運動・スポーツガイドライン(仮称)策定に向けた有識者会議(平成28年度)(第1回) 議事録

1.日時

平成28年9月21日

2.場所

経済産業省別館2階238各省庁共用会議室

3.議題

  1. 座長の選任等
  2. 本会議における検討課題等について(案)
  3. 意見交換
  4. 今後の進め方について(案)
  5. その他

4.議事録

【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  それでは,定刻になりましたので,ただいまから運動・スポーツガイドライン策定に向けた有識者会議の第1回会議を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
なお,会議の進行につきましては,後ほど決めさせていただきます座長にお願いしたいと思いますが,それまでの間,事務局の方で進行させていただきたいと思います。また,本会議の運営規則については,後ほど決定したいと思いますけれども,それまで暫定的な取扱いとして,本会議を公開で開催し,撮影は冒頭のみ許可したいと思いますので,よろしくお願いいたします。
議事に入る前に,委員の方と,スポーツ庁関係者の方の御紹介をさせていただきます。五十音順で紹介させていただきたいと思います。
まず,有識者会議委員の御紹介をさせていただきます。
千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門教授の近藤克則委員です。
【近藤委員】  よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  順天堂大学スポーツ健康科学部教授の内藤久士委員です。
【内藤委員】  よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  立命館大学産業社会学部教授の中西純司委員です。
【中西委員】  よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  東海大学大学院体育学研究科長の萩裕美子委員です。
【萩委員】  よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  鹿屋体育大学特任教授の福永哲夫委員です。
【福永委員】  こんにちは。よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所健康増進研究部長の宮地元彦委員です。
【宮地委員】  宮地でございます。よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  続きまして,本ガイドラインの作成に当たっては,ガイドラインの活用主体でもある民間企業の方からの御意見も取り入れていく必要があると考えておりますので,2名の方に専門委員になっていただいております。
専門委員の御紹介をさせていただきます。
まず,株式会社ティップネス取締役執行役員事業統括副本部長の岡部智洋委員です。
【岡部専門委員】  岡部です。よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  株式会社博報堂テーマビジネス開発局部長の櫻井雅敏委員です。
【櫻井専門委員】  櫻井でございます。よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  また後ほど御紹介させていただきますが,本日の会議の協力者として御出席いただいている参考人の方々を五十音順で御紹介いたします。
まず,筑波大学体育系准教授の大藏倫博委員です。
【大藏参考人】  大藏です。よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡浩一朗委員です。
【岡参考人】  よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  順天堂大学医学部循環器内科学講座先任准教授の島田和典委員です。
【島田参考人】  島田でございます。よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  日本大学スポーツ科学部教授の森丘保典委員です。
【森丘参考人】  森丘です。よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  また,オブザーバーとしまして,厚生労働省の正林督章健康局健康課長にも御出席いただいています。
【正林厚生労働省健康局健康課長】  正林です。よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  その他オブザーバーとしまして,スポーツ団体から,日本スポーツ振興センター,日本体育協会,日本レクリエーション協会,全国スポーツ推進連合,健康・体力づくり事業財団,笹川スポーツ財団の方々にも御出席いただいております。
最後に,スポーツ庁から紹介させていただきます。
スポーツ庁次長の髙橋です。
【髙橋スポーツ庁次長】  髙橋でございます。よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  健康スポーツ課長の井上です。
【井上健康スポーツ課長】  よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  健康スポーツ課課長補佐の川田でございます。
【川田健康スポーツ課課長補佐】  川田です。よろしくお願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  最後に改めまして,私,健康スポーツ課課長補佐の岡崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,会議の開催に当たりまして,髙橋スポーツ庁次長より御挨拶をさせていただきます。
【髙橋スポーツ庁次長】  改めまして,スポーツ庁次長の髙橋でございます。座ったままで失礼いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は,運動・スポーツガイドライン策定に向けた有識者会議,第1回の会議の開催に当たりまして,委員の皆様,専門委員の皆様,参考人の皆様,御出席賜りありがとうございます。
御承知のように,スポーツ庁,昨年の10月1日に発足いたしました。間もなく1年ということで,鈴木大地長官の下,この1年,いろいろな取組を進めてきております。実は,スポーツをめぐる動きというのも,ここ数年,非常に大きな動きがありまして,平成23年にはスポーツ基本法が制定されて,それを受けて平成24年には,初めてのスポーツ基本計画,5か年計画が定められました。ただ,この5か年計画を作るときには想定していなかったというよりも,実現するかどうか分からなかった東京オリ・パラ招致というものに成功しまして,それが引き金になって,スポーツ行政の司令塔たるスポーツ庁を作るという機運が急速に高まったと。本当に,この平成23年以降の大きな流れがある中で,今日に至っております。
私ども,スポーツ庁が設置されたことを契機に,一体,スポーツ庁においては,従来の文科省スポーツ・青少年局とどういう違いを目指していくのかということを,発足準備に当たっても議論いたしましたが,やはり一つは,全体の総合調整を担うということは,各省との連携というのを,これまで以上にしっかりと深めていこうというのが一つ,起点にございました。鈴木長官という,いわば発信力のあるトップに御就任いただいたこともありまして,積極的に各省にも営業をかけ,民間にも関わってもらいまして,今,例えば,スポーツ産業を育成していこうというビジネス面の展開とか,あるいはスポーツによる地域の活性化,そしてスポーツ外交の展開など,かなり幅広く各省との連携策というのを打ち出し始めたところでございますが,その中でも,長官も,やはり長い目で見たときのスポーツ庁の最大のミッションは,スポーツを通じた国民の健康増進だと。やはり,スポーツによる国民の健康増進,そしてそれを豊かな国民生活に生かしていくという,それが大きな施策ではないのかと,そういったような考えで,今,施策に取り組んでおります。
一方で,昨今の取り巻く状況を見ますと,私どもがやはり一つ危機感を持っておりますのは,国民のスポーツ実施率,これがなかなか上向かない,最新の調査では,少し低下傾向も見られてきているということでございまして,特に20代,30代といった若者世代になると,がくんと実施率が落ちるという実態がございます。
また一方で,2020年東京大会に向けて,これからやはりスポーツに対する機運は高まっていくと思います。これからは,するスポーツだけではなくて,観(み)るスポーツ,支えるスポーツといった,スポーツをもっと広く捉えていく,そしてそれを発信に生かしていくということも必要だろうと思いますし,また最近は運動会が見直されてきているとか,あるいは,いわゆる伝統的なアスリートスポーツではない,ゆるスポーツというような,多様なスポーツの関わりが広がってきている,こういった変化も出てきているのだろうと思います。スポーツの意義や価値,位置付けなどを分かりやすく提示し,スポーツへの,様々な形の参画する人口を広げていくことが不可欠ではないかなと思っております。こういったことをこれから議論いただいて,ガイドライン策定に生かしていく,そして,現在,私どもはスポーツ基本計画の第2期計画の策定準備をしておりますが,そういったところにも生かせるものがあれば,是非積極的に生かしていきたいと思っているところでございます。
今回は,そういった背景を踏まえまして,我が国における最先端のスポーツ政策に精通されている研究者の方や,民間企業,厚労省の課長にも入っていただいております。是非,それぞれのお立場で,率直な御意見を頂きまして,実りある運動・スポーツガイドラインの策定につながるように御議論いただきますよう,私から冒頭までお願いをいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  それでは,会議の進行に当たりまして,初めに座長を選任したいと思います。委員の皆様から座長についての御推薦を頂きたいと思いますが,どなたか御推薦いただける方はいらっしゃいますでしょうか。
萩委員。
【萩委員】  座長につきましては,貯筋運動などを提唱され,バイオメカニクス,運動生理学の第一人者であり,今年7月まで鹿屋体育大学の学長を務められました福永先生にお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」との声あり)
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  それでは,福永先生に座長をお願いし,以後の進行は座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【福永座長】  福永でございます。大変重要な委員会の委員長に御指名いただきましてありがとうございます。一生懸命やりたいと思いますが,まず,私が出席できない場合もございますので,あらかじめ座長代理につきましても御指名させていただきたいと思います。内藤委員にお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」との声あり)
【福永座長】  ありがとうございます。それでは,内藤先生,よろしくお願いいたします。
【内藤委員】  よろしくお願いいたします。
【福永座長】  それでは,議事を進めさせていただきます。まず,本日配布しております資料につきまして,事務局から確認・説明お願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  それでは,本日の配布資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料番号とタイトル名をごらんください。まず,資料1としまして,本会議の設置要綱。そして資料2が,本会議の運営規則。資料3が,これから事務局より説明させていただくスポーツ施策に関わる課題の整理。資料4が,中西委員より御発表いただく,「スポーツ価値」の考え方について。そして資料5が,内藤委員より御発表いただく,幼児期・青少年期の運動指針に関する検討資料。そして資料6が,近藤委員より御発表いただく,スポーツによる高齢者の介護予防と政策展開に関する提言。そして資料7が,宮地委員より御発表いただく,我が国の運動・身体活動・運動の現状と課題。そして資料8が,今後の進め方について(案)ということになってございます。
これに加えまして,委員の皆様におかれましては,机上配布用の資料が,冊子として,白い冊子が,このように青と黄色が左上に書いてあるこの2冊と,それから紙ファイルでとじております,こちらの配布資料一式があるかと思いますので,そちらの御確認をお願いします。
もし不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。よろしいでしょうか。
【福永座長】  ありがとうございます。よろしゅうございますか。
それでは,本会議の運営規則,これを決定したいと思いますが,事務局より御説明お願いします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  それでは資料の2,運動・スポーツガイドライン(仮称)策定に向けた有識者会議運営規則(案)をごらんください。時間の関係上,ポイントのみ御説明させていただきたいと思います。
まず,第3条におきます第1項におきまして,専門的な事項については調査・検討等を行わせるために,有識者会議に作業部会を置くことができる旨,規定させていただいているところでございます。
そして,第4条においては,有識者会議には,人事に関する事項など一部を除き,公開して行う旨,規定させていただいております。
そして,第6条,第7条においては,有識者会議において配布した資料,それから会議の議事録は,原則公開しなければならない旨,規定しております。
このほか,第8条では,この規則に定めるもののほか,有識者会議の議事の手続その他有識者会議の運営に関し必要な事項は,座長が有識者会議で諮って定める旨,規定させていただいております。
以上でございます。
【福永座長】  ありがとうございます。今の御説明ありました内容につきまして,御質問等ございましたらお願いします。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは,この案のとおりやらせていただきたいと思います。
次に,議題に入りたいと思います。まず,事務局から,スポーツ施策に関わる課題の整理についての御説明をお願いします。
【井上健康スポーツ課長】  それでは,私の方から,資料3に基づきまして,スポーツ施策に関わる課題の整理ということで説明をしたいと思います。
表紙をお開きいただきまして,こちらの方に,運動・スポーツガイドライン策定に向けた現状と課題というところがございます。今回,スポーツガイドラインの策定の背景といたしまして,一つとしましては,日本再興戦略2016の中にも記述がございます。スポーツ市場の拡大を支えるスポーツ人口の増加というところで,参加しやすい新しいスポーツの開発であるとか,職域における身近な運動を推奨,それから,ライフステージに応じた運動・スポーツプログラム等の充実,こういったものについて検討して,今年度中に方向性について結論を取りまとめるということが,記述されております。
この運動・スポーツガイドラインの策定に向けました現状と課題といたしまして,まず一つ,望ましい身体活動量の基準につきましては,下の方に参考として書いてございますけれども,「健康づくりのための身体活動基準2013」というものが,既に厚生労働省の方で示されているというところでございます。
それから,するスポーツのところは,施策なりも一定程度あるのですけれども,やはりスポーツをするだけではなくて,観(み)る,支える,このあたり,なかなかまだ概念の整理であるとか,施策が不十分だというところもございます。
