スポーツツーリズム需要拡大のための官民連携協議会(平成30年度)(第3回) 議事要旨

1.日時

平成31年1月29日(火曜日)13時30分~16時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階第2講堂

3.出席者

委員

原田座長、宮嶋委員、中島委員、陳内委員、中村委員、山下委員、堀委員、後藤委員、藤崎委員、竹田委員、利渉委員、安齋委員、北嶋委員、金森委員

4.議事要旨

●「武道ツーリズム」の推進について(実践者からの報告)
〇沖縄県空手振興課の取り組みについて
・空手の振興について
沖縄の文化資源の一つである空手を振興・発展させるミッションを担っている。現在194カ国、1億3,000万人の空手愛好家がいると言われるまでに急速に成長している。まず昨年の3月に沖縄空手の普及促進の拠点施設として、沖縄空手会館をオープンした。空手発祥の地沖縄を国内外に発信するための拠点として整備した。また、空手愛好家が、空手の聖地沖縄で修行したいというときの受入体制の拠点施設としての性格も有している。さらに、学術研究分野を深めていこうというところで展示資料室も整備した。
その上で、20年の長期構想計画となる、空手振興ビジョンというものを策定した。空手関係者だけではなく、沖縄県内の経済界の人たち、それから学識経験者などが一体となって沖縄空手を振興していくことにより、技、精神性の保存・継承、国内外の普及だけではなく、交流人口の拡大へとつなげていくと考える。
沖縄空手の世界への発信という観点では、世界に向けて実際に沖縄の空手家を派遣する指導者派遣事業を実施している。
・空手国際大会の開催
第1回沖縄空手国際大会を、昨年の8月1日から7日の1週間、開催した。世界の国と地域から約1,100人が参加した。空手の魅力の一つとして、空手を目的とした、普段沖縄に来ない国の人を呼び込むことができる。課題としては、各国の夏季休暇であることから8月開催としたことに伴う、台風リスク。それと8月は沖縄観光のハイシーズンであるための、金額的な問題がある。また、今回は沖縄空手会館と県立武道館の2会場で開催をしたが、第2回大会は1.5倍から2倍集まる見込みであるため、その場合の受け入れ会場がないことが課題。
国際大会については定期開催化していきたいと考える。第1回は那覇市で開催したが、今後は島内の様々な場所で開催をしたい。そのコンセプトとして、沖縄本島を一つのテーマパークとして考える。県内には386の道場があるので、それぞれをアトラクション施設と見立て、参加者が県内を循環させるような流れにすると、より沖縄県の活性化につながるのではないか。
(質疑)
・空手については、愛好家だけでなく、観光素材としてポテンシャルを持っているものと考える。例えば、現在空手の動画が世界的なブームを起こしている。そういったところから、本物の空手を体験してもらうようなスキームを生み出せば、良いのではないか。

〇山形県村山市商工観光課の取り組みについて
・居合道、サムライ体験商品の造成について
山形県村山市の観光の課題として、観光商圏が東北地方の南部に偏っているということがある。今後観光交流の人口を生み出していくにはインバウンドが良いのではないかと考えた。そこで村山市の観光資源である、居合道使った事業ができないかと考え、商品造成を行った。
居合道体験プログラムをどうやって開発したかということについては、2015年に村山市で観光プロモーション発信事業、観光業務活性化ワークショップを、市民を対象として開催した際に、市民の得票が一番多かったのが、居合道体験だった。村山市では居合道発祥の地ということで、小学生から居合道を行っている。その上で、この居合道観光の商品の構成をワークショップで進めていくことになった。メンバーとしては、村山市副市長をはじめ、村山市の関係各課、観光物産協会、居合道の関係者、抜刀道の関係者、観光関係者、神社、そして地元住民など、多くのステイクホルダーが一堂に会して検討を重ねた。そして、実際の商品を様々な方に体験をしてもらい、商品としての精度を高めた。
今後外国人のFIT向けの商品を検討している。その上で、そもそも山形県村山市に来るのかどうかが課題である。基本的には、1名でも受け入れができるよう、態勢を整えている。また、利益率の高い体験プログラムを構築しつつ、満足度の高い商品を造成していきたい。
(質疑)
・ターゲティングが課題ということで、居合や剣道、サムライを検索してる人だけに情報発信をするようなことを行うのは効果的だと思う。マーケティングの空中戦を行うことで、よりよい商品開発ができるのではないか。
・旅行商品として、聖地やルーツであるということは価値がある。その上で戦略的な仕掛けが必要である。

