第1回「Specialプロジェクト2020」文部科学省推進本部会合 議事概要

(義家文部科学副大臣)
2020(平成32)年には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることとなっており、現在、文部科学省をはじめ、政府一体となってその準備を進めているところである。また、スポーツ行政の関係では、障害者スポーツにおける競技性が向上していること等を踏まえ、平成26年度より、厚生労働省からスポーツ振興の観点の強いものを文部科学省に移管し、スポーツ庁において競技力向上と裾野の拡大に両面から取り組んでいるところである。
その一環として、スポーツ庁では特別支援学校を活用した地域の障害者スポーツの拠点づくりに取り組んでいるが、東京大会に関してはその成功のみならずその後のレガシーが重要であることや、2020年から新しい学習指導要領が今、議論の真っ最中であるが、スタートすることを踏まえて、スポーツのみならず教育・文化も含めた特別支援学校全体の活動の充実を図ることが極めて重要であると考えている。
現在、障害者専用又は優先的に使用できるスポーツ施設は、全国で114。それが多いか少ないか、必要か必要じゃないか様々な議論が行われているが、そうではなくて、実は我が国には、自助、公助、共助の公助の部分として、特別支援学校がおよそ1,114。現在、障害者がスポーツをできる場所の10倍の特別支援学校がある。ここには、教室もあれば体育館もあれば保健室もあれば様々な環境がしっかりと整っている場所がある。この全国1,114か所ある特別支援学校を活用して、全国的な祭典を行いたいという思いでプロジェクトを進めてきた。
さらに、特別支援学校の児童生徒からロゴマークも募り、全国的なムーブメントにつなげるとともに、特別支援学校を地域に開き、地域みんなのスポーツ・文化・教育イベントにしたいと思っている。
パラリンピックに出場できる障害者はごく一部である。また、観戦するだけでもいいのではないかという声もあるが、重度の障害をお持ちの方々は、競技会場に行くことすらできない人もいる。障害のある方たちが社会にどんどん参画していただくことが大事だが、その参画の体制さえも整っていない人たちがいるとしたら、これは当然社会の方がハンディキャップを持つ方に対して近づいていかなければならない。
このため、パラリンピックの会場等に呼ぶという発想だけではなく、障害児の教育の場であるとともに地域の障害者の拠点ともなりうる特別支援学校に社会の方から出向いて行って、歩み寄って、そしてオリパラに匹敵する感動を味わっていただくことが必要だと思う。
すなわち、オリンピアン・パラリンピアンをはじめとしたアスリート、プロのスポーツ選手やあるいはプロ芸術家等が特別支援学校に行って本物のスポーツ・芸術に触れて地域全体が感動を共有する機会を作るような体制を整えたいと思っている。
このプロジェクトの名称については、省内職員から募った30以上のアイデアを元にしたものであるが、ご承知のとおり、特別支援教育は英語で「Special needs education」であり、2020年東京大会のレガシーとして、特別支援学校を変革し、社会、地域社会と一体となってすべての子供たちが笑顔をつくる、そんな新しい特別支援教育を構築するという想いを込めたもの、これがスペシャルプロジェクト2020である。
まだこのプロジェクトは構想段階であり、今後、4年間かけて準備をしなければならない。そのためには、文科省全体の体制を構築するとともに、教育関係者・スポーツ関係者・文化関係者・そして経済界、企業をはじめ様々な関係者が連携協力するネットワークを構築していく必要がある。
そのためにも、まずは、来年度の概算要求にむけて、文科省予算の目玉として、必要な費用を計上することも必要である。本日の議論も踏まえ、文科省全体として、この構想を共有し具体化するための取組を進めていただきたい。