それから,スポーツの価値,いろいろな価値があると言われておりますけれども,このあたりがなかなか言語化されていない。そして,それをはかるような指標というものも不十分であろうという現状でございます。
それから,昔からのサッカーであるとかバレーボールであるとか,そういった近代スポーツ,スポーツといいますとそういう概念で捉えられがちですけれども,そういったことにとらわれない,新しいスポーツであるとか,レクリエーションであるとか,そういった多様なスポーツへの関わり方,発信が必要ではないかというような課題もございます。
それから,子供の運動嫌いを減らす,こういった観点であるとか,あと,スポーツの楽しさ,魅力を伝えることで,スポーツを開始するきっかけにしていただく,あるいは,継続的にずっとスポーツをやっていただくと,こういったところにどういうふうにつなげるかということが必要であろうと。
それから,スポーツを振興していくステークホルダー,地方公共団体であるとか,スポーツ団体であるとか,学校関係者,こういったところに対する情報発信がまだ不足しているのではないかという現状がございます。
このあたりを踏まえまして,今回策定する運動・スポーツガイドラインのイメージでございますけれども,これは私ども事務局の方でのイメージですので,これにとらわれることなく議論を頂きたいと思いますけれども,大体こんな感じかなというところで,私どもが考えているところがこの図でございます。ライフステージごとにいろいろな阻害要因であるとか,それに対する対応策があろうというようなことで取りまとめております。
まず,するスポーツの方ですけれども,幼児期,あるいは学校のところでございますが,学校体育が嫌いだというようなところ,やはり人によってはあるように思います。それから,空間・時間・仲間,こういったものが減少しているというようなことがございます。対応策としましては,遊びというものを取り入れたようなスポーツ,それから,保育園,幼稚園,学童保育,こういったところを使ってやるようなこと,それから,子供天国の設置であるとか,女子の生徒における運動習慣の確立,こういった対応策が考えられるかなと思っております。
それから,学校を出まして,就職して,結婚,出産をする,20代,30代につきましては,やはり仕事や子育てで忙しくて時間がとれないというようなことが,非常に大きな阻害要因となっていると思われます。このあたりにつきましては,身近に,気楽に楽しめるような新しいスポーツの開発・普及であるとか,働きながらでも運動・スポーツができるような,そういった雰囲気作り,こういったことが対応策としては考えられるのではないかと考えています。
それから,40代,50代の方も,やはり仕事が忙しいという面もございますけれども,対応策としては,20代,30代とはちょっと違った形で,親子で楽しめるというようなスポーツイベントであるとか,仲間づくり,40代,50代になりますと,生きがいづくり,こういったところにも,対応策が考えられるのではないかと考えています。
それから,退職されまして60代以上となりますと,阻害要因としては,年をとったとか,体がもう弱ってしまった,そういった身体的な理由もございます。対策としましては,スポーツをこういったふうにやると健康増進につながるといった方策の提示であるとか,介護予防の運動プログラムとの連携であるとか,そういったところが考えられるのではないかと考えています。
ですから,こういった対応策について,ガイドラインの中で,どのように環境整備していくかというようなことを中心に書くということができるかなと思っています。
それから,観(み)る・支えるの方のスポーツですけれども,これは余り世代ごとにできるかどうかちょっと分かりませんが,例えば子供の体育・スポーツのときの運動部活動であるとか,スポーツ少年団の活動とかを親として観(み)に行く,あるいは審判として支えるとか,そういった部分もあろうかと思いますし,競技スポーツ,トップスポーツのところをみんなで観戦するであるとかいったことはあります。それから,地域スポーツにおきましても,市民マラソン,地域スポーツクラブでボランティアとして支えるというようなこと,こういったこともあろうかと思います。このあたりで,するスポーツと観(み)る・支えるスポーツ,このあたり,線を引く必要はないと思いますけれども,一体としてなり得るものももちろんありますし,いろいろな,「観(み)る」から入って,面白そうだからやってみようであるとか,ボランティアとして支えていて,ああ,やはり自分もやりたいなとか,そういったことで,「する」に行く,あるいは,スポーツをやっている方が,ほかの方のスポーツを支えるであるとか,そういったことはあろうかと思いますので,そういったあたりについて対策としてできるものがあれば,このガイドラインに書き込んでいくということになろうかと思っております。
それ以降の資料は,データとかそういったものが載せてあります。もう時間もございませんので,ざっと御説明をしたいと思います。
まず,現行のスポーツ基本計画の現状でございます。スポーツ基本計画につきましては,次のスライド6ページの方,6ページ,7ページの方ですね。ライフステージごとにこういったことをしていくというようなことの記述があったりします。それから,8ページ,9ページ目の方は,都道府県のスポーツ推進計画の策定状況でございます。全都道府県で策定はされております。それから,市区町村になりますと,こういったスポーツに関する計画を策定している割合というのが減りまして,28.1%ということになってございます。
続きまして,10ページ,11ページ目の方にまいりたいと思います。「する」スポーツの現状と課題ということで,データを若干お示ししました。まず,子供の体力の現状と課題ということで,まずほとんどの年代で,子供に関して緩やかな上昇傾向を示してきております。ただ,12ページ目の方へ行きますと,現状としましては,体力水準が高かった昭和60年頃と比較すると,まだ低いという状況にございます。
それから,13ページの方ですけれども,スポーツをする子供とそうでない子供,この二極化が進んでいるというようなことがございます。そこにございますが,中学校の女子でございますけれども,1週間の総運動時間が60分未満といった子供が2割を占めているというような現状がございます。
次のページ,14ページにめくっていただきますと,今の子供のスポーツや外遊びの環境の変化したところとしまして,遊べる空間,時間,仲間が少なくなった。こういったような調査の結果が出ているところでございます。
続きまして,成人の状況でございます。先ほども次長の方からもございましたけれども,スポーツの実施率,近年若干下がっているという状況にございます。それから,16ページ目の方へ行きますと,20代,30代の方につきましては,なかなか実施率が上がってこない,3割程度というようなことになってございます。それから,運動・スポーツを行った理由ということで,健康・体力づくりのためという方が多いということ。それから,18ページ目の方へ行きまして,なぜスポーツを行わなかったかというところで,仕事,家事・育児が忙しくてなかなかできないという現状がございます。
それから,高齢者の状況にまいりますが,国民医療費が40兆円を超えているという現状,それから,スポーツを通じて医療費が抑制できる可能性があるのではないかということで,研究が進められているということでございます。「する」スポーツに当たっての検討課題ということで,このあたり,先ほども申し上げましたけれども,実施率を向上させるための意義を明確化させる必要があろうかということ。それから,未実施者や無関心な方でも参加しやすいようなスポーツ,こういったものを開発するような方策があるかどうか。それから,スポーツの楽しさ,魅力を伝えるということで,継続的にスポーツを実施していただくということ。それから,20代,30代という,スポーツ実施率が低いところをターゲットとしたような施策があるかどうか。それから,時間帯や性差に着目した対策,例えば,早朝の時間帯に運動をするとかいったもの,それから,女子向けに対策があるかどうか。それから,スポーツの実施と心理的な面,メンタルヘルス的な効果があるのか。それから,子供の頃から運動嫌いをつくらないための方策があるのか。それから,スポーツの実施率,それと地域活性化が関連するのかどうか。こういったところを検討すべきかなと,私どもとして考えております。
続きまして,「観(み)る」スポーツの方でございます。このあたりは,平成9年保健体育審議会の答申の中にも若干記述はされております。データとしまして,24ページ目から,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を直接観戦したいかどうかというようなデータでございます。レベル0は全く運動をしない方,それからレベル4の方は運動好きでやっている方というようなレベルごとに見てみますと,やはり,レベル0,運動を全くしないという方については,観戦希望が低いという状態になってございます。それから,直接スポーツ観戦をしたことがあるかどうかというようなことも聞いてございますけれども,このあたり,やはりレベル0の方は,最も低いということで,やはり関心がないから行かないというような現状でございます。
それから,26ページ目に行きますと,テレビによるスポーツ観戦がどのような状況かということでございますけれども,若年層でテレビの観戦率,スポーツの観戦率が低いというような現状がございます。
観(み)るスポーツに当たって検討課題ということで,若干まとめておりますけれども,スタジアム等で直接スポーツを観戦するということと,テレビとかスマートフォン等で観(み)るということを,同じ「観(み)る」スポーツとして定義できるかというところ,議論があるところだと思います。
それから,そういったトップスポーツだけではなくて,子供の部活動の応援や地域のスポーツ大会の観戦といったものは,この観(み)るスポーツというのに含まれるのかどうかというところ。それから,観(み)るスポーツというのは,するスポーツも実施率を向上させる手段となり得るのか。それとも,観(み)るスポーツだけでの指標設定ということが可能なのかどうか。それから,世代別のアプローチができる部分があるか。スポーツ観戦と健康増進の関係性があるのかどうか。こういったところは検討課題になろうかなと,私どもとして考えているところでございます。
続きまして,支えるスポーツの方でございます。28ページ目以降です。先ほど申し上げました平成9年の保健体育審議会の答申の中にも,ボランティア関係の記述がございます。それから,30ページ目の方へ行きますと,成人のスポーツボランティア実施率ということで,長年その率は横ばいでございまして,全体で8%弱の方が実施をしたことがあるということになってございます。それから東京オリンピック・パラリンピックでボランティアをやりたいかというところですけれども,男性よりも女性の方が,ボランティアをやってみたいという回答が多くございます。それから,やはり,スポーツを実際にやっている方が,ボランティアをやってみたいという回答率が高くなっているということでございます。32ページ目でございます。スポーツボランティアの実施率,これまでに実施した方ですけれども,やはりスポーツをよく実施している方の方が希望した割合が高くなっているというようなことでございます。それから,33ページ目ですけれども,参加を促すための取組ということで,例えば,休みを取得しやすくする,それから手続などの情報を周知する,参加のための手続を容易にする,こういった方策があるというようなところで,回答が多かったということでございます。
続きまして,34ページ目でございます。これは,ボランティアに関する意識ということで,東京オリンピック・パラリンピックの開催で期待される効果として回答が多かったのが,障害者への理解向上,それからスポーツの振興,それから交通インフラの利便性向上,まちづくりの促進。こういったものが回答として多かったということでございます。「支える」スポーツの推進に当たっての検討課題ですが,支えるスポーツというのがスポーツボランティアだけかどうかということ。例えば,職業としてスポーツを実施している方,職業として審判をしている方,スポーツの指導をしている方,それから有償で大会の運営に携わっている方,こういう方までは含まれるのかどうかということでございます。それから,スポーツボランティアの実施率,こういったものを目標値として設定することがいいのかどうか,このあたりが検討課題になろうかと思っております。
それから,36ページ目の方は,共通の検討課題ということで,この観点につきましては,最初の四つは先ほど最初の方に申し上げましたけれども,そのほか,障害者スポーツの参画率ということが検討課題とすべきかどうか。それから,「する」「観(み)る」「支える」,それ以外の視点というもの,例えば,スポーツを「学ぶ」とか「創る」だとか,そういったものがあるかどうか。それから,本ガイドラインの名称。ガイドラインといいますと,何か基準があって,それ以上をやるべきだとか,そういうイメージになりますので,ガイドであるとか,指針であるとか,戦略計画であるとか,このガイドラインという名称にもこだわりはございませんので,内容がある程度見えてきた段階で,名称の方もそれにふさわしいような名称を検討していただければと思っております。
ちょっと長くなりましたけれども,以上でございます。
【福永座長】  ありがとうございます。ただいま,井上課長から,大変詳しい,スポーツ施策に関わる課題の整理を御説明いただきました。要するに,本会議の検討課題としては,四つにまとめられると思います。1点は,スポーツの価値の向上。それから,新しい価値の創出に向けた具体的施策の方向性。これが1点です。それから,2番目として,ライフステージに応じて,スポーツを実施していない,余りやらない人たちに対する方策。もう一つは,それを継続して実施する,ライフステージに応じた,スポーツの継続実施。それをするための方策の検討。それから,4番目としましては,今,最後にありましたように,するスポーツだけではなくて,観(み)るスポーツ,あるいは支えるスポーツの,この位置付けの検討。こういった4点が検討課題として必要になってくると思います。
そこで,本日の会議の進め方といたしましては,まず2点あります。スポーツの価値に関する議論,これを行うに当たっての視点,どういう視点でそれをするか。それから,2番目として,日本体育協会で議論されてきました,今までたくさんこの点に関しては議論されてきたと思うのですが,そのスポーツの価値についてのその内容,こういうものを中西委員から御発表いただきたいと思います。その後で,幼児期の運動指針,あるいは学術会議で子供たちのスポーツの問題を議論されていました。それから,スポーツによる政策展開に関する提言,これにつきましては,内藤委員,それから近藤委員から,それぞれ御発表いただきたいと思います。
全体,12時半には終わりたいと思いますので,それぞれ20分程度で御説明をお願いできればと思います。最後に1時間ぐらいとって,今後の方向性,それから織り込むべき論点などを,委員の皆様で意見交換させていただきたいと思いますが,全体の本会議のこれからの話合いの内容は,以上を考えておりますけれども,いかがでしょうか。よろしゅうございますかね。
それでは,このような流れで進めさせていただきたいと思いますので,最初に,中西委員に御説明お願いしたいと思います。
【中西委員】  それでは,私の方から,「スポーツ価値」の考え方について御説明したいと思います。皆様のお手元の方に,日本体育協会の第1報,第2報が置かれていることと思いますので,そちらの内容と,これまでのスポーツ価値についてどう考えるかということについて整理をさせていただきましたので,御説明したいと思います。
先ほども説明がありましたが,我が国のスポーツ政策はこれまで,答申という形で公表されてきましたが,平成12年のスポーツ振興基本計画が初めて,文部科学大臣の告示という形で出されてきたわけですが,そうした政策の中で示されているスポーツ価値がどうなっているかというのを整理・分類しました。
