運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成29年5月29日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3階1特別会議室

3.議事要旨

【出席者】
松野文部科学大臣
鈴木スポーツ庁長官,髙橋スポーツ庁次長,平井スポーツ総括官,
澤川スポーツ庁政策課長,八木スポーツ庁政策課学校体育室長,
瀧本大臣官房審議官(初等中等教育局担当),
木村文化庁文化部芸術文化課長
委員19名,オブザーバー1名


○ 冒頭,松野文部科学大臣挨拶
    運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの作成検討会議の開催に当たり,一言御挨拶申し上げます。部活動は,生徒にとってスポーツに親しむとともに,学習意欲の向上や,責任感,連帯感の涵養(かんよう)等に資する重要な活動として教育的側面での意義が高い反面,適切な休養を伴わない行き過ぎた活動は,生徒,教員ともに様々な無理や弊害をもたらすものであります。
    特に,部活動の顧問を担当する教員が,スポーツや文化芸術活動の経験がないために,技術的な指導が難しい状況が見られることや,部活動の指導が教員の長時間労働につながっているとの指摘があり,その指導体制の改善が求められています。
    先月公表しました教員勤務実態調査の集計速報値では,いずれの職種においても,10年前と比較して勤務時間が増加しており,中学校の部活動においては土日の活動に関わる時間が約2倍となっています。
    教育の質の向上や様々な教育課題の対応が求められる中,教員の長時間勤務に支えられている状況は既に限界で看過できない深刻な事態であることが裏付けられました。今回の結果を受けて,中教審において教員の働き方改革に資する方策についての総合的な検討をお願いし,教員の業務負担の軽減に向けて,スピード感をもって対処していきたいと考えています。
    部活動の運営の適正化については,文部科学省としても,昨年度においては,各都道府県教育委員会等に対し,休養日の適切な設定を求める通知を発出するとともに,部活動の技術的な指導や単独での引率を行う「部活動指導員」の省令上の位置付けを行いました。
    また,児童生徒に関しても,成長段階にある児童生徒への身体的な負担も考慮しなければいけないと考えておりますし,学校生活全体でのバランスも検討していかなければならないと考えております。
    今年度においては,生徒の健全な成長の促進や教員の業務負担軽減を目指し,部活動の運営の適正化に向けて,本日お集まりの皆様方の御知見・御協力を得て,「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を作成することを目指しています。本検討会議の委員に御就任くださいました皆様方に感謝を申し上げるとともに,今後の部活動の在り方について大いに議論を頂き,完成されたガイドラインが今後の部活動を行う上での学校設置者や学校現場の道しるべとなることを期待して私の挨拶とさせていただきます。

○ 委員の互選により座長に友添委員を選出,友添座長が座長代理に山口香委員を指名。

○ 以下,委員発言
  (淺野委員)
    神戸市におきましても,部活動の負担軽減ということで,平成10年度から外部指導員制度を取り入れてまいりました。今年度,新たな職務を有する外部支援員という形で,先生方がいなくても部活動の見守りができるというような施策を打ってきましたが,いろんなことをやればやるほど課題が出ております。
    学校教育法施行規則の一部改正により部活動指導員が制度化されましたが,職務を拡大するということはそれなりの予算の確保が必要になってくる,そして,たくさん外部指導員をつければ,それだけの人材確保が必要となるということで,やればやるほど課題は積み上げられてきたと思っております。この検討会議でいろんな意見を聞かせていただきながら,いろんなことが解決できていくことを願っています。

  (石塚委員)
    7年ほど前から東京都杉並区,大阪市,東京都教育庁から部活動の民間委託モデルということを推進してまいりました。今年の2月からは,民間企業の資金を活用して指導者の派遣を行うというモデルになり得るプロジェクトを沖縄県でスタートしております。民間企業が部活動をサポートできる,また今後サポートしていけるような可能性が大いにあるのではないかと7年の経験で感じております。
    まだまだ教育現場において民間企業がどういった形でより関われるのか,指導者の認定制度を含め,7年で取り組んできた事例,もちろん成功ばかりでなく課題も多く見つかってはいますが,そういった観点から話ができればと思っております。

  (川原委員)
    運動部活動は,子供たちにスポーツ機会を確保する点で重要でありますし,また競技スポーツの基盤にも日本ではなっているわけでございます。このように部活動の在り方を取り上げることはすごく意義のあることだと思っております。
    私は,スポーツドクターの立場から長年スポーツに関わってまいりましたので,スポーツに伴う安全とか,あるいはスポーツ外傷・障害の予防の観点からお話をさせていただきたいのですけれども,運動部活動につきましては,教育の一環ということですので,外傷予防の観点からもやっぱり活動の時間とか日数についてはある程度の目安が必要だと思っています。
    それから,発育期にありますので,生徒の身体の状態に対して適切な指導が必要ですが,学校管理下の運動部活動における事故とかスポーツ外傷・障害のデータが日本スポーツ振興センター学校安全部に集積されておりまして,これまでいろんな予防等の調査研究が行われて重大な事故はかなり減ってまいりましたけれども,スポーツ外傷・障害はかなりの数にのぼっておりまして,この辺の対策が必要だと思っています。
    学校には学校医が配置されておりまして,日本医師会には健康スポーツ医がおりますし,日本体育協会ではスポーツドクターやトレーナーも養成しているわけでございますが,各学校にこういったスタッフを配置するのは数的に無理でございますけれども,例えば,学校で年1回指導者に対して安全とか外傷予防の講習会の機会を持つ,あるいは何かあったときに相談できるような体制というのは現状でもできるのではないかと思いますので,そういったことが必要だと思います。

