化交流室長、守山文化財部伝統文化課文化財国際協力室長補佐、田中文化財部美術学芸課長補佐、草野文化庁文化財部記念物課専門官ほか関係官

(事務局)
加藤国際統括官、籾井国際戦略企画官、堀尾ユネスコ協力官ほか関係官

議事

【西園寺委員長】  それでは,定刻になりましたので,始めさせていただきます。皆様,御多忙のところお集まりいただきましてありがとうございます。事務局から定足数の確認をお願いいたします。
【堀尾ユネスコ協力官】  本日は出席委員が,文化活動小委員会の委員が7名,コミュニケーション小委員会の委員が4名となっております。文化小委員会においては委員の過半数6名以上を満たしておりますが,コミュニケーション小委員会においては委員の過半数7名を下回っておりますので,定足数が満たされていない状態となっております。
【西園寺委員長】  本日はコミュニケーション小委員会におきましては定足数を満たしていないということで,懇談会形式で開催したいと思います。コミュニケーション小委員会においては公式な会議になりませんので,コミュニケーション小委員会としての決定は行いません。
 よって,本日,審議事項である議題4,第37回ユネスコ総会への対応については本日の議論を基に改めてコミュニケーション小委員会委員宛てにメールにて審議させていただき,その上でコミュニケーション小委員会としての決定を行うこととしたいと思います。
 また,第131回総会において会議の公開手続が改正され,同手続は小委員会等においても準用することとされておりますので,本小委員会においても原則インターネット等で開催の案内を行うとともに,本小委員会は原則として公開することとされております。会議の報告書については,これまでは議事要録でしたが,今回の改正に伴い公開部分は議事録となります。
 なお,コミュニケーション小委員会においては本日の会議は懇談会となりましたが,準用して会議を公開して行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,ただ今から第122回文化活動小委員会及びコミュニケーション小委員会懇談会を始めます。
 なお,今回の議事進行については,前半をコミュニケーション小委員会委員長である私が行い,後半を文化活動小委員会委員長であります河野委員長にお願いして進めたいと思います。
 それでは,議事に先立ちまして,本年2月13日の総会以降,委員及び事務局の異動がありましたので,事務局から御報告をお願いしたいと思います。
【堀尾ユネスコ協力官】  それでは,委員の異動について御報告させていただきます。
 昨年12月1日付けで新たに国内委員に御就任されました,国士舘大学イラク古代文化研究所長の岡田保良委員が文化活動小委員会に配属されております。
【岡田委員】  岡田でございます。よろしくお願いいたします。
【堀尾ユネスコ協力官】  それから,国立女性教育会館理事長の内海房子委員がコミュニケーション小委員会に配属になられましたが,本日は所用によって御欠席となっております。
 また,再任として足立直樹委員,河野俊行委員,林原行雄委員が引き続き御就任いただいております。
 それから,本年2月15日付けで鈴木寛参議院議員が国内委員に御就任され,コミュニケーション小委員会に配属されました。また,本年3月1日付けで萩生田光一衆議院議員及び村上政俊衆議院議員が国内委員に御就任されております。
 萩生田委員及び村上委員の配属については,本年9月の日本ユネスコ国内委員会総会で議決されますが,萩生田委員は文化活動,村上委員はコミュニケーション小委員会の活動に御関心があるということで,本日の会議についても御案内をさせていただいているところです。
 ただし,国会議員の3名の委員の方々におかれては,本日は所用により御欠席となっております。
 また,青柳正規委員が本年7月8日付けで文化庁長官に就任されたことに伴い,同日付で国内委員を辞任されておりますので,御報告させていただきます。
 続きまして,事務局の異動です。本年3月31日付けで大臣官房国際課国際協力政策室長の浅井孝司が異動となり,4月16日付けで国際統括官付国際戦略企画官に籾井圭子が着任いたしております。
【籾井国際戦略企画官】  籾井と申します。よろしくお願いいたします。
【堀尾ユネスコ協力官】  以上でございます。
【西園寺委員長】  ありがとうございました。
 続いて,本日の会議の配付資料について事務局から御説明お願いいたします。

(事務局より配付資料について説明)

【西園寺委員長】   それでは,議題1に入りたいと思います。前回会議の議事要録をお手元に配付させていただきました。
 事前に照会をし,内容を確認していただいた議事要録です。なお,事務局には特段の意見は頂いておりませんでしたが,万一お気付きの点があれば事務局まで御連絡を頂きたいと思います。
 続いて,議題2,報告事項に入ります。前回の国内委員会総会以降の日本ユネスコ国内委員会の文化・コミュニケーション分野に関して,事務局から報告をお願いいたします。
【堀尾ユネスコ協力官】  それでは,資料番号文化委122・コミュ懇25.7-2を御覧ください。こちらの方に前回の国内委員会総会,2月13日以降のユネスコ活動,文化・コミュニケーション活動についてまとめております。
 ただし,この後の議題3の方で詳しく世界遺産及び無形文化遺産,文化多様性,ユネスコ記憶遺産については報告させていただきますので,ここでは省略させていただきまして,5ページの国際会議一覧表について少し補足説明をさせていただきます。
 こちらの方も各ユネスコで行われた国際会議を一覧としてまとめておりますが,この中で文化財不法輸出入等禁止条約,いわゆる1970年条約について臨時締約国会議と補助委員会が行われましたので,御報告させていただきます。
 以上です。
【西園寺委員長】  今,最後にお話のあった文化財不法輸出入等禁止条約に関して,今回,河野先生がパリでの会議に出席されておりますので,非常に重要なテーマだということでございますので,簡単に御報告を頂けますでしょうか。
【河野委員長】  この二つの会議に出席してまいりました。7月の第1週でございましたので,かなり近々なことでございますので,口頭で簡単に御報告いたします。
 18か国が委員国で選出されましたが,ほとんどが発展途上国でございまして,先進国で入りましたのは日本とイタリアでございます。期待しておりましたカナダが落選いたしまして,イタリアは日本とはちょっとスタンスが違うところもございますので,これから大変厳しい4年間になろうかというふうに考えております。
 実はお金がないのでありますけれども,今後,ドナーが見つかれば,これから頻繁に開催されていくことになろうかと思っておりまして,日本の国内対応に関しましてかなり難しい判断が迫られる場面が出てこようかと思っております。
 取りあえず,簡単ですけれども,御報告させていただきます。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。
 それでは,世界遺産,無形文化遺産,ユネスコ記憶遺産事業及びクリエイティブ・シティーズ・ネットワークについては,後ほどの議題で詳しく御説明をいたします。ここまでで,皆さん,御質問,御意見等ございましたら。いかがでございますか,よろしくお願いいたします。
 特にございませんようでしたら,次の議題に進ませていただきます。議題3,ユネスコの主な文化・コミュニケーション活動について,(1)世界遺産についてでございます。
 ユネスコの文化・コミュニケーション活動に関する最近の活動についてということで,その1番目の世界遺産関係として,世界遺産委員会に関して外務省外務報道官・広報文化組織の長嶋国際文化協力室長から御報告をお願いいたします。
【長嶋国際文化協力室長】  今回の世界遺産委員会では,御承知のとおり富士山の登録が我が国にとっては大変な注目を浴びましたし,重要な事項であったのですが,それは文化庁から後ほど詳しく説明があると思いますけれども,全体としての概略を御報告申し上げます。
 今回はカンボジアのプノンペンで6月16から27日にかけて世界遺産委員会が開催されました。議長はホスト国カンボジアのソク・アン副首相が個人の資格で議長をされました。