●2019年度以降のスポーツ庁としての取り組みについて
・アクションプログラム2019について
スポーツ庁として、2018年の3月にスポーツツーリズム需要拡大戦略を策定し、3つの柱と10の具体的な施策、そして重点テーマとしてアウトドアと武道を打ち出した。その戦略を計画的に推進していく方向性として、アクションプログラム2019を作成した。PDCAサイクルを築き、次期アクションプログラムへとつなげていきたい。
2018年度までに取り組んできた内容について、まずプロモーション動画を作成した。2019年度については、ターゲットを絞ったさらなるプロモーションを行いたい。
スポーツコミッション、それからスポーツ・文化・観光の取り組み奨励については、引き続きこれまでやってきた取り組みを継続していく。特にスポーツコミッションについては、武道ツーリズムを視野に入れて取り組んでいく。2019年度は、まずスポーツツーリズムセミナーの開催。続いて、モデル事業の検討、それから武道ツーリズム推進に向けた施策の検討を行う。今回の協議会委員に意見を問い、取り組んでいきたい。こういった施策については、予算要求を2019年度に行い、予算化できれば、2020年度から事業に取り組みたい。その上で、2019年度は地域でセミナーを、テーマを絞って開催したい。開催地域の関係者を始め、自治体、企業、観光関係の団体、スポーツコミッションを巻き込んでセミナーを開催し、実際にお互いのマッチングをできる機会を創出、もしくはイベントを開催して、地域の中でスポーツツーリズムを普及する取り組みを行っていきたい。
スポーツツーリズムのモデル事業の実施については、スポーツのテーマごと、例えばサイクリングやゴルフ、空手のようなテーマごとに全国の関係団体と連携し、現状の課題をヒアリングした上で、モデル地域を選定し、現地で実施したい。成果については、フィードバックをし、それをテーマごとにとりまとめたものを作成する。予算の確保については、関係省庁と協議をしていきたい。
続いて、武道ツーリズムを推進するための全国団体の設立を検討する。武道は、ツーリズム市場に対して、世界中にポテンシャルがあると考える。比較的取り組みやすい体験を通じて、日本に呼び込むことを行っていきたい。そういった際に横断的な組織が必要と考えているため、団体の設立に向けて、働きかけていきたい。武道に特化した各団体を連携させ、認識の方向性を一つにして、運営を行う。
 
