運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第4回) 議事要旨

1.日時

平成29年11月17日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

委員16名
(発表者)
多治見市教育委員会教育長     渡辺 哲郎氏
多治見市立多治見中学校校長    丸山  近氏
静岡市教育委員会事務局教育局次長 髙井  絢氏
 同 学校教育課参事       寺尾 光正氏
 同 学校教育課指導主事     木下 雅人氏

スポーツ庁

鈴木スポーツ庁長官,今里スポーツ庁次長(途中出席),藤江スポーツ庁審議官,平井スポーツ総括官,澤川スポーツ庁政策課長,矢野初等中等教育企画課長,伊藤財務課長,木村参事官(学校運営支援担当)

4.議事要旨

○ 議事(1)について,スポーツ庁から資料に基づき説明があった。
○ 議事(2)について,多治見市教育委員会,静岡市教育委員会及び渡邊委員からそれぞれ資料に基づき発表があった後,質疑応答を行った。
○ 議事(3)について,本日の議事のほか,ガイドラインの作成に向けた論点に関する意見交換を行った。
    以下,委員発言(発言の発言内容を変更しない範囲で校正し,読み易くしています。)

  (泉委員)
    各競技団体からの意見等も含めて,当然ながらガイドラインをしっかり作っていかなければいけないと思いますが,ガイドラインで締め付けていくのではなくて,やはり生徒のニーズに応えるためには,受皿をしっかり作っていかなくてはいけないと思っています。
    ただ,極論かもしれませんが,いずれ地域が担っていくこととしたときに,多治見市さんの事例では,「地域クラブの参加率は50%,民間クラブでは10%,残りの40%の生徒は何も運動しない」という数字を見て,これでいいのかと感じますし,日本体育協会の組織には,総合型クラブ,あるいはスポーツ少年団がございますので,しっかりと組織整備をしながら受け入れるシステムをロードマップを作って構築していかないといけないと思っています。

  (菊山委員)
    現在の様々な学力テストの結果などを見ますと,今,日本の中学生の学力については,かなり伸びてきている,高い水準で維持されていると思います。
    部活動に多くの時間をとっているのは間違いないことなんですけれども,それによって子供たちとの人間関係ができたり,先生方との信頼関係が高まってくる,そういったことも含めて学力テストの結果が出ていると思っていますので,部活動のマイナス面だけではなくプラス面についても,是非,光を当てていただきたいなと考えています。
    学校体育大会への参加についての日本中体連の考え方は,基本的には学校単位であることは変わっていません。ただ,平成16年度から,学校の小規模化等々への対応で合同部活動での参加を認める形で変わってきています。
    日本中体連の考え方については,トップダウンで下ろしていくのではなく,各県で様々な事例を踏まえた議論を重ねてだんだん変わっていくものだろうと思っています。
    繰り返しになりますけれども,現在は学校単位が基本としており,今のところ変える予定はありません。

  (妹尾委員)
    教師の部活動に係る指導時間につきましては,例えば,平日1日当たり1~2時間という方,あるいは2~3時間という方も結構多いというデータがございます。それプラス土日もあるということです。
    これは,皆さんから見ると「そんなものだろう」というような感じで見られるかもしれませんけれども,私は,それなりに負担があると思っています。
    今日の資料には,各種団体からのヒアリング結果もありますが,この中にも教師の負担が載っています。もちろん,それだけでは部活動の在り方は議論できませんけれども,それを抜きにも考えられないと思います。もちろん,部活動の教育効果は大きいんですけれども,授業準備が犠牲になるということは申し上げたいと思います。
    平成28年度教員勤務実態調査では,週60時間以上働いている人,つまり,過労死ラインを超えているぐらいの水準で働いている人は,授業準備,1日平均ですけれども,大体,1時間33分ぐらいです。単純ですけれども,運動部活動,1時間,2時間,あるいは3時間というのは授業準備よりも長い。しかも,土日も合わせると,多分もっと長くなります。
    授業準備の時間を倍にするとは言いませんけれども,正直申し上げて,これだけ若手の教員も増えている,あるいはベテランであっても,アクティブラーニングをはじめ,新学習指導要領でもっと質を上げていかないといけない時代にあって,やはり部活動をやり過ぎるというのは,子供への影響だけではなくて,教員の時間の使い方もちょっと狂いつつあるということで,この会議では是非そのようなことも踏まえて,注意点であるとか,どのように実効性を持ってやるのかを議論したいと思っております。