  (菊山委員)
    私も今の職に入る前は中学校の教員として現場におりました。最終的には校長という立場で学校経営をしていたわけですけれども,中体連としては,学校教育の一環,学校の部活動,これを根本に置いて活動していますし,地区での大会ですとか,最終的には全国大会も運営しているわけですけれども,そこを絶対外したくないというのが根本にあります。
    具体的には,学校教育の一環といえば,学校経営の最終的な責任者は学校長ですので,校長がより具体的なデータに基づいた主体的な判断をする。例えば,私はずっと部活動に関わった人間ですので,自分の学校の生徒,あるいは教員の疲労度等を見ていればわかるわけです。ケガが増えてくるとか,集中力がなくなるとか,そういったときには,ノー部活動デーです。私も校長のときに突然月1回全部の部活動を休みにしました。教員は「何で?」と最初言ったんですね。しかし,やっぱり子供たちの様子を見ていて,「私は校長としてそう判断をする」と。
    最初は子供たちがびっくりしていました。関東,全国を狙っている子供たちがいますので,文句を言われるかとも思いましたが,逆に喜んでくれました。部活ごとの休みは自分の部活の仲間と遊べますが,全校で一斉に休みになると,他の部の子供たちと遊べる,共に時間を過ごせる。そんなことで違った反応があって良かったと思いました。そのときに,教員には絶対職員室に戻ってはいけない。4時までは教室か,体育館か,校庭かにいて,生徒と関わる時間を設けてくださいと。そんなことも校長としてやってきました。全国いろんなところでそういった取組はなさっていると思うんですね。そういったものをできるだけ取り上げて,より良い部活動運営ができているところをみんなに紹介していくことも大きな力になるんじゃないかなと思っています。
    もう1点は,今,教員は十年研,あるいは管理職になれば管理職研修等々があります。そういった中に部活動の意義ですとか,課題ですとか,解決策,そういったもの学ぶ場を設けてほしい。教員免許を取る学生たちの授業の中にもそういった授業が1コマ,2コマあるべきではないかなと感じております。

  (小宮山委員)
    野球をずっと続けてきてプロの世界まで進んだのですが,基本的には中学校,高校といわゆる部活動というところで活動し,大学に進学してプロになれたわけですけれども,当時のいろいろなことを思い出しながら,皆さん方がいろいろと話し合われる中で,意見を伝えることができたらと思っています。

  (妹尾委員)
    私自身は,学校のマネジメント,組織づくり,最近は多忙化や負担軽減について,全国の先生方の研修会ですとか,校長先生の御相談にのっている者です。文部科学省の学校業務改善アドバイザーもスタートしますので,そういう形でも皆さんにもお世話になるかと思います。子供が中学の陸上部でお世話になっており,よく分かるんですけれども,本当に先生方一生懸命に指導くださいまして,あるいは大会運営されている皆様方にも私としては非常に感謝しています。本当にすばらしい活動をたくさんしていただいていると思っております。
    とはいえ,学校の部活動の在り方については,皆さん御案内のとおり,幾つか課題があることだと思います。今日は3点に絞って少しだけキーワードを申し上げたいと思います。
    1点目は,部活動はやはり楽しい,あるいはすばらしいからこそ,ハマるということだと思います。これは生徒にとっても,実は先生にとってもそうなんですね。成長実感があるだとか,自己有用感があるということで非常に楽しい。すばらしいからこそどんどん放っておくと過熱してしまうということで,これをどう捉えて「持続可能な形にしていくのか」ということがこの検討会議でも重要なテーマではないかと思います。
    2点目は,原点を確認するということです。資料にもありましたとおり,学習指導要領でも,部活というのは教育課程外であり,自主的な活動ということです。家庭の所得等にかかわらず,生徒の希望だとか,自主性に応じて幅広くスポーツや文化に親しめるには非常にいい機会だと思います。
    一方で,自主的な活動,あるいは教育課程外の活動ですので,例えば大会のために授業が削られてしまうだとか,あるいは顧問をやりたくないという先生も職員室でその気持ちすら表明できないという実態も一部にはあるということなので,こういったことは,本当にこのままでいいのかということは考えていかないといけない。「部活の原点に戻ったときに今の在り方でいいのか」というのが2点目の論点です。
    3点目は,「部活だけを見ない」ということを提案したいと思います。ある保護者の投書の紙面を見たのですけれども,ちょっとだけ紹介させていただくと,「娘が中学校バスケットボール部に所属しています。丸一日休みがないことが多く,日曜日はほとんど試合,多感で頭が柔軟な時期に公立の学校がここまで生徒,あるいは先生を拘束すること,週7日同じ人の指導を受け続けることは子供がいろいろなことや人に出会う機会を奪うものであり大変違和感を感じています」というお母さんの投稿です。
    これはあくまで一例ですけれども,すばらしい,あるいはいい体験というのは部活以外もあるということなので,こういうことも含めて部活の在り方を是非考えたい。
    以上3つ,「楽しいからハマる」「原点を確認する」「部活だけを見ないで在り方を考える」ということを提案したいと思います。

  (田村委員)
    私は,ふだん糖尿病の診療に当たっておりまして,主にスポーツや運動で糖尿病をどのようにしたら予防できるか,あるいは,最近では寝たきりをどのようにして予防できるかというような研究をしております。余り部活動とは関係ないような感じがするのですが,スポーツ庁から出されている調査結果などを見ると,今後深く関わってくるのかなという実感を最近持ち始めました。
    一つ目の実感ですけれども,認知症予防は一般的に60~70歳ぐらいで行っているような感じがするのですが,最近の研究ですと,大体30~40代が週2~3回しっかりとした運動をしていると,高齢になってからの認知症発症頻度が50%ぐらい低下するということがわかっています。
    つまり,高齢になってから何か対策するのではなくて,30~40代ぐらいからしっかり運動をするようなことが有効なのではないかということです。しかしながら,我が国では,この年代が一番運動していない世代として知られています。
    スポーツ庁で行われたアンケート調査を見ますと,皆さん中学・高校まではある程度運動しているのですが,18歳を超えたあたりで少し二極化するような感じが出ております。つまり,18歳を超えても運動する人はそのまま継続して運動するし,18歳を超えてやめちゃう人はそのまま運動しないというようなデータになっております。ですから,うまく部活動からその後のスポーツ活動へと継続できれば,将来的な認知症予防などにつながるのかなと思っております。
    もう一つ懸念されるのが,先ほど御説明あったように,女性の運動における二極化です。実は,我が国では,非常に痩せた女性が先進諸国の中で最も多い国として知られています。例えば,20代女性の約20%がBMI18.5kg/㎡を切っています。
    このような人の特徴は,運動せず食べないケースが多いようです。痩せていれば健康かというと,実は痩せた人は太った人と同じくらい糖尿病になりやすいことが知られています。また,若くて痩せている人は骨量も筋肉量も少ないです。
    このような人が将来どのような疾病リスクを持つのかはまだ分かりませんが,大きな問題としてとらえた方が良いように考えています。恐らく,中学・高校時代に自分に合うスポーツと出会えなくて,そのあともずっと運動しなかったのかなというような仮説を持っているのですが,いろいろ多様な楽しいスポーツがあると,中学・高校から楽しく運動を続けて,それ以降も続けられるのかなと思った次第です。
    ちょっと違う視点ですけれども,このような立場で意見などを述べさせていただきたいと思います。