(討議)
・2019年のラグビーワールドカップや2020年のオリンピック開催は、スポーツに関してメディアが取り上げる機会が増えるので、そこに乗っかってPRを行うことも戦略の一つになるのではないか。
⇒今後検討していきたい。
・財源について、最初は公金がいいと思うが、最初から組み込むべきかどうかを議論する必要があると考える。
・競技団体のトップは、スポーツを地域に生かすということの知見を持っている。例えば財源創出に対する支援、そのためのコンサルティング機能を、各競技団体が関わるという形を作ると、オリンピック以後を見据えた持続可能な施策になるのではと思う。例えば、ふるさと納税の仕組みを使って、根室市が3億円を1カ月で歳入にしたようなことを検討してもよいかと考える。こういった仕組みはスポーツとの相性が良い。ふるさと納税の仕組みを使って、返礼品を頼らないスポーツガバメントクラウドファンディングを立ち上げるという提言をしたい。
⇒武道は、日本全国どこにでも道場がある、非常に広大なインフラを備えたコンテンツなので、ふるさと納税も生きてくると考える。
・セミナーを開催するうえで、競技関係者の参加は必要と考える。競技関係者に対して意義を伝えていく取り組みを行うべきである。同時に、自治体や武道ツーリズムを参加したいと思う旅行者に対する情報発信も行う。そういった地に足が着いた形で進めていく必要がある。そうすることにより、いろんな県で少しずつ動きが出るのではと思う。また、モデル事業の財源については、省庁のフォローにより、スポーツツーリズムの推進ができるのではないか。
・地域の広域連携ということも意識をすべきではないか。隣接する自治体が同じレベルで意識が高まることにより、施策ができやすくなるという利点がある。
・セミナーの開催については、もう一歩進んだフェーズに移ってもよいかと考える。例えばスポーツツーリズムに関する法的な問題や財務の問題、さらにマーケティングの問題というような具体的な課題を展開していくべきと考える。
・武道ツーリズムは、実は中国が先進国である。ただし、現状の中国では、オーバーツーリズム、商業化があまりにも進んでしまった。日本の武道ツーリズムについては健全な形で、発展をしてほしい。
・官民連携プロモーションにおけるデジタルプロモーションの実施について、自治体がデータを公表してもうまく活用できていない。そういった現状から、デジタルプロモーションの有用性を伝播する必要があるのではと思う。
・スポーツツーリズム推進のKPIとはどうなのか。
⇒スポーツツーリズム推進のKPIとしては、スポーツ目的の訪日外国人の数や、スポーツツーリズムで消費された関連商品の数を2017年から2021年の第2期スポーツ基本計画の中で目標として掲げている。
・中々KPIの設定は難しい課題と考える。スポーツツーリズムのデスティネーションとしての認知度や実施率をKPIとするのも一つではないかと考える。また、そういった調査を国家レベルで行うことも検討すべき。
・スポーツツーリストは消費額が高いとか、SNSのリテラシーが高いというような調査実績がある。スポーツツーリズムの需要拡大をするためには、特に海外からのスポーツツーリストを誘致することは、通常のツーリストよりも意義があるということを可視化していくのも一つの考え方である。
・KPIについては、様々な数値がデータで把握することができる。最小の経費で最大に誘客につながるかがわかるので、設定することは非常に重要である。
・スポーツツーリズムを推進していくうえで、将来的な日本のスポーツ振興とどういう関わりを持つかということを追い続けることのも、意義があると考える。
・スポーツツーリズムにおいて、地域間格差を感じる。各自治体に対して、柔軟に取り組むことのできるものであることを周知しても良いのではないか。
・今後の国内スポーツ振興を考えていくうえで、選手のネクストステージを考える必要もあるのではないか。そういった機会を創出することで、人材の活用ができると思う。
・日本のスポーツツーリズムを拡散できるプラットフォームが足りていない。海外で展開するコンテンツを作らないと、資源が埋もれてしまう。そういったプラットフォームを官の力で整備するというのも一つの方法と思う。

〇官民連携協議会で協働して取り組む実験的取組についての進捗状況(いわき市について)
・前回の協議会から2カ月が経過し、委員の提案に基づく取り組みを報告する。モンベル社が視察で来訪し、今後の資源の活用の可能性、展開方法、それらについてのアドバイスを行った。その上で新たな事業、仕掛けを今作成している。そういったことについての報告となる。
いわき市は、東は太平洋に面しており、60キロに及ぶ海岸線がある。内陸部におきましては、地域の約7割が阿武隈山系の山々となっている。これらの地域資源をどのように活用して、スポーツツーリズムの流れを作っていくのか。これらの地域資源の活用に向けて、モンベル社が、いわき市と検討を行っているところである。
いわき市には、かなり良い資源がそろっている。特に海岸線に関してはアウトドアスポーツの資源としては、かなり可能性がある。また、山間部については渓流トレッキングあるいは滝遊び、そういったアクティビティの可能性が非常にある。
モンベル社のイベントである、ジャパンエコトラックについても取り組み可能である。エコツーリズムの視点に立ったルート作りを検討している。地域が非常に広いということで、各エリアのルートマップを作ることも可能である。また、SEA TO SUMMITという取り組みについても検討している。
サイクリングロードの整備を、いわき七浜街道にて整備を検討している。海岸線だけで80キロ程度のサイクリングロードになる。内陸部と合わせる200キロ程度のサイクリングロードができる。近隣の自治体と連携で、ロード全体の復興につなげていきたい。また、新舞子ヴィレッジサイクリング拠点整備というものも現在進めている。サイクリングロードの整備に合わせ、中間地点にサッカーのグラウンドやテニスコート、プール、多目的ホール、あるいは宿泊施設、温泉などが備わったスポーツ施設である新舞子ヴィレッジというものがある。この施設を新たなサイクリング拠点としてサイクルステーションを設置する。この施設の宿泊施設について、サイクリングさらにはパラスポーツの拠点となるように改修を行っている。
続いて、市の南部のサイクリングロードの整備に合わせ、環境整備を行う。市の南部地域の海岸が連携して、マリンアクティビティを中心としたアウトドアコンテンツの構築について、調整進めている。いわき市には震災前、九つの海水浴場があった。現在は海水浴場としては再生できておらず、地域として再生していきたいという要望がある。この地域にシーカヤックやサップ、フィッシングといったアウトドアスポーツや、それからサイクリングの拠点として、整備を行っている。現在、官民連携で計画づくりを進めている。財源については、来年度の地方創生推進交付金の獲得を検討している。更に地元の漁港組合と連携して、様々な活用策を検討している。
(質疑)
・海水浴場について再開できるか否かの違いはどういった点なのか。また再開をした場合に、来客はあるのか。また、湯元温泉の数値について、震災の年の数値が、他の温泉地に比べ、1割減に留まっている理由は何かをしりたい。
⇒海水浴場について、現在再開しているのが、3カ所。それ以外の場所でも、整備ができていても、震災の影響で地元の管理ができないということが問題となっている。そこで、管理者を立て、進めていくことを探っている。
湯元温泉については、震災の年に作業員の方が宿泊していた。その後は、観光客については中々戻らない実態がある。

