スポーツ審議会健康スポーツ部会(第3回) 議事録

1.日時

2018年2月27日(火曜日)

2.場所

文部科学省東館15階特別会議室

3.議題

  1. 健康スポーツ部会(第2回)での主な御意見
  2. 「スポーツの実施状況等に関する世論調査」等の結果について
  3. 障害者向けの取組について
  4. 子供向けの取組について
  5. 総合型地域スポーツクラブに関する実態調査の結果について
  6. その他

4.議事録

【渡邉部会長】  ただいまから第3回スポーツ審議会健康スポーツ部会を開催いたします。皆様、大変お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【安達健康スポーツ課長】  それでは、配付資料の御説明をいたします。
 お手元の議事次第を1枚めくっていただきまして、まず、資料1としまして、「健康スポーツ部会(第2回)での主な御意見」という資料でございます。資料2ですけれども、資料2-1と2-2がございます。資料2-1は、「平成29年度スポーツの実施状況等に関する世論調査について」でございます。資料2-2は、「障害者のスポーツ実施率について」という資料でございます。資料3、藤田委員の資料でございます。資料4、中村委員による資料でございます。資料5、泉委員による資料でございます。資料6、「総合型地域スポーツクラブに関する実態調査の結果について」という資料でございます。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 それでは、今回初めて御出席いただきます委員の方を御紹介いたします。吉田伊津美委員でございます。一言、自己紹介をお願いできればと思います。
【吉田委員】  失礼します。東京学芸大学の吉田と申します。前回、前々回と校務のため欠席して、申し訳ございませんでした。私は現在、大学で保育者養成に携わっておりまして、専門は幼児の運動遊びや運動発達についてです。生活環境を含め、幼児が動きにくくなっている状況があると思います。体を使った遊びはもちろんのこと、生活の中での動きを豊かにしていくことも必要ではないかと考えております。また、特に幼児期は親の関わりというのが非常に大きく影響してくると思いますので、そういった意味では、保護者世代であるこちらの部会にいるビジネスパーソンや女性についても一緒に考えていくことが必要ではないかと思っております。このような観点から発言させていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  吉田委員、ありがとうございました。
 そして、本日は、スポーツ審議会総会より藤田弘美委員に御出席いただいております。

【藤田スポーツ審議会委員】  どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  それでは、早速、議事に入りたいと思います。
 まず、平成29年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果について、事務局より説明をお願いします。
【安達健康スポーツ課長】  はい。それでは、資料2-1をごらんください。「平成29年度スポーツの実施状況等に関する世論調査について」です。こちらは国民の皆様のスポーツの実施状況を調査するものでございますけれども、タイトルにございますように、週1回以上のスポーツ実施率は51.5%(前年度42.5%)ということになっています。こちらの資料は、本日、報道発表したものです。
 では、中身について簡単に御説明をいたします。
 2枚めくっていただきまして、下のページ、2ページのところをごらんください。上段の表が週1回以上のスポーツ実施率でございます。下に「成人のみ」とございますけれども、全体で51.5%となっております。括弧の中が前年度でございます。例えば10代ですと、前年度49.8%が29年度は63.3%となります。10代~40代までの間が非常に高い伸び率を示しているところでございます。
 中段の表でございますけど、こちらは週3回以上のスポーツ実施率でございます。一番下の「成人のみ」というところをごらんいただくと、前回、前年19.7%が29年度は26%と増加をしているようなところです。
 下段のグラフにございますけれども、平成に入ってからの推移でございますが、なだらかに上昇傾向にあるところで、29年度は初めて5割を上回ったというところでございます。
 3ページをごらんください。世代別の実施状況でございます。70歳代につきましては7割と非常に高い割合を示していますが、20代、30代、40代、50代は平均を下回っているという状況にございます。
 下の運動不足の状況というところでございます。特に20代から50代までの8割を超える方が運動不足を感じていると、そういった状況にございます。
 4ページをごらんください。では、どのようなスポーツを実施しているかというところでございます。この1年に実施した種目について上位から並べてございますけれども、「ウォーキング」、「階段昇降」、「トレーニング」、「体操」、「ランニング」、そういったところが多くなっております。身近で取り組みやすいものの割合が高くなっているところでございます。
 5ページでございます。種目による前年度との比較でございます。この表の中で網掛けになっている部分が前年度より増加した種目でございます。特に「ウォーキング」につきましては前年度38.7%から57%と、非常に増加が顕著になってございます。
 6ページでございます。1年前と比べて運動・スポーツを実施する頻度が増えたか、減少したかというところで、上の表でございますが、「増えた」と回答された方が19.1%、「減った」と回答された方が21.6%となっています。この増えた方の内訳を見て、そういった方はどういうスポーツをしているかというと、やはりウォーキングをしている方が相当高い割合となっています。
 7ページでございます。次は1年前と比べて運動・スポーツをする頻度について、特にこの1年、初めて実施した又は再開したスポーツがあるかどうかというところでございますが、この中で「ウォーキング」は52.4%と非常に高い割合を示しております。ですから、全体のスポーツ実施率が上がったのは、初めて、あるいは再開したスポーツのウォーキングがかなりのウエートを占めているというところでございます。
 ウォーキングの実施状況は、下に世代別の状況がございます。どちらかといいますと、若い世代の伸び率が非常に高くなっていることが下のグラフでうかがえます。
 8ページ目でございます。次は運動を実施した理由についてでございます。こちらは例年と同じような傾向でございますけど、「健康のため」、「体力維持のため」、「楽しみ、気晴らしとして」というところが上位に来ております。
 一方で、阻害要因も聞いております。こちらは「仕事や家事が忙しいから」、「面倒くさいから」、「年をとったから」、こういった理由が高くなっております。
 下の世代別の表を見てみますと、「仕事や家事が忙しいから」というところは、男性も女性も、例えば20代から40代、こういったところで非常に高い割合を示しているところでございます。
 9ページ目でございます。こちらは、運動・スポーツの実施状況のうち、1年間、運動・スポーツをしなかったという方に着目しております。「運動・スポーツをしなかった」24.7%、このうちで、「現在運動・スポーツはしておらず、今後もする予定もない」といった方が20.7%ございます。非常に無関心層といいますか、こういった層の方もいらっしゃいます。
 こういった層の方に着目して、下の段でございますけど、趣味・娯楽でどういうふうな傾向があるというのを全体の方と比較をしてみました。赤い囲みがこの無関心層の方でございます。全体的にいろんな趣味に関して実施が低調であることがうかがえますし、趣味・娯楽に「あてはまるものがない」と回答した方も非常に高くなっているという、全体的に無関心な状況がうかがえます。
 あと、地域での付き合いはどうですかとお尋ねしたところでございます。右のところです。「全くつき合っていない」というのが、全体の方と赤囲みの無関心な方を比べると、無関心な方が地域での付き合いもあまりないような状況が見られると。こういった無関心層の状況も浮き彫りになっております。
 次のページ、10ページ目でございます。スポーツを「みる」、「ささえる」。上の段は「みる」スポーツです。現地で直接見たスポーツ、「プロ野球」が一番高くなってますけれども、全体で1年間で直接観戦をした人が26.9%、右側はテレビ・インターネットでスポーツを観戦したという方が、こちらも「プロ野球」を筆頭に全体で見たという方が68.4%という形になっています。
 下段は「ささえる」でございます。スポーツに関するボランティアの状況をお尋ねしております。「日常的・定期的に行った」あるいは「イベント・大会で不定期に行った」、この両者を足しますと10.6%の方が1年間でボランティアに参加している状況がうかがえます。
 こういった方の運動実施率の関係をクロス集計してみますと、下ですが、スポーツ実施率の高い方の方がボランティアをしている傾向があるという相関が見られます。
 11ページでございます。スポーツの価値についてでございます。上段は、「あなたにとって運動・スポーツは大切なものですか」という問いに対して、「大切」、「まあ大切」という方が66.4%となっています。スポーツ実施率が高いほど、その大切さを感じている方が多いということになっております。
 下段は、スポーツがもたらす効果でございます。こちらは、「健康・体力の保持増進」が最も高く、「精神的な充足感」、「人と人との交流」、そういった効果があると答えている方が多くなってございます。
 以上が、まずスポーツ実施率の調査でございます。
 次に、資料2-2でございます。こちらは障害者のスポーツ実施率についてということで、こちらは資料2-1とは別の調査でございますけれども、29年の速報値をまとめております。
 まず、上の表ですけれども、過去1年間にスポーツ・レクリエーションを行った日数とありますけど、これは週1回以上行った割合と見ていただければ結構ですが、7歳から19歳までが29.6%、前年より少し落ちてございます。成人につきましては20.8%ということで、前年度よりやや増加をしている状況でございます。こういった方々のスポーツ・レクリエーション実施の障壁でどのようなものがあるかというと、「金銭的な余裕がない」、「体力がない」、「時間がない」、そういったものが多く割合が見られました。一番下にございますけれども、スポーツを実施していない人のうち、「特にスポーツ・レクリエーションに関心がない」という無関心層の方が81.7%いらっしゃったというふうな状況も出ております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 恐らく、実施率が相当上がっていますので、いろんな質疑応答がこの後考えられますけれども、そこにつきましては、議題(4)まで説明した後に一括して行いたいと思いますので、御了承のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは、次に議題の(3)ですね、障害者向けの取組について、こちらにつきましては藤田委員より御説明いただきたいと思います。藤田委員、よろしくお願いします。
【藤田委員】  こんにちは。きょうは、貴重な時間を頂きましてありがとうございます。障害のある人のスポーツ実施率の向上に向けてということで、これまで私が関わってきた様々な調査であるとか、あとスポーツ庁からの委託事業、笹川スポーツ財団さんと共に一緒にやってまいりました、そういったところをベースにして、幾つか新たな提案などをさせていただきたいと思います。