  (杖﨑委員)
    この検討会議では,主に先生方の負担を減らすといった観点,それから持続可能な部活動の仕組みを作るといった観点があるとお聞きしています。そこにいわゆる民間の力,民活のようなところというのも議論の対象になるのかと思いまして,お声がかかったものと思っています。その観点から少しお話させていただきたいと思います。
    スポーツクラブ,フィットネスクラブというジャンルがあります。民間のフィットネスクラブのスポーツクラブが集まって作っている事業者の団体でございまして,全国に2,700箇所ぐらいのクラブがあって,350万人ぐらいの会員数,年間延べで2億数千万人の方が利用されていらっしゃるといった民間のスポーツクラブでございます。
    そこに4万人強の従業員がおりまして,そのうちの8割,3万4~5000人が運動指導員,運動指導者でございます。その内容は様々でございますけれども,そういう指導者がおります。
    彼らは,お客様として迎えた方に対して「本当は余り身体を動かすのは好きではなかったけれど,やってみたらまんざらでもないな,面白いな」というふうに興味を持たせて惹(ひ)きつける力・術は心得ている人たちではないかと思っています。そういったところを活用したい感じです。
    健康・体力づくり事業財団が中心になって,これまでも二十数年,三十年近くかかって健康運動指導士,あるいは健康運動実践指導者という運動指導を安全,確実に行えるといった人材もつくっております。健康運動指導士が1万7~8000人,実践指導者が2万人いらっしゃるということでございます。こういった方々の活用というのもあるのかなと思っています。
    民間のスポーツクラブ,フィットネスクラブの現状といいますか,ここ数年来の特徴からいいますと,基本的には施設があって,そこへお客様をお迎えするというのが従来の形だったのですけれども,クラブの施設ではないところでの指導というものを分担させていただけるようになったと。
    例えば,老人の健康施設などへ行って運動する,身体を動かすというところのパートを担当する。あるいは地域の自治体が行ってらっしゃる健康教室といったところの指導をやらせていただくとか,あるいは企業での健康づくり,体力づくりといったところを担当することもやるようになってまいりました。
    学校との関わりという意味では,例えば,学校の水泳の指導のところを,請け負わせていただくとか,あるいは中学校等におけるダンスの指導というところ,やはり先生方よりは経験を積んだ者たちが大勢おりますので,そういったところを担当するといった形があるかと思います。こういう様々な取組をもう少し制度の中で使っていただけるようなことを,この検討会議の中で模索できればと思っています。
    子供さんたちが各競技種目に出会って打ち込むきっかけになるのが部活の役割の一つだと思いますけれども,民間スポーツクラブの活動を通して,健康のために身体を動かすというフィットネスという動かし方があるんだということを子供のときに知っていただくこと,出会っていただくことが生涯の健康のための身体を動かすといった芽をお子さんのうちにどこかで出会いがあればいいなと思っています。

  (奈良委員)
    部活動の教育的な意義や効果について,あえてお話しする必要はもうないと思いますけれども,例えば体力面や健康面,又は部活動の技術面・競技力の向上,そして何と言っても一つの目標を共有しながら進んでいく過程で得られる仲間・人とのつながりなどが極めて大きいと思っています。
    文化系,運動系問わず,部活動の果たすべき役割とか意義は非常に大きい。諸外国と比べても日本の部活動そのものは優れた仕組みだと思っています。そういった優れた部分については変えるべきではないが,一方では少子化の問題,また多様化が進む中で,それらの課題に対してどのように対応していくかということについては,遅れている部分もあると思います。
    むしろ変えるチャンスを見逃してきたという趣旨の御指摘もありましたけれども,変えてはいけない部分と,変えていかなければならない部分を間違うことなく見極めながらやっていく必要があると考えています。この検討会議の中でも是非そういった視点で参加させていただければと思っています。
    2つ目は,安全管理,事故防止という観点で一つお話をさせていただきますが,そもそも部活動は楽しいものであります。体育・スポーツ活動を通して高校生を健全に育成することは,全国高体連の大きな使命でもあります。その中で,3月27日に高校生と引率の先生を合わせた8人の尊い命が無くなるという大惨事がありました。
    体育的な活動を行うことで一定のリスクを併せ持つというのはあります。しかし,当然ながら事故やケガがあってはいけないことであります。そもそも楽しいはずの部活動を行うことで,亡くなったり又は一生涯背負わなければならない後遺障害が残ったりするということは防がなければいけないことです。そういったことに対する視点でもこの検討会議で議論できればと思っています。
    ただ,体育的活動,部活動をすれば一定のリスクは背負うわけで,事故があったから活動そのものを縮小していくのではなくて,どうすれば事故が防ぐことができ,安全により効果的に進められるかという観点が当然ながら大事かと思っています。
    3つ目は,部活動指導員の制度の導入についてですが,この制度そのものは,学校の教員又は経営者にとっても大変有り難いことだと思っています。ただ,実際に部活動指導員として学校で活躍していただく方々には,部活動は教育活動の一環であること,すなわち技術面での指導と並行して,その部活動を通して生徒を育てるという観点をもっていただくことが大事だと思っています。そのような視点を兼ね備えた人材を育成する仕組みと,そのような人材を活用できる仕組みの整備をお願いしたいと思っています。
    最後に,中学2年女子の「何も運動に関する取組をしていない子」のデータがあるのですが,背景については何となく想像できる部分もあるのですけれども,何か具体的に理由があれば教えていただきたいと思います。
    高校生の運動部活動に所属する数というのも,少子化の中で減ってきてはいます。ただ,少子化の人口減のカーブよりかは加入している数,減り方の方がきつかったり,一方では生徒の数が減る中でも登録人数が増えている競技種目もあるということで,いろんな角度から研究していくための一つの材料にもなる思います。

