運動・スポーツガイドライン(仮称)策定に向けた作業部会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成28年12月8日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省5階5F3会議室

3.議題

  1. (1)専門委員等からの発表
  2. (2)骨子(素案)について
  3. (3)意見交換
  4. (4)その他

4.議事要旨

【各委員等からの意見発表について】

○ 岡部専門委員及び独立行政法人日本スポーツ振興センター(オブザーバー)から資料に基づき発表があった。

【骨子(素案)について】

○ 事務局から資料に基づき説明があった。

【意見交換について】

内藤主査
○ (1)次期スポーツ基本計画策定に向けた議論に添った形で進める必要がある点,(2)本ガイドラインはスポーツ庁から発出されるという点,(3)スポーツ基本計画そのものが5年で見直しが行われるように,ガイドラインについても常に見直され,変わっていくものであるという,3点を念頭に置き,これを前提に議論を進める必要がある。
○ 事務局から,本ガイドラインは,ステークホルダーに向けた内容とし,そこを通じて最終的には国民に届くような方針で進めたいという方向性を示していただいたとおり,我々もその方向性に添って検討を進めていきたいと思う。
○ それでは,本日御説明いただいた内容も踏まえて,運動・スポーツガイドライン(仮称)骨子(素案)について,自由に意見交換を行いたい。
○ 年末をめどに具体的な作り込みをしていくと聞いているので,各委員には作文をお願いすることになると思うので,今後の進め方も含め,御意見を頂きたい。

大蔵委員
○ 厚生労働省の身体活動基準との関係性や違いについては,示さなくて良いのか。

宮地委員
○ 第1章の四つ目の丸で医療費について触れているが,その中で例えば,「身体活動やスポーツが国民の健康づくりに有効な手立てであることは既に健康づくりのための身体活動基準2013に示されているとおりであるが」などの説明はあっていいと思う。章立てすることなく,文中に入れることで良いと個人的には考えるが,厚生労働省やスポーツ庁の意見も踏まえながら,進める必要がある。

事務局
○ 骨子を策定していくに当たり,具体的な運動量の基準について記載する必要がある場合は,厚労省の身体活動基準の引用や参照をするなどといった形になると考えている。

岡委員
○ 「運動・スポーツの価値及び効果」について記載があるが,「価値」という言葉は大事だと思っている。先ほどの発表で行動変容の話も出たが,行動変容とは,人が運動・スポーツをする価値と自分が持っている時間との価値交換だと思う。例えば,だらだらしている時間があるからスポーツができるかというとそうではない。だらだらすることに価値を感じているため,その価値と運動・スポーツに対する価値を交換することが行動変容だと思う。
○ 必ずしも「みる」から「する」につながるといったことにはならないと感じている。さらに,ここに記載してある内容は「する」価値に特化したような形になっているため,「みる」価値に関する記述も増やす必要がある。例えば,宮地先生のおっしゃっている「インテグリティ」について,すばらしいアスリートをみることによってインテグリティを感じ,その結果,私もやってみたいと思うようになる可能性もあると考える。
○ また,「支える」価値も同様に重要あると思う。「みる」「支える」価値について触れることで,最終的にはスポーツ参画人口を拡大するために,「する」価値と「みる」「支える」価値の交換を考えていくことが大事だと思うので,その辺りを御理解してもらえるような価値を記載していくことが必要だと思う。

内藤主査
○ 第2章には価値について書かれているが,価値を高めるために第1章にも盛り込むことで第2章にもつながりやすいということで良いか。

岡委員
○ スポーツを「みる」ことについて,あるデータでは,スポーツ番組をずっとみている人ほど肥満になりやすいという結果もある。その部分をどう考えるか,スポーツを応援に行くことで体を動かしているという部分などをどう連動していくか。歩数で球団を応援しようなどの研究をしている方もいらっしゃるので,その辺りもうまく盛り込んでいくことも可能だと思う。

荒木委員
○ 「運動・スポーツ」ガイドラインなので,「運動・スポーツ」について検討していると思うが,第1章は「スポーツは」で始まっていたり,第2章の運動・スポーツの説明の部分では「運動・スポーツ」になっていたり,「運動・スポーツ」についてなのか「スポーツ」についてなのか整理した方が良いと思う。

事務局
○ 第2期スポーツ基本計画では,全て「スポーツ」に統一しようということで進めている。その議論を踏まえると,「スポーツ」という言葉で統一し,スポーツとは幅広いものだということを国民に発信していくという整理の仕方も一つあると考える。一方で,「運動・」を付けないと国民の皆様に我々が想定しているスポーツの範囲が伝わりにくいという意見もあると思うので,現状では表記は統一していない。この点については御意見を頂きながら進めたい。

