持続発展教育(ESD)の一層の普及及び支援の推進について(建議)

   平成21年3月9日、第124回日本ユネスコ国内委員会総会において、「持続発展教育(ESD)の一層の普及及び支援の推進について」の建議が採択されました。   この建議は、国連「ESDの10年」(2005~2014年)が中間年を迎えるにあたり、その提唱国たる我が国において一層の取組推進が必要との強い認識のもと、ESDの一層の推進のため、関係大臣(外務大臣、財務大臣、文部科学大臣、環境大臣)に対して、必要な措置をとることを求めるものです。

 建議は3月9日の日本ユネスコ国内委員会総会において採択された後、3月23日に日本ユネスコ国内委員会会長(田村哲夫渋谷教育学園理事長)より文部科学大臣に手交されました。


平成21年3月23日

持続発展教育(ESD)の一層の普及及び支援の推進について(建議)

日本ユネスコ国内委員会

 今日、グローバル化が進展する中、地球環境や資源・エネルギー、食料、貧困など人類全体で取り組まなければならない問題が深刻化している。これらの課題を解決し、人類社会の持続可能な発展を実現するためには、社会を担う一人一人の知識、技能、価値観、生活態度、生活様式の変革が必要であり、教育はその根幹を担う。

 国連は、我が国の提唱に基づいて、2005(平成17)年から2014(平成26)年までの10年間を「国連持続発展教育(ESD)の10年(以下、「ESDの10年」という)」と定め、ユネスコが中心となって、各国の指針となる国際実施計画を策定した。国際実施計画は「ESDの10年」の全体を貫く目標を、「持続可能な発展の原則、価値観、実践を、教育と学習のあらゆる側面に組み込むこと」としている。

 ESDは、一言で言えば“持続可能な社会の担い手を育む教育”であるが、持続可能な社会の構築に向けた課題は国・地域により異なる。そのため、ESDの推進にあたっては各国・各地域の実情に応じた取組が求められる。

 我が国においては、「ESDの10年」関係省庁連絡会議により、2006(平成18)年3月に国内実施計画が策定され、ESDの目指すべきを、「地球的視野で考え、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み、持続可能な社会づくりの担い手となる」よう個々人を育成し、意識と行動を変革することとしている。また、人格の発達や、自律心、判断力、責任感などの人間性を育むという観点、個々人が他人、社会、自然環境との関係性の中で生きており、「関わり」、「つながり」を尊重できる個人を育むという観点が必要であるとしている。

 このような中、2008(平成20)年には教育振興基本計画にESDの理念が盛り込まれるとともに、学習指導要領の改訂において、ESDの理念に沿った学習内容の充実が図られるなど、我が国の教育制度の中でESDの取組を一層進めるための基盤が醸成されつつある。多くの学校においても、総合的な学習の時間などにおいて、環境や国際理解をテーマとした学習が行われているところではあるが、ESDの理念を踏まえ、様々な課題について各教科での取組を含めた総合的な取組は、十分とは言い難い。今後、教育振興基本計画や学習指導要領を踏まえ、各学校段階において、ESDの観点から様々な課題を総合的に取り扱う、具体的な学習活動を一層充実強化していくことが求められる。

 こうした状況に鑑み、日本ユネスコ国内委員会は、「ESDの10年」の中間年を迎えるに当たり、その提唱国としての立場から一層の取組推進が必要と強く認識し、政府が以下の措置を積極的に講じることを強く要望し、建議する。

(学校教育におけるESDの推進)

  1.初等中等教育において、新学習指導要領に基づきESDの一層の推進を図るため、必要な措置を講じること。その際、学校と地域社会との連携を重視し、地域に根ざしたESDの推進を図るよう配慮すること。

  2.高等教育におけるESDの教育及び研究を推進するため、必要な措置を講じること。

(ユネスコ・スクール※1活動への支援)

  3.教育振興基本計画に関する閣議決定や、2008年2月の日本ユネスコ国内委員会提言※2の趣旨を踏まえ、ESD推進拠点としてのユネスコ・スクール加盟校の増加に努めるとともに、加盟校間のネットワークの強化など、加盟校の活動を支援する体制を構築すること。

(生涯にわたるESDの教育機会の提供)

  4.民間活動や社会教育施設との連携強化など、地域におけるESDの推進を支援し、生涯にわたるESDの教育機会の提供に積極的に努めること。その際、ユネスコ・スクールや国連大学の推進する「ESDに関する地域の拠点※3(RCE:Regional Centers of Expertise on ESD)」などの枠組みの積極的な活用に努めること。

(国際的な協働の場の形成)

  5.「ESDの10年」の提唱国としての立場を自覚し、国連及びユネスコをはじめとする国際的な場を通じて広く世界に向けてESDを推進するための継続的な発信を行い、ESDの普及促進に積極的な貢献を果たすこと。

(予算等の措置)

  6.これらの活動を推進するため、関係省庁は必要な予算等の配分について十分配慮すること。

 ※1 ユネスコ・スクール

 ユネスコ憲章に示されたユネスコの理想を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校。2009(平成21)年2月現在、わが国のユネスコ・スクール加盟校は61校。

 ※2 持続発展教育(ESD)の普及促進のためのユネスコ・スクール活用について(提言)

 ESDの学校現場への普及促進を図ることを目的に、持続発展教育の名称使用や、ユネスコ・スクールの活用・発展等を提言(2008(平成20)年2月)。

 ※3 ESDに関する地域の拠点(RCE:Regional Centers of Expertise on ESD)

 地方や地域のコミュニティでESDを広めるための、既存の公的、非公的教育機関のネットワーク。大学や社会教育施設、NPOなど多様かつ分野横断的なステークホルダーから成り、ESDを推進するための情報交換、協議、協働のための場を提供。

お問合せ先

国際統括官付企画係

電話番号:03-5253-4111(内線2602)