運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第8回) 議事要旨

1.日時

平成30年3月13日(火曜日)13時30分~15時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

委員19名

スポーツ庁

今里スポーツ庁次長,藤江スポーツ庁審議官,平井スポーツ総括官,澤川スポーツ庁政策課長,塩川学校体育室長,下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),木村参事官(学校運営支援担当)

4.議事要旨

(以下,発言の発言内容を変更しない範囲で校正し,読み易くしています。)

○ 議事について,スポーツ庁から説明の後,友添座長から以下のとおり発言があった。
    1月の第6回会議では,昨年までの各論の議論を踏まえながら,ガイドラインの骨子案を,また前回の第7回会議では,骨子案を元に案文を御議論いただいて,更にブラッシュアップされたものが今日お示しをしているものでございます。
    少子化や変動する社会的な様々の要因を考慮に入れながら,生徒の視点に立って持続可能な運動部活動をどのように構築していくのかという観点から,様々なところに配慮しつつ,この案文ができてきたと思っております。
    座長の私としても,ほぼ1年,議論を尽くしてきた中で,この案を検討会議の最終案として考えていきたいとも思っております。
    この会議全体を通しての御感想,あるいはガイドライン完成後,各地方・地域に広めて,遵守していけるか。あるいは,運動部活動改革への期待を含めまして,一言ずつコメントを頂ければ有り難いと思っております。

○ 以下,委員発言

  (淺野委員)
    自治体の立場でここに参加させていただいて,本当に様々な立場の方々の御意見を頂きながら,帰りの新幹線でこれをどのように学校現場の先生方に,保護者に,生徒たちに返していけばいいのかと,3時間いつもいろいろと考えながら帰っておりました。
    それぞれの自治体が今やっていることは,ガイドラインの骨子案が出てから,早く動かなければいけないと,いろいろと工夫されているところではあります。その中で,他の自治体から一番御質問が多いのは「どのような手順で,そしてどれくらいのことをいつまでにやればいいのか」という御質問が殺到しております。少し浸透して学校現場にしっかりと理解していただくところに至るには,少し猶予が必要かとは感じております。
    また,私が個人的に一番のセンセーショナル,そして大変未来が開けた事例がございます。それは,部活動を民間企業の力を借りていいということです。そして,スポーツクラブ,地域の力を借りていいということが,恐らく学校単位,そして様々な自治体で先行的にやっていらっしゃるところはありますが,多くの自治体ではそこに考えが至っていないと思います。
    ですから,これを機会に本当に未来が開けるような何か明るい部活動のやり方を発信していくべきではないかと私自身も感じました。本市でも是非どこかで取り入れていきたいと思いました。ありがとうございました。
    最後に,このガイドラインは,子供たちを軸にして作られたものであり,様々な見直しを行うことで,安全安心な部活動はもとより,一層やりがいがあって楽しい部活動になる。そのために,その部活動を支えている教師を支える施策であると私たちは感じていいということで,今いろいろな方々にそれを発信しているところでございます。そういったことをしっかりと自治体と連携しながら手を携えて情報発信,情報共有しながら進んでいきたいと感じています。今ガイドラインを作っている中で,本当に文字にすることが大変難しく,座長をはじめ事務局の皆さんにはこのようにたくさん意見が出た中で,このようなものが出来上がることをまざまざと感じました。大変本当に感謝を申し上げるとともに,少しでも真似ていきたいとは思っております。どうもありがとうございました。


  (石塚委員)
    1年間大変お世話になりました。民間企業の立場から申し上げますと,この部活動の在り方に関しては,部活動はとても文化としてはすばらしいものだと皆さん御発言されているかと思います。誰がどのように教えるかは,外部人材の活用では,各種団体や総合型地域スポーツクラブに並んで,民間事業者としての活用方法もあるのではないかと理解しております。そういった中で,ガイドラインの一文に「民間」というキーワードが入ったことに関しては,外部人材を活用していく上では,将来的にいい方向に向かっていくのではないかと理解をしております。
    また,民間と地域が連携して,新しい部活動の在り方を次年度以降作っていく,スタートラインに立てたと思っております。これから運用レベルに落としていくときには,様々な地域特性を含めた課題が出てくるかと思います。その際,我々民間企業も大いにノウハウを持っている部分もございます。民間企業というと,利益追求や儲けなどの言葉のイメージが出てしまいますが,そのようなことはなく,民間企業は使いようだと思いますので,うまく使っていただきながらノウハウを地域ごとに落としていくことが必要ではないかと考えております。
    文科省様が進める日本型教育の海外輸出プロジェクトが動いていて,日本特有の文化である部活動も海外に向けて文化,仕組み,やり方を輸出しようとするプロジェクトも進めております。日本では数十年かけて培ってきたこの文化を更に今年,来年に向けてバージョンアップしていきながら日本の文化として海外に輸出していくといった可能性も大いに広がるのではないかと考えております。
    こういった活動が広がることによって,スポーツの指導者の雇用の促進,セカンドキャリアを含めた促進にもつながるかと思います。是非,民間の活用をうまく活用していただきながら,地域と連携した新しい部活動のモデルをまた更に作っていければいいのではないかと思っております。1年間大変お世話になりました。ありがとうございました。

