冬山登山の事故防止について(通知)

                                                        29ス庁第459号
                                                        平成29年12月1日


各都道府県知事
各指定都市市長
各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各国公私立大学長
各国公私立高等専門学校長  殿
構造改革特別区域法第12条1項の 
 認定を受けた各地方公共団体の長
公益社団法人日本山岳・ 
 スポーツクライミング協会会長
公益財団法人全国高等学校体育連盟会長

                                           スポーツ庁次長
                                                    今里  讓
                                                   


                                                                  (印影印刷)

                      冬山登山の事故防止について(通知)


 登山事故の防止については、例年関係方面の御協力をいただいているところですが、本年3月に栃木県那須町において発生した雪崩に伴い高等学校の生徒7名及び引率教員1名が亡くなるという事故を受けて、スポーツ庁では、本年9月に「高校生等の冬山・春山登山の事故防止のための有識者会議」を設置し、高校生(中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部を含む。)及び高等専門学校第1学年から第3学年までに属する生徒(以下、「高校生等」という。)の冬山登山の事故防止のための方策について、専門的な観点から検討を依頼し、本年11月28日、別紙1のとおり、報告書をとりまとめていただきました。
  本報告書では、冬山登山は遭難事故の発生の可能性がある非常に厳しい環境下で行われる活動であることから、高校生等は、引き続き、原則として冬山登山は禁止とし、例外的に実施する場合には、豊富な知識と経験を有する指導者が必要であることはもとより、計画の事前審査を行うなど万全の安全対策が不可決であると改めて確認されるとともに、今後の事故防止のための方策について具体的に提案されました。
 スポーツ庁としては、本報告書を踏まえ、今後さらに施策の充実に取り組むこととしており、貴職におかれましても、別紙1を参考にしながら、高校生等については、下記のとおり原則として冬山登山は行わないよう、引き続き御指導願います。
 また、近年、一般の冬山登山者は年々増加し、冬山における山岳遭難発生件数は増加傾向にあります。さらに、火山には、噴気や火山ガスが発生している危険な場所があり、登山する山が火山の場合には、気象庁や各都道府県等が発表している最新の情報を入手し、十分に注意する必要があります。
 ついては、別紙2「冬山登山の警告」を関係機関・団体及び関係者に周知するとともに、密接な協力の下、この趣旨を登山者に周知徹底され、事故防止に万全を期されるよう御配慮願います。
 このことについて、都道府県知事におかれては、所管の関係部局・機関・団体及び高等学校(中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部を含む。)に対して、都道府県・指定都市教育委員会教育長におかれては、所管の関係部局・機関・団体及び高等学校(中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部を含む。)並びに域内の市区町村教育委員会に対して、株式会社立高等学校を認定した地方公共団体の長におかれては、認可した高等学校に対して周知願います。
 また、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会及び公益財団法人全国高等学校体育連盟におかれては、各都道府県加盟団体等に周知するとともに、当該団体等において事故防止に係る積極的な取組が行われるよう御協力願います。



1.高校生等の冬山登山の原則禁止
  高校生等については、総合的な登山経験が不足しているだけでなく、厳しい環境での登山における技術、体力、リスクマネジメント能力等が不十分であるため、冬山における安全を確保することは極めて難しいので、原則として冬山登山は行わないこと。
  冬山登山とは、主に積雪期における登山とするが、時期に関わらず、気温の変化や降雪・積雪等の気象条件による凍結、吹雪、雪崩等に伴う転滑落、埋没、凍傷、低体温症などにより、遭難事故等が発生する可能性のある環境下で行う活動のことをいう。
  なお、これには、各都道府県高等学校体育連盟(以下、「都道府県高体連」という。)が主催する登山や登山に関する講習会等を含み、スキー場のコース内におけるスノースポーツ(*)を除く。
  (*)スノースポーツとは、スキー、スノーボード、チェアスキーその他の雪上のスポーツや遊びのこと

2.高校生等が例外的に冬山登山を実施する場合の条件及び留意点等
    高校生等の登山の教育的意義の観点から、例外的に冬山登山を実施する場合には、次に掲げる実施するために必要な条件等を整えること。また、実施に当たっては、別紙1の「高校生等の冬山登山の事故防止のための方策について(平成29年11月28日、高校生等の冬山・春山登山の事故防止のための有識者会議)」を踏まえること。