スライドの下の方を見ていただきますと,スポーツ価値というのは,個人とか集団,あるいは組織の欲求と行為の選択に際して望ましいとされるスポーツの属性のことをいうわけですけれども,簡単に言いますと,スポーツ政策から演えき,つまり導き出されるスポーツ価値というものは,行政が政策展開をする場合に,スポーツにどういう属性を求めればいいのかという望ましさの評価になるわけなのです。このように考えると,行政が望ましいと評価するスポーツ価値は,個人的価値,鑑賞的価値,国際的価値,経済的価値,社会・生活向上価値,教育的価値といった六つに整理・分類することができたわけです。
具体的には,この個人的というのは,スポーツ基本計画やこれまでの計画を読んでいただければ,いろいろな文言が出てくると思います。スポーツに,政策としていろいろな価値が付与されている。例えば,個人的価値で言いますと,やはりスポーツというのは,人間の本源的な欲求が重要です。例えば,活動欲求や,他者には負けたくないという競争欲求などです。また,自分の課題を決めて,それを目標達成したいという達成欲求や,できないことをできるようになりたいという克服欲求などもそうです。さらには,自己表現という,人のまねをするとか,人のプレーを参考にして自分のものにしていきたいという欲求などもそうだと思います。私たちには,こうしたいろいろな欲求があるわけなのですが,そういうものを充足したときに初めて,スポーツの楽しさ,つまり,ああ,スポーツって楽しいのだと感じるものです。通常,これは専門用語で言いますと,内在的価値と私たちは呼んでおりますけれども。それとともにストレス解消ですとか,あるいは生活習慣病の予防,青少年の健全育成とか,こういったものというのは,スポーツをしたことによる結果,いわゆる外在的価値という形で,社会科学的には呼ばせていただいていますが。こういうものと,あともう一つはスポーツを通じた人的交流や地域づくり,地域活性化などです。あるいは,スポーツをみることによって,私たちが勇気づけられたり,夢や感動を得るという鑑賞的価値。スポーツ振興による経済産業の発展といった経済的価値。スポーツによる国際交流などの国際的価値。最後は,スポーツはよい人間をつくるとか,礼儀正しさとかマナーとかといった教育的価値。こういうことを,政策上,スポーツの価値として付与しており,これは行政がスポーツの主体として付与している価値なのです。これによって意味付けられて,スポーツを役に立つものにしていこうということが,スポーツ価値と呼ばれているのです。
それで,こういった形で整理をさせていただいて,これはスポーツ基本計画をはじめ,過去の政策もそうですが,都道府県の地方スポーツ推進計画も,全てキーワードを探し出しまして,それをカテゴライズして六つにまとめたわけなのです。
こちらの報告書の方にも書かせていただいたのですが,本来,スポーツ価値のダイナミクス,つまり,六つのスポーツ価値間の関係性を考えますと,通常,こういうプレー欲求という,スポーツというのは非日常の世界であるわけで,そこで活動していると,現実世界ではないという捉え方をされるわけです。例えば,競争というのは,常に優位に立って,社会的にも認められたい,リーグでの争いをして勝ちたいという競争欲求を,当然,個人・チームは持っているわけなのです。あるいは,自らの目標を達成するという,ハットトリックをしてやろうとか,そのスポーツの中での課題を達成してやろうという,そういう,達成という欲求充足。もう一つは活動,やはりじっとしておけないや,どうしても体を動かしたいという,身体を自由自在に動かしたいという欲求は,人間には必ずあるわけなのです。もう一つは,自然とか人工物ですね。よく登山家が言うように,なぜ山に登るのですかというと,そこに山があるからだという,それがまさに正直な,あれを克服してみたいというものなのです。登り方はいろいろあるわけですが。あるいは,スキーの斜面を,緩やかなところから急傾斜を思い切り勇気を持ってやりたいと。あのときの充実感,要するに,克服した後の克服感というのを,やはりスポーツで味わえるのです。あともう一つは,模倣ですね。例えば,みるスポーツでいいますと,ベッカムヘアにするとか,有名選手の技術をまねして自分も実践してみるとか,こういうことがスポーツではできるわけです。あるいは,ユニークなペイントだとか,ユニフォームを着て応援するということも,これは一種の,自分がその選手になりきった形での模倣になるわけなのですけれども。あと,運です。やはりスポーツというのは,最後まで勝ち負けが分からない。ここが非常に大事で,どちらが勝つか,最後は分からない。神のみぞ知ると書きましたけれども,最後までやってみないと,最初から勝ち負けが分かっていては面白くないという,結果の未確定性というものがあるわけなのです。最後に,体操とかフィギュアスケートにおける回転ですね。くるくる回ることで気持ちがいいとか,心地がいいという感じです。小さいときというのは,特に,くるくる回転するのは気持ちがいいという,そういうことが果たせる。これらは通常,プレー欲求という遊びの欲求であるわけなのですけれども。本来,スポーツの楽しさや喜びというのはここにあるわけなのです。これを忘れてしまっては,スポーツと呼んでいいのかどうかということになるわけなのですが。
しかしながら,明確な線引きができません。例えば,癒やしのためにスポーツをするだとか,ダイエットのためにスポーツをする,そういうところもあるわけなのですけれども,選別ができないのですけれども,人の心理,気持ちなので。しかしながら,こういう健康や体力のためにスポーツをするということは,果たしていいことなのかということも考えなければいけませんが,あくまでも,これを外在的価値と私たちは呼んでいるわけですけれども,これは人間生活上のある種の必要充足なのです。例えば,電車に乗ろうとしたら,遅れないように走ることができない人間もいるわけですね。ところが,走れれば間に合うという,これはある種の,私たちが生活の上で必要な体力ですとか,必要充足のための身体運動であり,だから,直接,スポーツと絡むところではないはずなのです。
要するに,言いたいことは何かといいますと,こういう外在的価値というのは,この二つを合わせて個人的価値と呼んでいるわけですけれども。政策上は,これはあくまでも結果であるわけです。例えば,私たちが小さい頃に木登りをしているのは,木登りそれ自体が楽しいからで,夢中になって,誰が一番上まで登れるかというふうに,お互いに競争し合います。いつの間にか,そういうことをやっていると,体力がついていたということが,心理的な考え方で,その活動自体が楽しいから,結果的に,健康になったり,友達ができたり,いろいろな癒やしになったり,リラックスしたりと,こういうものは結果にしかすぎないと思います。
ただ,これを否定しているわけではありません。当然,こういう外在的価値を求めてスポーツをするという人も当然いるわけで,決して否定しているわけではありません。ただ,こういうダイナミクスな動きが,人間には心理的にはあるということを強調しておきたいのです。大事なのは,たとえ健康や体力づくりのために始めたとしても,これが最終的にはプレー欲求に変容していくといいますか,健康のためにノルディックウォークを始めたのだけれども,実際やり出したら,すごく,もうちょっときれいな歩き方ができないか,自分なりにもうちょっといいペースで歩けないかといったように,達成欲求の充足につながっていくことが重要ではないでしょうか。そういう目標を決めてやっていくと,当然,プレー欲求にふれていくことになるわけなのです。だから,否定しているわけではなくて,大事なのは,そういうきっかけで始めたとしても,本当にスポーツ化されるためには,この内在的価値の楽しさに触れさせることなのです。そういうガイドラインを策定していかないと,長続きをしないのではないでしょうか。健康になれば,やめてしまう。あるいは,ダイエットに成功すれば,それで終わりというような,そういう中止が起こらないように,こういう心理的なメカニズムが,価値の中には働いているということを御理解いただきたいということが,このスライドの図の意味です。
こういうふうに,個人的価値が豊かに充足されていく,内在的価値なり外在的価値ですね。それによって初めて,先ほど言った教育的価値とか,この国際的価値。こういった,派生的価値と私は呼んでいるのですけれども,社会全体にこういう社会的価値が高まるということです。なので,一体,何を政策としてやらなければいけないかというのは,やはりこの外部のことよりも,先にやはり国民がどれだけスポーツ価値を認識し,あるいはきっかけで健康や体力づくりで始めたとしても,やはり中核的スポーツ価値に変容する,そういった国民になっていただきたい。そうすることで,国自体,社会全体がよい人間を育てたり,産業振興になったり,国際交流ができたりという,そういう考え方を,スポーツ価値はしているというところを御理解いただきたいなと思っています。
今,日本体育協会のプロジェクト研究でやっていますのは,このスポーツ価値意識の多面性ということでございます。このスポーツ価値意識というのは,個人・集団・組織など,各主体がスポーツとどのような関わり方を選択するか。この選択の仕方によって,スポーツ価値に対する各主体の意識,要するにスポーツ価値というものは,早い話が,各主体が決めるものであるということです。先ほど言った六つの価値というのは,あくまでも政策,いわゆる行政がスポーツに価値を与えて,こういう価値があるからスポーツをしましょうというところがあるわけなのです。ところが,個人によっては,その価値の付与の仕方は違うことが予想されます。そのあたりに問題意識を持ちまして,この日本体育協会のプロジェクト研究は,複数のメンバーで取り組んでいるところです。
少し御紹介しますと,例えば,スポーツ実践者。例えば,スポーツをするという関わり方をする人は,スポーツに対してどういう価値付与をしているのか。あるいは,スポーツをみる,これはメディアを通して,あるいは直接的なスポーツ観戦をする人たち,そういう関わり方をする人は,スポーツというものにどういう価値意識を持っているのか。あるいは,スポーツボランティアと書いてしまいましたけれども,支えるスポーツということではないというような形も捉えられるのかもしれませんが,お許しいただきながら,支えるスポーツを楽しんでいる人たちは,どういう価値意識を持っているのかという,こういったところを,今,プロジェクト研究で取り組んでおります。
実際に,このプロジェクト研究でメンバーの方々と共有しているのは,スポーツというのは無色透明で無価値なものである。本来,無価値なものなのに価値を与えているのは,この主体なのだということを前提に研究を進めています。なので,例えばスポーツ実践者,スポーツをしている,するという関わり方をしている人,あるいはスポーツをみるという関わり方をしている人,スポーツを支えるという関わり方をしている人,こういうそれぞれの人は,当然スポーツに対する価値付与が違うのだという考え方で研究を進めまして,簡単に言えば,これは第2報を読んでいただくと分かると思うのですけれども,要約でいくと,スポーツをするという関わり方をしている方々は,やはり本質的価値と手段的価値,要するに健康・体力づくりのためにやるとか,生活を調和していって基盤を作るためにやるとか,あるいは人間関係を作りたいとか,こういう社会的価値も考えながらスポーツをしているという価値付与の仕方をしているのです。逆に,スポーツをみるという方々は,例えば,自分はスポーツが余りうまくないので,代理達成を楽しんでいる。あたかも,応援している選手が自分であるかのように,そういう認識をしながら,同一感を味わっているとか,あるいはパフォーマンス,すばらしいパフォーマンスをみて,学習したり,感動しているなどです。あと,社会的価値としては,たまたまその場に居合わせたメンバーと,集団的なアイデンティティーが結成されるとか,あるいは地元チームを応援することで,地元チームとの意識を高めたりというような,スポーツをみる人は,こういう形でスポーツに対する価値を与えている。最後,スポーツを支えるというのは,どちらかというと,ボランタリズムという,支えることで,いろいろなスポーツを学習したり,自己発展や自己成長につながったり,社会的義務とか地域のために奉仕したりとか,こういったことをスポーツ価値として付与しているという,そういう研究を,今,この第1報,第2報でやっているところで,まさに本有識者会議の最後に共通課題として挙がっておりました,スポーツ価値の言語化と,評価意識をどうするかということを,現在,このプロジェクト研究では模索しているところになります。
しかしながら,こういうスポーツと関わりを持つことができない方々,これはいろいろな条件があるというところで,阻害する要因としまして,これは通常,抵抗条件だとか抑制要因という専門用語を使うのですが,まず,個人的・主体的条件とかです。特に問題は,興味・関心です。これがない人たちというのは,スポーツ価値,要するにスポーツというものに価値を与えようとしていない。興味・関心がないということは,スポーツ価値を認識できていない。この辺りをどう,スポーツ価値を価値づけ,認識していただくかというのは非常に大変だと思うのですが,それ以外の問題というのは,ある程度,何らかの政策を打てば解決できる部分もあります。あと,自然的・社会的条件です。居住地が遠いだとか,通勤に時間がかかるとか,受験で忙しくてできないとかです。あるいは,環境的条件です。自分の地域には施設がないとか,設備がない。あるいは,いろいろなクラブ,運動仲間がいないとか,行政がやっている公共施設の立地がよくない,自分の家から遠くて,立地が余り便利なところにない,スポーツのスケジュールが自分と合わないとかです。この辺りは,経営的な条件なので,幾らでも解決が可能な要因になってくると思います。
こういったところを調査していくということが必要ですし,スポーツ価値を付与していくためには。こういうスポーツの未実施者,できない方々の条件を探り,どうしたらその方々がスポーツをすることができるようになるのかといったところを探っていくところが大事だろうと思います。
最後になりますが,スポーツとは何かということで,スポーツ概念を,やはり決め切れていないと思います。この前,日本体育学会に出られた先生方は,菊先生がお話されたことは聞かれていると思うのですが,私は非常に納得をしました。要するに,ポケモンGOという現象は,スポーツの本質,原点であるかもしれないということをおっしゃっていました。開発した方は,家の外に出て健康的に遊べるものを目指している。子供が遊んでも,親がこれならうれしいと思えるようにしたいと。人が外に出て歩くようになると,世の中がよくなるのではないか。仮想現実から拡張現実という,いわゆる非日常的な世界,いわゆるスポーツの世界と同じ状況が想定されるわけなのです。この共通性というのは,皆さん,異常だと思うのですが,夢中になって事故に遭う方もおられたり,海に落ちたりとかする方もおられる。これは夢中になっているから,まさに,スポーツというのはそれが大事なのです。これは,社会的に批判もあると思うのですが,何でこんなところでやっているのか,マナーがなっていないなどです。でもこれは,スポーツの本質をついており,要するに,夢中になって自発的に活動しているのです。それ自体が楽しいという,それがプレー欲求の充足であるわけなのです。こういう奇妙な行為,なりふり構わず夢中になる過剰なエネルギーがあるわけで,だからスポーツ実践もそうであるわけです。これがやがて常識に変わっていくわけですが,その常識に変わるためには,一定のルールを作らないといけないのです。当然,寺社仏閣では,やはりふさわしくない行為なので,そういうところにはポケモンがいないように外すとか。そういう,あるいは,ここでしかやってはいけないとか。まさに,近代スポーツが発展してきた過程というのは,ルールを精巧化してきたから,あるわけなのです。