  (泉委員)
    まずは,短期間でガイドラインをおまとめいただいて,事務局の皆様にはお礼を申し上げたいと思います。日本体育協会としては,このガイドラインが浸透するように各競技団体と連携を取って,効率的な指導の仕方,あるいは安全・安心のマニュアルを競技団体にこれをまず作っていただいて,全競技で浸透できるように支援をしていきたいと思います。
    同時に,学校現場の普及について,中体連,高体連とも一緒に取り組みたいと思っております。
    また,運動部活動と地域スポーツの融合,連携・協働をしっかりやっていくために,スポーツ少年団あるいは総合型地域スポーツクラブなどといった受皿となり得る組織をいかに充実させるかについて,日本体育協会に課せられた使命であると思っております。
    つい先日も,総合型地域スポーツクラブ全国協議会の総会がございましたが,運動部活動の充実に向けてお手伝いをしたいという総合型クラブが大半でした。そういう意味では楽しみにしております。
    最後に,スポーツ庁等と連携し,子供たちのニーズに合わせた競技力向上,アスリート発掘の新しいシステム「J-STAR Project」を始めました。子供たちの多様ないろいろなニーズに合わせたシステムの構築も大事であると痛感いたしました。

  (川原委員)
    運動部活動は,子供たちのスポーツ機会を提供する貴重な仕組みでもあります。また,競技者を育成する基盤にもなっています。子供たちのスポーツ機会という意味では,地域と連携してやっていくことになってきますと,受皿をどのように整備していくのか。環境をきちんと維持して機会を提供できるようにしていく必要があると思います。
    このガイドラインでは,やりすぎを抑制することが盛り込まれました。一方で,運動不足の子供たち,特に,中学校女子の運動離れがあります。
    地域との連携で,幅広いニーズの受皿になる仕組みができれば,非常にプラスになると思いました。
    それから,中学校についてはガイドラインを出しますが,小学校レベルになりますと,活動の場がスポーツ少年団になります。スポーツ少年団としてのガイドラインが必要なのではないかと,それは日本体育協会が考えるべき話ではないかと思います。
    そのように年代ごとに考えていきますと,小学校・中学校・高校段階で競技者をどのように育成していくかという観点からは,中央競技団体が年代別の育成の考え方を示す必要があろうかと思います。競技によって違いますが,共通的な考え方を日本体育協会が示し,それに基づいて各競技団体が年代別にどうするかとを考えるべきだと思います。カナダやアメリカでは,そのようなモデルが示されていますので,日本体育協会の研究プロジェクトで,来年度から2~3年かけまして,ジュニア期の育成の在り方のモデルを作りたいと思っております。

  (菊山委員)
    本当に様々な角度から運動部活動について見ていらっしゃる,御意見があると勉強したのが私にとっては非常に大きなものでした。
    多くの中学校においては,「授業集中」「行事団結」「部活熱中」の3つの世界で先生方も生徒も頑張っていると思っています。この3つで子供たちの大半の世界ができていますし,自分の人格も高めていく中で,特に部活動は,異年齢集団での活動という大きな特徴もあるように思っています。
    同時に,教師としても,真剣に生徒と向かい合う時間が本当に貴重な時間だと思っています。「子供が学校にいる間は子供のそばにいてね」ということが,多くの校長先生の願いだろうと思います。
    私が学校現場にいたときは,教師が職員室でパソコンを打っていると,仕事をしている雰囲気になってしまいますが,「本来あなたの仕事は違うよね」という思いを感じていました。
    部活動は,日本の学校にとっては大きな力になっています。これからもそうであってほしいです,それが1つ目です。
    それから,全国大会等々です。例えば,サッカーなどにしても,全国1万校のうちの30数校しか出られないわけですから,子供たちにとっても,先生にとっても,親にとっても夢舞台だと分かっていますが,そこに自分たちが出られるかもしれない。そうした想いの中で,99.9%の先生と子供たちは,地区の大会の1勝を目指して日々頑張っている。だからこそ,3年生の夏の最後の大会が終わったら,地区の大会であっても皆涙して3年間の感動を共にする場面が,様々なところで見てこられていると思っています。
    このように,全国大会があるからこそ,地区の大会にも熱が入り夢を見ていける,そのような場を今後も改善を尽くしながら提供していきたいと思っています。
    それから,このガイドラインに,部活動の研修及び管理者の研修を入れていただきました。顧問,部活動指導員といった直接関わる方だけではなく,学校を運営する先生方にも,部活動の運営の在り方や,最新の情報等を学んでもらう機会は大事だと思っています。是非,実現できるといいと思っています。また,これから教職を目指している学生さんたちにとっても,そのような場の提供は,大学等々で用意していただけるとよりすばらしいと思っています。
    最後に,学校の先生方は,顧問というよりは教育者として部活動に関わっていると思っています。一生懸命子供を理解しようとする,あるいは部活動での関係を学校教育全体にどのように生かしていくかを常に考えながら,部活動の場所にいると僕は思っています。一生懸命頑張っている先生方が,何か悪いことをしているような雰囲気は是非払拭して,先生方に応援メッセージが出ていくような言葉があちこちで聞こえるとうれしいと思っています。本当に1年間ありがとうございました。