 まず、障害者のスポーツへの社会化パターンとなっていますけれども、これは要するに、障害のある人はどういうふうにスポーツをやり始めるかということなんですね。上に先天的障害者あるいは非常に年齢の若いときに障害を持った方を、下に後天的な障害者が出ております。先天的な障害のある人の場合であれば、すぐに医療、リハビリあるいは療育というものを経て、その後、必ず学校に行きます。特別支援学校であったり、普通学校の特別支援学級あるいは普通学校の通常学級の中でいるというパターンもあります。ここがなかなか難しいところで、どこにそういう生徒さんがいるのかってなかなか把握しにくいところがありまして、必要な人のところに必要な情報がなかなか行かないというところがあります。
 後天的障害者の場合は、障害を持って、その後、医療・リハビリテーションを経てスポーツに入っていくということになります。その前提となりますが、1つ付け加えておきたいんですけれども、後天的な障害のある人にとって、その障害を持つ前にスポーツをやっていたかどうか。そのやっていたことがプラスに作用しているか、していないか聞いた調査がございますが、それで85.2%の方がプラスに作用していると。マイナスに作用したという人は22.2%。スポーツをやっていた人はスポーツをやる傾向が見られるのではないかと思われます。
 それからもう一つの調査で、後天的な障害のある人は、障害を持ってからどれぐらいでスポーツを始めたかという調査結果があるんですが、それでは、半年未満、この半年というのは保険でリハビリテーションがやれる最大の期間になるんですが、「半年未満」という方が5.1%、平均では3.7年掛かっているということなんです。ただ、リハビリを終えてからスポーツをやり始めるまでの期間がかなりあって、情報の溝というか、漏れがここに見られるのではないかと。
 ここで三角で示しました医療、リハビリ、療育という医療関係の方々、そして学校関係者が、まず障害のある人たちのスポーツに関する様々な情報を持っている必要があると。ここが今、なかなか難しいところであります。そして、日常的にスポーツをやっていくためには、総合型クラブであるとか一般のスポーツ施設であるとか、そういったところでの受入れが進まなくてはいけないんですが、そういう受入れをする側の障害者スポーツに対する情報というのもなかなか浸透していないというのが現状でございます。ですから、この三角、丸、四角で囲んだ部分ですね、医療関係者、教員、そして健康運動・スポーツ・諸事業の指導者、こういった人たちがまず知識を持って、情報を持っていただきたいということ。それから、この3つに関わるんですけれども、親であるとか家族が、自分たち家族、子供であるとかそういった人たちに障害があった場合に、どうすればいいか、どこに行けばスポーツできるというような情報を持っていることが非常に重要になってくるということ。それに加えて、障害のある人自身がどうやって情報を得るかというところが鍵になると思われます。
 この障害者スポーツの実施率の向上なんです。先ほど速報値20.8%という、一番最初の調査で18.2%なので、微増といっていいかと思いますが、この実施率を上げていくポイントとして1つ目は、今言った障害のある人のスポーツに関する様々な情報の共有と連携ということがまず必要だと。連携ということに関しては、医療・福祉・教育・スポーツ、そしてそれらをコーディネートする人がやっぱりいないと、これまであまり連携していなかったところが急に連携といってもなかなか難しいところがあるということですね。
 それから2つ目は、受入側ですね、障害者の受入体制の整備ということで、様々なスポーツ施設であるとかそういったところの受入れ、あるいはクラブなんかでの受入れですね。ハード面、制度、プログラムあるいは用具ですね、そういったものがあるとやれるということですね。特別な道具がなくても、例えば子供用の車椅子なんかがどこかに置いてあれば、スポーツ用の車椅子ですね、そういった施設に障害のある子が行ってスポーツを楽しむことができる。これ、持っていくというのは結構大変なんですね。車椅子を持って運んで、スポーツをするというのはなかなか大変な部分がありますので、そういったものが置いてあるようなところがあるといいのではないか。指導者の資質ですね、障害のある人も指導できるということ。それから、他の利用者ですね、施設を使っている他の利用者の理解、これも進まないとなかなか障害のある人が一般のスポーツ施設でスポーツをやるというのは難しいと思われます。
 そして3つ目が障害者の行動変容ということで、具体的なロールモデルがあって、かなり丁寧な、例えば体育館に行く方法は、こうやってこういうルートで行けば一人で行けますよと。で、こういうふうにすると皆さんもスポーツできますよと、それぐらい丁寧な実践的な説明ですね、キーになる人がそういうことをしてくれるということが必要になってくるかと思われます。
 これは、ヤマハ発動機のスポーツ振興財団さんというところが行った調査なんですけれども、競技を始めるに当たり最も影響を受けた人物は誰かということをジャパンパラの陸上と水泳の大会に出場していた選手に聞いたものです。そこでは、例えば視覚障害のある人であれば、学校関係者あるいは兄弟姉妹の影響を受けていると。聴覚障害のある人の場合だと、父母、それから学校、友人、家庭と学校ということが分かります。肢体不自由の方の場合だと、ほかのところで見られないものとしてコメディカルの人たちですね。あとは福祉職員とか、そういったところの影響も受けていると。知的障害のある人の場合は、父母と学校の影響を強く受けてスポーツを始めたという結果が出ております。
 同じ調査を身体障害の先天的な障害を持った人と後天的な障害を持った人、そして知的障害のある人――これは先ほどの数字と同じなんですが、身体障害で先天的な障害を持った人で一番多いのはやっぱり父母なんですね。若いうちに障害を持っている人は、家族とかそういった人たちの影響を受けることが多いと。その家族が障害のある人のスポーツ、障害スポーツに関する情報を持っていることが非常に重要になってくるということになります。後天的な人の場合はコメディカルですね。理学療法士さんとか作業療法士さん、医師、看護師さん、そういった人たちがリハビリなんかを通じて情報を提供していく、それが影響が大きいということです。あとは友人。友人と書いていますけれども、特に同じような障害を持った人を見て、あ、自分もできるんだということを理解するということがあります。一般的にスポーツ社会学の中では、スポーツを始めるのに、男性は例えば父親であるとか兄の影響を受けるという調査結果が多いんですけれども、障害のある人の場合は兄とか父親ではないんですけれども、同じような身体状況の人の影響を受けるというところでは共通しているのではないかと思われます。
 こういう調査結果から、情報共有・連携、そして受入れ体制の整備、あるいは障害のある人の行動変容のために必要なこととしては、医療・福祉関係者の知識・情報不足がありますから、これを改善していくということですね。地域のリハビリテーション医師、理学療法士・作業療法士、看護師との連携ということが必要になってきます。例えば、障害スポーツ協会から様々な教室であるとか大会の情報をこういったところに流していくということをすべきではないかと思われます。あるいは、回復期リハビリテーション病院との連携であるとか、ソーシャルワーカー、社会福祉協議会との連携、こういったものも必要になってきます。
 それから、教員の部分に関しては、今般、学習指導要領に障害者スポーツ、パラリンピックに関する情報が記載されましたので、これから少しずつ変わってくるかと思いますが、そういった部分で教員が障害のある人のスポーツのことを勉強して情報を持つということが重要かと思われます。あるいは、教員免許の更新講習でそういった知識を提供していくであるとかということも必要になるかと思います。一番いいのは、私、前からずっと言っているんですけれども、体育教員免許を取るのに障害者スポーツの授業を必修にすると、これが一番ではないかと思っております。日本全体では、体育教員養成課程のある大学の約半分で障害者スポーツ関連の授業を立ち上げていますが、ほとんどは選択なんですね。大体3割ぐらいの学生が選択しているのではないかと推測されていますが、国立大学の教育学部では、障害者スポーツに関して4分の1しか授業が行われていません。これは必修になっていないので、地方の国立大の教育学部って一番予算的に厳しいところがあります。余分な授業を設定するということは非常に難しい状況にあるかと思われますが、地域の教員の輩出、非常に重要な部分を担っているんですね。そこではほとんど障害者スポーツのことが教員になるのに必要ない状況になっているということがあります。ですから、必修化するということは非常に重要ではないかと思われます。そのほか、体育教員が障害者スポーツ指導者の資格を取っていくということも必要でしょう。こういう様々なツールで学校関係者が障害者スポーツの情報を蓄積していくということが重要だと思います。あと、部活動・クラブ、やっているところが現在6割ぐらいという結果が出ていますが、ここの実施率を上げていくことも必要と。あるいは、一般の部活動の中に障害のある生徒さんが入っていく、そういった受入体制も必要かなと思われます。
 あと、いわゆる地域のスポーツ指導者の知識・情報不足、経験不足ということに関していうと、スポーツ推進委員であるとか、地域のスポーツクラブなんかでそういった指導者が障害者スポーツの資格を取るなり、様々な講習で障害のある人のスポーツの知識を得ていくということが大事でしょうし、競技団体が行う指導者養成課程の中で、その競技に障害のある人が来た場合にどういう指導をすればいいかというところを指導者養成のカリキュラムの中に入れていくということも必要と思われます。実際にゴルフ、バドミントンはそういったものが行われているようです。このほか、児童発達支援であるとか放課後デイサービス、学童保育、そういったところとの連携も必要になってくる。介護予防、高齢者体操教室等での障害者の受入促進、こういったものも進めていく必要がある。
 それから、家族・親が知っているか、知っていないかで、その子供がスポーツをやるかどうかというのが決まってくるところがあります。先程の調査からも明らかなんですが、当事者団体への情報提供、障害者のある子供たちの親の会に情報提供していく。あるいは、療育の場とか学校から親に対してそういう情報が提供できるようになっていかないと、親は本当、病院と学校、他から知識を得るところがないぐらい時間的に大変な日常を送っておりますので、そこから情報提供されるということが重要かと思われます。
 これに加えて、障害者のある人自身が様々なツールですね、ホームページ、SNS等から情報を得るということは重要かと思います。
 これは、平成25年度に行われた障害者数の調査なんですが、よく見ると、身体障害児・者が392万人で、在宅――青が在宅の方なんですね、非常に多いというのが分かります。それから精神障害者のある人、これも在宅の方が非常に多いということが分かります。ですから、学校、小さいときからスポーツをやるということも大事なんですけれども、今、障害を持って在宅で過ごしていらっしゃる方をどういうふうに掘り起こしていくというか、ほとんど無関心層が多いという先程の調査結果がありました。こういった人たちに情報を提供していくことが重要かと思われます。実施率を上げるということに関してはそれが重要になってくると。
 ここに連携の理念図と書いてありますが、これは、スポーツ庁の委託を受けた笹川スポーツ財団で出した報告書の中から持ってきたものなんですが、リハビリ、学校、それから福祉関係、それで障害者スポーツの関係者がつながっていくということが、障害のある人のスポーツを行っていく上では重要だということになります。