(髙橋次長)
まだスポーツ庁が立ち上がって1年経っていない。文部科学省にも障害者スポーツが移管して3年目であるため、まだまだ取組が始まったばかりであるが、少しでも新しい取組を進めたいということで、今年度から新規事業ということで、「特別支援学校等を活用した障害児・者のスポーツ活動実践事業」を実施することとしている。
具体的には、放課後や休日に、在校生だけではなく、卒業生、地域住民が共に参加できる地域スポーツクラブを、特別支援学校を拠点に設立する取組を支援したり、あるいは特別支援学校の体育・運動部活動等に障害者スポーツ指導者を派遣するなどの取組を行うこととしている。
すでに、滋賀県、鳥取県、福岡県、神戸市の4自治体に加え、国立大学法人弘前大学に委託して実施することとしているが、まずは、このような取組をきっかけに、障害児・者のスポーツの拠点づくりを推進したいと思っている。
スポーツ実施率は、一般の方についてみると週1回行う方が4割であるが、障害者の方はその半分の2割に満たない状況である。いかにこの環境を整備するかということが、スポーツ庁としても大変重要な課題になっている。
そういう意味ではこの取組というのは、単にスポーツ庁だけで取り組むよりは、関係局等に協力いただいて文部科学省全体で進めていくということは大変ありがたいことである。
すでにスポーツ庁としても、こういったプロジェクトが立ち上がるということを、日本パラリンピアンズ協会の会長、副会長さんに個別にお話をして、大いに賛同する、協力したいという言葉をいただいている。
今後は、大臣・副大臣のご指導をいただきながら、関係機関、関係団体に話をしていきたいと考えている。
一つ、紹介すると、今、遠藤大臣のもとにオリパラへの対応の一環として、2020のユニバーサルデザインを作るための検討が進められている。公共施設や、インフラのバリアフリーだけではなく、心のバリアフリーを推進する、そのテーマについて、関係省庁の連絡会議が立ち上がって、ちょうど今、どういった施策を進めていくかという議論をしているところであり、例えばそういった関係省庁の方針の中にもこういった動きをぜひ盛り込めたらと思っているし、できるだけこの省のプロジェクトが省外にも普及していくようにスポーツ庁としても取り組んでまいりたいと思っているので、御指導御協力をお願いしたい。

(浅田大臣官房審議官)
基本的には特別支援学校の児童・生徒に限らず、障害のある子供・大人も含めて、そういう人たちが頑張っていることに対する世の中の評価というのが、これまで日の目を見ていない気がする。
そういう意味では、パラリンピックには非常に大きな意味があって、パラリンピックや障害者スポーツを通じて、活躍する、努力する障害のある人に対する世の中の視線等が、ずいぶん変わってきたように私は思っている。
私は、中学校の校長時代に、河合さんや大日方さんにも学校に来ていただいて、生徒たちに話をしていただいていたが、生徒たちも真剣に受け止めていて、非常に良かったと思っている。
さきほどの話で、特別支援学校を地域、社会にもっと開こうという話があったが、大賛成である。今でも、学校としては、学校公開や文化祭などいろんなことは行われているが、率直に言うと単発の取組であり、多くは元々の関係者は来てくれるが、なかなかそれ以外のところの地域には広がっていない現状がある。
それを、2020年のパラリンピック大会を契機として、もっと一気に広めたい。今まで、特別支援学校に来たことがない人などにも、繋がりを持っていただくことが大切である。
したがって、各特別支援学校でいろんな取組をする、あるいは特別支援学校を舞台に地域の人たちが、たくさん集まってくれるようなことを考える、あるいは、全国の特別支援学校の子供たちが、なんらかで一堂に会するようなことも考えられると思うし、オリンピック・パラリンピックで日本に来てくれる人たちとも交流等の機会を増やすなど、いろんなことが考えられると思う。
これからまだ時間はあるので、できる限り初中局としても、局・部がどうこうということではなくて、全省でいろんなアイデアを出し合ってまとめていければいいと思う。

(中岡文化庁次長)
2020年東京オリンピック・パラリンピック大会は、スポーツの祭典だけではなく文化の祭典としても大きな意義がある。この大会を契機として、文化・芸術のレガシーを創出していくため、我々文化庁は様々な関係省庁と協力することとしている。すでに障害者の方々による様々な芸術活動が行われているが、その高まりを感じているところである。
文化庁としても今回、Specialプロジェクト2020により、スポーツのみならず教育・文化を含めた特別支援学校全体の活動の充実を図っていくことが重要であると考えている。
これまでも一流の文化・芸術団体や芸術家が学校を巡回し、派遣する質の高い文化芸術による子供の育成事業などを行ってきている。
こうした取組は、今回のSpecialプロジェクト2020の大きなベースになると思っている。今後、この事業もうまく活用できるようしっかりと取り組んでいきたい。
また、今年10月のスポーツ・文化・ワールド・フォーラムでは、国立新美術館において障害者の優れた芸術活動をテーマとした展覧会を開催する予定としている。
こうしたことが、障害の有無にかかわらず、子供たちにとっても貴重な鑑賞の機会になると思っているので、進めていきたい。