例えば,鳥取砂丘スナホ・ゲーム解放区宣言というものがあります。鳥取砂丘は,もう,ここでどうぞポケモンやってくださいと。この空間で。人が集まり地域活性化にもなりますという,そういうふうにルールを,この敷地内ならいいですよという,安全で事故にも遭いませんというような,そういうルール化を図って,地域おこしを考えているという,奇妙な行為が常識に変わるというのは,まさにルール化されていくときであるわけです。
最終的に,これは何を示唆しているかというと,やはりスポーツというのは,先ほども申し上げましたが,プレー欲求の充足が重要で,もともと人間が持っている欲求充足を,やはり,しないといけないのだと思います。
日本体育協会とオリンピック委員会が出したこの定義というのは,非常にスポーツの本質をついているシンプルな概念になるわけなのです。要するに,スポーツは自ら求めていくこと。自発的な運動の楽しみ。プレー欲求の充足こそが運動の楽しみなのだと。これは,人類が人生をより豊かに生きていくために,その時代,その時代に持てる叡智(えいち)を結集して創造してきた文化であるのだというふうに強調している。人間がスポーツと関わることは,文化的な営みなのだということを端的に示している。こういうことが満たされたときに初めて,先ほど申し上げました外在的,手段的な価値ということへの期待が高まるのです。なので,このままスポーツが余りにも競技スポーツ化や過度の健康化へといってしまうと,スポーツは一体何だったのかという,消えていくということが危惧される可能性があるというふうに考えています。なので,こういうスポーツとは何か,あるいはスポーツ価値をどのように付与していっていけば,果たして子供たちがスポーツの楽しみに触れるのかということを,考えていく必要があろうかと思っています。
ちょっと2,3分ほどオーバーしましたけれども,私の方からの提案は以上でございます。ありがとうございました。
【福永座長】  ありがとうございました。先ほど申し上げましたように,まず先生方にそれぞれ,できれば20分以内ぐらいでお話しいただきまして,最後にディスカッションしたいと思いますので。
続きまして,内藤委員,お願いします。
【内藤委員】  私の方からは,特に,幼児期のみならず青少年期でこれまで運動指針と言われるようなものに相当するものが,どういうふうな今,現状になっているのか,どういうふうな提案がこれまでされてきたのかというところから,今後の在り方を探ってみたい。特に,幼児期運動指針というものについては,文部科学省のときに出していますので,どういう経緯で出たのかというあたりをちょっとお話しできればと思います。
まず,最初のスライドは,これは約20年前に,体力つくりのための運動指針といって,旧文部省の時代に,こういうような試案的なものが出ております。日の目を見ていないのですが,実は,今,国民の体力の現状のベースとなる体力テスト,新体力テストとも呼んでいますけれども,この大きな改定があるときに,中心的に作業されていた青木先生等々中心に,こういうような試案が出されたと聞いております。これは,その解説書の一部にしか出てこないのですが,ここでは大切なポイントは,幼児期から高齢期にかけて,ライフステージごとにどういう体力の要素をどのように高めるかということで,ここでは大きく2本,呼吸循環器系,全身持久力と,それから筋力という,この二つの柱を立てて,それをどのくらいやったらいいのかということが書かれております。ただ,明確なエビデンスに基づいたものではなくて,かなりえいやっというような感じで作ったというふうには聞いて,提案したというふうには聞いております。
そのベースになるのは,当時としては,実験室的な研究による,どれぐらいの運動をすればどういう体力要素が高まるかという,そういう根拠的なものから作っておりますので,もう一度戻りますと,例えば,どれぐらいの運動の強さをといったときには,最低のライン,一番弱いところでは,一番強いところでは,それから1日も,一番短いところでは,あるいは一番長くて,こういうふうな形の部分が入っておりますが,これはやはり運動の量を考えたときには,運動は強さと,どれぐらい時間をやって,1週間何回ぐらい,できればそれを何か月続けたら効果があるかという,飽くまで実験室的な研究から得られた,それまでの知見を基に,これぐらいだろうというふうに引いているわけです。
もう一つ確認しておきますが,幼児期も出ているのですけれども,例えば,幼児期でも心拍数を基準に,どれぐらいやったら効果があるかということが出ているのですけれども,幼児がいちいち心拍数を測って運動するわけではないので,そういう面では,飽くまで,ちょっと机上の論的なところもあるのかなというふうに思います。
なお,中・高齢者については,運動の強さを考える上では,やはり,余り強いと弊害というか危険性,危ないということと,やはり余り弱くては効果がないので,その両方ですね。危険性は低くて,最大限の効果を得るところが範囲になるという,こういう考えで,この20年前での運動の指針,体力づくりの指針については,一応提案がされたというふうに聞いております。
その後,日本学術会議からは,子供たちを元気にするための提言ということで,このときは,もうお亡くなりになっていますけれども,加賀谷先生が中心だったと思いますけれども,提言をして,早く運動の指針を作りなさいということを述べているわけです。特に子供に対する運動指針が早期の課題であるという提言がされていたわけです。ただ,これをどこが受けてどうするかというところについては明確ではございませんが,こういう提言がされ,そういうものの流れを受けたところで,文部科学省としては,本当は小学生以上のところで指針ができるかと思ったら,いきなり幼児から来たのですね。実は,体力テストは小学校1年生以上ですので,この幼児期の運動指針というは,確かに流れ的には,大人が運動しない,子供の時代にしていないからだ,では一番下に行ったらどこだ,幼児だと。この原点から取り組むのがいいのではないかということで,分かるのですが,大きな問題が,このときの作業をした上で,大きな問題が2点ございまして。幼児に関するエビデンスというのが全然ないと。一部,文部省での実践事業等々で,取組によるエビデンスはあったのですけれども,どれぐらいやったら本当に体力が上がるのか子供たちが元気になるのか。あるいは,将来この実践が,大人の健康につながるのか。文献的に探してもなかなかない中での指針づくりと。それから,もう一つのポイントは,先ほどの1997年の指針のように,幼児に,これぐらいやったら大切ですよと,幼児に言っても幼児はするわけなくて,誰に向けてこの指針を発信するのか。大人であれば,大人が分かるような書き方で,ある程度いいのですが,幼児の指針を出しても,これをするのは幼児なのですが,結局,大人,特に幼稚園,保育園の指導者あるいは保護者に向けたものだということだと。必ずしも,きちきちの学術的な表現はいかがなものかという,そういう中で,最終的には,エビデンスベースではちょっと弱いのですが,様々な遊びを中心に,1日,毎日60分以上,楽しく体を動かすと。こういう文言に落ち着いたわけです。ポイントは,その背景には,この時間の中で,もともと子供というのは飽きやすいので,これだけ時間を,体を動かしていれば,様々な運動を,動きづくりをするためのことはしているだろうと。さらに,楽しいという経験が大切で,指導者にとっても60分というのは分かりやすいだろうと。それから,子供といっても,幼児といっても,年少から年中・年長,3歳,4歳,5歳とかなり大きな違いがありますから,その子たちに対して,基本的には遊びを中心とした運動への親しみ,こういう習慣づくりを取り組んでほしいという,そういうメッセージであると。保育者に対するメッセージだろうというのが,大きな流れです。
ただ,唯一エビデンス的なものとしては,文部科学省の調査として,1日60分未満の,ここは外遊びなのですけれども,済みません。外で遊んでいる割合が約半数ぐらいあったということで,この手のガイドライン的な指針を作るときには,半分達成して半分達成していないという現状でいるあたりをラインに引いたらいいのではないかということで,この1日60分というようなところが,一応定められたわけです。この時間があれば,遊びの中で,子供たちが基本的には体を動かすということで,効果が期待できるのではないかということであったわけです。
その後,学術会議から,平成23年の会議では,福永先生を中心に,もう少し子供を元気にするために何をすべきかという,もうちょっと細かな提言がなされました。これは基本的には,世界でいうとWHO,宮地先生たちがこれを日本語化,訳しておりますけれども,WHOでの全年齢にわたる運動のガイドラインというのが出ておりますので,これに一部沿っている形にはなりますが,WHOでは,青少年というか,子供たちは5歳から17歳のくくりで,これぐらいやったらいいとか,18歳から64歳,あるいはそれ以上,三つのライフステージには分けておりますが,こういうようなものを踏まえながら,先ほどの学術会議の提言では,様々なエビデンスに基づいた提言がなされております。その中心はここにありますように,ここが大体,WHOのガイドラインと相当するところなのですけれども,毎日60分以上の運動,体を動かすこと,身体活動と,ちょっとここでは身体活動と運動と,今,余り明確に定義せずにお話ししますけれども,体を動かすことが重要で,その中でも,少し強めの運動が必要で,筋肉・骨に対する刺激となるようなものも入れるべきだというようなことが,一応,ここは学術会議ですので,エビデンスに基づいた上での提言がなされているということで,ここでは様々な観点から,一応,日本の学術会議から,日本の子供たちに対するということで出ているわけです。
そのほか,学術会議では,他の分科会においても,子供の育成環境の改善に向けてというようなことで,子供の環境という意味では,もっと広い意味での様々な提言がなされていて,きょう,机上の配布資料の中に,それも一部含まれているかと思います。
さて,先ほど1日60分,あるいはWHOを含めて60分ということですが,幼児期の運動指針を作る上で,この60分が本当にどうなのだろうかと。世界の動向はどうだろうかということも,一つのエビデンスとして参考にしたわけです。世界のガイドラインとは,やはり見ると,多少の表現の違いがありますが,やはり60分というところに落ち着いているようです。日本のみならず,アメリカから欧米諸国。ただ,その中に,運動の強さに関する,例えば,活発なとか激しい運動というようなことを盛り込んでいるのか,あるいはただ60分と言っているのか,その辺には若干違いがありますが,おおよそ毎日60分が目安ということで,余り細かなガイドラインには定義をしていない。例えば,心拍数が幾つになるとかいうようなことは,余り言っていないというのが,現在の流れ,子供たちの身体活動等のガイドラインに対する世界的な流れのように思います。
その根拠になるのは,お手元の資料の,多分,資料の最後に挟んでありますが,これは日本体育協会の方で出しているアクティブ・チャイルド60分という本の中で,ある部分を引用させていただきましたが,各国の子供たちに対するガイドラインの根拠となる資料になっております。是非後でお目通しいただければと思います。
それで,私の方からは,特に子供たち,発育・発達期にある子供たちの,今後,運動指針を考えていく上で重要だなということを,最後,2枚のスライドで述べさせていただきたいのですが,先ほどのように,例えば幼児に心拍数200拍になるものを1日何分やれというのは全く現実的ではなく,それから,やはり誰に向けてこのガイドラインを出すのかということは重要なポイントになるのかと思います。それで,ここに示したのは,これは日本体育協会が中心になって,イギリスのスポーツ政策を見聞したときに,イギリスのスポーツ政策の中での説明にあった部分なのですが,学校の中での体育・スポーツが時間的な保証がされていないのが基本的には欧米のスタイルでございます。日本は週約3時間の体育の時間が保証されていますが,諸外国ではそういうことが保証されていない。それでも子供の運動が1日60分というのはとても大切だと。1週間にすると5時間から7時間ということになりますね。それを,国を挙げてそのガイドラインを達成していくためには,どういう,実際,取組が必要なのか。1日60分やっていれば本当に体力が上がる,健康になるといっても,どうするかという裏付けがなければ,これは単に一方的な,単なる学術データにすぎなくなる。学術的な意味になってしまう。
それで,イギリスでは,この5時間というものを,子供たちの1週間の運動時間という形でやろうというふうに決めたわけです。学校体育の中にやる学校もあれば,そういうのがない学校もありますので,まず最低限,学校の中で2時間を,カリキュラムの中で確保しようと。それから,1時間は学校外でのカリキュラムとして確保しようと。そしてまた,学校,それから地域,特にスポーツクラブという取組で2時間を確保しようと。そういうことで,子供たちが週5時間,1日1時間相当を確保していくという,こういうような具体的な,どういうふうにしたらいいかというかという裏付けをもって,1日1時間の確保をすることの方策を考えていくという,こういうやり方ですね。ですから,一方的に1日1時間がいいで言いっ放しにならない,その裏付けとなっている部分が必ず必要だろうと。全ての子供たちが週5時間の体育・スポーツを実施するためには,もちろん運動が好きな子供もいれば苦手な子供もいますので,好きな子供たち,あるいは嫌いな子供を含めて,週2時間は学校の体育の中で保証する。では,好きな子たちは更にどうするかというと,より質の高いコーチング等を受けるところで,あるいは苦手な子供たちは,活動的なライフスタイルを推進するとか,この対象者の特性に合わせて,どのように週最低5時間,1日1時間相当を確保していくかという裏付けをもって取り組んでいくということが重要ではないかと。ですから,我々の,今後,議論の中にも,ある程度の線が見えたときには,それをどうやって実現するのかと,必ず根拠を含めた上で,指針を定めていくという必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。
【福永座長】  はい。ありがとうございました。ちょうど15分ぐらいでまとめていただきました。ありがとうございました。
続きまして,近藤委員にお願いいたします。資料は6でございます。
【近藤委員】  それでは,スポーツによる高齢者の介護予防,これは外在的価値になるのでしょうか。それを政策展開する上で,こんなことが使えないでしょうかということで,お話しさせていただきます。データが幾つか入っていますが,それはそこに書いてありますJAGES project,ジェイ・エイジズあるいはジェージズプロジェクトと呼んでいますが,日本老年学的評価研究プロジェクトからのものです。その中に運動疫学に関心を持っている研究者のグループがあって,きょうも2人来てもらっていますけれども,そこが精力的に発表してくれたものから幾つか御紹介したいと思います。
このJAGES projectは,下の日本地図のスライドにありますように,2010年と2013年に10万人規模で日本全国の30ぐらいの市町村に御協力いただいて行ったプロジェクトです。基は2003年に愛知県の市町村で始めたので,この後御紹介するデータの中には,2003年がベースラインで,そこから4年とか7年とか追跡したようなデータも入っております。
例えば運動している個人としていない個人の比較をするのであれば,数千サンプルあればいいと思います。しかし,私たちの関心は,地域によって違うのではないのかという点でした。そこで,他地域を比べたいと,いろいろな地域に御協力いただくことに努めてきました。例えば,この散布図ですけれども,縦軸が過去1年間に転んだことがありますかとお尋ねして,転んだことがありますと答えた方の割合で,一つの点は1小学校区を表しています。小学校区単位で集計したものです。そうしますと,ある程度ばらつきがあると想定したのでこれをやったのですけれども,私の予想を超えるほど,地域間にばらつきがありました。例えば,この一番下にある小学校区は,そこに暮らす高齢者の7,8%しか転んでいないのですね。ところがこの多い小学校区になりますと,31%の高齢者が転んでいる。これは,地域の高齢化の違いのせいではありません。前期高齢者に限定してもこれぐらいの差がある。実に,最も転ばない地域に比べると4倍転びやすい町があるということを発見し,4倍も違うのかと,ちょっと驚いたわけです。何でこんなに違うのか。いろいろ探ったところ,一つ,比較的安定して出てくるのが,このスポーツの会に週1回以上参加していると答えた高齢者の割合です。それが4割に迫るような小学校区では,転んでいる人が少なくて,そういうところに行っている人が1割を切るようなところで転んでいる人が多い。やはり,地域でそういうのに親しみやすい環境があって,参加できる地域づくりをすると,転ぶ人を減らせるのではないか,そんな可能性が見えてきたのです。