 ここにもございますように,日本からはユネスコ日本政府代表部の木曽大使,近藤文化庁長官,石野文化庁文化財部長ほか,外務省,文化庁,環境省,林野庁,国土交通省といった各関係省庁の担当官が出席いたしました。
 世界遺産一覧表に,今回,新しく記載された物件は19件ございまして,これまで記載されたものと合わせますと全部で981件になりました。したがいまして,恐らく来年は1,000件を突破するのではないかというような見込みになっております。ちなみに内訳は,自然遺産が193,複合遺産が29,文化遺産が759という内訳になっております。
 それから,今回初めて世界遺産を持つことになった国が3か国ございまして,レソト,フィジー,カタール,この3か国が新たに世界遺産を保有することになりました。結果として,世界遺産の全くない国が30か国ということになっております。
 それから,報道でも出ておりますように,今,シリアが内戦中ですけれども,シリアの遺跡が破壊されているという報道もございましたが,今回,シリアにある6件,世界遺産全てが,国際的な支援を要する危機遺産リストに記載されることになりました。
 それから,別途,ソロモン諸島のサンゴ礁の島ですけれども,それも危機遺産リストに登録されるということで,新たに7件が国際的な支援を要する危機遺産リストに記載されるということがございました。
 それから,逆にイランの世界文化遺産で,「バムとその文化的景観」というのが数年前の大地震で被害をかなり受けたのですが,それ相応の措置がとられ,一応,危機遺産からは脱するということで,危機遺産リストは七つ増えて一つ減るということで,今,全体で44件が国際的な支援を要する危機遺産リストに登録されております。
 ちなみに,現段階で世界遺産の保有数ですけれども,イタリアが一番多くて49件,中国が45件,スペインが44,フランスが38,ドイツも38,メキシコが32,インドが30,イギリスが28,ロシアが25ということで,日本は17で13位と,余りランク付けするつもりはありませんけれども,各国の物件の保有状況ということで御参考までに申し上げました。
 以上,簡単ですけれども,全体像でございます。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。テレビで拝見していて,木曽大使と近藤長官が何か万歳して喜んでおられるのが非常に印象に残っておりますけれども,三保松原も含めて登録されたということ,大変おめでたいニュースだと思います。
 ちょっと私から質問が一つあります。危機遺産というのは世界遺産,自然遺産,文化遺産の中でどういうカテゴリーに当たるものですか。
【長嶋国際文化協力室長】  世界遺産ではあるのですけれども,保存とか,保全状態に対して国際的な支援を要する状況にあるものです。
【西園寺委員長】  そうすると,世界遺産の中で,そういう危機的なものをピックアップして危機遺産として登録するということですか。
【長嶋国際文化協力室長】  危機遺産に対してはいろんな手当てがされて,危機遺産でなくなったものは普通の世界遺産に戻ることになります。
【西園寺委員長】  また,回復すると。
【長嶋国際文化協力室長】  そういうことです。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。
 続いて,世界文化遺産関係として,文化庁の記念物課草野専門官から御報告をお願いいたします。
【草野専門官】  記念物課草野でございます。私の方から富士山の世界遺産登録について御報告申し上げます。
  先ほど委員長からもテレビで見られたというふうなお話がありましたが,今回からウェブのカメラが入りましたので,報道でもかなりいろんな絵が出ているのを恐らく御覧になったのかなと思っております。
 この富士山でございますが,5月のICOMOSの勧告において記載という形でお墨付きを頂きました。三保松原については,距離との関係でございますが,45キロ離れているということで,富士山の価値としては一体に見られないのではないかということが指摘され,三保松原を除外した形で富士山は登録すべきだという形でICOMOSからは勧告いただいておりました。
 それを受けて,外務省,文化庁,関係省庁,林野庁,環境省で検討いたしまして,これまた報道でも出ておりましたが,我々の作っておりますパンフレットの中の曼荼羅(まんだら)図ですとかが示すように,三保松原から見る富士山は信仰の対象ですとか,そういったものとやはり関係があるのだという形で,近藤長官,それから木曽大使も委員国へ御理解いただくよう説得を続けてまいりました。やはり価値というものがあるのであると,そのところを御理解いただくよう御説明にも上がって,実際の審議では非常に多くの委員国から価値というものをお認めいただいて,三保松原も含めて記載をすべきだという御意見を頂いたところでございます。
 ただ,富士山については,同時の勧告におきまして,かなり宿題も頂いているところでございます。2016年,3年後の2月1日までに管理計画,これまたいろんな報道でも出ておりますが,登山者や開発の問題といったものがございまして,それをコントロールしていくべきで,それについての管理計画をしっかり作りなさいですとか,そういったもののモニタリング,ガイダンス施設の設置とか,しっかり保全していくための措置というものをきちんと措置し,それについて報告しなさいという形で勧告を頂いているところでございますので,今後関係省庁,それから地元の自治体等含めて,しっかり管理して,対応していきたいと思っております。
 簡単ではございますが,以上でございます。
【西園寺委員長】  何か今日のニュースでは,夏以外の入山は禁止するみたいな案が出ていると言われていましたね。
【草野専門官】  ええ,その一環かと思っております。入山料の話ですとか。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。世界遺産関連として,もう一つ事務局から御報告をお願いいたします。
【堀尾ユネスコ協力官】  資料の文化委122・コミュ懇25.7-4を御覧ください。世界遺産委員会の開催前に当たる6月8日~17日にカンボジアのユネスコ国内委員会の主催により,国際世界遺産ユースフォーラムというものが開催されました。
 カンボジアの国内委員会からユース,今回,これが18歳~20歳という対象が設けられたのですが,各国1名の派遣について招待がありました。急な依頼であったこともあり,また,昨年11月に京都で行われました世界遺産条約採択40周年記念最終会合にも御協力を頂きました河野委員長,西村委員,稲葉前委員に御相談させていただきまして,その結果,九州大学法学部3年生の古屋雄貴さんに今回,ユースフォーラムに御出席いただいたところです。
 このユースフォーラムは16か国36名のユースが参加し,参加者間で世界遺産の保全についてワークショップやグループディスカッションを行ったほか,アンコールワット遺跡等を訪問し,成果としてステートメントがまとめ上げられました。そのステートメントが第37回世界遺産委員会のオープニング式典において発表が行われたところです。
 現在,日本ユネスコ国内委員会でも我が国におけるユネスコ活動の活性化について議論が行われており,若い世代,ユースにユネスコ活動にどのようにコミットしてもらうかという点も議論しておりますところ,古屋さんの報告も今後の検討の参考にさせていただきたいと思っております。
【西園寺委員長】  ありがとうございました。古屋さんから資料4のとおりの参加報告書を頂いておりますけれども,御本人から直接御報告を受けておられる河野委員長から補足の御説明を頂けますでしょうか。
【河野委員長】  この資料に基づきまして,若干,御報告させていただきたいと思います。
 18~20歳ということで大学3年生までだったので,対象者がどれだけいるかというのをちょっと心配したのですけれども,実はこの春に文部科学省の大学の世界展開力強化事業というのに採択されたプロジェクトを動かしておりまして,学部生をできるだけ外に出すという事業をやっております。それの派遣対象になった学生で,英語のコミュニケーションの問題のない学生を対象に募集をかけましたところ,数名応募がございまして,急きょ,面接をいたしまして,派遣する前に宿題を課すけれども,する気はあるかというので確認いたしまして,この古屋君を選びました。