 その整備促進のためにということで、コーディネート、地域でそういった組織をコーディネートする機能がまず必要だということ。少なくともその担当の窓口あるいは人、担当者がいるということが重要かなと思います。一般的に考えれば、そういうのは障害者スポーツ協会ですね、増子委員は実際に病院などを回って様々な情報を地域の病院、リハビリ病院であるとかそういったところを回って提供されている。そういったコーディネーターが必要になってくると。あと考えられるものとしては、スポーツ推進委員あるいは総合型クラブ、障害者スポーツ指導者協議会、そういったところがつないでいくということが必要になるかと思います。あるいは、連携していくために、その地域、都道府県に障害者スポーツ振興連絡協議会のようなものが創られるということが手段の一つとしてあるかと思います。東京都や高槻市などでは実際にこういうことはやっています。全国障害者スポーツ大会、各都道府県で予選をやっております。それは今、恐らく障害福祉課だけでやっているところが多いんですが、そこを実行委員会形式にして様々な連携を作っていくというのも一つの方法ではないかと思われます。あと、障害者スポーツに関するスポーツの事業、これは地域連携していく実行委員会を創るということが条件になっていますので、こういったものを利用するということも当然考えられますし、地域の障害者スポーツセンターの機能を分散化させていくと。長野県では、障害者スポーツセンターの支店のようなものを県内3か所に創ってあります。これはお金がかかることなのでなかなか難しいんですけれども、例えば総合型地域スポーツクラブにそういう障害者スポーツの拠点になるようなクラブを設定するであるとか、今、スポーツ庁が進めている特別支援学校を拠点化していくであるとか、地域に何か所にそういった拠点となる情報提供できるような機能を持った組織を創るということは、非常に効果があるのではないかと思われます。
 あと、友達作戦と書いていますけれども、先程言ったように、障害のある人は、自分がスポーツができると思ってない人が多いんですね。どんなに広告、機関誌等で、あるいはホームページ等で教室がありますよという情報を流しても、これは自分はできないと思っている方が非常に多いんです。そこを変えていくためには、先ほど言ったように、非常に丁寧な説明であるとかロールモデル等を提供していくことが重要なんですけれども、今、スポーツをやっている人に1人連れてきてもらうと、それは一番簡単で確実な方法なのかなと。これを友達作戦と言っていますけれども、そういう支援であるとか方法を様々な競技団体等が考えていくということは、一つ非常に強力な方法ではないかと思っています。あと、パラリンピアン、出た人は必ず自分の地域で自分と同じような障害のある人たちが集っているところでスポーツのデモンストレーションをやるであるとか、そういうことをやっていくことによって好循環が生まれてくるのではないかと思われます。重度障害の多い特別支援学校に車椅子バスケットボールの選手が行ってもあんまり意味がないんですね。そういう子供たち、自分の障害と同じような人たちがこういうふうにスポーツをやっているというのが分かるような、そういう情報提供の仕方ですね、ロールモデルを示していくということも重要かと思います。
 そして、現在進められていますSpecialプロジェクト2020ですね、これ、当然連携していくということなんですけれども、学校だけの取組にするのはもったいないので、これをその地域全体の取組として位置付けていくと。学校の中で完結するのではなくて、地域に開かれた状態でやっていくというのも一つ効果があるかなと思っております。
 ともあれ、障害者スポーツといえばここに行けばできる、こういうことがあるというのが一般常識化していく、誰に聞いてもそれが分かるというふうに、東京パラリンピックの後、なればいいかなと思っています。
 それから、これはイギリスの例なんですけれども、障害者の使いやすいスポーツ施設の認定制度というのを設けておりまして、登録できる状態になりました、そういう施設、それから、登録しようと、今、改善をし始めましたという施設、それから、登録できる最低限の条件を満たした施設、そして更にすばらしい拠点になるというような施設という、3段階の認定制度を設けておりまして、そういったものを作るというのも一つのアイデアかなと思います。
 最後になんですけれども、運動・スポーツの定義、私たちはなんとかウォーキングとかそういったものを当然運動だと思っていますが、このプレゼンをするのに、私、日本福祉大学というところに勤めておりまして、福祉系の先生方にいろいろと聞き取りをしたんですね。スポーツというとやっぱり競技スポーツだけをイメージする、自分たちにスポーツは指導できないというふうなところを感じているということが分かりました。そうじゃない、スポーツ・運動の概念というものをシェアしていくというか、それはスポーツの世界だけではなくて、いろんな人を巻き込んでいくときには非常に重要なことかなと考えております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  藤田委員、ありがとうございました。非常に示唆に富む御説明だったと思いますけれども、先ほどお名前が途中で出ましたが、障害者スポーツの現場の立場から増子委員の方に御意見を伺いたいと思います。
【増子委員】  福島県障害者スポーツ協会に勤務しております増子恵美と申します。よろしくお願いします。藤田委員、ありがとうございました。
 藤田委員から御説明いただきましたように、障害者のスポーツは、医療的要素、そして福祉的要素、教育的要素と3つの柱から成っています。3つの柱からそれぞれの課題がございまして、今まで障害者スポーツは、厚生労働関係におりましたので、医療的要素と福祉的要素の部分の壁というのは非常に連携もとれていまして、進めやすい状況です。ここ数年、スポーツ基本法が改定されてから、教育的要素の部分とも連携するようになりました。まだ始まったばかりというところもありますが、この教育的要素の部分の壁というものを、我々現場は非常に高いものだなとまだ感じておるところです。
 例えば、障害のない子供というのは、学齢期に成長・発達段階で様々な身体活動を経験しています。体育の授業であったり遊びの中で動作を獲得してまいります。日本の障害児・者は、特に先天性の障害児は圧倒的にそうした経験が少ない状況で我々の現場の下にやってまいります。もう少し付け加えてお話しさせていただきますと、普通学校に通う障害児、支援学級に通学する子供は、例えばボールをキャッチする、投げる、打つという動作が苦手な子が多いです。できるまでにも非常に時間が掛かります。子供のうちに障害の状況に合わせた動作獲得をさせてあげることが日常生活の動作にもつながって、できることを繰り返しやっていってできるようになることで自信にもつながっていって、社会に自立していって、スポーツをしてみようという意欲にもつながってくると感じています。障害のない児童生徒には、心のバリアフリー推進学習等々いろんな取組がされていますが、障害児本人、当事者の学びの場、体を動かす学びの場の環境というのは、まだ適切な配慮がされていないことがたびたび見受けられるなというのをスポーツの現場で感じています。
 支援学校と支援学級、普通学級に通う障害のある児童生徒への教育を受ける権利が、平成29年の4月の学習指導要領の改訂にも盛り込まれました。障害状況による支援・配慮の下、そういった学習指導、体育指導、排泄指導も含めて改善されることは、スポーツ現場にとっても重要だなと思っています。
 そして、特別支援学校、特別支援教育との連携というのは長年培ってきましたが、今、私たちが現場で取り組んでいるのは、義務教育との連携です。逆に言えば、ここが障害者のスポーツの実施率を高める重要な鍵というふうに思っています。幼少の頃から学齢期で発達段階に合わせた運動をする経験をすることが、将来的に運動実施率を上げていく、スポーツをしてみたいという声が上がっていくと思います。この障害者のスポーツ実施率の最新の情報で、無関心層の81.7%は「どうせできないからやらない」、「やったことがないから興味がない」イコール「スポーツに関心がない」というふうにつながっているのを、教育の現場から、幼少の頃からそういった経験を積ませていくことで両方から、藤田先生のおっしゃる両方から取り組んでいくことが重要なのではないかなと現場では感じております。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして議題の(4)、子供向けの取組について、まずは中村委員、続けて泉委員に御説明をお願いしたいと思います。中村委員、よろしくお願いします。
【中村委員】  山梨大学の中村と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、幼少年期における望ましい運動・スポーツの在り方ということでお話をさせていただきたいと思いますが、幼児期の遊びというのは非常に大事だと言われていますけれども、そこも重要だし、その後につながる、つまり、子供の時代から大人につながっていくための運動・スポーツの在り方ということをやっぱり中心に考えていかなきゃいけないなということを、お話ししたいと思います。
 この幼少年期の運動・スポーツなんですけれども、先ほど増子委員が言われたとおりなんですが、2つの意味があると思うんですね。1つは、発育・発達途上にある子供です。それは皆さんとは違います。子供は育っていっているんですね。その育っていっている子供たちに、豊かな心や健やかな体の育みをもたらすものでなければいけないということです。ここが大人と子供の違うところですね。もう一つは、まさしく成人期以降に運動・スポーツの習慣が継続できる、そこにつながるものでなければいけないと。この2点が、子供、いわゆる幼少年期の運動・スポーツにとって非常に重要である。だからこそ幼児期には遊びが大事だということになります。
 真ん中に運動・スポーツと書いたんですけれども、これは幼児期に限ると遊びということになりますが、人間が生きていく上に使う様々な能力ですね、今、発育・発達なんかでは、認知的なものと、情緒・社会性のものと、身体運動と、3つに大きく分けて考えているんですけれども、子供の頃の運動・スポーツ、こういった子供の頃の経験というのは、この3つの人間の能力というのが満遍なく発揮できるんですね。大人の場合はちょっと違う。大人は、例えば運動・スポーツをやって何か技能を高めようとか、あるいは運動能力を高めようとかというふうな場合には、ここだけにある意味特化してできる可能性もあるんですが、子供の場合はその経験というのが思考や判断とか、あるいはコミュニケーションや態度といったものと関わり合いながらいくと。それが1つです。もう一つは、この3つの能力はお互いに補完しているということですね。何か1つを特化してやるわけではなくて、ある能力が伸びるということは、ほかの能力も付随して伸びていくという、これが大事だということで、ですから、遊びの中には、いろんなことを考えたり、工夫したり、判断したり、あるいは仲間とのコミュニケーションをとったり、そこで態度が形成されていったりということが大事になってくるということになります。これも大人と子供の違いということです。
 生まれて間もない頃から小学校を卒業するぐらいまで大体12年間ぐらいの運動発達の概要をちょっと書いてあるんです。これは私の図ではなくて、日本レクリエーション協会さんで前に元気アップという事業をやったんですけれども、そのときに慶応大学の佐々木先生がまとめてくださったものですが、この赤ちゃんのところはおいておきまして、幼児期ですね、年少さんから年長さんぐらい、いろいろな運動ができるようになる時期、初めていろんな運動を経験します。その中で、後にも出てきますけれども、走るとか跳ぶとか投げるとかといった、本当に人間の生活の基本であったり、あるいはこの後の運動・スポーツの基礎となったりするような動きを経験していくということになります。そして、小学校の低・中学年ぐらいになると、それを何度か繰り返して経験するうちにだんだんうまくなってくるんですね。うまくなってくる。ただ、うまくなってくるというのは、誰もがみんな同じようにうまくなるわけではなくて、何回やってもなかなかうまくならない子もいます。逆上がりなんかいい例だと思うんですけどね。すぐにできちゃう子がいるとすれば、なかなかできない子もいる。それは子供の中では、それそのものは発達段階、発達なんですね。その中でいろんな動きを組み合わせたり、あるいはリズムに合わせて動くといったこともできていきます。そして、例えば高学年ぐらいになったら、いろんなことを理解して行う段階になった。例えばスポーツをやりたい子供はスポーツをやったり、あるいはスポーツという競技的なものではなくて、とにかく面白くみんなと体を動かしたいという子供がいたら、そういったところでの運動・スポーツの在り方というのも大事なのかなと考えています。