要介護認定率まで変わるのだろうかというので見たのが,これです。ある町の小学校区単位で集計したものですけれども,この三ツ池という小学校区は,3割以上の人が週1回以上スポーツを楽しんでいまして,そういうエリアで1年間に新しく認定を受ける方が3%を切る。それに対して,スポーツを定期的にやっている人が1割程度しかいないようなエリアは,1年間に5%ぐらいの高齢者が新規要介護認定を受けていると,こんなにきれいな関係が出てまいりました。これを全国規模に当てはめるとどれぐらいになるかというと,日本中で週に1回以上スポーツの会に参加する人を,もし1割増やすことができれば,全国で認定を受ける人を,年間24万人減らせそうだという,これぐらいのインパクトがありそうだということが見えてきました。
これほど効果があるのであればというので,いろいろ関連を探って出てきたのが,これ,自殺率でも差があるという関係が出てきて驚きました。これをやってみようと思ったのは,スポーツ,あるいは趣味の会に参加している高齢者が多い地域では,鬱得点が低い。鬱と判定される方が少ないという関係が出てまいりまして,そんなに出るのであればひょっとしたらと思って,自殺率でも検討しました。スポーツの会に参加していると答えた高齢者の割合を横軸に取っていて,右ほど参加している高齢者が多い市区町村になります。そういうところでは自殺率が低いという関係が大変きれいに出てまいりまして,外在的かもしれませんが,とても大きな価値があるのだなというふうに思ったものです。
調べてみますと,都市部ほどスポーツを楽しんでいる方が多い傾向が一般にはあります。そこで黒く潰したのが政令指定都市,白抜きが政令指定都市以外です。そうすると,政令指定都市の方が右に寄っているのが分かるのですけれども,自殺率との関係は都市規模によらず見られます。やはりスポーツ組織への参加は,地域のメンタルヘルスの改善にも役立つのではないかなというふうに思っています。
このような地域間でかなり健康状態に差があるぞというのを,健康格差と呼ぼうというので,10年ぐらい前に本を書きましたら,今週の月曜日にNHKスペシャルが取り上げてくれました。ごらんになった方がいるかもしれませんが,実にいろいろな社会的な要因が,健康の背景にあって,その一つの要素が,このコミュニティーがどういうコミュニティーなのか,それが地域間の健康水準の差をもたらしている一つの要因であるというようなことが見えてきています。
次に,では,どんな地域の組織や会がいいのだろうかという関心に広げました。地域にいろいろな会があって,そこに参加していることがいいようだとわかったので,どの地域にもありそうなスポーツの会,趣味の会,町内会などなど,ここに挙げた8種類の会について,どれぐらい参加していますかというのをお尋ねしました。そこに参加していると答えた方を,4年間追跡させていただいて,要介護認定を受けたリスクがどれぐらい違うかというのを比べたものです。そうしますと,参加していない人に比べて,最も効果が大きかったのがスポーツ系の会やクラブでした。これは縦断研究です。先ほどの散布図の地域の相関分析だけでは,ちょっと因果まで言えないと思うのですけれども,こういう縦断追跡でもきれいに出ますので,やはりスポーツをやっているということがいいのだということが,確認できたと考えております。
では,そのスポーツをやるということと,スポーツの会に入っていることに差があるのだろうかという問題意識で分析したのが,これです。左が運動を週1回以上やっている人たち,右が週1回未満の,たまにやる人たちです。そうしますと,左の方が棒の背が低い。要介護認定を受ける確率が低いことを意味していますので,やはり運動は頻繁にやった方が良いことがわかります。これは従来から言われている,いわば運動生理学的な効果です。
それに対して,この薄い緑と濃い緑の棒は,スポーツの会に参加していますと答えた方と,スポーツの会には参加していません,しかし運動は週1回以上やっていますよと答えた方,それを比べたものです。そうしますと,この運動頻度が同じところにおいて,スポーツのグループに参加している人たちで認定を受ける確率が低いというような関係が出てまいりました。これは,運動生理学的な効果では説明がつかないので,恐らく,心理・社会的な効果ではないかなと考えております。
例えば,データを持ってきませんでしたが,よく笑っている人ほど健康水準がよさそうだというのが,見えてきています。皆さん,ちょっと思い浮かべてほしいのですけれども,1人でいるときと,誰かといるとき,どちらがよく笑うでしょうか。1人でいるときによく笑うという人がいたら,心配な感じがしますね。やはり,みんなでやっている中で,そういう心理的な効果というか,やりとりが生まれて,そんなのが効果をもたらしているのではないかなというふうに考えています。
次に,地域のスポーツの会,趣味の会,ボランティアの会,そういうのに参加者が多い,この青い棒の地域と,そういうところに参加している人が少ない赤い棒の地域で,歯が3年間でどれぐらい減ったのかというアウトカムにしたグラフです。比べてみると,御本人が参加しているかどうかというのはもちろん聞くのですが,その関連を差し引いても,何と,社会参加が盛んな地域に暮らしているだけで,その人の歯が守られていることを意味する結果が出てきて,大変驚きました。その人は参加したいと思っていなくても,周りの人たちがいろいろ参加していると,誘われて連れ出されたり,本人は閉じこもっていたいのだけれども,おせっかいおばさんが訪ねてきたりして,そんなのが回り回ってその地域に暮らす全ての人の健康水準にまで影響するのではないかと考えています。
こういうことがいろいろ見えてきたものですから,これを政策のマネジメントに使えないのかと,厚生労働省の地域包括ケア「見える化」システムのプロトタイプになったものを開発してきました。今も開発中ですが,これがスポーツ振興計画のマネジメントにも使えるのではないかと御紹介したいと思います。
私たちが考えたのは,市町村ごとに課題を設定して,方針を決定して,いろいろなプログラムを提供して,その効果検証をする。これを市町村にやってくださいと言うのですけれども,市町村はなかなかできない。それを比較的簡便にできる支援システムを作れないかと開発してきました。介護予防政策サポートサイトで,今からごらんいただくデータの一部を公開しております。
これは,約40の市町村に同じ調査票を使っていただいて,同じ方法で高齢者に調査をして集計したものの一例です。年齢,高齢化の影響を除くために,前期高齢者に限定して,運動機能が低下している,これは厚生省が作った基準ですが,それに該当した方の割合を,多い方から少ない方に並べて,5等分して5色に塗り分けたものです。そうすると,先ほど,小学校区単位だと4倍の差があがりましたが,市町村単位で見ても,18%が転んでいる町から8%しか転ばない「転ばない町」というのがやはりあるのです。こういうデータが出てくると,「なぜ?」という疑問が,生まれるわけです。こうやって5色に塗り分けると,あなたの町は赤いから転びやすい町ですよ,あなたの町は緑だから転ばない町ですよというのが,すぐフィードバック可能になります。
これが1つの指標の例ですけれども,36指標作って,市町村の担当者と共同研究していたら,36枚見ているのが面倒くさいから一覧表を作ってほしいと言われて作ったのがこれです。36指標が一覧表で見えて,スクロールすると年齢階層別にごらんいただけます。右側の棒グラフに,最もいい自治体は緑で,最も悪い自治体が赤で表されています。棒の中の赤い線が平均値で,黒い点がその町の位置付けです。その町の黒い四角が緑の中にあれば,その指標はその町では,ほかの町よりもいいよということが分かります。それに対して,黒い点が赤いところにあったら,あなたの町,これはちょっとほかの町に比べて水準が低いですよと一目で分かります。こんな仕組みを作って,市町村に使っていただけないかということを,今やっております。
これを市町村の中の更に小学校区単位で塗り分けて見てみますと,これは横軸がスポーツの会に週1回参加している高齢者の割合を,小学校区ごとに取りまして,縦軸が過去1年間に転んだ高齢者の割合です。そうしますと,やはりこの右肩下がりが,一つの保険者の中で見ても,再現性をもって見られて,スポーツの会に参加する高齢者が増えると,転ばない町が作れるのではないかというようなことが見えてきています。
では,どういう地域なのかというのを,いろいろ,こういう形でデータを蓄積していくと,探索ができまして,一つ見えてきているのが,運動しやすい環境です。なぜなのかと,もっとも転ぶ人が少なかった市の市役所に行って聞いたのですけれども,よく理由が分からないと言われました。調査票の中から拾ってみたのが,運動や散歩に適した公園や歩道,これがたくさんあるとか,ある程度あるとか答えた方が,この市などで比較的多い。調べてみると,ウォーキングサークルが比較的多いなどということが,まだそれが原因だと分かっていませんが,ひょっとしたらという手掛かり程度には見えてきています。
いろいろデータを分析してみると,公園のそばに暮らしている人では,公園がそばにないと答えた高齢者に比べ,運動の頻度が2割多いというようなことが見えてきました。やはり環境整備もとても大事で,つい近くに良い所があるから散歩してしまうというような環境も,大事なのではないかなと考えています。
今までは観察研究でした。みんなに動けと言っても動くとは限らないよと批判されました。そこで,ある町で,地域介入研究にここ7,8年取り組んでおります。そこでは,徒歩圏内,環境が大事だというのが分かったので,歩いていけるところにサロンと呼ばれる拠点を作って,住民に運営ボランティアをお願いして,いろいろやってもらいました。体操の先生も,地域の住民にボランティアでやっていただいたりしました。やってみると,そういう拠点に来ている人と来ていない人で行動が変わることが分かりました。時間の関係でスポーツの会だけ示しますけれども,女性で多く見られたのですが,サロンに来たことがきっかけで,誘われて,スポーツの会に新たに行くようになった人の割合が5倍多いというようなことが分かってきました。やはり政策を打って促せば,ある程度の人たちは動くということが分かりました。
こういう効果検証を今後どうするかというので,今,いろいろ研究しています。その一つ,こんなのがあるかなというのが,この矢印が右下に向かっているグラフです。これは横軸が30分以上あるいている人の割合で,縦軸が転んだ人の割合です。この矢印の左端が2010年の数字で,右端が2013年の数字です。そうしますと,2010年から2013年にかけて,高齢者は歩くようになったようで,ほとんどの自治体で右に動いていました。それに伴って,転ぶ人の割合が下がっていました。この大きく右に動いた,歩く人が増えたところほど,転ぶ人が減っているかどうかというのを検証したのが,この下のグラフでして,期待したとおり,歩いている高齢者が増えた自治体ほど転ぶ人が減ったというようなことが確認できました。このようにいろいろな政策を打ったら,その効果を追跡しながら検証していくということが可能になるのではないかなというふうに期待しております。
このような経験から,データを市町村から,例えばスポーツ振興計画を立てる前に,恐らくいろいろな調査をやりますから,その調査票を標準化して,スポーツ庁から,これを使ってくださいと言って提示する。そして全国の市町村が同じ調査票を使って,同じ方法で調べれば,それをスポーツ庁ないしは研究班に提供してくださいとお願いする。そうすれば,ほかとこのような比較,ベンチマークをしてお返しします。そういうことをやれば,これと同じようなことができて,いろいろな市町で取り組んだスポーツ振興策によって,参加者が増えているかとか,それに伴って転ぶ人が減っているかとか,メンタルヘルスもよくなっているかとか,そういうことをプログラム評価ができるようになるのではないかと思います。これがスポーツ振興計画の策定及び振興及びその進捗管理に使えないだろうかという御提案です。
あとは,まちづくりについては,国土交通省が健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドラインを作るときに,参考人として呼ばれて,こんなお話をしたら,やはり見える化をして,課題を分析して,いろいろな取組をしたら,評価しましょうとなりました。マネジメントサイクルを回すことは重要ですので,是非御検討いただけないかなと思います。
まとめです。今まで実証データで,グループに参加することが介護予防効果がありそうだと,いろいろな形で検証してきました。どういうグループにどういう形でという点は,別添資料で付けてありますので,ごらんください。これを政策に乗せるために,マネジメントシステムも作っております。これを上手に使うことで,地域ごと課題の見える化,どこを重点対象として支援すべきかが見えてきます。指標間の関連で,どういう施策を打つと何がよくなりそうかという手掛かりが得られます。定点観測することでモニタリングし,効果評価する。より効果の大きい市町村の取組を,すくい上げて,ほかの市町村がそれをまねする,そんないろいろな可能性が広がるのではないかと考えております。
以上です。
【福永座長】  ありがとうございました。以上3名の委員の方々から,それぞれ大変貴重なデータを頂きましてありがとうございました。
もうひと方,資料7をごらんください。これは,宮地委員から,きょう配布していただいておりますので,これも,お願いします。
【宮地委員】  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の宮地でございます。資料7に基づきまして,説明をさせていただきたいと思います。
まず,スポーツをどう定義するのかということに関しての身体活動・運動の分類・定義ということで,1枚目の下のページを見ていただきたいのですけれども,エネルギー消費の増加を伴う全ての活動,要するに動くこと全てを身体活動というふうに呼んでいます。その中で,日常生活を営む上で必要な労働や家事に伴う活動を生活活動と呼んでいます。それ以外に,余暇時間に行われる活動というものがあります。例えば,散歩をする,ガーデニングをする,盆踊りを踊るとか,子供たちが意味なく遊ぶといった行為ですね。更にその中に運動というものがあります。英語でエクササイズと言いますけれども,目的を持って計画的に行われる活動を指します。更にその中に,恐らく体育やスポーツが含まれるだろうと。今までの学問的な整理からすると,このように身体活動や運動・スポーツとは分類されていくだろうと思われます。
次のページを見ていただきますと,きょうのこのスポーツガイドラインの議論の方向性なのですけれども,先ほどの健康セクターを中心にまとめられた,この身体活動,運動の分類が,少しやはり変わっていく可能性があるだろうということで,特にスポーツの領域を広げていくこと,スポーツのフロンティアを広げていくことというのが,一つこのガイドラインを作るチームのミッションなのかなという気がしております。
先ほども若干,紹介が事務局の方からありましたけれども,我が国の運動・スポーツの実施状況を,体力・スポーツに関する世論調査のデータに基づきまして,過去20年近くにわたってモニタリングしておりますけれども,その結果を見てみますと,順調に増えてきておりました週1回の運動実施者ですけれども,65%の目標に到達する方向に進んでおりましたが,残念ながら直近の3年で,何と5%近く,週1回も週3回の人も減っているというデータです。