大蔵委員
○ 「スポーツ」という言葉を使った場合,海外から見たときに「定義がおかしいのではないか」とならなければ,統一した方が良いのではないか。

宮地委員
○ 学問的には「運動」と「スポーツ」は独立した概念ではなく,運動の中にスポーツが含まれている。しかし,運動の中におけるスポーツの領域を広げていくことが重要だと思う。日本語の「運動」という言葉の定義は曖昧で難しい。スポーツ基本法に示される「スポーツ」の概念は広く,運動の概念に近く,その価値についても外在的価値と内在的価値を含んでいる。学問的な定義については,注釈の中できちんと説明してまとめていくことで良いと思う。

森丘委員
○ 価値及び効果について,必要充足の外在的価値と本源的欲求の内在的価値が二つに分かれた別物のように扱われているが,運動やスポーツを始めるきっかけとそれを継続する理由が変化していくように,価値意識の変化の連続性も重要だと思うので,その点も盛り込んでいく必要があると考える。

内藤主査
○ 第2章について,御意見を頂きたい。

宮地委員
○ 「みる」価値,「支える」価値についても,実例であったり,ファクトやエビデンスに基づいてしっかり記述していただき,スポーツの意義やすばらしさを多くの人に伝えていければ良い。
○ また,「みる」スポーツから「する」スポーツに移行しなければならないのかと質問があったが,参画人口の拡大の観点から,必ずしも「する」に移行しなければ ならないとは思わない。「する」スポーツも「みる」スポーツも両方増えていくようなガイドラインになれば良いと考えている。そのためには,「みる」価値や「支える」価値についても記述し,その内在的価値,外在的価値についてもしっかり記述していく必要があるため,その辺りのエビデンスを収集するべきだと思う。

大蔵委員
○ 医療費抑制効果や介護予防効果などについて,エビデンスが部分的に書かれているが,かなり偏っていると感じる。また,エビデンスレベルも検証する必要があると思う。エビデンスについては,別の部分に記載し,第2章には余り記述しなくて良いのではないか。

内藤主査
○ 第2章について,もっと多面的に盛り込まなければならないということで良いか。
○ 第3章での議論になるが,子供の部分をどうするか検討する必要があるが,いかがか。

宮地委員
○ 教育部局との絡みもあると思うが,子供がスポーツをやろうと思ったとき,大人,家族,学校,社会の支えが不可欠。3章に,若者世代と高齢者世代とあるが,若者世代に壮年世代や子育て世代も含まれているが,そこで親と子供との関係,支える観点から,壮年世代が地域とどのようにつながるかを通して,子供のスポーツを支えていくような社会づくりが必要だというメッセージを通して,子供のスポーツ嫌いを減らしていく,スポーツ実施を増やしていくという道筋を書ければ良いと思う。学校教育以外で大人ができること,社会ができることを記していくことが重要。

岡委員
○ 宮地委員の御意見に賛成。大人から子供への働きかけとは逆に,子供から大人への働きかけも考えられる。ふだんスポーツをやらない親も子供に誘われることでスポーツをやるようになる可能性もある。その両方を担保できるような記述にできれば良いと考える。これまでは,子供のスポーツを親や社会が支えるという話が中心だったと思うが,その逆も考えられるので,子供でなければ応募することができない親を対象としたプログラムの提供なども有りだと思う。

櫻井専門委員
○ 子供について,環境的な部分で阻害要因が生じていると感じている。一つは,防犯上の問題として,子供だけではスポーツができないという課題もあるし,逆に公園などでは子供がうるさく他の人たちに迷惑になっているなどの問題もあるため,このような環境的な問題についても触れる必要がある。
○ もう一つは,スポーツの価値を考えた場合,ライフタイムバリューの考え方を入れていく必要がある。一人の人の一生涯を通じて蓄積していく価値についても重要な観点だと思うので,その点も含めて,スポーツの価値を記述していく必要がある。

島田委員
○ トリクルダウン効果について,一過性ではなく,どのようにすれば持続的にその効果を継続することができるのかについて,一つにはトップアスリートと子供のコミュニケーションを継続的に行うことができる仕組み・コミュニティが大事なのではないか。そのコミュニティとして,各自治体や各地域に根ざした企業,フィットネスクラブなどが中心になり,各地方にいるプロチームの選手がグラスルーツのクラブに出向くような接点を継続的に行うことによって,みるスポーツから実際に行うスポーツにつながると思うので,そのようなコミュニティを全国展開する仕組みづくりも必要である。
○ 子供に関して,最近,医学会では,屋外で活動するスポーツが非常に大事だと話題になっている。なぜかというと近視を防ぐことにつながるからである。アジアでは,子供の近視が大変問題になっているが,その原因の一つとして,太陽光と室内灯のスペクトラムの違いがポイントのようである。近視を予防するためにも,屋外でのスポーツ活動の文言をどのように盛り込んでいくかも重要だと思う。