 で、先ほど学習指導要領のお話も出ましたけれども、現行――現行というのはこの4月から、小学校は新しい学習指導要領での教育が始まりますけれども、体育や保健体育というのは小学校1年生から高校まで12年間なんですが、これを6・3・3・ではなくて、現行の学習指導要領から今回の改訂もそうですけれども、発達の段階ってシークエンスです。これ、すごく大事なんです。これを考えていくと。で、4・4・4というふうな基本的な考えを持って作られています。最初の1年生から4年生まで、いわゆる低・中学年は、先ほどの図にもありましたけれども、様々な基本的な動きを身に付けていく、こういう時期だと、こういったことを一つの目安にしながら体育というものを指導していこうと。それから、高学年から中学校の2年生ぐらいまで、この4年間ですね、いろいろな領域の運動体験、様々なスポーツが経験できるような仕組みを学習指導要領では作っています。つまり、体育や保健体育の中ではいろんな運動ができるということですね。中学3年生以上、高校生になると、少なくとも1つの運動を選び継続することができる。選択制授業というものもありますけれども、それも踏まえてできている。これは段階なわけです。発達の段階で、こういった形で学習指導要領というのは成り立っているということになります。
 ちょっと小学校に注目してみますと、小学校では、特に1、2年生のところですね、低学年、ここにありますように、今回の改訂で「体つくり運動」という領域名が「体つくりの運動遊び」になりましたけれども、例えば器械運動につながっていく領域は「器械・器具を使っての運動遊び」、あるいは水泳に関して言うと「水遊び」、つまり遊びという概念が低学年には入っているということで、この遊びという概念は基本的には幼児期の遊びと同じ、つまり、子供たちが面白く運動を行っていく、そして仲間と関わっていく、いろんな工夫をしていくということを学校の体育では重視しているということになります。それがだんだんだんだん、先ほどお話ししましたように4・4・4というふうな段階の区切りの中で様々なスポーツの方にだんだん移行していくということになります。低学年では全て運動遊びということが中心になっていくということを御理解いただければと。
 動きという話が先ほどから出ていますけれども、実は幼少年期というこの時期というのは、一生のうちで一番動きを身に付けやすいという時期なんですね。身に付けやすい時期です。幼少年期って大体2・3歳から11・12歳、幼稚園、保育園とか小学校ぐらいの子供たちのことを指していますけれども、この動きの身に付け方には2通りあるんですね。1つは、動作の多様化といいます。量的な獲得をする。つまり、いろんな動きができるようになる。別の言葉で言うと、動きのレパートリーを広げたり、このバリエーションというのはレパートリーとちょっと違っていて、レパートリーというと比較的、例えば走るとか跳ぶとか投げるとかです。バリエーションというのは、例えば走るといっても、真っすぐ速く走るという走り方もあれば、ジグザグに走る、後ろ向きに走るのもある、横に走るのもある、いろんな走り方があります。そういったものをバリエーションと言っています。つまり、様々な動きを経験していく。こういう多様化というふうな発達が1つある。もう一つは、洗練化と言っています。これは質的な獲得と言っていますけれども、だんだん上手になっていくということですね。だんだん上手になっていく。そのときにだんだん、ぎこちなさとか、あるいは力み過ぎがなくなって、滑らかな運動経過になったり、動きと動きが結合していったりということになります。例えば走り幅跳びなんて一番分かりやすいんですけど、最初から走り幅跳びができる子供っていないんですね。走るということと跳ぶということが融合している。こういうのを運動の組み合わせと言っていますけど、学習指導要領の中では小学校の中学年のところで、特に多様な動きを作る運動のところでこの運動の組み合わせというものを考えています。こういった能力が子供たちに身に付いていく。多様化と洗練化ということになります。
 これは運動神経がよくなる36の動作という、私が十数年前に提唱させていただいたものなんですけれども、今そこでにこやかに笑っておられるルネサンスの髙﨑さんと一緒に、最初にルネサンスの中でスポーツ・エンジェルという子供の遊びの教室を作っていただいて、それをきっかけに、とにかく多様な動きといってもどんな動きがあるか分からないとなかなか理解できないので、どんな動きがあるかということをおよそまとめてみようということになります。例えば、ちょっとこれ、今、髙﨑さんと一緒にやっているのは、滋賀県の米原市だとか福島県の田島町とか、そういったところでやらせていただいていますけど、メジャーで言うと――メジャーかどうか分かりませんが、「おかあさんといっしょ」という番組にブンバ・ボーンという踊りが今あるんですけど、あれを私、監修させていただいていて、あの中でも、36全部ではないですけど、こういった動きの観点で分析をしているということもあります。当然、先ほどからお話ししています学習指導要領の中でも、36というわけではないんですが、例えばバランスをとるような動き、立つとか、あるいは回るとか、あるいは渡るとかと、こういう動きもありますよね。それから、体を移動する動き、重心の大きな移動を伴うような、歩くとか、あるいは跳ねるとか、そういった動きもあります。それから、ここは用具を操作する動き、学習指導要領では用具を操作する動きと力試しと言っていますが、いわゆる操作系の動作ですけど、物を使ったり、ボールを使ったり、縄を使ったり、あるいは友達の体を利用したりしながら動きを見付けていくと。こういうふうに大きく3つぐらいに分類できて、それぞれこんなふうな動きが子供たちの運動やスポーツや遊びの中に入っている、それから今後の日常生活の中でも入ってくるというふうなことで、こういったものを考えています。
 もう一つは洗練化ですね。これは、この後御発表される泉委員の資料にもございますが、これは片手の上手投げ。投げるというバリエーションも一杯ありますよね。例えばサッカーのスローインで両手で投げるとか、室伏選手はハンマーをこうやって回して投げますよね。これ全部、投げるです。投げるバリエーションって一杯あるんですけれども、その中でよく子供たちがやる動き、体力テストだとかにも入っていますけれども、片手の上手投げです。最も未熟な段階からだんだんだんだん上手になっていくわけですね。こういうのを洗練化と言っています。この部分というのは今まで余り理解されなかった点です。つまり、子供というのは何かを指導すればすぐうまくなるんだって、これは私は間違っていると思っています。そうではなくて、子供たちは、いろんな経験の中で指導されるというのも一つの経験かもしれませんが、むしろモチベーションを高く持っていくのだったら、とにかくやっていることが面白いとか、何か自分で目当てを見付けるとか、そういったことがすごく大事でして、その中で動きをどんどんどんどんよくしていくと。例えば、体を全くひねらないで放っている段階から上半身をひねってくるとか、あるいはこうやって片足を出してくる。といっても、皆さんのように右手で投げるときに左足を出す子なんて、誰も最初いないんですね。大体子供というのは右足を出す。これがバランスをとれるわけです。そこからだんだん、より遠くに投げたいとか、より正確に投げたいということで動きがどんどん変わっていって、こういうふうに成長した動きになる。つまり、2・3歳から11・12歳までの間におよそこんなふうな方向で子供たちは動きを変えていく。ただ、全員がこうなるとは限りません。私は今、大学に勤めていますので、大学の大学生を見ても、男の子だってこのぐらいの段階で止まってしまう子もいるんですね。でも、その子だって、大学に入ったらそれでもう全部終わりではなくて、動きを変えていくことはできるということになりますし、できれば、この幼少年期、最も動きを身に付けやすい時期に、子供たちが様々な経験の中でこういった動きをうまくしていくということができるということが大事です。
 実はこの持ち越し効果、先ほど成人期以降の運動・スポーツにつながらなきゃいけないと言いましたが、この持ち越し効果って非常に大事ですね。もちろんこれは、体育や保健体育の最終的に目指すところというのは生涯スポーツの推進ですから、そこに結び付くんですけれども、決して学校段階だけで学びや運動を終わらせてはいけないということになります。つまり、子供のときだけスポーツをやって、大人になってからやらないとかではなくて、子供の頃から様々な遊びや運動やスポーツを経験して、それが生涯にわたって生活の中に位置付いていけばいいということになっています。この持ち越し効果の研究っていろいろあるんですけれども、多分、日本で一番このことをされているのは順天堂大学の鈴木広哉先生ですけど、鈴木先生の論文だとか幾つかの海外から出されている論文を見ても、どういう人が生涯、要するに大人になってからでも運動を持ち越しているかというと、あるスポーツをやっていたというのも一つの条件ですけど、それよりもっと強い条件は、面白く、心地よく、自ら学んでいったと。面白く体を動かした。体を動かすと心地よかったという経験を持っている。あるいは自分からやってみた。ですから、つまらなくて、何か自分でも全然感じなくて、あるいは誰かから言われたことをずっと繰り返すような運動は、最も適してないということです。子供たちが大人になってからも運動を続けていくのには、この条件というのは非常に大事になってくる。それが学習指導要領では学びに向かう力とか学び続ける力といいますけれども、我々だと運動に向かう力とか運動をし続ける力につながっていくということで、こういった遊びや運動が大事になってくるということになっています。
 ちょっと2枚写真をお見せしますが、これは、お断りをしてきょう写真を付けたんですけど、萩野矢慶記さんというプロの写真家がいまして、この方の撮った「街から消えた子どもの遊び」という写真が僕は大好きで、ずっと自分で持ち歩いているんですけれども、実はこうやって路地裏でもってボーリングみたいな遊びをしていたんですね。
 例えば、こうやってゴム跳び、ゴム段をしていた女の子もいた。今お見せしている2枚の写真って、どこの子だと思いますか。年代で言うと1980年前後なんですね。東京のど真ん中の子です。実はこれは銀座です。
 1個戻っていただくと、これも中央区の路地裏です。一つの観点としては、何か運動場があって、体育館があって運動するという概念ではなくて、遊びですから、身近なところがすごく大事になります。皆さんも経験したように、多分、道路というのは子供にとっては非常に遊びやすい場所だったんですね。で、これが消えてしまったんですね。消えてしまったというか、消してしまったのは私たち大人でして、「道路で遊んではいけません」という標語を勝手に作っちゃったんですね。危ないから遊んではいけないよと。
 ところが、ちょっときょう御紹介だけになりますけれども、例えばロンドンなんかは、今、ロンドンプレイという、ロンドンオリンピックの後に子供たちを元気にしようということをレガシーとしてやられていますけれども、その中では、要するに車を入れない。子供たちが遊び出したら、車を入れないよという看板があって、それを持ってくるわけですね。そういったこともある。つまり、「道路で遊んではいけない」という標語の裏腹で、子供たちが遊んでいたら車を通してはいけませんよねという。さして難しいことではないと思います。つまり、スクールゾーンという朝の7時から9時は車を入れないんですね。だったら、夕方、プレイゾーンで車を入れないだけの話ですね。さして問題ではないんですね。でも、これはやっぱり我々大人の理解が必要。つまり、我々大人はやっぱりリテラシーを高めていかないといけないということになるかもしれません。