(前川文部科学審議官)
オリンピック・パラリンピックが国民の大きな感動を呼ぶものになるということは、確かだと思うが、その感動を100%の国民が共有できるようにしていくということは非常に大事なことだと思う。同じ感動を小・中・高等学校の生徒も、特別支援学校の生徒も、障害のある子供も障害のない子供にも共通して届ける。小・中・高等学校の生徒が共同で活動する場面をできるだけ作っていくことが重要ではないかと思っている。スポーツのみならず教育、さらに文化といった幅広い分野で取組を進めていくことが重要だと思っている。

(雪下参与)
私は大学生の時にラグビーをやっていて、その時の試合中の事故で、脊髄損傷で、障害者になった、いわゆる中途障害者である。怪我をするまでは普通の生活を送ってきたので、特別支援学校には行ったことがなく関わりも持っていない。私のような中途障害者の人は、病気や怪我で障害を負ってしまった後、障害者としてどうやって生きていこうかということを、あまり地域の情報などを得られないまま社会に投げ出されてしまうような状況があるので、このプロジェクトを通じて、中途障害者の方も、このような地域の特別支援学校を一つの地域で情報を得る場所であったり、コミュニティの一部として気軽にいけるようなところになっていくとより良いものになるのではないかと考えている。

(浅田大臣官房審議官)
先ほど、前川文科審から特別支援学校以外の子供たちの話もあったが、例えば、特別支援学校の子供ではないが、発達障害があって学校には行きにくいが、絵や音楽等で特異な能力を持った人がいる。そういう子供たちも含めて、活躍の場が作れればよいと思う。

(丸山特別支援教育課長)
午前中に、このプロジェクトを支えていただくという上でも重要な、全国特別支援学校長会の横倉会長と少し話をした。会長曰く、今回のSpecialプロジェクト2020は、全面的に協力させていただきたいということであった。昨年、校長会では、障害者体育の推進に関する委員会というものを立ち上げて、内部での打合せを進めてきたとのことである。6月23日には、副大臣御出席のもと、全特長の全国大会があり、そこで、スポーツ委員会という新しい委員会を立ち上げて、今回のSpecialプロジェクト2020に対して、全特長としてもしっかり取り組んでいきたいとのことだった。それから、全特長としては、障害者体育について進めていくという観点で、日本体育大学と共同で調査研究事業をしていくこととしており、その調査結果を踏まえて、今回のプロジェクトを進めていきたいと考えているとのことであった。

(横田特別支援教育課企画調査係長)
このプロジェクトを実行に移していく上で、学校の負担感をいかに軽減していくかということが非常に重要かと思っている。それを行う上では、学校の関係者のみならず、様々なスポーツ、文化の関係者や地域の方々、企業も含めていろんな方々を巻き込んでいくことが非常に重要ではないかと思っている。本日、ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議に出席させていただいたが、その中でも、心のバリアフリー教育が重要であると、特に障害者理解の促進をしっかり図っていく必要があるというような御指摘をいろんな団体からいただいており、今回のプロジェクトはまさにそういったことにも資すると思っている。
また、関係者の理解をどうやって得ていくのかというところでは、全特長とも我々も一緒に取り組んでいきながら、かつ、関係者だけではなく、スポーツ、文化、経済関係者の方々といろいろと一緒になっていいものを作っていけたらと思う。