  (西岡委員)
    学校の先生方は,以前のように年がら年中,部活動するのは間違いだというふうにもう理解はしていると思います。昔は365日やるのが当たり前みたいな時代があったんですが,もうそんなこと言う人は今はいませんので,必ず週に1日,あるいは2日は休むのは定着しているわけです。
    昔,私が部活動の指導をしていたときは,教材研究をする時間がなかったのかといえば,そうではないと思うんです。中学校と高校では持ち時間の関係があるのでちょっと違うかと思うんですが,空き時間は必死になって教材研究をしましたし,私は生徒に予習して授業に臨むことを求めていましたので,私もしっかり授業の予習をしてやらなければと思い,毎日の空き時間は全部,教材研究をしていましたし,家に帰りましたら,必ず明日の授業の準備として,自分の知識を広げるためにも一生懸命努力をしていました。その当時,自分は他の先生に比べて準備不足というような意識は全くなかったなと思っています。
    ですから,部活動を一生懸命やっているから,教材準備,教材研究をおろそかにするということはあり得ないと思っているんです。それが先生なのではないかと思っていますが,違うのでしょうか。
    それともう一つ,毎日何時間という話がありましたけれども,私の経験では,体育館で4つも5つものクラブが一遍にやるのは実際不可能ですので,曜日ごとに分かれてやる,あるいは,グラウンドでも,例えば,サッカーがあって,ラグビーがあって,野球があってという場合には,3つが一緒には絶対練習できないですから,「1日何時間」と言われてしまいますと,逆に今度は非常に危険を伴うと思います。

  (平川委員)
    まず,改めてこの場で確認させていただきたいことがあります。学校は教育課程が優先順位ナンバーワンであることに委員の皆様は賛同されますでしょうか。※反対意見なし
    新しい学習指導要領は,2020年から全面実施されますけれども,これは主体的で対話的な深い学びということで,アクティブラーニングという今までの授業のスタイルから大きく変わることがございます。
    これに対応するには,授業準備が従来どおりでは足りないと現場としては思っています。今までの授業準備も踏まえつつ,プラスアルファをやっていかなければならないという現実をお知りになっていただければと思っています。
    渡邊委員の取組について大変すばらしいと思いますけれども,総合型地域スポーツクラブが協力してくれない地域も出てくるのではないかとも思います。部活動ではないと生徒が離れてしまうのは,大会に出られるかどうかが大きいと思います。
    例えば,進学に当たっては,私立では部活動の大会成績が結構優遇されたりしますし,この点,何がネックになっているのか,中体連,高体連,各種目の協会の方がもう少しお話合いをしていただいて,地域のクラブチームであっても部活動であっても大会に出られることを担保できるようにしてほしいです。
    これができない限り,幾ら地域の人が協力すると言っても魅力的には映らないので,生徒はやっぱり学校の部活動を選択してしまうと思うのですが,この点について,どのような道筋をたどっていけば理想形に近づくのか議論していただきたいです。
   
  (望月委員)
    活動時間の総量規制は絶対に必要であると思っているのですが,このことは新しい話ではなくて,平成9年の文部省の「運動部活動の在り方に関する調査研究報告書」の中で,例示している話でございまして,これが実行されていれば,今,こんなに大きくやり過ぎの問題が出てくるとは思えないのです。
    「強制させる」と言うつもりはありませんが,なぜ平成9年の提言が十分現場に浸透しなかったのかを考えていかないと,提言をしたけれども聞き流して終わってしまうということでは寂しいと思っています。
    もう一つは,現場の先生方を見ていますと,「子供のために」というキーワードがワイルドカードになっていまして,誰も反対できないのですが,実は多様性も「子供のために」であって,部活動はいいところもあるけれども,やはりやり過ぎると駄目であることは,どこかで誰かが言ってあげないといけないと思っています。
 