  (小宮山委員)
    部活動が大変なことになっていることは認識していましたが,手遅れになる前にこうして「何らかの形で手を打ちましょう」と話合いが行われたことに関しては非常によかったと思います。
    僕は,学校現場とは少し離れていますから,本当に大変なのは学校現場を預かる皆さん方が,どのようにすればいいのかと相当頭を悩ませていると思います。その意味では,このガイドラインが出来上がったことによって,「これをとにかく守りましょう」と,全員が同じ方向を向かないと多分紙切れになってしまうので,そのようにならないように,各々が意識を持ってしっかりやる。その中で,顧問や指導員には申し訳ないが,生徒がどう思っているかをとにかく最初に考えてもらいたいです。
    生徒が意欲を持って,「これからどうしよう」ということを導いてあげられる人が顧問であり,教師であり,指導員だと思っています。そのような人たちの集まりになれば,恐らくこのような問題などは出てこなかったはずです。
    またこのような会議が行われることのないようにお願いしたいと思います。

  (妹尾委員)
    大変お世話になりました。ありがとうございました。僕自身は高校のときは緩いブラスバンド部でしたが,今は逗子でマリンスポーツもやっていまして,ある意味生涯スポーツはやっている人間であります。
    幾つか最後に申し上げておきたいと思っております。
    1つは,理念なり考え方の部分です。このガイドラインは,24時間の限られる時間の中での優先順位をしっかり考えるきっかけと捉えております。一例で申し上げますと,朝の7時半に登校して,朝練を行って,夕方は,夜の7時ぐらいまで部活動を行うという生徒さんが,中学生でも高校生でも多いです。通学時間を除くと,残されている時間は,大体11時間ぐらいだろうと思います。更に「食事・入浴・トイレ」が2時間ぐらいかかるでしょうから,残りは9時間となります。その9時間の中で,勉強もしたり,友達とLINEをしたり,家族と話したり,睡眠時間をとったりすることになります。
    もちろん部活動の意義はあって,とても効果は大きいと思いますが,勉強時間を削ったり,睡眠時間を削って成り立っている生徒もいるかもしれないことはしっかり考えるべきです。
    基本的には,やりたい人が教師も生徒も一生懸命元気にやっていただくのはとても賛成です。このガイドラインでの活動時間の規則等は,24時間の限られる中での,ある程度の目安は立てていこうという理念での意義があるのだろうと思います。
    同じ話が教師にとっても言える話です。もちろん教師の意欲を削いではいけないという他の委員の御意見には賛成です。しかし,本来,教師は部活動で雇われたのではなくて,その教科で雇われたのであって,意欲的に取り組むのも,まずは授業でしっかり勝負をしていただきたいということは理想論かもしれませんが,再度申し上げておきたいと思っております。
    教師にとっても,先ほどの9時間なりを何に使うのか。余りにも部活動が侵食し過ぎていないかどうかを,しっかり考えるきっかけにこのガイドラインをしていただきたいと思います。
    2点目は,今後のアクションです。部活動指導員の補助の話もありますので,都道府県や市区町村におきましては,恐らく活動方針ができることになるだろうとは予想しております。それはいい動きですが,一方で,高校の「原則」の解釈にもよりますが,「うちは週1回の休養日でいい」など,国のガイドラインは見てはいるけれども,それよりも踏み込むというよりは,むしろ国よりも後退させる動きもあることが事実だと思います。
    そういった動きについて,もちろん各地方なり私立学校であれば私立学校のもちろん自主性もあるわけですが,余りにも国のガイドラインから離れる,後退することをどう考えるかというのは考えていかないと思っております。
    それから,各学校におきましては,4月の入学式の後が唯一と言っていいほど保護者に話をできるチャンスです。それを逃すと保護者はほとんど学校に来ませんので,是非,スポーツ庁のガイドラインを見ていただいて「今このような動きがあります。つきましては,余り過度な部活動は抑制していきます。」といったことを校長はおっしゃっていただきたい。
    部活のPRをしていただくのはウエルカムですが,加えてそのようなこともしていただきたいことをお願いしておきたいと思います。
    3番目は,フォローアップです。もちろんこのガイドラインを杓子定規にいろいろチェックをする,フォローアップをすることは想定しておりません。ただ,「生徒がもっとやりたいと言っている」,「私立だから」など,いろいろな理由をつけて抜け道を作ってしまうようでは,ほとんど作った意味がなくなることは強く申し上げておきたいと思います。
    スポーツ庁におかれましては,体力調査等を通じて部活動の実態を把握していただいて,余りにもひどいところは公表していただき,逆に,都道府県単位でしっかりこのガイドラインを守って,まさにフェアプレーでやっているところは表彰するなり,広報していただくなり,そのようなことも含めてやっていただかないと,このガイドラインは紙切れになって,もったいないと思います。