  (西岡委員)
    私は,「部活動というのは何なのか」ということに向き合った経験があります。それは,新設校に赴任し,どのような部活動の部を設置するかを検討したときに,生徒の希望を聞いて極力受け入れようということになりました。1学年で200人ほどの規模だったわけですが,先生は校長も入れて13人。校長を除いた12人で行える部活動に収まったらいいなと思いましたが,希望調査をしてみたら,野球部とバドミントン部と放送部と文芸部と4つだけでした。
    創設2年目になって,空手部などの創部の希望もありましたが,「指導者が見つかったら創部しよう」という約束で,そのときは創部しませんでした。フェンシング部という希望もあったんですけれども,これも中学校では余り部がないですし,指導者もいなかったので創部できなかったのですが,翌年度に経験者の教員が赴任して創部できました。
    空手については,教えられる先生を探しましたがいませんでしたので,町の空手道場に行って,いわゆる外部指導員をボランティアでお願いしましたら,「空手の普及のために」と御理解を頂いて毎日来てくれました。創部3年目にはインターハイにも出場するなど成果をあげてもらいましたが,そういう経験を持っています。
    生徒がやりたいということに応えてあげるのが指導者,学校側の一つの責任かと思います。最初のときは苦労したんですが,今,少子化の中で,学校規模が小さくなっていって先生の数が減っている状況で,昔ながらの部が残っていたら先生方は大変な状況になっているのだろうというふうに思います。手分けしてということはできませんので,一人でたくさんの部の担当を掛け持ちしている先生もいるんだろうなというふうにも思います。
    とはいえ,歴史がある部を簡単に潰せません。やりたいという生徒がいれば潰すわけにはいきませんので,現場の先生は悩んでいるのではないかと自分の経験からも感じます。少子化の中で施設は余裕が出てきているのかもしれませんけれども,先生が減っているということがやっぱり大きいのかなと私自身は感じます。
    高野連では,何年か前に新しい憲章を作って週1日休養日を設けることを決めました。95%ぐらいは実施されています。昔ながらの365日活動する考えの年配の方が,まだかたくなにがんばっておられるみたいですが,それ以外の若い先生方はみんな週1日きちっと休んでいるという実態がありますので,もう少し強く話をしていけばと思っています。
    週1日休んで何をするのかということについては,勉強してもいいし,他のクラブを見学してから帰ってもいいなど,指導者はいろいろなアドバイスをするようです。中には,共稼ぎの親御さんから「子供をすぐに家に帰らせないでほしい。3時半に家に帰ってこられても困るんだ。せめて5時まで学校で預かってほしい」という意見も聞いたりして,先生方は仕方なしに学校で勉強させているような場合もあります。これは,部活動にはならないと思いますが,部員だけ集まってしまうと部活動になってしまうのでしょうか,そんなことで対応しているところもあります。
    毎日活動していたら,どこか故障しても医者にも行けない。それは子供のケガの防止にもならないし,悪化しているところは一層悪くなるだろうと思いますので,治療に通う日も欲しいだろうし,他のクラブも見たいだろうし,いろんなことができる時間が欲しいだろうと思います。同時に,それは指導者にとっても週1日部活動から離れることは良い時間になるであろうということで,そんな話を視察に行く先々でしていますが,丸6~7年たっていますので,高校野球に関しては定着していると思っています。

  (平川委員)
    私は民間人校長でして,今年で8年目になります。学校としては2校目でずっと中学校籍におります。学校という世界に入って一番びっくりしたのは,学校に対する御意見,端的に申し上げればクレームの中で一番多いのが部活動に関してということです。自分の子供がどうしてレギュラーにならないのかとか,練習量が多すぎる,少なすぎるなど多方面にわたりまして保護者の方々が忌たんなく御意見されます。
    それに対して学校は,学校管理下ですので対応しなければならないという中でやらせていただいてまして,一つ思いますのは,部活動についてもう少し世の中が,特に保護者の方も御存じない方も多く,部活動というのは教育課程外であるということを知っていただきたいと思います。
    学校側も,特に管理職が保護者会とかPTA運営委員会の中で「部活動は教育課程外です」ときちんと周知するべきだと思います。「国語,数学,理科,社会といった教科でもないですし,学校の行事でもありません」と。「部活動とは,やりたいという生徒たちがいて,それを面倒見てもいいよという顧問教員がいて,年度ごとに初めて成り立つものである」と。そして,「練習量が多すぎるとか,少なすぎるとか,SNSは使うなとか,こういった練習の方針等に関しては部活動の顧問が決めますので,これに関して御意見がある方は外でやっていただいても構いません」と。本校ではこのように申し上げるようになってから,ピタッとクレームがなくなりました。でもこういうことを様々な保護者がいる中で,なかなか言うことができないという学校の先生方も多いと思います。その点を何らかの形で広めていければと思っています。
    また,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程企画特別部会の末席に座らせていただき感じたことは,新しい学習指導要領の実現のためには,何らか部活動についてのある程度の整理は必要だと思っております。昔と比べて子供の質も違えば教員の長時間勤務の是正という点でも必ずメスを入れなければならないことだと思います。一言で言うと「昔とは時代が違う」というふうに捉えておりまして,この部分で,どのように整理すればどのように良いのかということを検討会議で勉強させていただければと思っております。
    簡単なところで言いますと,部活のない引率とか監督,これが非常に負担になっております。例えば,本校で言いますと,新体操や水泳に関しては先生が一緒に引率,登録,それから監督として行かないと出場できないということがあります。こういった大会のときは,必ず他の部活動の大会とも重なり,正直いっぱいいっぱいです。今,様々な教員が子育てとか介護とかがある中で,誰に担当していただくのかでいつも困り果てております。
    例えば,学校印の押した書類があれば,教職員が出向くことなく校長の裁量で出場できるというふうにしていただければ,学校はかなり楽になるのではないかと思います。また,新体操はいろいろな面がありますので男性教諭を担当させられないです。しかし,女性の先生は子育て等々でなかなか行けないという状況です。
    よく言われていますのは,保護者は引率補助者はできても監督はできないということです。召集係ですとか,大会の役割を教員の誰かが担っていただかないと大会が成り立たないので,「監督としてとにかく来てほしい」と言われます。しかし,教員は「無料の人材」ではありません。学校で部活動として存在しない引率のみのケースは,外部のスクールやクラブなどに所属し,そこで保護者が月謝等を払い,その種目をさせていることが多いのですから,大会の運営に関わる経費は保護者負担にするなどして,大会を運営するために少しそういった施策ということが必要なのかなと。これは教員の多忙化解消の第一歩になるのではないかと感じております。

