運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成29年7月11日(火曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. (1)指導の在り方ついて
  2. (2)部活動指導員の活用に関する留意事項について

4.出席者

委員

委員18名

スポーツ庁

鈴木スポーツ庁長官,今里スポーツ庁次長(途中出席),平井スポーツ総括官,髙橋初等中等教育局長(途中出席),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当)(途中退席),藤岡学校運営支援企画官

5.議事要旨

○ 議事(1)について,スポーツ庁,菊山委員,奈良委員及び西岡委員からそれぞれ資料に基づき説明があった。
    また,議事(2)について,スポーツ庁及び泉委員からそれぞれ資料に基づき説明があった。

○ 以下,委員発言(発言の発言内容を変更しない範囲で校正し,読みやすくしています。)

  (友添座長)
    体罰の事案については,データの切り取り方によって,いろいろな解釈が可能であると思います。平成24年12月の桜宮高校の事件以降,文部科学省が行っている調査が細かくなって一時的に件数が増えました。一方,近年は減っていないので,根強く残っているとも読み取れます。
    「運動部活動での指導のガイドライン(平成25年5月)」は,体罰にフォーカスを当てて,緊急に作成する必要があったということで,教員の多忙化と子供の多忙化については考慮していません。今回のガイドラインは包括的にそれを含んで作成していくということになっています。
    指導者養成は,教員養成課程の中で,「運動部活動」のコマを設定して基礎的な講義を含めてやるという方法が検討課題としてあがっていますし,幾つかの方法論を考えていかなければならないと思います。
    指導者の活用については,説明を伺って,県体協,県教委,学校も含めたシステムの構築については今後検討していくべきテーマだと感じました。
    部活動の指導というのは,生徒指導的な色彩が非常に濃いですし,悩みを相談したり,ある意味では守秘義務が課せられるわけでもあります。その意味では,スポーツのコーチでは資質として不十分ですので,今後の議論の中で反映させていきたいと思います。
    部活動指導員については,部活動指導員と顧問との関わり方,部活動指導員の任用に関する規則等の整備,あるいは任期満了後の身の振り方の問題とか,まだまだ見えない部分も多いわけですが,実際の職務内容のイメージは共通して持っているわけです。
    部活動指導員に対する研修については,部活動の中で生活感だとか友人との関係,人生観,自身の生き方の指導にも触れる場面は往々にして出てきますけれども,そうなってくると,学校設置者や学校での研修でカバーできるのか,できないとすれば別のところで何か手立てが必要なのかも含めて議論していかなければいけないと思います。
    研修内容については,主催者によってばらつきがあり,結局どうしていっていいのかわからないという声もあります。その意味では,指導要領的な統一的な教育課程があった方が実は効果が高いのではないかということを費用対効果で考えていかなければならないことも含めて課題だと感じています。教員の負担を増やせないのははっきりしていますが,知恵を絞っていくためにこの会議で議論をしています。
    部活動指導員の報酬については,ボランティアベースではなくて,しっかりとした報酬制度を創るということかと思います。

  (泉委員)
    指導者資格は,短期間で取得できるといった現在の学校現場に則した制度に変えていく必要があるという認識では,中体連とも一致しています。多くの迷いながら指導している先生方に対して,技術面は短期間ではなかなか難しいですが,基本的なスポーツ生理学,心理学ですとか,必要最低限の所だけをしっかり学んでいただき,自信を持って指導していただくことを考えています。

  (菊山委員)
    専門ではない部活の顧問になる先生方がたくさんいます。競技団体からは,顧問に対して専門競技の指導者登録をしてほしいと言われますが,お金と時間をかけて指導者資格を取るのはなかなか難しいです。共通項による研修である程度の資格が取れるという制度が望ましいと思います。
    部活動指導員について,47都道府県の中体連事務局に現状を確認したところ,半分ほどが導入していこうという方向ですが,研修をやっているところは,そのうちの半分あるかないか程度でした。研修の中身も2~3日間だったり,半日だけで終わっているところもあったりと。地域の経済力,あるいは理解度によって違ってきます。時間が経(た)てばならされていくのだろうと思いますが,国から強い指導を頂かないと,スピード感を持ってはうまくいかないと思っています。
    研修中の講義の合間,あるいは食事中に参加者同士で悩み事を共有する時間が指導者にとっては非常に大きな力となっているという感想を持っています。是非,研修についての国からの財政支援をお願いします。

  (妹尾委員)
    部活動指導員に対する研修内容について,設置者による研修となっていますが,市区町村教育委員会については,小さなところも多くて,どこまでできるのかということもあります。市区町村は,指定都市とか中核都市とうまく分担をしたり広域で行った方が早い場合もあるので御検討いただければと思います。
    人材派遣会社を活用したモデルについては,技術指導は外部指導者ができるんだけれども,生徒指導はできないということを学校現場から聞こえてきます。生徒指導や人間性の育成の部分についてまで日体協が背負うのは荷が重いと思いますので,設置者ないし都道府県には生徒指導の指導主事がいるわけですから,役割分担しながらやっていくのが現実的なのかと思います。