 派遣されましたのは6月8日から17日でございまして,派遣する前まで毎週,英語のレポートを課しまして,世界遺産のことを勉強していただきました。プレゼンも3回ほど駄目出しをいたしまして,これで良かろうというものを最後の直前までに仕上げてもらいました。
 参加したプログラムは7ページ以下にかなり詳細なものがお手元にあるかと存じますけれども,ざっくり申しまして,初めの二日間はレクチャーを受ける。それから,三日目からサイトビジットを行い,帰ってきて,またグループディスカッションをするというものであったようでございます。帰ってから本人に聞きましたところ,大変充実したものであったということで,行って良かったと言っておりました。
 初めのレクチャーをやって,それからグループディスカッションに入っていくのですけれども,グループがしょっちゅうシャッフルされて常に新しいグループになっていく。最後のクロージングに向けて,だんだんと質問だとか,議論すべきポイントが絞られていくわけですけれども,そのたびにグループをシャッフルして,新しいグループでもう一回考えてみるという極めて興味深い企画であったようでございます。
 このプログラムが終わった後,更にユースのステートメントをドラフトするというので夜中まで一緒にやるという,文字どおり朝から寝るまでということで組まれていたようでございます。
 かなり盛りだくさんであったようで,各国の世界遺産の状況をプレゼンして持っていくようにという課題について,もう少し議論が深められる時間があれば良かったということを本人は申しておりました。
 先ほど堀尾さんからございました,今後どうやって若者を引き付けていくかということでございますけども,こういうワークショップをもう少し規模を小さくしてやる,あるいはどこかの大学と組んでやるというのが一つあり得る方策かなというふうに思っております。1か所に1週間なり,10日なり,これ,国内の学生を集めてやるのも可能性としては十分あると思っておりまして,ステートメントはできたのですけれども,一緒に集中した時間を過ごすというプロセスが極めて良かったということでありますので,同じようなことは企画できるかなと感じました。
 ステートメントそのものは,11ページ以降にございます。テーマがLiving Heritage:Temple, Environment and Peopleとなってございますので,そこの枠の中で一生懸命考えていい文章が採択されたのではないかというふうに感じております。
 この件に関しましては,事務局,特に中馬さんからは多大なサポートを頂戴いたしましたので,この場を借りましてお礼を申し上げたいというふうに思います。
 以上でございます。
【西園寺委員長】  ありがとうございました。
 それでは,今のお話も含めて,先ほどの外務省及び文化庁からの報告も併せて,世界遺産関係の報告ということで何か御質問はありますでしょうか。どうぞ,林委員。
【林委員】  去年の会議でも言ったのですが,シリア情勢がますます難しくなってきて,恐らくレバノンやヨルダンにも波及し,さらに,あの辺はシリアも特にそうですが,人類の文明の遺産があるわけです。だから,ユネスコの方で次の総会でも,非常に難しい状況でありますけれども,紛争の両当事者,政権側と反政府側に,世界遺産に十分配慮するように,そういう呼び掛けを行うべきかと思います。去年,確かユネスコが1回やっていますね。それをまた繰り返してやるように,日本が少しイニシアチブを取られたらどうか。
 シリアというのは,日本が長いこと大事にしてきて,助けてきた国で,今,難民が,向こうの新聞だから分かりませんけれども,ルワンダの事件と同じぐらいの難民が出ているという話になっています。そういう教育面での教育もできれば一番いいのでしょうけれども,予算等もいろいろあるでしょうから,少なくとも遺産の保存に関してユネスコが呼び掛けを行う,その際に日本がイニシアチブを取る国の一つになることが歴史的にも僕は非常に重要な気がします。
 以上です。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。大変貴重な御意見だと思います。具体的な手順としてはどういうものですか,前回はどういう形で,そういう働き掛けをしたのでしょうか。
【長嶋国際文化協力室長】  シリアについては非常に政治的に微妙な問題もあるので,関係国と相談しながら進めていかなければいけないと思いますけれども,マリでもそうですが,関心国が集まって問題提起して,事務局と相談しながら進めていくという,プロセスとしてはそのような形になると思います。もちろん世界遺産を紛争の中にあっても守っていかないといけないというのは,元々,条約にあるわけですから,そういう方向に代表部とも相談していければとは思っております。
【林委員】  紛争は150年たつか,100年続くか分かりませんけれど,しかし,何千年も続いてきた世界遺産が一回失われたらおしまいですので,それを僕はちょっと憂慮しています。分かります,政治的な取組は難しいとは思いますが,そういうことはみんな関心があるわけだから,ヨーロッパの国とか,そういう国と話をされて,有志国が集まって働きかけて,ユネスコの事務局に決議案を書かせて,それを出せば誰も反対しないでしょう。
【河野委員長】  今の件に関しまして,バーミヤンの後にユネスコが文化財の意図的破壊のケースに関してレコメンデーションを採択しておりまして,私,その起草のときに関わったのですけど,あれをもう一回引っ張り出して使うとか,リバイズするとか,そっちの方が新たに起こすよりは動きやすいかもしれません。ちょっと御検討いただければと思います。
【林委員】  そうですね。これまで経験がいろいろあると思いますよ。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。
 ほかに世界遺産関係。どうぞ。
【佐藤委員】  このユースフォーラムというのは非常にいい試みで,若い人たちがこういう仲間に入ってもらうという意味では良かったと思います。でも,出された最後のステートメントというのは,これっきりということになるのじゃ,何かもったいないような気がしますけど,今後,世界遺産委員会はこういうユースフォーラムみたいなことを続けていくのでしょうか。たまたまカンボジアで考えただけということになるのか,次の開催国が考える話なのか,分かれば教えてください。
【長嶋国際文化協力室長】  そうですね。最近はロシアのときにも,ユースフォーラムと言ったかどうか確かではないですけれども,別途若い人のグループで若い世代がどう考えるかというような試みを実施したのはあります。何となく最近は,いわゆる政府間会議だけでおしまいじゃなくて,そういう広がりを持ちつつあるかとは思います。
【西園寺委員長】  そうですね。今年の秋のユネスコ総会の前にもユースフォーラムがありまして,今度,2014年のESDに関するユネスコ世界会議の前にもユース・コンファレンスがあり,若者たちの意見を積極的に取り込んでいこうという姿勢は必要だと思いますので,是非,これもレギュラーなものになっていくといいんじゃないでしょうか。
 林原委員,どうぞ。
【林原委員】  不勉強で申し訳ないのですが,富士山が世界遺産に登録されて非常に結構だと思うのですけれど,登録されて具体的なメリットというのは何があるのかお教えください。いろんなメリットはもちろんあると思いますが,ユネスコからお金を頂けるとはとても思えないので,例えば日本政府から何かの補助金を頂けるというようなことはあるのでしょうか。一方,逆に負担といいますか,制約といいますか,遵守しなきゃいけないことがあるのでしょうか。
【草野専門官】  私がお答えいたします。まず,委員御質問の補助,支援,メリットでございますが,委員御指摘のとおり基金という形でもちろん条約上ございますけれども,日本にとっては,そういったメリットはございません。他方,国内的にもちろん文化庁としても補助金を出しておりましたので,そういったものがございますが,世界遺産として何かというところは実はございません。あくまでも富士山につきましても地元からどうしてもやりたいという話を頂きまして,条約自体はもちろん保存という話でございますが,やはり注目を浴びる,それから地元の誇りといいましょうか,そういったメリットがあるのではないかと思っております。