(荻原健康スポーツ課企画係長)
2020年東京大会のレガシーの創出に向けて、組織委員会が中心となって議論を進めているが、私個人としても、社会全体で障害者スポーツの普及促進に取り組むための機運の醸成や環境整備が重要であると考えている。スポーツ振興の観点から考えた場合、「する」だけでは無く、「観る」・「支える」の一体的な支援が重要であると考えているが、特に、心理的ハードルが低いと考えられる、「観る」スポーツへの取組強化は重要であると考えている。
一つデータをご紹介させていただくと、スポーツ庁の平成27年度委託調査だが、障害のある方々を対象に、過去1年間にスポーツ観戦の有無を聞いたところ、「直接のスポーツ観戦」、「テレビでのスポーツ観戦」、「インターネットでのスポーツ観戦」の全てにおいて、「観戦した種目はない」が最も多かったという調査結果も出ている
また、障害のある方が、過去1年間に障害者スポーツの観戦があるかどうかについては、「直接のスポーツ観戦」は0.9%、「テレビでのスポーツ観戦」は2.7%、「インターネットでのスポーツ観戦」は0.4%と非常に低い数値となっている。
障害のある方々に「観る」スポーツを支援する視点としては、トップレベルのスポーツ観戦はもちろん、パラリンピック種目などの障害者スポーツの観戦も含まれていると考えており、現場にどのようなニーズがあるのかをしっかり見極めながら、具体化に向けた取組を進めていければと考えている。

(兒玉障害者スポーツ振興室係長)
障害者スポーツセンターで勤務したことがあるが、実際に障害者スポーツセンターに通っている児童や生徒は限られている。自分で通える方、家族などのサポートがある方が利用している現状にある。そこで特別支援学校、作業所などを拠点づくりとして活動を行ってきたが、そこでの問題点として、指導者や支える人がいないということだった。その場所で指導者を育てるという点にとても苦労した。現在、全国には初級、中級、上級の障害者スポーツ指導員が2万3千人ほどいるが、なかなかその指導員を活用できていないという現状がある。指導員もどうやったら活動できるのか、情報が不足しているという状況である。このプロジェクトを2020年以降のレガシーとして残していくためには、指導者の存在は不可欠だと思う。学校関係者等としっかり連携を取りながら進めていくことが重要だと考える。

(稲毛障害者スポーツ振興室長補佐)
昨年10月に厚生労働省から出向しているが、厚労省で人材育成に係る業務に携わったことがあった。その際の課題として、ニートや引きこもりといった、社会的弱者の方々の問題があったが、そのための中心的な施策として、地域若者サポートステーションというものがあり、引きこもりやニートの方々のところに出向いて行ってアウトリーチ型の支援を行っていた。こういった取組は、国際的にも高い評価を受けている。今回のプロジェクトとニートの方々を対象とした施策とを比較をするのはどうかといった点もあるが、障害のある人のところに手を差し伸べるといったアウトリーチ型の取組は非常に有効であると考えている。
また、海外の方とも意見交換する機会があったが、特にアジア諸国においては、社会的な弱者が大きな課題であるということで、そのときのキーワードがSocial Inclusionであった。今回のプロジェクトについては、まさにソーシャルインクルージョンという、言葉としては非常に抽象的であるが、そういった考え方を具体化する重要な取組であると考えている。

(塩見芸術文化課企画調査係長)
障害のある方の芸術作品はすばらしいものがたくさんあるということを、当課で担当して実感している。文化庁では、平成26年度から、障害のある方の文化芸術について全国でどのような活動があるかについて調べる調査研究を実施した。その調査研究の成果である、展覧会が昨年度、埼玉県・滋賀県で開催され、障害のある方々の多くの芸術作品を鑑賞する機会に恵まれたが、本当にすばらしい、新たな発想に満ちた多くの作品に出会い、大変感動した。今回の機会を活用し、特別支援学校において、地域の様々な、より多くの方に、障害のある方のすばらしい芸術活動に触れていただくとともに、一緒に芸術活動に参画していただけるような、また、障害のある児童や生徒がより多くの芸術作品に触れられるような機会の充実に取り組んでいきたいと思う。