次のページを見ていただきますと,厚生労働省も同じように週2回,30分週2回,1年以上継続しているという,ちょうどこの1回と3回の間に相当するものですけれども,測っておりますが,こちらも男女とも順調に増えている傾向がありましたけれども,ここ3年間,残念ながら減少に転じているということで,スポーツ庁の調査と厚生労働省の調査の結果は,残念なことに一致をしているという危機的な状況にあります。また,先ほどの図で言うと,この身体活動,全体の指標と考えられている歩数ですけれども,この歩数も残念ながら減少し続けているという結果になっております。
次のページを見ていただきますと,私たち,スポーツの環境の話が先ほどから出ておりますけれども,指導者であったりとか,スポーツ,サービスを提供する人たちの数というのはどうなっているのかということで,日本体育協会の指導者の数,あるいは日本体育協会のスポーツドクターや,医師会が養成する健康スポーツ医の数を見てみますと,こちらは順調に進んでいるということで,行政であったりとか,あるいはステークホルダーの活動というのは,順調には進んでいる。また,その下に,健康・体力づくり事業財団等が養成するような健康運動指導士であったりとか,健康運動実践指導者も,増加する傾向にあるということになります。
内藤先生から御紹介がありました子供の身体活動の状況に関して,国際比較ができるような身体活動通知表というのを作りましょうということで,今,しておりますけれども,Aのものもあれば,Dのものもありということで,取組の状況が分かるわけですけれども,残念ながら,私たちの子供の身体活動全体の状況であったりとか,遊びの状況というのが客観的に測られていない。構造化されたスポーツであったりとか,部活動であったりとか,あるいは体育の授業の状況,体力の状況は分かっているのですけれども,アンストラクチャードなものが十分把握できていないという現状があるということが指摘されています。
環境についてですけれども,我が国における幼少期,教育の成育環境は十分かということで,先ほど学術会議の提言の話が出ておりましたけれども,そこで議論された内容を少し御紹介しますと,体育の教科書が小学校教科書目録に登載されていない。簡単に言えば,小学校の体育の教科書がないということです。それから,もう一つは,図画工作や音楽で置かれている専科教諭も置かれていないということ。ほかの教科と比較して,保健体育の授業の質が十分に保障されているとは言いにくい現状が学校体育にあるということが言えると思います。また,空間,公園・緑地等の1人当たりの面積というのを見てみますと,ロンドン,ニューヨークが26.9平方メートルや18.6平方メートル/人であるのに対して,東京はその4分の1の,あるいは5分の1の4.5平方メートル/人。全国平均であっても11.3平方メートル/人ということで,子供たちが元気に遊べる環境もないという状況にあります。
では,構造化された施設や運動・スポーツ施設の数はどうかということですけれども,昭和60年に全国で29万2,117施設あったスポーツ関連施設が,平成20年には22万2,533と,4分の3に減少しているという,ちょっとこれもシビアな現状であります。こういうことを考えると,我が国における子供の教育・成育環境,またスポーツを楽しむ環境というのは,若干,ぜい弱になりつつあるのかなということが言えると思います。
WHO,先ほど内藤先生から紹介ありましたけれども,健康のための身体活動の国際推奨というのを出しております。厚生労働省は,2013年に身体活動指針アクティブガイドを出しまして,プラス10から始めようと。今よりも10分増やそうということで,1日60分の身体活動を国民が達成できるように働きかけているところであります。
近藤委員が紹介していただいた環境の問題にもふれておりますし,人とのつながりということで,運動・スポーツに関わっている人には,できるだけ多くの人とつながっていきましょうというメッセージも出しているところであります。この身体活動基準ですが,かなりしっかりしたファクトとエビデンスに基づいて作られていて,国際的に見ても,どこに出しても恥ずかしくないという,そういうものであると思いますが,残念ながら,子供のものは,基準としては作られておりません。
そして,こういったWHOであったり厚生労働省,あるいは文部科学省の幼児期運動指針と言ったように,ファクト,エビデンスに基づいたガイドラインの規範というのはあるのですけれども,残念ながら我が国のガイドラインは,若干,幾つかの課題を抱えていると考えています。一つはインクルーシブと言えない。包括的な,みんなのものになっていない。例えば,障害のある人であったりとか,問題を抱える人,近藤委員から指摘があった,格差の底辺にあるような人たちを包括できていない。また,エビデンスやファクトに乏しくて,普及,さらに,もっと重要なのは,普及や啓発が不十分だという点です。そして,やはりここ,このガイドラインでは,みんなの身体活動,運動の在り方を,やはりみんなで考えて実践すべきときなのだろうというふうに考えられます。
その,一つ参考になるのが,昨年,ユネスコで発表されました,「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」であります。1978年に「体育・スポーツに関する国際憲章」,旧憲章ができまして,そこから30年の時を経まして,新しい憲章が作られたということであります。
次のページを見ていただきますと,本当は全文御紹介したいところですけれども,今,日本学術会議で完訳を済ませて,いろいろなセクターで回覧をしていただいているところでありますけれども,簡単に一言で言ってしまいますと,先ほどふれました包括的な,インクルーシブなものであるということと,スポーツというのは,今までよりももっと多様で,ダイバーシティーに富んだものであるという考え方であったりとか,あるいは,スポーツだけではない様々なセクターやステークホルダーと,それは,国民一人一人も,民間も,それから専門家もそうですけれども,多くのセクターが関わらなければならないのであるというように,非常に広く設定されています。また,価値という点でも,開発や平和などの新たな価値というのが生まれつつあるだろうということであったりとか,もう1面として,スポーツというのはすばらしいものである一方,危機をはらんでいる。様々なリスクを持っていると。争いであったりとか,あるいはドーピングであったりとかといったような。そういう部分では,高潔性であったりとか,倫理的価値についてもしっかりふれていく必要というのが,スポーツガイドラインを作るときには,あるだろうということが,こういう国際憲章を見ると,言えると思います。
私の指摘としては,運動・スポーツ・身体活動の意味や定義をやはり明確にしていきたいということと,我が国の身体活動や運動の現状をしっかりモニタリングしていくという仕組みが欲しいということと,ユネスコの新しい「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」は参考に値するものであるということ。課題としては,残念ながら,運動習慣,身体活動を,我が国で阻害し,あるいは促進している要因は何かという研究が,やはり不十分だということで,そういった研究をしっかり推進していかなければならないということと,するスポーツに加えて,きょうも御指摘があったところの観(み)るスポーツの現状,あるいは意義というものが,十分にやはり把握できていないということで,そういったものをモニタリングしていく必要性があるということ。また,ユネスコの国際憲章の精神が,我が国で実際どの程度,実現されているのかというものを評価してみると,非常に我が国,ぜい弱であります。ですから,オリンピックであれだけ金メダルが取れるのですけれども,パラリンピックでは金メダルが取れないといったようなところに結果が表れているだろうと思いますけれども,それだけではなくて,男女参画の問題も,実は我が国ははらんでいます。
こういったような評価を踏まえて,このガイドラインの策定というのをしていけるといいのではないかと考えております。以上です。
【福永座長】  大変貴重な話,ありがとうございました。
以上,最初に申し上げました3点ですね。スポーツの価値,意義も含めた価値,それからライフステージに応じたスポーツの在り方,それから観(み)るスポーツ,支えるスポーツ,これは,いずれの先生方からの資料にも,そういうのが含まれていると思います。
現在,11時45分でございます。12時半まで時間がございますので,できるだけたくさん,各委員の先生方,それから参考人の皆さん,更にオブザーバーで参加されている人たち,できるだけ,第1回でございますので,皆さん方の意見を是非たくさんお聞きしたいと思いますので。これから自由討論に入りたいと思います。是非,意見を,どこからでも結構でございますので,言っていただければ有り難いと思います。いかがでしょうか。
どうぞ。
【正林厚生労働省健康局健康課長】  厚生労働省の健康局健康課長の正林でございます。オブザーバーではありますけれども,ちょっと12時には出ないといけないので,先に発言させていただきます。

結論を先に申し上げますと,いずれこの検討会でガイドライン,あるいは指針というものをお作りいただけるのだと思うのですが,既存の基準がございまして,そことのすみ分けを上手に考えていただきながら,その辺,留意していただきながらお作りいただけたらなというふうに考えています。
どういうものかというと,今日,何回か出てきていますが,「健康づくりのための身体活動基準2013」というものでして,机上配布資料の冊子の7番にそれが入っています。これは,厚労省の検討会でお作りいただいて,そのメンバーに福永先生,宮地先生もお入りいただいていたので,安心はしておりますけれども,作ったものが,これと似ているようなものですと,現場に新しいものが届いたときに,何で二つあるのだろうと混乱されるかと思いますので,できるだけこの内容と,可能であれば異なるものを,この身体活動基準がカバーしていないものをお作りいただけたらなというふうに考えています。
どういう身体活動基準かというと,概要が,そこの最初のページにありますが,年齢を65歳以上,18歳から64歳,18歳未満と分けて,運動のみならず身体活動,掃除だとか洗濯だとか,そういったものも含めて,どのぐらいの活動をしたらいいかという目安を数字でお示しをしています。先ほど宮地先生おっしゃいましたが,かなり膨大な科学的知見に基づいてこの数字を決めているというふうに聞いています。
中身は後でごらんいただけたらと思いますけれども,主な利用者として期待しているのは,研究者や教育者,それから運動の指導に携わっている専門家はもちろんのこと,自治体だとか,あるいは企業の関係者にも活用していただくというようなことが期待されています。そんなことが何枚かおめくりいただくと,主な利用者というところが2ページに出てきますけれども,そんなことが書いてあります。
それから,これ,長い文章ですので,普及するに当たっては,このままでは普及できませんので,これも先ほど宮地先生から御紹介いただきましたが,資料7の一番後のページに,アクティブガイドという形にして,簡単な1枚紙のリーフレットですけれども,メッセージもプラス10,プラス10と。もう10分運動しましょうというようなメッセージを強く押し出しながら,普及啓発も行っているところです。
こんなものが既存のものであり,なおかつ宮地先生から,この前お会いしたときに,これぼちぼち改定しませんかという御提案も頂いていますので,また新たな知見に基づいて,機会があれば,これ,直近では平成25年ですので,もう2,3年たったところで場合によっては改定ということも考えていますので,これの内容を延長線上で改訂すると思いますので,それとのすみ分けを十分考えていただきながら,指針,ガイドラインをお作りいただけたらなと思っています。
以上です。
【福永座長】  大変大事な点だと思います。いかがですか。
【宮地委員】  私も全くその考えに賛成だと思います。何分,やはり納税者の立場に立てば,似たようなものが違う省庁から二つも三つも出ているというのは,非常に好ましいことではありませんし,きょう議論にあったように,スポーツの価値というのは,健康とはまた違った内在的なものも含んでおりますので,そういった方向性で新しいものを作っていければというふうに考えております。
【福永座長】  今の点に関しまして,御意見どうぞ。
【近藤委員】  先ほど,もう1枚スライドがあるのを読み飛ばしてしまったのですが,そこに,1点目に,誰のための,何のためのガイドラインなのかという点について,こうすると違いが鮮明になりませんかと書いておきました。スポーツ庁は,スポーツ基本法をお持ちですので,スポーツ基本法でうたわれているものを進めるためのガイドラインだと前面に出して,地方自治体のスポーツ振興計画の策定だとか,着実な推進のためのガイドラインだと打ち出していただくのはどうか。国民が見ても,もちろんいいと思うのですけれども,主な利用者として自治体のスポーツ振興政策を担当している人とか,スポーツ組織団体,あるいは企業など,そういう人たちに見てもらって,国じゅうで進めるための,スポーツ基本法にのっとるものだと強調する。すると,厚生労働省のガイドラインとは性格が違いますという話が分かりやすくならないかなと思います。
【福永座長】  どうですか。井上課長。
【井上健康スポーツ課長】  私どもも二つ同じものを国が作るというのはよくないことだと思っていますので,私どもとしましては,今,近藤先生がおっしゃったように,地方自治体,あるいはスポーツ団体,各関係者,そういったようなスポーツを広く勧めるようなところが環境を整備していくためにこういったことをやればうまくいきますというようなことでまとめていただければ有り難いなと思っております。
【福永座長】  ほかはいかがでしょう。たくさん議論するところだと思いますけれども。基本的なところで。このスポーツの定義ですよね。これ,宮地委員から出されているきょうの資料で,身体活動・運動の分類と定義(私案)とあります。スポーツはその下の右の方にありますけれども,この厚労省の方は,スポーツという言葉は使われていませんね。
【宮地委員】  使っていません。
【福永座長】  この定義は,皆さん,いかがでしょうか。宮地先生の私案で,このように,これ,分かりやすいと思うのですけれども。これはいかがですか。
【宮地委員】  個人的には少し古い考え方だとは思って,自認して,あえて出しております。今までの議論に基づいて,例えば,先ほど書いていたポケモンGOであったりとか,そういうようなものの考え方を含まない,ゆるスポーツとかという考えを含まない,スポーツの定義であります。
【福永座長】  スポーツ基本法の,そこの分厚い資料の1枚目にありますけれども,ここに,スポーツは,という定義をしています。いろいろな身体活動であるという。ただこのとき,ある目的を持っているというのがそこにあるわけですね。これは1992年のヨーロッパスポーツ憲章といって,そこでもスポーツを定義していまして,それは恐らくこのスポーツ基本法のスポーツの定義のそれと,ほぼ同じだと思うのです。いろいろな,健康のためとか,教養のためとか,あるいは競技力のためとか,いろいろな目的を持った全ての身体運動をスポーツというふうに定義していますけれども。
ちょっとそのスポーツの価値とか意義というのに関わってきますので,ちょっと皆さん,御意見いただければ有り難いですけれども。いかがでしょう。ございませんか。
【中西委員】  よろしいですか。
【福永座長】  はい。