 もう一つの規制,しなければならないことという観点でございます。法律的にしなければいけないことというのは,既に推薦をする時点で,我が国としては守れるという措置をとっているところでございます。先ほど私からちょっと御報告申し上げましたが,委員会から,例えば今回の富士山であれば来訪者の管理計画ですとか,そういったものをもっとすべきだとか,あるいは奈良の平城宮でも勧告が出ているようなものがございますけれども,そういった形で世界遺産委員会側から報告を求められたり,もう少し改善を求められたりといったものは今後出てまいりますが,ただ,それは決まった何かがあるというものではございません。
【西園寺委員長】  ほかはよろしゅうございますか。
 はい,どうぞ。
【今井委員】  皆さん,よく御存じでいらっしゃるだろうと思うのですけれども,バーミヤンの際に私は日本パキスタン友好協会の理事をしていましたが,アフガニスタンと直接交渉ができなかったためにパキスタン政府に対して働き掛けをしようということで少し運動しました。その中心になられたのはもちろん平山郁夫先生でいらっしゃったのですが,ちょうど名古屋で愛知万博が行われたときで,パキスタンがガンダーラの仏像のレプリカを飾ったりして,それを最終的には鎌倉の建長寺に寄附されたのですが,そうしたきっかけの中でパキスタンの駐日大使館も積極的には動けなかったと思いますけれども,アフガニスタンのタリバンに対する影響力を行使してほしいというような要請を出したことがありました。
 シリアの場合も,現状ではなかなか現地の視察も,あるいは私の前の仕事であるマスコミの取材も難しいところだとは思いますけれども,林委員がおっしゃるように心ある人々は世界中にいると思いますので,何らかの方法を見付けていただくように,外交・文化サイドでやっていただければいいなと思います。
【西園寺委員長】  そうですね。おっしゃるとおりだと思います。
【岡田委員】  よろしいですか。初めて参加させていただきます岡田でございます。今,今井委員がおっしゃったこと,少しフォローさせていただきたいのですが,バーミヤンの際には,日本がバーミヤンの支援をするというもっと大きな枠は,国際会議で各国がどういうことをするかというユネスコが主導した会議があったのですけれども,そのときには,確か日本は十分な政府のバックアップなしで,平山先生が個人の資格で参加されたように記憶しています。
 シリアのことが先ほど話題になりましたが,やはり常に情報を取るという作業を怠らないようにして,そういう復興のプロセスに入ったときには即座に日本も貢献できるというふうな体制が組めるように,あらかじめ十分な用意をしておく必要があるのじゃないかと思います。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。
 それでは,よろしいですか。次の議題3の(2)の無形文化遺産関係について,文化庁伝統文化課,守山文化財国際協力室長補佐から御報告をお願いいたします。
【守山文化財国際協力室長補佐】  伝統文化課の守山でございます。無形文化遺産条約に関して御報告させていただきます。
 今,富士山の世界遺産登録のお話がございましたが,世界遺産委員会は毎年6月頃に開かれて,そこで新たな世界遺産が決定いたしますが,無形文化遺産条約は発効した時期の関係で毎年大体11月,12月頃に年に一度の委員会が開催されます。そこで,各国から提案された無形文化遺産の提案について審議がされるわけですけれども,その提案の締切りが毎年3月にございます。
 今年は,ちょうど3月31日が週末に当たったので,4月の初めまでに提出ということになっていたのですけれども,今年,日本としてはここにあります「和紙:日本の手漉和紙技術」というタイトルでの提案を行いました。
 今回,初めての試みとして,ちょっと今までの提案とは異なる点がありまして,次のページをめくっていただきますと,真ん中の辺りに構成というのがございまして,石州半紙,本美濃紙,細川紙というふうに三つ並べて書いてあります。実はこれまでは日本の国内で重要無形文化財として指定されているものを一件一件提案して,またそれが認められ,幾つかは登録されてきたのですけれども,加盟国も徐々に増えてまいりまして,各国からたくさんの提案が出されると,それを審査する側,あるいは事務的な処理をする事務局の側でなかなか処理が追い付かないということで,まず審査の件数が絞り込まれまして,1か国から年に1件だけ審査するということになり,また,その審査も少しずつ厳格化しているので,いろいろと検討いたしました結果,今年の和紙の提案からは,国内で同じカテゴリーに属するものはまとめて1件として提案しようということで,これが今回,日本の国内で重要無形文化財として指定されているものの一つの単位ではなくて幾つかをまとめるという,同じカテゴリーのものを一つにまとめるという意味では初めての試みの提案となりました。
 無形の提案の審査も1年と少しかけて行われますので,今年提案しましたこの和紙は,来年の11月か12月頃に開催される無形の政府間委員会で審議されることになります。
 以上,和紙の提案についてです。
 それから,もう一点,御案内を兼ねてですけれども,無形文化遺産条約は2003年に採択されまして,今年でちょうど10周年という節目の年を迎えます。先行する世界遺産条約に比べたら,まだまだ4分の1弱ですけれども,ここで少しこの条約がどのように運用されてきて,今どんな役割を果たしているかということを見直そうということで,世界各地でいろいろなイベントが今年予定されておりますが,日本は8月3日にシンポジウムを開催する予定です。
 ユネスコのカテゴリー2センター,ユネスコの名称を冠した無形文化遺産センターが日本では大阪府堺市に設置されておりまして,この堺の無形文化遺産センターが中心になり,堺市,文化庁との共催という形で10周年をお祝いするシンポジウムを開催する予定となっております。
 【西園寺委員長】  ありがとうございます。これは誰でも出席できるものですか。
【守山文化財国際協力室長補佐】  申込みをしていただくことになりますが,チラシ裏の申込用紙に書いて申し込んでいただければ,どなたでも参加いただけます。
【西園寺委員長】  佐藤委員も,松浦前事務局長も御出席でございますので,是非興味のある方は御出席いただきたいですね。ありがとうございます。
 無形文化遺産関係で何か御意見,御質問等ございますか。
【佐藤委員】  よろしいですか。これはかねて問題になっていることですけれども,無形遺産は,条約を作ったときの考えは世界遺産のときのように価値観のコンテストはしない。つまり,それぞれの国で代表的な無形に関するリストが出てきて,それが申請されれば,形式的な要件が整えば登録をしようという考え方だったわけで,そういった意味では申請数を制限するという考え方はなかったわけですが,ふたを開けたら無形文化保護の先進国である東アジアに余りに多く偏っていたということもあるかとは思いますが,結局は事務処理能力という名目の下に制限されているというのは,誠にいびつな運用がされていると思います。
 無形遺産は,日本では多分,300件ぐらい指定されているわけでしょう。ですから,一つとなると300年かかるわけですから,今回のようなグルーピングは一つの知恵ではありますけれども,もう少し大本で,もとに立ち返ってやらないと,要するに無形遺産保護条約も保護することが目的なわけで,コミュニティによって細々と守られている無形遺産というのは,早めに世界無形遺産のような形で保護体制をとっていく必要があるということを機会あるごとに主張していただくことを希望したいと思います。
【西園寺委員長】  これは,きちっと議事録の方に載せておきたいというふうに思います。今の御意見は貴重な意見でございます。
 林原委員,どうぞ。