(小林芸術文化課課長補佐)
芸術文化における社会的包摂の取組にはすばらしいものがある。取り組んでいる県としては、滋賀県や埼玉県等で行われている。埼玉県の近代美術館において、「すごいぞ、これは!」展という展覧会があった。そこではあるモチーフをくりかえし小まめに丹念に作り上げるという絵画が多く見られた。五感の中で一つ障害があったとしても、その分、他の感覚が非常に研ぎ澄まされているということではないかと思っている。また、中途障害者であったベートーベンは30代の頃に耳が聞こえなくなったが、その後に「運命」や「田園」などの楽曲を作り出した。そういう芸術作品を鑑賞することによって、障害のない人も、自分たちも頑張らなければならないと思うのではないか。そうやって障害の有無にかかわらず、多くの人々がお互いに素晴らしい芸術作品を通してより良い共生社会を作り出していけるのではないかと思っている。今回、この構想を通じて、芸術文化課としても参画することができて嬉しく思っている。

(瀧本総務課長)
10年ほど前に特別支援教育課長、昨年の春までは千葉県の教育委員会でより現場に近いところにいたものとして、すばらしいプロジェクトだと思いつつ、現場はまだまだ課題があるなと思っている。一つ申し上げれば、千葉県の教育委員会にいたが、県立の体育館が車椅子バスケットボールを排除していたということが在任中に発覚した。なぜかと思ったら、誤解や過去の悪い例を引きずっていたものである。県立の高校で体育館を開放したところ、車椅子バスケでかなり床が傷ついて、修理代だけで相当なお金がかかったということが20年ほど前にあった。ところがよく考えてみると、今の車椅子バスケの車椅子はとても進化していて、よっぽどのことがないと傷つかないが、マットを入れる時もある。千葉県の教育委員会に、車椅子バスケの全日本代表でパラリンピックに出ていた方がいらっしゃったので、全日本チームの方々に来ていただいて、実際車椅子バスケをやって検証した。やってみると、今の車椅子は傷がつきにくいことが分かった。そういったことは、あちこちにまだまだあると思うので、このような課題を1つ1つ解決していかないといけないと思う。
今回のプロジェクトというのは、そうした様々な現場にありがちな課題を1つ1つ解決しながら進めていけるように私自身も努力していきたいと思っている。
また、視覚障害者などが行えて手も使えるミニサッカーのようなもの、ハンドサッカーで言うと、おそらく目隠しをして一緒にやると、障害のない人の方が全然かなわない。障害のある方の別の感覚の優れたところというのは、さきほどの芸術の点もそうだが、そういう所を知る、一緒にスポーツをやってみると、実は障害のない人の方が相対的に比較すると、障害者の優れたところに気付く。そういったことをやっていくと、さっき発言があったが、心のバリアフリーなどにも繋がっていくのかなと思う。スポーツは、そういう意味では障害者の理解というか、壁を引き下げていくことには非常に分かりやすい部分なのかなと思っている。
最後に、ちょっとおつきあいのある「ねむのき学園」は、古くから私財を投じて、肢体不自由、知的障害を合わせ持った子供達のいる私立の特別支援学校であるが、そこは芸術の面で子供の能力を伸ばすという点では非常に大きな成果を収めてきている。全国に十数校しか私学の特別支援学校はないが、そこも含めてプロジェクトの中で地域により開かれて理解が広がっていけばいいなと思っている。特別支援教育に関しては、従来からインクルーシブ教育に向けて取組を進めてきており、開かれた特別支援教育というものが今後非常に大事になってくる。

(藤原大臣官房長)
資料3にあります、平成29年度予算要求の反映について、この検討でいろいろといいアイデアが出てくるだろうと思うので、その要求を財務省に対してしっかり対応していきたいと思う。なお、昨年度の概算要求で、文化プログラムがゼロ査定になってしまった経緯もあるので、きちんとした対応をしていきたいと思う。