  (望月委員)
    私は法律家です。スポーツ少年団などの日本体育協会の仕事を手伝ったり,日本学生野球協会の憲章違反事件への対応を取り扱っているということで,スポーツに関わっています。2010年の日本学生野球憲章の改正では,「週1日休み」の導入には様々な意見がありましたが,結論としては,競技団体の規則として強制をしております。
    部活動は非常に大事だと個人的には思っていますが,今,批判にさらされて厳しい状態にあります。これは,「季刊教育法」という教育法分野の学術誌ですが,「ブラック部活」というテーマで2度にわたった特集がされています。日本の部活動は世界的に見ても特殊ですが,プラスに評価される面のみならず,負の側面が大きく取り上げているのが現状です。
    実は,昨日と一昨日,日本教育法学会第47回総会がありまして,私も参加しました。ここでは,報告者・発言者からは現在の運動部活動に対して厳しい意見が多くありました。この検討会議の一員である私としては,つらい立場で聞いていました。
    何がブラックかというと,一つは子供の面から言われています。子供から見て弊害がある,事故やオーバーユースによる健康障害,それから学習機会の喪失・私的時間の喪失。次に,教員の面から言われています。長時間労働のために,いろいろ健康被害がある。実際に,中学校の先生が亡くなったケースの資料を持ってきました。模範的な先生で,教育委員会の教員募集のポスターにも採用されている先生が26歳で亡くなりました。
    部活動指導が多かったと言われていたので,部活動指導の状況を確認するために「特殊勤務手当実績簿」の写しを頂いてきました。2011年の6月に亡くなっているのですが,2010年10月の土日が全部で10日ありまして,そのうち8日間は部活動の指導に当たっている。「特殊勤務手当実績簿」というのは,休日の出勤簿みたいなイメージです。4時間を超えないと手当はつかないので4時間未満のものは載っていないケースが多いと言われています。
    最初は,私は,周りの学校の先生でもこの程度はみんなやっていると思って資料を見ていたのですが,考えてみたら,その感覚自体が麻痺(まひ)しているのだと気がつきました。
    1か月で土曜日と日曜日に合計45時間従事して2万4000円ほどの手当が出ていますから,仮に1時間当たりにすると538円ぐらいです。賃金だとすると最低賃金法違反(※)になってしまう。賃金ではないという法律構成だと思いますが,実態としてこれでいいのかという話です。※委員による仮定の話です
    ちなみに,学校の先生の部活動に従事している時間について,公立学校の平均,私立学校の平均,国立学校の平均の3つのデータがあるのですが,ダントツに長いのは公立学校なんです。原因の一つは,「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」いわゆる給特法です。給特法令では,公立の義務教育諸学校等の教員には原則として時間外勤務を命じないことになっています。労働法では,時間外労働に対しては,使用者は割増賃金を払わなければいけないため,経済的な規制がかかって残業・長時間労働を抑制することができますが,給特法の下ですと,時間外勤務手当や休日勤務手当は支給しないため,残業・長時間労働の促進みたいな状態になっている。これを抜本的に変えないといけないと思いながら本日参加しています。
    もう一つは,科学的なトレーニングという視点です。かつてバスケットボール男子日本代表監督をつとめた小濱さんが米国の大学にコーチ留学に行ったときに,「米国のバスケットボール部は2時間しか練習しなくて仰天した」と言うんです。「こんな強豪校でなぜ2時間しかしないのか」と聞いたら,「それはすごく集中してやっているから,その時間に集中して100%のパフォーマンスをしないとどんどん置いていかれる」と。「その代わり2時間しかやらない。日本はだらだら練習している。こんな長時間やることに競技力向上の点から意味があるのか」というお話を昔聞いたことを思い出しましたので紹介します。

  (森委員)
    部活動というのは,子供たちにとってもものすごく大事な楽しいものであって,学校教育の一環でありますから,もちろん生徒の安全,そしてまた教員の負担減,これはもう大前提にないといけないものと感じております。ただ,部活動の指導というのは管理職があえて教員に対して指示するような,もっとやりなさいというようなことは絶対にないわけで,ある意味,個人の情熱に委ねられてきていたというところが現状ではないかと思います。また,やはりオーバーワークはいけない時代になっていますから,もちろん生徒も先生も休養日といったものを設けるというのは当たり前だとは思います。
    一方で,部活動が盛んというのは生徒募集の大きな一助になるわけなんです。そういった学校としての一面もあるということはお踏まえ置きをいただければと思います。実績のある学校にはみんな進学をしたがりますので,私学にとっては経営の一部でもあるということでございます。
    それと,平成9年の文部省の通知ですけれども,休養日の設定でありますが,強い部ほど現在設定されている部が多いのではないかと思います。本校の例をとってもやはり強豪の部であればきちんと休みを取っております。徐々にではありますが浸透しているというふうに私は感じております。
    この度,部活動指導員という新たな指導員が設定されましたけれども,これは非常に有り難い。現場にとっては,教員だけでは手に負えない,なかなか負担がかかることもサポートする方がいらっしゃれば,大変有り難い施策だと思うんです。ただ,私立は公立とは違って,その手当等が全て学校負担ということになってきます。そういったところで若干の温度差が学校によって出てきてしまうのは否めないところなのかと思いますが,こういった制度を利用しながら先生方の負担を和らげていくということは至極当然のことだと考えております。
    それと,2020年のオリンピック・パラリンピックを見据えて,部活動の負担増ということを抱えながらも日本全体でもっともっとスポーツを盛んにしていかなければいけない。東京オリンピック・パラリンピックを始め,さらなるその次のオリンピック・パラリンピックに向けて若い力を育てていかなければいけないというふうな一面もあるので,是非このガイドラインは現場の先生方が萎縮してしまうようなそういったものは避けなければいけないのかなと思います。もちろん,現場の先生方の健康管理は第一でありますが,その情熱や熱意を削(そ)いでしまうようなものは避けなくてはいけないというふうに雑感ではありますが感じた次第であります。

  (山口香委員)
    運動部活動の課題については,社会的な関心も非常に強いので,非常に重要な内容だと思っています。私の方から何点か今感じていることを申し上げたいと思いますが,まず,スポーツとか運動の活動は,社会の変化や時代の変化に少し遅れているといいますか,体罰が以前問題になりましたけれども,古い時代のものを引き継いできてしまって,なかなかうまくいかないと感じながらも変えるタイミングがなく今に至っていると感じております。
    国民の意識も含めて,運動やスポーツに対しての考え方そのものを転換する時期にきており,その一つ象徴的なものが運動部活動かなと思っています。子供たちへのアンケート調査で,運動部活動を「こうだったらやるよ」という回答の中に,「自分のペースでやれる」とか,「友達と楽しめる」とか,取り組む形が以前と違って多様化しているので,それに対応していく必要があるなと思っています。
    それに関連して,指導の在り方もそうなんですけれども,私も「そういえば子供の頃休みがあったのかな?」といろいろ考えるんですが,休みがないことがいいことだというふうに子供たちも指導者も思っているところがあります。
    私も大学で教員養成課程の授業で「トレーニング効果が上がるには休養も大事だ」ときちんと教えているんですけれども,教えていることが実践されていない,「どうして休みがないのかな?」と思ってしまって,そういう意味で指導の在り方,効果的な指導ということをきちんと説明をしてわかってもらう必要があると思っています。
    それから,運動部活動はすごく活動されているんですけれども,国民全体の運動実施率に結びついてきていないことは,やはりどこか運動部活動の在り方にも問題があるのかなと思っています。中学校,高校時代,強いて言えば大学時代までは運動を一生懸命やるけれども,終わったら終わりと。
    その原因としては「子供時代とか,学生時代にしか運動しないんだ」というような考え方を持っていることもあると思うので,やはり生涯スポーツにつながるような指導の仕方ですとか,楽しいということの継続もありますけれども,知識の与え方ということもこれからの指導の在り方には含まれていくのかなと思っています。
    非常に問題が多岐にわたっているんですけれども,皆さんと共有しながらいろいろな議論を深められればと思っています。