  (田村委員)
    私はふだん糖尿病の患者さんの診療に当たっている立場で,この会議に1年間参加させていただきまして,いろいろ勉強させていただいたのが率直なところでございます。
    私も中学。高校,大学と部活動が大好きで,かなりきつくやっていたつもりですが,委員の方々それぞれの御経験や今の活動の場所によって,かなりこの部活動が多様であることが認識できたのが率直なところでございます。
    ふだん,患者さんに「今,何か運動をしていますか?」と伺うと,7~8割が「ウォーキング」です。60歳,50歳,40歳でもそうです。しかし,昔何をやっていたかを伺うと,野球,サッカー,バスケだったり,いろいろなことをやっています。部活動と生涯スポーツが分断されていて,もう少しこれがつながると,生涯健康で楽しくスポーツをできるのではないか。そのようなところからスポーツ文化をもっと発展するのではないかと感じがしております。
    ガイドラインでいろいろ盛り込んでいただいて,部活動自体が実はそのような側面もあることを文言として書いていただいたり,あとは校長がリクリエーションを主眼とした新しい部活動を設置すると書かれた言葉,これは非常に画期的なことです。これから部活動の文化自体もだんだん変わってきて,何か生涯健康に非常に大きく寄与するものになるのではないかと期待しているところでございます。
    ただ,マインドセットがこれからの課題だろうと思っています。つまり,私も何か信じるものがあります。1回それをリセットして,新しい部活動,いろいろな価値観があることを前提にして指導者や保護者,子供がもう一度考えていかないと,多分これは「絵に描いた餅」になってしまうような気がしています。
    部活動は,競技スポーツ,競技力が1つの目標ですので,どうしても技能レベルを上に合わせてやってしまう側面は,これはもう絶対捨てきれないと思います。そうでない人でも何か楽しく参加できて,生涯やっていて楽しかったからもう少し20代,30代になってもやりたいと思えるようなところが1つのゴールであると個人的には考えています。私も答えを全く持ち合わせておりませんが,私の視点からいろいろ勉強させていただきました。ありがとうございました。

  (杖﨑委員)
    民間のスポーツクラブ,フィットネスクラブの事業者の団体である日本フィットネス産業協会としては,地域との連携等で,各地域において運動の施設,設備あるいは指導員,こういったものを抱えている民間の事業者としてどのように関わることができるかが,これから考えていくことだろうと思っています。
    それぞれに,このガイドラインを自分の組織の中に落とし込んでいく,下ろしていく活動が必要だろうと思っております。
    そうしたときに1つ思いますのは,このガイドラインを拝見すると,校長,学校の設置者,都道府県と,主語が幾つかありますが,盛り込まれているそれぞれの事項について,誰が推進者なのか,誰が主体者なのか。その制度を作り,それを動かす財政的な裏付けをそれぞれに明らかにしておく。あるいは,これから明らかにしていくことを一緒にやっておかないと,総論は皆さん「分かった」と思っても,実際に「これは誰がするの?」と,後で責任のなすりつけ合いのようなことにならないような,本当に動く制度としての運用がこれから求められると思っております。