  (山口隆文委員)
    現場の中学校の先生方,高校の先生方,部活動を一生懸命やっている先生方,はたくさんいらっしゃいます。自分の本分を分かった上で教材研究をしっかり行い,部活動の指導をされている方もたくさんいらっしゃいます。そのことを前提にまず考えていただかなければいけないと思います。
    ただ,部活動の指導を全く経験論だけでやっていたり,無勉強でやっていて,1日中やっていたり,365日休まないでやっていたり,自分の勝利を自分自身のステイタスを上げるためかどうか分かりませんが,そのような目的で子供たちにやらせているような悪い事例も多々あると思います。
    指導者がしっかりとした見識を持たなければ何もならないのですが,本日,静岡市さんが発表されたライセンス制度というのは不可欠なものと思っています。それを自治体がやるのか,それとも体育協会さんが中心にやるのかも含めて,指導者をどのように育てるかということの議論をしていかなければならないと思います。

  (山﨑委員)
    「運動部活動等に関する実態調査集計結果(速報値)のポイント」では,活動日数でありますとか時間等については,中学校と高校で若干の差は出ています。また,先生方の考え方,要するに部活動に関する指導観といった部分についても若干の違いが見てとれます。
    ですから,部活動の在り方に関わる根幹であるとか,あるいは関係団体との連携という点については,共通で書き込んでいく必要があると思っていますけれども,異なって対応できる内容については,中学校と高校とでは解釈の幅を広げる部分があってもよろしいのではないかと思っています。
    それから,部活動の総量規制の話と上限という部分で少し憂慮しているのは,そのような捉え方をした場合に,「それを守らせる」,「決められた枠の中でコントロールする」というような形に陥りがちであり,決められた枠の中でコントロールするようなやり方は,あまり望ましくないのではないかと思います。
    ガイドラインの性格等を考えれば,やはり標準あるいは基準等を示すような形で,設置者,管理職,顧問,生徒,保護者等の様々な者がそれぞれの立場で活動内容をコントロールしていくというような在り方もあっていいと思います。

  (山本委員)
    日本バスケットボール協会で地域のクラブの方にも聞き取りをして出てきたのは,「大会設置が必要である」,「ゲームがないと登録しない」ということを受けて,来年の4月から登録制度を改定しまして,地域のクラブも登録できるように変更していきます。
    部活動,地域のクラブ,また,プロチームもできまして,プロのユースチームも登録を図ることで,部活動に代わる受皿としては少し増えていくのかなというところがあります。
    それに伴って,トレセン(選手強化活動)とか選抜チームという競技力向上を目指すという人も中には出てきますので,その受皿を日本バスケットボール協会としても準備したいと考えています。
    その際,活動場所の問題が一つあります。多治見市さんの事例では,自治体が一体となっているので,場所については中学校の体育館やグラウンドなどを使わせていただけるということは非常にすばらしいことです。
    今後,部活動の数の適正化を目指す方向だと思っていますけれども,そうすると,クラブ化を促進するための受皿を作るときに,バスケットボールでは活動場所の確保が課題ですので,自治体の協力が必要であるということ,もう1点は,部活動を社会体育に切り分ける場合,学校施設の利用に制限が加わる自治体もあるというような聞き取りもできていますので,学校施設の利用がうまくできるとより進みやすいと思っています。

  (渡邊委員)
    例えば,外部指導者は,あくまでも個の対応だと思います。地域によって,総合型クラブであったり,大学であったり,競技団体が,学校とうまく連携してマネジメントしていく組織として,これからの部活動について,一緒に学校と連携してやっていけないかを思案しています。
    地域に移行ということではなく,教育の一環として連携ができたらいいということです。総合型クラブがそれを担えるのではないかと思っています。

