高校生等の冬山・春山登山の事故防止のための有識者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成29年10月17日(火曜日)16時00分 ~ 18時00分

2.場所

スポーツ庁会議室(16F3)

3.議題

  1. (1)平成29年3月27日那須雪崩事故検証委員会の取組について
  2. (2)高校登山部の冬山登山の活動内容について
  3. (3)再発防止策のための主な論点について

4.議事要旨

(1)平成29年3月27日那須雪崩事故検証委員会の取組について
   ○平成29年3月27日那須雪崩事故検証委員会の最終報告書の内容について戸田委員から説明を行った。
    ・本報告書の目的は、事実を明らかにして問題点を抽出し、その問題点を解決するための対策や取組を導き出すというもの。内容が深く広くなっており学校や県だけで改善できるものは少ないため、スポーツ庁はじめ様々な関係機関に向けた提言という形となっている。
    ・雪崩が起きた原因については、専門家の分析の結果、自然発生なのか、あるいは人が踏み入れたことによって起こったのか一方を特定することは困難。
    ・委員会は刑事的・司法的な権限もなく、基本方針として責任追及は目的ではない。
    ・主な問題点は、ア.高体連、登山専門部、春山安全講習会等の体制、運営等の状況 イ.当時の活動状況の中で的確な代替案を事前に持っていなかったこと ウ.事故発生時の状況及び対応として、講習会の本部が機能しなかったこと エ.初期対応時においてもリスクマネジメントの観点からは対応できていないこと オ.初期対応から現在までの取組については特に心のケア等で今後問題になってくるだろうということ。
    ・論点に基づいた分析等としては、ア.登山部活動及び講習会等の安全管理体制の整備、指導者の資質向上という面で、うまくできていなかったということ イ.気象遭難事故防止のための危機管理がほとんどされていないこと ウ.野外活動において連絡体制が極めて重要であるということ エ.学校登山事故と安全配慮への措置の在り方として、(ア)先生や講師がそれぞれ役割分担して運営するという組織的な安全管理の義務が果たされなかったこと (イ)ヒューマンエラーを他の構成員が制止することができなかったこと (ウ)講師同士の情報交換や気象に関する情報収集等がなく計画が変更されたこと (エ)1班の講師は雪山経験もあり、雪崩の予見可能性はあったと考えられること (オ)本部が本部の役割をはたしていなかったこと、が挙げられる。
    ・国レベルでも県レベルでも研修等の顧問の資質向上の支援はなく、個人に任されていた状態。それを踏まえて提言を記した。ア.PDCAサイクルに基づいた計画のマネジメントと危機管理の充実 イ.安全確保のための県教育委員会のチェック機能の充実 ウ.顧問等の研修の充実 エ.国、関係機関の支援 オ.高体連の主体性の確立 カ.関係者の心のケア キ.生徒自身が事故や登山について学ぶ主体的な取組。

(2)高校登山部の冬山登山の活動内容について
   ○奈良県立奈良朱雀高等学校/前田先生から発表を行った。
    ・全国高体連登山専門部として登山教本を作りたいが、皆教師であり、なかなか時間が取れない。
    ・登山の経験があって登山部の顧問になる教師は非常に少ない。我々のように実地経験のある人間はどこまでできるかといった判断ができる。
    ・12月に高校教諭向けの研修会があるが、身分保障がなく特に若い先生にとっては行きにくくなっている。
    ・県立高校の教諭は転勤があるので折角登山部顧問として技量を上げても、転勤先に登山部がなくせっかくの経験が活かせないこともある。
    ・全国高体連登山部としては生徒の掌握を進めてはいるが、顧問の実情は把握できていなかった。今後に向けての課題と捉えている。
   ○長野県大町岳陽高等学校/大西先生から発表を行った。
    ・長野県では那須の事故直後に教育長が冬山登山の全面禁止はあり得ないと明言したことを受けて、冬山・春山登山における安全確保指針の策定に取り組んだ。冬山であっても正しくリスクに配慮すれば安全な登山と考えられる。
    ・冬場の活動は、あくまで登頂が目的ということではなく、雪山での様々な生活技術の体験、向上を目的にステップアップしながら行う。
    ・安全登山のためには、顧問は必ず複数で引率すること、顧問自身が研修会に参加したり山岳会に所属したりして技術の研さんを図ることが必要。安全な登山ができれば楽しい登山ができる。山や自然が生徒を自然に導いて育ててくれるということで、冬山の意味は、四季を通じた生徒の全人的な発達を促すためにも非常に重要。
    ・長野県中信地区では年に2回、安全登山研究会主催で検討会を実施し、また講習会も開催し若い先生にも力量をつけてもらっている。
    ・経験のある顧問が先頭を歩いていれば、雪上でも雪崩の危険を察知することができる。しかし、そこまでの力量を持つ顧問は減っており、育成が課題。

(3)再発防止策のための主な論点について
   ○事務局より資料に沿って説明
    ・報告書の中でも顧問に対する研修や指導資料の必要性が提言されているが、各都道府県でできるものではなく、登山研修所等に支援をお願いしたい。
    ・外部指導者の活用という面では、全部外部に任せればよいのではなく、あくまでも主体性は顧問や学校、高体連が持ちながら専門的な助言や指導をもらうということにしないと誤解を与えかねない。
    ・冬山の範囲のところで、地域差もあり何月から何月までと明確にすることは難しい。春でも冬山のようになることもあるし、逆に冬でも穏やかな場合もある。12月から2月は一律禁止とは書けないと思う。
    ・季節だけで限定せず状況からリスクを判断することが重要。ただ、時期の目安は示す必要があるので、基本は12月から2月、ただし季節が変わっても冬山状態になることはあるという表現をするべき。
    ・あくまで原則という言葉を入れてもらうことで、活動は可能となるし、危険な部分には踏み込むなという縛りにもなる。また、登頂を第1目的としないということを記載すべき。
    ・登山の範囲については、登頂を目指すものも講習会も、遭難救助も山に入る以上はすべて登山と捉えるべきで、危機意識を持っての準備が必要。
    ・運営上明確な線で区切って禁止することは難しい。リスク管理が正しくできる顧問の育成が一番大事。
    ・実施の条件として顧問の資格所持や研修への参加等を判断材料とした方が現場は分かりやすい。
    ・登山研で実施していた高校指導者向けの研修会が無くなったのは参加者の減少が要因。指導者の育成は一朝一夕でできるものではない。
    ・研修等への参加を顧問に義務化するのは望ましくはないが、逆に顧問が研修に参加できる要因ともなり得る。
    ・装備については個人や学校単体で保有することは難しいが、県単位でなら整備できるのではないだろうか。
    ・高校生指導者向けテキストについては「高みへのステップ」では内容的に重厚過ぎる。「楽しい登山」レベルのものを高校生向けに作ってはどうか。
    ・内容は対象によって大きく変わる。検証委員会で提言したものは登山技術だけではなく、危機管理の視点を踏まえた計画全体のマネジメントという部分。それに天気図や地形図の読み方等の基礎知識を入れたもの。指導者用は指導者用で必要。生徒用にはハンドブックレベルのもので様々なリスクについて取り上げて欲しい。
    ・何年山に連れて行ってもらっていても自立した登山者にはなれない。リーダーとして計画立案からできるようになる必要がある。
    ・主な論点はこれで良いと思うが、何をするにしても予算の裏付けが必要。講習は各県でお願いします、ではなかなか前には進まない。

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スポーツ庁健康スポーツ課

(スポーツ庁健康スポーツ課)

-- 登録:平成29年11月 --