  (奈良委員)
    全国高体連の立場で,この会議に参加させていただきました。大変いろいろな角度からの話を聞く機会になったこと自体が,私としては大きな経験であり,財産となったことについては,お礼を申し上げたいと思います。
    正直に申しますと,この検討会議の議論の流れで行くと,部活動の良さや競技的な意義は認めつつも,部活動を縮小していく方向になっていくのではないかという負の部分が出てくるという思いはありました。
    ただ,結論的には,ほぼ1年をかけて,いろいろな意見が出る中で,このような形でまとめていただいたことについても感謝申し上げます。本当に御苦労だったと思っています。
    さて,部活動が大きな転換期であることを実感していますが,1つは,子供が少なくなっていることであり,あるいは,教員の働き方改革という流れがあります。それと,地域による大きな違いがあることが重なっていると思います。
    その中でも,学校教育における部活動の意義,在り方,今後について,山口(隆)委員に代弁していただいて,大変有り難く思っていますが,課題もたくさんあることは事実でありまして,その転換期に合わせて全国高体連としても様々な角度から切り込んでいく必要があることも改めて感じています。
    その1つに,例えば部活動指導員の導入もあり,または,このガイドラインの中にも示されています大会の有り様についての見直しもあります。
    大会の見直しについて,もう少し具体的に言うと,部活動は50年を越える歴史があります。これを一気に何か変えていくのは,かなり厳しい面があると思います。
    ただ,それでも全国高体連として改善に向けた見直しをしていくことについては,当然ながらやっていく必要があると改めて思っています。様々な課題がある中で,部活動をよりよいものとして持続していくには,これは指導者の意識だと私も思っています。運動部活動には競技力の強化や普及などいろいろな側面がありますが,子供をどうやって育てていくのかという視点に立ったときに,強くしていく中で育てることももちろんあるし,そうではなく,仲間との関わりや人間関係で育っていくこともある。それは全部つながっている話だと思います。
    人とのつながりは,子供にとって大きな財産であると思います。これはなくすべきではないと思っています。もちろん,それぞれの競技の特性の中で,技術力の向上や強化としてはいろいろあります。人を育てるという視点の中で,部活動をどのように活用していくのかという視点でやっていければと思っています。
    ありがとうございました。

  (西岡委員)
    ずっとお話されたことに何ら異論はないのですが,部活動指導員制度を導入しましたが,今果たしてどのくらいの登録がされているのか。その辺の実態はもう把握できているのでしょうか。非常に特殊な種目に関して外部指導者の段階で求めても得られなかった経験が実はございます。例えば,ヨットの外部指導者を当たっていただきましたが,県内で5人しかおらず,皆さん平日は勤務しておられますので,平日に来ていただける方はゼロでした。そうなってきますと,特殊な種目に関しては,その競技団体から経験者を部活動指導員として養成する,派遣できるシステムを作らなければ,部活動指導員は「絵に描いた餅」になるのではないかと正直思っています。
    もし指導者がいなければどうなるのか,今と同じような状態の学校の先生が経験もないのに指導しなければならない。1つ間違えますと死亡事故につながりますので,誰もやりたがらないです。そこに1つの限界があると思っています。
    ですから,その辺はもうその種目の方でしっかり部活動指導員を養成していただかないことには不可能ではないかと実は思っております。
    それから,ガイドラインができたことは決して反対しておりませんし,何とかそのような方向で進めばいいと思っております。高野連も週1日休養日を作ることを学生野球憲章で定めていますので,週1日休むことは高校野球の世界ではもう当たり前になってはいます。あとは,毎日の活動になろうかと思いますので,実際に運用していってうまいこといくのかという危惧を覚える側面もありますので,一言話させていただきました。
    ⇒ 事務局から,部活動指導員の配置状況について,平成29年7月時点での公立中学校の設置者における配置人数は300名程度ある旨を回答。

  (望月委員)
    法律家の立場から参加してまいりました。学校の運動部活動は,日本で優れた活動,世界的にも評価される重要な役割をしていると思っています。ただ,学校と教員に非常に負担が大きくなっている限界と矛盾が出てきたのが,この会議の出発点であると思っています。
    私が一番危惧していたのは,こういう問題があるから「もうやめてしまおう」という勢いになると困ると思いながらずっと参加をしてきました。様々な意見がある中で,この会議の委員の皆様,座長,事務局をはじめ,このようなガイドラインをまとめていただいたことに深く感謝をしたいと思っております。
    これからですが,地域のスポーツとの融合という形で多様な子供の要求に応える,多角的にスポーツを普及していく新しい次元に立ったわけでございます。ガイドラインはできたのですが,今度はこれを実行する段階になります。これから先まだ受皿として十分ではない地域スポーツを育て上げる仕事もあります。
    その中で,各競技団体あるいは日本体育協会をはじめとする中央競技団体,こういったところの力がますます必要になってくるだろうと思いますので,是非御尽力いただければとお願いを申し上げて発言させていただきます。ありがとうございました。