(田中障害者スポーツ振興室長)
髙橋次長からも話があったが、現在、日本障がい者スポーツ協会、日本パラリンピアンズ協会、さらに特別支援教育関係の団体等とも話をさせていただいているところであり、義家副大臣におかれては、全特長・私特連の非公開の意見交換会にも加わっていただいたところ。また、6月23日には全特長の全国大会で話をしていただくことになっている。そうした際に、関係者の皆様方は、やることには好意的であるものの、中には大変ではないかという意見もあった。
関係者にも伝えていることは、ひとつの事例としては、例えば、私も県にいたことがあるが、広島県では学校へ行こう週間という取組を行っていたことがある。地域住民の学校への信頼を得るために、一定の期間、広島県内すべての学校を公開する。それによって、地域住民の協力を得るためのイベントなどを行うとともに、レガシーということではないが、その後、保護者などから協力を得た学校にしていく。それを、小・中学校もあるので、広島県教委ならず、全市町村教育委員会が主催となってすべての広島県内の小・中・高校や特別支援学校において一定の期間、そういったイベントをするというものである。これは文部省の是正指導という別の意味もあったが、そういった取組もあったので、こういったイベントを全国的にやっていくというようなイメージで捉えると、実現することは不可能ではないと思っている。
また、特別支援学校では、今でも地域住民の協力を得た形で体育祭や文化祭をすでに毎年行っている実態はあるので、そうした、各特別支援学校が2020に通常の体育祭、文化祭にプラスアルファとして、子供たちにとって2020年が特別なものとなるよう、国を挙げて支援、サポートする、そういったイメージではないかなと思っている。そうした観点でいくと、現在でもスポーツ庁でもアスリートの派遣等の事業を行っているし、文化庁、芸術関係でも派遣の事業、あるいは初中局でも子供たちが障害者スポーツを通じて共同学習をする事業があるので、そういった、国の事業、さらには内閣官房などを巻き込んで地方公共団体の事業、民間のスポーツ団体等の事業とマッチングさせていく、そうしたイメージである。そのような形であれば、いろんな人が関わり広がっていくのではないかと思っている。まずは、このメンバーでスタートという形ではあるが、資料3にもあるとおり、いろんな関係、方面で協力を得ていくというのが非常に重要なことである。そういったことも含めて進めていければいいと思っている。

(髙橋次長)
今の皆様方のお話を聞いていて、特に丸山課長から、学校長会が非常に協力的だということ、熱心だということは大変力強いと思ったが、ただ、やはり、先ほどお話があったように、負担感をどう軽減していうかということもあるが、今回の我々のターゲットは特別支援学校であり、都道府県の知事と教育長に理解を得ることが重要である。スポーツ審議会には北海道知事の高橋知事が入っているし、今の大学スポーツの勉強会には熊本の知事が入っている。そして、これから国体や全国障害者スポーツ大会を開催する県については、スポーツ庁としてもアプローチしやすいので、知事の理解を増やすような個別のアプローチをしていきたいと思うし、それぞれ部局において働きかけていくことや、知事会などの働きかけていくことも必要だと思う。

(浅田大臣官房審議官)
先ほど、瀧本総務課長から体育館の傷について話があったが、そういう現状であれば、そういう所から始めなど、できることが結構ありそうだなという気がする。2020年が一つのターゲットイヤーではあるが、そこでイベントを行って終わりということではいけないので、後に残るものをどれだけ作れるかということだと思う。その上では、先ほど、千葉県立の体育館であった事例のように、例えば車椅子バスケットに開かれた施設をできるだけ増やしていく。車椅子バスケだけではないと思うが、そういうところから進めていくことなどは、すぐにでも始められることだと思う。

(田中障害者スポーツ振興室長)
今、ご質問があった件は、我々も車椅子関係の団体から、公共の体育館が使えない、学校の体育館も貸してもらえないという声は聞いている。ただ、車椅子バスケなどで床が傷つくのは車椅子ではなくて、衝突して倒れた時が傷つくということである。今の車椅子はよく出来ているので、車椅子ラグビーや車椅子バスケをしただけでは傷はつかない。それが、一般の方々には、車椅子自体で傷がついてしまうといった誤解があって使わせてもらえないというところがある。実際に車椅子ラグビーなどでぶつかった場合には床が傷つくので、それはスポーツイベントなどの時には100万円程度かけて床にシートを敷くが、子供達が車椅子ラグビーなどを行う際には傷つかない。それは、我々の方で、雪下参与にも加わっていただいた有識者会議で、そういった理解啓発が必要だという報告書をまとめた。実際に東京都においては、車椅子を使っただけでは床は傷つかないといったパンプレットを作っていただいている。