内藤主査
○ 価値の中にも地域でのトップチームと子供たちの関わりに関する効果などについてもエビデンスがあれば,盛り込むことも重要である。

荒木委員
○ 父親や母親が運動・スポーツに参加しないとその子供の参加率も低いというデータもある。両親が参加しないということは子供も参加しない可能性が高い。トップ選手になぜその競技を始めたのか質問すると,必ず小学校低学年の頃までには親に連れられて,そのスポーツを始めたりしている。そのため,父親や母親のスポーツへの興味と実施有無については,子供を持つ親の態度も大きく影響を与えると考えられるため,親へのアプローチが重要である。また,子供がトップアスリートと触れ合う機会については,もっと実施した方が良いと思う。

内藤主査
○ 第3章についての意見交換を頂きたい。三つの方向性ということで,三つ大きくテーマが掲げられているが,ほかの観点もあれば,御意見を頂きたい。

大蔵委員
○ 3番目の安全実施に関することになるかもしれないが,安全に実施できず,大きな事故や死亡事故が起こった場合,どうするかという点であるが,高齢者のスポーツ現場では,軽微なけがはもちろんだが,大きな骨折なども起こる。今後,ますます多くの高齢者がスポーツに参加すると,大きな事故につながる事例は出てくると思う。現場の人に聞くと,保険はどうしたらいいか,万が一の場合は誰が責任をとればよいのかなどについて,懸念材料があるようだ。そこで,何らかの示唆をスポーツ庁として明確にできると良いのではないかと常々考えているので,可能であれば記述を頂くことで,現場で活動している方々は安心して取り組めると思う。

内藤主査
○ 「スポーツの安全実施に向けた方向性」について,今,具体的なアクション例に記載されているのは熱中症対策について記載があるが,ここに事故が起こってしまった場合の記載についても盛り込むということで良いか。

島田委員
○ 安全に実施するための基本的な姿勢としては,実施前の準備が極めて大事である。前回の会議でも提示したが,それぞれ参加される方のふだんの健康チェックを実施し,一人一人のリスクを事前に把握しておくことが大事だと思う。限りなくゼロにしたいが,実際事故が起きたときのアクションとしてどうするか,救命救急講習をきちんと受講する,スポーツを「する」人も「みる」人も「支える」人も一度AEDに触れてみる機会を持つなどを積極的にガイドラインに盛り込むことが大事だと思う。

宮地委員
○ ステークホルダーにスポーツ関連企業はもちろん含まれると思う。最初は国が旗を振って国民にメッセージを発信していくことが重要であるが,よりよいものにしていくためには自走化の仕組みをつくっていく必要ある。その自走化の役割を担ってもらう大きなステークホルダーは,スポーツビジネスに関わっている企業ではないかと思う。そういう人たちにとって良いメッセージになるようなデータや資料に加え,エビデンスやファクトについても触れるべきだ。それは,既存のフィットネスクラブやスポーツ用品メーカーやスポーツ関連マスコミなどだけではなく,新しい業界にとってもスポーツに関するビジネスのチャンスがあるというメッセージを記したい。スポーツ参画人口を拡大することによって,新たなビジネスチャンスが生まれるということを想定してターゲットを具体的に記述していただきたい。スポーツビジネスについては,ほかにも検討会があることは承知しているが,本ガイドラインにも盛り込んでいただきたい。

全国スポーツ推進委員連合
○ 「スポーツ実施率向上に向けた方向性」の項立てであるが,若者世代と高齢者の二つに分けられているが,先ほどもファミリー・親子を対象とした取組も重要であると取り上げられているため,ここに統合的なものなど何か入れた方が良いのではないか。


日本レクリエーション協会
○ 「スポーツに参画する裾野拡大に向けた方向性」はかなり絞り込まれていると思う。ほかにもアプローチ方法があると思う。「(1)スポーツ無関心層に興味・関心を喚起させるインセンティブ策」とあるが,「インセンティブ策」と決め打ちになっていると感じる。(2)についても,かなり具体的に書かれているので,(1),(2)共に柱の文言としてはもう少し抽象的なものにした方が良いのではないか。