  (山口隆文委員)
    私自身も東京都の教員として20年間公立高校でサッカーを指導しまして,高校選手権大会に出る目標を掲げて熱血をもって部活動をやりました。妻は教員ですが,実技指導ができない「管理顧問」で,引率をするという教員であります。したがって部活動が何たるものか,又はどのような問題があるのかということには関わっていた人間であります。
    今,いろんな問題になっているやり過ぎだとか,全く休みがないとか,子供たちの発育発達のことを考えないでやり過ぎているということは,私としてはあり得ないというふうに思います。すなわち,今,日本体育協会の傘下の中で指導者養成をやっておりますが,その指導者養成をしっかり受けた指導者であれば,そんなことはあり得ないんですね。
    ところが,「なぜそういうことが起こるのか」とサッカーの世界だけで言うと,今年もそうでした,去年もそうでした,日本中体連の全国大会出場校の半分ぐらいしか資格を取っていないんですね。「それだけサッカーが専門でやっているのになぜなんだろう」と考えたときに,やはり指導者研修会に参加できない,他の先生に授業を頼んで参加するというのはなかなかできないということです。
    日本サッカー協会としても,資格を取りやすくするために2年間の夏休みでとれるような研修会ができないだろうかということで,中体連の専門部会の方と相談して今年からやり始めます。
    一生懸命やる先生もいらっしゃるわけで,その先生方がより勉強したいと思ったときに,研修会に出られるような体制を是非作ってもらいたいなと思います。校長先生たちに「どのようなときだったら派遣できますか」と聞きますと,「授業があるときは難しい。夏休みとか冬休みとか春休みだったら何とか出してあげることができる」とおっしゃってくれています。一生懸命やる方の足を引っ張らないで,勉強したいという場合には研修会に参加できるようなことを是非実現したいと思っています。
    そうすることによって,やり過ぎだとか,子供に休みを与えないとか,自分自身も苦しくなるということは,スポーツ科学を取り入れていけば2時間以内の練習なんて当たり前ですし,休養を週1回,2回入れるのも当たり前ですし,ブラックであるというようなことがなくなっていくのではないかと思います。先生方もいろんな意味で,一生懸命やられる方は専門を活(い)かして勉強できるようなものを是非作っていただきたいと思っています。
    中学,高校の先生方には,「研修会に参加するときに,日本サッカー協会指導者養成ではなくて,スポーツ庁が共催というような形ができれば,学校長も許可してくれるだろう」と強く言われました。そういうことも含めて是非この会議で考えていただく案件ではないかと思っています。
    サッカー界ではJリーグができて25年になります。そこにはトップオブトップの子供たちが集まるわけですけれども,実際に日本代表の選手たちを見ても中体連,高体連の出身者が4割,5割いるんです。部活動は,トップアスリートを育てるための土壌でもある中で,その部分は生かしながら,なおかつブラックと言われるようなところ,やってはいけないことを直すためには,指導者が勉強するという機会を是非与えなければいけないと思うので,今後この会議の中でも考えていただきたいと思っています。


  (山﨑委員)
    部活動の現場と学校経営の立場と高体連の取組という立場で参加させていただいております。3月まで千葉県の教育委員会で体育課長をしておりましたが,昨年の全国体力・運動能力,運動習慣等調査では,千葉県の中学校2年生が1週間の運動部活動の時間が全国で一番長いと。また,一月の土日での休養日が設定されていない割合も高いというようなことで,果たして千葉県の部活動は大丈夫なのかというような御心配も頂いたところでありますが,生徒も先生も一生懸命にやっている一方で負担になっているケースも指摘されたところです。
    ただ,他のデータで,例えば所属のきっかけ等を見ますと,自ら進んで加入している割合が高いですとか,指導方法の充実という観点では生徒のニーズの把握が進んでいるとか,あるいは保護者への説明といったものが他の県に比べて割合が高いとか,トータルで見ると活発な活動が行われているというふうに捉えています。もちろんそこには大きな課題が含まれていると認識しています。
    前々職では,市立船橋高校の校長としてトップレベルの部活動を目の当たりにしてきたところでもございます。その中でも,効率的・効果的な部活動の実践例ももちろん含まれており,それが成果につながっている例もありますので,そういったものが全国の中でもどれくらいあるのか,そういったことも少し検討会議の中で把握できればいいかなと思っています。
    個人的には,運動部活動というのは,我が国の風土に根付いたすばらしいスポーツ文化だというふうに思っています。学校教育の中には様々な学びとか気付きとか,そういう機会がちりばめられておりますけれども,その中で,運動部活動は一層そのような可能性のあるものであると信じています。
    今年,学校経営目標を定めるに当たって,運動部活動については2つキーワードを入れました。「自己実現」と「地域連携地域貢献」を目指した部活動の充実という言葉であります。自己実現であり,自己満足ではないと。生徒にとっても指導者にとっても自己実現に向けた機会にならなければなりません。また,地域との関わりというのは,学校経営上の使命でありますので,それも果たしていかなければなりません。学校の中で閉じているだけではなく,どんどん地域に出て行って小中学校あるいは特別支援学校との連携や,総合型地域スポーツクラブとの連携,また障害者スポーツとの関わりといったところです。そういったものを一つ一つの部活動が経験することによって,新たな気付きや学びが生まれるのではないかと思っています。
    ただ,この話は,多忙化の話とセットになったときに,なかなか難しい側面もあり,教員が学び,気付くそういう部分ももちろんあるんですけれども,あくまで部員,生徒たちの気付きや学びに貢献できる部分であると。そういったところをうまく引き出していければと思っています。
    最後に,部活動指導員の話です。いろいろな議論がこれから進んでいくと思います。研修の話も盛り込まれていますけれども,私は,もし千葉県で導入する際には,資格とセットで考えていきたいと思っておりました。日本体育協会のスポーツ指導者資格も含めて,今,現場の様々な外部指導者は資格を持たず,危ういような場面も耳に入るときがあります。やっぱり資格という部分とセットでこの問題を考えていければと思います。