【林原委員】  ちょっと余計なことかもしれないのですけれども,和紙ですが,和紙がすばらしいということは,恐らく浮世絵等が世界的に有名ですから世界に知られていると思うのですが,去年か一昨年,西洋美術館でレンブラントの展覧会がありまして,あのときにレンブラントの膨大な数のエッチングが来ていたんです。有名なことかもしれないですけれども,私は全く知らなかったのですが,レンブラントというのは非常にお金に困っていたんですね。ああやってエッチングをたくさん作って,売ってお金を稼いでいたのですけれども,エッチングですから何枚も同じ版画が刷れるわけです。一番高く売れて,お金持ちに売れるのは,レンブラントはちょっと黄色がかった色の和紙で刷っていたようです。
 なぜレンブラントが和紙を使っているかというのは疑問に思ったんですが,成城学園の先生の本に詳しく書いてありますけれども,あの頃はオランダだけが日本と貿易があったから,オランダは和紙を日本から取り入れられたらしいのです。
 何が言いたいかというと,和紙は必ずしも日本の浮世絵だとか,日本の絵画だけじゃなくて,レンブラントが刷っていたぐらいですから,ほかのエッチングのデューラーとかああいう有名な作者にも多分知られていたと思うので,単に日本だけじゃなくて世界的に優れた技術だということは大いに宣伝して,是非登録を実現していただいたらいいんじゃないかと思います。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。よろしいですか。
 では,次に議題3の(3)文化多様性条約に関し外務省から進捗状況の御報告をお願いしたいと思います。毎回,長嶋さんを責めるようで大変心苦しいんですけれども,やっぱり,これはきちっと国内委員会としての立場を鮮明にしておく必要がありますので,現状を改めて御説明いただきたいというふうに思います。
【長嶋国際文化協力室長】  実際問題としてなかなか進捗が乏しいため心苦しいのですけれども,国内の条約を通す関係部局と調整はずっと続けてきているのですが,問題点は二つございまして,一つは条約そのものの問題点,もう一つは多数の条約が今,国会を通す,あるいは行政取極もございまして,条約とか,投資協定とか,海外の日本の企業とか法人社会に非常に直接的な影響を及ぼすものが少なからずあって,それとの優劣関係というのが別の問題としてございます。
 文化多様性条約については,条約を所管している部局によりますと,やはり条文上の問題をなかなかクリアしにくいということで,文化多様性の保護のためには措置をとることができるという無制限な書き方になっているところが非常に壁になっていると言っているわけでございます。
 それから,ほかの協定との優劣関係。ほかのあらゆる協定に優先すると同時に優先しないというような非常に矛盾した部分,これは言葉の問題,文理解釈上の問題かもしれませんけど,そういう問題があるということで条約解釈上の問題。もう一つは,この優劣関係に響いてくるわけですけれども,条約を締結することの圧倒的なメリット,それをきちっと説明できないと法制局の厳密な審査に対して,その辺をもっと詰めて出してほしいというようなことが引き続き言われておるわけです。
 それから,前回,各国の状況の調査結果をお話ししたのですけれども,各国ともいろんな理由でこの条約に入っているわけですが,入ったことによって各国と貿易上の摩擦が生じているかどうかということで,摩擦らしい摩擦は実際には生じていないんです。そういうことも伝えてはいるのですけれども,過去に摩擦がなかったからといって,将来摩擦はないということでもないですし,そこは条約を責任持って運用する立場からすると,過去に問題がなかったのでというだけではなかなか弱いということで,こちらもあの手この手で説明を加えているんですが,なかなか難しい状況です。
 それから,問題があるのであれば,さっさと入って中で解決すればいいじゃないかというような意見もあって,そこも伝えているのですけれども,中に入って変えるというのは確かに一つの考え方ですが,そのためには,これはマルチの条約ですので,仲間が必要です。ですから,日本とほとんど立場の同じような国が多数を占めていれば,もちろんいろんな形で日本の意向を通していく,あるいは条約の履行のガイドラインを作るとか,そういう場合も可能ではあるのですけれども,なかなかそういう状況ではなくて,日本はどちらかというとマイノリティというか,例えば条約の履行のガイドラインを作りましょうといっても,要らないという国が今は多いわけですから,条約の履行ガイドラインを作って,そこで,ほかの条約との整合性とか運用上のいろんな調整をかけていければというのは,できればもちろんそれに越したことはないですが,ガイドラインを作る必要はないという国が多いわけですので,中に入って中から改革するというのも,直ちにそういう方向で進めるということも問題なきにしもあらずということで,それ以前に,やはりこの条約に入ることの圧倒的なメリット,それから,入らないことの圧倒的なデメリットがまずあるかないかというのが,こういう技術的な議論以前に引き続きあるかなというふうに思っております。
 さらに,実際の運用状況とか,各国の意向とか,少しずつ締約国も増えているわけですから,その辺の状況もインプットはしておりますけれども,日本は何事も非常に慎重にやる国ですので,ほとんど万全に,どこから見ても問題ないというふうになると動けるのですが,そういう不確定というか,必ずしも十分安心できる状態にない状態のまま物事を進めることについては引き続き壁があるというのが現状でございます。
【西園寺委員長】  今のお話を伺っていると,前伺ったときよりニュアンスとしてちょっと後退したような。前は,どっちかというとペンディングのものがたくさんあるものの,なかなか優先順位が上に行かないということで私は理解していたのですけど,今のお話を聞くと条約の中身そのものにネガティブな,心配な要因がかなりあるというふうに聞こえたのですけれども。
【長嶋国際文化協力室長】  要素があって,条約そのものの問題と,それから条約を実際に国会にかける,あるいは法制局にかけていく際の優劣というか,問題が二つございます。ですから,以前にも条約自体のメリット,デメリットというのはお話ししたかと思いますけれど,その時点では国会の運営がなかなかうまくいっていなくて,多数の条約がたまっていたわけです。
【西園寺委員長】  この間御報告いただいたときから,条約締結国数は増えてきておりますか。
【長嶋国際文化協力室長】  条約締結国は若干増えているかと思います。今,125か国です。
【西園寺委員長】  加盟国のうち125か国が条約結んでいるのですよね。
【長嶋国際文化協力室長】  そうですね。
【西園寺委員長】  しかも,日本は最初の提案をして,そのときに賛成しているわけですよね。だから,その条約を締結しないというのは非常に矛盾していると,僕は素人目から見ても感じざるを得ないと思います。
【長嶋国際文化協力室長】  コンセンサスに賛成はしているのですけれども,その時点での姿勢と,その後,実際に批准するかどうかというのは必ずしも常に一致していないと……。
【西園寺委員長】  でも,批准しなくても加入できると,佐藤委員おっしゃっていましたよね。
【佐藤委員】  行政取極でも大丈夫だろうという整理にはなっているのでしょう。
【長嶋国際文化協力室長】  その辺はオープンです。国会を通さなきゃいけないものか,行政取極でなきゃいけないのかというのは,条約の名称はこうなっていますけども,そこはオープンだと思います。
【佐藤委員】  少なくとも,これによって関係国内法を直すという義務は生じないので,そういう意味では批准する必要はないのだろうと私は思いますけれども,いろいろ努力していただいて感謝いたしますが,引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 基本的にユネスコの文化政策というのは1950年頃から文化的な同一性というものを非常に大切にして,それぞれの文化というものを守る,国のアイデンティティというのは文化の同一性から来ているというのが基本の姿勢で,それに対して強く擁護してきて,2000年前後から,更に文化多様性を尊重するという形に発展させてきているという流れにあるので,世界の文化政策の流れというのはそういうふうにあるわけですから,我が国がそれに加入しないというのは極めて理念として不思議な気がいたしますので,実務的にいろいろあるとは思いますけれども,大きな方向は是非受け止めて進められることを,何度も,いつもいつも希望して恐縮ですけど,よろしくお願いいたします。
