第194回ユネスコ執行委員会の結果について

平成26年7月24日
文部科学省
国際統括官付


1.日程 
平成26年4月2日(水曜日)~15日(火曜日)

2.出席者 
門司健次郎 ユネスコ日本政府代表部特命全権大使
加藤 重治  文部科学省国際統括官          外

3.会議の主な内容 
1)我が国代表演説 
各国代表演説において、門司ユネスコ日本政府代表部大使から代表演説を行った。

【現状と対策】
・事務局の、合理化に対する努力を称賛するとともに、引き続き加盟国と事務局の双方が、結果を重視した管理運営の意識をさらに高めることが求められている。
・ユネスコスタッフの再編計画については、現在の状況下では人員の再編が避けられないが、透明性をもって貴重な専門知識を失うことなく合理的に進めることを願う。

【事業の実施】
・教育は、ポスト2015開発アジェンダの設定において重要な役割を果たすべきであることから、持続可能な開発を促進するポスト2015年の教育課題の設定における努力は、ユネスコ今年の最優先事項の一つである。
・ESDに関して、本年11月にESDユネスコ世界会議を我が国がホストするが、ESDは持続可能な社会を構築し、質の高い教育を実現するために不可欠な要素であることから、加盟国の高位の代表の参加を期待する。
・科学に関しては、我が国はポスト洪水災害復興や防災支援に関する様々なプロジェクトをユネスコと共同で提供してきたほか、持続可能な社会の実現を視野に入れた「サステイナビリティ・サイエンス」の考え方を推進してきており、引き続き「サステイナビリティ・サイエンス」に関連した取り組みを事務局とともにさらに進めて参りたい。
・文化に関して、我が国は有形・無形文化遺産条約を関する課題解決に貢献しており、特に今後の世界遺産に関する中長期の課題について、事務局及び諮問機関と更なる議論を進める必要がある。

【アフリカ、SIDS(小島嶼開発途上国)】
・我が国は、以前よりアフリカの発展に重点を置いてきており、昨年開催されたTICAD-Vの結果をもとに今後さらなる貢献を行う所存。
・さらに、SIDS国に対しても直面する課題に対して、信託基金(JFIT)を通じたプログラム支援を行って参りたい。

【ジェンダー】
・ジェンダーについて、安倍総理が「女性が輝く日本」を宣言しているとおり、我が国は途上国の女性の社会的地位向上や社会進出についてODA等を通じて貢献していくこととしている。

【将来に向けた改革】
・ユネスコが来年(2015年)70周年迎えるに当たり、我が国は、中長期的視点に立った改革を通じ、ユネスコの高貴な任務を求めて、事務局及び加盟国と連携を図っていくことにより、「堅調なユネスコ(robust UNESCO)」を後世に残してまいりたい。

2)ボコバ事務局長の演説
 執行委員会の全体会合において、ボコバ事務局長が演説を行った。概要は以下のとおり。

・教育分野では、MDGsの達成とポスト2015開発アジェンダ策定に向けて圧力をかけ続けるとともに、EFAの達成に向けた最後の努力を進めていく。
・本年愛知・名古屋で開催されるESD世界会議の準備に取り組んでおり、日本の協力に感謝する。
・グローバルシティズンシップ教育に関する国際的な議論を昨年12月にバンコクで開催した。
・持続可能な開発のアジェンダは「ソフトパワー」の推進に資するものであり、ポスト2015開発プログラムに文化を含める必要がある。
・科学分野では、国連事務総長科学諮問委員会を立ち上げ、基礎科学分野のユネスコのリーダーシップを強化している。
・財政については、前2年間より約22%支出を削減するとともに、緊急マルチドナーファンドによって赤字の一部を補てんすることにより、2013年はキャッシュフローの赤字はなく、資本金は回復しているほか、スタッフの再編にも取り組んでいる。
・引き続きユネスコの組織改革は続けていく必要がある。
・ポスト2015アジェンダについては、重要な局面に入っている。
・ポスト2015教育アジェンダは、バランスが取れ、包括的で生涯教育のアプローチをとること、測定可能な狙いや指標をもった包括的な目標を構成する必要がある。
・科学技術はMDGsから漏れていたが、水は持続可能な開発と平和に不可欠なものであり、ポスト2015開発アジェンダでは、MDGsの水に関するターゲットをより包括的な単独の目標とすべきである。
・文化もMDGsから漏れていたが、文化は社会的包合や貧困削減を促進する力となるものである。
・ポスト2015アジェンダ形成は複雑な過程を経ており、加盟国の協力を期待するとともに、これにより21世紀の人間の尊厳と開発のための新たな課題を設定することができると信じている。