 実はこういうふうに遊んでいた80年代、70年代の後半ぐらいからどんどん日本の子供たちは遊ばなくなってきたんですけれども、これが結果的には10年後、80年代の後半にかけて、例えば体力や運動能力が下がり始めた、あるいは学力もコミュニケーション能力も大体そのぐらいから下がっていっているというふうな結果を導いているということになると思います。
 いろんな国の子供たちの運動ってちょっと書いています。アメリカですと、今、アメリカは比較的、全国大会とかいろんな大会を禁止したり、あるいは州によってちょっと違いますけれども、多くの州がスポーツクラブを3種目以上、鈴木長官の前ですが、例えば水泳とラグビーと陸上と3つそろえて、できるような仕組みを作っているということもあります。イギリスなんかはもうスポーツが完全に文化になっていますから、トレーニングとか練習だけじゃなくて、スポーツを楽しむと。そこでやっぱり、するスポーツだけではなくて、見るスポーツや支えるスポーツという能力も高めていくということになるのかもしれません。ちょっと注目したいのは、イギリスにはプレイ・ワーカーという職業があるんですね。これと同じような名前は、例えばドイツのユーゲントを中心とした、ドイツは地域スポーツが大事ですけど、プレイリーダーと。ちょうど10年前にオーストラリアは、特に低体力とか運動が嫌いな子供の取組として、プレイ・デリバラーというのを養成しています。ですから、今年度、スポーツ庁が養成を始めましたプレイリーダーって非常に大事になってくるということになると思います。こういった国の子供たちの運動・スポーツの様子、遊びの様子なんかも、我々は考えていかなきゃいけないと思っています。
 今度のオリンピックに向けて、レガシーを考えなきゃいけないと思いますが、全ての日本の子供は面白く体を動かす仕組みを作る必要があると思います。だから、運動が好きな子供とか得意な子供とかだけではなくて、例えば幼児とか障害を持つお子さん、先ほどもお話がありましたけれども、あるいは運動が苦手な子や嫌いな子や体力が低い子供、でも、この子供たちは、今、苦手なだけなんですよ。今、嫌いなだけです。何かいい仕組みを作れば、この子供たちがやがて大人になったときに好きになるかもしれない。そして、そのことが子供たちの様々な健康につながっていくということになります。そのためには、先ほどもお話ししましたけれども、子供たちに遊びを届けるプレイリーダーという人が非常に大事になってくると。これが先ほどお話ししたイギリスのプレイ・ワーカーとかドイツのプレイリーダーとか、あるいはオーストラリアのプレイ・デリバラーとかいうところの仕事ですね、中身を考えると、子供たちに遊びを届けるんですね。スポーツは指導してしまうんですけど、指導した瞬間に遊びではなくなってしまいます。ですから、子供たちに遊びを届けるということが大切です。もう一つは、子供たちがその遊びの中でもって成長していくのを見ながら、少しずつ消えていくということが大事です。いつまでもプレイリーダーがいたら、子供の遊び文化として復活できないわけですね。ですから、うまく遊びを届けて、子供たちがそれを面白くのめり込んで自らやる中で、だんだんだんだん大人は手を引いていって。こういった実践をやっている小学校なんかは結構あります。例えば幼稚園で言うと、私、ちょっと関わったんですが、南アルプス市というところで、子供たちにこういったプレイリーダー、保育士さんとか外部指導者がプレイリーダーで入ってやっていったりとか、多分、東京の中では足立小学校というところがこれを早くから取り入れてやられているということになります。
 ここにプレイリーダーとありますけれども、このよく言われる遊びの3つの間ですね、これは時間と空間と仲間がそろっていれば子供たちは遊ぶ。これは本当に10年ぐらい前まで定説でした。遊びの研究というのは、ここにいらっしゃる皆さんのように運動・スポーツの分野の方だけではなくて、例えば建築の方だとか、心理学の方だとか、いろんな方が入ってやっているんですけれども、ずっと遊びの研究者というのは、時間と空間と仲間、実践者もそうです、大事だと言っていましたが、これ、残念ながらうそでしたね。時間と空間と仲間があっても、今、子供は遊ばないんです、これを提供しても。なぜかというと、遊びそのものが消えていってしまっています。もうゴム跳びとか、あるいはボーリングごっこなんていうのは、今の大学生も、ひょっとすると20代、30代も経験してないわけですね。ですから、経験すべきというか、経験することが大切な遊びというのを届けるためのプレイリーダーという人の存在が非常に大事になってくるということになると思います。
 これ、最後ですけれども、最初に豊かな心と健やかな体と話しましたけれども、スポーツ実施率を上げるということが私たちの目標ですけれども、と同時に、実は子供にとっては、この遊びや運動やスポーツという経験はいろんな能力を高めていくということが大事だし、その子供たちが大人になったときに、やはり社会の様々な問題を解決したり、より幸せな人生を送ったりということが必要だと思います。面白く、のめり込む遊びだとか、その中で考えて、大人がぱっと言ってしまうのではなくて、子供自身が考えて、最初、間違えます。間違っていいんです。間違ったことを自分たちで解決していくのが子供です。そういった遊び。それから、例えば生物だとかそういったものと関連するような体験をする遊びとか、それから、遊ぶ中ではけんかもします。マイナスの関わりもありますけれども、それがプラスに転化して、だんだん人に対して優しい気持ちを構築していくということも分かっています。それから、魂の震えというんですね。遊ぶときは、腹を抱えてみんなで笑いまくったわけですね。悔しかったらみんなで大泣きしたわけですよ。こういった経験も大事だと。こういったことを子供たちが段階に応じた遊びや運動やスポーツによってより多く経験していくことが必要だと思っています。
 以上です。どうもありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。熱のこもった説明で、拍手まで出ましたけれども、続きまして、泉委員に御説明をお願いします。
【泉委員】  日本体育協会の泉でございます。日本体育協会では、1964年東京オリンピック、これを契機に、1962年に創設いたしました日本スポーツ少年団を中心に子供を対象とした事業をずっと行ってきております。今、約3万3,000団あります。約90万人の子供たちと指導者が活動している。近年では、子供たちが楽しみながら積極的に体を動かすための指導法として、アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)を制作するとともに、このプログラムを用いて普及・啓発に現在取り組んでおります。きょうは、このACPを中心に子供への取組についてお話をさせていただきますが、実は、私の前にお話をしていただいた中村先生もこのACPの制作者の一人でございますので、報告の中に重複する部分もございますが、御容赦いただきたいと思います。
 このACPを簡単に御説明いたしますと、子供たちが様々な運動遊びを通して、楽しく積極的に体を動かす中で、動きの量と質を引き出すためのプログラムになっております。まずは、2010年に小学校の1年生から4年生を対象にACPを作りました。そして、2015年により低年齢の子供を対象とする幼児期からのACPを作成いたしました。「三つ子の魂百までも」と言いますが、この子供たちの取組が、すぐにスポーツの実施率を上げるという効果はありませんけれども、非常に重要な施策であると認識をいたしております。少年団は今まで小学生を中心とした団体でしたが、今年度より3歳児から登録ができるように低年齢化を図りました。
 幼児を対象とする運動に関するガイドライン、これは、2012年に文部科学省によって幼児期の運動指針が策定されました。その幼児期の運動指針ガイドブックとACPそれぞれの骨子をお示ししております。こちらのプログラムも柱立ては類似しており、これが子供たちを指導する上でのコア、核心でございます。
 このスライドについては、身体活動量と体力の関係のグラフでございます。50メートル走の10歳女子のデータです。10歳の女子全体の平均タイムは9.60秒、そのうち1週間に420分未満、すなわち1日60分未満しか運動していない子供の記録は9.74秒、一方で1日60分以上運動している子供の記録は9.33秒。これは男子においても同様の傾向が見られ、この活動的な子供の記録は1985年の水準に同等するという状況です。子供にとって、毎日合計60分以上の身体活動量を確保することが、体力・運動能力の向上につながるということがうかがえると思います。
 子供と大人の身体活動と健康の関係について示したグラフでございます。先ほどの中村先生からもお話がありましたけれども、子供時代の身体活動は、子供時代の健康に貢献し、Aの矢印の関係ですね。同様に、大人になってからの身体活動は、大人になってからの健康に貢献をする、Bの矢印の関係。さらに、子供時代の身体活動や健康は、大人になってからの身体活動や健康に影響を及ぼしている、C、D、Eの関係と考えられます。子供の頃の身体活動が重要であると十分理解できるかと思います。
 現代の子供は、遊びそのものをあまり知りません。さらには、若い親御さん、あるいは教員も遊びを知らない世代となりつつあります。よく言う、空間、仲間、時間といった「3間」に加え、遊び方そのものを伝えるために手間を掛ける必要がございます。また、家庭でできることとして、お茶の間での会話があります。親子の会話において運動・スポーツのことを話題にするだけで子供の身体活動量に影響を及ぼし、結果として体力テストのスコアが高いという調査結果も報告されております。
 ここで、ACPについて映像をごらんいただきたいと思います。日本体育協会がスポーツ庁、JOC、JSCなどと連携いたしまして、体育の日のイベント、「スポーツ祭り」を開催しておりますが、そのプログラムの一つとして、親子で運動遊び、ACPを体験するプログラムを提供しております。その様子をごらんいただければと思います。
(スライド上映)
 すみません、途中で切らせていただきましたけれども、このスライドについては、大人と子供の学習の仕方の違いを整理したものでございます。この学習の仕方を運動・スポーツへの取り組み方と置き換えてみますと、我々大人の場合には、例えば健康診断で「やせなさい」と言われ、必要に駆られてダイエットをするために、体脂肪を減らすことを意図して、科学的根拠に基づいた体系的あるいは系統的にジョギングなどの有酸素運動を、領域限定的に取り組む、こういったようなことが想定されます。ところが、子供の場合は必ずしもそのとおりとは限りません。大人に対するアプローチが全て子供に通じるわけではないと考える必要がございます。
 運動・スポーツを行うことは、健康・体力のためだけではなく、運動・スポーツをすることが格好いい、楽しいということを子供にアピールしています。すなわち、格好いいとは、スポーツの価値を認める、楽しいとは、運動・スポーツを行うそのものを目的とすることが重要です。
 日本体育協会では、「子どもの身体活動ガイドライン」として、1日にトータルで60分以上、体を動かすことを提案しております。この身体活動とは、スポーツはもちろん、体を使った遊びや掃除などの家の手伝いを含みます。この取組を通じて、単に体力テストの成績を向上させるだけでなく、心身の健康に様々な効果が期待されると思います。
 ここからは、ACPのガイドブックに記載された内容を一部紹介させていただきます。
 ACPでは、幼児期の発達特性として、動きの多様化と洗練化について解説をしております。特に動きの洗練化の過程として、獲得した、できるようになった動きをさらに上手に行うためには、トライ・アンド・エラーの繰り返しが必要となります。
 ある程度その動作を繰り返す必要がございます。また、幼児期における量的な評価は、体の大きさに強く影響を受けます。したがって、発育段階を評価する上では、動きの質を観察する必要があります。