【西園寺委員長】  ありがとうございました。
 それでは,議題3の(4)ユネスコ記憶遺産に関し事務局から御報告をお願いします。
【堀尾ユネスコ協力官】  資料の文化委122・コミュ懇25.7-7を御覧ください。こちらにユネスコ記憶遺産事業に関する動きを少しまとめさせていただいておりますが,ユネスコの動きとしまして本年4月10日から26日に行われました第191回ユネスコ執行委員会におきまして,文書遺産の保護及びアクセスという議題で,この記憶遺産の強化について議論が行われたところです。
 ここで記憶遺産強化のための行動計画案や法規範設定の必要性に関する技術的,財政的及び法的側面の予備的研究について事務局から提案され,審議が行われたわけですが,行動計画については,現在,財政事情が厳しい中,行動計画案の実現可能性や新たな法規範の設定が必要なのかという疑問が呈された一方,危機にひんしている文書遺産の保存は喫緊の課題であるということが事務局から説明されるとともに,それに賛同する国が多く,事務局としては,勧告は条約より経費が掛からず負担も少ないというような理由もあり,現在のところ,執行委員会では行動計画案の採択と,あと,第37回総会で新たな法規範,勧告になるのか条約になるのかも含めて,改めて審議されることになっております。
 あと,決議案については,外部資金を積極的に模索していくということも盛り込まれております。
 その後行われましたユネスコ記憶遺産の国際諮問委員会におきまして,執行委員会で議論された行動計画案が更に議論されまして,こちらの方,執行委員会で出された4目標,25項目の活動の中から八つの活動を優先活動として取り組んでいくことが合意されたところです。
 また,国際諮問委員会におきまして我が国から推薦しておりました「御堂関白記」「慶長遣欧使節関係資料」についての審議が行われ,諮問委員会からの勧告に基づきユネスコ事務局長が最終判断し,この2件がユネスコ記憶遺産として登録が決定されております。

 また,次の来年3月に向けて推薦する物件につきまして,文化小委員会の下に置かれているユネスコ記憶遺産選考委員会におきまして,「東寺百合文書」を推薦することが決定されました。
 以上です。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。ユネスコ記憶遺産につきまして何か御質問はありますでしょうか。
【林原委員】  今,ちょうどこの「御堂関白記」が東京国立博物館の「和様の書」という特別展で展示されているのですけども,1年に1回ぐらいしか見られないと思います。
【堀尾ユネスコ協力官】  また,京都の方でも陽明文庫さんが毎回展示する期間があるようで,そこでも「御堂関白記」が展示されると伺っています。
【西園寺委員長】  富士山の文化遺産に続いて,この2点が記憶遺産として登録されて,大変おめでたいことだというふうに思っております。
 記憶遺産に関してはよろしいですか。どうぞ。
【吉見委員】  ちょっと教えていただきたいだけですけれども,こちらの行動計画案が採択された場合に下記の八つの活動を優先活動とすることが合意されたというふうになっておりますが,特に目標2と目標3です。目標2,デジタル化及び保護の実践に関する教育及びトレーニングプログラムの改良,目標3,記憶遺産プログラムの効果的実施のためのネットワークの促進,これについて,こちらで特に考えられていることがあれば教えていただきだいのですけれども。
【堀尾ユネスコ協力官】  今のところ,これがどういうふうに動いていくのかというところがまだ検討中のところもあるので,具体的な案というのはないのですけれども,今後,日本としても記憶遺産事業に積極的に関わっていくということになれば,こういった行動計画に基づくいろんな研修プログラムとか,会議とかへの参加というのも少し検討していく必要はあるかと思いますので,また国内委員会の先生方には,この辺りでもし御協力いただけるとか,何か御提案があれば是非御意見を頂ければと思います。
【吉見委員】  例えば目標3であれば,ヨーロピアナなんか,全ヨーロッパというかEUレベルで既に非常にすばらしいデジタルアーカイブを展開しているわけです。これ,記憶遺産の情報基盤として大変優れたものをもう実現しちゃっているわけで,日本は全く何にもないに近い,全く何にもないわけじゃないのですけれども,非常に貧弱ですが,その落差が余りにも激しいので,そういったことについて何かお考えがあるのかなというふうに思いましたのと,それから,この教育及びトレーニングプログラムに関してもヨーロッパ諸国,あるいはEUと日本の差が余りにも激しいので,到底追い付かないぐらい差がついちゃっていますから,今からやってももう駄目かもしれませんけれども,諦める前に少し何かあった方がいいのかなというふうに思います。
【堀尾ユネスコ協力官】  はい。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。では,それは継続的に事務局も検討の対象としてお考えください。
 それでは,続きまして議題3の(5)クリエイティブ・シティーズ・ネットワークに関し事務局から御報告をお願いします。
【堀尾ユネスコ協力官】  
 こちらは,前回も報告させていただきましたが,文学,映画,音楽,芸術などの分野で都市間でパートナーシップを結び,相互に経験・知識の共有を図って,また,国際的なネットワークを活用して都市間の活性化及び文化多様性への理解増進を図るというプログラムでございます。
 現在,日本で登録されているのがクラフト&フォークアートの金沢市,デザインの神戸市と名古屋市,これらの3都市についてはそれぞれネットワークにおいて活動されているところでございます。
 一方,新規に登録を希望している都市としまして静岡県浜松市,新潟県新潟市,山形県鶴岡市,北海道札幌市がございまして,これらの都市はもう昨年からユネスコ事務局と直接調整を始めているところですが,ユネスコの財政事情が厳しくなり,この事業が外部資金による実施というような決議がされていることもあって,新規の審査受付が停止されていたところでございます。
 最近入ってきた情報としまして,中国がこの事業に対して拠出金を出すということで,拠出金が入ってくれば新規審査を再開するということで,今その準備がされているところでございます。
 また,日本の都市の加盟について進捗がありましたら,御報告させていただきます。
【西園寺委員長】  ありがとうございます。この件,何か御質問,御意見ございますか。
【佐藤委員】  これは直接関係ないのですけど,ユネスコに関連しての文化ではありませんが,Biosphere Reserves(ユネスコエコパーク)と,ユネスコ関連のジオパークという事業がありますね。ユネスコと関連のないFAOがやっている世界農業遺産とかがあるので,文化小委としては関係ありませんけど,コミュニケーション小委としては全体に何があるのかというのを頭に入れて我が方の活動を進めないといけないような気がするので,機会があったら,そういうものを一覧にされたらいかがでしょうか。
【西園寺委員長】  では,次回の委員会のときにでも事務局は是非参考資料として付けてください。
 それでは,これ以降の議題進行については河野文化活動小委員会委員長にお願い申し上げたいと思います。よろしくお願いします。
【河野委員長】  それでは,後半の議事進行を担当いたします河野でございます。早速,議題4に入らせていただきたいと思います。
 本年11月にユネスコ本部で第37回ユネスコ総会が開催されますけれども,そこでは2014年~2021年のユネスコの次期中期戦略,及び2014年~2017年の事業・予算案等が審議されます。これに対する対応方針につきまして,文部科学大臣からユネスコ国内委員会に対して諮問が出ております。本日は,文化及びコミュニケーション分野におけますユネスコの次期中期戦略及び事業・予算案につきまして,委員の方々に御意見を頂戴して答申案をまとめたいというふうに思います。
 審議に先立ちまして,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【堀尾ユネスコ協力官】  それでは,参考の4と5と6,あと,資料の文化委122・コミュ懇25.7-9を御覧ください。