【実施するために必要な条件等】

  (1)適切かつ安全な場所での基礎的な内容にとどめること
     活動場所については、冬山登山の獲得目標を踏まえ、そのために適切な場所であるかを十分に複数で検討すること。その上で時期、気象状況、地形、斜度、積雪量、参加生徒と指導者の技量やバックアップ体制の充実程度などから選定すること。また、活動内容は安全登山のための基礎的な内容であり、登頂を目的とはせずに、歩行技術(歩き方、ラッセル等)や生活技術(幕営、炊事等)等の習得を目的とする活動とすること
   
  (2)指導者の条件を整えること
   冬山登山の実施に当たっては、必ず複数の指導者の引率体制とし、少なくとも1人(リーダー)は、冬山のような厳しい環境下での登山について豊富な知識と経験を有する者であり、山岳に係る資格を有していることが望ましい。なお、資格に準じるものとしては、国立登山研修所又は各都道府県が主催する研修会の履修とともに、一定の難易度以上の積雪期登山のリーダー経験を有し、継続的に活動していることが望ましい。
   また、リーダー以外の引率者においても、登山に係る研修会・講習会に積極的かつ継続的に参加するなど、自ら資質向上に努めること。
 
 (3)登山計画審査会(仮称)の事前審査を受けること
    冬山登山を実施する高等学校(中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部を含む。)及び高等専門学校(以下「高等学校等」という。)又は都道府県高体連等は、事前に登山計画(活動目的、活動場所(山域、ルート)、活動内容、参加生徒等の活動経験、引率者・指導者の体制と資質、装備内容、荒天時の対策、緊急時の対策等)を作成し、各都道府県において設置する登山計画を審査する組織(登山計画審査会(仮称))の審査を受けるものとする。なお、審査対象としては、都道府県高体連が主催する講習会等も含めること。
    各都道府県教育委員会、各都道府県私立学校主管部局及び都道府県高体連は、各機関が連携して地元の登山の専門家など外部有識者を含めた登山計画審査会(仮称)を設け、高等学校等又は都道府県高体連等が実施する冬山登山の登山計画を総合的に審査し、必要に応じて改善を指示すること。なお、これを通じて、登山指導者の育成を図ること。
    また、各国公立大学法人附属、市町村立及び株式会社立の高等学校等においては、高校生等が参加する登山計画について、所在する都道府県の教育委員会、私立学校主管部局及び県高体連等と連携するなどして、地元の山岳関係団体や登山専門家の助言を求めること。
 
  (4)校長及び保護者の了解を得ること
    冬山登山の登山計画を作成する者(部活動顧問教員又は都道府県高体連の関係者等)は、適切な獲得目標を設定し、必ず事前に可能性のある行動範囲と行動内容、荒天時の変更案などを盛り込んだ登山計画等を示し、参加する高校生等の校長及び保護者の了解を得ること。
 
  (5)生徒への事前指導等を実施すること
    各高等学校等において、登山部の指導者は登山計画の内容、留意すべき点、持ち物等について確認するとともに、考えられるリスク(危険)や対策等についても事前に指導しておくこと。併せて日頃の部活動の中で、冬山登山に必要な基礎的な知識、技術等に加えて、冬山登山の多様なリスクや安全確保についても指導しておくこと。

  なお、高等学校等や都道府県高体連以外の団体が主催する高校生等以下が参加する冬山登山についても上記に準じて実施すること。

3.高校登山部指導者の質の向上等について
    高校生等の冬山登山を安全に実施するためには、冬山登山の活動中において部活動顧問教員等の指導者が気象条件等を踏まえて適切に判断することが必要であり、そのためには指導者各々の質の向上に取り組まなければならないことから、登山部を設置する高等学校等の校長、学校の設置者又は各自治体の関係者においては、部活動顧問教員等の指導者の研修機会を確保するとともに、研修会への参加に配慮を行うこと。


(本件担当)
 【一般の登山に関すること】
  スポーツ庁健康スポーツ課 (内線 3939)
 【運動部活動・学校行事に関すること】
  スポーツ庁政策課学校体育室(内線 3777)
 電話 03-5253-4111(代表)

お問合せ先

スポーツ庁健康スポーツ課

電話番号:03-5253-4111(内線3939)

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(スポーツ庁健康スポーツ課)