3)過去の執行委員会・総会決議のフォローアップ(議題5)
・「教育におけるベストプラクティス」について、ユネスコのHPに教育のグッドプラクティスに関する追加情報や登録に係る関係部局の情報の掲載、グッドプラクティス共有促進のための戦略の策定等を求める決議案が採択された。
・「グローバル・ジオパーク・イニシアチブ」の正式事業化について、ワーキング・グループで議論されているところ、次回執行委員会に提出する報告書を取りまとめるまでには引き続き議論が必要との認識で一致した。

4)37C/4の改訂版の検証(議題18)
・中期戦略について、我が国よりESDの推進を教育分野の戦略目標2の中で、今後強化する3分野の一つに位置付けていることを評価するとともに、サステイナビリティ・サイエンスが自然科学と人文社会科学両方に位置付けられていることを評価する旨発言した。
・各国からは、中期戦略を支持する意見が相次いだが、個別事業について、特にジオサイエンスに対する言及がないことを指摘する発言があった。
・これを受けて、ジオサイエンスへの言及に関する更なる言及について会議文書に含める提案が合意され、決議された。

5)2015年以降の教育(議題6)
・ポスト2015教育アジェンダについて、優先領域、目標、ターゲットについて明確であるなど、事務局作成のポジションペーパーを支持する意見が相次いだ。我が国からは、以下の点を指摘した。
○各国が本ポジションペーパーをもとにNYのポスト2015開発アジェンダの議論にも積極的にかかわるべき。
○本ポジションペーパーは、持続可能な開発における教育の役割、他の開発アジェンダと教育アジェンダとの連携によって、より説得力が増す。
○本ポジションペーパーの目標は満足いくものの、以下2点の懸念がある。
(1)「無償の義務教育」の期間を9年ではなく10年にすることには、国によって教育制度が異なることから、実現可能性などを慎重に考慮する必要がある。
(2) 公的教育投資について対GDP比、政府予算の中のシェアで数的ターゲットを示すことは、あるレベルの教育アウトカムを生むのにどれだけの財政投入が必要かの関係について、広範な適用性のある方程式は存在していないこと、国の経済規模、人口構造、政府予算規模の多様性などを考えると適切ではない。
○以上のことから、財政的インプットについて定量的ターゲットを採用するかは慎重に検討すべき。
・これらの意見を踏まえ、事務局からは引き続き協議を続ける旨回答があった。
・なお、今後の進捗については5月にオマーンにて開催されるグローバルEFA会合、各地域における協議を通じて、2015年の韓国世界教育フォーラムに提出される予定。

6)ポスト2015年開発アジェンダ準備に関するユネスコの参加(議題14)
・ポスト2015年開発アジェンダに関する各国の意見として、教育を単独のアジェンダとして位置付けるべき、教育だけでなくユネスコのマンデート全体と一致させることが重要といった意見や、文化を開発アジェンダに位置付けるべきといった意見のほか、表現の自由の確保の重要性を指摘する意見があった。
・事務局からは、NYでの開発アジェンダ策定の過程において、教育、科学、文化、コミュニケーション・情報などが適切に反映されるよう、ユネスコがNYの同僚や国連本部に対して情報を提供していく予定であること示したほか、加盟国内でもユネスコ関係省庁から外務省、財務省、開発担当省などへの情報の提供、働き掛けを推進することを依頼した。