 参考5が,毎回,ユネスコ総会の対応に当たりまして,文部科学大臣から国内委員会に対応についての諮問が出され,それに対して国内委員会として答申をまとめていくということになっており,今回,第37回ユネスコ総会についての諮問が文部科学大臣から国内委員会会長の田村会長宛てに来ております。第37回ユネスコ総会における2014年-2021年中期戦略案及び2014年-2017年事業・予算案等に関する方針についてということでの諮問でございます。
 ユネスコ総会については,参考6方に日程を付けさせていただいておりますが,本年11月5日から20日までの間に全体会議と分野ごとの会議がございます。ここのところで各議題があるのですが,一番大きな議題としては2014年-21年の中期戦略案と2014年-17年の事業・予算案に関する決定がされていくことになっております。
 この中期戦略と事業・予算については,これまでのユネスコ執行委員会でも議論されておりますので,それについて参考4に前回4月に行われました第191回ユネスコ執行委員会の結果というものを付けさせていただいております。これの3ページのところに中期戦略及び事業・予算の勧告についての議論を付けさせていただいているのと,8ページからでございますが,ここに現在,事務局から示されている中期戦略案の概要と9ページに事業・予算案の概要を付けさせていただいております。
 この案に対する対応についてということで答申を御議論いただくのですが,資料9に事務局で作成しました答申案を付けさせていただいております。
 答申案は,最初に第37回ユネスコ総会における基本方針として,この第37回ユネスコ総会は中期戦略(C/4)及び事業・予算(C/5)を作成する重要なものであり,また,現在,米国の拠出が止まっていることにより非常に厳しい財政難に直面しているということを書き,その中でもユネスコが比較優位を有する分野を絞り込み,明確化し,その分野での活動に特化することで具体的な成果を上げ,その存在意義の向上を図るべきということを書かせていただいているほか,また,C4及びC5案は事業の精選化・重点化及び管理運営の合理化等を一層進める方向で検討されるべきであるということと,我が国としては可能な限り引き続きの支援を継続していくべきであるということを総論として書かせていただいております。
 2番として,具体的に中期戦略案及び事業・予算案に関する方針ということで,最初に総論を入れさせていただいており,2ポツ以降で事業分野ごとの対応案について書かせていただいております。
 具体的に今回御議論いただきたいのは,4ページからの4ポツの文化分野及び5ポツのコミュニケーション・情報分野についてでございますが,この文化分野については,日本として重要と考えている世界遺産条約事業,無形文化遺産保護条約事業,文化多様性,クリエイティブ・シティーズ・ネットワークについての対応を書かせていただいております。
 また,5ポツのコミュニケーション・情報分野については,コミュニケーションというのが分野横断的なものであることから,その分野横断の必要性。また,コミュニケーションセクターで行われているユネスコ記憶遺産事業についての記述を書かせていただいているところです。
 以上でございます。
【河野委員長】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの説明とお手元の資料を参考に御意見,御提案を頂ければと思います。特にこの点についてという順序を設けませんで,御自由に御発言いただければと思っておりますけれども,いかがでございましょうか。盛りだくさんでございますので。
【西園寺委員長】  では,ちょっとよろしゅうございますか。私,これ拝見して一つ疑問に感じて,この間事務局にもお話をしたのですが,総論があって,あと分野別の事業方針みたいな形で教育,科学,文化,コミュニケーションというふうな分類でなされているわけですけども,この記憶遺産がコミュニケーションの分野に入っているのを何となく不自然じゃないかなというふうに正直感じたのです。
 つまり,世界遺産と無形文化遺産は条約事業ではありますけども,一応,世界遺産があって無形文化遺産があって記憶遺産があるというユネスコの三つの遺産事業ということで考えると,これは分類上,記憶遺産はやっぱり文化の方に分類するべきじゃないのかなという疑問を正直感じたわけなんです。
 ただ,よくよく話を聞いてみると,この分類自体がユネスコの中の組織によって分類されていて,ユネスコ記憶遺産事業というのはコミュニケーション局に入っているということで,組織的なカテゴリーで書かれているということなのかなというふうに感じたわけなのですけどね。
【堀尾ユネスコ協力官】  参考4,執行委員会の結果についての8ページに中期戦略案の概要を付けさせていただいているのですが,ここの中で戦略目標というのが九つございまして,これがセクターとも大体一致しているのですが,この中で記憶遺産については戦略目標9の中に挙げられていることもあり,コミュニケーション・情報分野の中に入れさせていただいているところです。
 こちらの答申案を基に,今後,対処方針等を作成させていただくということもあり,コミュニケーション・情報分野に入れさせていただいているのですが,確かに西園寺委員長のおっしゃるとおり,日本では文化小委員会の下に記憶遺産選考委員会が置かれているので,文化的な観点から議論しているのですが,ユネスコの方での元々の出発がドキュメントの保護という形で,アーカイブとかデータの保護の観点が割と強く出されていて,いかにドキュメントデータを守っていくかという観点が前回の執行委員会でもかなり議論されたところです。
 あとは4月の執行委員会でも記憶遺産の事業を強化していくためにどうしたらいいかということで,文化セクターに移して世界遺産,無形文化遺産と同じようにしていった方がよいのではないかという議論もされたんですが,条約化することによってフレキシビリティーがなくなるというので,条約についてはネガティブな意見が多かったということと,あと,文化セクターでは,もう既に多くの条約があるので,そういった中で記憶遺産がまた更に付け加わると,記憶遺産としての事業のプライオリティとか,予算配分とかが低くなるのではないかというようなことも懸念として出されて,今のところはコミュニケーションセクターで続けていくとされました。
 ただし,文化の観点もちゃんと考慮しながらということになっております。
【西園寺委員長】  それは,意味はよく分かりますし,短期的には難しいとしても,外から見ていてやっぱりトータル的に文化の保護という観点から考えたときに,世界遺産という不動産と無形文化というものと,それから,ある意味で動産といいますか,そういう書類,三つの観点からの文化財の保護というところから見ると,三つセットにして考えた方が外から見た場合には分かりやすいかなという気はいたします。
 ですから,今どうこうということよりも,将来のユネスコの中でのそういう議論があってしかるべきじゃないかなという感じがいたしました。
【今井委員】  はい。
【河野委員長】  今井委員,お願いします。
【今井委員】  コミュニケーション・情報分野のことで,第1点になっている分野横断的取組の必要性ですが,国連関係の国際機関としてはITUという通信,情報の機関がありますけれども,そことユネスコの関わりのある分野での会議に参加してきた経験からすると,ICTの技術が急速に発達していることと,市場経済とが結び付いてビジネスとしてものすごい勢いで新興国から途上国へ広がっているわけですが,その過程で文化の多様性,あるいは情報格差による社会の分断というのでしょうか,それに対する懸念をユネスコとしては表明しているのですけれども,どうもその二つのセクターの力関係のバランスが全くとれていないために,ICTのポジティブな影響を最大限に活用するということは当然ですが,申し上げた文化の多様性の確保とか,格差の拡大を防ぐというような点でのネガティブな影響についての対応がどんどん遅れていくというか,取り残されているような感じを受けました。
 それぞれの国の中から,日本の中も含めて,そうした取組をより強く働きかけていく必要があるのではないかという実感を持っています。