  (友添座長)
    「運動部活動等に関する実態調査の集計結果(速報値)のポイント」のお話を伺って,学校の先生方の孤軍奮闘ぶりと部活動の活動頻度,活動時間の長さというのは想定内とはいえ,改めて長いなと率直に感じたところでもありますし,また,本当に今の部活動が子供の要望に応えているのかということは再考していかなければならない視点なのかと感じました。また,指導資格を持たない先生方が多くいらっしゃいますので,それも今後の論点であると思っています。
    本日の取組事例は,運動部活動をこれからも持続可能性のあるようなものとしてのように位置付けていくのかという意味で,例えばどのようなルール作りが必要かであるとか,地域とどのように連携していくのかというような問題,あるいは部活動の総量規制をどうするのかということ,そしてそこから活動時間の規制をかけたら,プラスアルファとしてどのような受皿があるのかということもお話しいただけたかと思います。
    教育課程が第一優先順位であるというのは大前提で話を進めたいと思っていますし,そういうように進めてきたつもりでいます。教員のオーバーワークについては,OECDの調査,あるいは文科省の調査を含めて,はっきりデータでは出ています。その点においては,教員の負担軽減ということがこのガイドライン作成の大きなモチーフでもあるということかと思っています。
    新しい3つの資質,能力の育成をするということで,この資質,能力は新しく出てきたものでもなくて,ずっとこれまでもやってきたことでもありますし,アクティブラーニング,学習活動の相対化についても,先生方,今まで御経験されていますけれども,指導要領が変われば大きな時間を割いて研究していただくことも必要になってきます。
    そのことも考慮しながら,部活動の総量をどのくらいに設定するのか,1日の具体的な活動時間,あるいは1か月,あるいは1週間の頻度についても,各団体の要望を拝見しますと,「はっきりと示してほしい」という意見が強いような感じに受けとっています。
    山﨑委員御発言のガイドラインの在り方については,「中学校を基本としつつ,高校も準用できる部分は準用してやっていく。ただし,高校は高校なりの独自の問題もある」という御提案として引き取りたいと思います。
    スポーツ活動の場としては,部活動と地域クラブの二者択一ではなくて,融合型という第三のプランをしばらく日本の中で定着させてみるという時期があってもいいのではないかと思います。その後については,未来予測にかかわってくる問題です。
    鈴木長官の御発言は,部活動と地域をつないでいくようなコーディネーターの役割を担う人もこれから必要になってくるだろうという御提案であったかと思います。また,部活動指導員は法的に整備されましたので,部活動指導員の役割もうまくつなげていく必要がありますし,あるいはスポーツの世界の中に豊富な人材がいますので,そのような社会資本をどのように活用していくのかということも総力をあげて,いわば部活動のこれからの持続可能性に向けてどのようにうまく使っていけるかということも考える必要があると思います。
    部活動を地域に移行するには,経費負担をどうするのかということと,併せて「学校に運動部がなければやらない」という子供たちのスポーツ権の保障の問題,スポーツをする権利をどう担保してやれるのかというような問題もこれから考えていかなければいけない問題が幾つかあるかと思っています。

○ 鈴木スポーツ庁長官から,以下のとおり発言があった。
  部活動に関してはいろいろな関係者がいますので,本当に難しいところがあります。また,地域性もありますし,今,確実に言えることは,教員の負担軽減のために部活動指導員等の外部指導者を導入していく,間違いなくそういう流れになってくると思いますが,外部指導者の質の担保をどうするのか,それから総合型地域スポーツクラブの話も出ていますけれども,総合型地域スポーツクラブもいろいろなやり方があると思います。
  地域によっては大学が主体的に動く場合もあるでしょうし,あるいは全国に約50,000人いるスポーツ推進委員が主体になるべきかもしれないですし,あるいはオリンピアン,パラリンピアンを含めて約4,000人いますから,地域が受皿になる場合の外部人材を活用するためのコーディネーターがこれからは必要になってくると思います。

○ 友添座長から,多治見市及び静岡市の両教育委員会に対し,委員の意見交換を踏まえてのコメントを求め,それぞれ次のような発言があった。
  ・多治見市教育委員会
      多治見市では,ジュニアクラブが抱える運営面の課題の他に,大会の規定によりジュニアクラブが大会に出られないことが大きな問題としてあります。ただ,多治見市としては,大会に出ることよりも,活動の場の保障ということを最優先にしていますので,子供にスポーツ活動をいかにさせていくのか,ジュニアクラブに加入していない40%の子供たちも土曜日,日曜日に充実したスポーツ活動ができるように,これからも取り組んでいきたいと思っています。
      ただ,大会の規定の中で,クラブに所属している子供たちがどうしてもその学校の部活動として出られない競技種目もございますので,この点の整備が図られていくということは願っているところです。
  ・静岡市教育委員会
      生徒の意欲を持った競技力を向上させるということと,教員の働き方改革との両立が私どもの願いであり,生徒もやりたい子は意欲を持ってやり更に伸びることができる,運動嫌いにさせずに生涯にわたってスポーツに親しむ子供たちを育んでいくことが非常に重要であると思っております。
      教員の働き方改革も大変なテーマだと思っていますので,国でガイドラインをある程度お示ししていただければ有り難いと思っています。

○ 次回の開催について,12月中旬にジュニア期のスポーツ活動に関する医科学的な調査等を踏まえて議論することとし散会となった。

お問合せ先

政策課学校体育室