  (山本委員)
    バスケットボールは,ミニで15万人,中体連で25万人,高体連で15万人という大きな登録人数を抱えている団体で,サッカー,野球に続く3大スポーツかなと思います。3点お話をさせていただければと思います。
    1点目は,考え方というところで,妻もスクール活動を愛知県でやっておりましたので,中学校部活動の実態を肌で感じておりました。私も大学の教鞭(きょうべん)を23年やっておりましたので,高校の部活現場とのコミュニケーションも一応は知っているつもりでございます。
    特に,中学校においては,強化的にやるような部活動と学校教育的にやるような部活動が混在しています。生徒さんと指導者と保護者。保護者の存在というのが非常に大きい。私の子供も中学で部活に入りました。LINEで保護者がどんどんどんどん「明日の練習はどこでやる」というようなやりとりがされているを見て,自分の時代では全くあり得なかったことで,親がこんなに介在してくるのかと。「やめとけ,関わるなと」と言ったら,「関わらなかったらいろいろ不都合があるのよ」ということで,保護者同士の連携が子供の部活動にものすごく影響しているということ。
    これは,保護者の考え方が「うちの子供を指導してもらって高校の推薦をとって」,「内申書がどうしたこうした」,「部活をしっかりやっていると内申書に響くからしっかりがんばりなさい」,こんな実態があるということを中1のときから言われているのを目の当たりにしております。
    こういったことがありながら,子供は日曜日も7時30分~10時30分まで部活に行ってまいりました。こんな早くから先生に来てもらって体育館開けてもらってやっているというようなことですね。本当にブラックというか大変な思いをされてやっているなというのが実感でございます。
    競技力向上では,水泳競技は,部活動ということではなくて,外部のスイミングクラブで強くなっていくのではないかと思いますが,バスケットボールの場合は,部活動で強くなっていくということでございます。Bリーグというのができまして,一昨日閉幕したんですけれども,プロチームができることによって,プロユースクラブというのも部活動とはまた違う形で存在をしますが,まだまだ部活動の存在というのは大きい,特に女子は,まだプロチームがありませんので,このまま「部活文化」が大切にされるということはバスケットボール界では容易に想像ができます。
    指導では,中学の先生のパターンで3つ考えたのですけれども,やりたいから思いっきりやり過ぎたり,思いが強すぎて体罰とかになってしまう先生,やりたくないのにバスケットボールの顧問をやらされている先生,バスケットボールをやりたくて中学校の先生になったんだけれども,違う顧問にさせられてやりたくない部活動に引っ張られてブラック化していく先生,そんなパターンがあるのかなと思っております。
    2点目に,練習時間の問題です。バスケットボール界は長いと言われております。確かに1日中やっております。米国に限らずヨーロッパは2時間ぐらいが主流であります。これは体育館の問題が一つあります。米国はルールの問題があって,何時間以上やってはダメ。週に20時間でしたか,NCAAのルールで決まっているからそれしかできないんですけれども,ヨーロッパは2時間若しくは1時間半たったら体育館は次のカテゴリーに替わるということで,来て,ぱっとやって,終わったらぱっと出て行くと。「どこか別の場所でトレーニングしないのか」と聞いたら「しない」と。その体育館でコート練習,チーム練習はしないという文化です。
    日本の部活動は,体育館が開いている限りいつまでもやるパターン。これが指導者の知識,スポーツ科学というものの知識の不足というのが,私も指導者養成も関わっておりますけれども,この問題が非常に大きい。
    中学校のバスケットボールで考えると,部活動の指導者と外部指導者も以前から関わっております。そしてクラブ指導者,そして塾的なスクール指導者の4つのパターンが存在していますけれども,この方々に指導者教育を啓蒙(けいもう)しようとしてもなかなか情報が伝わらないですね。「とてもすばらしいカリキュラムを作った」,「こういうふうな哲学でこういうふうにやるべきだ」,「育成世代はこういうふうにコーチングすべきなんだ」,「休養はこれぐらい取るべきなんだ」,という情報を,これからガイドラインで作ると思うんですけれども,これをいかにして浸透させるかは,私が先ほど申し上げた,中学校の先生が私に言ってきた問題をクリアすることが大事だと思います。
    例えば,講習会を開くといったときに,「講習会に参加する暇がない」と言われます。「『学校の業務を半日休んでもいいから講習会を受けてきなさい』というような後押しを上からしていただくと参加しやすい」という話もされました。また,保護者の存在というのは非常に大きいので,保護者にいかに周知させるかというのがバスケットボール界でも課題だと思っています。

  (渡邊委員)
    当クラブは平成15年に設立しましたので,今年15年目に入りました。特に5年前から地域課題解決プログラムに取り組んでおりまして,その一つとして中学生の部活動について取り組んできました。生徒の運動部活動への参加状況にあるように,好きな種目ができるというのが半数を占めております。実は,当地区でも少子化に伴って既存の部活動の種目が減少して,「希望の種目ができない」,また,「せっかく小学校で続けてきた種目を部活がないためにスポーツをしない」という選択にまでなっている状況があります。
    当地区では,女子では卓球かバレーボールの究極の選択になっています。平成24年度に「どうしてもバスケットボールをやりたい」という女の子たちがいましたが,学校は新設はできないということで,学校と保護者とクラブの三者で話合いを行い,合意形成して新しいカタチの部活動として平成25年度より取組を開始しました。
    具体的には,クラブ管理下で,クラブ所有のバスで中学校2校に迎えに行って,クラブが管理する体育施設で,クラブの職員及び外部指導者が指導を行いました。学校とは学校の校内でバスに乗車をさせていただく,それから,「授業が早くなる」,「遅くなる」等の連絡調整をする,校長先生も時々練習を見に来てくださるということで,部活動に準ずる活動として認めていただいて,中体連の大会にも出場しました。さらには,種目を多様化していこうということで,昨年度はサッカーについても取り組みました。
    今年度は,柔道,ソフトテニスについても実施する予定でしたが,実は,子供たちが選択をしませんでした。その理由は,「部活動ではない」からです。また,クラブチームとの関わりもあって,勝利主義,そういったところで実現できず,今は休部状態となっています。
    こうした部活動に準じた活動については,学校長の判断で活動ができていますが,毎年先生が替わったりすると,その都度説明をして学校長の判断で行うという,とても不安定な状況でもあります。
    今,既存の部活動に着目して,教員の多忙化という視点で動いています。新潟県も昨年度,部活動の検討委員会を立ち上げまして,私もそのメンバーになっています。地域によっては希望の種目ができない,既存の部活動自体が減少傾向にあるという状況です。先生が忙しいので代わりの人を何とかするとか,例えば,総合型クラブと連携というと,外部指導者を派遣するといった補完ではなくて,少子化に伴って部活動の在り方を考えていく仕組み作りが必要だと思います。