【河野委員長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。吉見委員,お願いします。
【吉見委員】  ちょっと余計な意見かもしれないですけど,今,西園寺委員長と今井委員がお話しになったこと,両方とももっともですが,だからこそ,つまり,ICTのグローバルな拡大の中で,どちらかというと水平軸で情報の流通が加速度的に,かつ莫大な量で高まっている。そして,莫大な量で情報が流通しているのがコマーシャルベース,市場規模の拡大とともに進んでいるがゆえに,それぞれの国や地域のアイデンティティがやや失われかけている。そういう動きがあるがゆえにデジタルベースといいますか,デジタルアーカイブをはじめとする,新しい情報技術をベースにした記憶遺産というものが非常に重要になってきているというのが,今,正にデジタルアーカイブをはじめとする様々なドキュメントの記憶としての保存ということに各国が真剣に取り組んでいる大きな理由だと思います。
 また,ヨーロピアナの例を先ほど出しましたけれども,ヨーロピアナに限らず,アジアでも日本以上に韓国とか,そうした国々はアーカイブの取組はきちんとやっていると思います。
 ですので,先ほど西園寺委員長がお話しになったことと今井委員がお話しになった話はつながっていて,つまり,日本の場合にはコミュニケーション,あるいはメディアというものが文化,あるいは記憶と結び付くものとしてきちんと捉えられていないという社会的な通念のレベルの問題がまずあって,そうであるがゆえに記憶というものをちゃんと情報基盤として,つまり,情報基盤がないと記憶は維持されませんから,そういう基盤を整えていくという認識が一般的に非常に弱いと思います。その辺りは,むしろ積極的な意味で国際的にコミュニケーション基盤として記憶や文化や歴史を伝えていくという基盤を整えることが必要だという認識を,ヨーロッパは既にかなり持っていると思うのですけど,むしろ日本が持っていない気がしますので,日本の中でちゃんと広めていく必要があるような気がしています。
【河野委員長】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。
 私の方は,答申案の4ページの文言の細かいところになるのですけれども,アメリカの拠出がなくなりまして,日本は最大の拠出国でありますし,かつこれまで信託基金を出してきたわけですが,先ほど佐藤委員が御発言になりました無形遺産条約の実務は必ずしも当初想定していたようにはなっていなくて,かつ日本は300件以上指定案件を抱えておりまして,要するにコミュニティがそれぞれ長く伝えてきた無形遺産を合わせて出すということに対しては,文化庁の保護の実務とコミュニティのモチベーションという観点からは問題の運用であるというふうに私個人的に思っておりまして,やはり,それぞれのコミュニティのアイデンティティを大事にしながら,それを励ますために条約を活用していくというのが本来の筋であろうと思うわけです。
 そういたしますと,もう少し信託基金を戦略的に使う,あるいは,これまで使ってきた信託基金が本当にユネスコのためになりながら,かつ日本の方へちゃんと返ってきているかという観点から見直すこともあり得てもいいのかなというふうに個人的に思っております。そういたしますと,例えば4ページの4ポツの文化分野の総論部分のところで,「引き続き」拠出するのではなくて,もう少し「戦略的」,あるいは「集中的」というような文言に変えていただいて,本当にこれが垂れ流しになっていないかという観点で見ることが必要ではないかと個人的には思いました。
 特に無形遺産については,もう少し「条約の本旨に基づいた」とか,最近ちょっと無形遺産条約の運用が曲がってきたのではないかという印象を受けておりますので,もう少し批判的に見るという観点を答申案の中に反映し,もう少しユネスコにも緊張感を持ってもらうことが必要ではないかと個人的には感じました。
 あともう少し時間がございますけども,いかがでございましょうか。
【林委員】  今おっしゃった点,非常に大事ですね。ユネスコの何に協力するか,という考え方もあるけど,もうちょっと監視して,どんどん申し入れて,そして拠出しているものがあるわけだから,利益誘導もして活用していくというか,それだけの迫力は今でも日本はあるはずですよ。基本的な考え方は,それでいいと思いますよ。気持ちで貢献するとか,そういう国際的な感じは分からんではないですけど,こういう国際機関を相手にするときはよっぽど腹を据えていないと利用される。
【河野委員長】  例として適切かどうか分かりませんけども,信託基金で無形遺産の専門家をあちらこちらに増やすというキャパシティビルディングの事業をユネスコはやっておりまして,日本の信託基金は,多分,去年辺りはほとんどそれに使われていると思うんです。かなりのお金が使われていると思いますけれども,そこで何をやっているかといいますと,トレーナーのトレーナーをまず育成して,それで更に各国でトレーナーを増やしていくという二重構造のキャパビルをやっているわけです。
 そのトレーナーズトレーナーを養成するときに,彼らが使うべきマニュアルを開発しているのですが,そのマニュアルがユネスコから出てこないんです。ユネスコが外に出さないんです。ドナーである日本にも出さないんですよ。こういうのはちょっといかがなものかと個人的には思っておりまして,そういう観点から,信託基金はもう少し戦略的に使っていただく。そういう形の監視をしていく。あるいはモニタリングのときにも批判的な観点から見ていただくことが税金の効率的な運用のためにも必要ではないかと個人的には感じます。
 私ばかりしゃべって申し訳ありません。ほかにございましたら,是非御発言いただきたいと思います。
 それでは,特にございませんようでしたら,この辺りで議論の時間は締めさせていただきまして,今後,文化活動小委員会として意見を取りまとめまして,8月28日の運営小委員会,それから9月10日の国内委員会の総会に諮っていきたいというふうに存じます。
 冒頭で西園寺委員長がお話しになりましたように,コミュニケーション小委員会としての取りまとめは,後日またメールで御審議いただく予定でございますので,その節はよろしくお願いいたします。
 また,本日頂いた御意見等を基にした答申案の修正については,西園寺委員長と私に御一任いただければというふうに存じますけれども,よろしゅうございますでしょうか。
(委員了承)
【河野委員長】  ありがとうございました。
 それでは,議題6に入ります。事務局から今後の国内委員会の関係行事につきましての御説明がございますので,よろしくお願いいたします。
【堀尾ユネスコ協力官】  参考7を御覧ください。こちらに今後のユネスコ国内委員会の関係行事をまとめさせていただいております。
 今後,文化・コミュニケーション関係の会議といたしましては,9月23日から10月11日のユネスコ執行委員会,そして11月5日~20日のユネスコ総会で,先ほど御審議いただきました次期中期戦略及び事業・予算案について審議されるほか,ユネスコの各事業についての審議が行われる予定です。
 国内委員会の会議といたしましては,本日,7月19日に本委員会を行わせていただいておりまして,今後,各専門小委員会が行われ,それらを取りまとめて,8月28日に運営小委員会が行われ,その後,9月10日に国内委員会の総会が行われる予定でございます。こちらの総会は,全国内委員会の委員にまた御案内させていただきますので,御予定いただきますようお願いいたします。
 また,ユネスコ記憶遺産に関しまして,来年の3月に推薦する「東寺百合文書」の推薦書を作成するための作成ワーキンググループを今作っておりますが,それについては8月等,3月までに間に合うように順次開催を行っていく予定になっております。
 以上です。
【河野委員長】  ありがとうございました。
 その他特に報告,審議すべき案件ございますでしょうか。
 それでは,ちょっと時間を早く終わりますけども,今回はこれで閉会させていただければと思います。本日は,御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

国際統括官付