Contents 桐山零役 : 河西健吾

TVアニメ「3月のライオン」の第1シリーズを終えて、どのような反響がありましたか?

一番の反響は、家族や親戚からありました。昔から仲良くしていた親戚も、僕がこういう仕事に就いていること自体は知っていても、普段から連絡をとるということはないのですが、最近、「3月のライオン」などの作品に出演させていただいたことで、「ファンの子がいるからサインをくれないか」といった連絡がありました(笑)。やはり全国で視聴できるNHKの番組に出演することの影響力はすごいのだなと感じました。

家族や親戚からの反響がすごかったということですね。友達や声優の先輩方の反応はどうでしたか?

先輩などからは、第1シリーズが始まる前に、桐山零君役に決まったことを祝福されました。

中学校や高校の友達からは、「『3月のライオン』観てるよ」とか、「こっちに帰ってきたら一緒に飲もうな」とか、そういった連絡をもらうようになりました。

今後、ますます様々な方からの応援が多くなりそうですね。
さて、10月からいよいよ第2シリーズが始まりましたが、第2シリーズを迎えるに当たりどのような心境でしたか?

本作は、原作に忠実にお話を作っているので、ひなちゃんがいじめられる場面は絶対にやるだろうと思っていましたが、そのアフレコの現場は、ものすごくしんどくなりそうだなという予感だけはありました。

実際に収録した話の中でも、ひなちゃんを演じる花澤さんが、受けたいじめに対しての思いをしゃべるシーンがあります。そうしたお芝居を、僕はフィルターを通さずに現場で見させていただいているので、作品の一ファンとしてこんなに嬉しいことはないなと感じています。

アニメキャプチャ

主人公の桐山零君を第1シリーズから演じられていますが、桐山君は河西さんにとってはどのような存在ですか?

この作品に関わるまでは、原作を読んで「こういう話なんだな」と落ち着いて見ていましたが、いざ自分が桐山君を演じるに当たって、台本等を読んでみると、こういうところは自分に似ているなという点が多々見つかりました。ですので、自分とも似ているところがあるという役ですね。

桐山君を演じるにあたり、役作りなどの準備はされたのでしょうか?

キャラクターにもよるんですが、桐山君に関しては、声の部分で作ろうとは思いませんでした。

「彼がこういう状況に置かれていて、だとすると彼はどう思うんだろうか」とか、「自分だったらどういう反応をするんだろうか」ということを考えて、その上で声に出たものを大切にしています。

自分の立場に置き換えて考えてみるのですね。河西さんは、以前、声質的にクールな方が自分には似合っていると話しておられた記事を拝見したことがあります。桐山君も一見クールに見えて、内面にとても熱いものを持っているキャラクターだと思いますが、演じる上で心がけていることがありましたら教えてください。

桐山君は、人との間に一線を引いていて、距離を詰めることは上手い方ではないと思っています。けれども、今まで川本家のみんなであったり、二海堂であったり、他の将棋棋士たちと関わってきて、いろんな経験をしてきているので、第1シリーズと比べて、周りの人達との距離感が縮まってきていると思います。

根底にあるスタンスは変わらないのですが、徐々に周りの人達との関係性は変わってきていて、話が進むにしたがって、彼の持っているものが見えてくると思いますので、そこを上手く表現できたらと思っています。

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第2シリーズでは、ひなちゃんがいじめられてしまうのですが、桐山君は自分なりに考えて、彼女を支えようとします。河西さんが、桐山君あるいは家族の立場であれば、どのようにいじめを解決しようとしますか?

仮に自分に子供がいて、その子がいじめられたとしたら、自分の子供が一番大切と考える親の心境は、当たり前のことだと思いますので、子供を守るためにいろいろなことをすると思います。

ただ、そこで親が子供そっちのけで、「その子にうちの子がいじめられた」といった議論をしてしまうと、子供自身が円満に学校生活を送れなくなってしまうと思いますので、大人が全部何かをしてあげるというのは、必ずしも正解ではないのではないかと思います。

