企業におけるESD

1. CSR(Corporate Social Responsibility)としてのESD

 近年、企業における長時間労働やストレスの増大など、働き方の持続可能性に照らして懸念される状況が見られる中で、企業の社会的責任(CSR)に関する取組が大きな潮流となっている。CSRとは、企業活動において、社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことを求める考え方とされている。(厚生労働省ホームページより)
 こうしたCSR を通じて、教育人材養成、環境を超えた分野の拡大、学びの場のネットワークの拡大を図ることなどが指摘されており、例えば立教大学ESD 研究センターでは、これらをESDと結び付けて考えている。

2. Global Compact

 一方、国際的には2000年国連事務総長の提案によりGlobal Compact が提唱された。これは、企業が事業遂行と戦略を、人権・労働・環境・腐敗防止の各分野においてコミットしていく戦略方針に関するイニシアティブ。
 参加企業に、持続可能な事業モデルと市場を進展することを支援するために作られた様々なアウトプット・マネジメントツール・リソースを提供しながら、持続可能性についての方針とその実現についての開発・実行・開示を行う実務的な枠組みであり、世界の10,685の企業・団体が参加している。日本国内にも170ほどの企業が参加するグローバルコンパクトジャパンネットワークが存在し、ESDを念頭に置いた活動を行っている。

3. ISO 26000

 国際標準化機構は2010年社会的責任に関する世界初の国際規格であるISO 26000を策定。この規格は、持続可能な社会の創造に対して、組織が貢献する際のガイドラインを示したもので、組織とステークホルダーとの対話を重視するステークホルダー・エンゲージメントを重視するとともに、組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の七つの課題を設定。

4. 個別企業のESD 実践事例

(1)損保ジャパン
(2)電源開発株式会社

Global Compact について

1.国連グローバル・コンパクト(GC)とは

 企業が事業遂行と戦略を、人権・労働・環境・腐敗防止の各分野にコミットしていく、戦略方針に関するイニシアティブ。
 参加企業へ、持続可能な事業モデルと市場を進展することを支援するために作られた様々なアウトプット・マネジメントツール・リソースを提供しながら、持続可能性についての方針とその実現についての開発・実行・開示を行う実務的な枠組み。
 世界で10,605の企業・団体が参加(2012年10月末現在)。

2.グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)とは

 世界約100か国にあるローカル・ネットワークの一つとして、2003年発足。日本の165企業・団体が加入(2012年10月末現在)。

3.UNGC におけるESD に関する取組例

 ※( )内はグローバル・コンパクトの原則
・Human Rights and Business E-Learning Tool(人権)
・グローバル・コンパクト署名企業を含む企業やNPO などによるイニシアティブ(労働条件)
・コカ・コーラ、ネスレ、リーバイスなどの企業により水資源の管理徹底を提案(環境)
・採取産業不透明イニシアティブ(腐敗防止)
・ラテンアメリカで展開する国際企業が関連会社への展開を提案(共通原則)

4.GC-JN におけるESDに関する取組

(1) 分科会活動
 企業の実務者が他者の実践や学識経験者から学び、CSR の考え方や取組について情報の交換や共有ができる活動の場。毎月1回または2か月に1回開催。
(2) 明日の経営を考える会
 若手経営者育成の場として開催。9月から翌年8月までの執行役員、部門長クラスを対象とした1年間のプログラム。
(3) セミナー・シンポジウム等
 2011年は、人権問題、CSR、COP等のテーマで開催。2012年は、リオ+20の報告会、人権をテーマとしたセミナーを開催。
 (出典:地球市民会議2012発表資料)

ESD 実践例:損保ジャパン

1. 環境方針

<基本理念>
 損保ジャパンは、地域の環境保全・地球的規模での環境保全および循環型経済社会の構築を企業の社会的な責任と捉え、環境・経済効率(Eco-Efficiency)に配慮し、損保ジャパングループをあげて全員参加で、環境問題への取組を地道かつ継続的に展開していきます。

<行動指針>
1.新商品・新サービスの提供
2.省資源・省エネルギー活動の推進
3.社会への貢献

2. 社会貢献活動の「四つの重点課題」

(1)気候変動における「緩和と適応」
 タイの農家向け気候インデックス保険の開発
(2)安全・安心へのリスクマネジメント
 「エコ安全ドライブコンテスト」を実施し、「燃費」「事故率」の2部門で参加企業を表彰
(3)CSR 金融
 自らCSR を推進していくことに加え、金融機能を活用して、CSR を推進する企業を支援するため、環境に配慮した事業活動を行う企業向けの投資信託商品等を設定
(4)地域における協働の促進
 社員一人一人の社会貢献を支援するため、社員のボランティア組織を設立

3. 損保ジャパン環境財団

(1)2000年よりインターンシップ制度の開始
(2)市民のための環境公開講座の実施
 (出典:地球市民会議2010発表資料)

ESD 実践例:電源開発株式会社

1. 社会貢献活動の目的

 民営化の達成直後、電源開発株式会社らしい社会貢献のあり方を検討。「エネルギーと環境の共生」の企業理念に即して、エコ×エネ体験プロジェクトを考え出した。電源開発株式会社は卸電気事業者であるため、他の会社と異なり、社会貢献活動とし位置付けている。多くの電力会社、ガス会社では、販売促進活動(顧客サービス、顧客獲得、顧客の理解啓発)の一環として、環境教育などに取り組んでいるが、電源開発株式会社には一般顧客はいないため、社会貢献活動と位置付けている。

2. 取組

(1)エコ×エネ体験ツアー
 小学生高学年の親子、大学生・院生を対象としたツアーを実施。奥只見ダム・発電所を見学し、ワークショップに参加する。
(2)エコ×エネ・カフェ
 ゲストの話を聴講し、エコとエネについて話し合い、対話を通じて互いに学び合もの。様々な年代・背景を持つ社会人、学生の参加を得て、斬新で面白い学びの場に発展していく可能性がある。
(3)その他の活動(WS、情報発信など)
 年1回、ワークショップを開催し、環境とエネルギーに関心のある人が集い、環境教育活動を知ることを目的としている。また、新聞、ウェブ、各種イベントへの出展等を通じ情報発信を行っている。
 (出典:地球市民会議2010 発表資料)

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