【中西委員】  先ほど説明させていただいた資料の一番後に,スポーツ概念というのは,スポーツをどう定義するかでお話しさせていただいたのですけれども,スポーツ基本法とかスポーツ基本計画の定義は,あくまでも政策的な定義であって,先ほど申し上げたスポーツ価値というのは,各主体がその属性を決めていくのです。スポーツ政策の定義というものは,見ていただいたら分かるように,国際的価値もそうですが,行政がスポーツを振興する場合に,どういう価値を付与して,スポーツは役に立つのですよということをうたった定義になっているわけなのです。それに対して,資料の最後に日本体育協会とオリンピック委員会が定義しているスポーツというのは,これは自発的な運動の楽しみという,楽しさをプレー論,宮地委員が言われている闘争だとか競争ですね,いわゆる達成だとか,そういうものを充足するときに,楽しいと感じるというふうに考えているわけなのです。要するに,ルール化された空間の中で,こういう感覚を味わうのです。私たち人間がルールを決めていくわけですから,面倒くさいルールを作っていくわけです。その面倒くささを達成した感覚が楽しいという,そういう定義で,そういう概念が尊重されるとき初めて文化であり,個人的にも社会的にもそういう価値があるのだというような定義になっています。これはどちらかというとヨーロッパとか,あるいはノルウェーとかのスポーツ政策の定義は,こういうふうにシンプルな定義にしていて,スポーツ価値というのは,あくまでも主体が付与していくものであるという捉え方をしているので,我が国のスポーツの定義というのは,外在的価値を強調して,こうすればスポーツは役に立つのだということを強調した定義になってきたというのが,歴史的な,多分背景だというふうに,私は認識しています。
【福永座長】  ほかはいかがでしょうか。どうぞ。
【森丘参考人】  日本大学の森丘と申します。先ほどの宮地委員の私案というところの全体像でいうと,今の中西委員との話にも関連するのですが,余暇身体活動という中に含まれている遊びというところと,スポーツ活動の中にある遊戯というようなあたりをどういうふうに整理していくのかというところが,非常に重要なポイントになるかなということをちょっと感じたところです。
【福永座長】  ほかはいかがでしょうか。どうぞ。
【萩委員】  スポーツの実施率などを調査するときに,やはりスポーツの持つイメージや概念というのが,どう伝わっているのかというところが非常に大きな問題で,やはり一般の方々は,何かルールがあったり,いわゆるバスケットやバレーボールというあたりのみがスポーツという認識であれば,多分40%以上の実施率にはならないだろうというふうに思うのですね。ですから,その辺を政策的にどう捉えていくかにもなってくるのかと思います。何を振興していったらいいのかなと。スポーツ基本計画の中では,恐らく,ゆるスポーツや,もうちょっと広い広義のスポーツを捉えていくことに意味を持っているのかなと,ちょっと感じているところですので,そのあたりを踏まえながら定義していかないと,やはり相変わらずスポーツ実施率は低いままになる可能性はあると思います。
それと,やはり運動しない,余りスポーツが好きではないと思っている,特に女の子たちというのは,例えばダンスはどうなのとか,そういう問題も出てくるかなと思いますので,その辺も含めて議論の中に入れていっていただければと思います。
以上です。
【福永座長】  大事な点だと思うのですけれども。何かございますか。スポーツ庁と厚生労働省と,スポーツの定義は同じでしょうね。その辺が違っていたらまずいですよね。いかがでしょうか。ほかの委員の方々。
例えば,武道という言葉もあります。ダンスもあります。私,体育大学なんかにいますと,武道館と体育館,何が違うのだと。スポーツは武道なのか,武道はスポーツなのかという話も出てくるわけです。だから,そんなにかっちりと定義する必要はないと思うのですが,今言われたようにアンケートなんかを取るときには,どちらの言葉を使うかによって,かなり答える方の人のイメージは変わってくると思うのですけれども。やはり,できるだけ統一した概念は作っておかなければいけないと思うのですが,どうですか。
【宮地委員】  もちろん,そうですね。
【福永座長】  それと,先ほどいろいろやっていた,厚労省の出されている,このかっちりしたガイドラインと同じようなものであれば意味がないわけですよね。その辺をどうすみ分けていくかというのが,この委員会の大きな方向性だと思うのですけれども。いかがですか。
【近藤委員】  御参考までに,私の資料の一番後ろに,高齢者に何をやっていますかと尋ねて答えていただいたものがあります。一番裏表紙に当たるところですが,こちらが選択肢を示しておいて,どれをやっていますかというふうに丸を打っていただくタイプのものです。そうしますと,高齢者でいきますと,女性が圧倒的に体操で,男でいうとウォーキング,散歩が多い。スポーツに付いて尋ねて自由記述で書いてもらったときに,体操,散歩を書く人は,多分余りいないだろうなと,今のお話を伺って感じました。
【福永座長】  済みません。ちょっと何か雑音が入ってしまったので,もう1回ちょっと説明を。
【近藤委員】  これは,高齢者10万人に聞きましたという調査で,選択肢として,ここに書いたようなものを並べておいて,あなたがやっているものはどれですかと聞いたものです。そうすると,女性で体操が一番多くて,男性でいうとウォーキング・散歩が一番多い。もし,「あなたがやっているスポーツは何ですか」と尋ねて自由記述を求めたら,この二つは落ちてしまったのではないかなと思います。
【福永座長】  これは全部スポーツになるわけですよね。
【近藤委員】  こちらが例を出して,丸を打ってもらう形だと,ああ,これだったらやっているよという形で考えられるということですね。
【福永座長】  ほか,いかがでしょうか。御意見いただければ有り難いです。別に今の定義にこだわらなくて結構です。ライフステージに応じたスポーツという観点も大事なところでございますが,いかがでしょう。
【岡参考人】  早稲田大学の岡です。特にライフステージに応じているという話ではないのですけれども,先ほど近藤委員がおっしゃったみたいに,何のためにこれを作るのかということを,最初にピンどめしておかないと,多分,すごく,誰が使うのかということになると思うので,そこの議論をまずやってから,決めてからだと。多分,全てを含むことは不可能に近いと思いますので,誰に使っていただくのかという,その出口戦略のところをしっかり押さえた上で作ると。それで,目的自体は,先ほど近藤委員がおっしゃったみたいに,スポーツ振興計画,スポーツ基本法にのっとって,そこをしっかりと押さえてやっていくというので,私はいいのではないかなというふうに考えております。
【福永座長】  今の点,いかがでしょうか。どういう対象者に対して,何のためにこのガイドラインを作るのか。
【岡参考人】  ちなみに,宮地先生が中心になってお作りになった身体活動基準・指針というのは,実際にどういうプロセスで。それは,誰に使ってというのは,最初に決めて行ったのかどうかということを。
【宮地委員】  身体活動基準は,やはり保健活動,あるいは身体活動指導者といった専門家向けに,身体活動基準というのを作りました。それは,もう最初にそのように定義をして,作っていこうということにして。さらに,それを国民に普及啓発するツールとして,身体活動指針を作りましょうということで,基準はターゲットは専門家,そして指針はターゲットは国民という,そういう出口を想定して策定をしたものであります。
【福永座長】  このスポーツ庁がする,このガイドラインの,今の話ですけれども。目的,その他。
【井上健康スポーツ課長】  今回の運動・スポーツガイドラインというのは,スポーツを振興していくようなステークホルダー向け,例えばスポーツの計画を立てるような地方自治体であるとか,スポーツを自らどうやって広めていこうかというようなスポーツ団体であるとか,そういったところ向けに,スポーツを振興していくための環境整備,こういったところをどうやっていくべきか,というようなところに重点を置きたいなと思っているところです。スポーツについても,一般的に,スポーツと言いますと,昔からのスポーツみたいなところのイメージがございますので,そのあたりは,運動・スポーツというような形で,もうちょっと広げた形で,振興していくような方策。それによって,健康増進にも寄与するでしょうし,ほか,人格形成であるとか,様々なところに寄与できるような方策を提示できればなと思っているところでございます。
【福永座長】  いかがでしょう。御意見,ほか,ございますか。どうぞ。
【大藏参考人】  筑波大学体育系の大藏です。最初に井上課長の方から御説明いただいた資料の2ページが,スポーツ参画人口の拡大に寄与するというふうに,そういったガイドラインの策定が必要ではないかというふうに書かれておりまして,私の中では,このスポーツ参画人口をやはり増やすというのは,我々,体育,私は体育の人間ですので,是非そういった動きにつなげたいなというふうには考えますし,そのためには定義を変えれば,参画人口は大きく変わってきますので,そもそも,やはりそのスポーツとか運動の定義というのをどこまで広げるか。体育の立場から言えば,できるだけ広く定義しておいた方がいいのではないかなというふうに思います。
高齢者,私は高齢者相手に研究していますので,おじいちゃん,きょう運動しましたかと言うと,いや,わしはもう田植してきたからいいんだというふうにおっしゃるのですね。では,田植エクササイズでもやりますかという話になってきて,そうしたら田植も運動・スポーツかということにもなりますけれども。それは極端な話として,どこまで定義を広げていくかというのは,すごく重要なことだというふうに思っております。
【福永座長】  ここで,運動・スポーツというふうに,あえて使っていますよね。それは,運動とスポーツは違うということですか。
【井上健康スポーツ課長】  これは,違うというのか,今の国民のイメージとしては,スポーツというと,本当に野球とかラグビーとか,そういった感覚がございますので,一応,運動・スポーツというふうに位置付けています。ただ,将来,スポーツというのは,エクササイズ,そういったところもスポーツだというふうなイメージに,国民の意識とか変わってくると,それはもうスポーツガイドラインでいいのかなと思うのですけれども,今のところは,まだスポーツというのは非常に狭く捉えられているようなところがありますので,これは運動・スポーツということで,運動というところもカバーできるようなガイドラインにできたらなと思っているところです。
スポーツ基本法でも,スポーツとは,というところで記述を見ますと,運動的なところももちろん含まれると考えていますので,スポーツってもっと広い意味だと思いますけれども,分かりやすいように運動というのも付けたというような感じです。
【福永座長】  いかがでしょうか。どうぞ。
【島田参考人】  順天堂大学の循環器内科,ふだんは実臨床に携わっておりますが,実際にそれ以外に社会活動として,日本サッカー協会の医学委員を通じまして,実際には日本代表チームの医学サポートから,本当に裾野は生徒,学童,先ほども幼稚園のお話が出てまいりましたが,グラスルーツまで,いろいろな医学的なサポートをしている活動をさせていただいています。
その中で感じますのは,本当に循環器の診療の重症系ですね。すぐにでも移殖をしなくてはいけない患者さんもいらっしゃれば,一方で,日本代表チームの,もう我々とは比べものにならないような身体活動レベルを持った方もいらっしゃいます。そういったことを踏まえて,運動,場合によってはスポーツという言葉も,ある程度オーバーラップしてきますけれども,そこで考えてまいりますと,やはりこのスポーツ基本法の文章というのは,私もまじまじと読んだことは,正直言って余りなかったのですが,やはり心身の健全な発達,健康及び体力の保持増進ですから,今回のガイドライン,あと,宮地先生が,あとは福永先生がまとめられました指針も,やはり国民の健康の維持増進と,あとはハイリスク,疾病予防に関して,どれだけ運動やスポーツが関わっていけるかというメッセージは非常に大事かと思います。もちろん,JISSがされているような代表チームの育成も大事ですし,パラリンピックも大事ですけれども。
先ほど,大藏先生もお話しされました,恐らく今回のガイドラインは,より多くの国民の皆様により分かりやすく知っていただけるようなというメッセージが出せるということは,非常に大事かと思います。そういう面では,実際に今回,スポーツ庁がまとめられました最初のプレゼンのスライドですけれども,私も本当にすばらしいなと思ったのですが。きょうの議論でも,大分,どちらかというと,するスポーツに話題が時間的に,どちらかというと多いように感じます。したがって,それを観(み)に行く,観(み)るスポーツ,それを支えるスポーツ,実は裾野はそちらの方が国民全体からすると断然多いのではないかなと思いますので,そういったスポーツを観戦するような社会的なインフラ,場合によっては,いろいろな各地域に根付いたプロチーム,スポーツチームがありますので,そういったところとのコラボレーション。場合によっては,そういうスポーツフィットネスも含めましたところも含めたそういった取組を踏まえて,観(み)るスポーツから支えるスポーツから興味を持っていくことによって,では自分もやってみようというところが,非常に大事なポイントかなと痛感いたしました。
したがいまして,より広くの,やはり皆さんに知っていただいているようなガイドラインの策定というのは,すごく大事なのではないかなと思います。
【福永座長】  ありがとうございます。今の観点は,先ほどの厚生労働省のガイドラインと違う,大きなポイントにもなると思いますけれども。
【島田参考人】  おっしゃるとおりです。すみ分けが,恐らくできるポイントではないかなと。
【福永座長】  今の点,いかがですか。観(み)る,支えるスポーツという観点から。御意見ございませんでしょうか。
【宮地委員】  やはりスポーツ産業の振興という観点からして,やはり観(み)るスポーツというのをしっかり振興していかないと,そういったことにはならないだろうと思います。また,するスポーツ,観(み)るスポーツ,支えるスポーツというのが,あたかも,先ほど課長が説明しているときに,線を引く必要はないというコメントが出たのですけれども,これ,まさに線を引くものではなくて,観(み)る人はしているし,している人が支えているしということで,しかも,する人の気持ちを代弁すれば,支えてくれている人も観(み)る人たちも僕たちと同じ仲間だという,そういう意識ですから,そういう一体感をしっかり出せるような,そういうメッセージをこのガイドラインに入れたいというふうに思います。
【福永座長】  ほかはいかがでしょう。今の。どうぞ。
【岡部専門委員】  ティップネスの岡部と申します。フィットネスクラブを経営しているわけなのですけれども,今,クラブにはベビー,2歳児の方から99歳の方までの,非常に幅広い年代層の会員様がいらっしゃっています。そういう方たちに,運動,快適な生活文化の提案と提供というのをしているわけですけれども,そう考えると,スポーツと,運動と,体を本当に動かす,ただ歩きにいらっしゃっている方もいらっしゃる中で言うと,スポーツと,今回の運動・スポーツガイドライン策定というところで言うと,我々としては,幅広に構えていただいて,非常に分かりやすいガイドラインを策定していただければなと思います。
一方,ちょっと私,経歴が変わっていまして,巨人軍に2年間,広報として,あと日本テレビというところでスポーツの番組のプロデューサーを十数年やっているという経験から言いますと,今回の運動・スポーツガイドライン策定に非常に期待したいところは,裾野をもちろん広げるのも一番なのですけれども,ピラミッドの,いわゆるトップアスリートというところの高さというところも,高さを作っていって,より観(み)ている人に感動とか人生の彩りというのを与えられるような,そういうところを目指して作っていきたい,作っていただきたいなと思いますので,よろしくお願いいたします。
【福永座長】  何かそういう具体的な例みたいなのはありますか。アイデア。
【岡部専門委員】  一つは,先ほど島田さんがおっしゃっていましたが,プロスポーツと民間というところのマグネットというのが,やはりいま一つ,アメリカや諸外国と比べると,日本は少ないのですね。それは巨人にいたときも感じていたのですけれども。ようやくJリーグ,あとプロ野球というところが,キッズ,アカデミーというところに力を入れ始めましたけれども,それも独自の企業努力でやっているところなので,これは行政と我々民間と,いろいろなところがマグネットして,幅広に取り組んでいくべきかなと思います。