  (杖﨑委員)
    短時間の研修ということに関連して,外国のお客様を呼ぼうとしたスキー場が,スキーの指導者に英会話を教えるのと,英語のできる人にスキーの技術を教えるのとどちらが早いか,結果は後者だったわけですけれども,技術を先生に教えるのと,技術を持った人に教育的見地を教育していくのと両方あると思います。
    教員の負担を軽減しながら,あるいは仕事を外注しながらできるかは工夫の余地があるのだと思います。人材派遣会社などを活用すれば代金が発生するという難しい部分がありますが,人を探すという面では必要かもしれません。

  (奈良委員)
    指導者の養成はこれまでの積み上げもあると思いますが,蓄えた人材をどのように学校現場で活用するのかが一番大事だと思います。学校で困った状態があるのに,学校長は何をどうすればいいのかがわからない状況です。学校と教育委員会との連携は大事だと思います。

  (西岡委員)
    部活動指導員は,具体的にどのような人材を想定しているのか。非常勤講師は授業が終わればお帰りになる方がほとんどなので,その方々を活用できると良い。学校のOBの非常勤講師などは,ボランティアで部活動の指導を手伝っている方もいらっしゃる。非常勤講師であれば教員免許状を持っているので,将来は教師になろうとしている人たちですから,教育的な部分は身につけているはずであり,研修も負担にならない。それと,リタイアされた教員を活用することが思い浮かびました。

  (平川委員)
    外部指導員制度は現場としては有り難いですが,部活動が学校管理下である限り全ての責任が学校にあるので,学校の業務軽減には至らない。外部指導員制度の導入が財源的に可能なのであれば,学校管理下から外すことも同時に考えていただきたい。つまり,学校開放の形にするということです。これには中体連,高体連の規約改正等々が必要になっていくと思いますけれども,是非ともこの場で御検討いただきたいと思います。
    学校の本業というのは何かということ。教員の本業は授業ですから,特に新しい学習指導要領はAIとかロボットとか自動運転とか3Dとかプリンター,ナノテクノロジー,こういうものが時代背景にある中で取り組んでいるので,教材研究の時間の確保であるとか,教授法そのものを転換する時間が必ず必要になってまいります。
    部活動の研修は学校としても有り難いですし,できればやってやりたい。しかしながら,一人の先生が週に25時間(コマ)持っている中で,学校長としては授業をやらなくてもいいから,部活動の研修を受けにいくようにとは言えません。その間は子供たちは自習となりますのでできません。何が一番大事かということを議論いただくと現場としては有り難いと思っております。

  (望月委員)
    日体協の資格を活用するというのは,前向きな方向で賛成しています。ただ,部活動指導員となりますと,スポーツ指導者としての指導員の資質はお持ちであるのに限らず,教育の一環として指導員としての資質が要求されます。現在もスポーツ指導者の養成で言いますと,後者の部分を意識してカリキュラムが作られていないというのが現状だと思います。
    日体協の現行の資格制度をベースとして,それにプラスしたものを何か考える必要があると思います。視点としては,「ジュニアの特性」という点と「暴力・暴言による指導が許されない」という点は,カリキュラムの検討の中でどのように充足させていくか,もうひとつは,「限界」という点では,部活動指導員を導入しても,いわゆるブラック部活と言われている中の子供の方の弊害,長時間にわたる部活動はプラスになるような話にはならないので考えないといけない。学校から地域への移行に切り込まないと中途半端になるという感想を持っています。

  (山口香委員)
    体育教員以外で,かつ,顧問を担当する部活の競技経験なしの顧問教員が非常に多いということで,短期間で取得可能な資格を創設するということについて,資格を与えることが安心感につながるということなのか,あるいは,資格を持たせることが生徒への指導や体罰の根絶につながることなのか,有資格の意義をはっきりさせる必要があると思います。取得に必要な期間はどの程度の問題なのか。安心安全を担保するための資格で良いのか。ニュアンスによっては誤解される可能性があると思います。

  (山口隆文委員)
    部活動指導員の報酬に関しては,将来的にどのように考えているのか。サッカーの世界で言うと,ほとんどの県にJリーグがあって,そこには優秀な指導者がいる中で,彼らが学校に訪問して部活動を支援することもできます。技術的に指導ができ,指導者資格も持っている8万人いる指導者が活用されることはいいことです。ただし,学校の教育現場のことがわかっていないので,研修をさせることで,学校設置者に認められれば配属が可能になりますが,そのときにある程度の報酬があるのかないのか。ボランティアベースに頼ることは,今の流れからするとあまり望ましいことではないかと思うし,責任も負わせることができると思います。