  (森委員)
    このガイドラインは,中学校を対象としていることを考えると,私は非常に中身的にはすばらしいものになっていると思います。明確な休養日や練習時間の明言,今までなかったことが改めてこのように表記されますと,学校現場には浸透していくことは間違いないです。
    ただ一方で,競技種目の特性を考えると,どの種目も一律にというのは非常に難しさがある気がしています。ですから,このガイドラインを元に,ルールを遵守させるというがんじがらめの運用の仕方だけは,是非とも避けていただきたいと個人的な思いがあります。
    私は,中学・高校の現場の指導者の意識を変えることが一番大事なのではないかと思います。何回目かの会議で,日本体育協会の報告を頂いたときに,私自身も部活動について改めて勉強をさせていただきました。全国の部活動の顧問は,素人の顧問もたくさんおりますので,そういった顧問に対する研修制度の確立,そこのところは強制力をかけてやっても私はよろしいと感じています。
    また,高校に関する部分が「準用する」という表記から「原則として適用」という表記に変わりました。この原則論を表記に入れると,非常にあいまいな抽象的なものになってくると思っています。拡大解釈にもつながってしまうのではないかという危惧もします。
    実際,いろいろな私学の先生方に「どのように判断すればいいのか」と質問を受けますが,委員でありながら明確な答えが出せないという非常にジレンマがあります。ですから,この高校についての運用も,これからどこまでスポーツ庁が運用されていくのか。今日はその点についてもお尋ねをしたいと思っておりました。部活動での教員のオーバーワーク,そして生徒の過度な活動は抑えていく必要があると思います。一方で,2020年を控えて国の施策としてこれからスポーツを盛り上げていくときにあって,余り学校の子供たちが希望を失ってしまうものになってほしくないという思いと,学校の教員のやる気がそがれるような運用の仕方だけは避けていただきたいと思っています。
    最後になりますが,部活動指導員は非常にすばらしい制度だと思います。ただ,国の補助制度が公立にしか対象とならないことについては,「私学は勝手にやりなさい」と聞こえてなりません。私学も公教育の一翼を担っていますので,是非とも財政措置はお願いしたいと思います。これは3度目のお願いになろうかと思いますが,前向きに御検討いただければと思います。ありがとうございました。お世話になりました。
  ⇒ 友添座長から,高校の基本的に適用するところについて,これから実際の運用段階で検討していかなければいけない課題である旨の発言があった。

  (山口香委員)
    1年間委員として関わらせていただいて,非常にいい機会であったと思います。私自身も勉強させていただきました。私は,トップスポーツでやってきた人間ですので,そういう立場から発言したこともございますが,部活動の改革では,決してトップスポーツを目指す人間と,そうでない楽しみのためであったり,あるいは仲間を作ったりと,決して対立軸ではないと思っています。
    私もずっとスポーツをやってきて思うことは,部活動だけでなくて,日本のスポーツの転換期であると思っています。私が選手だった頃は,やればやっただけ効果がある,厳しければ厳しいだけ人は育つと教え込まれて,それが正しいと思ってやってきました。選手生活を終えて,今の選手たちの活躍を見たときに,また,指導者として今のスポーツを見たときに,私たちが,そのような時代とは少し違うスポーツの捉え方や関わり方をしっかりと意識を改革しなければいけないと思っています。そのことはもちろんですが,スポーツに対する日本人の意識,それは学校の先生であり,そして選手であり,また保護者が変わっていかないと日本のスポーツも明るくないと正直思っています。
    多くの人たちが,特に私の世代や,もっと上の人たちは,部活動で育てられたと言う方が非常に多いです。その効果はあっただろうと思いますが,その方々が生涯にわたってスポーツに親しんでいるかというと,そうでない側面もあります。「もう精一杯やったからスポーツは十分だ」というのは,スポーツの目指すところとは,恐らく違うだろうと思っています。そのあたりがこれからの時代を担う子供たちには関わり方であったり,与え方も変わってこなければいけないのを私自身も認識をしています。
    それから,このガイドラインですが,これが完成版ということではなくて,これが学校現場に落とし込まれていった後,様々な課題や問題点が出てきたときには,そこを拾い上げてブラッシュアップしていくフォローアップをしていかなければいけないと思っています。スポーツの意識改革の観点で言えば,今回このガイドラインを実行していただくために広めていくわけです。
    日本のスポーツの駄目な点は,上意下達,「こう決まったからこうやれ」,「監督がこう言ったからこうしろ」というところが,日本のスポーツが自分で考えることを奪ってきたと思います。
    今回のガイドラインでも,「こう決まったのだから全てこうだ」というのではなく,先生方や学校,そして各自治体の方々が知恵を出し合って,子供たちにより良い部活動,あるいはスポーツへの関わりをしていくために最善を尽くしていくところをきちんと伝えていかないと,学校の先生が「一生懸命やってきたのに自分たちは評価されていない」と思ってしまっては非常に残念です。その点は是非お願いしたいと思っております。ありがとうございました。