【福永座長】  これも大事なポイントだと思うのですけれども。何かございますか。
【櫻井専門委員】  先ほどの井上課長からのお話の中で,このガイドラインをどこで使っていただくかというところで,自治体とか,あとはスポーツ関係のところというところのお話もあったのですけれども,その先にどう広げるかという視点を,最初の段階で持っていないと,やはりそこでとまってしまうと,やはり大きな広がりになっていかないので。
特に,例えば,今,健康経営みたいな話の中で,企業という単位を,広げる媒介として使っていくというのも一つの手だと思うのですね。そのときに,やはり企業にどうやって使っていただくかという,その辺の,要は広げるためのメカニズムだとか,仕掛けとか仕組みとか,巻き込むための運動論みたいなことということも,ある程度イメージをしながらガイドラインを作っていかないと,ガイドラインは作ったけれども,結局,今まで自治体とかスポーツ関係者だけのものでとまってしまうというようなことにもなりかねないので。そういう意味では,どこまでステークホルダーを広げていくのか,あとそのターゲットによっても大分違ってくると思うので,そういったことも含めて,ある程度イメージをしながら,何のためにガイドラインを作るのかということを考えながらやっていく必要はあるのかなというのは,ちょっと感想として持ちました。
【福永座長】  ちょっと私も,今,おっしゃったことはもっともだと思うのですが。もうちょっと具体的なイメージみたいなもの,具体的な例。例えば,とかいうような話,ありましたら。
【櫻井専門委員】  例えばですけれども,ちょっと全く違う例であれですけれども。以前に,環境省のクールビズをちょっとお手伝いさせていただいたことがあって,あれは政府が始めたということはもちろんあるのですけれども,そこから経済団体だとか,あと業種ごとであるとか,あと働き方であるとか,それによって,巻き込むやり方というのは随分変わってくるのですね。それを一つ一つ作っていくのは無理なのですが,ただ,そういうできるだけ多くのステークホルダーを巻き取っていくための仕組みということを,ある程度イメージをしながら最初に作っておくかどうかによって,その後の展開が大分変わってくると思いますので。それが具体的に,では,この場合,何なのかというのを,今ちょっとお示しはできないのですけれども。そういうような,先々の,要は自治体とスポーツ団体にとまるのではなくて,それ以外のいろいろな,多分,ステークホルダーがいると思うので,そこに対してどう広げ,最終的に国民までどう広げていくのかというようなことを,ある程度,皆さんとイメージをしながら考えていけるといいのではないかなというふうに思いました。
【福永座長】  なるほど。井上課長,今の話は,何か追加か御質問とかございますか。
【井上健康スポーツ課長】  私どもも,最初は地方自治体なりスポーツ団体なり向けだとは思っていますけれども,そこからどういうふうに広げていくかというところは,やはり考えていかないといけませんし,例えば,働いている方に対しては,多分違うアプローチなりも必要となってくるところはあると思います。そのあたりも念頭に置きながら,今回の運動・スポーツガイドラインというのを作っていただければ有り難いなとは思っています。
最終的には,やはり国民の方が,スポーツをやってみようか,あるいはスポーツを観(み)に行こうか,ちょっとサポートしてみようかというようなところに向かうように,環境を整えるというようなところかなと思っております。
【福永座長】  世界的に見ても,スポーツビジネスというのは結構大きな分野になっていますよね。そこに関係するようなガイドラインというのも必要だということですか。
【櫻井専門委員】  そうですね。いろいろな,多分,アプローチの方法はあると思うので。先ほど,岡部委員もおっしゃっていた,そのプロスポーツというのを,もう一つ国民に対してメッセージを伝えていく上では,すごく大きな媒介になるものだと思いますので。そういうようなところから伝えていくというのも,もちろんあると思いますし。日々,働いている一番近い職場というところから伝えていくというやり方もあると思いますし,あとは地域のコミュニティーというのももちろんあるとは思うのですけれども。今までちょっと見えていなかった部分って,もしかしたらそこから広げていける部分というのもいろいろあるのではないかなと思いますので。
そういうような,ちょっと,最終的には,先ほどもお話あったスポーツ参画人口をどう広げていくかということが最終ゴールだと思いますので。そこに一番使いやすいようなガイドラインをどう作るかというのも,考える上では,ちょっとそういう視点も持っておいた方がいいのではないかなというふうに思います。
【福永座長】  ありがとうございます。ほか,いかがでしょうか。どうぞ。
【中西委員】  全く違うお話になるかもしれませんが,スポーツ価値を教えるということが,多分大事だろうと思うのです。そのときに一番参考になるのは,実は学校体育なのです。学校体育というのは,もちろん教育としてのスポーツなわけです。この教育という意味には,人間形成という意味もあれば,スポーツの楽しさを教えるという意味での教育もあるわけなのです。例えば,皆さん御存じか分かりませんが,学校体育というのは,うまく種目を分けています。例えば,球技だとか,体操だとか,器械運動だとか,水泳だとか,表現運動だとか,もちろん武道もありますけれども,これは人間の欲求充足に応じて分けているわけで,例えば球技というのは競争欲求です。個人で戦うというテニスなど,例えば個人スポーツだったら,相手に勝ちたいという欲求充足です。あるいは,ペアでやるのだったら,ペアで,そういう競争を楽しむことを教えるということなわけです。生涯スポーツにもつながります。
ところが,皆さんに考えていただきたいのは,器械運動,例えば,鉄棒とか跳び箱だとかマットだとかは,マット運動は,生涯スポーツにつながらないのに,なぜ学校体育にあるのだろうと考えていただいたときに,答えは分かるわけです。それはなぜかというと,例えば,器械運動でも,跳び箱を跳びましょう。跳べない。でも,跳べないけれども,自分の段数に合わせて跳べるところ,いわゆる克服,今まで跳べなかったところを,何とか跳べるようになる。あるいは,鉄棒でも,前回りができない,後ろ回りができないのだけれども,一生懸命,体育の授業で習ってもできない。でも,子供は昼休みに出ていって,一生懸命自分で練習をする。そして,逆上がり,あるいは前回りができたときの喜び。そういう克服をしたときの喜びや,水泳でもそうですけれども,要は泳げない子が泳げるようになる。泳げる子はより一層きれいなフォームで泳ぐようになるというのが達成感なわけです。
こういうふうに,学校体育というのは,スポーツの楽しさ,価値を,きちんと教える場なわけなのです。だから,ガイドラインもきっと,まずはそういうところをどう押さえるかということと,それに伴って,健康になるだとか,体力がつくだとか,そういった部分も出てこようかと思うのですけれども。ただ,学校体育の現状では,今,週2回か週3回の学校体育では,そこまで,先生の力量次第では,スポーツ価値をうまく教えられない。いわゆる,スポーツの楽しさですね。スポーツをするということに限定すると,そういうことが教えられていない部分も,もちろんあるわけなのです。そういう楽しさが分かるから,人は,ではスポーツをみてみようかという。これは,人間とスポーツの関わり方の問題であって,スポーツ概念が変わるわけではないわけなのです。要するに,ああ,こういう楽しさがあるのだったら,もっとハイレベルなスポーツをみてみようかというような,人間のスポーツへの関わり方の違いなのです。あるいは,もっとイベントのボランティアをやって,支えてみようかという,それは人の関わり方の違いで,スポーツ概念が変わっているわけではないのです。
もう一つ,学校体育で大事なのは,体づくり運動や体ほぐし運動がある。これは別に欲求充足ではないわけです。ところが,これは人間が生活していく上で,体力というのは必要だから,体づくり運動をやりましょう,体力を高める運動をやりましょうって,一応,教育の中に入れているわけなのです。そういうふうに考えていくと,改めてスポーツ価値を教えるということが,要するに楽しさを教えるということが,非常に大事になってきて,そういうことがうまく国民に伝わっていないから,スポーツガイドラインが要るのではないでしょうか。学校では先生がそれを,子供たちに目当てやねらいを立てさせて教えているわけなのです。子供たちはそれには気付いていないのだけれども,教員はそういうふうに意図的に,目当て学習やねらいをもって,運動の特性というのをきちんと押さえて,この運動はこういうことを学ぶ,例えば,克服や達成を学ばせるために行っているというように,教員の方はしっかりと分かってやっているということです。
だから,要は,そういったことをどういうふうに指標としてうまく具体化していくのかというところと,またそれが,当然,健康や外在的価値も大事ですから,そういうものがないと,やはり政策的には何というか,評価がしにくいわけです。楽しさだけでは評価がしにくいので,そういう楽しさを体験した子供たちが増えることで,体力が高まる,あるいはスポーツを実践するようになる。それで,参加率が高まるという,もちろん,こういう要因というのは,非常に指標として大事になってくるわけです。だから,ガイドラインのコンセプトをどこに置くかを,概念もですけれども,考えていただければ有り難いなと思います。
済みません。長々と。
【福永座長】  ありがとうございます。私も若いとき,学校の体育の教員をやっていたので,今のお話はよく分かりますけれども。きょう,せっかくオブザーバーで出席されている方々,何か,何でもいいのでございますので,御意見等ございませんでしょうか。せっかくでございますので。あと5分ぐらいございますので。いかがですか。どうぞ。
【日本レクリエーション協会】  日本レクリエーション協会の河原塚と申します。貴重な時間,発言の機会を与えていただきまして,ありがとうございます。
私どもレクリエーションは,楽しさというのが基盤ということで,常々展開してまいりました。そうした中で,スポーツ基本法,それからスポーツ庁の発足の中で,健康スポーツ課の設置というようなことを受けて,楽しくてなおかつためになると。要は,運動効果も勘案して実施するという方向性で,今,いろいろ事業を具体的に進めております。指導者の養成や,実際に,特に高齢者の人たちの健康寿命を延ばすための継続的な活動づくりというようなことにも取り組んでおりまして,このガイドライン,明確な方向性を出していただくことを大変期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【福永座長】  どうもありがとうございます。ほか,ございませんか。どうぞ。
【日本スポーツ振興センター】  日本スポーツ振興センター情報国際部の久保田と申します。本日,お話を伺いまして,非常に,この運動・スポーツガイドラインの策定に関して,我々も非常に重要だというふうに認識しております。本日のお話を伺いまして,二つほど,私の方からお話しさせていただきたいと思いまして,お時間を頂きたいと思います。
ふだん,我々どもは,海外のトップスポーツも,グラスルーツスポーツも,スポーツ政策としてどういうふうなことが行われているかというふうな情報収集や分析をメーンで行っておりますけれども,海外の最近の動向としましては,スポーツ,身体活動のガイドラインというものが新しく作られている,若しくは,昔のものを更新しているというふうな取組が,やはりたくさん出ています。その中で,身体活動の基準プラス,例えば睡眠に関してであるとか,食事に関してというふうなことも合わせて検討されている事例が増えているかなというふうに思います。やはり,総合的に捉えて,ガイドラインを国民に示していくということは非常に大事かなというふうに思います。
もう1点,スポーツを実施するという意味では,安全対策,安全な環境を整備するというふうな観点は,日本もこれまで積極的に取り組んできたと思いますけれども,近年では,アメリカとかカナダ,ヨーロッパでは,子供の脳しんとうに対する取組というのが,非常に盛んに行われているということもありますので,そういうふうな循環器系の問題だけではなく,脳しんとう等の課題に対して取り組んでいくというふうなことも必要かなというふうに思います。
ありがとうございます。
【福永座長】  ありがとうございます。ちょうど12時半になりました。きょうはたくさん貴重な御意見を頂きました。本当にありがとうございます。
私の司会の方はこれで終わりたいと思いますので,あと,井上課長の方から,今後のことも含めてお願いいたします。
【井上健康スポーツ課長】  ありがとうございました。
資料8の方をちょっと説明させていただきたいと思います。今回の有識者会議でございますけれども,これを親会としまして,最初に決定いただきました運営規則の中で,第3条に作業部会を設けることができるという規定がございます。この規定に基づきまして,作業部会を置いてはどうかということを考えているところでございます。作業部会の委員としましては,次のページをごらんいただきますと,その7名の方,実は本日,参考人としてきていただいている方々4名,それから内藤先生,宮地先生,それからきょうは御欠席ですけれども荒木先生,この7名の方で作業部会ということを設置するということはどうかということでございます。設置いただきましたら,最後のページにございます当面のスケジュールでございますけれども,作業部会の方,これから10月,11月,12月と3回程度開かせていただきまして,作業を進めていくと。ガイドラインの方向性であるとか,そういったところも詰めていただきまして,論点整理をして骨子案の案といいますか,そういった原案をこの作業部会の方で策定をしていただくと。それを年明け1月頃に,またこういった感じで全員に集まっていただきまして,議論をしていただくと。その上で,3月下旬に骨子の方を取りまとめると。こういうようなスケジュールでいかがかと思っております。
ガイドラインにつきましては,今年度内は骨子案までと考えております。来年度になって,1年かけてそれに肉付けをして,取りまとめ,最終的なものにしていただくというようなスケジュールで進めてまいりたいと思います。
このあたりにつきまして,皆さん方の御承認を頂いて,作業部会設置,それから作業を進めていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
この作業部会の設置ということで,皆さん,よろしいでしょうか。
(「異議なし」との声あり)
スケジュールにつきましても,こういった形で今後進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【岡崎健康スポーツ課課長補佐】  それでは,本日,第1回の有識者会議を開催させていただきました。これ以降につきましては,先ほどお認めいただいたとおり,作業部会で10月下旬以降に2,3回程度行わせていただきまして,本有識者会合につきましては,第2回は来年の1月ぐらいをめどに,作業部会での議論の審議経過,あるいは状況について御報告させていただきまして,必要な議論を頂くということを想定しております。また,開催日時につきましては,改めて事務局より御連絡させていただきたいと思います。
なお,机上配布資料につきましては,数に限りがございますので,こちらの紙ファイルと白い冊子2冊については,お帰りの際に机上に残しておいた上でお帰りいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,以上をもちまして,第1回の会議を閉会としたいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――

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-- 登録:平成28年10月 --