〇スポーツ庁制作動画プロモーションの進捗状況
・アウトドアツーリズムスポーツと武道ツーリズムの二つの動画の配信を12月より行っている。スポーツ庁のFacebookとスポーツ庁のYouTubeのチャンネルで配信。アウトドア動画はFacebook、YouTube合わせて203.5万回、武道動画は合計359万回の視聴となっている。
スポーツ庁のFacebookでの配信については、通常スポーツ庁の投稿は、1件あたり数十件~数百件のいいね、シェアがあるが、今回武道ツーリズムの場合、いいねが4110件、シェアが9,636件となっている。コメント欄についても海外から好意的な意見が多い。
今回、通常の配信に加え、広告配信も行っている。広告配信に関しては二つ行っており、YouTubeのTrueViewインストリーム広告、百度の動画広告である。中国ではYouTubeが閲覧できないので、中国については、百度にて配信をした。対象国は、アメリカ、フランス、台湾、香港、日本、中国で配信。今回の目標値が200万回視聴で、実績は611万5,070回という結果だった。安価に配信することが出来、3倍という結果を残すことができた。視聴率、クリック率については、国地域別でアメリカが一番興味を持った。続いて、香港、台湾、フランス、日本の順となっている。平均視聴単価が1円台と大変安くなっている。
国毎の関心層については次の通り。アメリカに関しては、武道とアウトドアどちらも完全視聴率が20%を超えており、関心度が高い。また、若年層ほど動画の関心度が高いことも分かった。香港に関しては、武道よりアウトドア動画のほうが視聴率が良かった。香港と台湾に関しては、女性の視聴率、クリック率の割合が高く、女性のほうが興味を持ったということが分かった。
台湾に関しては、どちらの動画も高い反応があった。最も視聴率が高いのが18歳から24歳の若年層。クリック率は45歳以上の方が多く、上の年配の方にも関心を持ってもらえた。
フランスに関しては、アウトドアよりも武道の関心が高いことが分かった。視聴率、クリック率に関しては男性の関心が高かった。
日本に関しては、他の国と比べ、視聴率と完全視聴率ともに一番低くかった。結果、この動画自体は海外に人気の動画ということがデータの中から分かった。クリック率と視聴率に関しては男性の関心が高かった。
中国に関しては、他の国に比べ、武道が高かった。そして、モバイル端末の視聴が多かった。
今後さらなる効果検証を進め、スポーツツーリズムのマーケティングデータとして還元できるよう考えている。

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スポーツ庁参事官(地域振興担当)

(スポーツ庁参事官(地域振興担当))