  (山口隆文委員)
    初めに,このような会議に参加させていただいて本当にありがとうございます。サッカーの競技団体としても,部活動の問題を日々いろいろなスタッフに伝えて,一緒に考えてまいりました。また,中学校,高校の現場に行って先生方ともいろいろ意見を吸い上げながら,この会議で意見をどのように伝えていくかという使命をもってやってきました。さらに,検討会議での議論を受けて,日本サッカー協会として今後どうすべきかということも考えながらやってきました。
    このガイドラインで,やらせ過ぎ,やり過ぎも一掃されていくと思っています。一方で,一生懸命やっている夢を持った生徒たち,それを育もうとした熱意のある先生方の行き場が失われるような捉え方をされたら本末転倒だろうと思っています。
    部活動は,日本のスポーツ文化においては非常に大切なものであると前回も申し上げましたが,25年経ったプロの組織に集まる優秀な子供たちは1%,あとの99%はそれ以外のところで活動しているわけです。そういった中で,部活動は普及や強化の観点からも,本当に大切なものであるということです。この受皿は,地域のスポーツクラブも頑張って,日本サッカー協会もサポートしなければいけない。新しいクラブ作りもサポートしなければいけない。そういう立場ですが,なかなか難しい状況はあります。
    例えば,総合型地域スポーツクラブを作ることを数十年前に国の政策として大きく掲げました。私もそれを受けて東京の東久留米市でNPO法人を立ち上げて,総合型地域スポーツクラブを作っています。そのようなこともやりながら,その観点からも受皿を作らなければいけないことに対するサポートは地方自治体,それから国においてもまだまだ足りないと思っています。
    そういった中で,是非お願いしたいのは,一生懸命やりたい生徒,そして先生方,この意欲を認めていくガイドラインであってほしいと思っています。そのためにも,もっと勉強したいという先生方が勉強会に参加できるような研修会の確保が非常に重要かと思います。日本サッカー協会も日本体育協会さんと指導者養成をやっています。先生方が本当に取りにくい,学校現場を離れにくい,研修に参加できないことをよく聞いています。休暇さえも取れないとよく聞きます。
    したがって,是非,夏休みや長期休業中に勉強したい人には勉強をさせていただくことをお願いしたいと,その場合には,文部科学省の認定事業として,例えば日本サッカー協会のA級,B級,C級などの研修会に出られるといったことがもう1回復活されることを期待しています。
    それから,ガイドラインの中の3ページに「学校の管理職を対象とする運動部活動の適切な運営に係る実効性の確保を図るための研修等の取組を行う」と書いてあります。是非,これは形骸化しないように本当に実行していただきたいと思います。学校の管理職の先生方の考え方によっては,部活動がうまくいかないことを経験しています。そういった意味では,部活動の基本的な価値等も含めて,研修会を是非大切にしていただきたいということで,このガイドラインがここに書いてあるとおり実行されることを期待しています。

  (山﨑委員)
    この検討会議に参加させていただきまして,いろいろな勉強をさせていただきました。また,学校現場の視点だけではなく様々な考えを伺うことができてよかったと思っています。特に,実態調査でのワーキンググループ会議でも御一緒させていただき,中学校,高校の違いも改めて認識させていただきました。本当にいい機会を与えていただきました。
    それを踏まえまして,このガイドライン案を最終案にすることについては,私は異議がありません。この形で進めていただければと思います。
    内容としましては,特に,「前文」や「趣旨」のところで,「持続可能な部活動」,要するに,今後の運動部活動をきちんと堅持していくこと。ただし,在り方の検討をしていきながら持続していくことが大きく謳われていること。一方で,「終わりに」のところでは,学校単位の運動部活動に代わり得るスポーツ活動の検討も盛り込むということで,非常に長いスパンで大きな宿題を頂いたという思いでおります。
    高体連,あるいは高校の運動部活動に関わる者として,このガイドラインの先に描く運動部活動の正に在り方,そういったものをきちんと見極めていけるようにしていきたいと思っています。
    最後に,高校の校長の立場で言いますと,運動部活動については,このような方向が見えてきた中で,文化系の部活動の問題が当然あります。運動部活動と文化部活動,課題は違うと思います。学校ではどちらも同一の活動ですが,活動計画や方針を決める中で,運動と文化を分けて対応することは,余りいいことではないという思いも持っています。そのことがどこで議論されるのか分かりませんが,学校現場ではそのような課題もあることを御認識していただければ有り難いと思っています。どうも1年間ありがとうございました。