 例えば、躍動動作を評価する際に、従来の量的な、どれだけ跳んだかといった評価だけでなく、どのように跳んだかといった質的な評価観点も持つべきだとしております。
 「幼児期運動指針ガイドブック」にも、同様な観点に基づく動作発達段階の特徴が掲載されております。指導者は、子供たちが遊んでいる様子を観察しながら、この質的評価を行い、まずは発達段階を把握すること、さらに、動きを洗練化させるための適切な働きかけを行う必要がございます。
 そこで、私たちは、動きの質を高める運動プログラムとして遊びの効果に注目しました。
 指導者の役割として、子供が楽しく、夢中になって取り組めるような運動遊びを提供すること、そして遊びながら自然と動作を洗練化させていける環境づくりが求められます。
 そこで、ACPでは、大人が子供に対する指導を通して何を提供するべきかを提案しております。具体的には、様々な運動遊びについて、遊び方の紹介はもちろん、発達段階に応じた遊びの展開例や活用法について解説をしております。
 多くは、特別な道具を必要としない遊び、スキンシップや仲間づくりの効果が期待できる遊び。
 これは「さかなとり」、それから次が「ねことねずみ」、子供たちが夢中になって活発に遊ぶ中で多様な動きを引き出すことができる遊びを紹介しております。
 このように、運動遊びには大きな可能性があります。ただし、万能ではありません。指導を通して何を、すなわちどんな運動遊びを伝えるかということと同じくらい、どのように指導するかが大変重要となります。ACPでは、指導法・指導技術について、この4つの章立てに基づいて詳しく解説をしております。
 1つ目の章立ての見出しだけ紹介させていただきます。これらの観点を意識して指導に臨むことで、子供たちに楽しい体験を提供できるようになると考えております。
 日本体育協会では、ACPの普及啓発に関する取組について紹介いたします。平成22年に小学校低学年から中学生を主な対象とするACPを作成いたしました。そのガイドブックを全国の小学校約2万2,000校と、総合型地域スポーツクラブ約2,900クラブに提供いたしました。それから、3年間にわたりまして、地域のスポーツ指導者や教員などを対象といたしまして、ACPを教材とする普及講習会を全国各地で開催しております。約4,200名が参加しております。また、平成27年度に幼児期からのACPを作成いたしまして、そのガイドブックを全国のスポーツ少年団約3万3,000団へ提供いたしました。あわせて、この年から地域のスポーツ指導者などを対象とする普及講習会を、平成28年度からは各地域で講習会等の普及啓発活動を担う人材を養成するための講習会を開催しております。
 今年度の取組を紹介させていただきます。まず、ACPを知ってもらうための取組として、普及講習会を全国12会場で開催しております。これは平成27年度から継続的に実施をいたしておりまして、3年間で約3,000名の方に参加をいただいております。次に、この普及講習会に参加された指導者の中から、各地域でACPの普及啓発を担う人材を養成するための講習会、これを全国4会場で開催いたしました。平成28年度からの取組で、これまで2年間で約200名の方に参加をいただいております。そして、今年度からは各都道府県体育協会が主体となって行う各地域でのACPの普及啓発活動に対する支援事業にも取り組んでおりまして、23会場で約800名の参加をいただいています。
 また、ACPの実績を応用いたしまして、教育現場への普及啓発にも取り組んでおります。こうした取組によりまして、積極的にスポーツへ関わってこなかった子供たちに対しても、運動・スポーツを習慣化させるためのアプローチが可能となりました。モデル事業では、各地域における運営主体や環境に応じた取組がなされておりまして、現在は、これら各地域における実践事例等を取りまとめているところでございます。さらに、今後、日本体育協会以外の団体が同様な事業を運営する際のマニュアルを作成しております。これら一連の取組によりまして、本年度からの更なる展開が期待されるところです。
 ここで、ACPを用いた実践事例として、島根県における取組を紹介する映像をごらんいただければと思います。
(スライド上映)
 またこれも途中でございましたが、島根県における取組を紹介させていただきました。
 本日の発表の内容を取りまとめさせていただきますと、子供の運動・スポーツ活動の促進のために、幼少期における運動習慣の基盤づくりが大変重要であり、多様な動きを経験すること、運動・スポーツが楽しいという体験をすること、様々な運動遊びに取り組むこと、この3点が重要となります。そのためには、自発的な運動を育むための環境づくり・仕掛けが必要となります。日本体育協会ではACPを核として取組を進めておりますが、まだまだ取組が十分ではありません。子供を対象とした運動・スポーツの促進を進めていく際にも、自発的な運動を育むための環境づくり・仕掛けを念頭に置いた取組を関係団体と連携・協働して推進をしてまいりたいと考えております。
 これ以降のスライドについてはACPの総合サイトの紹介となっておりますので、後刻ごらんいただければと思います。
 以上、私の発表は終わらせていただきます。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  泉委員、ありがとうございました。
 それぞれの発表が終わりましたけれども、冒頭申し上げましたとおり、まずはスポーツ庁から発表いただきました世論調査の結果について、そして障害者向けの取組、子供向けの取組、以上について質疑応答の時間に入りたいと思います。
【津下委員】  あいち健康の森健康科学総合センターの津下と申します。スポーツドクター、医師の立場で今のお話を聞いていました。医療の世界と教育の世界の壁について感じることは、情報がまだまだ十分に伝わってないこともまだまだ多いかなと思いながら伺っていました。私は日本体育協会に関係する仕事もお手伝いしていますので情報は入っている方だとは思いますけれども、一般の医療関係者に対しては、例えば小児科の先生が今のACPの動きをどれだけ知っているんだろうかとか、保健センターの保健師さんはどうなんだろうか、1歳半健診・3歳児健診やっているんだけど、そのときにそういう知識があったらどうなんだろうかなんていうことを思いながら聞いていました。
 それから2点目ですが、親の関心というところで、親も一緒に取り組むことが重要ではないかと思います。私たち(内科医)は親世代のメタボ対策を一生懸命やっているわけです。それから、おじいちゃん、おばあちゃん世代のロコモ対策をやっていますけれども、子供と一緒に遊ぶことが、親の健康にも役立ち、おじいちゃん、おばあちゃんも楽しいと感じることができます。親と子供が遊ぶことは子供のためだけではないと思います。そういう観点でプレイリーダーの方が子供の運動習慣獲得に関わっていらっしゃいますけど、でも、物理的にスポット的な関わりにならざるを得ないので、子供の周りの親やおじいちゃん、おばあちゃんとか、それから子どもの周りにいる方々へのプレイリーダーのアプローチというのはどんな状態になっているのかなと思いました。
 それから3点目なんですけど、高校まではすごくスポーツを一生懸命やっていますけど、20代、30代になると、スポーツ庁の実施率の調査でもガクンと落ちます。スポーツをやめてしまうというフェーズについて、やめなくてもすむように何らかしっかりとアプローチができないんだろうかと思いますが。例えば高校生アスリートでも、卒業前には「引退します」と言って、それからぷっつりやめう。その結果ぶくぶく太ってしまうという現状がありますが、スポーツとの別れ方がうまくないんじゃないかと。競技スポーツの方々のフェードアウトの仕方に工夫ができないか。内科医としては非常に問題意識を持っていて、スポーツをやめてしまってから太って糖尿病とかいろんな病気を持ってくる方が多いと思います。
 それから最後に、スポーツ実施率のデータをお示しいただきました。確かにウォーキングを含めて上がったということなんですけれども、よく見ると、水泳とか登山、トレッキング、いわゆるスポーツというものは若干減っているように思うんですけど、この辺りは、ウォーキングが増えれば運動としてはいいのなというふうに捉えるのでよいんでしょうか。様々な多様な大人が実施しているスポーツの実施率が軒並み若干減っているように見受けられますけれども、これについては今後意識をしていかなくてもいいのかどうなのか、ここは事務局に対して質問したいなと思っていることです。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。大局的に実施率のところからお答えいただいて、それで、最初あった3点、連携とかプレイリーダーとかフェードアウトの話もありましたけど、ここは障害者の説明をいただきました藤田委員、あるいは中村委員、さらには泉委員にお答えできるところをしていただきましょうか。
【安達健康スポーツ課長】  健康スポーツ課でございます。
 今回、実施率が上がったということですけど、先ほど内訳を言いましたが、かなりウォーキングの寄与が大きいということと、意外と高齢の方よりも若手の方もウォーキングに参画いただいているなということでございます。委員おっしゃるように多様なスポーツということで、先ほど申しましたけど、新たにスポーツを実施した中でかなりウォーキングが大きくて、ウォーキングが少し運動のきっかけづくりになって、次の様々なスポーツに取り組んでいただければなと思います。そういった形で是非習慣化という面でも取り組んでいきたいと思いますし、あと、若手の、先ほど20代でスポーツ実施率ががたっと落ちるというところも、今後、行動計画の中でどういうふうに訴えかけていくというのは、まさにこの部会の中でもまた御議論いただきたいと思います。
【渡邉部会長】  安達課長への補足というか、支援も含めまして、藤田委員、中村委員、泉委員、津下委員にお答えいただければと思います。
【藤田委員】  障害のある人のスポーツ実施率を上げていくというのは、正に連携が必要なんですね。例えば発達障害のお子さんであるとか、あるいは知的障害のお子さんであるとか、保健所等通う中で見つけていって、その後、おそらく普通であればスポーツの世界にみんな入っていく、あるいは競技の世界に入っていくんですけれども、障害のあるお子さんたちは福祉とか医療の世界に残るんですね。そこにいる人たちが、スポーツとか運動の仕方があるとか、そういったところのノウハウであるとか指導法をやはり十分御存じでなかったりとかというところがあるので、医療関係者、コメディカルも含めて、どういうふうにこの子たちの将来の運動実施につなげていってあげられるかという視点を持っていただけると非常にいいなと。中村先生のお話であった、ちょうど3歳、4歳、5歳、6歳の辺りが、先天的な障害のある人もすぽんと抜けて、そこはリハビリ、リハビリで、嫌なことをやらざるを得ないような状況でスポーツ嫌いを作っていってしまうような状況もありますので、そういう視点を医療関係者の方も持っていただけると、連携できると非常にいいのかなと思いました。
【渡邉部会長】  中村委員、いかがでしょう。
【中村委員】  まず、プレイリーダーのことに関してですけれども、プレイリーダー、さっき私は、遊びを届けて、そして子供たちの中で遊びが充足してきたら少し手を抜いていくという話をして、子供たちが遊びを主体的にやるようにという話をしたんですけれども、プレイリーダーという言葉を調べたんですけど、これ、ちょっと余談になるかもしれないですが、一番最初に日本で使ったのはどこかって、日比谷公園でしたね。実は日比谷公園には遊戯指導員という方が戦前いたんですね。そこは子供たちの遊びをうまく先導していた人がいた。ただ、近年、このプレイリーダーという言葉が大きく広まったのは冒険遊び場ですね。特に世田谷区の羽根木を中心に冒険遊び場の方々がこのプレイリーダーのことを日本では研究されたり、あるいはドイツやイギリスのプレイリーダー、プレイ・ワーカーの仕組みを導入したりということをやっていますが、日比谷公園の遊戯指導者や冒険遊び場のプレイリーダーの人たちの研究していった、実践していった蓄積を見ると、その中に必ず出てくるのが、子供の本当の気持ちを親に伝えるということなんですね。これはすごく大事なことになっています。