7)ユネスコの体育とスポーツに関する国際憲章の改定の妥当性(議題9)
・37回総会決議を踏まえ、ユネスコの体育とスポーツに関する国際憲章の改定の妥当性に関する事務局長報告について審議。多くの国が国際憲章の改定を支持した。

8)ユネスコ賞改訂戦略、ユネスコ世宗王識字賞及びロレアル・ユネスコ女性科学賞の更新(議題13)
・1)191回執行委員会決議に基づき改訂されたユネスコ賞包括戦略およびユネスコ賞の規定基づいたユネスコ賞の実施状況報告及び2)ユネスコ世宗王識字賞の更新 3)ロレアル・ユネスコ女性科学賞の更新及び規定改定について事務局から提案され、審議が行われた。
・多くの国が改訂戦略を歓迎するとともに、2つの賞の更新、規定改定について歓迎する意見が相次いだ。
・我が国からは、ロレアル・ユネスコ女性科学賞について、本賞の質の高さに満足するとともに、昨年の受賞者である黒田玲子博士は国連事務総長科学諮問委員会のメンバーであること、我が国国内委員会と日本ロレアルとが協力して実施している日本奨励賞と相まって、国内の女性研究者の活躍促進の機運醸成に役立っている旨発言した。

9)教育システムにおける言語教育(議題29)
・仏提案の教育システムにおける多言語教育の推進について、多くの国から、国内での多言語(地域語)環境などからすでに多言語教育が行われているとしつつ、多言語教育による多言語主義や文化多様性の確保、国際交流における多言語理解の重要性などの観点から、提案を歓迎する意見が相次いだ。
・一方、多言語教育を進めるための、教員養成、カリキュラム充実といった課題や、各国の教育改革における優先順位との関係などから、直ちに実行することが容易ではない旨の発言もあったほか、本決議案の財政的影響を懸念する意見もあった。


4.加藤国際統括官とボコバ事務局長のバイ会談 (4月9日)
・ESDユネスコ世界会議について、ESDがポスト2015年の教育アジェンダ及び開発アジェンダに貢献しうるものであり、本会議はユネスコ及び加盟国にとって重要であることから、事務局長の本会議への出席及び加盟国の閣僚級の出席の働きかけを依頼したところ、事務局長よりユネスコもESDと本会議の重要性は認識していることから、すでに加盟国のハイレベルの参加を強く進めており、今後もあらゆる形で協力したい旨の発言があった。
・日本ユネスコ国内委員会において、我が国のユネスコ活動の活性化について提言を取りまとめたことを報告するとともに、ESD世界会議で事務局長が来日の際には、ユネスコのビジビリティを高めるべく様々な地域を訪問することを期待する旨述べたところ、事務局長より日本の様々なコミュニティがユネスコ活動に関心を持っていることに感謝を述べ、来日時における様々なステークホルダーとの接触に強い関心を示した。
・サステイナビリティ・サイエンスにおける自然科学および人文・社会科学の事務局長補との協力、連携に期待を述べたところ、事務局長より、教育と科学の重要性について指摘するとともに、我が国での国連事務総長科学諮問委員会の開催について検討していただきたい旨の提案があった。
・ユネスコ記憶遺産について、我が国でユネスコの審査に付す2件の選定について、有形・無形文化遺産保護条約と違い明確な審査手続きがないこと、政府以外の団体による直接申請のため、申請文書の審議性の判断が難しいことなどの課題について述べたところ、事務局長より、記憶遺産の選定に当たり複雑な問題が存在することを理解するとともに、よいメカニズム構築に向けての我が国の貢献に期待を示した。

5.執行委員会について 
1)執行委員会は、総会での選挙により選出された執行委員国(58か国)のみが参加できる総会の下部機関。通常の執行委員会は1年に2回、春と秋に開催(各2週間程度)。執行委員会で、総会決定事項等一部事項を除き、2か年の事業・予算等、ユネスコの重要事項が審議及び総会へ報告され、総会で最終的に承認される。

2)次回第195回執行委員会は、本年10月15日~10月30日に開催予定。


(了)

 

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