  (山本委員)
    大変この会議を参考にさせていただきました。ありがとうございました。
    バスケットボールは,競技力向上のみならず普及の観点でも,特に運動部活動が寄与するところは非常に大きくて,助けていただいております。
    部活動の永続性を保つために始まった検討会議ですが,ガイドラインが出来上がりましたら,後押ししていこうという姿勢でおります。ガイドラインを発表して,実際運用していくとなると,環境整備がまた新たな課題として出てくると思います。
    日本バスケットボール協会としては,今までやりたい先生や生徒が競技力を向上して活躍してくれているものがどのように変わるのか,非常に気になっていたところであります。競技団体として,受皿をしっかり準備することと,部活動の指導内容を支援する材料として,指導の手引きを正に今整備しており,そういったものを示して指導者の質の向上も貢献して,これからもより良い部活動を運営していけるように,日本バスケットボール協会としても協力していく方向で考えております。どうもありがとうございます。

  (渡邊委員)
    まずこの会議に関わらせていただいて,本当にありがとうございました。私が一番こだわっていたのが,「学校と地域の融合型」です。総量規制や指導者の確保をしても,運営の部分を改善していかないと,大きな課題解決にはならないと思っています。このガイドラインに「学校と地域の融合」という言葉を入れていただいたことに改めて感謝申し上げます。部活動と地域の二者択一ではなくて,学校と地域で交わる形でこれから実行に移していけるのではないかと思っています。
    私自身は,総合型クラブとしてこの場に出させていただいていますので,総合型クラブにとっても,この部活動の関わりが指導という視点だけではなくて,マネジメントという形で関わっていけるのではないかという大きな可能性があると考えています。
    新潟県村上市神林地区では,もう既にこの融合型の形を学校と話し合い,大きな方向性としては合意形成ができていて,これから実行に移していく段階です。これから新しい形がいろいろできるのではないかと思います。
    最後にお願いとしては,これからいろいろな新しい取組事例が出てくると思いますが,それを共有するような場があればいいと思います。ありがとうございました。

○ 友添座長から,議事資料を本検討会議の最終案として確定させていただく旨の発議があり,了承された。

○ 今里スポーツ庁次長から,以下のとおり挨拶があった。
    本来でございましたら,スポーツ庁長官の鈴木から御挨拶を申し上げるところでございますが,あいにく公務で欠席でございます。代わりに私から御挨拶を申し上げます。
    まず,委員の皆様方,1年間弱でございますが,御多忙の中,昨年の5月から8回にわたって,運動部活動の充実に向けて建設的な御意見を頂いたことを心からお礼を申し上げます。
    先生方のお話を聞いておりますと,部活動の持つ価値はどなたも等しく高く評価をしている。それはいろいろな面であります。我が国のスポーツの振興を多面的に非常に支えてきた。これは競技力の向上という面でもそうですし,子供たちが生涯にわたって充実したスポーツライフを送るための基礎を培うという意味でもそうでございます。
    さらに,生徒の多様な学びの場としての教育的な意義も,狭い意味でのスポーツから離れたとしても,そういった意味もあるという面は非常に高く評価をされてきているのも等しく,これはこの場の先生方だけではなくて,世間的にもそうだとは信じております。
    ただ,現状のいろいろな課題に対してどのように対処していくのかということで,今回このガイドラインをおまとめいただくために御議論を頂きました。そうしたときに,スポーツ庁が策定するガイドラインが,今後とも今申し上げた部活動の価値が持続的に発揮できるような形のものとなると思います。
    ガイドラインをおまとめいただく際には,非常に多様な御意見がございましたが,座長の友添先生,座長代理の山口先生をはじめ,委員の皆様方には改めて感謝を申し上げたいと思います。
    今後,本日取りまとめていただきました「案」を元に,行政的には本年度中に公表する予定しております。その後,ガイドラインに則った運動部活動が実効的に行われるようにするために,今日あるいはこの1年間,先生方に御議論いただいた運動部活動の価値,そしてそれを実効的に持続的にしていくために,どのようなことが必要なのかという議論,このガイドラインの精神を我々はきちんと周知をしていく。もちろん,教育委員会との関係機関に対しまして,このガイドラインそのものの周知徹底を図るのはもちろんのことでございます。
    何故,このガイドラインを出すことになっているのか。そして,どのようなことを目指しているのかも併せて広めていくことで,学校の現場での部活動が初めていいものになっていくと考えております。
    本検討会議は,本日をもって最後とさせていただきますが,このガイドラインの実行,さらにはこのガイドラインを越えた子供たちのスポーツを取り巻く環境の課題についても,いろいろと御意見を頂きました。
    今後とも,皆様方におかれましては,子供たちのスポーツ活動の充実,さらには心身の健全な成長を図れるよう,そして,このガイドラインが実効性を持ったものにするためにも,広報の面が重要でございますので,そのことも併せてお願いをいたしまして,私の御挨拶とさせていただきます。
    本当に1年間どうもありがとうございました。

○ 友添座長から,本検討会議の終了が宣言され,閉会となった。

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