 実は、子供と一緒に親は遊ぶだろうって、子供と一緒に遊ぶことを面白いとか楽しいと思うだろうって思いますよね。でも、最近、それは違うと思います。子供と遊びたくない親が一杯います。子供と遊ぶなんて面倒くさいとか、疲れているから、私はそれは専門の人に任せて、特別なスポーツをやったりとかやっていればいいというふうな親がすごく増えてきている。親子遊びの会を僕らもやりますけれども、かなりしつこく「一緒にやりましょう」って言わないと、親はずっと遠巻きで見ているだけですね。もうそういう習慣ができてしまっているというふうなことも問題なのかなと思います。多分これは吉田先生の方が詳しいいろんなデータをお持ちなので、後でちょっとお話しいただければと思いますが。
 もう一つ、さっき引退とおっしゃいましたけれども、私もすごくずっと思っていた、これ、友添先生の御領域ですが、何で中学校の運動部とか高校の運動部が総体とかインターハイが終わったら引退するんだろうって。これ、引退って言葉がおかしい。引退してしまうと実施率下がちゃうわけですよね。引退というか、要するに、競技的な志向のクラブ、部活が終わって、その後、何かしら継続できるような、それはやりたいわけですよね、本当は。だから、それを完全にもう終わりだよというのではなくて、そこを継続していく仕組みを作っていくということと、やはり子供の頃、幼少年期というか、小さな子供の頃は遊びを中心にやって、それがすぱんとスポーツに特化してしまって、そしてまた、データを見させていただくと、どうしても日常的なウォーキングだとかそういったものが増えていきますよね。ということは、要するに、そういったことを志向している子供がいても不思議ではない。つまり、競技を志向しないというか、いろんなスポーツを、競技ではないけれども、面白くやってみたいとかいう。ちょっと外れるかもしれませんが、大学なんかでは今、競技のサッカー部というのは、うちなんか小さい大学ですから、ほとんどもう廃部に近いんですけれども、フットサルクラブというのは50ぐらいあるんですね。それは、楽しく週に1回、体を動かして、ちょっとみんなでおいしいもの食べていこうと。そういう楽しみを一つ持って、そういった仕組みも大事じゃないかなと。だから、多分、友添先生なんかがすごく一生懸命検討された部活の在り方の中でも、例えば総合的な運動部だとか、私は、運動部に入ってなくて、ブラバンをやっていたので文系なんですけど、でも、週に1回はサッカー部の連中とサッカーやったんですね。そういう、運動部、文化部、帰宅部という大人が完璧に分けてしまうわけじゃなくて、文化部の子だって週に1回ぐらいは運動していいような仕組みだとか、あるいは、ふだんは運動していない子供だってやりたいときはやっていいよというふうな、ちょっとそういった仕組みを青少年期というんですかね、いうところにも作っていくことというのは、この後、必要なのかなと。つまり、そこはうまくつないでいくことも大事だと。競技を志向しない子供たちが大人になっても運動を面白く感じるような、つなぎの部分というのをやっぱり見詰めていく必要があるのかなと思っています。
【渡邉部会長】  泉委員、いかがでしょう。
【泉委員】  御指摘いただいた件はよく理解をしておりますが、このACPの普及のところでは、先程もお話ししましたけれども、普及支援をこれからやっていこうという中で、家庭にどうやって浸透させていくか。私も、体育の日のところで一緒に「大根抜き」を体験させていただきましたが、結構面白いですね。じわっと汗かいて、子供たちが真剣になってやっているのを見ると本当にほほ笑ましいなと感じます。
 それからまた、家庭の中での身体活動、1日60分を目安にさせるためには、やっぱり仕掛けが必要なのかなということで、支援策の中で、今後、日本体育協会としてもしっかり考えていきたいなと思っております。
 あと、鈴木長官と一緒に水泳連盟の仕事をずっとしておりますけれども、選手でずっと泳いでいた人たちも、中学から高校、高校から大学へ変わるときに、多くの選手がやめていくんですね。これはやはり、水泳の場合には10歳以下から選手として泳いでいるというのが非常に多くて、逆に言うと、やらせられているといいますか、燃えつき症候群といいますかね、要は、スポーツの楽しさがうまく理解できてなくて、やらされているというところに大きな課題があるのかなと思っております。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。先ほど島根県の例が出ましたけれども、やはり県で考えたときには、各部局横断的に、先生が携わっているような部局も含めて、知識・情報・経験、こういったものが共有できるような仕組みを作っていかないいけません。そして、具体的なお話を医療関係者などにも御理解いただいて、いろんな形で推進していく体制を作らなければ子供のみならず全体の実施率の向上にもつながらないと思います。
【友添委員】  藤田先生にお尋ねしておきたいのは、この6ページ目のところで、情報共有とか連携・受入体制の整備促進のためにということで幾つか御提案いただいていて、これ、我々の間、つまり、体育・スポーツの専門家の間ではではかなり共有できているものだと思っています。ところが、例えばじゃあこの中のプライオリティーは一体どれが優先する課題なのか、どの問題が実は一番障害者スポーツ推進に必要なのかというところになると、やっぱりそれぞればらばらな意見になってくる。その辺りはどうお考えになられているのかという点をお伺いさせていただければと思います。実は1次課題より、その背後にある2次課題の方が大きかったり、その2次課題の後ろにある3次課題の方が、あるいは関連した課題の方がもっと大きい場面がやっぱり多くあると思うんです。教免法の問題を考えても、小学校教員養成と中学校、高校の教員養成を国大協のレベルで考えても、教科内容に必修化する、障害者スポーツという科目を必修化するというのは、現実にはかなり難しいだろうと思うところがあります。というのも、教育学部の保健体育学科では、各専攻別に別れてくると、保健体育を専攻するのは1学年当たり10名から20名程度だと思います。そういう状況で教科内容論に障害者スポーツを必修にするというのは、コストパフォーマンスを考えるとやはり難しいと思います。じゃあ幾つかの大学で共通にコンソーシアムを創ってやるというようなアイデアが必要になってくるように思います。そういう意味で、何をプライオリティーとして優先されているのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
 それと、中村先生には、中村先生の御発表は非常に参考になって、また、ハッとしたことも随分あったんですけれども、2ページ目ですか、スライドで言うと3つ目の身体運動の発達、技能・運動能力の運動・スポーツの図のところですが、これ、いわゆる教育目標のタキソノミーですよね。つまり、ブルームの目標構造論から引っ張ってきているようにも思うのですが、我々、実はみんなこれでやってきたんだけれど、実はブルームって運動学習については全く触れてないように思います。ところが、これは、いわゆる座学などの認知学習にとっては非常に有効な枠組みなのかもわからないけど、運動学習の場合、なかなかこれではうまくいかない場面が出てくるのではないか。つまり、これまでも随分子供の運動の動作の発達研究をやってきたんだけど、楽しさの発達とか、面白さの発達段階がやっぱりこれに加わった方がいいんじゃないのかと思います。むしろ、それが明らかになって初めて子供の運動促進とか運動推進がより図られていくのではないかと思います。今までの研究者ってあまりそこのところを言ってこなかったんだけど、認知でもない、あるいは技能でもない、あるいはもちろんソーシャリティーでもない。むしろ、楽しさとか面白さの発達段階を考慮に入れるべきだと思うのですが、発育・発達学の立場からはどうお考えになられるのかをお尋ねしたいと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。
 まず、藤田委員からお願いします。
【藤田委員】  プライオリティーがどこにあるかということなんですけれども、今、滞っている障害のある人のスポーツに関する様々な情報を滞らせないということが大事なんですね。そのためには、連携していくべきところは連携していかなきゃいけないだろうし、それから学校の中でもということなので、どういう手段で最終的に障害のある人自身、あるいは一番影響力のある子供時代であれば親にそういう情報を提供していくか、オープンにするかということが大事だと考えているんですね。ですから、どれをプライオリティーというか、そうするために必要な手だてはもう何でも、特に地域においてはやれることはその状況によって様々なんですね。この町ではこれができるけれども、こっちの市ではこれができない、そういう状況が本当多様な状況がありますので、まず情報が滞っている原因をその都道府県なり市町村なりでどこに情報が滞っているか、そこの滞りをなくすために何をしていくか。先ほど、裏のというふうな、2次的なというようなことをおっしゃいまして、そのために一番やっぱりネックになっているのは行政の縦割りなんですね。私の住んでいるところでも、障害者スポーツのSpecialプロジェクトのことを手挙げてもらおうと思って行くと、教育委員会の保健体育課、それから特別支援学校の課、それから障害福祉課、3つにそれぞれ説明していって、昨年、1年前にやったんですけれども、結局、どこも手を挙げてくれなかったという状況があって、そこがつながってくれると本当は一番早いと私は思っています。
 学校に関して、必修化に関しては、とはいえ、体育教員になって一番最初に行く学校が特別支援学校であったりとかという方はかなり多いんですね。国立大に関しては4分の1ぐらいしか、今、授業を設定してないんですが、全体で見ると約半分の大学ではもう既に授業自体をやっているんですね。今、友添先生がおっしゃったように、連携を大学院であるとか単位の共有化というところも含めて考えていく必要はあるかと思うんですけれども、そういう子供にとっても不幸なこと、教員にとってもどう教えていいか分からない不幸なことということが起こっている状況をなくしていくには、必修化というのは一つの手じゃないかなと私は考えています。
【増子委員】  現場の指導員で特別支援学校の先生でスポーツを積極的に教えていらっしゃる方というのは、体育の先生というよりは、小学部の社会の先生だったり、そういった教科に関係のない先生が非常に多いです。先ほど藤田委員からお話がありましたように、体育の先生というのは特技があって、例えば国体の選手でバスケットボールが得意で教員課程に入ってきて、講師の段階で特別支援学校で講師を務めていて、その期間は知的障害者のバスケットボールのチームがすごく強くなってというようなことがあります。で、教員採用試験を受かった後に一般の県立高校のところに採用されますので、そうすると一般の学校若しくは県のそういった協会の方の活動も引き続き行うので、支援学校でやってきたような活動が継続できないといったような状況もあります。ですので、体育の教員も含めて、そういった体育の先生でない方でも、先ほどの保育の先生が指導を受けて子供たちに教えられるようなスキルは、教員の方、教員養成課程の方は皆さん持っていらっしゃると思うので、そういった教科に限定しない教員課程の中でも障害者スポーツを皆さんが必修科目として学んでいただけたら、現場で障害児がいた場合に対応できるのかなと思っています。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。学校経営全体に関わる話なので、必修化は是非必要ではないかといった意見だったと思います。
 中村委員、お願いします。