  (山﨑委員)
    部活動の在り方については,指導者の資質の向上が一番のキーポイントであって,それをどうやって進めていくか,あるいはガイドラインの中でどうやって盛り込んでいけるかというのがポイントだと思っています。
    「運動部活動での指導のガイドライン」を見ましても,決して指導者になってから身につける資質ではなくて,指導者になっていく過程の中で学んでいかなければいけないような部分だと思います。その意味では,大学での教員養成,教員採用ですとか,教員になってからの研修の中で包括的に取り組んでいかなければいけないことを改めて感じており,そういうところがうまく盛り込めるといいなと思いました。
    指導者がどのような言葉を残しているのかを調べることがあるが,その中で,米国のTVプロデューサーでジム・ヘンソンという方が,「子供たちはあなたが教えようとしたことは覚えていなくても,あなたがどんな人だったかは覚えている」という言葉を発信しています。これは我々の経験で置き換えて,いろいろな場面で指導を受けているわけですけれども,一つ一つ細かく教えられたことよりも,その人の人間性というか,そういう部分をきちんと覚えていて,そういった部分に影響されることがとってもあるのだと思いました。そのようなことを研修や養成の中で教えることが大事なのではないかと感じています。

  (山本委員)
    私もコーチもやっていましたが,手を挙げたことはありませんが,勝利を目指すために荒々しい指導になることも気持ちはわかります。勝利というのは,コーチ,指導者にとっては自分を誇示する手段になっていると思います。自分が感じる範囲では,プレイヤーズファーストというのは脇に置かれて,自分が一番勝ちたい,勝って自分が上に上がりたい。それは中学校でも高校でも全国大会,県大会で優勝したいあまりに無理を強いる。それで言うことを聞かない,うまくいかないと,「一発の効果」を使う。体育的には「一発の効果」は「恐怖指導」であると思いますが,そういったことがあるかと思います。
    もう一つは,「恐怖指導」である「一発の効果」に対する現場の声としては,子供たちは,言うことを聞かない子供も存在するのが現実であるということです。非行にはしる寸前の状態だったりするのを運動部活動で面倒見ている場合もあります。その子供たちをコントロールするには,聞いてくれないからやってしまうんだという「正当化」,それがいいとは思いませんが,現場からは「仕方なく」といった本音も聞こえてきます。
    競技団体は,ライセンス制度を創ってますので,講習等の教育を通して,考え方を伝えてマインドセットを変えないといけないと思っています。

  (渡邊委員)
    学校に指導できる先生がいないので外部から派遣するが,専門の先生が赴任すると外部の指導者が不要になるということがよくあります。指導の部分だけであればそれでも良いかもしれませんが,子供との関係性とかいろいろなことを考えると単純な問題ではないと思います。

○ 平井スポーツ総括官から,「運動部活動での指導のガイドライン(平成25年5月)」作成時と現在との社会的背景の違いについて,今回のガイドラインの検討に当たっては,作成当時は話題となっていなかった教員の多忙化の視点を含めて検討するという問題意識を持っている旨,補足説明を行った。
    また,「部活動指導員は,具体的にどのような人材を想定しているのか」という西岡委員からの質問に対し,「先進事例の代表的なところでは,クラブを経営している指導者の方が空(あ)いている時間で学校の指導をしていただいている場合や,地域の中で運動経験のある方が部活動の指導者となっている場合があるが,そういった人たちが学校の中で働けるような立場を作るという趣旨で制度化を行った。この制度ができたことによって,元トップアスリートなど,いろいろな方々が参画できるようになれば,活性化につながることも期待できる」と回答した。

○ 藤岡学校運営支援企画官から,部活動指導員に対する研修内容(案)について,部活動は学校教育の一環であり,競技力の向上だけではなく,むしろ授業との関連,子供たちの人間性の育成といったところを是非指導していただきたいし,そうでない部活動は教育にとっては弊害が大きいので,そのような内容の研修をお願いしたい旨,補足説明を行った。

○ 議事の他,妹尾委員から参考資料2に基づき説明があった。

○ 鈴木スポーツ庁長官から,去る7月7日に友添座長,山口座長代理とともに,江東区の合同部活動(女子サッカー部)の取組状況について視察を行い,区長,教育長,学校長,複数の学校から所属している生徒と意見交換等を行うとともに,社会経験のキャリアがあり教員に匹敵するぐらいの指導能力を発揮された外部指導員を取り入れて部活動指導が行われている状況を確認してきた旨の報告があった。
    その際,山口座長代理から,「視察した活動は,いい形で行われているロールモデルであるが,部活動は様々な形があるので,やってみて,課題を抽出していくことが現場のためになる」とのコメントがあった。

○ 次回の開催は,9月中旬に予定することとし散会となった。

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スポーツ庁政策課学校体育室

(スポーツ庁政策課学校体育室)