  (友添座長)
    率直な感想を申しますと,運動部活動にはステークホルダーがたくさんいて,あちらを立てればこちらが立たずの状況になってしまうのではないかとも思っているところでもあります。また,具体的な問題を挙げてみますと,大会のシステムは現状でいいのか。例えば,地区大会や県大会や全国大会というつながり,あるいは平日の試合だとか土日の試合の設定,試合の数そのものは本当に適切か,ここには競技団体,中体連,高体連が関わってきますし,そして保護者ももちろん関わってくるわけでもあります。
    少子高齢化が言われて久しいわけですが,少子化のダイレクトな波で言うと,学校だけで閉じた状況の中では,実は子供の運動やスポーツのニーズにうまく応えることができない時期にきているように思います。この中で,どのように運動部活動を地域や社会に開いていくか。かつて,学校か地域かの二者択一の議論をしたわけですけれども,もうそのような時代ではなくて,学校と地域がうまく融合していけるかということを皆さんの御意見を伺いながら考えていたところでもあります。
    さらに,運動部活動の問題は,大学入試システムそのものとも関わってくるわけでもあります。入試の体系で一芸のスポーツ推薦入試だとか,あるいはAO入試のシステムも含めて考えていかなければ,いたずらに休養日を設けたら今度は隠れ練習が全国で行われていく可能性もあるということだと思います。プロ野球のように解禁日を設けてこの日から練習をスタートするというのも一つの方法かもしれませんが,これも形骸化してしまうと休養日に練習していないか監視に回るおかしな現象になってしまう。そう考えると,今から考えなければいけない課題は,実に複雑で多岐にわたってきます。
    また,運動部活動は,中学校の例で700時間年間行われていると言われていますが,どの教科よりも多いわけです。他の教科で言えば140時間程度が一番多い教科だと言われています。700時間の部活動をある意味放置していていいのかという問題もあるように思います。教育課程外というのは,実はこれは生徒の自治能力や主体性を養うという戦前からの日本の校友会活動の伝統を戦後の文部省が踏襲してきたわけですが,そのような設(しつら)えそのものも少しまた考察をしていかなければいけない。あるいは,中学校の女の子たちは部活に入りたいのに入れない,競技レベルが高くてもう自分はそこには参画できないということを知っているから,二次選択として運動部活動を避けて文化部に入っていくという現実もあります。
    オリンピック種目の中には,部活動にない種目がもういっぱい出てきています。バスケットボールやバレーボール,体操競技のようなオールドスポーツと呼んでいるスポーツ種目だけで部活動はいいのか,あるいは義務教育学校や中等教育学校ができた中で,中体連,高体連の試合の枠組み,あるいは組織の在り方も含めて少し再構築していかなければいけない。多様な問題をステークホルダーの皆さん方が納得できるところで,尚(なお)かつ一番大事な点は,子供と教員双方の合意が得られる条件をガイドラインでしっかり示していかなければいけないということかとも思っています。
    今日は課題が大きいということを再確認しましたが,暗くなる必要は全くなくて,むしろこれを今,ビッグチャンスだと思って積極的にアイディアを出し合いながら前向きに進めていけたらというふうにも思っています。
   
  (河内オブザーバー(泉委員代理))
    日本体育協会では,公認スポーツ指導者,スポーツ少年団,総合型クラブの育成を担っております。この中で,指導者の活用の面でございますが,加盟団体とともに養成しております公認スポーツ指導者の認定登録が現在49万人ほどおります。これらの指導者をいかに部活動指導員に配置していくかについての検討を進めております。
    このガイドライン検討に当たりましては,部活動指導員には,部活動の位置付けと教育的意義の研修を受講した上で,適切な指導能力を有することが証明された有資格者のスポーツ指導者を配置すべきと明記いただければ有り難いと思っております。
    2点目としては,日体協が平成26年に公表した「運動部活動指導者の実態に関する調査」において,約3割の教員の方々は,「資格の取得の意向があった」という実態があります。運動部活動に関わる指導者向けに,「短期間で取得可能な資格」というものも現在検討しております。また,運動部活動の指導に関わる先生方が,より効率的にスポーツの知識・技能を得られるように御支援していきたいと考えております。あわせて,先生方が資格取得のために講習会に参加できる機会,参加しやすいような働く環境というものも是非とも御整備いただければと思います。
    最後に,今後の運動部活動の運営の在り方について,日体協が有しておりますスポーツ少年団,総合型クラブといった,学校の身近にある地域で活動しているスポーツ団体がございますので,連携して運動部活動を支えていけるような仕組みを現在検討しております。

○ 奈良委員の質問に関して,事務局から以下のとおり回答を行った。
    過去にも一度,「なぜ女子が運動部に所属していないのか」について調べたことがあったが,その理由としては,文化部に入っている子が多く,「文化活動に専念したいので負荷をかけたくない」という意見が多かったということが一つ挙げられる。

○ 鈴木スポーツ庁長官挨拶
    委員の皆様,大変お忙しい方ばかりなのですが,委員に就任いただいたこと,また今日御出席いただいたこと,厚くお礼申し上げたいと思います。
    皆様の御意見を拝聴いたしまして,この問題,大変大きな問題で,かつ重要だということを再認識いたしました。スポーツ庁ができて1年半がたちますが,何をやってきたかというと,杉並区公立中学校に外部指導員が派遣されているということで視察に行きました。
    よく話を聞いてみますと,外部指導員が来て技量が上がり,都大会に出場するなど,非常にレベルが上がった。その外部指導者を活用するのにお金がかかっている。これが果たして地方で通用するのかどうか。都市型と地方型で一色単にやっていいものかというのは少し疑問があります。
    高校では,東福岡高校というところに行ってまいりました。強豪校です。話を聞いていると,サッカー部では朝練習はやらない。本当に短時間でやっている。大事なことはレギュラーだけじゃなくて,補欠も含めて2軍,3軍が全員ボールを蹴るということです。大変短い時間ですけれども,集中してやって,更にみんなが蹴るということで,本当に能力のある選手たちが上に上がってくるということでした。
    これから,委員の皆さんが,それぞれで得た知見をお話しいただいて,熱い議論にしていただいて,部活動というものを本当にチャンスにして新しいスポーツをこれから起こしていきたいと思っています。

○ 次回以降の開催日程については,後日調整の上,連絡することとし散会となった。

お問合せ先

スポーツ庁政策課 学校体育室

(スポーツ庁政策課 学校体育室)