作中でも、100%の解決方法はないと言っているぐらいですので、当事者達が求めている数だけ、答えが何通りもあるのだろうなと、今の僕としては考えています。やはり、仮に自分の子供がいじめられている側の子だとしたら、子供から何とか話を聞いて、どのような解決方法がいいのかを一緒になって考えて、学校にもきちんと話をして、いろいろな解決方法を考えて行ければいいのかと思っています。それが転校なのか、謝ってほしいだけなのかというのは分からないんですけれども。

何がいじめの解決かというのはなかなか難しいところがありますね。

僕も小学校のときに、軽いいじめではないですが、いろいろ言われたりしたことはありました。ただ、僕自身はそれをいじめとは捉えていなくて、遊びの一環と捉えていたんです。

けれども、周りから見たときに「あれはいじめではないか」と思われていたようで、ある日、仲の良かった女の子の友達が、ホームルームで「なぜ河西君をいじめるのか」ということを議題にしたんです。僕は逆にそれが嫌で、「いや別にそんなふうに思ってないし」とか「ただ遊んでいるだけなんだけどな」などと思っていました。確かに、嫌だなと思う瞬間もありましたが、この作品に出てくるような、どうしたらいいんだろうというような状態までは行かなかったんですね。

でも、今思えば、周りの友達がいじめに対して敏感になって、解決しようとしてくれたということは、すごく勇気のある行動だったのではないかと思います。

桐山君は、いざというときの行動力もあると思いますが、河西さん御自身はどのような生徒でしたか?率直なところ、学校は楽しかったでしょうか?

学校は、友達と会える場というか、一緒になって何かをするという場でもあったので、楽しいものなんじゃないかなぁと思います。

僕自身はどちらかというと、林田先生(注)寄りだったと思います。「漠然と何かになる」とまでは言わないですけれども、本当に、のらりくらりとしていたような気がします。

僕の学校は附属の高校で、エスカレーター式に大学にも行けたところですので、漠然と何も考えなければ、大学に行って勉強して、就職してというコースだったと思うのですが、それをよしとしない自分がいて、高校を卒業するに当たっては、本当に何をしたいのかということに直面したので、声優の道に進もうかなという考えになりました。
(注)桐山零が通う高校の担任。

桐山君は、いじめの傍観者ではなく、いじめを解決しようとして動いていくことになります。桐山君のように、子供たちが傍観者ではなく、言わば仲裁者になるためにはどうすればいいと思いますか?

3月のライオンの世界観の中では、ひなちゃんがいじめられていて、いじめている人達が3~4人ぐらいいて、おそらく、はやし立てている人はいなくて、傍観者が大多数を占めている、というクラスだと思います。傍観者がそれだけの人数いれば、結託してひなちゃんを守ろうとした場合に、逆にいじめていた3~4人はクラスで肩身が狭くなってしまって、疎外感を感じてしまうのではないかと思います。

作中でも言っていますが、いじめをしていた子供たちを教育しなくてはならないので、単に「いじめはダメだ」と指導するだけでは、その子供たちは成長しないと思います。ただ、加害者側に指導を手厚くすると、逆に被害者側はどうなるのだ、となってしまうのではないかと思うんです。ですので、いじめの解決方法は本当に難しいと思います。

個人的には、いじめの解決策として、加害者と被害者をお互いに関与させないのが一番なのかなと思います。例えば、クラス替えをして、お互いを引き合わせないようにするなどです。大人は別ですが、いろいろな生徒がいる中で、みんながみんな手を取り合って仲良くということは、僕は無理ではないかと思っています。それよりも、仲の良い友達が何人かいればいいのではないかと思います。

いじめ問題については、様々な取組が行われていますが、痛ましい事案が後を絶ちません。いじめ問題に対応する上で、どのようなことが大切だと思われますか?

話を聞いてあげることが、まず第一かなという気がします。ちゃんと話を聞いてあげて、どうしたいのかというのを考えてあげて、その上で、いじめっ子と付き合いたくないとか謝ってほしいとかということであれば、そういった方向で動くように、周りが支えてあげられればいいと思います。やはり、一番は、いじめられている子の話を聞いてあげるということかなと思います。

原作でも、桐山君はひなちゃんがどうしたいのかを聞いて、行動に移していたのが良かったのかなと思います。本日はありがとうございました。

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