(前川文部科学審議官)
一つエピソードを紹介する。心のバリアフリーという言葉が先ほどからでてきているが、共生社会の実現に向けて一緒にいろんなことを楽しんでいくんだというような機運を作っていきたいと思っている。その時に、最近のことで思い出すのは、NPO法人が行っているコンテストで、マイプロジェクトアワードというものである。高校生が私はこれがしたい、というようなプロジェクトを出し合うコンテストであり、その審査員をしたが、その中で、これはいいなと思ったものがあった。都立高校の高校生の女の子だが、発達障害やその他の障害もある弟がいて、家族で映画を観に行った際に、弟が映画の途中で大きな声を出してしまった。その時に後ろにいたお客さんから、心ない言葉を投げつけられ、非常に悲しくて悔しい思いをした。世の中には弟のような人もいるが、平等に映画を観る権利はある。世の中の人たちに、もっと障害について知ってももらわなければならない、自分に何ができるかを考え、障害のある人とない人が一緒に演劇を行う、作ることを考えた。そこで、特別支援学校の先生に相談に行き、その特別支援学校の生徒と一緒にミュージカルを作りたいと提案した。そのことを仲間に伝えたところ、大賛同してくれた。今はそのミュージカルを共同で作っているところである。私の担当の中ではこれが一番ふさわしいと思い、推薦した。その後、彼女は全国大会で4位に入った。

(馳文部科学大臣)
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は、はじめてオリンピックとパラリンピックを同じ組織とし、準備に向かっているということで、高い評価をいただいている。
私たち文部科学省として、オリンピック・パラリンピック大会のレガシーを、大会が終わった後にも残していくことが、Specialプロジェクト2020の目標である。
そうすると、現場の実態を見ていけば、何ができるのかなとだいたい分かってくると思うが、特別支援学校の教職員は、特別支援学校教諭免許状を持った人が7割を超えたところである。したがって、文部科学省的に言えば、専門性を持って子供たちを見てくれる状況までなってきたといえる。
これは、発達障害者支援法や現場の理解もあると思う。次に繋げていくということが必要であり、まさしく地域との連携、美術とか、本物のスポーツを見せてあげることが重要。それから、子供たちが帰ったらだいたい学校の先生たちは帰る方が多いが、夕方から夜、祝日、土曜、日曜、管理の問題もあるので、ここをどのように使うのか。副校長とか、主管教諭とか校長に負担がかかるのではなくて、できればコーディネートしてくれる人により、安心して施設を活用できるようにしていく。
また教職員のみなさんにも研修などによっていろんなキャリアを身につけていただいて、コーディネート役をしていただくようになっていく。
そういった意味でやはり特別支援学校を地域・企業で連携してさらに行っていく、そのナショナルスタンダードを展開していこうと。その施策のタマ出しをしていくのがこのチームの役割であり、まずは、来年度予算で、モデル事業で、全国の良い事例を集めながら進めていくことが一つの目標だと思っている。
そうしていくことが、腰が引き気味だった地域のみなさんや障害者と接点のない方々に、障害者と距離を置く必要は全くないんですよと、一緒に生活をし、福祉、教育、芸術、スポーツ、共同してやることがこんなにすばらしいことですよということ、価値観を残していくことがレガシーになっていくと思っている。
そのため、このプロジェクトに多くの障害者の方にも障害のない方にも、企業の方にも、団体の方にも、スポーツ界・文化界・教育界からも参加していただければと思う。
スペシャルなこのプロジェクトに仕上げていく。必ず2020年以降に残っていくんだと、そういうものに仕上げると同時に、やればいいというものではなくて、フォローアップを常に行っていただきたいと思う。
先週、総理官邸で、障害者と集う会に出席したが、とても感動した。
すばらしいと思ったら、そこまで仕上げる、導いてくださる誰かがいたから、我々のような者でも、すばらしいじゃないかという風に感じることができたわけで、その繋ぎ役を我々文部科学省がやるべきではないかと思う。
義家副大臣からも強いリーダーシップをいただいてSpecialプロジェクト2020を進めていただくことになるので、皆様方の働きは必ずや2020年以降に繋がる、これは、共生社会や文化、そういう拠点になっていくものであり、よろしくお願いする。

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