【中村委員】  今、友添先生がおっしゃったブルームをベースにした、我々はよく発育・発達とかの仲間は使うんですが、ギャラヒューという学者がいまして、彼の理論を和訳したものなんですけれども、ここの図で言いたかったことは、要は、どうしても運動・スポーツというと技能とか運動能力に目が行きがちなんだけれども、そうではなくて、子供たちが思考したり判断したり、あるいは関わったりということをやっぱり念頭に置いた指導が大事なんだというところのために使っています。友添先生から今いいヒントをいただいたので。ただ、ちょっと私、こだわっているのは、楽しいという言葉と面白いという言葉、違うと思っているんですね。私は、どちらかというと面白い、面白いからやりたくなるからのめり込んでいくというところの段階みたいなものを是非、できれば友添先生、共同研究でやっていただきたいなと思っています。ありがとうございました。
【久野委員】  すみません、筑波大の久野です。中村先生に教えていただきたいのですが、子供も含めて一定の成果を出していくという観点で政策を考えますと、その原因を究明しないと、対策が打てないと思います。きょうのお話の中で、どうあるべきかという考え方に関しては非常によく理解ができましたが、子供たちがスポーツや運動をしなくなった原因を今どの程度つかまえておられるのか、もう少し具体的に教えていただくともっとヒントが見えてくるような気がします。前回、私は、中高年についてプレゼンさせていただきましたが、例えば中高年には、いわゆる無関心層が7割ぐらいいて、その方々は、健康情報やスポーツ情報にアクセスしないので、行動が変わるはずがない。つまり、分かっていてやらないんじゃなくて、分かってないんじゃないかという仮説が出ました。であれば、例えばリテラシーを上げていくような、無関心層に健康・スポーツの情報をどう届ければいいかということを考えようとか、そういう策が生まれてくると思うんです。それに対して、じゃあ子供がリテラシーが低いからやらないのかというと、多分そうでもないと思っていて、子供たちがスポーツや運動をしなくなった原因を示していただく必要があるんじゃないかなと。きつい質問ですが、よろしくお願いいたします。
【中村委員】  これこそ原因だというのが明確になっているかというと、そうじゃないと思いますね。だけれども、例えば、今、幼児期だとか、あるいは少年期の子供の周りにいる大人が考えていることということは、非常にリテラシーが低いと思っています。輪をかけて、例えば幼稚園、保育園でも、特定のスポーツの指導者が入ってきて、それをやるだけで遊びの代わりにしてしまうわけですね。そういう意味でいうと、そういったところをきちんと、保育をしている方、幼稚園教育も含めて、あるいは小学校の先生が理解しなきゃいけないし、そのまたバックにいるのは親なので、やはり親のリテラシーを高めていくということが非常に大事とは思っています。そこをどうやって今後改善していくかということが非常に大きなポイントになるかと思いますね。
 1つは、ちょっと親に行く前の指導者というか、子供たちに運動・スポーツを指導していく人たちに対して、日本と、例えば私、ドイツとオーストラリアが、今のプレイリーダーとかデリバラーの関係で行かせていただいたんですが、大きく違うところは、学校体育でやっていることと連携をとろうとしている。学校の体育ではこんなふうなカリキュラムでやっているということを念頭に置いた上でもって、地域のスポーツ指導をしているというところは、今、日本と大きく違う。簡単に言うと、例えばスポーツ指導者の方、スポーツ少年団の指導者の方も含めて、今、学校で子供たちがこういうふうに体育を学んでいるということをある程度、概要でいいから知ってほしいんですね。だからこそ、単一スポーツではなくていろんなスポーツを行っていくことが大事。その中からだんだん競技に向かう子もいれば、そうじゃない子も出てくるから、それによって自主性を高めていくことも大事だなというふうなところがやっぱり今後の課題なのかなと。あまりいい回答ではありませんが、以上です。
【吉田委員】   久野先生のお話に関連してですけれども、私たちは幼児に関して、幼児の運動能力が小学生と同じように低下しているということで、なぜそういった低下が起こるのかということを構造的に考えて、運動能力の発達との関係を見たりしています。その中で、やはり直接的には運動経験が関係しています。つまり、どれくらい体を動かしたかというようなことが直接的な要因として関係しています。ただし、運動発達に対しては、間接的な要因として位置付けられる、つまり運動経験に影響を与える要因として、物理的環境とか、親や保育者の心理社会的な環境が関係しているということが、運動能力との関係では示されています。
 例えば物理的な環境で言えば、徒歩通園する子の方がバス通園する子よりも運動能力が高いとか、集合住宅に住んでいる子よりも一戸建てに住んでいる子の方が運動能力が高いとか、集合住宅でも高層階より低層階の子の方が運動能力が高いとか、でも、じゃあおうちを一戸建てに住み替えましょうというような提案はもちろんできないので、そういったときに、そういう地域に置かれている例えば園とか親に対して、そういう状況にあるんだということを知らせながら、なるべく子供が動けるような工夫をというような提案をしていくというようなことが一つ考えられるかなと思います。
 それから、心理社会的な環境要因で言うと、親の、先程も最初の調査報告のところでも、スポーツの価値を高く持っている方が実施率が高いというような報告があったと思いますけれども、親がどういった価値を持っているかということが子供の運動経験に影響してくるので、そういった意味では、先程もお話が出ていましたけれども、親のリテラシーをどういうふうに高めていくかというようなことも考えていく必要があると思います。例えば、親に「幼稚園から歩いて登園しましょう」、「してください」と言っても、近くてもなかなか歩いて来なくて、自転車に子供を乗っけて自分は一生懸命運動して来るんだけど、子供は全く歩かないというような状況があったりします。でも、そういった園からの発信を繰り返していると、やっぱり歩いて親子で登園するってすごくいいねというふうに気付く親も中には出てくるんですね。そういったところで、親の価値観であるとか認識であるとか行動が変容していくということはあるんじゃないかと思います。

【渡邉部会長】  ありがとうございます。
 それでは、(5)の総合型地域スポーツクラブに関する実態調査の結果についてお願いしたいと思います。
【安達健康スポーツ課長】  総合型地域スポーツクラブの実態につきましては、毎年、調査をしておりまして、本日、取りまとまった結果につきましてスポーツ庁のホームページにても公表する予定です。
 1ページですけれども、現在、3,580のクラブが、市町村でいくと80.9%の市町村に設置をされております。
 3ページ、活動状況でございますけど、会員規模別を見ていただくと、規模がバラエティーに富んでいます。1人から100名のところもあれば、1,000名以上のところもございます。実施状況を見ると、卓球、バドミントン、サッカーなどが多く実施されています。カラフルな棒グラフですけれども、会員を年代別で見てみると、本当に小学生から高齢者の方までかなり多世代の方が参加している様子はうかがえます。下で見てみますと、6種類以上ですとか11種目以上ですか、かなり多種目で実施をされているところもごらんになれます。
 5ページ、いろいろ特徴あるところがありますけれども、左側、学校との連携というところで、総合型クラブは、「学校行事への協力」のほか、「部活動の代替として実施」14.2%、「学校への外部指導者への派遣」10.6%、こういった状況が今ごらんになれます。右側は、障害者の方の参加ということで、現在では35.2%のクラブで受入れ実績があるということで、下の棒グラフを見てみますと、プログラム・イベント等にいろんな配慮をしながら健常者の方と一緒に活動している様子もうかがえます。
 最後に8ページ、総合型クラブの課題ということで、財政的な問題でございます。上の四角にございますけど、自己財源率が5割以上のクラブは67%、これは平成17年よりはかなり改善されていますけれども、自己財源率の確保が問題になっています。自己財源以外となりますと、例えば補助金ですとか、そういったものがございます。右のクラブの予算を見ていただくと、予算の分布も二極化しておりまして、非常に少ない予算でやっているところから、かなり大きな予算でやっているところも、二極化しております。
 あと、9ページ、やはり人材の問題もございまして、水色の棒グラフがございますけど、「クラブを担う人材の世代交代・後継者」の問題を72%のクラブが、あるいは「指導者の確保」を55.8%のクラブが課題としております。下の棒グラフにございますけど、総合型クラブで大体平均して19名のクラブスポーツ指導者を使っているということですから、こういった方の手当ですとか人材の確保をどうするかというふうな問題もあると思います。
 ちょっと説明をはしょりましたけど、また次回以降の御参考に頂ければと思います。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。本日の議題に関してはこれで一通り終わりました。
 最後に、鈴木長官からコメントをいただきます。
【鈴木スポーツ庁長官】  皆さん、渡邉部会長をはじめ、全国から委員の方が本日お集まりいただきまして、熱い議論を交わしていただき、誠にありがとうございます。
 最後は何か学会発表の質疑応答みたいになって、かなり盛り上がってまいりましたけれども、平昌オリンピックでは、大変日本の選手が活躍をしてくれまして、感動や希望を我々に届けてくれたということで、今、ちまたでは非常に平昌あるいは東京マラソンの話までありまして、スポーツの話題で盛り上がっています。こういう機運を我々は利用してといいますか、この機運に乗じて、スポーツの参画人口、「する」、「みる」、「ささえる」をこれからも増やしていくということであります。
 そうした中で、本日、スポーツ実施率の話がありましたけれども、昨年42.5%だったものが51.5%まで上がってきたということで、大変いい傾向が見られているということで、目標である65%に達成するように、我々、引き続き努力してまいりたいと思っています。ただ、この65%はゴールではないんですね。65%に行くことで、その過程で、いろんなスポーツビジネスも含めて、地方創生だったり、あるいは国民が健康になって、そして活力ある国になるということが目標でありますし、さらに言うと、いろんな形でスポーツの価値を上げていくというのが我々の目標でもあるわけであります。
 ということで、この健康スポーツ部会も今回が第3回ということなんですが、今後行動計画の調整に入ってくるかと思いますが、引き続き委員の皆様には御協力賜りたくお願い申し上げて、私からの挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。よろしくお願いします。
【渡邉部会長】  鈴木長官、ありがとうございました。
 それでは、事務局より今後の予定について御説明いただきたいと思います。
【安達健康スポーツ課長】  本日はありがとうございました。本日いただきました御意見につきましては、事務局でまとめさせていただきます。次回の日程につきましては、また事務局より御連絡させていただきます。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。
 いろんな質疑応答がありまして、鈴木長官からお話があったように、学会的な要素も多少ありましたけど、こういった議論をやっぱり積み重ねていくことが大事なのだと思います。先程スポーツ実施率が上がった報告書がありました。ウォーキングだけが引っ張っているように見えると、津下委員からお話がありましたが、中身についての議論が必要なのかもしれません。そういった話を踏まえながら、これからの中間まとめ、さらに1年後になりますが、最終的な取りまとめに向けて作業を進めていきたいと思います。
 それでは、第3回健康スポーツ部会をこれにて閉会いたします。ありがとうございました。

―― 了 ―

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