岡委員
○ どの方向性にも該当すると思うが,環境づくりについての方向性も盛り込むべき。例えば,人づくりや仕組みづくり。仕組みづくりについては,物理的な環境づくりについても人の行動に大きな影響を与えることが分かっているため,積極的に目標として掲げることも必要ではないか。

内藤主査
○ 事務局として,現在検討中の第2期スポーツ基本計画に記載されている文言を基に記載しているのか。記載があるため,今回このような柱立てになっているということで良いのか。

事務局
○ そういったことではない。我々の中で,このような柱立てにできるかと考え,現在の素案としている。

荒木委員
○ 目標例について,「○○を○%にする」といった形で記述されているが,本ガイドラインの対象がステークホルダーであったり,国民であったりする中で,これは誰の目標なのか。もし,国民の目標であったら,なぜここに国の目標が書かれているのか,違和感がある。一人一人が何をしたらいいのか,各ステークホルダーが何をしたらいいかを書いた方が実際にはガイドラインになるのではないか。

内藤主査
○ 目標例として数値的な目標を記載してあるが,ここについて,事務局いかがか。

事務局
○ 確かに,現在記載している目標値は,国としての目標であり,ガイドラインとして公表する際は,この目標値では難しいと思うので,これを受け取ったそれぞれの対象にあった適切な目標を設定することが可能であれば,記述していきたい。国としてはこれをやります,皆さんはこれを目指してくださいという書き方もあると思う。

宮地委員
○ 恐らくここに目標値を記載したのは,このガイドラインがどれくらい世の中にインパクトを与えたかを国としてモニタリングをする上で,数値目標が必要で,この目標を達成するためにどのようなメッセージを出していくかを考えるためのアウトカムの一つとして,また,方策を考えるためのゴールとして,ここに数値目標を記載していると理解している。例えば,健康づくりのための身体活動基準2013やアクティブガイドでは,健康日本21において歩数を8,500歩にしましょうという目標があるわけだが,おおむね現状より1,000歩くらい歩数を増やしましょうという目標値である。全ての国民に対して, 8,500歩にしましょうというメッセージはよくないだろうということで,プラス10,今より10分すなわち約1,000歩分多く体を動かしましょうというメッセージになっている。要するに,ゴールすなわち目標値がなければプラス10というメッセージを作れなかった。国の目標をガイドラインで強調するのではなく,国の目標を頭の中に入れつつ,どのようなメッセージにより,やる気を起こさせ,目標を達成することができるメッセージなどを考えることが大事。

内藤主査
○ この後,事務局から各委員に対してお願いがあると思うが,ある程度の方向性を決めてお願いしなければならい。確認すべき事項があれば,今確認したい。再度,事務局で骨子素案を整理し,委員の皆さんに作文の依頼があると思うが,この場で少し確認したい。

事務局
○ 今後の進め方として,本日,項目等について御議論いただいたので,事務局で整理して,項目ごとに再度振り分けて,委員の皆様にお願いをしたい。

宮地委員
○ 身体活動基準やアクティブガイドについては,基本的な文案は事務局が書いている。最終的には,スポーツ庁のクレジットで発出されるものであるので,事務局で文案を作成し,委員がたたく方が良いかと思う。

事務局
○ 例えば,1章,2章については,事務局でも書けるが,3章の事例やエビデンスについては,事務局では全てを持ち合わせいないので,委員の皆様にエビデンスや事例を集めていただき,書いていただけると大変助かる。

森丘委員
○ 2章のスポーツの価値及び効果と第3章の内容とがどのように関連しているのかを示すことによって,運動・スポーツの本源的な・内在的な価値への理解がより深まると思う。分担執筆となると,その関連性,連続性が薄まることも懸念されるので御配慮いただきたい。

田村参与
○ 恐らくエビデンスが十分でない項目もあると感じている。その辺りを調べるとリサーチクエッションが出てくると思う。エビデンスがない部分についてもまとめることで,その次につながるのではないか。
○ また,事例がたくさんあると思うが,各成功事例に共通する要因があると思うので,それをまとめて示すことも必要ではないか。

内藤主査
○ 事例を挙げるだけではなく,事例全体を見て,共通して大切な要因を分かるように入れていくことも必要ということで良いか。

岡委員
○ 今年度中に作成するものはガイドラインではないという理解で良いか。

事務局
○ 最終的なガイドラインは来年度にかけて策定したい。今年度中は,項目とその概要,あるいは方向性をまとめたガイドライン骨子まで作成したい。

以上

お問合せ先

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電話番号:03-5253-4111

(スポーツ庁健康スポーツ課)

-- 登録:平成29年01月 --